特許第6860270号(P6860270)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6860270流体を定量供給するためのシステムおよび該流体供給システムを製造する方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860270
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】流体を定量供給するためのシステムおよび該流体供給システムを製造する方法
(51)【国際特許分類】
   B65D 83/00 20060101AFI20210405BHJP
   B05B 11/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B65D83/00 K
   B05B11/00 102D
   B05B11/00 102E
【請求項の数】10
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2017-567606(P2017-567606)
(86)(22)【出願日】2016年7月11日
(65)【公表番号】特表2018-520954(P2018-520954A)
(43)【公表日】2018年8月2日
(86)【国際出願番号】EP2016066455
(87)【国際公開番号】WO2017005938
(87)【国際公開日】20170112
【審査請求日】2019年5月8日
(31)【優先権主張番号】15176166.5
(32)【優先日】2015年7月9日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】509103532
【氏名又は名称】ディスペンシング・テクノロジーズ・ベスローテン・フェンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】Dispensing Technologies B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】100107456
【弁理士】
【氏名又は名称】池田 成人
(74)【代理人】
【識別番号】100162352
【弁理士】
【氏名又は名称】酒巻 順一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100123995
【弁理士】
【氏名又は名称】野田 雅一
(72)【発明者】
【氏名】マース, ヴィルヘルムス ヨハネス ヨーゼフ
(72)【発明者】
【氏名】ネルヴォ, パウロ
(72)【発明者】
【氏名】スネイデルス, ヨセフス コルネリス
【審査官】 種子島 貴裕
(56)【参考文献】
【文献】 特表2013−507590(JP,A)
【文献】 特開2014−069876(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 83/00
B05B 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体を定量供給するためのシステムであって、前記流体用の容器および該容器と連結された供給装置を備え、前記容器が、形状保持用の外容器および該外容器と連結された可撓性の内容器を備え、前記内容器および前記外容器が、前記容器のネックまたはその近くで相互に連結されており、周囲雰囲気と流体連通される空間を、前記内容器と前記外容器との間に設けることができ、前記供給装置が、ハウジングおよび/またはフレームを含み、前記ハウジングおよび/または前記フレームの少なくとも一部分が、前記容器と一体に形成されており、前記内容器または前記外容器の少なくとも一方が、前記供給装置の前記ハウジングおよび/または前記フレームの一体化された前記部分を形成するように前記ネックを越えて延在している、流体を定量供給するためのシステム。
【請求項2】
前記供給装置の前記ハウジングおよび/もしくは前記フレームの一体化された前記部分が、前記外容器と一体に形成されている、請求項1に記載の、流体を定量供給するためのシステム。
【請求項3】
前記供給装置の前記ハウジングおよび/もしくは前記フレームの一体化された前記部分が、前記内容器と一体に形成されている、請求項1に記載の、流体を定量供給するためのシステム。
【請求項4】
前記供給装置の一体化されていない部分が、前記ハウジングおよび/もしくは前記フレームのうち前記容器と一体に形成された前記部分に機械的に固定されている、ならびに/または
前記外容器がPETを含み、前記内容器がポリオレフィン、特にPEもしくはPPを含む、ならびに/または
前記供給装置が、複数の可動部分を備え、該可動部分の少なくとも1つが、前記容器と一体に形成されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の、流体を定量供給するためのシステム。
【請求項5】
前記容器が、
射出成形とその後のブロー成形によって形成されている、または
共押出成形とその後のブロー成形によって形成されている、請求項1〜4のいずれか一項に記載の、流体を定量供給するためのシステム。
【請求項6】
流体を定量供給するためのシステムを製造する方法であって、
前記流体用の容器を製造するステップであって、前記容器が、形状保持用の外容器および該外容器と連結された可撓性の内容器を備え、前記内容器および前記外容器が、前記容器のネックまたはその近くで相互に連結されている、ステップと、
ハウジングおよび/またはフレームを備える供給装置を製造するステップと、
前記容器と前記供給装置を組み立てるステップと、を含み、
前記供給装置の前記ハウジングおよび/または前記フレームの少なくとも一部分が、前記容器と一体に形成されており、
前記容器を製造する前記ステップが、前記内容器または前記外容器の少なくとも一方が、前記供給装置の前記ハウジングおよび/または前記フレームの一体化された前記部分を構成するように前記ネックを越えて延在するよう、前記内容器または前記外容器の前記少なくとも一方を形成する工程を更に含み、
前記容器と前記供給装置を組み立てる前記ステップが、前記供給装置の前記ハウジングおよび/または前記フレームのうち前記容器と一体に形成された前記部分に、前記供給装置の一体化されていない部分を取り付ける工程を含む、方法。
【請求項7】
前記容器を製造する前記ステップ中に、
前記供給装置の前記ハウジングおよび/もしくは前記フレームの一体化された前記部分が、前記外容器と一体に形成される請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記容器を製造する前記ステップ中に、
前記供給装置の前記ハウジングおよび/もしくは前記フレームの一体化された前記部分が、前記内容器と一体に形成される、請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記容器と前記供給装置を組み立てる前記ステップが、前記ハウジングおよび/もしくは前記フレームのうち前記容器と一体に形成された前記部分に、前記供給装置の一体化されていない前記部分を機械的に固定する工程を含む、ならびに/または
前記容器を製造する前記ステップが、PETを含む材料から前記外容器を製造する工程と、ポリオレフィン、特にPEもしくはPPを含む材料から前記内容器を製造する工程とを含む、ならびに/または
前記供給装置が、複数の可動部分を備え、前記容器を製造する前記ステップが、前記可動部分の少なくとも1つを一体に形成する工程を含み、前記容器と前記供給装置を組み立てる前記ステップが、前記一体に形成された可動部分と前記供給装置の一体化されていない前記部分とを係合させる工程を含む、請求項6〜8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記容器を製造する前記ステップが、
前記容器のプリフォームを射出成形し、次に前記プリフォームをブロー成形して前記容器にする工程を含む、または
多層管を共押出成形し、次に前記多層管をブロー成形して前記容器にする工程を含む、請求項6〜9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体用の容器および該容器と連結された供給装置を備える、流体を定量供給するためのシステムに関する。このような流体供給システムは、一般的に知られており、トリガスプレーと呼ばれている。トリガスプレーは、例えば洗浄剤、消臭剤などの種々の流体を供給するために使用されている。
【背景技術】
【0002】
トリガスプレーは、従来より、例えばスーパーマーケット、ガーデニングセンター、DIY店などの通常の小売店で最終消費者によって購入されている。トリガスプレーの製造および充填が行われる工場から最終的な販売場所までのトリガスプレーの輸送は、通常は、トリガスプレーがしっかりと梱包され、直立姿勢で確実に固定される、特別に設計された梱包箱または特別な寸法の梱包箱で行われる。次に、このような梱包箱は、通常は、トリガスプレーを棚に置くスタッフによって販売場所で開梱される。最終消費者は、自分のショッピングカートまたはバスケットにトリガスプレーを置き、会計後、トリガスプレーを自宅または事業所に運ぶ責任を負う。トリガスプレーは、普通は直立姿勢で運ばれるため、また、最終消費者は通常は自分の購入品を大事に扱うため、トリガスプレーは、通常は輸送中に損害を受けない。
【0003】
近年、電子商取引がますます重要になってきている。専門家および消費者の両方が、ますますインターネットを通じて製品を注文するようになっている。これらの製品は、次に、通常の郵便または宅配業者のいずれかによって購入者の自宅または事業所に発送される。注文のサイズに応じて、製品は、個別に、または多くの(しばしば異なる)製品を含む配送品の一部分として発送され得る。これらの製品は、通常、すぐに損傷する危険性を減らすように梱包されるが、製品が所定の向きで輸送されることを保証するために、それ以上の予防策は普通は取られない。このため、トリガスプレーの場合、トリガスプレーが、水平姿勢または逆さまの姿勢で発送される可能性があり、より重いまたはより硬い場合がある他の製品と接触する可能性がある。したがって、トリガスプレーが輸送中に変形し、その結果、流体の一部分または全部がトリガスプレーから漏れることになり得る危険性がある。このことが、トリガスプレーの価値に影響するだけでなく、漏れた液体が、トリガスプレーと共に梱包された他の製品に損害を与えることにもなり得る。
【発明の概要】
【0004】
本発明の目的は、発送される姿勢と無関係に輸送中に少なくとも実質的に漏れを生じさせない、流体供給システムまたはトリガスプレーを提供することである。本発明によれば、これは、上で説明した種類の流体供給システムであって、容器が、形状保持用の外容器および該外容器と連結された可撓性の内容器を備え、周囲雰囲気と流体連通される空間を、内容器と外容器との間に設けることができ、供給装置が、ハウジングおよび/またはフレームを含み、ハウジングおよび/またはフレームの少なくとも一部分が、容器と一体に形成されている流体供給システムで達成される。
【0005】
言い換えれば、本発明は、機能的に供給装置に属する部分と容器とを構造的に一体化することを提案する。容器の一体部分として供給装置のハウジングおよび/またはフレームの一部を作製することによって、供給装置と容器との結合が安定化され、これにより、容器のネックまたはその近くでの変形および漏れが防止される。さらに、内容器および外容器ならびにこれらの間の空間を設けることによって、供給装置には通気口が不要となり、これにより、さらなる潜在的な漏れの原因が取り除かれる。
【0006】
流体供給システムの一実施形態では、内容器および外容器は、容器のネックまたはその近くで相互に連結され、内容器または外容器の少なくとも一方は、供給装置のハウジングおよび/またはフレームの一体化された部分を形成するようにネックを越えて延在する。このようにして、装置の最も重要な部分が強化および安定化されて、漏れが防止される。
【0007】
供給装置のハウジングおよび/またはフレームの一体化された部分は、外容器と一体に形成されてもよい。外容器は、多くの場合、内容器に比べて強くて耐久性のある材料で作製される。
【0008】
あるいは、供給装置のハウジングおよび/またはフレームの一体化された部分は、内容器と一体に形成されてもよい。内容器の材料は、外容器に比べて可撓性が高く、しばしば安価であり得る。
【0009】
ハウジングおよび/またはフレームの一部分が外容器と一体化される一方で、その他の部分が内容器と一体化されることも考えられる。このようにして、各部分に最適な材料を選択することができる。
【0010】
構造的に単純な流体供給システムは、ハウジングおよび/またはフレームのうち容器と一体に形成された部分に、供給装置の一体化されていない部分を機械的に固定するときに得られる。機械的連結は迅速に確立することができるため、供給システムは、組み立てラインでの自動製造を実現する。
【0011】
流体供給システムの一実施形態では、外容器はPETを含み、内容器はポリオレフィン、特にPEまたはPPを含む。PETは、そのガスバリア性、その強度、およびその安定性、ならびにその優れた仕上がりのために選択することができ、一方、ポリオレフィンは、その耐薬品性および可撓性のために選択することができる。
【0012】
供給装置が、複数の可動部分を備え、これらの少なくとも1つが、容器と一体に形成される場合、別個の部品の数がさらに低減され、これにより、流体供給システムの組み立てが容易になる。
【0013】
その場合、可動部分は、内容器および外容器の一方と一体に形成されてもよく、ハウジングおよび/またはフレームの一体化された部分は、内容器および外容器の他方と一体に形成されてもよく、これにより、機能が分離され、各機能に対して最適な材料を選択することができる。
【0014】
外容器がPETを含み、内容器がポリオレフィンを含む場合、可動部分が、外容器と一体に形成された付勢部材を備える一方で、ハウジングおよび/またはフレームの一体化された部分は、内容器と一体に形成されてもよい。PETの付勢部材は、比較的強くて安定性があり得る。
【0015】
流体供給システムは、容器が射出成形とその後のブロー成形によって形成されるときに非常に効率的に製造することができる。
【0016】
あるいは、容器は、共押出成形とその後のブロー成形によって形成されてもよい。
【0017】
本発明は、流体を定量供給するためのシステムを製造する方法であって、
流体用の容器を製造するステップであって、前記容器が、形状保持用の外容器および該外容器と連結された可撓性の内容器を備えるステップと、
ハウジングおよび/またはフレームを備える供給装置を製造するステップと、
容器と供給装置を組み立てるステップと
を含む方法にさらに関する。
【0018】
このような方法は、従来より、トリガスプレーなどの流体供給システムを製造するために使用されている。この従来の方法は、製造工場への供給および/または在庫の保持を行わなければならない比較的多くの別個の部品の使用を必要とする。さらに、従来の方法は、多大な時間およびコストを要する比較的多くの手順を必要とする。そして最後に、従来の製造方法の一部分の手順は、生産損失を招く比較的多くの製造誤差または故障を伴う。
【0019】
本発明は、使用する部品および手順の数を少なくし、かつ故障率を低減する、流体供給システムがより効率的に作製され得る改善された方法を提供することを目的とする。本発明によれば、これは、供給装置のハウジングおよび/またはフレームの少なくとも一部分が容器と一体に形成されることで、また、容器と供給装置を組み立てるステップが、供給装置のハウジングおよび/またはフレームのうち容器と一体に形成された部分に、供給装置の一体化されていない部分を取り付ける工程を含むことで達成される。
【0020】
本発明の方法を実施するいくつかの好ましい方法は、従属請求項13〜24に規定されている。
【0021】
一実施形態では、容器を製造するステップは、容器のプリフォームを射出成形する工程と、その次にプリフォームをブロー成形して容器にする工程とを含む。
【0022】
その場合に、プリフォームが、内層および外層を含むとき、プリフォームを射出成形する工程は、多成分射出成形プロセスの2つの連続する手順で、内層および外層の一方を射出成形し、次に内層および外層の他方を射出成形することを含んでもよい。このようにして、組み立て手順の数が低減される。
【0023】
あるいは、プリフォームが、同様に内層および外層を含むとき、プリフォームを射出成形する工程は、別々の射出成形プロセスで内層および外層を射出成形することを含んでもよく、内層および外層は、前記射出成形後に組み立てられてもよい。このようにして、層を射出成形するために比較的単純な型を使用することができる。
【0024】
本発明は、添付の図面を参照して、その多くの例示的な実施形態により例示される。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】従来のトリガスプレーを輸送する際に生じる問題を示す。
図2】これらの問題の解決に寄与する、本発明の供給システムの特徴を示す。
図3図3Aは、本発明の流体供給システムの第1の実施形態の外観斜視図を示し、図3Bは、内容器が既に部分的に空にされた、本発明の流体供給システムの第1の実施形態の部分切欠斜視図を示す。
図4図4Aは、プリフォームであって、そこから図3の流体供給システムの容器がブロー成形されるプリフォームを示し、図4Bは、プリフォームのブロー成形後の流体供給システムを示す。
図5図5Aは、図4のプリフォームの斜視図を示し、図5Bは、図4のプリフォームの縦断面図を示す。
図6図6Aは、図5のプリフォームからブロー成形された容器の同様の図を示し、図6Bは、図5のプリフォームからブロー成形された容器の別の同様の図を示す。
図7図7Aは、流体供給システムを組み立てる方法を示す斜視図であり、図7Bは、流体の供給に使用する際の完成したシステムを示す縦断面図である。
図8図8Aは、図7の流体供給システムに使用される供給装置の変形例を示す縦断面図であり、図8Bは、図7の流体供給システムに使用される供給装置の別の変形例を示す縦断面図である。
図9図9Aは、完成した状態の、図3図7の流体供給装置の斜視図を示し、図9Bは、プリフォームおよび供給装置の分解斜視図を示す。
図10】本発明の流体供給システムの代替実施形態の分解斜視図を示す。
図11図11Aは、プリフォームであって、そこから図10の流体供給システムの容器がブロー成形されるプリフォームの斜視図を示し、図11Bは、同プリフォームの縦断面図を示す。
図12図12Aおよび12Bは、図11のプリフォームをブロー成形して得られた容器の同様の図を示す。
図13図13Aは、図10図12の実施形態の容器のネックに供給装置を取り付ける方法を示す部分縦断面側面図であり、図13Bは、同容器の上面図である。
図14図14A、14B、14Cは、従来のシステムと比較した場合の、この実施形態の流体供給システムのコンパクト性を示す。
図15図15Aおよび15Bは、従来の流体供給システムに勝る、本発明の流体供給システムの様々な利点を示す。
図16図16Aおよび16Bは、従来の供給装置と比較した場合の、本発明の供給装置の一体化されていない部分のコンパクト性を示す。
【発明を実施するための形態】
【0026】
他の物品A1〜Anも含む梱包箱で従来の流体供給システムまたはトリガスプレーTSを輸送する際の主な問題は、トリガスプレーTSに作用する力Fが変形(特に、供給装置Dと容器Cとの接続部I(図1)の)の原因となる場合があることである。これらの力Fは、トリガスプレーTSが、同じ注文の一部分を成す無作為の物品Aと共に梱包されたときに梱包箱P内で適切に支持されないことによって生じる。接続部Iは、普通は容器Cのネックにあり、そこで、供給装置Dは、容器Cに螺合またはスナップ留めされる。この領域の変形(曲がった矢印によって模式的に示されている)は、容器Cの内容物の漏れLをもたらし得る。トリガスプレーTSの変形は別として、別の漏れの原因は、普通は供給装置Dのシリンダに配置され、トリガTが押し下げられるたびに露出される通気口Vにある。というのも、このような露出が、トリガスプレーTSがインターネット注文の一部分として他の物品Aと共に梱包箱Pで輸送されているときに生じる場合があるからである。
【0027】
本発明によって提案される解決策の一部分が、図2に模式的に示されている。容器または「ボトル」2の一体部分として供給装置3のハウジングおよび/またはフレームの部分6(図示の実施形態では「シュラウド」という)を形成することによって、安定した流体供給システム1が得られ、容器2のネック領域16における漏れが防止される。このことは、真っ直ぐなまたは曲がっていない矢印によって模式的に表現されている。
【0028】
流体供給システム1の容器2は、可撓性の内容器またはバッグ4および形状保持用のまたは堅い外容器5(図3B)を備える。図示の実施形態において、内容器は、ポリオレフィン(例えば、PEまたはPP)製であってもよく、一方、外容器5は、PET製であってもよい。ポリオレフィンは、優れた耐薬品性を有し、可撓性を提供し、一方、PETは、良好なガスバリア性を有し、強度および安定性ならびに優れた仕上がりを提供する。このように、内容器4および外容器5は、相補的な性質を有する。流体供給システムの使用意図に応じて、内層および外層に他の材料を選択してもよいことは明らかであろう。
【0029】
内容器4および外容器5は、ネック16またはその近くで互いに連結されている。図示の実施形態では、内容器4および外容器5は、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2009/041809号パンフレットに記載されているように、容器2の底部17で互いにさらに連結されている。この連結部は、プリフォーム23の外層25の底部35を貫通する、内層24の突起31を含む。内容器4と外容器5との間の空間18は、開口19によって周囲の雰囲気に接続され得る。図示の実施形態では、開口19は、内容器4と外容器5との連結部の近くまたはその周りで底部17に形成されている。あるいはまたはさらに、開口は、ネック領域16または外容器5の任意の他の部分に形成されてもよい。この開口により、周囲空気が、流体が内容器4から供給されるときに常に空間18を満たすことが可能になるため、従来の容器で必要とされるような、容器の内部と流体連通する通気口は不要である。このようにして、さらなる潜在的な漏れの原因が取り除かれる。
【0030】
容器2の層の一方、すなわち、内容器4または外容器5のいずれかは、供給装置3のハウジングおよび/またはフレームの一体化された部分6を形成するようにネック領域16を越えて延在する。この実施形態では、PP製の内容器4が延在して供給装置3のシュラウド36を形成している。言い換えれば、機能的な観点から供給装置3の一部分を形成するシュラウド36は、容器2と構造的に一体化されている。
【0031】
容器2と一体成形されていない、供給装置3の部分7は、多くの可動部分を有する。この実施形態では、供給装置3の一体化されていない部分7は、ピストン11が往復運動するように配置されたピストンチャンバ10を含む一体型本体またはフレーム13を含む(図9B)。ピストン11は、フレーム13に揺動可能に連結されたトリガ9によって駆動される。2つの付勢部材22は、ピストン11がピストンチャンバ10の端壁から離される、ピストン11の伸長位置に来る待機位置にトリガ9を付勢する。ピストンチャンバ10は、流体入口20に接続されおり、流体入口20は、容器2内に延在する浸漬管21に接続され得る。ピストンチャンバ10は、フレーム13に形成された流出路14にさらに接続されている。
【0032】
トリガ9を操作すると、ピストン11は、ピストンチャンバ10の端壁32に向かって移動し、ピストンチャンバ10内に存在する流体または空気を加圧する。トリガ9を解放すると、付勢部材22が、待機/伸長位置に向かってトリガ9およびピストン11を移動させ、これにより、ピストンチャンバ10内に部分真空が発生して、容器2から流体が引き出される。トリガ9の反復操作により、圧力下でピストンチャンバ10は流体で満たされる。ピストンチャンバ10と流出路14との間には、予圧弁12、例えば、その開示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2008/116656号パンフレットに詳細に記載されているドーム状のダイヤフラム弁が配置される。フレーム13と、シュラウド36および容器2と一体成形された壁28との間に配置されることにより、予圧弁12には、予張力が加えられている。この予圧弁12は、ピストンチャンバ10内で所定の圧力に達したときにのみ流体が供給されることを確実にする。流出路14は、加圧流体の流れを噴霧に変換するノズル15で終端している。
【0033】
図示の実施形態では、シュラウド36だけでなく、供給装置3の機能部分も形成する付勢部材22も、容器2と一体に形成されている。ただし、シュラウド36は、内容器4と一体に形成されているが、付勢部材22は、外容器5(すなわち、2つの層の他方)と一体に形成されている。
【0034】
内容器4および外容器5は共に、射出成形とその後のブロー成形によって形成される。射出成形の結果、試験管のような形状のプリフォーム23が得られる(図4A図5A図5B)。このプリフォーム23は、内層24および外層25を有し、これらは、ブロー成形後に、それぞれ内容器4および外容器5を形成する(図4B図6)。シュラウド36および付勢部材22は、層24、25が射出成形されるときに形成され、ブロー成形の間その形状および寸法を維持する。内層24および外層25は、別々に射出成形された後に、互いに連結されてもよいし、多成分射出成形プロセスで形成されてもよい。
【0035】
容器2と一体に形成されていない、供給装置3の部分7(図示の実施形態では、フレーム13、トリガ9、ピストン11、およびノズル15)は、機械的固定によって、容器2(ハウジングの一体化された部分6と、この事例ではシュラウド36と、一体化された付勢部材22とを含む)に組み付けられる。フレーム13の突起34およびシュラウド36の内側の凹部33によるスナップフィット(図7A)、ねじ固定、またはバヨネットによる連結を含む様々な形態の機械的固定を考えることができる。これらの固定システムはすべて、フレーム13の下縁26と容器2のネック16との間の優れたシールを保証する。供給装置3の一体化されていない部分7が、容器2に対して、矢印の方向に押し付けられると、ノズル15が、シュラウド36の凹部29内に収容される一方で、トリガ9は、シュラウド36の開口30を通って下方に突出する。
【0036】
容器2は、内容器4と外容器5との間の空間18に置換空気Rを通すことによって通気される(図7B)ため、流体と接触する内容器4の内部には、「頂部」の空気がまったく(または少なくともほとんど)存在しない。その結果、入口20または浸漬管21が流体と常に接触することになるため、流体供給システム1は、任意の可能な向きで使用することができるようになる(図7C)。実際には、正確に縁まで容器を満たすことができないことから、流体レベルFL上に少量の空気が残り得るので、入口20を長くしてもよい(図8B)し、浸漬管21を使用してもよい(図8A)。その場合でも、このような浸漬管は、以下に述べるように、従来のトリガスプレーの浸漬管よりもはるかに短くすることができる。
【0037】
図10に示すように、本発明の根底にある原理は、その開示が参照により本明細書に組み込まれる国際公開第2013/043938号パンフレットに開示されている種類の、エアゾール噴霧器の機能を有するバッファリングトリガスプレー(buffering trigger sprayer)にも適用することができる。この流体供給システム1の供給装置3は、主に、バッファ27の存在によって第1の実施形態の供給装置3と異なる。このバッファ27は、ピストンチャンバ10内で加圧されたが、流体がピストンチャンバ10から供給される速度でノズル15を通過することができなかった余剰の流体を収容する役割を果たす。さらに、ピストンチャンバ10は、フレーム13内に、先の実施形態のように水平にではなく垂直に配置されている。その結果、ピストン(図示せず)も垂直方向に往復運動する。そして、決定的な違いとしては、予圧弁(図示せず)が、出口通路(同じく図示していないが、同様に垂直に延びている)とノズル15との間に配置されていることが挙げられる。
【0038】
この実施形態では、供給装置3のハウジングおよび/またはフレームの部分6(ここでは、シュラウド36)のみが容器2と一体に形成されている。この実施形態では、付勢部材22は、トリガ9と一体に形成されており、供給装置3の非一体化部7の一部分を形成している。第1の実施形態と同様に、シュラウドは、内容器4と一体に形成され、内容器4は、同様にPP製であり、一方、外容器5は、PET製である。内容器4および外容器5は、ここでも、プリフォーム23の内層24および外層25をブロー成形することによって作製される(図11図12)。第1の実施形態と同様に、内層24および外層25は、プリフォーム23または容器2のネック16またはその近くで互いに連結されている。内層24および外層25は、ブロー成形後に容器2の底部17の一部分となる、プリフォーム23の底部35またはその近くでさらに連結されている。通気口19は、同様に容器2の底部17に配置されている。
【0039】
この実施形態では、シュラウドは、2つの部分、すなわち、供給システム1の外周の約4分の3にわたって延在する第1の部分36と、第1の部分36によって開いたままになっている隙間を部分的に埋める第2の部分37とから構成されている。第1のシュラウド部分36と第2のシュラウド部分37との間には、2つのスロット38が形成されている。これらのスロット38は、供給システム1の使用中にトリガ9が押し下げられるときにトリガ9の縁部39を収容する役割を果たす。第2のシュラウド部分37は、ストッパ、およびトリガ9に作用する補助的な付勢部材としての役割も果たす。容器2は、トリガ9の下部を押し下げたときに収容するための凹部40を含み、トリガの移動を制限するためのストッパとしても機能する。
【0040】
供給装置3のハウジングおよび/またはフレームの部分6(シュラウド)を容器2に一体化することによって、ネック16を、従来のトリガスプレーよりも小さくすることができる。これは、ネック16が、供給装置3のフレームの縁部26(図13A)と共にシールを形成するだけでよく、トリガスプレーまたは流体供給装置1に作用する大きな荷重に耐える必要がないためである。その結果、供給装置3の一体化されていない部分7は、距離dによって示されているだけ、容器2の中にさらに挿入することができる。流体供給システム1の全体は、国際公開第2013/043938号パンフレットのバッファリングトリガスプレーよりもコンパクトにすることができ、その2つの変形例を、図14Aおよび図14Bに示す。本出願人によって商標Impress(商標)で市販されている、国際公開第2013/043938号パンフレットのバッファリングトリガスプレーまたは流体供給システム101は、シール縁部126および容器102のネック116から高さh1まで延在する供給装置103を有する(図14A)。本出願人は、Impress(商標)Miniという、このバッファリングトリガスプレー201のよりコンパクトなバージョンを既に開発している。このよりコンパクトなバージョンでは、シール縁部226より上の供給装置3の高さは、値h2まで低減されている(図14B)。しかしながら、ImpressおよびImpress Miniの供給システムの両方は、十分な強度および安定性を確保するために一定の寸法を必要とする、容器と供給装置との連結部に依拠している。ハウジングおよび/またはフレームの一部分と容器とを一体化することによって、本発明は、流体供給システム1が、従来技術のImpress Miniバッファリングトリガスプレーよりもさらに低い、シール縁部26より上の高さh3を有することを可能にする。
【0041】
先の実施形態と同様に、供給装置3の一体化されていない部分7は、スナップフィットによって、一体化された部分6を含む容器2に組み付けられる。そしてこの場合も同様に、内容器4と外容器5との間の空間18への通気により、頂部の空気が(実質的に)なくなるので、流体供給システム1は、任意の所望の向きで使用することができる。
【0042】
本発明の流体供給システムおよび本発明の流体供給システムの製造方法は、図15Aおよび図15Bならびに図16Aおよび図16Bに示すように、従来のトリガスプレーおよび従来のトリガスプレーの製造方法に勝る多くの利点を提供する。
【0043】
最初に図15を参照すると、従来技術では、組み立て中の(長い)浸漬管321の位置ずれおよび充填ラインでの流体供給システム1の充填がしばしば問題となっていた。浸漬管321は、容器302の底までずっと延びていなければならなかったので、比較的長いものであった。また、浸漬管321は、比較的細く、可撓性を有するものであったため、容器302のネック316に向けるのが容易ではなかった(図15Aの上部)。本発明の流体供給システム1は、浸漬管を必要としないか、または非常に限られた長さの浸漬管21しか必要としないため、この問題はもはや生じない(図15Bの上部)。
【0044】
充填ラインで従来技術の容器302に充填する際に生じる別の問題は、流体が充填口500から吐出される圧力に起因して、流体が発泡し始めることであった(図15Aの中央)。この発泡は、漏れおよび容器302の不完全な充填につながっていた。本出願の容器2は、流体で満たされるべき内容器4と外容器5との間に空間18を有する二重壁容器であるため、発泡を効果的に抑制することができる。圧力源42によって加圧空気または別のガスを空間18に供給することができ、空間18内の圧力は、内容器4に注入される流体が発泡するのを防止する(図15Bの中央)。
【0045】
従来技術の容器302のさらに別の問題は、容器302の壁が薄かったことから、容器302の壁の厚さに対して垂直方向の、容器302の耐久性または安定性がごく小さいものであったことである。その結果、容器302の側壁にラベル341(例えば、内容物の商標を示し、情報を提供するラベル)を貼り付けることが困難であった(図15Aの下部)。一方、本出願の容器2は、内層と外層との間の空間18に加圧空気を充填して、ラベル41を貼り付けるための安定した表面を提供することを可能にする(図15Bの下部)。
【0046】
最後に、長い浸漬管321を有する従来技術の供給装置303は、特定の寸法の梱包箱Pへのこれらの装置の梱包に関して非効率であった(図16A)。本出願の供給システム1は、浸漬管21を非常に短くするか、またはこれを完全に無しで済ませることを可能にすることから、はるかに多い数の供給装置3を、同様の梱包箱に梱包することができるため、保管コストおよび輸送コストが低減される(図16B)。
【0047】
本発明について、多くの例示的な実施形態を用いて説明したが、本発明がこれらの実施形態に限定されないことは明らかであろう。例えば、ハウジングおよび/またはフレームの他の部分を容器と一体化することができる。また、供給装置のハウジングおよび/もしくはフレームの部分または可動部分は、本明細書で説明および図示したのと異なる、二重壁容器の他の層と一体化することができる。さらに、図示の実施形態では、二重壁容器は、射出成形によって作製されたプリフォームをブロー成形することによって作製されているが、二重壁押出成形品に基づいてブロー成形を行うこともできる。その場合、二重壁押出成形品をブロー成形して、ハウジングおよび/またはフレームの一体化された部分を含む容器にする前に、例えば切断によって押出成形品の一部分を成形してよい。最後に、本発明は、トリガ式流体供給器だけに適用可能なのではなく、押しボタンまたは垂直可動レバーなどの他の種類の作動装置によって操作される流体供給システムにも同様に適用することができる。垂直可動作動装置を有するこのような供給システムは、液体石鹸またはローションにしばしば使用される。
【0048】
本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ規定される。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5A
図5B
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8A
図8B
図9A
図9B
図10
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A-14C】
図15A
図15B
図16A
図16B