特許第6860209号(P6860209)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社 サティス製薬の特許一覧

<>
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000002
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000003
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000004
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000005
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000006
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000007
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000008
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000009
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000010
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000011
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000012
  • 特許6860209-セラミドNPの製造方法 図000013
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860209
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】セラミドNPの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C12P 13/02 20060101AFI20210405BHJP
   A01H 5/00 20180101ALN20210405BHJP
   A01H 4/00 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   C12P13/02
   !A01H5/00 Z
   !A01H4/00
【請求項の数】5
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2017-252274(P2017-252274)
(22)【出願日】2017年12月27日
(65)【公開番号】特開2019-115318(P2019-115318A)
(43)【公開日】2019年7月18日
【審査請求日】2019年4月19日
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】505443160
【氏名又は名称】株式会社 サティス製薬
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【弁理士】
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【弁理士】
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】柚木 恵太
【審査官】 上村 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2015−105272(JP,A)
【文献】 特開2012−126910(JP,A)
【文献】 特開2012−041518(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/016558(WO,A1)
【文献】 The Journal of Biological Chemistry,1997年,Vol.272, No.48,p.30196-30200
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12P
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
WPIDS/WPIX(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
セラミドNPの製造方法であって、原料として未分化植物のカルスを使用し、前記カルスを破砕する破砕工程、及び、前記カルスの破砕物を45℃〜70℃で1〜24時間熱する加熱工程を含むセラミドNPの製造方法。
【請求項2】
前記カルスを水だけで培養する工程を更に含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記破砕工程で得られる前記カルスの破砕物が凍結乾燥破砕物、真空乾燥破砕物、若しくは送風乾燥破砕物である、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記カルスが、キク科、マメ科、メギ科、アブラナ科、バラ科、イネ科、ラン科、ハス科、セリ科、ナス科、ヒルガオ科、サトイモ科、アカザ科、ショウガ科、アカネ科、アヤメ科、ウコギ科、ウルシ科、カエデ科、カキノキ科、キンポウゲ科、クスノキ科、クワ科、サボテン科、シソ科、ウリ科、ミカン科、ユリ科、アオイ科、スイレン科、キジカクシ科、アカテツ科、ヒノキ科、ムラサキ科、ミロタムヌス科、ナデシコ科、サボテン科、ツツジ科及びツバキ科からなる群より選択される植物のカルスである、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
前記カルスが、キク科、マメ科、及びメギ科からなる群より選択される植物のカルスである、請求項1〜のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セラミド製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
スフィンゴ脂質は、長鎖アミノアルコールであるスフィンゴイド塩基のアミノ基に長鎖脂肪酸が結合したセラミドを基本骨格とし、アルコール性ヒドロキシル基に糖及びリン酸などの極性基が結合した状態で細胞膜に存在する。なかでもスフィンゴ糖脂質であるグリコシルセラミドは、動植物、微生物に広く存在する成分でセレブロシドとも呼ばれ、近年、生体機能調節作用を有するとして注目されている機能性素材でもある。
【0003】
グリコシルセラミドのなかでも植物及び真菌類に広く存在するグルコシルセラミド(グルコースがセラミドに結合したスフィンゴ糖脂質)は、俗に略して「セラミド」と呼ばれ、多くの原料から素材化されている。とくにセラミドはヒト表皮の細胞間脂質の約50%を占めることから、肌の健康との関連で注目され健康食品および機能性化粧品素材として市場を拡大している。加齢による角質セラミドの減少が知られており、外用セラミドの補給が重要であると考えられている。ヒトの角質層は様々な種類のセラミドが存在するが、中でもセラミドNS、セラミドNP、及びセラミドAPの存在割合が高く、肌の健康、とくに保湿のためには、これらのセラミドが特に重要と考えられている。
【0004】
ただし、角質層細胞間脂質として存在するセラミドは遊離型のフリーセラミドであり、これはグルコシルセラミドとスフィンゴミエリンとが表皮特異的な分解酵素により分解されて変換されたものである。この皮膚におけるフリーセラミド産生は、陸上動物において表皮のバリア機能を維持するうえで重要な生命現象である。
【0005】
一方、植物から抽出され所謂「セラミド」と称されている植物グルコシルセラミドは、上記の通りグルコースがセラミドに結合しており、この点でヒト表皮のセラミド(フリーセラミド)とは構造が異なる。セラミドの基本骨格に基づいて、動物及び植物によく見られるスフィンゴイド塩基の例を、図1に示す。
【0006】
植物におけるセラミド合成を概観すると、ジヒドロセラミドから水酸化、不飽和化、糖転移を経てグルコシルセラミドが合成されるか、あるいはフィトセラミドから2−水酸化、リン酸化、糖転移を経てグリコイノシトールホスホセラミド(GIPC)が合成される。
【0007】
2−水酸化されたα−ヒドロキシ脂肪酸含有セラミド、いわゆるセラミドAP型は植物では本質であり、脂肪酸が水酸化されていないノルマル型セラミド、いわゆるセラミドNP(nonヒドロキシ脂肪酸−フィトスフィンゴシン)型は植物では微量な存在である。
【0008】
ヒトの肌のセラミドNPは老化と伴に減少し、アルツハイマー病患者の皮膚においても顕著に減少しているという報告がある。さらに、セラミドNP濃度が角層の脂質パッキング構造の安定性に寄与している可能性がある、冬季乾燥肌がセラミドNPレベルと強く関係している、並びに、唇の荒れや静電容量にはセラミドNPレベルやその鎖長の長さが関連している、などセラミドNPの重要性が数多く報告されている。
【0009】
しかし、セラミドNPを効率よく生産する技術はほとんどなく、現在流通しているセラミドNPは、酵母を培養してフィトスフィンゴシンを取り出し、それに脂肪酸を化学結合させて製造されたものが主である。特に植物からセラミドNPを効率よく生産する技術は未だ報告されていない。しかも、上述の通り、植物から抽出され「セラミド」と呼ばれている成分は、糖が結合した構造を有するグリコシルセラミドであり、糖が持たない構造を有するフリーセラミドではないため、植物からフリーセラミドNPを生産することは非常に困難であった。
【0010】
なお、セラミドの命名法の一つとして、セラミドを構成する脂肪酸とスフィンゴイド塩基がそれぞれ何かで名前が決定される方法があり、例えばセラミドAPは、α-ヒドロキシ脂肪酸(A)とファイトスフィンゴシン(P)とにより構成されるセラミドであり、また、例えばセラミドNPは、non−ヒドロキシ脂肪酸、すなわちヒドロキシ基を持たない脂肪酸(N)とファイトスフィンゴシン(P)とにより構成されるセラミドである。このセラミドの命名方法の概要を図2に示す。なお、フィトとファイトは同義である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2015−105272
【非特許文献】
【0012】
【非特許文献1】Denda M, et al., Arch Dermatol Res (1993) 285:415−417
【非特許文献2】Joo K, et al., Journal of Dermatological Science 60 (2010) 40-57
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
本発明は、植物からセラミド(特にセラミドNP)を効率よく生産する方法を提供することを課題とする。なお、本発明においては、単にセラミドと述べる場合には、グリコシルセラミド(フリーセラミドに糖が結合した構造を有する)は含まれないこととし、グリコシルセラミドについて言及する場合にはその旨明示する。よって、本発明においては、例えば、セラミドAP及びセラミドNPと断り無く記載した場合には、フリーセラミドAP及びフリーセラミドNPを意味する。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明者らは、植物を適温で熱することにより、効率的にセラミドを生産できること、さらには、未分化植物を適温で熱することにより、効率的にセラミドNPを生産できること、を見出し、これらの知見に基づき改良を重ねて本発明を完成させるに至った。
【0015】
本発明は例えば以下の項に記載の主題を包含する。
項1.
未分化植物由来原料をオートファジー誘導条件下に供する工程を含む、セラミドNP製造方法。
項2.
(i)未分化植物由来原料を30〜70℃で熱する工程
(ii)未分化植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)未分化植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程を含む、セラミドNP製造方法。
項3.
未分化植物由来原料が、未分化植物、未分化植物の乾燥物、又は未分化植物の破砕物である、項1又は2に記載の方法。
項4.
乾燥物が凍結乾燥物、真空乾燥物、若しくは送風乾燥物であり、及び/又は、破砕物が凍結乾燥破砕物、真空乾燥破砕物、若しくは送風乾燥破砕物である、項3に記載の方法。
項5.
未分化植物由来原料をオートファジー誘導条件下に供する工程が、
(i)未分化植物由来原料を30〜70℃で熱する工程
(ii)未分化植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)未分化植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程である、項1に記載の方法。
項6.
植物が、キク科植物、マメ科植物、メギ科植物、アブラナ科、バラ科、イネ科、ラン科、ハス科、セリ科、ナス科、ヒルガオ科、サトイモ科、アカザ科、ショウガ科、アカネ科、アヤメ科、ウコギ科、ウルシ科、カエデ科、カキノキ科、キンポウゲ科、クスノキ科、クワ科、サボテン科、シソ科、ウリ科、ミカン科、ユリ科、アオイ科、スイレン科、キジカクシ科、アカテツ科、ヒノキ科、ムラサキ科、ミロタムヌス科、ナデシコ科、サボテン科、ツツジ科及びツバキ科からなる群より選択される少なくとも1種の植物である、項1〜5のいずれかに記載の方法。
項7.
工程(i)を含み、工程(i)における熱する時間が1〜24時間である、項1〜6のいずれかに記載の方法。
項8.
セラミドNP及び/又はセラミドAPの生産量を制御する方法であって、
(i)植物由来原料を30〜70℃で熱する工程
(ii)植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程を含み、
用いる植物由来原料において、未分化植物由来原料及び分化植物由来原料の使用割合及び/又は使用量を調節することを含む、方法。
項9.
未分化植物由来原料及び分化植物由来原料の使用量の調節が、
セラミドNPの生産を増量したい場合には未分化植物由来原料の使用割合及び/又は使用量を増やし、セラミドAPの生産を増量したい場合には分化植物由来原料の使用割合及び/又は使用量を増やすことを含む、
項8に記載の方法。
項10.
セラミドNP及び/又はセラミドAP、並びにペプチド及び/又はアミノ酸を生産する方法であって、
(i)植物由来原料を30〜70℃で熱する工程
(ii)植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程を含み、
且つ工程(i)を必ず含む、方法。
項11.
セラミドNP及び/又はセラミドAP、並びにペプチド及び/又はアミノ酸を生産する方法であって、
(i)植物由来原料を30〜70℃で熱する工程
(ii)植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程を含み、
且つ工程(i)を必ず含み、ここで植物由来原料を30〜70℃で熱する工程が、30〜70℃で活性を有するタンパク質分解酵素の存在下で植物由来原料を30〜70℃で熱する工程である、項10に記載の方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明により、植物からセラミド(特にセラミドNP)を効率よく生産する方法が提供される。加えて、セラミドNP及び/又はセラミドAPの生産量を制御する方法も提供される。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】各種セラミドのうち、動物及び植物によく見られるスフィンゴイド塩基について、示す。
図2】セラミドの命名方法の概要を示す。
図3】各植物カルスから得た脂質抽出物をケイ酸薄層クロマトグラフィー(TLC)で分析した結果を示す。
図4】各植物カルスから得た脂質抽出物をケイ酸薄層クロマトグラフィー(TLC)で分離し、さらに当該TLCプレートにニンヒドリンを噴霧してスフィンゴイド塩基を検出した結果を示す。
図5】各植物カルスから得た脂質抽出物について、LC−MSにより含有成分の構造解析を行った結果を示す。
図6】加熱処理した各植物カルスに含まれるセラミド(フリーセラミド)の構成成分を示す。
図7】加熱処理したバイカイカリソウカルスに含まれるセラミド(グルコシルセラミド)の構成成分を示す。
図8】クララの分化植物(分化細胞)と未分化植物(カルス)とを加熱処理したときに産生されるセラミドの比較分析結果を示す。
図9】本発明の効果が奏されるメカニズムの推測図を示す。
図10】分化植物を破砕及び加熱処理してTLCによりセラミドAP産生能力を評価した結果を示す。
図11】分化植物を破砕及び加熱処理した際のフリーセラミド産生の一例としてブロッコリー(茎部)と緑豆もやしのTLC分析結果を示す。
図12】ピーマンを可食部と胎座とに分け、それぞれ加熱処理を行い、TLCで分析した結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の各実施形態について、さらに詳細に説明する。
【0019】
本発明に包含されるセラミド製造方法(以下、「本発明のセラミド製造方法」ということがある)は、例えば、(i)植物由来原料を30〜70℃で熱する工程、(ii)植物由来原料を破砕する工程、又は(iii)植物由来原料を貧栄養状態に置く工程を含む。当該セラミド製造方法において、これら工程(i)〜(iii)は、いずれか1工程のみ含まれてもよいし、2工程以上が組み合わされて含まれていてもよい。2工程以上が組み合わされて含まれる場合、ある工程に供される原料は、その前の工程により得られた原料になる。例えば、植物由来原料が、工程(ii)に供された後に工程(i)に供される場合、工程(i)に供される植物由来原料は植物体若しくは植物細胞等の破砕物であり、セラミド製造効率の点から好ましい。また例えば、植物由来原料が、工程(iii)に供された後に工程(i)に供される場合、工程(i)に供される植物由来原料は貧栄養状態の植物体若しくは植物細胞等になる。
【0020】
また、工程(i)〜(iii)は順番に行われてもよいし、2又は3工程が同時に行われてもよい。例えば、植物由来原料をそのまま若しくは水に浸漬させて30〜70℃で加熱することにより、工程(i)及び(iii)を同時に行うことができる。また例えば、これに、さらに破砕工程を同時に組み合わせれば、工程(i)〜(iii)を同時に行うこともできる。
【0021】
すなわち、本発明のセラミド製造方法は、工程(i)のみ、工程(ii)のみ、工程(iii)のみ、工程(i)及び(ii)((i)→(ii)又は(ii)→(i))、工程(i)及び(iii)((i)→(iii)又は(iii)→(i))、工程(ii)及び(iii)((ii)→(iii)又は(iii)→(ii))、あるいは工程(i)、(ii)、及び(iii)((i)→(ii)→(iii)、(i)→(iii)→(ii)、(ii)→(i)→(iii)、(ii)→(iii)→(i)、(iii)→(i)→(ii)、又は(iii)→(ii)→(i))、を含む方法を包含する。なお、当該矢印「→」は、それぞれ独立して、その前後の工程がその順に行われること、又は、その前後の工程が同時に行われること、を示す。
【0022】
なお、植物由来原料が、工程(ii)に供された後に工程(iii)に供される場合、工程(iii)に供される植物由来原料は植物破砕物であって、生細胞が少なく培養効率が落ちるとも考えられることから、工程(ii)及び(iii)をこの順に含むセラミド製造方法については、本発明のセラミド製造方法から除かれてもよいが、工程(iii)において少なくとも培養される生細胞が存在する限りは、本発明のセラミド製造方法に包含される。また、植物由来原料が、下述するように植物体や植物細胞の破砕物であった場合、すでに破砕されていることからセラミドが蓄積されている可能性が高いため、これを工程(ii)に供する意味合いが低いとも考えられることから、当該場合は本発明のセラミド製造方法から除かれてもよいが、破砕が十分でないとき等には、当該破砕物を工程(ii)に供することに意義があることから、特に限定されない限り、このような場合も本発明のセラミド製造方法に包含され得る。
【0023】
また、工程(iii)における貧栄養状態とは、植物由来原料(特に植物細胞)が、少なくともセラミドを生産できる程度の間、死滅せずに生命機能を維持できる程度の栄養が存在する状態であり、例えば最小培地が例示される。また、培地から培地成分が付着しないよう(必要に応じて水等で洗浄して)回収した状態や、またあるいは単なる水なども例示される。培地から回収した植物培養細胞を水に分散させるような態様も包含される。また、貧栄養状態に置く時間については、セラミドが製造される範囲であれば特に限定はされないが、5分〜数日程度が例示される。好ましくは、3〜24時間程度である。
【0024】
工程(ii)直後にしばらく静置する工程が含まれていてもよい。静置時間は特に限定されないが、5分〜数日程度が例示される。好ましくは、3〜24時間程度である。
なお、比較的長時間静置する場合には、腐敗しない程度の低温下で静置することが好ましい。
【0025】
また、工程(ii)の前に、植物由来原料は乾燥(特に凍結乾燥、真空乾燥、又は送風乾燥)されていることが好ましい。換言すれば、工程(ii)の前に、植物由来原料を乾燥(特に凍結乾燥、真空乾燥、又は送風乾燥)する工程をさらに含むことが好ましい。さらに換言すれば、工程(ii)に供される植物由来原料は、植物乾燥物(特に植物凍結乾燥物、植物真空乾燥物、又は植物送風乾燥物)であることが好ましい。乾燥物であることにより、より容易に破砕することが可能となる。なお、この場合において、工程(i)及び/工程(iii)をさらに含む場合には、植物由来原料を乾燥する工程は、工程(ii)の直前に含まれることが好ましい。すなわち、工程(ii)に加えて、工程(i)及び/工程(iii)をさらに含む場合には、植物由来原料を乾燥する工程は、工程(ii)及び(i)に挟まれて含まれるか、あるいは、工程(ii)及び(iii)に挟まれて含まれることが好ましい。なお、送風乾燥における風としては約40〜50℃程度の風が好ましい。
【0026】
植物由来原料としては、例えば植物体そのものであってもよいし、植物細胞(特に培養細胞)であってもよい。本発明において、「植物」には植物体及び植物細胞の両方が包含される。また、植物体や植物細胞の乾燥物(特に凍結乾燥物)であってもよいし、植物体や植物細胞の破砕物であってもよい。植物や植物細胞の乾燥(特に凍結乾燥、真空乾燥、又は送風乾燥)や破砕の方法は、本発明の効果が損なわれない範囲であれば特に制限されず、公知の方法を用いることができる。(上記工程(ii)における破砕方法についても同様。)
なお、上述の通り、本発明において植物由来原料とは、種々の工程を経た後のものも包含する。つまり、植物由来原料を例えば工程(i)、(ii)、又は(iii)あるいは乾燥(特に凍結乾燥、真空乾燥、又は送風乾燥)工程に供した後に得られるものも、植物由来原料と呼ぶことができる。
【0027】
また、少なくとも工程(i)、(ii)、又は(iii)に供する植物由来原料においては、植物細胞が死滅していないことが好ましく、特にオートファジーを生じ得る植物細胞(生細胞)が多く含まれていることがより好ましい。例えば、植物由来原料を30〜70℃で熱することにより、植物細胞(特に破砕された植物細胞が好ましい)においてオートファジーが誘導され、これにより高分子スフィンゴ脂質がセラミドにまで分解され蓄積されることで、効率的なセラミド生産が達成できるからである。このため、植物由来原料として、植物体や植物細胞の抽出物のみを用いることは好ましくない。抽出物には、生細胞は含まれていないと考えられるからである。一方、植物破砕物には、抽出物及び細胞残渣に加えて生細胞も含まれていることから、高温度で加熱処理されるなどして生細胞が存在していないという事情が無い限りは、本発明に用いるにあたり差し支えない。なお、乾燥(凍結乾燥、真空乾燥、及び送風乾燥を含む)植物においても、細胞は死んではいないことから、30〜70℃で熱することによりオートファジーが誘導され得る。
【0028】
以上の通り、本発明のセラミド製造方法では、植物由来原料において、オートファジーを誘導することにより、セラミド生産を効率よく行える(推察されるメカニズムの概要を図9に示す)。よって、本発明は、未分化植物由来原料をオートファジー誘導条件下に供する工程を含む、セラミド製造方法をも包含する。上記工程(i)〜(iii)は、いずれも、当該製造方法におけるオートファジーを誘導する工程ということができる。換言すれば、上記工程(i)〜(iii)は、細胞由来原料をオートファジー誘導条件下に供する工程の好ましい例であるといえる。なお、細胞において、セラミドの供給源となるグリコシルイノシトールホスホセラミド(GIPC)は形質膜に存在しており、一方でGIPCをセラミドに分解する酵素は小胞体に局在しているため、上記工程(ii)において破砕を行うと、当該基質と当該酵素が接触しやすくなるという点でも、セラミド生産効率を高めることが期待できる。
【0029】
工程(i)において、植物由来原料を30〜70℃で熱する時間としては、本発明の効果が得られる範囲であれば特に制限されず、例えば、1〜24時間程度、2〜18時間程度、又は3〜12時間程度が例示される。また、熱する温度としては、より好ましくは30〜50℃、さらに好ましくは40〜50℃である。また、当該加熱工程は、植物由来原料を水と混合したうえで行うことが好ましい。この場合、用いる水の量は特に限定はされないが、例えば植物由来原料の5〜20容量倍、又は8〜15容量倍程度が例示される。なお、当該容量は、植物由来原料については乾燥容量換算したものである。
【0030】
本発明のセラミド製造方法における、特に好ましい例として、培地成分の付着が無いよう(必要に応じて水洗するなどして)培地から回収した未分化植物(好ましくはカルス)を、そのまま、乾燥させて、又は凍結乾燥、真空乾燥、若しくは送風乾燥させてから破砕し、水(好ましくは滅菌水)に分散させて30〜70℃で加熱する工程を含む方法が挙げられる。なお、カルスは乾燥(特に凍結乾燥、真空乾燥、又は送風乾燥)状態、あるいは乾燥破砕物(特に凍結乾燥破砕物、植物真空乾燥物、又は植物送風乾燥物)として市場に流通することもある。このようなカルスを購入して用いることもできる。特に、この場合には、本発明のセラミド製造方法の特に好ましい例として、植物カルスの乾燥破砕物(特に凍結乾燥破砕物、植物真空乾燥物、又は植物送風乾燥物)を水に分散させ30〜70℃で加熱する工程を含む方法が挙げられる。
【0031】
また、本発明のセラミド製造方法において、原料として用いる植物としては、本発明の効果が得られる限り、特に制限されない。例えば、モヤシ、ブロッコリー、カイワレ大根、マスタード、レッドラディッシュ、オクラ、ダイコン、レンコン、ワサビ、ピーマン、カリフラワー、キャベツ、カブ、メロン、ササ、トウモロコシ、米、ヒジキ、バジル、クレソン、パクチー、エゴマ、タマネギ、ニンニク等が例示され、より具体的な部位を特定すると、例えば、緑豆モヤシ、大豆モヤシ、黒豆モヤシ、ブロッコリースプラウト芽と根、カイワレ大根芽と根、ブロッコリースプラウト芽と根、マスタードスプラウト、レッドラディッシュ、オクラスプラウト、ダイコン皮、レンコン皮、ワサビ、ピーマン、ブロッコリー芯、カリフラワー芯、キャベツ芯、キャベツ葉、カブ葉、メロン胎座、ピーマン胎座、ササ葉、トウモロコシ葉、トウモロコシ絹糸、米糠、陸ヒジキ、バジル、クレソン、パクチー、エゴマ葉、タマネギ皮、ニンニク、ニンニク皮等が例示される。
【0032】
また、特にセラミドNPの生産に当たっては、より効率的なセラミドの生産が可能となる観点から、キク科植物、マメ科植物、メギ科植物、及びアブラナ科の植物が好ましい。より具体的には、例えばキンジソウ(スイゼンジナ)、クララ、バイカイカリソウ、緑豆、稲、ブロッコリー、キャベツ、カリフラワー等が好ましく例示される。これらの他にも、例えば、バラ科、イネ科、ラン科、ハス科、セリ科、ナス科、ヒルガオ科、サトイモ科、アカザ科、ショウガ科、アカネ科、アヤメ科、ウコギ科、ウルシ科、カエデ科、カキノキ科、キンポウゲ科、クスノキ科、クワ科、サボテン科、シソ科、ウリ科、ミカン科、ユリ科、アオイ科、スイレン科、キジカクシ科、アカテツ科、ヒノキ科、ムラサキ科、ミロタムヌス科、ナデシコ科、サボテン科、ツツジ科、ツバキ科等の植物も好ましく例示される。
【0033】
用いる植物は植物体であっても配偶体であってもよく、植物体が好ましい。また、植物細胞であってもよい。植物体又は配偶体を用いる場合、その部位も特に限定はされず、根、茎、葉、実、その他の部位を適宜選択して用いることができる。また、植物細胞は、単離細胞を用いてもよいし、培養細胞を用いてもよい。下述するように、特に未分化植物由来の原料を用いる場合において、未分化植物は培養細胞(特にカルス)であることが好ましい。
【0034】
植物由来原料として、分化植物由来原料及び/又は未分化植物由来原料を用いることができる。分化植物としては植物体が好ましい。また、未分化植物としては、培養細胞、特にカルスが好ましい。カルスの調製は、公知の方法又は公知の方法から容易に想到される方法により行うことができる。例えば、オーキシンを培地に加えて、植物から分離した組織を培養する方法が挙げられる。培地としては、例えばムラシゲスクーグ培地(MS培地)が挙げられる。また、オーキシンとしては、例えばインドール−3−酢酸(IAA)の他、インドール−3−酪酸(IBA)、ナフタレン酢酸、ナフトキシ酢酸、フェニル酢酸、2,4−ジクロロフェノキシ酢酸(2,4−D)、2,4,5−トリクロロフェノキシ酢酸(2,4,5−T)等が挙げられる。また、オーキシンに加えてサイトカイニンを添加してもよく、サイトカイニンとしては例えばカイネチン、ゼアチン、ベンジルアデニン、チジアズロン等が挙げられる。
【0035】
なお、未分化植物(特にカルス)は、植物体の欠片(特に切片)から発生した不定形細胞塊であることが好ましい。
【0036】
分化植物由来原料を用いた場合に、本発明の製造方法で得られるセラミドは、大部分がセラミドAPである。よって、植物由来原料として分化植物由来原料を用いることにより、セラミドAPを効率よく生産することができる。
【0037】
未分化植物由来原料を用いた場合に、本発明の製造方法で得られるセラミドは、主にセラミドNPである。なお、セラミドNPほどの量ではないものの、セラミドAPも得られる。好ましくは、得られるセラミドAP質量を1としたとき、得られるセラミドNP量は1以上(例えば、1.1、1.2、1.3、1.4、1.5、1.6、1.7、1.8、1.9、又は2以上であってもよい)であり、より好ましくは1.5以上であり、さらに好ましくは2以上である。よって、植物由来原料として未分化植物由来原料を用いることにより、セラミドNPを効率よく生産することができる。特に、植物を用いてセラミドNPを効率よく生産できる技術は従来知られておらず、当該製造方法は特に有用である。このことから、本発明のセラミド製造方法のうち、セラミドNP製造方法は、好ましくは、(i)未分化植物由来原料を30〜70℃で熱する工程、(ii)未分化植物由来原料を破砕する工程、及び(iii)未分化植物由来原料を貧栄養状態に置く工程からなる群より選択される少なくとも1工程を含む、セラミドNP製造方法、ということができる。
【0038】
得られるセラミドNPとしては、特に限定はされないが、例えば、セラミド骨格が(ヒドロキシル基を3個有し、炭素数18で、炭素間二重結合を0又は1個有するスフィンゴイド塩基)−(炭素数22、23、24、25、又は26、炭素間二重結合が0又は1、ヒドロキシル基を有さない脂肪酸)の組み合わせであるフリーセラミドが好ましく挙げられる。特に、t18:1−22:0、t18:0−22:0、t18:0−24:0、t18:1−24:0、t18:0−25:0、t18:1−25:0、t18:0−26:0、及びt18:1−26:0、が好ましい。本発明においては、これらのうち、少なくとも1種が得られることが好ましく、2種以上の組み合わせが得られることも好ましい。
【0039】
なお、上記工程(i)〜(iii)の後、セラミドを回収又は精製する方法としては、特に制限されず、公知の方法を用いることができる。例えば、脂質画分を得る方法を用いることができ、具体的には例えば分配抽出法を用いることができる。具体的な分配抽出法としては、例えばFolch法等を挙げることができる。特に好ましい操作の一例としては、例えば、クロロホルム/メタノール(2:1)で試験管に回収し、常法に従って水を添加して撹拌後、2層に分離して、下層を分取する方法が挙げられる。また、当該工程前にエタノール抽出工程を含めてもよい。より具体的には、例えば、熱したエタノール(55〜65℃程度)を添加し撹拌し、ろ過後の残渣を再度エタノールで抽出するなどしてもよい。また、適宜濃縮乾固等を用いて濃縮を行ってもよい。また、セラミドを濃縮するために、セラミドの非溶媒であるアセトンを添加し、不溶部を回収してもよい。
【0040】
また、本発明は、セラミドNP及び/又はセラミドAPの生産量を制御する方法をも包含する。当該制御方法は、(i)植物由来原料を30〜70℃で熱する工程、(ii)植物由来原料を破砕する工程、及び(iii)植物由来原料を貧栄養状態に置く工程からなる群より選択される少なくとも1工程を含み、且つ、未分化植物由来原料及び分化植物由来原料の使用量を調節することを含む。上述の通り、工程(i)〜(iii)により、セラミドを効率よく生産することができる。そして、植物由来原料として分化植物由来原料を用いることにより、セラミドAPを効率よく生産することができ、また、植物由来原料として未分化植物由来原料を用いることにより、セラミドNPを効率よく生産することができる。これらのことから、植物由来原料における未分化植物由来原料及び分化植物由来原料の使用割合及び/又は使用量を調節することにより、得られるセラミドNP及び/又はセラミドAPの生産量を制御することが可能となる。
【0041】
より具体的には、セラミドNPの生産を増量したい場合には未分化植物由来原料の使用割合及び/又は使用量を増やし、セラミドAPの生産を増量したい場合には分化植物由来原料の使用割合及び/又は使用量を増やすことにより、生産されるセラミドNPとセラミドAPの量を制御することができる。例えば、できるだけセラミドNPを多く生産したい場合には、用いる植物由来原料を全て未分化植物由来原料とすることができ、また例えば、できるだけセラミドAPを多く生産したい場合には、用いる植物由来原料を全て分化植物由来原料とすることができる。あるいはまた、例えば、得られるセラミド含有組成物におけるセラミドNPとセラミドAPの含有比率を調整するために、用いる未分化植物由来原料及び分化植物由来原料の使用割合(質量比率)を調整することもできる。
【0042】
特に制限はされないが、未分化植物由来原料及び分化植物由来原料の質量比率は、例えば1:0〜10であることができる。当該「0〜10」の上限は、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、又は0.01であってもよい。また、当該「0〜10」の下限は、例えば、9、8、7、6、5、4、3、2、1、0.9、0.8、0.7、0.6、0.5、0.4、0.3、0.2、0.1、0.09、0.08、0.07、0.06、0.05、0.04、0.03、0.02、又は0.01であってもよい。
【0043】
さらにまた、本発明は、セラミドNP及び/又はセラミドAP並びにペプチド及び/又はアミノ酸を生産する方法をも包含する。当該方法は、(i)植物由来原料を30〜70℃で熱する工程、(ii)植物由来原料を破砕する工程、及び(iii)植物由来原料を貧栄養状態に置く工程からなる群より選択される少なくとも1工程を含む。好ましくは、これらの工程のうち、工程(i)を必ず含む。ここで、より好ましくは、工程(i)として、植物由来原料を、30〜70℃で活性を有するタンパク質分解酵素(プロテアーゼ)の存在下で、30〜70℃で熱する工程を含む。上述のように、植物由来原料を30〜70℃で熱することにより、オートファジーによりセラミド(特にセラミドNP及び/又はセラミドAP)を生産することができるところ、オートファジーによりタンパク質も分解されて、ペプチド及び/又はアミノ酸も生産される。この30〜70℃での加熱工程において、30〜70℃で活性を有するタンパク質分解酵素を併用することにより、当該植物由来原料に含まれるタンパク質がより効率的に分解されてペプチド及び/又はアミノ酸が生産される。当該方法により、素材として有用なセラミド及びペプチドの両方が同時に簡便に生産できる。
【0044】
30〜70℃に活性を有するタンパク質分解酵素としては、本発明の効果を損なわないものであれば特に制限されない。当該タンパク質分解酵素の存在により、セラミド生産は妨げられないものが好ましい。また、植物由来のタンパク質分解酵素が好ましい。また、中性付近(例えばpH5〜8あたり)で活性を有するものが好ましい。より具体的には、例えばパパイン等が例示される。
【0045】
なお、本明細書において「含む」とは、「本質的にからなる」と、「からなる」をも包含する(The term "comprising" includes "consisting essentially of” and "consisting of.")。
【実施例】
【0046】
以下、本発明をより具体的に説明するが、本発明は下記の例に限定されるものではない。
<植物細胞培養と調製>
キンジソウ、クララおよびバイカイカリソウの葉を殺菌後、切片を切り出し、滅菌済みムラシゲスクーグ培地(MS培地)に植え付けた。成長ホルモンとして、オーキシン2,4D(2,4−ジクロロフェノキシ酢酸)とサイトカイニン(ベンジルアデニン)をそれぞれ1ppm及び0.01ppmの濃度で予め培地に添加した。3週間25℃にて培養を行い、カルス形成確認後、植え継ぎをしながら、カルス誘導を行った。カルスが十分形成された後、培地が付かないようにカルスをシャーレから回収した。
【0047】
セラミド分析のコントロールとして、カルスに60℃に熱したエタノールを添加しよく撹拌し、ろ過後の残渣を再度エタノールで抽出した。抽出液は減圧濃縮後、クロロホルム/メタノール(2:1)で試験管に回収し、常法に従って水を添加して撹拌後、2層に分離した。下層を分取し、濃縮乾固後した後、1mLのクロロホルム/メタノール(2:1)に再溶解した(以下、当該分配抽出方法を「Folch法」と表記する)。
【0048】
また別に、カルスを回収後、凍結乾燥し、得られた乾燥物を粉砕して、凍結乾燥粉砕物とした。この凍結乾燥粉砕カルスに10倍容の水を添加して加熱処理(45℃で5時間インキュベート)した。その後、遠心分離して液部と固形部に分けた。固形部は回収し、真空乾燥した後、セラミド抽出用試料とした。液部はさらにろ紙(5C、アドバンテック)でろ過後、水溶性エキス画分とした。
【0049】
加熱処理乾燥カルス(すなわち、前記セラミド抽出用試料)1gに4倍容のエタノールを添加し、40℃で2時間撹拌抽出した。No1ろ紙で吸引ろ過後、液部は減圧濃縮した。濃縮物から、Folch法に従って脂質を抽出した。そこから一部を分取し、0.4Mメタノール性/NaOHにて38℃で40min反応させた。その後、Folch法に従ってアルカリ安定性の脂質を調製し、セラミド分析用試料とした(以下、当該試料を脂質アルカリ処理物とも呼ぶ)。
【0050】
<TLC分析>
各脂質のアルカリ処理物100μgをケイ酸薄層クロマトグラフィー(以下、TLC)で分析した(展開溶媒:クロロホルム/メタノール/水(90:10:1)、検出:10%硫酸塗布後加熱)。分析結果を図3に示す。レーンa、b、及びcは、それぞれキンジソウ、クララ、バイカイカリソウのカルスから調製した脂質アルカリ処理物を、またレーンdはセラミド標準品(ノンヒドロキシセラミド、マトレヤ、N−リグノセリルフィトスフィンゴシン、N−α−リグノセリルフィトスフィンゴシン、Avanti polar lipid)を、分析した結果を示す。図3Aはコントロール(未処理のカルス)の脂質アルカリ処理物、図1Bはカルスの乾燥加熱処理後の脂質アルカリ処理物を示す。コントロールではほとんど検出されなかったフリーセラミドが、加熱処理後には大きく増加していた。特に、一般の分化植物を加熱処理してもセラミドAPしか検出されないが(後述)、カルスを加熱処理することによりセラミドNPのスポットが大きく検出された。
【0051】
標準品のセラミドNP(N−リグノセリルフィトスフィンゴシン)とセラミドAP(N−α−リグノセリルフィトスフィンゴシン)を用いて、TLCデンシトメトリー法によりカルスから得られたセラミドを定量した。セラミドNPの含量は、抽出した脂質あたりキンジソウ4.2%、クララ5.9%、バイカイカリソウ3.6%であった。セラミドAPも定量し、NP/AP比を求めると、キンジソウ2.00、クララ2.4、バイカイカリソウ1.45であった。
【0052】
クララのカルスではグルコシルセラミドが加熱処理後にほぼ消失していた。そこでTLCプレートにニンヒドリンを噴霧して、スフィンゴイド塩基をニンヒドリン反応により検出すると(図4)、全サンプルにおいてフィトスフィンゴシン(セラミドNP及びセラミドAPの構成スフィンゴイド塩基)は検出されず、一方、ジヒドロキシスフィンゴイド塩基が検出された。当該ジヒドロキシスフィンゴイド塩基はLC−MSの分析結果から、一般に植物性グルコシルセラミドの主要構成成分であるスフィンガジエニンであることが分かった。このことから、クララのカルスではグルコセレブロシダーゼ活性とセラミダーゼ活性が高く、さらにこれらの酵素はフィトセラミドには作用せずジヒドロセラミドに特異的であることが強く示唆された。
【0053】
<LC−MS分析>
次にLC−MSによりスフィンゴ脂質の構造解析を行った。解析条件は次の通りである。
装置:島津 Prominence−i LC−2030C;検出器:島津LCMS −2020 ESI、スキャンモードm/z 500−850、SIMモード:〔セラミド分子量+H〕イオン、ネブライザー流量1.5L/min、ヒートブロック温度:200℃、A液:5mMギ酸アンモニウム/メタノール、B液:5mMギ酸アンモニウム、アイソクラティック条件 (A/B=98:2)、カラム:GL Sciences InertSustain(C18,3μm,2.1×150mm)、流速:0.2ml/min
【0054】
カルスに含まれるスフィンゴ脂質について、LC−MSにより構造解析を行った(図5)。なお、LC−MS解析には、脂質アルカリ処理物を用い、LC−MSのポジティブイオンモードで解析した。図中の分子種に示した略語は、セラミド骨格のスフィンゴイド塩基−脂肪酸を示したもので、例えばt18:1はトリヒドロキシ塩基/炭素数18/二重結合1個を示しており、24は脂肪酸炭素数24/二重結合0個/ノンヒドロキシを意味し、26hは脂肪酸炭素数26/二重結合0個/αヒドロキシ、24:1は脂肪酸炭素数24/二重結合1個/ノンヒドロキシを意味する。ノンヒドロキシ脂肪酸−フィトスフィンゴシンの組み合わせがセラミドNP、αヒドロキシ脂肪酸−フィトスフィンゴシンの組み合わせがセラミドAPである。また、2,3ジヒドロキシ脂肪酸−フィトスフィンゴシンの組み合わせをセラミドAPIIと呼ぶ。本分析条件により、セラミドNP、セラミドAPおよびセラミドAPIIの3クラスを分析することが可能であった。当該LC−MS構造解析結果から、TLCで検出された各スポットがセラミドNPとセラミドAPであることが確認された。
【0055】
LC−MS解析とECN〔equivalent carbon number〕および標準品との比較の結果から判定した分子種を図6に示す。分析の結果、セラミドNPとしては脂肪酸鎖長が22〜26までの11種が、セラミドAPとしては脂肪酸鎖長が22〜26までの10種が、セラミドAPIIとしては脂肪酸鎖長24〜26までの6種が検出され、総セラミド分子としては少なくとも27種が検出された。
【0056】
例えばキンジソウではセラミドNPは全体の約70%を構成し、APは26%、APIIは3%を占めていた。各植物共通して、リグノセリン酸が結合したt18:1−24とt18:0−24の超長鎖脂肪酸型NPが主成分であった。キンジソウとクララでは、t18:0型がそれぞれ全体の36%と39%であったのに対し、バイカイカリソウではt18:0型が全体の53%を占めていた。なお、各結果(特に図6及び下述の図7)に示される各セラミドの値(%)は、LC−MSにより分析された各セラミド分子イオンの面積比を示す。
【0057】
以上の結果から、各植物のカルスにおいて加熱処理によりフリーセラミドが新たに生産され、カルスでは分化植物ではほとんど見られないセラミドNPがセラミドの大部分を占めることが明らかになった。加えて、当該セラミドNPが超長鎖型であることも明らかになった。
【0058】
バイカイカリソウにはグルコシルセラミドも多く含まれていたので、同様にLC−MSで分析した(図7)。植物のグルコシルセラミドは一般に大部分がαヒドロキシ脂肪酸で構成されていることが知られているが、カルスにおいては、脂肪酸鎖長は異なるがフリーセラミドと同様にノンヒドロキシ脂肪酸の割合が約80%と多くを占めていた。
【0059】
<同一植物における分化と未分化細胞との比較>
同一植物における未分化細胞と分化細胞とのセラミドの比較分析を行うため、カルスにおいてセラミドNP生産能の高かったクララの分化植物体を分析した。クララの葉を凍結乾燥してから粉砕し、粉砕乾燥物を調製した。新鮮な植物組織にはフリーセラミドは含まれないことから、加熱処理してから分析した。すなわち、前記粉砕乾燥物に10倍量の水を添加後、45℃で18時間処理した。固液分離して回収した固形部をエタノールで3回抽出し、ろ液を減圧濃縮した。それをFolch法にて分配し、全脂質を得た。さらに弱アルカリ処理物を調製し、TLCで分析した(図8)。その結果、分化植物ではセラミドAPが生産されるが、セラミドNPはまったく生産されず、セラミドNPを生産する能力は未分化植物に特異的であることが分かった。
【0060】
以上の結果から、次のモデルが考えられる。まず、分化植物でも未分化植物でも加熱処理によりセラミドが生産されるのは、当該加熱処理により、オートファジーが誘導されていると考えることができる。つまり、オートファジーにより、スフィンゴ脂質が各構成成分(糖、リン酸、及びフリーセラミド)に分解されると考えることができる。そして、分化植物においては、細胞内でセラミドNPの大部分は2−水酸化酵素により2−水酸化されてセラミドAPになっているため、スフィンゴ脂質の構成成分もセラミドAPとなり、結果として加熱処理後に(つまり、オートファジーによりスフィンゴ脂質が分解されて)得られるセラミドの大部分がセラミドAPである一方、未分化植物においては、セラミドNPを2−水酸化してセラミドAPを合成する能力が未発達である(例えば、当該2−水酸化酵素が存在しないか、又は活性が弱いことが考えられる)ために、セラミドNPが2−水酸化されてセラミドAPに変換されず、スフィンゴ脂質の構成成分もセラミドNPとなり、結果として加熱処理後に(つまり、オートファジーによりスフィンゴ脂質が分解されて)得られるセラミドの大部分がセラミドNPとなるものと考えられる。当該モデルの概要を図9に示す。なお、図9において「死んだ細胞」と説明されるのは、オートファジーを伴ったプログラム細胞死(細胞ストレス等によって誘導される)により死んだ細胞のことである。
【0061】
なお、上述したとおり、植物におけるセラミド合成を概観すると、(I)ジヒドロセラミド(C18脂肪酸型)から2−水酸化、不飽和化、糖転移を経てグルコシルセラミドが合成されるか、あるいは(II)フィトセラミド(C24等の超長鎖脂肪酸型)から2−水酸化、リン酸化、糖転移を経てグリコイノシトールホスホセラミド(GIPC)が合成されるところ、当該モデルにより産生されるセラミドNP及びセラミドAPは、超長鎖型フィトセラミドからの前記(II)合成経路由来である。上記結果から考えると、前記(I)合成経路由来のグルコシルセラミドについては、理由は定かではないが、オートファジーによりスフィンゴイド塩基と脂肪酸とにまで分解されてしまうのではないかと推測される。
【0062】
<分化植物のフリーセラミド>
発芽間もない植物であるスプラウトを中心に分化植物を破砕及び加熱処理して上記と同様にTLCによりセラミドAP産生能力を評価した(図10)。使用したアブラナ科とマメ科植物のスプラウトはいずれもセラミドAP産生能力が高く、また、芽よりも根の方が高かった。アブラナ科植物では、成長した植物体であるカリフラワー(レーンu)やダイコン皮(レーンv)でもセラミドAP産生量が多かった。また、アブラナ科植物とマメ科植物は、特にセラミドAP産生能力が高いことが示唆された。
【0063】
<分化植物の加熱処理前後の比較>
分化植物を破砕及び加熱処理した際のフリーセラミド産生の一例としてブロッコリー(茎部)と緑豆もやしの上記と同様のTLC分析結果を図11に示す。ブロッコリーは適当な大きさにカット後送風乾燥(45℃)し、乾燥物を粉砕した。それを、熱水処理、無添加処理、酵素(プロテアーゼ)処理の3群に分け、50℃3時間処理した。生もやしを85℃で湯煎して酵素失活し、水を切った後に破砕して脱水後、固形部をアルコール抽出したものをコントロールとした。セラミド産生用としては生もやしをミキサーで破砕して一晩45℃で静置することにより加熱処理した。脱水処理した固形部をエタノールで3回抽出した。ろ過して回収した抽出液を減圧濃縮し、上記と同様にクロロホルム/メタノール/水で2層に分配し、その下層を全脂質とした。コントロールサンプルとセラミド生産サンプルをそれぞれ弱アルカリ処理し、アルカリ処理物をTLCにて分析した。コントロール(レーンa、d)では極微量しか含まれないセラミドAPは、破砕及び加熱処理後は大きく増加した。しかし、セラミドNPは検出されなかった(TLC上でNPの位置に近接するスポットは、標準品との硫酸熱脱水反応の違い(炭化時間の違い)及びLC−MS分析からセラミドではないことが確認された)。ブロッコリーを中性プロテアーゼで処理すると、固形部にはセラミドAPが含まれ(レーンc)、また液部にはペプチドと遊離アミノ酸が高含有していることが確認されたことから、セラミドAPとアミノ酸エキスを同時生産することが可能であることが分かった。また、ブロッコリーともやしに共通してグルコシルセラミドの分解が見られた。さらに、ブロッコリー及びもやし共にセラミドASD(αヒドロキシ脂肪酸−スフィンガジエニン)もわずかに検出され、LC−MSで確認されたその構造上の特徴からグルコシルセラミドの分解物と推測された。もやしのスフィンゴイド塩基分析の結果から、スフィンガジエニンと同じRf値を示すスポットが検出されたが、フィトスフィンゴシンは検出されなかった。
【0064】
以上から、分化植物においては破砕及び加熱処理によりセラミドAPが選択的に生産され、それ以降分解されずに蓄積されると考えられた。また、その一方で、グルコシルセラミドは分解され、フリーセラミドを経て大部分はスフィンゴイド塩基(スフィンガジエニン)まで分解されることが考えられた。さらに、当該結果は、上述したモデル(図9)とも合致していると考えられた。
【0065】
<ナス科植物の部位差分析>
ピーマンを可食部と胎座とに分け、それぞれ加熱処理を行い、TLCで分析した。ナス科植物であるピーマンの可食部からはセラミドはあまり生産されなかったが、胎座からは多くのセラミドAPが生産された(図12)。
【0066】
<カルスからのセラミドNP高含有エキスの製造>
キンジソウのカルスを液体培地(組成:MS培地、スクロース、2,4−D 1ppm、)に移し、培養した。2カ月後、細胞をろ過回収し、水で洗浄を繰り返し、新鮮植物細胞として1kgを得た。それを凍結乾燥器で乾燥し、105gの乾燥細胞を得た。乾燥細胞を粉砕機で粉砕した。細胞に500mlの水を添加し、45℃で18時間静置した。それに1Lの水を添加し、よく撹拌後、ろ過して液部と固形部とに分けた。液部は、目開き1μm、及び0.45μmのろ紙でろ過し、清澄化したエキスを調製した。固形部はエタノールで3回抽出し、そのろ液を減圧濃縮した。エキスは、エタノール/水(2:1)50mLを添加して撹拌し、ろ過して固形部と液部に分けた。固形部を回収し、再度含水エタノールで撹拌し、ろ過した。固形部を回収し、アセトン30mLを添加して4℃に冷却してからろ過した。固形部を乾燥処理し、0.32gの乾燥物を得た。この乾燥物に含まれるセラミドを定量すると、セラミドNPが0.16g、セラミドAPが0.08gであった。
【0067】
<農産加工副産物のブロッコリー茎およびダイコン皮からのセラミドAP高含有エキスの製造>
ブロッコリー収穫時に発生する茎部、およびダイコン加工時(おろし、つま等)の副産物のダイコン皮をセラミドAP産生用試料として用いた。また、生鮮植物のなかでも比較的タンパク質含量の高いブロッコリーについては、酵素抽出法によりタンパク質分解と加熱処理を行った。ブロッコリー茎1kgを45℃で20時間送風乾燥し、乾燥物を粉砕して粉末70gを得た。当該ブロッコリー粉末50gに、中性プロテアーゼ(パパイン、ナガセケムテックス)を添加した水1000gを添加し、50℃5時間処理した。その後、85℃20分間酵素失活の処理を行い、室温まで戻した。
【0068】
ダイコン皮は、機械で裁断、脱水処理して約14%まで減量した皮を使用した。500gをミキサーで破砕後、50℃、5時間静置した。
【0069】
酵素分解ブロッコリーとダイコン皮は、それぞれろ紙(5A、アドバンテック)でろ過し、固形部を回収し、乾燥した。ブロッコリーのろ液は、さらにろ紙(5C,アドバンテック)でろ過した。得られた乾燥固形部は粉砕してから、4倍容の99%エタノールを添加して抽出した。ろ過後(No.1、アドバンテック)、ろ液を減圧濃縮した。濃縮したエキスを上述のセラミドNP精製と同様に、セラミド非溶媒である含水エタノール、アセトンで洗浄し、ブロッコリー茎では0.09g、ダイコン皮では0.1gのセラミドAP高含有の乾燥物を得た。また、ろ液に含まれるニンヒドリン陽性物質(主にペプチド及びアミノ酸)の量を確認したところ、前記ろ液に含まれるニンヒドリン陽性物質量は、プロテアーゼ未処理以外は同様にして得たろ液に含まれるニンヒドリン陽性物質量に比べ、約3.4倍に増加していた。LCで定量した遊離アミノ酸量も、同様に約3倍増加していた。
【0070】
以上のことから、酵素を用いたタンパク質分解処理は、セラミド産生のための加熱処理を兼ねられることが分かった。よって、特にセラミド産生のための加熱処理に適した温度で活性を有するタンパク質分解酵素を用いたタンパク質分解処理を行うことで、ペプチド及び/又はアミノ酸とセラミドとの両方を産生できることが分かった。
[付記]
以下に、本願出願の当初の特許請求の範囲に記載された発明を付記する。
[1]
未分化植物由来原料をオートファジー誘導条件下に供する工程を含む、セラミドNP製造方法。
[2]
(i)未分化植物由来原料を30〜70℃で熱する工程、
(ii)未分化植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)未分化植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程を含む、セラミドNP製造方法。
[3]
未分化植物由来原料が、未分化植物、未分化植物の乾燥物、又は未分化植物の破砕物である、[1]又は[2]に記載の方法。
[4]
乾燥物が凍結乾燥物、真空乾燥物、若しくは送風乾燥物であり、及び/又は、破砕物が凍結乾燥破砕物、真空乾燥破砕物、若しくは送風乾燥破砕物である、[3]に記載の方法。
[5]
未分化植物由来原料をオートファジー誘導条件下に供する工程が、
(i)未分化植物由来原料を30〜70℃で熱する工程、
(ii)未分化植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)未分化植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程である、[1]に記載の方法。
[6]
植物が、キク科植物、マメ科植物、メギ科植物、アブラナ科、バラ科、イネ科、ラン科、ハス科、セリ科、ナス科、ヒルガオ科、サトイモ科、アカザ科、ショウガ科、アカネ科、アヤメ科、ウコギ科、ウルシ科、カエデ科、カキノキ科、キンポウゲ科、クスノキ科、クワ科、サボテン科、シソ科、ウリ科、ミカン科、ユリ科、アオイ科、スイレン科、キジカクシ科、アカテツ科、ヒノキ科、ムラサキ科、ミロタムヌス科、ナデシコ科、サボテン科、ツツジ科及びツバキ科からなる群より選択される少なくとも1種の植物である、[1]〜[5]のいずれかに記載の方法。
[7]
工程(i)を含み、工程(i)における熱する時間が1〜24時間である、[1]〜[6]のいずれかに記載の方法。
[8]
セラミドNP及び/又はセラミドAPの生産量を制御する方法であって、
(i)植物由来原料を30〜70℃で熱する工程、
(ii)植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程を含み、用いる植物由来原料において、未分化植物由来原料及び分化植物由来原料の使用割合及び/又は使用量を調節することを含む、方法。
[9]
未分化植物由来原料及び分化植物由来原料の使用量の調節が、セラミドNPの生産を増量したい場合には未分化植物由来原料の使用割合及び/又は使用量を増やし、セラミドAPの生産を増量したい場合には分化植物由来原料の使用割合及び/又は使用量を増やすことを含む、[8]に記載の方法。
[10]
セラミドNP及び/又はセラミドAP、並びにペプチド及び/又はアミノ酸を生産する方法であって、
(i)植物由来原料を30〜70℃で熱する工程、
(ii)植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程を含み、
且つ工程(i)を必ず含む、方法。
[11]
セラミドNP及び/又はセラミドAP、並びにペプチド及び/又はアミノ酸を生産する方法であって、
(i)植物由来原料を30〜70℃で熱する工程、
(ii)植物由来原料を破砕する工程、及び
(iii)植物由来原料を貧栄養状態に置く工程、
からなる群より選択される少なくとも1工程を含み、
且つ工程(i)を必ず含み、ここで植物由来原料を30〜70℃で熱する工程が、30〜70℃で活性を有するタンパク質分解酵素の存在下で植物由来原料を30〜70℃で熱する工程である、[10]に記載の方法。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12