(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860282
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】バルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 3/18 20060101AFI20210405BHJP
F16K 31/122 20060101ALI20210405BHJP
F16K 51/02 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
F16K3/18 Z
F16K31/122
F16K51/02 B
【請求項の数】9
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2015-86291(P2015-86291)
(22)【出願日】2015年4月20日
(65)【公開番号】特開2015-209977(P2015-209977A)
(43)【公開日】2015年11月24日
【審査請求日】2018年3月20日
(31)【優先権主張番号】A297/2014
(32)【優先日】2014年4月25日
(33)【優先権主張国】AT
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】593030945
【氏名又は名称】バット ホールディング アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】特許業務法人創成国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フローリアン エールネ
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ バックマン
(72)【発明者】
【氏名】マティアス ヴォザセック
【審査官】
小岩 智明
(56)【参考文献】
【文献】
特開昭56−113875(JP,A)
【文献】
特表2013−529369(JP,A)
【文献】
特開平11−315939(JP,A)
【文献】
特開2002−039401(JP,A)
【文献】
特開2002−250470(JP,A)
【文献】
特開2009−299889(JP,A)
【文献】
特表2013−518224(JP,A)
【文献】
米国特許第5566922(US,A)
【文献】
欧州特許出願公開第0436770(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 3/18,31/122,51/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルブシート(2)により取り囲まれている開口部(3)と、
閉位置において前記バルブシート(2)に対して押し付けられて前記開口部(3)を閉塞し、中間位置において前記バルブシート(2)から離間する一方で前記開口部(3)を覆い、全開位置において前記開口部(3)の全部または少なくとも一部を開放する閉塞要素(4)と、
前記閉塞要素(4)を全開位置および中間位置の間で第1軌道(6)にしたがって駆動するまたは往復させる第1駆動装置(5)と、
前記閉塞要素(4)を中間位置および閉位置の間で第2軌道(8)にしたがって駆動するまたは往復させる少なくとも1つの第2駆動装置(7)と、を備え、
前記第1軌道(6)および前記第2軌道(8)が相互に傾斜するように配置されているバルブ(1)であって、
前記バルブ(1)はバルブロッド(21)を備え、
前記バルブ(1)は、前記閉塞要素(4)を全開位置および中間位置の間で第1軌道(6)にしたがって駆動するまたは往復させる複数の前記第1駆動装置(5)と、前記バルブロッド(21)に接続されたヨーク(22)と、を備え、
前記複数の第1駆動装置(5)のそれぞれが複数の伝動要素(9)のそれぞれを介して前記ヨーク(22)に係合しており、
前記閉塞要素(4)が前記バルブロッド(21)に接続され、かつ、前記複数の伝動要素(9)が前記第2駆動装置(7)によって可逆的に変形されるように構成されていることを特徴とするバルブ。
【請求項2】
請求項1記載のバルブにおいて、
前記閉塞要素(4)がその閉位置において、前記閉塞要素(4)を中間位置に平行移動させる位置にあることを特徴とするバルブ。
【請求項3】
請求項1または2記載のバルブにおいて、
前記複数の伝動要素(9)が、縦方向に延在する可撓部(10)を備えているまたは当該可撓部(10)に取り付けられていることを特徴とするバルブ。
【請求項4】
請求項1〜3のうちいずれか1つに記載のバルブにおいて、
前記複数の伝動要素(9)は、少なくとも1つのリンク(11)によって相互に連結されている少なくとも2つのジョイント(12)を備え、各ジョイント(12)が少なくとも1つの軸線(13)の回りの揺動を可能としており、一方の前記ジョイント(12)は前記第1駆動装置(5)に接続され、他方の前記ジョイント(12)は前記ヨーク(22)に接続されていることを特徴とするバルブ。
【請求項5】
請求項1〜4のうちいずれか1つに記載のバルブにおいて、
前記複数の伝動要素(9)のうち一の伝動要素(9)が、第1駆動装置(5)および第2駆動装置(7)のうち少なくとも一方の操縦用のスイッチ(15)を切り替えるための少なくとも1つのスイッチ要素(14)を備え、または当該スイッチ要素(14)に連結されていることを特徴とするバルブ。
【請求項6】
請求項5記載のバルブにおいて、
前記スイッチ要素(14)は、前記複数の伝動要素(9)とともに前記第1軌道(6)に対して平行に移動するように前記複数の伝動要素(9)のうち一の伝動要素(9)に対して固定されていることを特徴とするバルブ。
【請求項7】
請求項1〜6のうちいずれか1つに記載のバルブにおいて、
前記複数の伝動要素(9)が、前記第1軌道(6)に対して平行な方向について、前記第2軌道(8)に対して平行な方向よりも堅固に構成されていることを特徴とするバルブ。
【請求項8】
請求項1〜7のうちいずれか1つに記載のバルブにおいて、
前記複数の第1駆動装置(5)のそれぞれが、相対的に可動な少なくとも2つの駆動要素(16)(17)(18)(19)を備え、一またはそれぞれの駆動要素(17)(19)がバルブハウジング(20)に対して固定されて配置されていることを特徴とするバルブ。
【請求項9】
請求項8記載のバルブにおいて、
前記複数の第1駆動装置(5)および前記第2駆動装置(7)のうち少なくとも一方またはそれぞれがピストンシリンダ装置を備え、一またはそれぞれの駆動装置(5)(7)の少なくとも1つの駆動要素(17)(19)がシリンダであり、一またはそれぞれの駆動装置(5)(7)の少なくとも他の駆動要素(16)(18)が当該シリンダの内部で可動に案内されるピストンであることを特徴とするバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バルブに関する。
【背景技術】
【0002】
真空技術においていわゆるLバルブまたはJバルブが知られている。閉塞要素が多かれ少なかれL字形またはJ字形状の軌道にしたがって全開位置から閉位置に移動し、これとは逆に閉位置から全開位置まで移動する。バルブシートまたは閉塞要素に取り付けられているシール部材に対する摺動が抑制または回避されることにより、当該シール部材の長期間にわたる耐久性が確保される。
【0003】
このようなバルブのさまざまな実施形態が提案されている(特許文献1参照)。一実施形態によれば、閉塞要素を全開位置および中間位置の間で動かすための第1駆動装置が、ピストンシリンダ装置の形態で構成され、かつ、いわゆるガイドユニットに配置されている。このガイドユニットは、閉塞要素が中間位置から閉位置に動く際、および、
閉位置から中間位置に動く際に一緒に動かされる。これは、この動きに際して、第1駆動装置が往復することを意味する。当該技術分野の実施形態は、閉塞要素を中間位置および閉位置の間で動かすための第2駆動装置に関する技術と相互にわずかしか相違しない。第1実施形態において、ばね付勢力に対して作用するピストンシリンダ装置が採用されている。他の実施形態では、梃子手段が第2駆動装置として構成されている。
【0004】
さらに別のバルブとして、搬送バルブ分野のインサート・L−モーション・シリーズ04.3/05.3が知られている。当該バルブによれば、第1および第2駆動装置のシリンダがバルブハウジングの内部で一体化されている。第1駆動装置のシリンダに対して垂直に取り付けられたボルトであって、第2軌道または水平軌道にしたがった移動に際してヨークが摺動するボルトにより、鉛直ハブおよび水平ハブの連結、ならびに第1および第2軌道にしたがった移動が実現される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】独国特許公報 DE10 2008 049 353 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明の目的は、従来とは異なる概念によって第1および第2駆動装置を協働させるバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、バルブシートにより取り囲まれている開口部と、閉位置において前記バルブシートに対して押し付けられて前記開口部を閉塞し、中間位置において前記バルブシートから離間する一方で前記開口部を覆い、全開位置において前記開口部の全部または少なくとも一部を開放する閉塞要素と、前記閉塞要素を全開位置および中間位置の間で第1軌道にしたがって駆動するまたは往復させる少なくとも1つの第1駆動装置と、前記閉塞要素を中間位置および閉位置の間で第2軌道にしたがって駆動するまたは往復させる少なくとも1つの第2駆動装置と、を備え、前記第1軌道および前記第2軌道が相互に垂直に配置されているバルブに関する。
【0008】
本発明のバルブは、前記第2駆動装置によって可逆変形するように構成されている少なくとも1つの伝動要素を備え、前記第1駆動装置が前記伝動要素を介して前記閉塞要素に係合していることを特徴とする。
【0009】
伝動要素が第2駆動装置により可逆変形されることが基本的思想である。伝動要素は一または複数の部材により構成されている。変形性または変形の概念についてさらに説明する。伝動要素は一般的にさまざまな形態で構成されていてもよい。これは、必須ではないが撓みによって実現される(詳細は後述する)。第2駆動装置による伝動要素の可逆変形はさまざまな形態で実現される。
【0010】
閉塞要素はバルブプレートまたは平坦に形成された閉塞要素である、閉塞要素により閉塞される開口部は40〜1000[cm
2]、好ましくは60〜500[cm
2]の横断面積を有している。本発明のバルブは開閉装置として用いられる。
【0011】
周知のように、閉塞要素およびバルブシートに少なくとも1つのまたはそれぞれのシール要素が設けられている。第1軌道および第2軌道は相互に傾斜するように配置されている。当該軌道は直線状に延在していてもよいが、必須ではない。傾斜とは、角度をなしており、かつ、平行ではないことを意味する。第1軌道および第2軌道は相互に直交するように配置されている。当該軌道は移動行程と呼ばれ、閉塞要素の移動の行程を確保する。各軌道は、あらかじめ閉塞要素に固定されている点が、閉塞要素の移動に際してトレースされることにより定義される。各軌道は、相互に重なるまたは同軸に配置されている反対向きの2つの方向を有している。
【0012】
閉塞要素はバルブロッドに固定されている。閉塞要素がバルブロッドに固定され、第1駆動装置が伝動要素の中間伝動要素を介してバルブロッドに係合している。本発明のバルブは、第1軌道にしたがった駆動のために複数の第1駆動装置を備えていてもよく、第2軌道にしたがった駆動のために複数の第2駆動装置を備えていてもよい。第1軌道にしたがった閉塞要素の往復または移動のために複数の第1駆動装置が設けられていてもよく、第2軌道にしたがった閉塞要素の往復または移動のために複数の第2駆動装置が設けられていてもよい。第1駆動装置は複数の伝動要素、好ましくは各駆動装置に配置されている固有の伝動要素の中間伝動要素を介してヨークに係合されている。ヨークは、バルブロッドに対して好ましくは固定的に連結され、バルブロッドには閉塞要素が固定されている。
【0013】
中間位置についてさらに説明する。中間位置は、閉塞要素がバルブシートから離間している一方、開口部をなおも覆っている位置である。閉塞要素は、開位置において、流体およびプロセス前またはプロセス後のワークが開口部を通じて搬入または搬出されるように、開口部を全部または部分的に覆わずに開放する。
【0014】
閉位置における閉塞要素は、閉塞要素が中間位置に平行移動する位置にある。当該平行移動は、数学的には、閉塞要素の各点が同一方向または相互に平行な方向に同一の区間を移動することを意味する。当業者であれば、この関連性を別の方法で表現できる。当該関係を有する本発明の一態様によれば、伝動要素が閉塞要素の中間位置および閉位置の間の平行移動を可能にしている。これは、第2軌道が直線状に延在している必要はないことを示している。平行移動は、両端位置、すなわち中間位置および閉位置の比較において生じる。伝動要素が縦方向に延在する可撓部を備えている、または当該可撓部に設けられている。この場合、伝動要素は、完全にまたは少なくとも部分的に板バネにより構成されている。板バネは、縦方向に延在する可撓部を構成する。可撓部の縦方向への延在は、点状に構成されている可撓部ではないことを意味している。縦方向に延在する可撓部はロッド状に形成されてもよく、平板状の可撓部であってもよい。この場合も縦方向への延在に該当する。伝動要素の変形は、縦方向に延在する可撓部の全体または少なくとも大部分において生じる。
【0015】
伝動要素が少なくとも1つのリンクまたは支柱により連結されている複数のジョイントを備え、かつ、各ジョイントが軸線回りに回転可能であり、伝動要素が可逆変形可能であってもよい。この場合、伝動要素の可逆変形は、ジョイントにおいの回転を通じて生じる。ジョイントは、一軸回りの回転自由度を有するほか、複数の軸回りの回転自由度を有していてもよく、ボールジョイントであってもよい。ジョイントの間のリンクが縦方向に延在する可撓部として構成されるなど、本発明の前記態様が組み合わせられてもよい。伝動要素がジョイントおよびリンクの領域の外側において縦方向に延在する可撓部を備えているなど、複合態様が採用可能である。可撓部は、その縦方向に延在する軸線に対して直交するように配置され、当該縦方向の回りに捩じれてもよい。
【0016】
伝動要素は、第1軌道に対して平行な方向について基本的に堅固に構成されている一方、第2軌道に対して平行な方向については可逆変形可能に構成されている。すなわち、伝動要素は、第1軌道に対して平行な方向について、第2軌道に対して平行な方向よりも堅固に構成されている。伝動要素は、第1軌道に対して平行な方向に力が作用した場合、第2軌道に対して平行な方向に力が作用した場合よりも堅固であるまたは硬い。これにより、伝動要素は、第1駆動装置が第1軌道にしたがって全開位置および中間位置の間で移動する際には基本的に変形しない一方、閉塞要素が第2軌道にしたがって中間位置および閉位置の間で移動する際には第2駆動装置によって可逆変形する。
【0017】
縦方向に延在する可撓部は、その長さが幅より大きく、その幅が厚みよりも大きいので、所望の様々な硬さが実現される。可撓部の幅は厚みの2倍以上であり、好ましくは10倍以上である。伝動要素はU字形状またはL字形状に形成されている。
【0018】
伝動要素は、第1駆動装置および第2駆動装置のうち一方または両方の操作用スイッチを切り替えるための少なくとも1つのスイッチ要素を備え、または、当該スイッチ要素に連結されている。スイッチ要素は、第1軌道にしたがった中間位置に近づく方向への閉塞要素の移動の最終段階において、続いて第2軌道にしたがって閉位置に移動させるため、第1駆動装置の動作を停止させる一方、第2駆動装置を動作させるために用いられる。同様に、スイッチ要素は、第2軌道にしたがった中間位置に近づく方向への閉塞要素の移動の最終段階において、続いて第1軌道にしたがって開位置に移動させるため、第2駆動装置の動作を停止させる一方、第1駆動装置を動作させるために用いられる。スイッチ要素は、伝動要素と一体的に構成されていてもよい。スイッチ要素が別個の部材であって、螺着、ろう付け、挟持またはその他の方法によって伝動要素に堅固に連結されてもよい。スイッチ要素が伝動要素とともに第1軌道に対して平行に動く場合、スイッチ要素は伝動要素に固定されていてもよい。
【0019】
第1駆動装置および第2駆動装置のうち一方または両方は様々な構成の駆動装置であってもよい。当該駆動装置は、空気圧式、油圧式、電動式、電磁式または技術分野で知られている駆動装置であってもよい。真空技術においては油圧式または電動式の駆動装置が用いられる。第1駆動装置および第2駆動装置のうち少なくとも一方、好ましくはそれぞれがピストンシリンダ装置を備え、一方またはそれぞれの駆動装置の少なくとも一の駆動要素がシリンダであり、他方のまたはそれぞれの駆動装置のシリンダおよび他の駆動要素が当該シリンダの内部を案内されるピストンである。当該駆動装置は、閉塞要素を一の軌道にしたがった方向およびこれとは反対方向に駆動するための双方向に作用するピストンシリンダ装置である。そのほか、単方向にのみ作用するピストンシリンダ装置が用いられてもよい。他の軌道にしたがった移動は、バネ、電動式またはこれに相当する駆動装置により実現されてもよい。特許文献1の
図4、
図8および
図12に示されている戻りばね32が知られている。ピストンおよびシリンダへの配置のため、ハウジングに対して固定されている駆動要素にピストンおよびシリンダが設けられていてもよい。第1駆動装置および第2駆動装置のそれぞれが、相対的に運動可能な少なくとも2つの駆動要素を備え、駆動装置においてバルブハウジングに対して相対運動可能な駆動要素の間に伝動要素が設けられている又は作用している。
【0020】
本発明のバルブは、電子部品またはこれに相当する物が処理または製造されるプロセスチャンバを閉塞するための真空技術に用いられる。真空技術とは、0.001[mbar]または0.1[Pa]以下の圧力下での運転状態について用いられる。真空バルブは、当該圧力範囲またはこれに相当する差圧のために用いられるバルブである。真空バルブは、当該圧力下においてプロセス状態が実現されるいわゆる真空領域を有している。前記構成のバルブまたは真空バルブによれば、第1駆動装置および第2駆動装置が真空領域またはその外側領域に設けられている。真空領域をその外側の領域から画定かつ密閉するため、バルブロッドのためのベロウズ貫通ガイド、スライド貫通ガイドおよびこれらの同等物は技術分野において周知である。
【0021】
本発明のさらなる利点および詳細は、添付図面を用いて説明される。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】閉塞要素が全開位置にある状態の本発明の第1実施形態としてのバルブの正面図。
【
図2】
図1のA−A線に沿ったバルブの水平断面図。
【
図3】
図1のB−B線に沿ったバルブの鉛直断面図。
【
図4】
図1のC−C線に沿ったバルブの鉛直断面図。
【
図5】バルブの一部が省略されることにより伝動要素およびその係合態様を視認しやすくした説明図。
【
図6】閉塞要素が中間位置にある状態の本発明の第1実施形態としてのバルブの正面図。
【
図7】
図6のD−D線に沿ったバルブの水平断面図。
【
図8】
図6のE−E線に沿ったバルブの鉛直断面図。
【
図9】
図6のF−F線に沿ったバルブの鉛直断面図。
【
図10】閉塞要素が中間位置にある状態における
図5の対応説明図。
【
図11】閉塞要素が閉位置にある状態の本発明の第1実施形態としてのバルブの正面図。
【
図15】閉塞要素が閉位置にある状態における
図5の対応説明図。
【
図16】本発明の第2実施形態としてのバルブの説明図。
【
図18】伝動要素の縦方向に延在する可撓部の可逆変形に関する説明図。
【
図19】リンクおよび2つのジョイントを有する伝動要素の可逆変形に関する説明図。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明の第1実施形態としてのバルブは、プロセス対象となるワークピースがプロセスチャンバに対して出し入れされる開口部を圧力が維持されるようにまたは気密に閉塞する、真空技術において用いられる真空バルブである。本実施形態では、閉塞要素4はバルブプレートである。バルブ1の閉塞された開口部3は隅角が丸みを帯びた略矩形状に形成されている。開口部3はバルブ1のバルブシート2により囲まれている。バルブシート2は、バルブハウジング20の一部により構成されている。バルブシート2はバルブハウジング20とは別個の部材により構成されていてもよい。シール部材26が閉塞要素4に設けられている。シール部材26が同様にバルブシート2に設けられてもよく、シール部材26および閉塞要素4に設けられてもよい。
【0024】
図1〜
図5には、閉塞要素4が全開位置にある状態の本発明の第1実施形態としてのバルブ1が示されている。本実施形態では、全開位置において、閉塞要素4が開口部3を完全に開放している(
図3および
図4参照)。
【0025】
図6〜
図10には、閉塞要素4が中間位置にある状態が示されている。閉塞要素4がバルブシート2から離間する一方で開口部3を覆い、バルブシート2に対して当接していない(
図8および
図9参照)。第1駆動装置5により第1軌道6にしたがって、閉塞要素4が全開位置(
図1〜
図5参照)から中間位置(
図6〜
図10参照)に動かされ、これとは逆に中間位置から全開位置まで動かされる。本実施形態における第1駆動装置5は、純粋な鉛直ハブである。移動軌道6またはその平行線が破線により表わされている。
【0026】
図11〜
図15には、閉塞要素4が閉位置にある状態が示されている。閉塞要素4が開口部3を閉塞し、閉塞要素4がそこに設けられているシール部材26とともにバルブシート2に対して押し付けられている。閉位置において、開口部3は閉塞要素4によって一定の圧力範囲に、好ましくは気密に閉塞されている。第2駆動装置7により第2軌道8にしたがって、閉塞要素4が中間位置(
図6〜
図10参照)および閉位置(
図11〜
図15参照)の間で動かされる。移動軌道8またはその平行線が破線により表わされている。
【0027】
第2軌道8は、閉塞要素4が中間位置および閉位置の間で移動する際に伝動要素9の可逆変形に基づき、正確な直線状ではない。第1軌道6と、第1軌道6から第2軌道8への移行箇所における第2軌道8の接線とは、相互に垂直に配置されている。
【0028】
図1〜
図15に示されている本実施形態では、閉塞要素4を第1軌道6にしたがって動かすために2つの第1駆動装置5が設けられている。これは、双方向に作用するピストンシリンダ装置により構成されている(
図3、
図8および
図13参照)。第1駆動装置5におけるシリンダ17のシリンダ空間の圧力により、第1軌道6に沿ってまたは平行にピストン16が双方向に動かされ、これによって閉塞要素4が全開位置および中間位置の間を往復することができる。本実施形態では、シリンダの形態の駆動要素17がバルブハウジング20に収容かつ固定されるように配置されている(
図3、
図8および
図13参照)。可動な駆動要素16はそれぞれのピストンを構成する。本実施形態では駆動要素16が、ピストンおよびこれに固定されているピストンロッドにより構成されている。簡単のため、ピストンおよびこれに固定されているピストンロッドがまとめてピストンとみなされる。他の実施形態として、ピストンの形態の駆動要素16はバルブハウジング20に収容かつ固定され、シリンダの形態の駆動要素17がこれに対して相対的に動かされてもよい。
【0029】
ここでは一対または2つの第2駆動装置7が設けられている。これは、一方の駆動要素18がピストンを構成し、他方の駆動要素19がシリンダを構成するピストンシリンダユニットである。駆動要素19がバルブハウジング20に収容かつ固定されているシリンダの形態である。第2駆動装置7のピストンの形態の駆動要素18が、ヨーク22が可動に設けられているガイドロッド23に対して固定的に連結されている。ベロウズ貫通ガイド24によってバルブハウジング20に対して遮断されているバルブロッド21がヨーク22に対して固定されている。これにより、開口部3の領域における真空領域および当該真空領域の外側に存在する、第1駆動装置5および第2駆動装置7が設けられている領域が区分される。閉塞要素4がバルブロッド21に対して固定されている。
【0030】
本発明の第1実施形態としてのバルブ1は、第2駆動装置7によって可逆変形可能な2つの伝動要素9を備え、それぞれの第1駆動装置5は伝動要素9の中間伝動要素を通じて閉塞要素4に係合している。伝動要素9は少なくともU字形状もしくはL字形状に構成され、または少なくともそのような形状の部分を有する(
図1、
図6および
図11参照)。右側の伝動要素9は、第1駆動装置5および第2駆動装置7のうち一方または両方のためのスイッチ15を切り替えるためのスイッチ要素14を備えている。スイッチ要素14は伝動要素9に対して一体的に構成されている。本実施形態では、伝動要素9がそれぞれの第1駆動装置5の駆動要素16またはピストンをヨーク22に対して連結している。当該構成に対する伝動要素9の連結点にはそれぞれ固定点25が設けられている。第1駆動装置5は、伝動要素9の中間伝動要素、ヨーク22およびバルブロッド21を通じて閉塞要素4に対して連結されている。他の実施形態では、中間伝動要素はより多いまたは少ない構成要素より構成されていてもよい。伝動要素9が閉塞要素4またはバルブロッド21に対して直接的に固定されていてもよい。
【0031】
本発明の第1実施形態において、各伝動要素9が、それぞれの第2駆動装置7により可逆変形するために設けられている可撓部10を有している。縦方向に延在する可撓部10は板バネにより構成されていてもよい。伝動要素9が板バネにより構成されている。ピストンまたは駆動要素16およびヨーク22に対する連結のため、伝動要素9は、好ましくはここに示されているように部分的にL字形状またはU字形状に構成されている。伝動要素9に第2可撓部10’が設けられている。これによりねじれ変形が実現される。可撓部10は、
図9に示されている中間位置および
図14に示されている閉位置の間において適当に変形するように制御される。伝動要素9が部分的に固く構成されてもよく、第1可撓部10および第2可撓部10’のうちいずれか一方のみが設けられていてもよい。縦方向に延在する可撓部10または10’が伝動要素9に設けられていてもよい。
【0032】
より少ないまたは多い硬質の要素が閉塞要素4を支持している場合に第1駆動装置5を第1軌道6に沿って動かす一方、第2駆動装置7を可逆変形させるため、伝動要素9が第1軌道6に平行な方向について、第2軌道8に平行な方向よりも堅固に構成されている。これは、本実施形態では、板バネ状に構成されている伝動要素9の幅が、伝動要素9の厚さよりも大きく構成されることによって実現されている。
【0033】
次に、全開位置(
図1〜
図5参照)から中間位置(
図6〜
図10参照)を経て閉位置(
図11〜
図15参照)に至るまでの閉塞動作について説明する。
【0034】
全開位置から、第1駆動装置5のシリンダとして構成されている駆動要素17のチャンバが拡張され、ピストンとして構成されている駆動要素16が下降する。駆動要素16またはピストンの当該動作は伝動要素9を通じてヨーク22に伝達される。ヨーク22はバルブロッド21の下でガイドロッド23に摺動し、これにより閉塞要素4が第1軌道6にしたがって中間位置(
図6〜図10参照)に到達する。これは、右側の伝動要素9のスイッチ要素14がスイッチ15に作用することにより実現される。これにより、第2駆動装置7がスイッチを入れられる。
【0035】
閉塞要素4を中間位置から閉位置に動かすため、第2駆動装置7のシリンダとして構成されている駆動要素19のシリンダチャンバが拡張され、第2駆動装置7のピストンとして構成されている駆動要素18が、ガイドロッド23およびそれに設けられているヨーク22とともに第2軌道8にしたがって動かされる。これにより、ヨーク22に対して固定されているバルブロッド21が閉塞要素4とともに第2軌道8にしたがってバルブシート2に向かって動かされ、中間位置ではバルブシート2から離間していた閉塞要素4が閉位置ではそのシール部材26によってのみバルブシート2に対して押し付けられる。第2軌道8にしたがった動作に際して、伝動要素9が第2駆動装置7によって可逆変形される。本実施形態では、伝動要素9は基本的に可撓部10において変形する(
図9および
図14参照)。
【0036】
閉位置から中間位置を経て全開位置にまで至る、バルブを開放するための動作は、基本的に同様の方法にしたがって逆の手順で実現される。これに関係して、本実施形態ではガイドロッド23のためのスイッチ27が操作される。閉塞要素4が全開位置もしくは中間位置またはこれらの間の位置にある限り、ガイドロッド23のためのスイッチ27が押圧状態に維持される。中間位置から閉位置までの過程においてガイドロッド23はスイッチ27から離間する。閉塞動作に際して、スイッチ27は、中間位置に到達した場合、閉位置から中間位置への第2軌道8にしたがった動作の終期において再び押され、これにより第1駆動装置5にスイッチが入れられる。
【0037】
第1駆動装置5および第2駆動装置7は、ともに空気圧式のピストンシリンダ装置により構成されている。ピストンシリンダ装置は油圧式であってもよい。第1駆動装置5および第2駆動装置7は、双方向に作用するピストンシリンダ装置として構成されてもよく、単方向に作用するピストンシリンダ装置として構成されてもよい。カウンターストロークは適当なバネまたは弾性部材により構成されてもよい。第1駆動装置5および第2駆動装置7は、電動式または電磁式の装置であってもよく、直線駆動装置であってもよい。
【0038】
伝動要素9は、縦方向に延在する可撓部10または10’の撓みまたは捻りにより可逆変形する。
図16には、
図5、
図10および
図15と同様の他の実施形態が示されている。第2実施形態におけるそのほかのバルブ1の構成は第1実施形態において説明したのと同様である。機能は同様なので、これ以上の説明を省略する。
【0039】
図16に示されている第2実施形態において、伝動要素9はリンク11により相互に連結されている2つのジョイント12を備えている。それぞれのジョイント12は軸線13の回りに搖動可能である。本実施形態では、簡単な構成であって、固有の軸線13回りに搖動可能なジョイント12である。ボールジョイントであってもよく、複数の軸線回りに搖動可能なジョイント12が設けられてもよい。ジョイント12への移動によって第2実施形態における伝動要素9が変形するようにリンク11は堅固に構成されている。第1および第2実施形態が複合された構成ももちろん可能である。リンク11が縦方向に延在する可撓部10として構成されてもよい。
【0040】
前述した本発明の第1および第2実施形態は、閉位置における閉塞要素4が閉塞要素4の位置を中間位置に平行移動させる共通の状態を有している。当該平行移動は、
図17に示されている。長方形4は
図6〜
図10に示されている中間位置における閉塞要素4を表わしている。破線の閉塞要素4は、閉塞要素4のシール部材26が
図17には示されていないバルブシート2に対して押し付けられる閉位置を表現している。運動ベクトル28は、当該平行移動の運動ベクトルを示している。第2軌道8および第1軌道6の間の角度は
図17に示されている。閉塞要素4が第2軌道8にしたがって中間位置から閉位置に動く際、伝動要素9が第2駆動装置7によって可逆変形する際にその長さを維持することにより、当該閉塞要素4が第1軌道6に対して平行な方向に必然的に上昇する(
図18および
図19参照)。
図18は伝動要素9の縦方向に延在する可撓部10を示している。
図19は、
図16に示されている2つのジョイント12およびその間に介在するリンク11を有する伝動要素9の変形を示している。実線は中間位置にある状態を示している。
図18および
図19には示されていない閉塞要素の閉位置における変形状態を示している。
【0041】
本実施形態とは別に、他の実施形態としてのバルブにおいて、第1駆動要素および第2駆動装置のうち一方または両方が1つだけ設けられてもよく、3つ以上設けられてもよい。
【符号の説明】
【0042】
1‥バルブ、2‥バルブシート、3‥開口部、4‥閉塞要素、5‥第1駆動装置、6‥第1軌道、7‥第2駆動装置、8‥第2軌道、9‥伝動要素、10,10’‥可撓部、11‥リンク、12‥ジョイント、13‥軸線、14‥スイッチ要素、15‥スイッチ、16‥駆動要素、17‥駆動要素、18‥駆動要素、19‥駆動要素、20‥バルブハウジング、21‥バルブロッド、22‥ヨーク、23‥ガイドロッド、24‥べロウズ貫通ガイド、25‥固定点、26‥シール部材、27‥スイッチ、28‥運動ベクトル