(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860277
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】セラミックヒータ
(51)【国際特許分類】
H05B 3/48 20060101AFI20210405BHJP
H05B 3/18 20060101ALI20210405BHJP
H05B 3/00 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
H05B3/48
H05B3/18
H05B3/00 320C
【請求項の数】4
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2018-131949(P2018-131949)
(22)【出願日】2018年7月12日
(65)【公開番号】特開2020-9704(P2020-9704A)
(43)【公開日】2020年1月16日
【審査請求日】2020年4月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004547
【氏名又は名称】日本特殊陶業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100142686
【弁理士】
【氏名又は名称】中島 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】牧野 友亮
(72)【発明者】
【氏名】杉山 敦俊
(72)【発明者】
【氏名】東出 侑也
【審査官】
石黒 雄一
(56)【参考文献】
【文献】
特開2017−69083(JP,A)
【文献】
特開2006−120559(JP,A)
【文献】
特開平11−74063(JP,A)
【文献】
実開昭49−127844(JP,U)
【文献】
実開昭61−85089(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05B 3/00− 3/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸線方向に延びるセラミック製の筒状のヒータ本体と、前記ヒータ本体に外嵌されている金属製の環状のフランジとを備えたセラミックヒータにおいて、
前記フランジにはアース線が接続され、
前記フランジは、前記軸線方向に延びる円筒状の側部と、当該側部に連なり径方向に縮径するように湾曲する底部と、からなる凹状部を有し、
前記凹状部には絶縁材が充填され、当該絶縁材を介して前記ヒータ本体に接合され、
前記フランジは、前記底部に連なり前記軸線方向の先端側に延びて水中に直接曝される延伸部をさらに有することを特徴とするセラミックヒータ。
【請求項2】
請求項1に記載のセラミックヒータであって、
前記延伸部は、前記絶縁材よりも前記軸線方向の先端側に突出しているセラミックヒータ。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載のセラミックヒータであって、
前記絶縁材はガラスで構成されたセラミックヒータ。
【請求項4】
請求項1〜3の何れか1項に記載のセラミックヒータであって、
前記延伸部は、前記底部の外面から0.5mm以上突出しているセラミックヒータ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、例えば温水洗浄便座、電気温水器、24時間風呂、等に用いられるセラミックヒータに関する。
【背景技術】
【0002】
通常、温水洗浄便座には、樹脂製の容器である熱交換器とセラミックヒータとを有する熱交換ユニットが備えられている。セラミックヒータは、熱交換器内に収容された洗浄水を温めるために用いられる。
【0003】
通常、温水洗浄便座には、樹脂製の容器(熱交換器)を有する熱交換ユニットが用いられている。この熱交換ユニットには、熱交換器内に収容された洗浄水を暖めるために、筒状のセラミックヒータが取り付けられている。
この種のセラミックヒータとしては、円筒状のセラミック製のヒータ本体に、円環状の金属製のフランジを外嵌し、ガラスを介してヒータ本体とフランジとを接合したものが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−069083号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、セラミックヒータの表面にクラックが入るなどしてヒータ部が水中に露出し漏電する事故を防止するため、金属製のフランジに対しアース線を接続することで外部に接地する対策が採られている。しかしながら、フランジを接合するガラスは絶縁性であるため、
図6に示すように、フランジの外表面までガラスが覆うことでフランジの外表面が水中に曝されなくなる可能性がある。その際はフランジが水と接しないため、外部に接地できない虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一側面のセラミックヒータは、軸線方向に延びるセラミック製の筒状のヒータ本体と、前記ヒータ本体に外嵌されている金属製の環状のフランジとを備えたセラミックヒータにおいて、前記フランジにはアース線が接続され、前記フランジは、前記軸線方向に延びる円筒状の側部と、当該側部に連なり径方向に縮径するように湾曲する底部と、からなる凹状部を有し、前記凹状部には絶縁材が充填され、当該絶縁材を介して前記ヒータ本体に接合され、前記フランジは、前記底部に連なり前記軸線方向の先端側に延びて水中に直接曝される延伸部をさらに有する。
このようなセラミックヒータによれば、延伸部が水中に直接曝されることで、アース線を介して外部に確実に接地することができる。
【0007】
また、本開示の一側面のセラミックヒータにおいて、前記延伸部は、前記絶縁材よりも前記軸線方向の先端側に突出している構成とされてもよい。
このようなセラミックヒータによれば、延伸部が絶縁材よりも軸線方向の先端側に突出しているため、延伸部を水中に曝しやすくすることができる。
【0008】
また、本開示の一側面のセラミックヒータにおいて、絶縁材はガラスで構成されてもよい。
このようなセラミックヒータによれば、フランジの接合工程を簡素化することができる。
【0009】
また、本開示の一側面のセラミックヒータにおいて、前記延伸部は、前記底部の外面から0.5mm以上突出している構成とされてもよい。
このようなセラミックヒータによれば、延伸部が底部の外面から0.5mm以上突出しているため、延伸部を水中に曝しやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】(a)は本発明を具体化した実施形態におけるセラミックヒータの正面図、(b)は同セラミックヒータにおけるフランジ及びガラスの部分を軸方向に沿って切断したときの部分破断面図。
【
図2】実施形態のセラミックヒータのガラス部分を透過して示す平面図。
【
図3】実施形態のセラミックヒータのセラミック層のヒータパターン層側を展開して示す説明図。
【
図4】(a)は実施形態のセラミックヒータのフランジを示す平面図、(b)は(a)のA−A断面図。
【
図5】実施形態のセラミックヒータにおけるフランジ及びガラスの部分を軸方向に沿って切断したときの要部拡大破断面図。
【
図6】従来例のセラミックヒータにおけるフランジ及びガラスの部分を軸方向に沿って切断したときの要部拡大破断面図。
【
図7】実施形態のセラミックヒータにおけるフランジ及びガラスの部分を軸方向に沿って切断したときの要部拡大破断面図。
【
図8】(a)〜(f)は実施形態のセラミックヒータの製造方法を示す説明図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明を具体化した一実施形態のセラミックヒータ及びその製造方法を
図1〜
図8に基づいて説明する。
【0012】
本実施形態のセラミックヒータ11は、例えば温水洗浄便座の熱交換ユニットの熱交換器において、洗浄水を暖めるために用いられるものである。
【0013】
図1、
図2に示されるように、このセラミックヒータ11は、円筒状をなすセラミック製のヒータ本体13と、ヒータ本体13に外嵌される金属製の円環状のフランジ15とを備えている。ヒータ本体13は、セラミック管17と、そのセラミック管17の外周のほぼ全体を覆うセラミック層19とにより構成されている。本実施形態では、セラミック管17の外径が10mmφ、内径が8mmφ、長さが65mmに設定され、セラミック層19の厚さが0.5mm、長さが60mmに設定されている。セラミック層19はセラミック管17の外周を完全には覆っていないため、ヒータ本体13の外周面14には、軸方向に沿って延びる例えば幅1mm×深さ0.5mmの溝部21が形成されている。
【0014】
このヒータ本体13を構成しているセラミック管17及びセラミック層19は、例えばアルミナからなる。アルミナの熱膨張係数としては、50×10
−7/K〜90×10
−7/Kの範囲内であり、本実施形態のものでは70×10
−7/K(30℃〜380℃)となっている。
【0015】
図3に示されるように、セラミック層19の内周面(セラミック管17側の面)または内部には、蛇行したパターン形状のヒータパターン層22及び一対の内部端子23が形成されている。これらの内部端子23は、図示しないビア導体等を介して、セラミック層19の外周面の端部の外部端子25(
図1参照)と電気的に接続されている。
【0016】
図4に示されるように、フランジ15は、例えばステンレス等の金属からなる円環状の部材であり、板材の中央部分が第1面S1の側に曲げられて凹状(カップ形状)となったものである。より具体的にいうと、本実施形態のフランジ15は、例えば厚さ1mmの板材を曲げることで形成されたものである。板材の中央部には、内面である第1面S1及び外面である第2面S2を貫通する穴部27が形成されている。本実施形態では、凹状部16の開口部側(即ち
図4(b)の上側)の内径は、例えば16mmφに設定されている。一方、凹状部16の底部側(即ち
図4(b)の下側)の内径、つまり穴部27の内径は、例えば12mmφに設定されている。また、凹状部16の開口部には、アース線34(
図1参照)が接続され外部に接地されている。
【0017】
また、フランジ15の全体の高さH1(
図4(b)の上下方向)は例えば6mmであり、半径r(例えば1.5mm)にて湾曲した底部29と、底部29から上方に(軸方向と垂直に)延びる円筒状の側部31と、底部29から下方に(軸方向と垂直に)延びる延伸部32から構成されている。すなわち、フランジ15は、軸線方向に延びる円筒状の側部31と、側部31に連なり径方向に縮径するように湾曲する底部29と、からなる凹状部16を有している。そして、底部29に連なり軸線方向の先端側に延びて水中に直接曝される延伸部32をさらに有する。
なお、例えば、底部29の先端側の外面から延伸部32までの高さH2は1.5mmであり、底部29の先端側の外面から開口部の上端までの高さH3は4.5mmである。また、半径rは、軸方向に沿った断面における半径を意味する。
【0018】
ここで、フランジ15を形成する金属の熱膨張係数は、100×10
−7/K〜200×10
−7/Kの範囲内の値となる。例えば、フランジ15がSUS304(主成分がFe、Ni、Cr)製である場合には、その熱膨張係数は、178×10
−7/K(30℃〜380℃)であり、SUS430(主成分がFe、Cr)製である場合には、その熱膨張係数は、110×10
−7/K(30℃〜380℃)である。
【0019】
本実施形態では、
図5に示されるように、フランジ15の凹状部16のうち、ヒータ本体13の外周面14とフランジ15の内面である第1面S1とで囲まれた空間が、ガラス33が充填されるガラス溜り部35とされている。なお、
図1及び
図2では、ガラス33の部分にハッチングをかけて示している。
【0020】
なお、第1端とは、
図3では上端を示し、第2端とは、
図3では下端を示す。また、セラミックシート19を厚さ方向から見たときに上記した一対の配線部44間に位置する配線部44は、第1端が接続部45を介して隣接する配線部44の第1端に接続されるとともに、第2端が接続部45を介して隣接する配線部44の第2端に接続されている。
【0021】
ガラス溜り部35には、ガラス33がガラス溜り部35の高さH4の1/3以上に充填されており、そのガラス33を介してヒータ本体13とフランジ15とが溶着接合されている。
【0022】
ガラス33としては、例えばNa
2O・Al
2O
3・B
2O
3・SiO
2系のガラス、いわゆるAl
2O
3・B
2O
3・SiO
2系のガラス(ホウケイ酸ガラス)が用いられている。このガラス33の熱膨張係数は、例えば50×10
−7/K〜90×10
−7/K(30℃〜380℃)の範囲内の値となり、本実施形態では62×10
−7/K(30℃〜380℃)となっている。
【0023】
図5をさらに拡大した
図7に示されるように、凹状部16の底部29側に位置する穴部27の内面28と、ヒータ本体13の外周面14との間には、例えば0.1mm〜1.0mm程度の隙間39が存在し、本実施形態ではその隙間39の寸法Yが0.3mm〜0.5mm程度に設定されている。第1面S1側のガラス溜まり35に充填されたガラス33の一部は、この隙間39にヒータ本体13の外周面14に沿って軸方向に流出している。
【0024】
ここで、
図7のフランジ15の場合、第2面S2側における穴部27の周縁を含むフランジ15の底部29から下方に(軸方向と垂直に)延びる延伸部32が形成されている。換言すると、延伸部32は底部29から下方に向かって延びている。本実施形態の延伸部32は、底部29の下端を曲げることで形成されている。
本実施形態のセラミックヒータ11では、第2面S2側にこのような延伸部32があることから、ガラス33が軸方向に沿って流出している領域よりもさらに先端側にまでフランジ15が突出することとなる。これにより、延伸部32がガラス33に覆われることなく水中に確実に晒されることで、アース線34を介して外部に確実に接地することができる。
【0025】
次に、本実施形態のセラミックヒータ11を製造する方法を
図8に基づいて説明する。
【0026】
まず、
図8(a)に示されるように、円筒状をなすアルミナ質のセラミック管17を仮焼成する。
【0027】
また、
図8(b)に示されるように、アルミナ質のセラミックシート51の表面または積層したシート内部に、タングステン等の高融点金属を印刷する。これにより、後にヒータパターン層22、内部端子23及び外部端子25となるパターン53を形成する。
【0028】
次に、このセラミックシート51の片側面にセラミックペースト(アルミナペースト)を塗布し、
図8(c)に示されるように、セラミックシート51をセラミック管17の外周面に巻き付けて接着してから一体焼成する。その後、外部端子25にニッケルめっきを施し、ヒータ本体13とする。
【0029】
次に、ステンレスからなる板材をプレス成形してカップ状のフランジ15を形成した後、フランジ15を、
図8(d)に示されるように、ヒータ本体13の所定の取付位置に外嵌する。この状態でヒータ本体13及びフランジ15を図示しない治具で支持する。
【0030】
また、ホウケイ酸ガラスからなる上記ガラス材料をリング状にプレス成形し、これを640℃で30分仮焼して、仮焼済みガラス材55を作製する。そして、
図8(e)に示されるように、ヒータ本体13とフランジ15との間のガラス溜り部35に、リング状の仮焼済みガラス材55を配置する。
【0031】
次に、この状態のものを焼成用の連続炉に投入して、ヒータ本体13とフランジ15とのガラス付けを行う。具体的には、連続炉内を還元雰囲気(例えば、N
2+5%H
2)にして溶着温度(1015℃)で所定時間加熱することで、仮焼済みガラス材55を溶融させる。その後、仮焼済みガラス材55を常温(例えば25℃)まで冷却して固化させることで、ガラス33を介してヒータ本体13とフランジ15とを溶着固定し、セラミックヒータ11を完成させる。
【符号の説明】
【0032】
11…セラミックヒータ、13…ヒータ本体、15…フランジ、16…凹状部、27…穴部、33…ガラス、35…ガラス溜り部、d1…フランジの径方向、S1…第一面、S2…第二面