(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
上記制御手段は、上記レーザ出射光が上記クレーンバケットに照射されたときには、このときの測定距離を、算出根拠から除くことを特徴とする請求項1記載のごみ搬送装置。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明に係るごみ搬送装置について、図面を参照しながら詳細に説明する。なお、
図1は、本発明に係るごみ搬送装置の構成を模式的に示す平面図であり、
図2は、上記ごみ搬送装置の構成を模式的に示す正面図である。
【0022】
この実施の形態に係るごみ搬送装置1は、
図1及び
図2に示すように、ごみ処理施設(ごみ焼却プラント)のごみピット101上に設置されるクレーン本体2を備えている。上記ごみピット101は、図示しないごみ収集車により収集されたごみが一時的に投入される窪み(箱)である。また、上記ごみピット101内には、ごみが投入されることにより、ごみ山102が形成される。また、上記クレーン本体2は、ごみピット101内のごみを図示しない焼却炉へ搬送するものである。なお、上記ごみピット101の近傍には、図示しない投入ホッパが配置され、この投入ホッパは図示しない焼却炉に連通している。
【0023】
上記ごみピット101においては、上記クレーン本体2により、積替え、攪拌及び投入作業が行われる。積替え作業は、図示しない搬入扉側に搬入されるごみを、順次、上記投入ホッパ側(近傍)に積替え、次々に搬入されるごみに対して、空きスペースを作る作業である。また、上記攪拌作業は、ごみ中の水分蒸発や破袋等、ごみ質の改善のために行われる作業である。また、ごみの投入作業は、上記焼却炉に連通した投入ホッパへごみを投入する作業である。積替え及び攪拌作業後のごみは、ごみ山の高い所から順次、焼却炉に投入される。
【0024】
そして、上記クレーン本体2は、ごみピット101上に水平に直線移動可能に設置されたクレーンガーダ3を有している。このクレーンガーダ3は、上記ごみピット101の両側上部に設置された左右一対のレール4,4により、これらレール4,4に沿う水平方向(X方向)に移動操作可能とされている。また、上記クレーンガーダ3は、図示しないモータの駆動力によって移動操作される。クレーンガーダ3は、レール4,4との相対移動により回転される図示しない車輪角度検出装置(ロータリーエンコーダ)を備えており、X方向の位置情報を出力できるようになっている。
【0025】
図3は、ごみ搬送装置のレーザ測距計の取付構造を示す正面図であり、
図4は、ごみ搬送装置のレーザ測距計の構造を示す正面図であり、
図5は、ごみ搬送装置のレーザ測距計の構造を示す側面図である。上記クレーンガーダ3には、
図3〜
図5に示すように、レーザ測距計5が取付けられている。このレーザ測距計5は、例えば、クレーンガーダ3の手摺り3cに取付けられている。また、上記レーザ測距計5は、出射孔5aより測距のためのレーザ光を出射し、このレーザ光の反射光を検出することによって、レーザ出射方向にある物体までの距離を測定するものである。また、このレーザ測距計5は、上記レーザ光の出射角度を、上記クレーンガーダ3の移動可能方向に直交する方向(θ方向)に変える(スキャンする)ことができるように構成されているとともに、レーザ出射角度θの情報及び測定距離の情報を出力できるように構成されている。
【0026】
なお、上記レーザ測距計5は、上記クレーンガーダ3の下面近傍の中央部近傍に取付けることが好ましい。このように、クレーンガーダ3の下面近傍の中央部に取付けることにより、ごみピット101内の全範囲を容易にスキャンできるからである。
【0027】
そして、上記クレーンガーダ3上には、
図1及び
図2に示すように、トロリ6が設置されている。このトロリ6は、クレーンガーダ3上において、該クレーンガーダ3の移動可能方向(X方向)に直交する水平方向(Y方向)に直線移動可能とされている。なお、このトロリ6は、図示しないモータの駆動力によって移動される。また、このトロリ6は、上記クレーンガーダ3との相対移動により回転される車輪角度検出装置(ロータリーエンコーダ)を備えており、Y方向の位置情報を出力できるようになっている。また、上記トロリ6は、
図2に示すように、複数のワイヤロープ(符号は省略する。)によって、クレーンバケット7を吊り下げた状態で支持されている。そして、上記クレーンバケット7は、図示しないモータの駆動力によって、上下方向(Z方向)に移動可能(昇降自在)とされている。また、このクレーンバケット7は、先端側が開閉可能とされ、開状態から閉状態とすることにより、上記ごみピット101内のごみを把持するものであり、クレーンガーダ3とともにX方向に移動され、該クレーンガーダ3に対してY方向に移動され、該クレーンガーダ3に対してZ方向に昇降されることができ、3次元方向の全ての方向に移動可能で、把持したごみを上記焼却炉(投入ホッパ)に搬送(投入)することができる。
【0028】
そして、上記ごみ搬送装置1において、作業者は、制御手段となるコントローラを介して、上記クレーンガーダ3、トロリ6及びクレーンバケット7をそれぞれ制御して、上記ごみピット101内のごみをごみ焼却炉に搬送することができるように構成されている。
【0029】
図6は、上記ごみ搬送装置の構成を示すブロック図である。このごみ搬送装置1においては、
図6に示すように、上記コントローラ8には、上記クレーンガーダ3が接続されている。このクレーンガーダ3には、車輪駆動装置3a及び車輪角度検出装置(ロータリーエンコーダ)3bが設けられている。上記コントローラ8は、上記クレーンガーダ3の位置(X方向)を制御するとともに、該コントローラ8は、クレーンガーダ3(の車輪角度検出装置3b)より、上記クレーンガーダ3の位置情報(X方向)を取得する。
【0030】
また、上記コントローラ8には、上記レーザ測距計5が接続されており、該コントローラ8は、このレーザ測距計5からのレーザ出射角度(θ方向)を制御する。また、上記コントローラ8は、上記レーザ測距計5より、該レーザ測距計5からのレーザ出射角度(θ方向)の情報及びレーザ測距計5による測定距離の情報を取得する。さらに、上記コントローラ8には、上記トロリ6が接続されており、該コントローラ8は、このトロリ6の位置(Y方向)を制御する。そして、このトロリ6には、計量装置6a、車輪駆動装置6b及びその車輪角度検出装置6c、上記クレーンバケット7を吊るワイヤドラム駆動装置6d及びその車輪角度検出装置6eが設けられている。上記コントローラ8は、上記トロリ6(の車輪角度検出装置6c)より、該トロリ6の位置情報(Y方向)を取得する。
【0031】
また、上記コントローラ8には、上記クレーンバケット7が接続されており、該コントローラ8は、このクレーンバケット7の高さ(Z方向)及び開閉(把持及び解放)を制御する。また、上記コントローラ8は、上記クレーンバケット7(の車輪角度検出装置6e)より、該クレーンバケット7の高さ情報(Z方向)及び開閉情報を取得する。そして、上記コントローラ8には、操作部9及び表示部10が接続されている。作業者は、操作部9を操作することにより、このコントローラ8を介して、上記クレーン本体2を制御することができる。また、上記コントローラ8は、記憶装置(メモリ)8aを備え、この記憶装置8aに予め記憶されたプログラムにしたがって、上記クレーン本体2を自動制御することができる。なお、上記表示部10には、上記クレーン本体2からの各情報及びコントローラ8の動作状態、自動制御の状態などが表示される。
【0032】
また、上記コントローラ8は、各取得値に基づいて、上記ごみピット101内のごみ山102の表面の高さを算出する。また、上記コントローラ8は、上記クレーンガーダ3の位置情報(X方向)を、該クレーンガーダ3の移動に連動する車輪角度検出装置(ロータリーエンコーダ)3bから取込む。上記コントローラ8は、上記レーザ測距計5からのレーザ出射角度(θ方向)の情報を、該レーザ測距計5から取込む。また、上記コントローラ8は、これら位置情報(X方向)、レーザ出射角度(θ方向)の情報及び測定距離の情報から、上記ごみピット101内の特定位置のごみ山102の高さを確定する。このとき、
図2に示すように、上記レーザ測距計5からごみ山102の表面(レーザ反射対象物)までの測定距離をrとする。また、水平方向をθ=0、ごみピット101の端(
図2中の差端)をY=0(Y軸原点)、レーザ測距計5の直下(鉛直下方)をY=Lとすると、〔L−r・cosθ〕により、Y軸原点から測距したごみ山102の表面(対象物)までのY方向距離が算出できる。
【0033】
また、〔r・sinθ〕により、測距したごみ山表面の位置から、上記レーザ測距計5の高さ位置までの鉛直距離(高さ)が算出される。上記レーザ測距計5からごみピット101の底部までの距離をRとすると、〔R−r・sinθ〕により、ごみピット101の底部から測距したごみ山102の表面(対象物)までの高さが算出できる。また、上記コントローラ8は、測定範囲内に亘ってクレーンガーダ3を移動させ、レーザ測距計5からのレーザ出射角度を変化させて、測定範囲内のごみ山102の表面をレーザ出射光によりスキャンし、ごみ山102の表面の高さを算出する。すなわち、上記コントローラ8は、X、Y、Zの3次元において、ごみピット101内の任意の位置におけるごみ山102の高さを非接触で算出する。そして、上記コントローラ8は、ごみピット101内の複数の位置におけるごみ山102の高さを算出することにより、ごみ山102の形状を非接触で特定する。
【0034】
図7は、上記ごみ搬送装置における区画を示す平面図であり、
図8は、上記ごみ搬送装置における各区画の高さを示す斜視図である。上記コントローラ8は、
図7に示すように、測定範囲内のごみ山102の表面を複数の区画(例えば、200mm×200mm〜600mm×600mm)に分割し、
図8に示すように、各区画内の測定距離の中央値を、その区画の代表値として扱うようにしてもよい。このようにすることにより、データ圧縮ができ、測定精度を向上することができる。
【0035】
また、上記コントローラ8は、測定範囲内のごみ山102の表面を複数の区画に分割し、各区画内の2点の測定距離に基づいて、2点間の傾斜角度を算出することができる。この場合には、各区画内において最も離れた2点の測定距離に基づくことが好ましい。最も離れた2点の測定距離に基づくことにより、傾斜角度の算出精度を向上することができる。さらに、上記コントローラ8は、近傍の測定距離に対して所定の閾値以上の差を有する測定距離を、算出根拠から除くことが好ましい。換言すれば、上記閾値を上記記憶装置8aに予め記憶させ、測定距離とこの閾値とを比較し、所定の閾値以上の差を有する測定距離を、算出根拠から除くことが好ましい。これは、区画内の測定距離集合には、浮遊する埃(微小なごみ等)を検出した外れ値が含まれている可能性があり、近傍の測定距離に対して差が大きい測定距離は、外れ値である可能性が高い。この外れ値検定により当該測定距離を除くことにより、測定精度を向上させることができる。
図8(a)は、このような外れ値が代表値となってしまった状態を示している。
【0036】
さらに、上記コントローラ8は、上記レーザ測距計5からのレーザ出射光がクレーンバケット7に照射されたときには、このときの測定距離を、算出根拠から除くことが好ましい。上記クレーンバケット7の位置は、該クレーンバケット7からの位置情報から特定することができ、該クレーンバケット7の大きさ(体積情報)も予めわかっているので、これらに該当する方向の測定距離を除くことができる。
図8(b)は、クレーンバケット7を検出してしまった測定距離が代表値となってしまった状態を示している。
【0037】
また、ごみピット101の内壁に相当する座標は、ヒストリシス(不感帯)としておき、測距を行わないことが好ましい。ごみピット101の内壁の座標の測定距離を算出根拠から除くようにしてもよい。
【0038】
図9は、上記ごみ搬送装置1の動作を示すフローチャートである。このごみ搬送装置1において、
図9に示すように、ステップst1で動作を開始すると、ステップst2で、コントローラ8は、測定範囲内に亘ってクレーンガーダ3をX方向に移動させる。次のステップst3では、上記コントローラ8は、レーザ測距計5からのレーザ出射角度θを変化させる。このようにして、コントローラ8は、測定範囲内のごみ山102の表面をレーザ出射光によりスキャンする。
【0039】
次のステップst4では、上記コントローラ8は、X方向位置及び出射角度θの情報、測定距離情報を取得する。次のステップst5では、上記コントローラ8は、除去すべき測定距離情報を除去する。次のステップst6では、上記コントローラ8は、〔L−r・cosθ〕及び〔R−r・sinθ〕により、ごみ山102の表面の高さを算出する。この算出は、区画ごとに行ってもよい。なお、この区画分けについては、以下の
図10及び
図11により説明する。次のステップst7では、上記コントローラ8は、上記ごみピット101内の複数の位置における該ごみ山102の高さに基づいて、該ごみ山102の形状を特定し、ステップst8でリターンする。
【0040】
図10は、ごみ搬送装置における区画分けを示すフローチャートである。上記ごみピット101内を区画分けする場合には、
図10に示すように、上記コントローラ8は、ステップst11において、クレーンバケット7の体積を登録し、ごみピット101内を任意サイズで均等分割し、区画(矩形領域)を作成する。各区画には、一定数の高さデータ(レベルデータ)を保持できる。一定数を超えた場合には、古い高さデータから順に上書きされる。次に、上記コントローラ8は、ステップst12において、上記クレーンガーダ3の位置情報をX軸座標に変換し、トロリ6の位置情報をY軸座標に変換し、上記クレーンバケット7の位置情報をZ軸座標に変換する。また、上記クレーンガーダ3の位置情報はクレーンガーダ3の車輪の回転角を検出して算出し、トロリ6の位置情報はトロリ6の車輪の回転角を検出して算出し、クレーンバケット7の位置情報はワイヤドラムの回転角を検出して算出する。
【0041】
次に、上記コントローラ8は、ステップst13において、クレーンバケット7の位置と体積より検出対象外領域をXYZ座標内に作成する。次に、上記コントローラ8は、ステップst14において、上記レーザ測距計5からの計測距離データをYZ座標に変換する。このX座標はクレーンガーダ3の位置情報を利用する。そして、上記コントローラ8は、高さデータの検出点をXYZ座標内に作成する。次に、上記コントローラ8は、ステップst15において、高さデータの検出点が検出対象外領域であるかを判別し、検出対象外領域であればステップst12に戻り、検出対象外領域でなければステップst16に進む。これは、上記クレーンバケット7が計測範囲に進入した場合のデータ除去(フィルタリング)処理(測定距離を、算出根拠から除く処理)である。
【0042】
次に、上記コントローラ8は、ステップst16において、高さデータの検出点のXY座標より該当する区画を算出する。次に、上記コントローラ8は、ステップst17において、区画の高さデータを更新する。次に、上記コントローラ8は、ステップst18において、外れ値検定により所定以上の偏差をもつ値を除いて代表値を算出する。浮遊ゴミ等、異常値の除去(フィルタリング)処理である。代表値の算出には、平均値、中央値、最大値などを利用できる。
【0043】
図11は、ごみ搬送装置における区画の代表値を示すフローチャートである。このごみ搬送装置においては、クレーン本体2を移動させることにより、移動範囲の番地ごとの高さデータを非接触で更新できる。クレーン本体2を定期的にごみピット101の全域を稼動させることにより、正確な「ピットレベルマップ」を作成することができる。すなわち、上記コントローラ8は、
図11に示すように、ステップst21において、ごみピット101内の番地と区画の対応表を登録する。
【0044】
次に、上記コントローラ8は、ステップst22において、番地に含まれる各区画の代表値すべてについて高さデータを算出する。代表値の算出には、平均値、中央値、最大値などを利用できる。各区画の代表値すべてに基づいて分散を求めることにより、番地への着陸難度(ごみの掴み易さ)が判断できる。
【0045】
図12は、ごみ搬送装置における積替え作業を示すフローチャートである。積替え作業においては、上記コントローラ8は、
図12に示すように、ステップst31において、ごみピット101内で高さが最も高い番地のごみを掴む。なお、外的要因によって、番地の高さ情報が計測後に異なるおそれがある。ごみを移送する径路において、ごみピット101内の高さ情報が不正確である場合、堆積物を避けるためのクレーンバケット7の上昇距離が伸びることになる。このごみ搬送装置においては、上記レーザ測距計5により非接触で計測すれば分かるので、稼働率低下がない。
【0046】
次に、上記コントローラ8は、ステップst32において、ごみピット101内で高さが最も低い番地へ、ごみを積替える。このごみ搬送装置においては、ごみ積替え後の番地に高さは、積替え動作後にレーザ測距計5により非接触で計測すれば分かるので、稼働率低下がない。