(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記減光フィルタは、N(Nは2以上の整数)枚の減光フィルタであって、N−1枚でレーザ製品安全規格であるIEC60825のクラス1に適合可能な減光率を有する、請求項1又は2に記載の画像中継装置。
前記画像光は、R、G、及びBの3色のレーザ光で構成され、前記減光フィルタは、前記Bのレーザ光を0.25μW以上11.36μW以下に減光させる、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の画像中継装置。
前記第2光学部材の視野角が第1視野角よりも広い第2視野角である場合には、前記減光フィルタの光透過率は、前記第2光学部材の視野角が前記第1視野角の場合の第1光透過率よりも高い第2光透過率に設定される、請求項1乃至11のいずれか一項に記載の画像中継装置。
前記第1光学部材と前記第2光学部材との間で前記各光線が収束する収束位置に設けられ、前記各光線を透過し、所定の画像が描かれた透明部材を装着可能な、請求項1乃至13のいずれか一項に記載の画像中継装置。
前記第2光学部材の前記第1視野角が40度の場合、前記減光フィルタは前記画像光を0.639μWまで減光し、前記第2光学部材の前記第2視野角が60度の場合、前記減光フィルタは前記画像光を1.34μWまで減光する、請求項12に記載の画像中継装置。
前記画像光は、R、G、及びBの3色のレーザ光で構成され、前記減光フィルタは、N(Nは2以上の整数)枚の減光フィルタであって、N−1枚でレーザ製品安全規格であるIEC60825のクラス1に適合可能な減光率を有し、前記Bのレーザ光を0.25μW以上11.36μW以下に減光させる、請求項17に記載の画像投影システム。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の画像中継装置を適用した実施の形態について説明する。
【0015】
<実施の形態1>
図1Aは、実施の形態1の画像中継装置100の使用例を示す図である。スマートフォン50は、例えば画像を走査して投影するプロジェクタ機能を備えたスマートフォンであり、投影装置の一例である。このスマートフォン50から画像が投影される部位に画像中継装置100を設置する。この画像中継装置100により、投影画像をマックスウエル視によって使用者の網膜へ投影する。
【0016】
図1Bは画像中継装置100を示す図である。画像中継装置100は、一例として、レーザ照射部60を含むスマートフォン50に取り付けられている。以下では
図1A及び
図1Bに加えて
図2乃至
図7を用いて説明する。また、以下ではXYZ直交座標系を用いて説明する。
【0017】
図2は、画像中継装置100を示す側面図である。
図3は、レーザ照射部60を示す図である。
図4は、
図1のA−A矢視断面を示す図である。
図5は、
図1のB−B矢視断面を示す図である。
【0018】
図1B、
図2に示すように、スマートフォン50は、筐体51、ディスプレイ52、ホームボタン53、及びレーザ照射部60を含む。筐体51は、スマートフォン50の外表面のうちディスプレイ52以外の部分に存在する。ディスプレイ52は、XY平面に平行な+Z側の面にタッチパネルと重ね合わせた状態で設けられている。ホームボタン53は、ディスプレイ52の中の−Y方向側の端部でX方向の中央に設けられている。
【0019】
以下では、スマートフォン50の外表面のうち、ディスプレイ52がある+Z方向側でXY平面に平行な面と、ディスプレイ52とは反対側の−Z方向側でXY平面に平行な面とを除いた面をスマートフォン50の側面と称す。
【0020】
レーザ照射部60は、スマートフォン50の筐体51の+Y方向側の側面に設けられた開口部54(
図5参照)から+Y方向にレーザ光を出射する。レーザ照射部60が出射するレーザ光は、画像を投影可能なレーザ光である。
【0021】
レーザ照射部60は、プロジェクタ(ピコプロジェクタ)の照射部としてスマートフォン50に内蔵されており、スマートフォン50の+Y方向の側面をスクリーン等に向けた状態でレーザ照射部60からレーザ光を出射し、スクリーン等に画像を投影する。
【0022】
図3に示すように、レーザ照射部60は、光源61、調整部62、平面ミラー63、走査部64を有する。光源61は、赤色レーザ光、緑色レーザ光、及び青色レーザ光の可視レーザ光を出射する光源である。調整部62は、開口数(NA)及び/又はビーム径を調整する光学系の調整部である。走査部64は、例えば、2軸のMEMS(Micro Electro Mechanical Systems)ミラーである。平面ミラー63は全反射ミラーである。
【0023】
図3に示すように、レーザ照射部60において、光源61が出射したレーザ光は、調整部62において開口数(NA)及び/又はビーム径が調整され、平面ミラー63で反射され、走査部64よって2次元的に走査される。走査されたレーザ光は、開口部54からスマートフォン50の+Y方向に出射される。走査部64は、例えば、1秒間に60フレームの画像が投影されるような28kHz等の比較的高い周波数で振動する。
【0024】
図1B、
図2に示すように、スマートフォン50には、ディスプレイ52以外の部分を覆うケース80が取り付けられている。ケース80は、所謂ジャケットであり、一例として樹脂製である。ケース80の+Y方向側の端部には、ホルダ150が設けられている。
【0025】
図1Bに示すように、ケース80は、切欠部81、82、83を有する。切欠部81は、スマートフォン50の+Y方向側の側面に対応する部分に設けられている。切欠部81は、ケース80がスマートフォン50の+Y方向側の側面を覆わないように切り欠かれた部分であり、スマートフォン50の開口部54を覆わないようにした部分である。ホルダ150は、一例としてケース80と一体成型されており、切欠部81の縁から+Y方向に立ち上がるように延在している。
【0026】
図1Bに示すように、切欠部82は、ディスプレイ52の上を覆わないように切り欠かれた部分であり、切欠部81に連通している。また、切欠部83は、スマートフォン50の−Y方向側の側面に対応する部分に設けられており、切欠部82に連通している。
【0027】
図2、
図4に示すように、画像中継装置100は、レンズ110、120、レンズ鏡筒130、及び筐体140を含む。ケース80にはホルダ150が取り付けられている。レンズ110、120は、筐体140及びレンズ鏡筒130によって固定され、筐体140及びレンズ鏡筒130を介してホルダ150によって保持されている。換言すれば、ホルダ150は、レンズ110、120を固定する筐体140及びレンズ鏡筒130を保持している。ホルダ150は、保持部の一例である。
【0028】
なお、ここではホルダ150が画像中継装置100に含まれず、ケース80と一体になっている構成について説明するが、ホルダ150は、画像中継装置100に含まれる構成要素であってもよい。
【0029】
ホルダ150は、レンズ110、120、筐体140、レンズ鏡筒130がディスプレイ52と重ならないように、ディスプレイ52を避けた位置に配置されるように、レンズ110、120、筐体140、レンズ鏡筒130を保持する。視覚に異常がない者がディスプレイ52を見る際に、ディスプレイ52を遮らないようにするためである。
【0030】
図1B及び
図2に示すように、ホルダ150は、切欠部81の縁から+Y方向に立ち上がる基部151と、基部151の+Y方向の端部から+Z方向に延在する延在部152と、基部151に設けられたミラー153とを有する。
【0031】
基部151及び延在部152は樹脂製で一体的に成形されている。ミラー153は、基部151の+Z方向側において、XY平面をXZ平面側に
図2で見て反時計回りに45度回転させた平面に平行な反射面を有する全反射ミラーである。ミラー153は、スマートフォン50の開口部54(
図3参照)から+Y方向に出射されるレーザ光を+Z方向に反射させて、レンズ110に入射させる。
【0032】
なお、ここでは、ホルダ150がケース80と一体成型されていて、ホルダ150がケース80を介してスマートフォン50に固定される形態について説明するが、ホルダ150は、ケース80とは別体であってケース80に固定されてもよく、ケース80を介さずにスマートフォン50の筐体51等に固定されてもよい。
【0033】
レンズ110は、第1光学部材の一例であり、レンズ鏡筒130のうちの鏡筒部131に固定されている(特に
図4及び
図5参照)。レンズ110を固定する鏡筒部131は、筐体140に固定される。
【0034】
図5に示すように、レンズ110には、レーザ照射部60から出射され、ミラー153で反射された平行光である画像光21、22、23が入射する。画像光21、22、23は走査された画像光の異なる時間における光線である。レンズ110は、レーザ照射部60の走査部64で走査された各光線の光軸が平行でかつ各光線が収束光になるように変換する光学部材である。
【0035】
レンズ120は、第2光学部材の一例であり、レンズ鏡筒130のうちの鏡筒部132に固定されている(特に
図4及び
図5参照)。レンズ120の外周部には、円環状のネジ部141が取り付けられる。ネジ部141は、外周面にネジが切られた円環状の部材であり、内周側にレンズ120が嵌め込まれた状態で接着される。レンズ120は、ネジ部141によって筐体140にその位置を調整可能に設置される。
【0036】
レンズ120には、レンズ110から出射された画像光21、22、23の光線が入射する。レンズ120は、レンズ110から出射された各光線を平行光に変換し、瞳孔11の中心近傍で画像光21、22、23の各光線が収束するように屈折させて出射する。レンズ120は、
図4及び
図5に示すように、眼球にレーザ光を出射するレンズであり、接眼レンズである。レンズ鏡筒130は、鏡筒部131及び132を有する。鏡筒部131及び132は、レンズ110及び120をそれぞれ設置する円筒状の部材であり、
図5に示すように入れ子式に組み合わされて互いに固定される。
【0037】
レンズ110は、鏡筒部131の−Z方向側の端部において、鏡筒部131の内部に嵌め込まれた状態で固定される。レンズ110は、鏡筒部131に対して接着されてもよい。
【0038】
図4、
図5に示すように、ネジ部141は、外周面にネジが切られた円環状の部材であり、レンズ120の外周部に接着されている。ネジ部141は、レンズ220を固定するとともに、ネジ部141を回転させることによって、レンズ220を光軸方向(+Z方向)に前後移動させる。
【0039】
画像中継装置100と接続するスマートフォン50から出射される画像光(レーザ光)のビーム径は、スマートフォンの種類によって異なることがある。レーザ光のビーム径が異なると、マックスウエル視によるフォーカスが多少ずれることがある。
【0040】
マックスウエル視による投影では、使用者の裸眼視力によらずに、同等の視力を得ることができ、これをフォーカスフリーというが、レーザ光のビーム径が大きくなると、使用者の視力(水晶体の屈折率)によって、マックスウエル視のよって獲得される視力が変化することがある。
【0041】
これに対応するために、ネジ部141を備えており、レンズ120を光軸方向(+Z方向)に前後させることでレンズ110とレンズ120との距離を変化させることで、スマートフォン50から出射されるレーザ光のビーム径に対応して、より精度高くフォーカスフリーを実現することができるようになる。
【0042】
図6は、画像中継装置100におけるFOV(視野角)と解像度の関係を示す図である。
図6には、走査部64、レンズ110、120、瞳孔11、及び網膜12を示す。120のNA(開口数)を変えて倍率を変更することで、網膜12に投影する画像の視野角を拡大又は縮小することができる。NAを大きくすれば視野角は大きくなり、NAを小さくすれば視野角は小さくなる。
【0043】
走査部64として用いるMEMSミラーの直径が1.0mm、水平視野角が40度程度であるとする。例えばレンズ110、120の対による倍率を視野角がMEMSミラーの水平視野角の倍になるように変更すると、視野角は2倍の80度になり、ビーム径は1/2になる。すなわち、網膜12上のビーム径は2倍になる。このように、レンズ110、120のNA(開口数)を変えて倍率を変更することで、網膜12に投影する画像の視野角と解像度を調整することができる。
【0044】
次に、以上のような画像中継装置100の光学的な動作について
図5と
図6を用いて説明する。
【0045】
スマートフォン50のレーザ照射部60から出射される画像光21、22、23の各光線はレーザ照射部60の走査部64で走査された光線であって、走査された画像光の異なる時間における光線である。
図6におけるこの各光線の直線は、中心の直線が光線の光軸を示し、両側の直線が光線の端を示しており、両側の直線の間隔が光線の径に相当する。
【0046】
レーザ照射部60から出射された各光線の光軸は拡散し、かつ各光線は略平行光となっている。
【0047】
この各光線はそれぞれミラー153で反射してレンズ110へ導かれ、レンズ110で各光線の光軸が平行でかつ各光線が収束光になるように変換される。
【0048】
レンズ110で収束光に変換された各光線は、レンズ鏡筒130の内部を伝搬してレンズ120に入射する。このとき各光線は、レンズ110とレンズ120との略中央で集光している。
【0049】
そして、レンズ120で、各光線を平行光に変換するとともに、レンズ120の外側(+Z方向側)にある使用者の眼球10の瞳孔11の中心近傍で各光線が収束するように屈折させて瞳孔11に入射させる。
【0050】
この瞳孔11に入射した各光線が、使用者の眼球内の特性によって網膜12上で集光して結像するように、レンズ120が各光線を平行光に変換する。
【0051】
これにより、スマートフォン50などの投影装置から投影された投影画像光線を、マックスウエル視によってフォーカスフリーで網膜へ投影することが可能となる。
【0052】
ここで、レンズ110及び120を含む光学系は、MEMSミラーである走査部64の走査原点と、虹彩の中心(瞳孔11の中心)とにおいて共役の関係を有すればよい。また、レンズ110及び120を含む光学系は、光源61と網膜12において共役の関係を有すればよい。このような関係を持たせることにより、光源61で出射され、画像データに応じて走査部64で走査されたレーザ光は、網膜12上に結像する。
【0053】
また、スマートフォン50のレーザ照射部60が出射するレーザ光の出力を調整せずに網膜12に入射させると、出力が大きすぎる場合がある。このような場合には、
図7のような構成にすればよい。
図7は、画像中継装置100Aの構成を概略的に示す図である。
【0054】
画像中継装置100Aは、画像中継装置100にND(Neutral Density)フィルタ160A、液晶シャッタ160B、ハーフミラー170A、PD(Photo Detector)170B、遮光制御部180を追加した構成を有する。これら以外には、
図7にはレンズ110、120とレーザ照射部60のみを示し、他の構成要素は省略する。
【0055】
NDフィルタ160A及び液晶シャッタ160Bは、レーザ照射部60とレンズ110との間の光路上にこの順に配置されている。NDフィルタ160Aは、レーザ照射部60から入射するレーザ光の光量を低減するフィルタである。液晶シャッタ160Bは、遮光制御部180によって開閉制御が行われ、開放される時間を調節することによって透過する光の量を調節する光学デバイスである。このようなNDフィルタ160A及び液晶シャッタ160Bは、一例として、ホルダ150によって保持されてミラー153の手前側に設けられるか、又は、筐体140によって保持されてレンズ110の手前に設けられればよい。なお、NDフィルタ160Aでの減光が充分である場合は、装置構成の簡略化のため、液晶シャッタ160Bを設置しない構成もとることができ、NDフィルタ160Aの設置する位置は、レーザ光が画像中継装置100に入射して、眼球10へ出射されるまでの光路上の任意の位置に設置することができる。
【0056】
ハーフミラー170Aは、レンズ110と120との間の光路上に設けられ、一部の光を透過し、残りの光をPD170Bに向けて反射する。PD170Bに向けて反射する光量は、入射光のごく一部でよい。
【0057】
PD170Bは、ハーフミラー170Aで反射されたレーザ光の光量を検出し、光量を表す信号を遮光制御部180に出力する。PD170Bは、光電変換を利用して光を電気信号に変換する素子である。
【0058】
遮光制御部180は、PD170Bから入力される光量を表す信号に基づいて、液晶シャッタ160Bの開閉制御を行う。遮光制御部180は、液晶シャッタ160Bを透過するレーザ光の光量が、人間の網膜に直接入射しても問題のないレベル(例えば、0.39μW程度)を超えたことを検出したときに、液晶シャッタ160Bを閉じる。
【0059】
なお、遮光制御部180としては例えばマイクロコンピュータを用いることができる。マイクロコンピュータに電力供給をする電源としてバッテリを含んでもよく、スマートフォン50から電力が供給される構成であってもよい。マイクロコンピュータは、例えばホルダ150によって保持されていればよい。バッテリがある場合は、バッテリも例えばホルダ150によって保持されていればよい。
【0060】
以上のように、画像中継装置100では、レーザ照射部60から出射されるレーザ光は、ミラー153で反射され、NDフィルタ160A及び液晶シャッタ160Bで光量が調整され、レンズ110及び120を通過して使用者の眼球10の瞳孔11に入射し、網膜12上に結像する。
【0061】
したがって、スマートフォン50のような汎用的な投影装置であっても、その投影装置から出射される画像を表すレーザ光をマックスウエル視によって、フォーカスフリーで網膜12に投影する画像中継装置100を提供することができる。
【0062】
視力障害を有する人は、スマートフォン50の画像を見る際に、ディスプレイ52に眼球を極端に近づけて、部分的に視認することを余儀なくされる。レーザ光源を含み網膜投影を行うRID(Retinal Imaging Display)機器を用いれば、網膜12で得られる画像の視認性は向上するが、例えばスマートフォン50の画像データをHDMI(登録商標)ケーブルを介してRID機器に接続し、RID機器がレーザ光を画像データに基づいて走査することになり、HDMIケーブルでRID機器とスマートフォン50を接続する手間がかかり煩雑である。
【0063】
また、HMD(Head Mount Display)型のRID機器を用いる場合には、頭部へのフィッティングのような作業が必要になる。
【0064】
これに対して、画像中継装置100は、HDMIケーブルを用いる必要がなく、また頭部へのフィッティングのような作業も必要としない。レーザ照射部60を含むスマートフォン50から出射されるレーザ光を画像中継装置100で中継することにより、容易かつ手軽にスマートフォン50の画像を網膜12に投影することができる。画像中継装置100の使用者は、スマートフォン50から出力されるレーザ光による画像を、画像中継装置100を介してダイレクトに見ることができ、高画質な全画面を見ることができるようになる。
【0065】
なお、以上では、画像中継装置100が2つのレンズ110、120を含む形態について説明したが、装置の小型化やデザイン、画像の反転等を考慮して、共役となるレンズ対を複数組設けてもよい。また、
図6を用いて説明したように、倍率を変えて視野角や解像度を調整してもよい。
【0066】
また、以上では、画像中継装置100がレーザ照射部60を含むスマートフォン50(投影装置)に取り付けられている形態について説明したが、投影装置はスマートフォン50に限られず、レーザ照射部60を含むタブレットコンピュータ、レーザ照射部60を含む小型のプロジェクタ等であってもよい。
【0067】
<実施の形態2>
図8は、本発明の実施の形態2を画像中継装置200とその構成及び動作を示す図である。
【0068】
図8において、スマートフォン50は、実施の形態1と同様にプロジェクタ機能を備えた投影装置である。
【0069】
画像中継装置200は、レンズ210、レンズ220、ミラー253、収納部242、及びネジ部241を含む。
【0070】
レンズ210は、第1光学部材の一例であり、収納部242内のレンズ鏡筒(図示せず)に固定され、スマートフォン50から投影された画像光の各光線の光軸を平行でかつ各光線が収束光になるように変換する光学部材である。
【0071】
ミラー253は、レンズ210から出射された画像光の光路を屈曲させるように反射する。
図8では、略直角に反射させている。
【0072】
レンズ220は、第2光学部材の一例であり、収納部242内のレンズ鏡筒(図示せず)に固定され、ミラー253で反射された画像光を平行光に変換し、眼球10の瞳孔11の中心近傍で画像光の各光線が収束するように屈折させて出射する。
【0073】
ネジ部241は、レンズ220を固定するとともに、レンズ220を光軸方向(+Z方向)に前後移動させる。
【0074】
ホルダ250は、スマートフォン50と画像中継装置200とを接続しており、実施の形態1のホルダ150と同様にケース80に取り付けられている。
【0075】
次に、実施の形態2の画像中継装置200の動作について
図8を用いて説明する。
【0076】
スマートフォン50から出射して、眼球10に投影される画像光(図では3本で表現している)は走査された画像光21、22、23の異なる時間における光線である。
【0077】
スマートフォン50から出射される画像光21、22、23の各光線は、実施の形態1と同様に走査された光線であって、走査された画像光の異なる時間における光線である
スマートフォン50から出射された各光線の光軸は拡散し、かつ各光線は略平行光となっている。
【0078】
画像光21、22、23の各々はレンズ210へ入射し、レンズ210で各光線の光軸が平行でかつ各光線が収束光になるように変換される。
【0079】
レンズ210で収束光に変換された各光線は、ミラー253で、略直角方向に向けて反射し、レンズ210に対して略直角に配置されたレンズ220に入射する。
【0080】
そして、レンズ220で、各光線を平行光に変換するとともに、レンズ220の外側(+Z方向側)にある使用者の眼球10の瞳孔11の中心近傍で各光線が収束するように屈折させて瞳孔11に入射させる。
【0081】
この瞳孔11に入射した各光線が、使用者の眼球内の特性によって網膜12上で集光して結像するように、レンズ220が各光線を平行光に変換する。
【0082】
これにより、スマートフォン50などの投影装置から投影された投影画像光線を、マックスウエル視によってフォーカスフリーで網膜へ投影することが可能となる。
【0083】
ネジ部241は、実施の形態1と同様に、レンズ220を光軸方向に前後させてレンズ210との距離を変化させることで、スマートフォン50から出射されるレーザ光のビーム径に対応して、より精度高くフォーカスフリーを実現するために設けられている。
【0084】
実施の形態2の構成では、レンズ210とレンズ220との間に光線を略直角に反射して屈曲されるミラー253を備えることで、レンズ210に対して、レンズ220が略直角方向に配置することによって、実施の形態1に示す構成と比較して、2つのレンズ間の距離を短くなるので、小型化を図ることができる。
【0085】
また、実施の形態2では、レンズ210に対してレンズ220が略直角である構成を示したが、使用者の使用状態や、レンズの大きさ、配置関係により、このレンズ210に対するレンズ220の角度を略直角以外に設定してもよく、ミラー253の配置と、レンズ220の配置を自由に可変できるような構成としてもよい。
【0086】
図9A、
図9Bは、実施の形態2の画像中継装置200の斜視図と側面図である。これらの図は、画像中継装置200がスマートフォン50に対して5°程度上(+Y方向)に傾けて設置した場合の図である。これらの図に示す通り、実施の形態2では、実施の形態1よりも、スマートフォン50に対して、画像中継装置200の突出が小さいことが分かる。
【0087】
以上のように、画像中継装置200では、実施の形態1の画像中継装置100と同様に、レーザ照射部60から出射されるレーザ光は、ミラー253で反射され、レンズ210及び220を通過して使用者の眼球10の瞳孔11に入射し、網膜12上に結像する。
【0088】
したがって、スマートフォン50のような汎用的な投影装置であっても、その投影装置から出射される画像を表すレーザ光をマックスウエル視によって、フォーカスフリーで網膜12に投影する画像中継装置200を提供することができる。
【0089】
また、スマートフォン50に対する画像中継装置200の突出がより小さいため、ディスプレイ52の邪魔にならず、晴眼者にとってもより使い勝手の良い画像中継装置200を提供することができる。
【0090】
<実施の形態3>
図11は、実施の形態3の画像中継装置300を示す図である。
図11には、
図1のB−B矢視断面に相当する断面構造を示す。なお、実施の形態1、2と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0091】
画像中継装置300は、レーザ照射部60を含むピコプロジェクタ50Aに取り付けられている。ピコプロジェクタ50Aは、レーザ照射部60Aを有する。レーザ照射部60Aは、
図1A等に示すスマートフォン50のレーザ照射部60と同様である。
【0092】
画像中継装置300は、レンズ110、レンズ120、ミラー253、NDフィルタ360A、360B、360C、レンズホルダ355A、及びレンズカバー355Bを含む。これらのうち、レンズ110、ミラー253、NDフィルタ360A、360B、360Cは、実施の形態1の画像中継装置100のホルダ150と同様のホルダの内部に配置されるが、ここではホルダを省略する。
【0093】
レンズ110とレンズ120との間に配置されるミラー253によって、光路は略直角に屈曲している。また、レンズ120は、レンズホルダ355Aに保持されている。レンズホルダ355Aの+Z方向側には、レンズカバー355Bが取り付けられている。レンズホルダ355A及びレンズカバー355Bは、画像中継装置300の図示しないホルダの一部である。なお、屈曲される角度は、このような角度には限られず、例えば
図9Bに示すようにY方向に傾けてもよい。
【0094】
3枚のNDフィルタ360A、360B、360Cは、ミラー253とレンズ120との間の光路において、ミラー253側からレンズ120側にかけて、この順番で直列に配置されている。以下において、NDフィルタ360A、360B、360Cを特に区別しない場合には、単にNDフィルタ360と称す。
【0095】
画像中継装置300の使用者は、レンズカバー355Bを覗き込んで画像を視認するが、レーザ照射部60Aが出力するレーザ光の出力は、一例として、数10mWあり、使用者が直接画像を視認するには大きすぎる。使用者の安全性を確保するために、画像中継装置300は、レンズ110とレンズ120の間の光路に3枚のNDフィルタ360を直列に挿入している。
【0096】
ここでは、3枚のNDフィルタ360のうちの任意の2枚のNDフィルタで、レーザ製品安全規格であるIEC60825のクラス1(以下、クラス1と称す)に適合可能な減光率を有する。3枚のNDフィルタ360のうちの任意の2枚でクラス1に適合可能な減光率を有する構成にしたのは、万一、3枚のNDフィルタ360A、360B、360Cのうちのいずれか1枚が破損したとしても、残りの2枚でクラス1の安全性を担保するためである。
【0097】
また、ここでは、NDフィルタ360が3枚ある形態について説明するが、NDフィルタ360は、2枚以上あればよい。すなわち、Nが2以上の整数である場合に、画像中継装置300は、N枚のNDフィルタ360を含み、任意のN−1枚のNDフィルタ360を直列に配置した状態でクラス1の減光率が得られるものである。
【0098】
ここで、米国のアメリカ食品医薬品局(Food and Drug Administration: FDA)の網膜投影機器の安全性で決められた規格では、HMD(Head Mount Display)として、人間の網膜に入射させて問題のないレーザ光の出力の上限は、0.39μWである。
【0099】
レーザ照射部60Aから照射される数10mWのレーザ光を複数枚のNDフィルタ360で0.39μWに減光するには、複数枚のNDフィルタ360による減光率は、10万分の1程度になる。
【0100】
1枚が破損したときでも安全性を確保したいため、NDフィルタ360を2枚以上用いることになるが、2枚のNDフィルタ360で10万分の1の減光率を実現するには、1枚のNDフィルタ360が0.01%オーダーの減光率を有する必要があり、特に、量産を視野に入れると製造は容易ではない。
【0101】
また、NDフィルタ360を3枚にすると、1枚あたりの減光率は、数%オーダーになるため、現実的な値になる。一方、NDフィルタ360は比較的高価であるため、4枚以上になると、画像中継装置300の製造コストが増大する。
【0102】
そこで、NDフィルタ360の数は、一例として、3枚がベストであり、実施の形態3では、画像中継装置300は、3枚のNDフィルタ360を含む。
【0103】
また、人間の網膜に入射させて問題のないレーザ光の出力の上限を、マージンを含めて網膜に投影される画像の水平方向の視野角であるFOVHが一般的な26度の場合で0.31μWとし、この値をFOVHが40度と60度の場合に視野範囲の面積で換算すると、40度で約0.639μW、60度で約1.34μWである。画像中継装置300では、一例として、FOVHが40度又は60度を想定している。
【0104】
ここで、レーザ照射部60Aが照射するレーザ光は、RGBのレーザ光を含む。光のR(Red)、G(Green)、B(Blue)のうち、Bが最も波長が短くエネルギが強いため、RGBの比率は、一例として、2:1:0.7である。
【0105】
RGBのうちで最も注意が必要な色は、Bであり、Bにおけるクラス1の安全性を確保すれば、RとGでもクラス1の安全性を確保できることになる。
【0106】
FOVHが60度の場合のBのレーザ光の出力は、RGBの三色での1.3μWのうちの0.25μWである。すなわち、FOVHが60度の場合に、3枚のNDフィルタ360で減光してBのレーザ光の出力が0.25μWになればよい。
【0107】
ここで、3枚のNDフィルタ360で0.25μWの場合に、1枚破損した場合について検討する。1枚のNDフィルタ360の減光率が2.2%だとすると、0.25μW×(100%/2.2%)=11.36μWとなる。
【0108】
また、クラス1では、人間の網膜に投影可能なレーザ光の出力は、B(波長465μm)で77μW、G(波長515μm)で390μW、R(波長640μm)で390μWである。
【0109】
すなわち、FOVHが60度の場合に、3枚のNDフィルタ360で減光したBのレーザが0.25μWであり、1枚のNDフィルタ360の減光率が2.2%の場合に1枚破損すると、残りの2枚で減光したレーザ光のうちのBのレーザ光の出力である11.36μWは、クラス1におけるBのレーザ光の出力の上限である77μWよりも十分に低い。このため、画像中継装置300は、3枚のNDフィルタ360のうちの1枚が破損してもクラス1の安全性を確保できることになる。
【0110】
図12は、FOVH、光透過度、光量の関係を示す図である。
図12には、FOVHが40度と60度の場合に、3枚のNDフィルタ360のうちの1枚が破損しても残りの2枚で減光したレーザ光の出力がクラス1の安全性を確保できる光透過度の組み合わせを示す。なお、光透過度は、減光率と同義である。
【0111】
FOVHが40度の場合には、NDフィルタ360A、360B、360Cの光透過度をすべて2.2%に設定すると、光量は約0.639μWになる。FOVHが60度の場合には、NDフィルタ360A、360B、360Cの光透過度を、それぞれ、2.2%、2.2%、4.6%に設定すると、光量は約1.34μWになる。
【0112】
以上のように、実施の形態3によれば、レンズ110とレンズ120との間の光路に3枚のNDフィルタ360A、360B、360Cを直列に設けたことにより、レーザ照射部60Aが照射する数10mWのレーザ光を数10μW程度まで減光することができる。数10μのレーザ光であれば、使用者の網膜に入射させても安全性を確保できる。クラス1の上限レベル以下だからである。
【0113】
したがって、ピコプロジェクタ50Aから出射される画像を表すレーザ光を網膜に投影する画像中継装置300を提供することができる。
【0114】
また、1枚のNDフィルタ360が破損しても、残りの2枚のNDフィルタ360でクラス1の安全性を確保できる。このため、破損時における安全性を確保した画像中継装置300を提供することができる。
【0115】
図13は、実施の形態3の第1変形例の画像中継装置300Aを示す図である。
図13には、
図1のB−B矢視断面に相当する断面構造を示す。なお、実施の形態1、2の画像中継装置100、200、及び、実施の形態3の画像中継装置300と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0116】
画像中継装置300Aは、レンズ110、レンズ120、ミラー253、NDフィルタ360、偏光板370A、370B、レンズホルダ355A、及びレンズカバー355Bを含む。画像中継装置300Aは、レーザ照射部60を含むピコプロジェクタ50Aに取り付けられている。
【0117】
画像中継装置300Aは、1枚のNDフィルタ360を含む。1枚のNDフィルタ360の減光率は、クラス1を達成できるレベルではない。
【0118】
2枚の偏光板370A、370Bは、それぞれ、第1偏光板、第2偏光板の一例である。偏光板370Aは、偏光板370Bに対して回転可能であり、偏光板370Aを回転させることにより、偏光板370Aの偏光軸に対する偏光板370Bの偏光軸の角度が変化することで、偏光板370Aと偏光板370Bとを透過する光線の透過率を変更可能な構成になっている。
【0119】
より具体的には、一例として、ミラー253で反射されてNDフィルタ360を透過するレーザ光の直線偏光の方向がY方向である(レーザ光がYZ平面内で偏光しながら+Z方向に進行する)場合に、固定される偏光板370Bは、この直線偏光のレーザ光をすべて透過する偏光特性を有することとする。
【0120】
また、偏光板370Aは、偏光板370Bと同一の偏光特性を有し、XY平面内でレーザ光の光軸を中心に回転可能に構成されている。
【0121】
このような偏光板370A、370Bを用いると、偏光板370Bに対する偏光板370Aの回転角度を調節することによって、偏光板370Aを透過するレーザ光の透過率を調整することができる。
【0122】
偏光板370Aの偏光軸と偏光板370Bの偏光軸の向きが同じで、等しい偏光特性を有する回転位置に設定されているときには、偏光板370A、370Bは、NDフィルタ360を透過したレーザ光をすべて透過するが、偏光板370AがXY平面内で90度回転されると、2つの偏光軸の相対角度が90度になり、理論的には偏光板370Aの透過率はゼロになる。
【0123】
このため、偏光板370Aの回転位置を調整することにより、NDフィルタ360に入射するレーザ光に対する、偏光板370Bを透過する光の透過率(減光率)を設定することができ、例えば、レーザ照射部60Aが照射する数10mWのレーザ光を数10μW程度まで減光することができる。このように、偏光板370Bを透過する光のB成分の出力がクラス1を満たすようにできる。
【0124】
したがって、ピコプロジェクタ50Aから出射される画像を表すレーザ光を網膜に投影する画像中継装置300Aを提供することができる。
【0125】
図14は、実施の形態3の第2変形例の画像中継装置300Bを示す図である。
図14には、
図1のB−B矢視断面に相当する断面構造を示す。なお、実施の形態1、2の画像中継装置100、200、及び、実施の形態3の画像中継装置300と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0126】
画像中継装置300Bは、レンズ110、レンズ120、ミラー253B、NDフィルタ360A、360B、360C、レンズホルダ355A、及びレンズカバー355Bを含む。画像中継装置300Bは、
図11に示す画像中継装置300のミラー253の代わりに、裏面側にブラスト処理層253B1を有するミラー253Bを含む。ミラー253Bの裏面とは、ミラー253Bにレーザ光が照射される表面とは反対側の面である。
【0127】
また、ミラー253Bは、全反射ミラーではなく、部分反射ミラーである。部分反射ミラーで構成されるミラー253Bを用いることにより、表面での反射率を低く抑え、一定の光量を裏面に向けて透過させることで、NDフィルタ360と同様に減光効果が得られる。
【0128】
一般的に、ミラーは、表面での反射が主体的であるが、裏面側での反射も生じる。裏面側での反射は表面での反射に比べると非常に弱いが、ミラーの厚さの分だけ光路がずれる。このため、ミラーの表面の反射光と、ミラーの裏面の反射光とは、使用者の網膜では同じ位置に結像せず、像のにじみ、又は、像の重なり(ゴースト)が生じる場合がある。
【0129】
ミラー253Bの裏面側に設けられたブラスト処理層253B1は、ミラー253Bの裏面にブラスト加工処理を行うことによって作製できる。このようなブラスト処理層253B1は、一例として、サンドブラスト処理等によって実現できる。
【0130】
画像中継装置300Bでは、レンズ110とレンズ120との間の光路に3枚のNDフィルタ360A、360B、360Cを直列に設けるとともに、ミラー253Bの裏面にブラスト処理層253B1を設けている。これにより、レーザ照射部60Aから照射され、ミラー253Bの表面で減光・反射されてNDフィルタ360A、360B、360Cを透過するレーザ光を数10μW程度まで減光することができる。数10μのレーザ光であれば、使用者の網膜に入射させても安全性を確保できる。クラス1の上限レベル以下だからである。
【0131】
また、ミラー253Bの表面で反射されずに裏面まで到達した破線矢印で示すレーザ光は、ブラスト処理層253B1で拡散又は吸収されるため、NDフィルタ360A、360B、360Cには入射しない。
【0132】
したがって、ピコプロジェクタ50Aから出射される画像を表すレーザ光を網膜に投影することができるとともに、画像のにじみや重なり(ゴースト)を抑制した画像中継装置300Bを提供することができる。
【0133】
また、1枚のNDフィルタ360が破損しても、残りの2枚のNDフィルタ360でクラス1の安全性を確保できる。このため、破損時における安全性を確保するとともに、画像のにじみや重なり(ゴースト)を抑制した画像中継装置300Bを提供することができる。
【0134】
図15は、実施の形態3の第3変形例の画像中継装置300Cを示す図である。
図15には、
図1のB−B矢視断面に相当する断面構造を示す。なお、実施の形態1、2の画像中継装置100、200、及び、実施の形態3の画像中継装置300と同様の構成要素には同一符号を付し、その説明を省略する。
【0135】
画像中継装置300Cは、レンズ110、レンズ120、ミラー253C、NDフィルタ360A、360B、360C、レンズホルダ355A、及びレンズカバー355Bを含む。画像中継装置300Cは、
図14に示す画像中継装置300Bのミラー253Bの代わりに、ミラー253Cを含む。ミラー253Cは、表面と裏面が平行ではなく、表面に対して裏面が傾斜しているミラーである。換言すれば、ミラー253Cは、側面形状が台形のミラーである。
【0136】
実施の形態3の第2変形例で説明したように、一般的に、ミラーは、表面での反射が主体的であるが、裏面側での反射も生じる。裏面側での反射は表面での反射に比べると非常に弱いが、ミラーの厚さの分だけ光路がずれる。このため、ミラーの表面の反射光と、ミラーの裏面の反射光とは、使用者の網膜では結像せず、像のにじみ、又は、像の重なり(ゴースト)が生じる場合がある。
【0137】
ミラー253Cの裏面は表面に対して傾斜しているので、ミラー253Cの表面で反射せずに、破線の矢印で示すようにミラー253Cの裏面まで到達したレーザ光は、実線の矢印で示すようにミラー253Cの表面で反射されたレーザ光とは異なる角度で反射され、使用者の瞳孔には入射せず、又は、使用者の瞳孔に入射しても網膜には到達しないようにすることができる。
【0138】
画像中継装置300Cでは、レーザ照射部60Aから照射され、ミラー253Cの表面で減光・反射されてNDフィルタ360A、360B、360Cを透過するレーザ光を数10μW程度まで減光することができる。数10μのレーザ光であれば、使用者の網膜に入射させても安全性を確保できる。クラス1の上限レベル以下だからである。
【0139】
また、ミラー253Cの表面で反射されずに裏面まで到達したレーザ光は、ミラー253Cの表面で反射されたレーザ光とは異なる角度で反射され、使用者の瞳孔には入射せず、又は、使用者の瞳孔に入射しても網膜には到達しない。
【0140】
したがって、ピコプロジェクタ50Aから出射される画像を表すレーザ光を網膜に投影することができるとともに、画像のにじみや重なり(ゴースト)を抑制した画像中継装置300Cを提供することができる。
【0141】
また、1枚のNDフィルタ360が破損しても、残りの2枚のNDフィルタ360でクラス1の安全性を確保できる。このため、破損時における安全性を確保するとともに、画像のにじみや重なり(ゴースト)を抑制した画像中継装置300Cを提供することができる。
【0142】
なお、
図15に示す画像中継装置300Cの代わりに、
図16に示す画像中継装置300Dのような構成にしてもよい。
図16は、実施の形態3の第4変形例の画像中継装置300Dを示す図である。画像中継装置300Dは、
図15に示す画像中継装置300Cのミラー253Cの代わりに、裏面が凸状に湾曲したミラー253Dを含む。
【0143】
裏面が湾曲したミラー253Dを用いれば、ミラー253Dの表面で反射されずに裏面まで到達したレーザ光は、ミラー253Dの表面で反射されたレーザ光とは異なる角度で反射され、使用者の瞳孔には入射せず、又は、使用者の瞳孔に入射しても網膜には到達しないようにすることができる。なお、ミラー253Dの裏面は、凹状に湾曲していてもよい。
【0144】
<実施の形態4>
図17は、実施の形態4の画像中継装置400を示す図である。画像中継装置400は、ピコプロジェクタ50Aに取り付けられている。
図18には、画像中継装置400の外観を示す。
【0145】
画像中継装置400は、ホルダ450を有する。画像中継装置400は、実施の形態3の画像中継装置300と同様に、レンズ110、レンズ120、ミラー253、NDフィルタ360A、360B、360Cを含む。これらのうち、レンズ120は、ホルダ450のレンズカバー455の中央の開口部から表出しており、レンズ110、レンズ120、ミラー253、NDフィルタ360A、360B、360Cは、ホルダ450に内蔵されている。
【0146】
ホルダ450は、基部451、取付部452、ネジ453、レンズホルダ455A、及びレンズカバー455Bを有する。ここでは、
図17に加えて、
図18及び
図19を用いて説明する。
図18は、画像中継装置400から取付部452及びネジ453を取り外した状態を示す図である。
図19は、取付部452及びネジ453を示す図である。
【0147】
基部451は、ピコプロジェクタ50Aの+Y方向側の端部が内部に嵌め込まれる構成を有する筐体である。基部451の開口部451Dに連通する内部空間のサイズは、ピコプロジェクタ50Aのサイズに合わせられている。
【0148】
基部451は、+Z方向側の表面の−Y方向側に、一対の係合孔451A1、451A2、451A3を有する。一対の係合孔451A1、451A2、451A3は、それぞれ、X方向に沿って設けられている。また、一対の係合孔451A1、451A2、451A3は、+Y方向側から−Y方向側にかけて、この順番に配置されている。
【0149】
一対の係合孔451A1、451A2、451A3は、基部451の+Z方向側の壁部を貫通しており、一例として、係合孔451A1、係合孔451A3は、平面視でX方向に長手方向を有する矩形状の孔部であり、係合孔451A2は、L字型の孔部である。係合孔451A2のL字型の孔部の−X方向側の端部の位置は、X方向において、係合孔451A1及び係合孔451A3の位置と合わせられている。
【0150】
取付部452は、基部452A、一対の係合部452B、固定部452C、及び貫通孔452Dを有する。基部452Aは平面視で矩形状の板状の部分であり、裏面側(ピコプロジェクタ50A側)には一対の係合部452Bが設けられている。
【0151】
図19には一対の係合部452Bのうちの1つを示すが、一対の係合部452Bは、X方向に間隔をおいて配置されている。一対の係合部452BのX方向の間隔は、一対の係合孔451A1、451A3のX方向の間隔に等しい。また、各係合部452BのX方向の長さは、係合孔451A1、451A3のX方向の長さに合わせられている。
【0152】
係合部452Bは、基部452Aの裏面側から−Z方向に突出し、−Y方向に屈曲している。このような係合部452Bは、係合孔451A1、451A2、451A3に差し込むことができる。一対の係合部452Bを一対の係合孔451A1又は451A3に差し込み、−Y方向にスライドさせれば、一対の係合部452Bを一対の係合孔451A1又は451A3に係合させることができる。また、一対の係合部452Bを一対の係合孔451A2に差し込み、−Y方向にスライドさせて係合させて−X方向にスライドさせれば、係合孔451A1又は451A3に対して係合させた場合とX方向における等しい位置において、一対の係合孔451A2に対して係合させることができる。
【0153】
固定部452Cは、基部452Aの−Y方向側に連続する部分であり、アーチ状の折曲部452C1を介して基部452Aに接続されてため、基部452Aに対して±Z方向に折り曲げることができる。固定部452Cは、平面視で略三角形状であり、−Y方向側の頂点側の部分がX方向にわたって湾曲されている。固定部452Cは、ピコプロジェクタ50Aの+Z方向側の表面に当接するため、折曲部452C1よりも−Y方向側の部分は、−Z方向に突出していて厚さが厚くなっている。
【0154】
貫通孔452Dは、固定部452Cの−Y方向側において、X方向の幅の略中心に設けられている。貫通孔452Dには、ネジ453が挿通される。
【0155】
ネジ453は、ネジ先453A(
図19参照)が固定部452Cの貫通孔452Dに挿通された状態で、一例として、ピコプロジェクタ50Aの+Z方向側の表面に設けられるネジ穴50A1(
図18参照)にねじ込まれる。ピコプロジェクタ50Aの+Z方向側の表面に設けられるネジ穴50A1の径は、一般的なピコプロジェクタでは、三脚に固定して設置するための1/4インチネジ(6.35mmのネジ)を使用していることが多いので、ネジ先453Aを1/4インチネジにしておけば、汎用性が高まり、異なるピコプロジェクタを使用するときも対応することができる。
【0156】
このような取付部452は、一対の係合部452Bを一対の係合孔451A1、451A2、451A3のいずれかに係合させた状態で、ネジ453のネジ先453Aをピコプロジェクタ50Aのネジ穴50A1にねじ込むことによって、ピコプロジェクタ50Aに固定される。このようにして、ホルダ450をピコプロジェクタ50Aに取り付けることができる。
【0157】
一対の係合部452Bを一対の係合孔451A1、451A2、451A3のいずれかに係合させるかは、ピコプロジェクタ50AのY方向のサイズや、ピコプロジェクタ50Aの+Y方向側の端部からネジ穴50A1までの距離に応じて選択すればよい。一対の係合孔451A1、451A2、451A3の位置は、Y方向において異なり、様々な種類のピコプロジェクタ50Aに対応可能なように3種類設けられている。
【0158】
レンズホルダ455Aは、実施の形態3のレンズホルダ355Aと同様であり、レンズ120を保持する。レンズホルダ455Aは、基部451の+Y方向側の端部の+Z方向側に取り付けられている。レンズホルダ455Aには、実施の形態3のレンズカバー355Bと同様のレンズカバー455Bが取り付けられている。
【0159】
図20は、画像中継装置400を様々なサイズのピコプロジェクタ50Aに取り付けた状態を示す図である。
図20の(A)、(B)、(C)には、ネジ穴50A1の位置が異なる3つのピコプロジェクタ50Aを示す。なお、
図20の(A)〜(C)では、取付部452の係合部452Bを省略し、係合孔451A1、451A2、451A3を示す。
【0160】
図20の(A)では、係合部452Bは係合孔451A1に固定されている。
図20の(B)では、係合部452Bは係合孔451A3に固定されている。
図20の(C)では、係合部452Bは係合孔451A2に固定されている。
【0161】
このように、画像中継装置400のホルダ450は、取付部452を係合孔451A1、451A2、451A3のいずれに取り付けるかによって、ネジ穴50A1の位置が異なる様々なサイズのピコプロジェクタ50Aに取り付け可能である。
【0162】
なお、ここではY方向の位置が異なる3種類の係合孔451A1、451A2、451A3を有するホルダ450を画像中継装置400が含む形態について説明したが、係合孔の数は、幾つであってもよい。
【0163】
図21及び
図22は、実施の形態4の第1変形例の画像中継装置400Aを示す図である。画像中継装置400Aは、ホルダ450を含み、ホルダ450は、基部451、レンズホルダ455A、及びレンズカバー455Bを有する。ここでは、ホルダ450の取付部452及びネジ453を省略する。
【0164】
図21に示すレンズ120を保持するレンズホルダ455Aは、基部451にネジ留めされており、
図22に示すレンズ120Aを保持するレンズホルダ455A1に交換可能である。
【0165】
レンズ120は、一例としてFOVHが40度のレンズであり、レンズ120Aは、一例としてFOVHが60度のレンズである。レンズ120Aは、レンズ120よりも厚く、焦点距離が短い。このため、レンズホルダ455A1は、レンズホルダ455Aよりも短い。
【0166】
図23及び
図24は、レンズ120、120Aを用いた場合の光路を示す図である。なお、レンズ110は、一例としてFOVHが40度のレンズである。
【0167】
図23に示すように、レンズ120を用いた場合は、レンズ110とレンズ120との間でレーザ光が収束する点Pまでのレンズ110、120からの距離は、ともにL1で等しい。また、レンズ120のWD(Working Distance)はL3である。
【0168】
図24に示すように、レンズ120Aを用いた場合は、レンズ110とレンズ120Aとの間でレーザ光が収束する点Pまでのレンズ110、120Aからの距離は、それぞれ、L1、L2(L1>L2)になる。レンズ120Aの方がFOVHが大きいからである。また、レンズ120AのWDはL4(L4<L3)である。
【0169】
レンズ120AのFOVHは60度であり、レンズ120AのFOVH(40度)よりも大きいため、使用者の網膜12には、より広がったレーザ光が入射することになり、より大きな画像が提供される。
【0170】
図25乃至
図28は、実施の形態4の第2変形例の画像中継装置400Bを示す図である。画像中継装置400Bは、ホルダ450Bを有する点が実施の形態4の画像中継装置400と異なる。
【0171】
ホルダ450Bは、基部451B、取付部452、レンズホルダ455A、レンズカバー455Bを有する。なお、ホルダ450Bは、ネジ453(
図17参照)も有するが、ここでは省略する。
【0172】
基部451Bは、XZ平面内でレンズホルダ455Aを90度回転可能に保持する点が実施の形態4のホルダ450の基部451と異なる。なお、
図26及び
図28では、基部451を省略する。
【0173】
図25及び
図26では、レンズ120が+Z方向側を向くようにレンズホルダ455A及びレンズカバー455Bが向けられており、この場合には、レーザ照射部60Aから出力される横長の画像を、使用者は横長の画像として視認する。
【0174】
また、
図27及び
図28では、レンズ120が−X方向側を向くようにレンズホルダ455A及びレンズカバー455Bが回転されており、この場合には、レーザ照射部60Aから出力される横長の画像を、使用者は縦長の画像として視認する。
【0175】
これについて説明する。レーザ照射部60Aから出力される画像が、横長画像である場合に、ホルダ450Bが
図25、
図26の方向に設置されているときは、ミラー253で反射する投影画像は横長画像である。
【0176】
ここで、ホルダ450Bを
図27、
図28に示すように90度回転させると、レーザ照射部60Aから出力される画像は横長画像のままであるが、ミラー253に投影される画像は縦長画像となる。これは、横長画像をミラー反射させているときは、長手方向が水平方向、短手方向が垂直方向で視認されるが、ミラー253を右方向に90度回転させると、横長画像の右側の短手方向が下部になる縦方向の画像として視認されることによる。つまり、横長の画像を、鏡を使って横から見ると縦長に見える、ということである。
【0177】
このように、実施の形態の第2変形例によれば、レーザ照射部60Aから出力される横長の画像と縦長の画像とに対応可能な画像中継装置400Bが得られる。
【0178】
<実施の形態5>
図29は、実施の形態5の画像中継装置500を示す図である。画像中継装置500は、実施の形態3の画像中継装置300と同様の構成を有する。
図29には、画像中継装置500の構成要素のうちのレンズ110、レンズ120、ミラー253を示す。レンズ110には、レーザ照射部60の走査部64から照射されるレーザ光が入射する。
【0179】
レンズ110とレンズ120との間でレーザ光が収束する位置Pには、指標501が配置されている。指標501は、一例として、視力検査用の指標であり、透明なフィルムに、水平方向と垂直方向に延在して交差する2つの直線の交点に円が描かれている。このような指標は、一例として、視野検査の固視指標として用いることができる。
【0180】
指標を点Pに配置すれば、網膜12には指標の画像が結像するため、走査部64でレーザ光を走査して自動車等の画像を描画すると、網膜12には、自動車等の画像に視野検査用の固視指標が重ねられた画像が結像することになる。
【0181】
したがって、実施の形態5によれば、網膜12に視野検査の固視指標などに用いられる画像を結像させることができる画像中継装置500を提供することができる。
【0182】
なお、指標501の代わりに様々な画像を有する透明フィルムを配置してもよい。
【0183】
図30は、実施の形態5の変形例の画像中継装置500Aを示す図である。画像中継装置500Aは、
図29に示す画像中継装置500のミラー253を部分透過ミラー553に交換し、レンズ510を追加した構成を有する。レンズ510と部分透過ミラー553の裏面との間の距離は、部分透過ミラー553の表面とレンズ110の位置との間の距離に等しい。
【0184】
部分透過ミラー553の裏面側には被写体として木550が配置されている。木550の画像は、部分透過ミラー553を透過し、レンズ120を経て瞳孔11内に入射し、網膜12に結像する。
【0185】
このため、走査部64でレーザ光を走査して自動車等の画像を描画すると、網膜12には、自動車等の画像に木550の画像が重ねられた画像が結像することになる。ここでは木550を示すが、木550の代わりに様々なあらゆる被写体の画像をレーザ照射部60から出力される画像に重ねることができる。すなわち、使用者の網膜12にAR(Augmented Reality(拡張現実))画像を結像させることができる。
【0186】
したがって、実施の形態5の変形例によれば、網膜12にAR画像を結像させることができる画像中継装置500を提供することができる。
【0187】
以上、本発明の例示的な実施の形態の画像中継装置について説明したが、本発明は、具体的に開示された実施の形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲から逸脱することなく、種々の変形や変更が可能である。
【0188】
なお、本国際出願は、2019年3月28日に出願した日本国特許出願2019−063722と、2020年3月9日に出願した日本国特許出願2020−040194とに基づく優先権を主張するものであり、その全内容は本国際出願にここでの参照により援用されるものとする。