【文献】
Seppo Ahlfors et al.,Magnetic Imaging of Conductivity ,1992 14th Annual International Conference of the IEEE Engineering in Medicine and Biology Society,1992年,DOI:10.1109/IEMBS.1992.5762007
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
<第1の実施形態>
[全体構成]
以下、第1の実施形態に係る画像生成装置を、図面を参照して説明する。
図1は、第1の実施形態に係る画像生成装置の概要を示す図である。
図1に示す画像生成装置1は、検知部10と、駆動部11と、本体部(コントローラ)20と、を備え、測定対象者(被検者)Xの断層画像を取得可能である。
【0014】
検知部10は、使用時において測定対象者Xの周囲を囲うように、環状に形成される。ここで、「環状」は、対象物の少なくとも一部を囲む全体的な形状を意味し、対象物を完全に連続的に囲む形状に限定されない。また、「環状」は、円環に限定されず、様々な形態をとり得る。例えば、環状は、部分的な開放区間を有する環状や、円環以外の全体形状を有する環などを含むことができる。検知部10は、後述するように、複数の電極とセンサ(複数の磁気センサ、複数のセンサ、複数のセンサセル、複数のセンサヘッド)とを有する。本体部20は、測定対象者Xに対する各種検知信号を検知部10から取得する。本体部20は、この検知信号に基づき、測定対象者Xの、検知部10が配される面の断層画像(検知部10の軸方向の位置に従って設定される面に対する被検者Xの断層画像)を取得することができる。
【0015】
駆動部11は、検知部10に固定され、検知部10を対象物の表面に沿って(例えば、対象物(被検部位)の軸方向、上下方向(鉛直方向))に移動させる移動体を有する。一例において、移動体の直線的な移動に伴い、検知部10が直線的に移動可能である。なお、駆動部11による検知部10の移動は直線移動に限定されない。駆動部11は、例えば、図示しないステッピングモータ等の駆動機構を有する。駆動部11は、本体部20から入力される電気信号(指示信号)に基づいて、検知部10の位置(例えば、鉛直方向の位置)を変更する。これにより、オペレータは、測定対象者Xに対する検知部10の相対位置を任意に変更可能である。駆動部11を用いて検知部10を移動することで、当該測定対象者Xの所望の断層画像を容易に取得することができる。代替的な実施形態において、画像生成装置1は、電力を用いることなく検知部10が移動する構成、又は駆動部11を実質的に省いた構成を有することができる。
【0016】
本体部(コントローラ)20は、検知部10による検知信号の取得、駆動部11を用いた検知部10の駆動、並びに、断層画像の生成等、画像生成装置1の画像生成処理全体の制御を司る。本体部20の詳細な機能構成については後述する。
【0017】
[本体部の機能構成]
図2は、第1の実施形態に係る本体部の機能構成を示す図である。
図2に示すように、本実施形態に係る本体部20は、CPU(Central Processing Unit)200と、RAM(Random Access Memory)210と、HDD(Hard Disk Drive)211と、操作入力部212と、画像表示部213と、外部インターフェイス214と、を備えている。
【0018】
CPU200は、画像生成装置1の画像生成処理全体の制御を司る。CPU200は、所定の記憶領域(RAM210等)に読み込まれた測定用プログラムに基づいて動作することで、交流電流入力部201、磁界情報取得部202、画像生成部203としての機能を発揮する。
RAM210は、測定用プログラムに基づいて動作するCPU200のワークエリアとなる記憶領域である。
HDD211は、各種プログラムまたは画像生成部203が生成した断層画像等を記憶する記憶手段である。
操作入力部212は、例えばマウス、キーボード、タッチパネル等から構成され、オペレータによる各種操作の入力を受け付ける。
画像表示部213は、液晶ディスプレイ等であって、オペレータの操作において必要な情報や、取得された断層画像等を表示する。
外部インターフェイス214は、外部装置との通信を行うための通信インターフェイスであり、特に本実施形態においては、専用の通信ケーブルを介して検知部10及び駆動部11に接続される。
なお、
図2に示すように、CPU200、RAM210、HDD211、操作入力部212、画像表示部213、外部インターフェイス214は、システムバス215を介して相互に電気的に接続されている。
【0019】
[CPUの具体的な機能]
次に、測定用プログラムに基づくCPU200の動作によって実現される交流電流入力部201、磁界情報取得部202、画像生成部203及び駆動制御部204について簡単に説明する。
交流電流入力部201は、測定対象物(測定対象者X)から離れた位置に配された複数の電極102(
図3に記載)を介して測定対象者Xに交流電流を入力する。
磁界情報取得部202は、測定対象者Xから離れた位置に配された複数の磁気センサ(複数のセンサセル、複数のセンサヘッド)103(
図3に記載)を介して、交流電流入力部201により入力された交流電流に基づいて生じた磁界を取得する。
画像生成部203は、磁界情報取得部202が取得した磁界に基づいて測定対象者Xの断層画像を生成する。
駆動制御部204は、駆動部11に対して所定の駆動指示信号を出力し、駆動部11の動作を制御する。
交流電流入力部201、磁界情報取得部202、画像生成部203及び駆動制御部204についてのより具体的な機能については後述する。
【0020】
[検知部の構造]
図3は、第1の実施形態に係る検知部の構造を示す第1の図である。また、
図4は、第1の実施形態に係る検知部の構造を示す第2の図である。
図3には、検知部10の側面の構造を示している。また、
図4には、
図3における面A−A’の断面構造を模式的に示している。
図3、
図4に示すように、検知部10は、ベース体(ベースフレーム、環状筐体)101と、電極102と、磁気センサ103と、を備えている。
【0021】
本実施形態において、ベース体101は、使用時において測定対象者Xの周囲を囲うように(測定対象者の少なくとも一部を囲むように)、環状に形成されている。ベース体101は、駆動部11(
図1)に取り付けられている。駆動部11による駆動制御に基づいてベース体101の測定対象者Xとの相対位置が変化する。ベース体101は、例えば、アクリル樹脂等で形成される。ベース体101の材料としては、様々な材料が適用可能である。ベース体の材料は、好ましくは、実質的に絶縁体であって、かつ、実質的に非磁性体材料である。また、ベース体101は、円形環状に限定されない。ベース体101の全体形状は、例えば、楕円形であったり、一部が間欠された構造であったりしてもよい。あるいは、ベース体101は、全体形状を変更可能な構造を有してもよく、開閉可能な構造を有してもよい。
【0022】
電極102は、面A−A’の同一面内において、ベース体101の周方向に沿ってベース体101に一定間隔ごとに複数取り付けられている。電極102の配置は、様々に変更可能である。電極102は、例えば、銅、アルミ、ステンレスなどの導電性を有し、かつ、実質的に非磁性体の材料で形成される。電極102の材料は、上記例に限定されない。
【0023】
磁気センサ103(複数のセンサセル、複数のセンサヘッド)は、電極102と同様に、面A−A’の同一面内において、ベース体101の周方向に沿ってベース体101に一定間隔ごとに複数取り付けられている。複数の磁気センサ(複数のセンサヘッド)103は、複数の電極102が配される面と同一面内に配される(
図3)。磁気センサ(センサヘッド)103の配置は、様々に変更可能である。
また、本実施形態において、磁気センサ103は、常温でありながら超高感度な磁気センサである光ポンピング原子磁気センサを用いる。光ポンピング原子磁気センサは、極低温状態を要するSQUID(Superconducting Quantum Interference Device)と同程度の(10−15T(テスラ)オーダー)の磁場を観測することができる。
【0024】
図4に示すように、交流電流入力部201は、交流駆動回路201Aを制御して、複数の電極102のうちの2つの電極102間に交流電流を流す。交流駆動回路201Aは、交流電源及び定電流回路(或いは定電圧回路)を有する回路であって、交流電流入力部201による制御に応じて、高周波(例えば数kHz〜数MHzオーダー)の交流電流を出力可能とする。これにより、交流電流は、電極102から空中に放射される成分が高まるため、電極102を測定対象者Xの体表面に直接貼付することなく交流電流を測定対象者Xの内部に流すことができる。また、上記周波数帯は、人体を測定対象物とした場合において、インピーダンスの変化が顕著となることが知られている(
図11(b)参照)。
なお、図示していないが、交流電流入力部201は、交流駆動回路201Aと、複数の電極102のうちの任意の2つの電極102と、を選択して接続可能な切替部を有する。交流電流入力部201は、交流駆動回路201Aと、複数の電極102の各々と、の接続を順次切り替えながら測定者Xに交流電流を流す処理を行う。
このように、交流電流入力部201は、測定対象者Xの特定の断層面を囲う複数の位置に配された電極102を介して交流電流を入力する。
【0025】
また、
図4に示すように、磁界情報取得部202は、磁気センサ103と接続されるとともに、磁気センサ103で検知された磁界の強度をデータ(磁界強度情報)として取得する。なお、図示を省略しているが、磁界情報取得部202も磁気センサ(センサセル、センサヘッド)103の全てと並列に接続されており、磁気センサ103が配された各箇所に発生した磁界の強度を同時に取得可能としている。また、磁気センサ103と磁界情報取得部202との間の接続には、バンドパスフィルタ、増幅器、A/D(Analog/Digital)変換器等、磁界強度を電気的なデータ(磁界強度情報)として取得するために必要な回路が挿入されている。
このように、磁界情報取得部202は、電極102が囲う測定対象者Xの特定の断層面と同一の断層面の周囲に配された磁気センサ103を介して、当該特定の断層面を囲う複数の位置における磁界の強度を示す磁界強度情報を取得する。
【0026】
[検知部の動作原理]
図5は、第1の実施形態に係る電極及び磁気センサの機能を説明する図である。
交流電流入力部201が交流駆動回路201Aを制御して、ある隣接する一対の電極102の間に交流電流を流す場合を考える。交流電流の周波数が数MHzオーダーの場合、
図5に示すように、隣接する電極102間において、空中に円弧状に広がるように交流電流が発生する。これにより、測定対象物Xの内部にも交流電流(交流電流I1、I2等)が入力される。測定対象物Xに入力される交流電流I1、I2等は、それぞれ、測定対象者Xの内部を伝わる経路に応じた値となる。
【0027】
より具体的に説明すると、測定対象者Xに含まれる血液等は電解質であるため、測定対象者Xの内部の方が大気中に比べて電気インピーダンスが低い。したがって、両電極102間から大気中に放射される交流電流は、電気的な抵抗(電気インピーダンス)が低い測定対象者Xの内部の方を流れようとする。そうすると、例えば、交流電流I2、I3等は、測定対象者Xがその場に存在しない場合に比べ、存在する場合の方が全体として高い電流値となる。また、測定対象者Xの内部であっても、例えば、空気で満たされた肺野等を通る交流電流は、その分低い電流値となる。
以上のように、ある電極102間に生じる交流電流は、測定対象物Xの内部における電気インピーダンスの分布に応じた電流値となる。
【0028】
また、
図5に示すように、各交流電流(交流電流I1、I2等)の周囲には、磁界Hが発生する。磁界Hの強度は、発生した交流電流値に比例する。磁界情報取得部202は、ベース体101の周上に配列された各磁気センサ(センサセル、センサヘッド)103を介して、各々の位置において生じた磁界Hの強度を検知する。
後述する画像生成部203は、ここで磁界情報取得部202が取得した各磁気センサ103が検知した磁界Hの強度情報に基づいて、主に、電極102、磁気センサ103と同一面内に存在する断層面S(測定対象者Xの面A−A’(
図3)についての断層面)の断層画像を生成する。
【0029】
なお、入力する交流電流の周波数は、上述したように、人体を測定対象物とした場合において高精度な計測が可能となるように、数kHz〜数MHzオーダーとしている(
図11参照)。そのため、この交流電流に基づいて発生する磁界も同周波数で発振している。そこで、本実施形態においては、磁気センサ103として超高感度の光ポンピング原子磁気センサを用いることで、比較的高い周波数(数MHzオーダー)で発振する磁界であっても、その磁界強度を精度よく検知することが可能となっている。上記数値は一例であって本発明はこれに限定されない。
【0030】
磁気センサ103の態様は、光ポンピング原子磁気センサに限定されない。磁気センサ103として、好ましくは、いわゆる高感度磁気センサが用いられる。一例において、磁気センサ103は、少なくとも数kHzオーダーの磁界Hを高精度で検知可能である。上記数値は一例でありこれに限定されない。例えば、MIセンサ(磁気インピーダンス素子センサ)、超伝導量子干渉素子(Superconducting quantum interference device: SQUID)等の様々なタイプの中から選択されたものを磁気センサ103として用いることができる。
【0031】
[CPUの処理フロー]
図6は、第1の実施形態に係るCPUの処理フローを示すフローチャート図である。
以下、本実施形態に係る画像生成装置1の測定手続において、CPU200が実行する処理フローを、
図6を参照しながら順を追って説明する。
まず、操作入力部212を介してオペレータから測定開始の入力操作を受け付けると、交流電流入力部201は、隣接する一対の電極102を選択し、交流駆動回路201A(
図4)に接続する(ステップS10)。次に、交流電流入力部201は、交流駆動回路201Aに予め定められた制御信号を入力し、設定された周波数及び出力強度の交流電流を、選択された電極102間に発生させる(ステップS11)。これにより、測定対象者Xの内部に所定の強度の交流電流(交流電流I1、I2等(
図5))が入力される。
磁界情報取得部202は、交流電流の入力中に、全ての磁気センサ(センサセル、センサヘッド)103から並列して入力される各検知信号(センサからの出力信号)を受け付けて、各位置における磁界強度を示す磁界強度情報を取得する(ステップS12)。これにより、磁界情報取得部202は、磁気センサ103が配された各位置における、交流電流入力部201により入力された交流電流に基づいて生じた磁界の強度を取得する。磁界情報取得部202は、取得した磁界強度情報を記憶領域(RAM210、HDD211等)に、一時的に記憶する。
【0032】
隣接する一対の電極102間についての磁界強度情報を取得すると、交流電流入力部201は、別の隣接する一対の電極102を選択し、交流電流を入力する。交流電流入力部201は、全ての電極の対を選択するまで上述の処理を繰り返す(ステップS13)。これにより、磁界情報取得部202は、全ての隣接する電極102の組において生じた磁界強度についての磁界強度情報を取得する。
【0033】
全ての電極102の対についての磁界強度情報を取得すると(ステップS13:YES)、画像生成部203は、磁界情報取得部202によって取得、記憶された各磁界強度情報を参照して、測定対象者Xの断層画像を生成する(ステップS14)。一例において、ステップS12で取得された磁界強度情報に基づいて測定対象者Xの断層画像を生成する手法については、既に知られているEIT測定と同様の手法を用いることができる。
【0034】
ここで、ステップS14における断層画像の生成処理の手法について簡単に説明する。まず、従来のEIT測定の場合、通常、複数の電極は体表面に貼付される。そして、ある選択された電極間に定電流(一般に、数kHzオーダの交流電流)を流しながら、他の電極間に生じる電位差を順次計測することで、測定対象者の断層面における抵抗率分布を取得する。従来のEIT測定では、この抵抗率分布を基に、例えば、既知の逆投影法(Back projection method)を用いて断層画像を生成する。
【0035】
EITをリアルタイムで画像再構成するために、(1)測定対象の境界が円形、(2)電極を等間隔で配置、(3)初期の導電率分布が均一、(4)導電率変化が小さい、(5)対象が2次元、と仮定する。まず、Geselowitzの定理を用いて定義される感度行列Sを使うと、測定される電圧変化Δgと導電率の変化Δcの関係は、
【0037】
で示される。ここで、Δcは均一な導電率分布cuの一部がcへ変化したときの変化量、Δgはそれに伴って境界で測定される電圧がguからgまで変化したときの変化量を示す。各感度係数は、
【0039】
となる。ここで、測定対象eに各1組のdrive電極とreceive電極がある場合、receive電極に生じた電位勾配を∇Φdとし、逆にreceive電極に同じ電流を印加してdrive電極に生じた電位勾配を∇Φrとする。感度係数Sは、有限要素法と2点の電極対からの距離r1、r2に位置する点電位をΦ=(r1)−1−(r2)−1と仮定して求められる。Sの逆行列を求めることが非常に困難であるため、変化率として画像再構成をすると、
【0041】
となる。ここで、Fは、正規化感度行列を示し、Δgn=g/gref、Δc=c/crefで、ある基準値に対する変化率を示す。すなわち再構成される画像は、導電率の変化率分布を示す。なお、式(3)中の“+”の記号は、当該“+”が付される行列の疑似逆行列であることを示す。
電磁界系の逆問題を解くことは非常に困難であるため、本実施形態では、測定される磁場の変化率と導電率の変化率が比例関係にあることから、上記のEITにおける画像解析手法を利用した。
EITにおいて測定される電極間の電圧Vは、式(4)のように表される。
【0043】
ここで、“σ”は測定対象物(測定対象者X)の導電率(単位:S/m、抵抗率ρ=1/σ)、“l”及び“s”は、測定対象物を直方体と考えたときの長さ(単位:m)及び断面積(単位:m2)、“I”は、測定対象物に流れる電流(単位:A)である。つまり、測定対象物のインピーダンスが測定中に変化しないものとすれば、電位差Vは、電流Iに比例する。
【0044】
一方、磁界強度“H”と、電流“I”とは、一般に、式(5)の関係を満たすことが知られている。
【0046】
すなわち、電流Iの流れる方向から直角方向に距離“r”(単位:m)だけ離れた点における磁界強度H(単位:A/m)は式(5)のように求められ、これにより、磁界強度Hと電流Iとは比例関係にあることがわかる。
したがって、電位差Vと磁界強度Hも比例関係にあることから、既知の逆投映法において、「電位差V」についての入力をそのまま「磁界強度H」と置き換えても、同等の断層画像を取得することができる。
【0047】
なお、画像生成部203が実行する断層画像生成処理は、上述したEIT測定に用いられる逆投影法を利用した手法に限定されることはなく、その他の手法を用いてもよい。例えば、取得した磁界強度情報に基づいて、電磁界系の逆問題を解く手法が用いられてもよい。
ステップS14にて断層画像を生成すると、画像生成部203は、生成した断層画像を画像表示部213に出力する。オペレータは、画像表示部213に表示された断層画像を視認しながら診断を行うことができる。
【0048】
一の断層画像の生成処理が完了すると、次に、駆動制御部204は、駆動部11の駆動制御を行う。具体的には、駆動制御部204は、測定対象者Xについての全ての断層画像を取得したか否かを判定する(ステップS15)。なお、断層画像を取得する断層面Sの位置や取得する回数などは、オペレータによる最初の設定入力の際に決定されるものとする。
そして、全ての断層画像を取得していない場合(ステップS15:NO)、駆動制御部204は、駆動部11に所定の指示信号を出力して、検知部10を上下方向に移動させ(ステップS16)。これにより、駆動部11は、検知部10の測定対象者Xに対する相対位置を変更する。
ステップS16にて、検知部10の測定対象者Xに対する相対位置の変更がなされると、交流電流入力部201、磁界情報取得部202及び画像生成部203は、上述したステップS10からステップS14までの処理を繰り返す。これにより、測定対象物Xの異なる断層面についての断層画像をさらに取得することができる。
ステップS16にて、予定されていた全ての断層画像の取得を終えると(ステップS15:YES)、CPU200は、処理を終了する。
【0049】
[作用効果]
上述したように、従来のEIT測定の場合、測定対象者Xの体表面に複数の電極を貼付する作業を必要とする。
一方、本実施形態に係る画像生成装置1は、
図3〜
図5等を用いて説明したように、測定対象者Xに対し入力する交流電流の出力先となる複数の電極102と、その交流電流を磁界強度として検知する複数の磁気センサ(複数のセンサセル、複数のセンサヘッド)103と、がいずれも測定対象者Xから離れた位置に配されている。複数の電極102及び複数の磁気センサ(複数のセンサセル、複数のセンサヘッド)103が測定対象物Xの表面に対して非直接接触に配される。これにより、測定対象者Xと電極等とが完全に非接触な状態(非直接接触状態)としながら、測定対象者Xの所望の断層面についての断層画像を取得することができる。
これにより、オペレータによる電極の貼付作業の負担を軽減することができるばかりでなく、測定対象者Xに対する身体的な負担をも軽減することができる。「測定対象物Xの表面に対する非直接接触」は、電極102/磁気センサ103と測定対象者の体表面との間に別の物体が介在している状態を含み、例えば、測定対象者が着用している衣服の外面上に電極102/磁気センサ103が配された状態を含む。追加的に及び/又は代替的に、検知部10は、測定対象物(測定対象者)に対して装着タイプとすることができる。例えば、検知部10は、測定対象者が着用可能に形成されたベース体101に、電極102及び磁気センサ103の少なくとも一部が設けられた構成(例えば、バンドタイプ、キャップタイプ、ヘルメットタイプ等)を有することができる。
【0050】
なお、本実施形態においては、
図3等において、測定対象者Xが直立した状態で、かつ、測定対象者Xの周囲を囲う検知部10が鉛直方向に移動しながら測定が行われている例を示しているが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。例えば、画像生成装置1は、測定対象者Xが専用のベッド等に横たわった状態にあって、検知部10が測定対象者Xを囲んだ状態で検知部10が水平方向に移動する態様としてもよい。このようにすることで、測定対象者Xが身体を起こすことが困難な状況にあっても、測定対象者Xに身体的な負担を強いることなく断層画像を取得することができる。
【0051】
また、従来のEIT測定の場合、体表面の状態(汗の有無など)によっては、その接触面における電気インピーダンスが変動してしまい、測定結果に誤差を生じさせてしまう場合が想定される。
その点、本実施形態に係る画像生成装置1によれば、電極102と測定対象者Xとの接触面(体表面)が存在しないため、その接触面の状態に応じた誤差要因を排除することができる。
【0052】
また、本実施形態においては、上述したように、電極102が非磁性体材料で形成されている。これにより、電極102自身の存在が、磁気センサ103による磁界強度の検知に与える影響を最小限に抑制することができる。これにより、各磁気センサ103は、ベース体101における電極102との位置関係に依存せずに、その位置に発生した磁界の強度を精度よく検知することができる。
【0053】
以上、第1の実施形態に係る画像生成装置1によれば、対象物の断層画像をより簡易的かつ高精度に取得することができる。
【0054】
なお、第1の実施形態に係る画像生成装置1は、更に、以下のように変形可能である。
【0055】
図7は、第1の実施形態の変形例に係る検知部の構造を示す図である。
第1の実施形態に係る画像生成装置1においては、磁気センサ103として光ポンピング原子磁気センサを用いている。これにより、数kHz〜数MHzオーダーで発振する磁界であっても、その磁界強度を常温で精度よく検知することができる。すなわち、SQUIDのように極低温で使用するために必要な構成を全て排することができるので、磁気センサ103の個体のサイズを小型化することができる。この場合、
図7に示すように、電極102の配列とは無関係に、その個体のサイズに応じた制約の範囲内で、配置可能な限りの個数の磁気センサ103を配置するようにしてもよい。
具体的には、ベース体101の周方向に沿って配される磁気センサ103の個数は、当該磁気センサ103単体の幅方向の長さD[m]及びベース体101の円周R[m]のみに基づいて決定されるもの(例えば、個数=R÷D)であってもよい。
【0056】
このようにすることで、サイズの制約上可能な限り、磁界の検知箇所(すなわち、磁界強度についての情報量)を増やすことができる。断層画像を高解像度化することで、より高精度な断層画像を取得することができる。
なお、この場合は、第1の実施形態と同様に、電極102が非磁性材料で形成されていてもよい。
【0057】
また、第1の実施形態に係るCPU200が実行する処理フローは、
図6に示したものに限定されることはない。すなわち、CPU200は、EIT測定に用いられる画像生成処理(例えば、逆投影法等)に基づいて断層画像を生成するのに必要な情報量の磁界強度情報を取得するものであれば、いかなる手順で磁界強度情報を取得してもよい。
【0058】
図8は、第1の実施形態の変形例に係る電極及び磁気センサの機能を説明する図である。
また、第1の実施形態に係るCPU200(交流電流入力部201)は、互いに隣接する電極102の対を順次選択しながら交流電流を入力するものとして説明した(ステップS10〜ステップS11(
図6))。しかしながら、他の実施形態に係る交流電流入力部201は、さらに、隣接する電極102の対以外の組み合わせも含めて、交流電流を入力してもよい。例えば、交流電流入力部201は、一の電極102と、当該一の電極102に対向する位置に存在する他の電極102と、を選択して、各電極102間において交流電流を出力してもよい。
【0059】
ここで、
図5において、互いに隣接する電極102間に生じる交流電流は、その近傍では大きい電流が流れるが、当該電極102間から離れるほどその電流量は小さくなることが知られている。したがって、隣接する電極102間のみに交流電流を発生させた場合、測定対象物Xの体表面に近い側を流れる電流量に比べ、測定対象物Xの内部を流れる電流は微弱なものとなる。そのため、互いに隣接する電極102間に生じる交流電流のみに基づいて取得された断層画像は、断層面Sのうち、体表面に近い領域については高い精度で再現されているが、体表面から離れた深い領域については再現の精度が低下する場合がある。
【0060】
そこで、
図8に示すように、例えば、対向する電極102の対を順次選択しながら交流電流I1等を流すことで、測定対象者Xの体内の深い領域を通る電流量が増す。磁界情報取得部202は、このような電流分布に基づいて発生する磁界を取得することで、体表面から離れた深い領域をも精度よく再現することができる。
また、互いに隣接する電極102の対、または、対向する電極102の対のみならず、他の任意の2つの電極102の対の組み合わせによって交流電流を入力してもよい。
【0061】
また、第1の実施形態に係る画像生成装置1において、検知部10は、複数の電極102と複数の磁気センサ103とが同一面(面A−A’(
図3))に配される態様としている。これにより、各電極102間に流れる交流電流に基づいて生じる磁界を高い強度で取得することができ、これに基づいて生成される断層画像の精度を向上させることができる。ただし、他の実施形態に係る画像生成装置1においてこの態様に限定されず、例えば、複数の電極102と複数の磁気センサ103とがそれぞれ異なる面に配されているような態様であってもよい。また、当該他の実施形態に係る画像生成装置1は、複数の電極102が配列されたベース体(環状筐体)101と、磁気センサ103が配列されたベース体(筐体)と、を各々有する態様としてもよい。
【0062】
<第2の実施形態>
次に、第2の実施形態に係る画像生成装置1について説明する。
図9は、第2の実施形態に係る検知部の構造を示す図である。
第1の実施形態に係る画像生成装置1は、環状に形成された検知部10が直立する測定対象者Xを囲うとともに、駆動部11の動作に応じて鉛直方向に移動しながら測定対象者Xの複数の断層画像を取得する態様として説明した。
本実施形態に係る画像生成装置1の検知部10は、
図9に示すように、全体的に鉛直方向に延伸して筒状に形成される。そして、筒状に形成された検知部10の内部に測定対象者Xの全身が収まる態様となっている。
【0063】
また、本実施形態に係る検知部10は、
図9に示すように、鉛直方向に沿って複数の電極102と複数の磁気センサ103とが配列されている。面A1−A1’、A2−A2’、・・・ごとの複数の電極102及び複数の磁気センサ103の配列のされ方は、第1の実施形態と同様である。このようにすることで、画像生成装置1は、測定対象者Xの複数箇所の断層画像を同時に取得することができる。
【0064】
具体的には、本実施形態に係る交流電流入力部201は、面A1−A1’に属する電極102と、面A2−A2’に属する電極102と、・・・の全てに並列に交流電流を流すことができる。
また、本実施形態に係る磁界情報取得部202は、面A1−A1’に属する磁気センサ103と、面A2−A2’に属する磁気センサ103と、・・・の全てから同時に磁界強度情報を取得可能とする。つまり、磁界情報取得部202は、測定対象者Xの一の断層面を囲う複数の位置における磁界の強度と同時に、当該一の断層面とは異なる他の断層面を囲う複数の位置における磁界の強度を取得可能とする。
これにより、本実施形態に係る画像生成装置1は、面A1−A1’、A2−A2’、・・・のそれぞれに属する磁気センサ103を介して取得される各磁界強度情報に基づいて、面A1−A1’、面A2−A2’、・・・の各々に属する測定対象者Xの断層面Sについての断層画像を同時に取得することができる。
【0065】
このようにすることで、第1の実施形態に係る画像生成装置1において検知部10を移動させるための手段(駆動部11)を排することができるとともに、複数の断層画像を取得する際に要する時間を短縮することができる。つまり、第1の実施形態においては、検知部10の移動中に測定対象者Xが動くと、取得した複数の断層画像間にズレが生じるが、第2の実施形態のように、複数の断層画像を同時に取得できる態様とすることで、複数の断層画像間のズレを軽減させることができ、より精度の高い診断を実施することができる。
【0066】
なお、上述の画像生成装置1の説明に用いた「同時に」という表現は、必ずしも「全く同時刻に」という意味に限定されるものではなく、取得される複数の断層画像間のズレが許容される範囲内で時刻上の差異を有していてもよい。
【0067】
図10は、第2の実施形態の変形例に係る画像生成部の機能について説明する図である。
上述の第1の実施形態及び第2の実施形態に係る画像生成装置1は、同一面に存在する複数の電極102と複数の磁気センサ103とによって取得される磁界強度情報に基づいて、当該同一面に属する測定対象者Xの断層面を取得するものとして説明した。
しかし、この場合、
図10に示すように、電極102間に生じる交流電流は、実際には、当該電極102が属する面A1−A1’を流れる交流電流成分I1の他、他の面A2−A2’や面A3−A3’を流れる交流電流成分I2、I3を含んでいる。つまり、電極102間に流れる交流電流は、実際には、鉛直方向へ広がった成分(交流電流I2、I3等)を有している。そうすると、面A1−A1’に属する磁気センサ103が検知した磁界強度に基づいて生成された断層画像は、面A1−A1’に属する断層面についての情報のみならず、他の断層面(面A2−A2’、A3−A3’等)についての情報が混じったものとなる。したがって、鉛直方向への広がる交流電流成分により、生成される断層画像は、他の断層面の情報を含んでぼやけたものとなってしまう。
【0068】
そこで、本実施形態の変形例に係る磁界情報取得部202は、電極102間に流す交流電流に基づいて生じた磁界を、当該電極102と同一面に属する磁気センサ103の他、隣接する他の面に属する磁気センサ103を介して取得する。
例えば、
図10に示すように、磁界情報取得部202は、面A1−A1’に属する電極102間に流す交流電流に基づいて生じた磁界を、当該面A1−A1’に属する磁気センサ103とともに、面A2−A2’、A3−A3’に属する磁気センサ103を介して取得する。
【0069】
そして、当該変形例に係る画像生成部203は、まず、面A1−A1’に属する磁気センサ103を介して取得された磁界強度情報に基づいて第1の中間画像を生成する。ここで、第1の中間画像は、主に交流電流成分I1に基づいて取得された断層画像であるが、他の断層面を流れる交流電流成分I2、I3等を含むためにぼやけた画像となる。
【0070】
さらに、画像生成部203は、面A2−A2’、A3−A3’に属する磁気センサ103を介して取得された磁界強度情報に基づいて第2、第3の中間画像を生成する。ここで、当該第2、第3の中間画像は、主に、それぞれ鉛直方向に広がった電流成分I2、I3に基づいて取得された断層画像である。
【0071】
本実施形態に係る画像生成部203は、第1の中間画像から第2、第3の中間画像の差分を取得する処理を行う。具体的には、例えば、第1の中間画像の各画素の“明度”から、第2、第3の中間画像において対応する各画素の“明度”を差し引く処理を行う。画像生成部203は、このようにして算出された最終画像を、面A1−A1’に属する測定対象者Xの断層面を表した断層画像として取得する。
【0072】
以上のように、第2の実施形態の変形例に係る画像生成装置1は、一の断層面を囲う複数の位置における磁界に基づいて生成した第1の中間画像と、他の断層面を囲う複数の位置における磁界に基づいて生成した第2、第3・・・の中間画像と、を組み合わせて、当該一の断層面が表された断層画像を生成するものとしてもよい。
このようにすることで、所望する断層面以外の断層面を流れる交流電流成分(交流電流成分I2、I3等)に基づいて取得される情報を除外することができるので、より精度の高い断層画像を取得することができる。
【0073】
なお、上記変形例に係る画像生成装置1は、筒状の検知部10(
図9参照)を備えた第2の実施形態を基本として例示したが、第1の実施形態、すなわち環状の検知部10(
図3参照)を有する画像生成装置1に適用してもよい。この場合、当該環状の検知部10には、少なくとも磁気センサ103が鉛直方向に複数配列されているものとする。
【0074】
また、上記変形例に係る画像生成装置1は、第1〜第3の中間画像を生成した後に、各々の画素ごとの“明度”を差し引いて断層画像を差し引く処理をするものとして説明したが、ここで説明した第1〜第3の中間画像は実際に生成され、表示されるものでなくともよい。すなわち、第1〜第3の中間画像の画素ごとの明度に対応する基の観測値である磁界強度を予め差し引いた上で、一の断層画像を生成するものとしてもよい。
【0075】
また、上述の各実施形態に係る画像生成装置1は、予め定められた一定の周波数(数kHz〜数MHz)の交流電流により断層画像を取得するものとして説明したが、他の実施形態においてはこの態様に限定されない。例えば、他の実施形態に係る画像生成装置1は、異なる複数の周波数の交流電流に基づいて断層画像を取得するものとしてもよい。
具体的には、当該他の実施形態に係る交流電流入力部201は、交流駆動回路201Aに対し、交流電流の周波数を指定する周波数指定信号を出力する。そして、交流駆動回路201Aは、受け付けた周波数指定信号に応じた周波数の交流電流を出力する。
【0076】
また、この場合、画像生成装置1は、交流駆動回路201Aから出力された交流電流の周波数ごとに断層画像を生成し、得られた複数の断層画像を構成する画素ごとの周波数特性に基づいて断層面の導電率分布を取得する。
例えば、交流電流入力部201は、まず、
図6に示す処理フローの開始時に一つの周波数を選択する。次いで、CPU200は、ステップS10〜ステップS14の処理を実施して断層画像を取得する。その後、交流電流入力部201が交流電流を他の周波数に切り替える。このように、CPU200は、ステップS10〜ステップS14の処理を交流電流の周波数を切り替えながら繰り返し実施する。画像生成部203は、各周波数によって生じた磁界の強度に基づいて、異なる周波数ごとに複数の断層画像を生成する。
【0077】
また、この場合、CPU200は、さらに、異なる周波数ごとに生成された複数の断層画像に基づいて測定対象者Xの断層面の導電率分布を算出する導電率演算部としての機能を発揮する。
具体的には、当該導電率演算部は、周波数ごとに生成された複数の断層画像のうち同一の画素に対応する箇所の導電率を抽出し、当該画素ごとに、導電率の周波数特性を取得する。導電率演算部は、導電率の周波数特性に基づいて、当該画素に対応する導電率の実数成分(レジスタンス、コンダクタンス)及び虚数成分(リアクタンス、サセプタンス)を算出する。このようにすることで、断層面における導電率分布を実数成分及び虚数成分に分けて把握することができるので、より詳細な断層画像を取得することができる。
【0078】
図11は、生体によるインピーダンス変化の特性を説明する図である。
図11(a)のように、離間された2電極間に非接触で生体(本実験では“拳”)を挿入した場合を考える。
図11(b)に示すグラフは、2電極間に生体が存在する場合と、生体が存在しない場合における2電極間のインピーダンスを比較したものである。
図11(b)によれば、計測に用いる周波数が数kHz〜数MHz程度の場合、生体の有無の差異が明確に表れる。したがって、生体の断層画像の取得に用いる周波数は、数kHz〜数MHzとするのが好ましい。また、周波数1000kHz未満の領域では、インピーダンスそのものが非常に高くなり、生体に流れる電流が微弱となるため、高精度な計測は困難となる場合がある。したがって、生体の断層画像生成に用いる周波数は、1MHz前後とするのがより好ましい。この場合、磁気センサ103として「光ポンピング原子磁気センサ」を用いることで、当該1MHz前後の磁界強度を高精度で検出することができる。
【0079】
<その他の変形例について>
上述の各実施形態に係る画像生成装置1は、例えば、
図4に示すように、環状に形成された検知部10の内側に断層画像を取得する測定対象者Xが配されているが、他の実施形態に係る画像生成装置1においてはこの態様に限定されない。
例えば、第1の実施形態の変形例として、磁界情報取得部202は、測定対象者Xの特定の断層面に周囲を囲われる複数の位置における磁界の強度を取得するものとしてもよい。より具体的に説明すると、当該変形例に係る検知部10は、例えば、
図4に示す態様のまま小型化されて、内視鏡やカテーテル等の先端に取り付けられる。そして、検知部10は、内視鏡と共に測定対象者Xの体内に挿入される。この場合、画像生成装置1は、挿入された体内における特定の断層面に周囲を囲われた検知部10を介して、その断層画像を取得する。
ここで例えば、
図5において、隣接する電極102間を流れる交流電流のうちベース体101の内側を巡るもののみを交流電流I1〜I3として表記しているが、実際には、ベース体101の外側を巡る交流電流も存在する。したがって、電極102間を流れる交流電流は、ベース体101の外側に配される断層面の導電率分布に応じても変化する。したがって、画像生成部203が磁気センサ103の各々から検出される磁界強度を用いて画像の再構成処理を実施することで、検知部10の周囲を囲う断層面の断層画像を取得することができる。
以上のような変形例に係る画像生成装置1によれば、測定対象者Xの体内から非接触に交流電流の通電及び磁界強度の計測を行うので、測定対象者Xの体内における局所的な断層面を精密に評価することができる。
【0080】
次に、第1の実施形態及び上述の変形例をより簡素化した導電率取得装置について説明する。
図12は、第1の実施形態の変形例に係る導電率取得装置の機能を説明する図である。
本変形例に係る導電率取得装置1Aは、
図12(a)、(b)に示すような検知部10を備えている。一例において、具体的には、
図12(a)、(b)に示すように、検知部10は、ベース体(筒状筐体)101Aの両端付近に取り付けられた一対の電極102と、当該一対の電極102の間に配された磁気センサ103と、を備えている。
一対の電極102は、それぞれ、ベース体101Aの周方向の全周に沿って環状に形成されている。このように形成されることで、一対の電極102間を流れる交流電流Iは、ベース体101Aの遠心方向の全方位において、空中に円弧状に広がる経路を巡る(
図12(a)、(b)を参照)。
一対の電極102は、交流電流入力部201及び交流駆動回路201A(
図12には図示せず)に接続されている。また、磁気センサ103は、磁界情報取得部202(
図12には図示せず)に接続されている。なお、交流電流入力部201、交流駆動回路201A、磁界情報取得部202については、上述の各実施形態と同一の機能のため説明を省略する。ただし、交流電流入力部201は、交流電流の周波数を指定する周波数指定信号を出力する機能を有するのが好ましい。
また、本変形例に係る導電率取得装置1Aは、画像生成部203の代わりに、磁界情報取得部202が取得した磁界の強度に基づいて、磁気センサ103が配された周辺における測定対象者Xの導電率を取得する導電率取得部(図示せず)を備えている。
【0081】
図12(a)、(b)は、ベース体101Aが測定対象者Xの体内X’に挿入される例を示している。ここで、例として、
図12(a)は、検知部10を囲う体内X’の導電率が高い場合を、
図12(b)は、検知部10を囲う体内X’の導電率が低い場合を示している。
体内X’の導電率が高い場合、体内X’を流れようとする交流電流Iが増すため、一対の電極102間を流れる交流電流Iは、
図12(a)に示すように、ベース体101Aの延伸軸に対する半径方向に広がった経路を巡る。これにより、交流電流Iによって生じる磁界Hが全体的に磁気センサ103から遠ざかるため、磁気センサ103に検出される磁界強度は相対的に減少する。一方、体内X’の導電率が低い場合、体内X’を流れようとする交流電流Iが減少するため、一対の電極102間を流れる交流電流Iは、
図12(b)に示すように、ベース体101Aの延伸軸に対する半径方向に狭まった経路を巡る。これにより、交流電流Iによって生じる磁界Hが全体的に磁気センサ103に近づくため、磁気センサ103に検出される磁界強度は相対的に増加する。
このようにして、磁界情報取得部202は、体内X’の導電率に応じた磁界強度を取得する。なお、磁界情報取得部202は、交流電流入力部201の周波数制御に基づき、異なる周波数ごとの複数の磁界強度を検出してもよい。
【0082】
また、上記導電率取得部は、磁界情報取得部202に取得された磁界強度に基づいて、ベース体101Aの周辺の導電率を算出する。この場合、上記導電率取得部は、例えば、式(4)、式(5)及び予め規定した長さl及び断面積s等を用いて、取得した磁界強度に応じた導電率σを算出する。また、上記導電率取得部は、取得した磁界強度の周波数特性に基づいて、導電率σの実数成分及び虚数成分まで算出してもよい。
【0083】
従来、体内に人体内部を観察することを目的とした内視鏡等の医療機器が開発されている。このような医療機器は、本体に光学系を内蔵し、先端を体内に挿入することによって内部の映像を観察することができる。しかしながら、上記内視鏡等は、光学的観察によるものであるため、観察面において光学的な変化(すなわち見た目の変化)が現れない特徴を把握することが出来ない。
一方、本変形例に係る導電率取得装置1Aによれば、検知部10の周辺における体内X’の状態を、その箇所における導電率に基づいて評価する。このようにすることで、オペレータは、観察面の見た目に現れない症状であっても、その箇所における導電率の相違により把握することができる。例えば、ガン化した細胞が見た目に現れない箇所に存在していた場合であっても、本実施形態に係る導電率取得装置1Aによれば、ガン化した細胞と正常な細胞との導電率の相違により、当該ガン化した細胞を発見することができる。
また、本変形例に係る導電率取得装置1Aは、検知部10(電極102及び磁気センサ103)をいずれも体内の内壁面から離れた位置に配した状態で導電率を取得可能としているため、体内における導電率を容易に取得することができ、測定対象者の負担の軽減にも寄与する。
また、本変形例に係る検知部10は、一対の電極102と一つの磁気センサ103のみを有する構成としているため、上述の各実施形態に係る画像生成装置1と比較して検知部10の構成を簡素化となり、装置の小型化及び低価格化を促進させることができる。
【0084】
なお、本変形例に係る導電率取得装置1Aは、内視鏡やカテーテルの先端に取り付けられて、測定対象者Xの体内に挿入される態様(
図12(a)、(b))に限定されない。代替的に、導電率取得装置1Aは、検知部10を測定対象者Xの体表面付近に近接させて、その体表面付近の導電率を取得する態様であってもよい。電極102と磁気センサ103の少なくとも一部が体表面の近傍において体表面に対して非直接接触に配される。代替的に、電極102と磁気センサ103の少なくとも一部が、少なくとも一時的に、体表面に直接接触に配されることができる。
また、導電率取得装置1Aは、ベース体(筒状筐体)101Aの周方向の全周を巡るように(ベース体101Aの周方向に連続的に延在するように)環状に形成されるものに限定されない。代替的に、導電率取得装置1Aは、例えば、ベース体101Aの周方向のうち一部のみを巡るように(ベース体101Aの周方向に部分的に延在するように)形成されたものであってもよい。また、導電率取得装置1Aにおいて、電極102は環状に限定されない。代替的に、電極102が、板状などの他の形状に形成されていてもよい。この場合、2つの電極102の板面の向く方位は、ベース体101Aの延伸軸方向と垂直な方向、即ち、ベース体101Aの遠心方向の何れかの方位(かつ、互いに同一の方位)を向くように配される。そうすると、ベース体101Aの周方向のうち一部の範囲において特に強い交流電流が空中に放射される。このようにすることで、オペレータは、ベース体101Aの周方向の向きを所望に操作することで、ベース体101Aの周囲を囲う体内X’のうち所望する一部の領域のみの導電率分布を取得することができる。
同様に、導電率取得装置1Aは、電極102が配される付近にシールド電極やガード電極が取り付けられることで、交流電流の方向、密度等が調整されてもよい。
また、上述の各変形例においては、「測定対象物(測定対象者X)から離れた位置」とは、「測定対象者Xの体内において、その内壁面から離れた位置」、「測定対象者Xの体内において、その内壁面との間にギャップを有する位置」、「測定対象者Xの体内において、内表面に対して非直接接触に配された位置」、の意味を含むものとする。
【0085】
図1及び
図2等に示す実施形態では、画像生成装置1は、複数の電極102と、複数の磁気センサ(複数のセンサセル、複数のセンサヘッド)103と、電極102を介して供給された交流電流で生じた磁界の強度に基づいて測定対象物の断層画像を提供する本体部(コントローラ)20とを備え、コントローラ20は、電極及び磁気センサが測定対象物の表面に対して実質的に非直接接触に配された状態で磁気センサ103を介して磁界の強度を取得するように構成される。他の実施形態において、本体部20は、複数の電極102及び複数の磁気センサ(複数のセンサセル、複数のセンサヘッド)103の少なくとも一部が測定対象物の表面に対して実質的に接触した状態で磁気センサ103を介して磁界の強度を取得するように構成されることができる。いずれの形態においても、電極102及び磁気センサの配置の高い柔軟性、高い操作性、及び構成の簡素化等が実現可能である。したがって、画像生成装置1は、オペレータや測定対象者の負担の軽減、装置コストや設置スペースの削減等の利点を有する。
【0086】
図13(a)及び(b)に示すように、一実施形態において、検知部10は、変形自在に構成されたベース体101を備えることができる。一例において、ベース体101の動きに応じて複数の電極及び複数の磁気センサ(
図3等参照)の少なくとも一部が動くように、複数の電極及び複数の磁気センサ(複数のセンサセル、複数のセンサヘッド)の少なくとも一部がベース体101に設けられる。ベース体101は、少なくとも1つの節と、少なくとも2つの梁を有する構成にできる。あるいは、ベース体101は、適度な柔軟性と適度な剛性とを有するフレキシブル構造を有する構成にできる。あるいは、ベース体101は、少なくとも1つの開放区間を有する構成及び/又は組立・分解可能な構成にできる。ベース体101の変形に応じて、電極及び磁気センサの配置を調整可能である。電極及び磁気センサの配置の調整は、測定精度の向上に有利である。
【0087】
一実施形態において、複数の磁気センサは、少なくとも1つが測定対象物に対する距離を独立して変化自在であるように、配されることができる。例えば、1つの磁気センサ(センサセル、センサヘッド)における測定対象物に対する距離(第1距離)を一定に保った状態で、別の少なくとも1つにおける測定対象物に対する距離(第2距離)を変化させることができる。その結果、第1距離と第2距離とを概ね同値にすることができる。複数の磁気センサの間で、体表面に対する距離が、互いに同程度であることは、測定精度の向上に有利である。
【0088】
図14に示すように、一実施形態において、画像生成装置1は、複数のセンサセルの少なくとも1つの、(a)基準点に対する位置(原点に対する座標)、(b)測定対象物に対する距離、及び(c)測定対象物に対する相対的な位置関係、の少なくとも1つを検出可能な位置情報センサ106を備えることができる。あるいは、位置情報センサ106は、検知部10の少なくとも一部に対する測定対象物の位置、姿勢、及び輪郭(表面形状)の少なくとも一部を検出可能に構成できる。あるいは、位置情報センサ106は、検知部10と測定対象物との間の相対的な位置関係を検出可能に構成できる。本体部(コントローラ)20において、位置情報取得部205は、位置情報センサ106からの出力信号に基づいて、複数の磁気センサ(複数のセンサセル、複数のセンサヘッド)の少なくとも1つの、(a)基準点に対する位置(原点に対する座標)、(b)測定対象物に対する距離、及び(c)測定対象物に対する相対的な位置関係、の少なくとも1つを取得することができる。この位置情報に基づき、電極及び磁気センサの少なくとも1つに関する制御が調整可能である。例えば、本体部20は、位置情報センサ106からの出力信号に基づいて、交流電流の供給制御を調整することができる。あるいは、本体部20は、位置情報センサ106からの出力信号に基づいて、磁気センサからの出力信号に基づく演算制御を補正することができる。本体部20は、位置情報センサ106からの出力と、複数の磁気センサからの出力とに基づいて、磁界の強度を算出することができる。こうした制御は、測定精度の向上に有利である。
【0089】
また、上述の各実施形態におけるCPU200の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより工程を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムが送信された場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリ(RAM)のように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。
【0090】
また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良い。さらに、前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であっても良い。
【0091】
以上、本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものとする。