特許第6860294号(P6860294)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6860294刺繍模様連結データ生成装置、刺繍模様連結データ生成方法、プログラムおよび縫製システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860294
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】刺繍模様連結データ生成装置、刺繍模様連結データ生成方法、プログラムおよび縫製システム
(51)【国際特許分類】
   D05B 19/00 20060101AFI20210405BHJP
【FI】
   D05B19/00 Z
【請求項の数】15
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2016-88485(P2016-88485)
(22)【出願日】2016年4月26日
(65)【公開番号】特開2017-196066(P2017-196066A)
(43)【公開日】2017年11月2日
【審査請求日】2019年4月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002244
【氏名又は名称】蛇の目ミシン工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100122426
【弁理士】
【氏名又は名称】加藤 清志
(72)【発明者】
【氏名】金剛 猛
【審査官】 ▲高▼辻 将人
(56)【参考文献】
【文献】 特開2009−219596(JP,A)
【文献】 特開平02−057288(JP,A)
【文献】 特開2014−155578(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D05B 1/00−97/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
布地の一部に刺繍された刺繍模様と空間部分と前記布地が装着された刺繍枠とを撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と前記空間部分の画像と該布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像とを表示する表示部と、
前記表示部で表示された前記空間部分に前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を重なりや隙間を生じさせることなく挿入するように前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を変形編集する刺繍模様画像編集部と、
を備える刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項2】
前記撮像部は前記布地が装着された刺繍枠を撮像し、
前記刺繍枠の情報を取得する刺繍枠情報取得部と、
前記刺繍枠情報取得部が取得した前記刺繍枠の情報と前記撮像部が撮像した前記刺繍枠の画像の情報とを対応付ける画像解析を行う撮像画像解析部と、
を備える請求項1に記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項3】
前記刺繍枠の情報に基づいて前記布地に刺繍される刺繍模様のデータを生成する刺繍模様データ生成部を備えたことを特徴とする請求項2に記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項4】
前記布地に刺繍される刺繍模様は、前記布地の一部に刺繍された刺繍模様と同じであることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれかに記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項5】
前記刺繍模様画像編集部で変形編集された前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像に基づいて、前記刺繍模様データ生成部で生成した前記布地に刺繍される刺繍模様のデータを変形編集する刺繍模様データ編集部を備える請求項3に記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項6】
使用者からの入力操作を受ける入力操作部を有し、
前記入力操作部における操作内容に応じて前記刺繍模様画像編集部で前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を変形編集する請求項2または請求項3に記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項7】
前記刺繍枠情報取得部が取得した前記刺繍枠の情報、及び、前記入力操作部により受け付けた前記布地に刺繍を施す領域の情報に基づいて、前記布地に刺繍される刺繍模様のデータの縫製実行回数を決定する縫製実行回数決定部を備える請求項6に記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項8】
前記撮像部の撮像において、利用者に対して表示と音声との少なくとも一方の案内を行う操作案内部を備えた請求項1に記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項9】
表示制御部を備え、
前記表示制御部は、刺繍枠情報取得部が取得した刺繍枠の情報から当該刺繍枠のイメージ画像を前記表示部に表示させ、
前記操作案内部は、前記表示部に表示された前記刺繍枠のイメージ画像と前記撮像部を介して表示部に表示された前記刺繍枠の画像とが一致するように案内を行うことを特徴とする請求項8に記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項10】
前記刺繍枠のイメージ画像は、前記表示部に半透明で表示されることを特徴とする請求項9に記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項11】
前記撮像部は、前記刺繍枠のイメージ画像と前記撮像部を介して表示部に表示された刺繍枠の画像とが一致したときに、自動的に撮像を行うことを特徴とする請求項9または請求項10のいずれかに記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項12】
前記刺繍模様画像編集部は前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像の外形形状に相当する多角形の頂点と前記多角形の辺との少なくとも一方を移動させることにより、前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像の変形を行うことを特徴とする請求項1から請求項11までのいずれかに記載の刺繍模様連結データ生成装置。
【請求項13】
刺繍模様連結データ生成装置における刺繍模様連結データ生成方法であって、
前記刺繍模様連結データ生成装置の撮像部が、布地の一部に刺繍された刺繍模様と空間部分と前記布地が装着された刺繍枠とを撮像する撮像工程と、
前記刺繍模様連結データ生成装置の表示部が、前記撮像部で撮像された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と前記空間部分の画像と該布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像とを表示する表示工程と、
前記刺繍模様連結データ生成装置の刺繍模様画像編集部が、前記表示部で表示された記空間部分に前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を重なりや隙間を生じさせることなく挿入するように前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を変形編集する刺繍模様画像編集工程と、
を備えた刺繍模様連結データ生成方法。
【請求項14】
刺繍模様連結データ生成方法を刺繍模様連結データ生成装置に実行させるためのプログラムであって、
前記刺繍模様連結データ生成装置の撮像部が、布地の一部に刺繍された刺繍模様と空間部分と前記布地が装着された刺繍枠とを撮像する撮像工程と、
前記刺繍模様連結データ生成装置の表示部が、前記撮像部で撮像された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と前記空間部分の画像と該布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像とを表示する表示工程と、
前記刺繍模様連結データ生成装置の刺繍模様画像編集部が、前記表示部で表示された前記空間部分に前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を重なりや隙間を生じさせることなく挿入するように前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を変形編集する刺繍模様画像編集工程と、
を実行させるためのプログラム。
【請求項15】
刺繍模様連結データ生成装置とミシンとから構成される縫製システムであって、
布地の一部に刺繍された刺繍模様と空間部分と前記布地が装着された刺繍枠とを撮像する撮像部と、
前記撮像部で撮像された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と前記空間部分の画像と該布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像とを表示する表示部と、
前記表示部で表示された前記空間部分に前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を重なりや隙間を生じさせることなく挿入するように前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を変形編集する刺繍模様画像編集部と、
前記刺繍模様画像編集部が変形編集した前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像のデータ、あるいは前記刺繍模様画像編集部が変形編集した前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像に基づいて変形編集された刺繍模様データを前記ミシンに送信する送信部と、
を備え、
前記ミシンが、
前記送信部から送信された前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像のデータあるいは前記刺繍模様データを受信する受信部と、
該受信部において受信した前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像のデータあるいは前記刺繍模様データに基づいて刺繍枠に装着された前記布地に対して刺繍を実行する刺繍実行部と、
を備えた縫製システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刺繍模様連結データ生成装置、刺繍模様連結データ生成方法、プログラムおよび縫製システムに関する。
【背景技術】
【0002】
スティップリング模様は、一筆書きのように、1本の線で複雑な曲線を描いた模様であり、キルティング縫いなどに主として用いられている。このスティップリング模様を縫う場合には、フリーモーション技術と呼ばれる人手作業によって行われるのが一般的である。
【0003】
しかしながら、このフリーモーション技術を用いる場合には、熟練した作業者でなければ、スティップリング模様を縫うことは困難であった。特に、一般のミシン使用者が、大きなキルト生地にスティップリング模様をミシンで縫うことは、不可能であった。
【0004】
その為、刺繍ミシンを使って、スティップリング模様を縫うことが考えられたが、一度に大きな面積の刺繍模様を縫うことができないために、布地などの縫い対象物の装着位置をずらしながら、複数回の縫製を行う必要があった。また、刺繍模様を繰り返し縫い、大きな面積の刺繍模様を仕上げる方法の場合には、刺繍模様間で重なりが生じたり、模様の間隔が広くなりすぎて刺繍模様と刺繍模様の間に隙間が生じたりする等問題があり、全体的に統一感を保った縫製模様が得にくいという問題があった。
【0005】
ところで、引用文献1に示すように、上下の相対する辺と左右の相対する辺により形成される4角形の刺繍可能範囲内に描かれるスティップリング模様の凸状に対抗する辺には凹状になるようなステッチデータを配置する構造とすることにより、スティップリング模様の一方の辺と他方の辺とを接触させて複数回縫製した場合、スティップリング模様とスティップリング模様の重なりや刺繍模様間に隙間や外見的な違和感を生じることなく、全体的に統一された大きなスティップリング模様を縫うことも可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第5687746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、縫い作業の過程で、縫い縮みの累積や布地を刺繍枠にセットした時のわずかな位置ずれ、あるいは回転ずれなどの影響により、重なりや隙間ができる不具合があった。
【0008】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであり、刺繍模様の複数回縫製において、縫い作業の過程で、縫い縮みの累積や布を刺繍枠にセットした時のわずかな位置ずれ、あるいは回転ずれなどがあっても重なりや隙間を生じさせない刺繍模様連結データ生成装置、刺繍模様連結データ生成方法、プログラムおよび縫製システムを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
形態1;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、布地の一部に刺繍された刺繍模様を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と該布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像とを表示する表示部と、前記表示部で表示された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と連結するように前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を編集する刺繍模様画像編集部と、を備える刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0010】
形態2;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記撮像部は前記布地が装着された刺繍枠を撮像し、前記刺繍枠の情報を取得する刺繍枠情報取得部と、前記刺繍枠情報取得部が取得した前記刺繍枠の情報と前記撮像部が撮像した前記刺繍枠の画像の情報とを対応付ける画像解析を行う撮像画像解析部と、を備える刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0011】
形態3;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記刺繍模様イメージ画像は、前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と同じである刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0012】
形態4;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記布地に刺繍される刺繍模様は、前記布地の一部に刺繍された刺繍模様と同じである刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0013】
形態5;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記刺繍模様画像編集部で編集された前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像に基づいて、前記刺繍模様データ生成部で生成した前記刺繍模様のデータを編集する刺繍模様データ編集部を備える刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0014】
形態6;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、使用者からの入力操作を受ける入力操作部を有し、前記入力操作部における操作内容に応じて前記刺繍模様画像編集部で前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を編集する刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0015】
形態7;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記刺繍枠情報取得部が取得した前記刺繍枠の情報、及び、前記入力操作部により受け付けた前記布地に刺繍を施す領域の情報に基づいて、前記布地への前記刺繍模様の縫製実行回数を決定する縫製実行回数決定部を備える刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0016】
形態8;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記撮像部は、前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の領域に隣接しない領域を優先して撮像を行う刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0017】
形態9;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記撮像部の撮像において、利用者に対して表示と音声との少なくとも一方の案内を行う操作案内部を備えた刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0018】
形態10;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、表示制御部を備え、前記表示制御部は、前記刺繍枠情報取得部が取得した刺繍枠の情報から当該刺繍枠のイメージ画像を前記表示部に表示させ、前記操作案内部は、前記表示部に表示された前記刺繍枠のイメージ画像と前記撮像部を介して表示部に表示された刺繍枠の画像とが一致するように案内を行う刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0019】
形態11;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記刺繍枠のイメージ画像は、前記表示部に半透明で表示される刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0020】
形態12;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記撮像部は、前記刺繍枠のイメージ画像と前記撮像部を介して表示部に表示された刺繍枠の画像とが一致したときに、自動的に撮像を行う刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0021】
形態13;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、前記刺繍模様画像編集部は前記刺繍模様のイメージ画像の外形形状に相当する多角形の頂点と前記多角形の辺との少なくとも一方を移動させることにより、前記刺繍模様のイメージ画像の変形を行う刺繍模様連結データ生成装置を提案している。
【0022】
形態14;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、刺繍模様連結データ生成装置における刺繍模様連結データ生成方法であって、前記刺繍模様連結データ生成装置の撮像部が、布地の一部に刺繍された刺繍模様を撮像する工程と、前記刺繍模様連結データ生成装置の表示部が、前記撮像部で撮像された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と該布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像とを表示する工程と、前記刺繍模様連結データ生成装置の刺繍模様画像編集部が、前記表示部で表示された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と連結するように前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を編集する工程と、を備えた刺繍模様連結データ生成方法を提案している。
【0023】
形態15;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、刺繍模様連結データ生成方法を刺繍模様連結データ生成装置に実行させるためのプログラムであって、前記刺繍模様連結データ生成装置の撮像部が、布地の一部に刺繍された刺繍模様を撮像する工程と、前記刺繍模様連結データ生成装置の表示部が、前記撮像部で撮像された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と該布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像とを表示する工程と、前記刺繍模様連結データ生成装置の刺繍模様画像編集部が、前記表示部で表示された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と連結するように前記布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を編集する工程と、を実行させるためのプログラムを提案している。
【0024】
形態16;本発明の1またはそれ以上の実施形態は、刺繍模様連結データ生成装置とミシンとから構成される縫製システムであって、前記刺繍模様連結データ生成装置が、布地の一部に刺繍された刺繍模様を撮像する撮像部と、前記撮像部で撮像された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と該布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像とを表示する表示部と、前記表示部で表示された前記布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と連結するように前記刺繍模様のイメージ画像を編集する刺繍模様画像編集部と、前記刺繍模様画像編集部が編集した刺繍模様のイメージ画像のデータ、あるいは前記刺繍模様画像編集部が編集した前記刺繍模様のイメージ画像に基づいて編集された刺繍模様データを前記ミシンに送信する送信部と、を備え、前記ミシンが、前記送信部から送信された前記刺繍模様のイメージ画像のデータあるいは前記刺繍模様データを受信する受信部と、該受信部において受信した前記刺繍模様のイメージ画像のデータあるいは前記刺繍模様データに基づいて前記刺繍枠に装着された前記布地に対して刺繍を実行する刺繍実行部と、を備えた縫製システムを提案している。
【発明の効果】
【0025】
本発明の1またはそれ以上の実施形態によれば、刺繍模様の複数回縫製において、縫い作業の過程で、縫い縮みの累積や布地を刺繍枠にセットした時のわずかな位置ずれ、あるいは回転ずれなどがあっても重なりや隙間を生じさせないという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0026】
図1】本発明の実施形態に係る縫製システムの構成の概略を示す図である。
図2】本発明の実施形態に係る縫製システムの電気的構成を示す図である。
図3】本発明の実施形態に係る縫製システムの電気的処理を示す図である。
図4】本発明の実施形態に係るステッチデータの変形に関する電気的処理の詳細を示したフロー図である。
図5】本発明の実施形態に係る布地に対するスティップリング模様の仮配置を例示した図である。
図6】本発明の実施形態に係るスティップリング模様を連続的に縫い上げる場合の手法を例示した図である。
図7】本発明の実施形態に係る布地をセットする刺繍枠を選択するために刺繍模様連結データ生成装置の表示画面に複数種の刺繍枠を表示した状態を例示した図である。
図8】本発明の実施形態に係る布地をセットする刺繍枠を選択し、刺繍模様連結データ生成装置の表示画面に表示した状態を例示した図である。
図9】本発明の実施形態に係る選択された刺繍枠とスティップリング模様を部分的に縫い付けた布地をセットした刺繍枠とを重ねて撮像するための位置合わせ状態を例示した図である。
図10】本発明の実施形態に係る選択された刺繍枠とスティップリング模様を部分的に縫い付けた布地をセットした刺繍枠とを重ね合わされ撮像される状態を例示した図である。
図11】本発明の実施形態に係る撮像された刺繍枠と布地との画像が刺繍模様連結データ生成装置の表示画面に表示され、これから縫うスティップリング模様のステッチイメージが合成されて表示される状態を例示した図である。
図12】本発明の実施形態に係るスティップリング模様のステッチイメージの合成位置が確定した後に、ステッチイメージの四隅にカーソルマークが表示された状態を例示した図である。
図13】本発明の実施形態に係るステッチイメージの四隅に表示されたカーソルマークをドラックして大きさや形を調整する様子を例示した図である。
図14】本発明の実施形態に係るステッチデータの変形を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下、本発明の実施形態について、図面を用いて、詳細に説明する。
【0028】
<実施形態>
図1から図14を用いて、実施形態に係る縫製システムについて説明する。
【0029】
<縫製システム構成>
図1に示すように、本実施形態に係る縫製システムは、ミシン10と、刺繍模様連結データ生成装置としてのタブレット端末20とから構成されている。ミシン10とタブレット端末20とは、無線LAN60等のネットワークを介して接続されている。
【0030】
なお、本実施形態では、無線LAN60等のネットワークを用いたものに関わらず、例えば、Bluetooth(登録商標)を用いた通信形態でもよいし、例えば、USBメモリ70等を用いたオフラインでの通信形態でもよい。
【0031】
本実施形態に係る縫製システムでは、例えば、不連続に刺繍されたスティップリング模様の空間部分(隙間部分)に大きさが既知の刺繍枠に張り、刺繍枠全体をタブレット端末20の撮像部を用いて撮像し、タブレット端末20の表示部に表示するとともに、刺繍模様のステッチイメージをタブレット端末20の表示部上に描画する。更に、このステッチイメージを空間部分(隙間部分)にフィットするように使用者が位置合わせして演算によりイメージ表示された刺繍模様の画像を変形する。ミシン10に読み込まれたこの変形された刺繍模様を前述の刺繍枠に張られた布地に対して刺繍すると、空間に隙間なくフィットしたスティップリング模様が得られる。以下、その詳細について、説明する。
【0032】
ミシン10は、図2に示すように、ミシン側表示部11と、受信部12と、ミシン側記憶部13と、制御部14と、刺繍枠認識部15と、縫製実行部16とから構成されている。ここで、ミシン10は、例えば、刺繍データにしたがって複数色の糸を用いて半自動的に刺繍を行うことができる。また、通常の縫製についても、様々な縫製パターンにより縫製を行うことができる多機能のミシンである。
【0033】
ミシン側表示部11は、ミシン10自体に設けられており、例えば、液晶表示装置により構成されている。ミシン側表示部11には、ミシンの動作状態に対応して使用者にとって有益な各種情報が表示される。例えば、糸通しを行う場合には、糸通しの操作を補助できるような表示を行う。この表示内容は、ミシン10が多機能であることから、多数の表示内容が存在している。また、ミシン側表示部11は、タッチパネルとして構成されており、使用者からの各種操作入力を受け付けることができる。
【0034】
受信部12は、無線LAN60を介してタブレット端末20に接続されており、不図示のルータ等を介して、タブレット端末20との間で相互の無線通信を行うことができる。なお、無線LAN60等のネットワークを用いたものに関わらず、例えば、Bluetooth(登録商標)を用いた通信形態でもよいし、例えば、USBメモリ70等を用いたオフラインでの通信形態でもよい。本実施形態においては、受信部12は刺繍模様連結データ生成装置としてのタブレット端末20から生成した刺繍模様データ、編集した刺繍模様データを、または、タブレット端末20の刺繍模様画像編集部で編集した刺繍模様のイメージ画像データを受信する。
【0035】
ミシン側記憶部13は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等により構成されており、例えば、数百種類の刺繍データを記憶している。また、ミシン側記憶部13は、ミシン10に予め内蔵されている模様(刺繍データ)、刺繍枠に関する情報の他に、使用者が外部から入手した模様(利用者作成模様)を記憶していてもよい。ミシン側記憶部13に記憶されている刺繍データそのもの、刺繍データに関連する情報または、刺繍枠に関する情報等については、タブレット端末20に転送が可能である。
【0036】
制御部14は、ミシン10の動作を制御プログラムにしたがって制御する。また、制御部14は、タブレット端末20からの問い合わせに対する応答も行う。また、制御部14は、ミシン側表示部11の表示及び入力機能を用いて、ミシン10単体で刺繍模様の選択や、組み合わせ、及び、変形等の簡易的な編集作業が可能なように制御を行うこともできる。
【0037】
刺繍枠認識部15は、ミシン10に装着された刺繍枠40の種類を認識する。本実施形態の刺繍枠認識部15は、使用者がミシン側表示部11を用いて入力又は選択した刺繍枠40の種類をミシン10に装着された刺繍枠40の種類として認識する。なお、刺繍枠認識部15による刺繍枠40の認識方法は、これに限らず、例えば、ICチップを利用したり、接点回路を利用したりして、ミシン10に装着された刺繍枠40の種類を認識してもよい。
【0038】
縫製実行部16は、受信部12を介してタブレット端末20から取得した編集された刺繍模様データあるいは編集された刺繍模様のイメージ画像データにしたがって、刺繍枠40に張られた布地に対して、刺繍模様を連結して、スティップリング模様を形成するよう刺繍を実行する。受信部12が刺繍模様のイメージ画像データを受信した場合には、そのイメージ画像データに基づいてミシン10に記録されている刺繍模様データを変形編集し、その編集された刺繍模様データに基づいて刺繍模様の縫製を行う。
【0039】
刺繍模様連結データ生成装置としてのタブレット端末20は、一般に市販されている汎用品を利用することができる。本実施形態における刺繍模様連結データ生成装置をタブレット端末20により実行するためには、この縫製システム用のプログラム(アプリケーションプログラム)をタブレット端末20にインストールして実行する。なお、このプログラムは、フラッシュメモリ装置等の記録媒体に記録されていてもよいし、既知の様々なネットワークを介してダウンロードして入手してもよい。
【0040】
なお、本実施形態では、刺繍模様連結データ生成装置の具体的な一例として、タブレット端末20を例示したが、これに関わらず、例えば、スマートフォンや刺繍枠全体を撮像できる位置に機構的に固定可能な機構によって、ミシン10に設けられ、刺繍模様連結データ生成装置に必要な機能を備えたカメラ等であってもよい。
【0041】
タブレット端末20は、図2に示すように、入力操作部21と、刺繍枠情報取得部22と、縫製実行回数決定部23と、刺繍模様データ生成部24と、撮像部25と、撮像画像解析部26と、刺繍模様画像編集部27と、送信部28と、操作案内部29と、表示部30と、記憶部31と、表示制御部32と、刺繍模様データ編集部33とから構成されている。
【0042】
入力操作部21は、利用者からの入力操作を受け付ける。本実施形態においては、布に刺繍を施す領域の大きさ情報や刺繍枠に対する刺繍模様データの編集に関する情報等を受け付ける。
【0043】
刺繍枠情報取得部22は、使用される刺繍枠40の情報を取得する。例えば、タブレット端末20の表示部30に刺繍枠に関する枠種リストを表示させ、使用者に選択を促して、使用される刺繍枠40のサイズ等の情報を取得する。
【0044】
縫製実行回数決定部23は、刺繍枠情報取得部22が取得した刺繍枠40の情報、及び、入力操作部21により受け付けた布に刺繍を施す領域の大きさに基づいて、刺繍模様の縫製実行回数を決定する。
【0045】
刺繍模様データ生成部24は、刺繍枠情報取得部22が取得した刺繍枠40の情報、及び、入力操作部21により受け付けた布に刺繍を施す領域の大きさに基づいて、刺繍全体を構成する刺繍模様のデータを生成する。なお、本実施においては、同じサイズでスティップリング模様等の同じ模様を繰り返し縫製し、全体の刺繍模様を完成させるが、同じ模様であってもサイズの異なるもので全体を完成させるものや、四角形状の模様の隣に三角形状の模様を縫製する等、異なる模様で全体の刺繍模様を完成させてもよい。
【0046】
撮像部25は、刺繍枠40及び刺繍枠40に装着された布地を撮像範囲内に含んだ画像を撮像する。また、撮像部25は、ミシン10が刺繍模様の刺繍を実行する毎に、刺繍模様の刺繍を行う予定の領域が隣接しない領域を優先して、縫製実行回数決定部23が決定した刺繍模様の縫製実行回数(すでに刺繍されている刺繍箇所を除いた箇所への刺繍回数)に対応する回数の撮像を繰り返して行う。また、撮像部25は、表示部における刺繍枠のイメージが表示された箇所と縫製対象の布地がセットされた刺繍枠40とが重なったと判断した時点で自動的に撮像を行う。
【0047】
撮像画像解析部26は、刺繍枠情報取得部22が取得した刺繍枠40の情報と撮像部25が撮像した画像内の刺繍枠40の画像の情報とを対応付ける画像解析を行う。また、撮像画像解析部26は、撮像部25を通して表示部に表示される刺繍枠の画像と、刺繍枠情報取得部22が取得した刺繍枠40の情報に基づいて表示部に表示される刺繍枠のイメージ表示とが略一致した状態で撮像された画像に基づいて、刺繍枠40の情報と撮像画像中の刺繍枠40の画像の情報との対応付けを行う。
【0048】
刺繍模様画像編集部27は、表示部30で表示された布地の一部に刺繍された刺繍模様の画像と連結するように布地に刺繍される刺繍模様のイメージ画像を編集する。具体的には、表示部に表示された刺繍模様のイメージ画像の外形形状に相当する多角形の頂点と多角形の辺との少なくとも一方を移動させることにより、刺繍模様画像編集部27においてイメージ画像の変形編集を行い、その編集された刺繍模様のイメージ画像に基づいて、刺繍模様データ編集部33において刺繍模様データの変形編集を行う。
【0049】
送信部28は、刺繍模様画像編集部27が編集した刺繍模様のイメージ画像のデータ、あるいは刺繍模様画像編集部27が編集した刺繍模様のイメージ画像に基づいて編集された刺繍模様データをミシン10に送信する。
【0050】
操作案内部29は、刺繍模様の刺繍を行う予定の領域が隣接しない領域を優先して、縫製実行回数決定部23が決定した刺繍模様の縫製実行回数に対応する回数の撮像を繰り返して行うように、使用者に対しての案内を表示と音声との少なくとも一方を行う。また、操作案内部29は、刺繍枠情報取得部22が取得した刺繍枠の形状やサイズ等の情報から表示部30に表示された刺繍枠のイメージ表示に刺繍枠40の画像を一致させて撮像を行うように使用者に対して撮像の案内を行う。このような操作案内を行なうことにより、タブレット端末20の扱いに不慣れな使用者でも簡単に操作を行なうことができる。
【0051】
表示部30は、各種画像を表示するとともに、タッチパネルとして機能させるために図示しない操作部を含んで構成されており、情報の表示に加えて、使用者からの各種操作入力を受け付けることができる。本実施形態においては、刺繍枠のイメージ表示を半透過の状態で表示する。したがって、寸法等が既知の刺繍枠と撮像部25を介して入力される映像とを重ねて表示するため、両者の位置合せが容易になる。
【0052】
記憶部31は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、フラッシュメモリ等により構成されており、例えば、撮像部25が撮像した画像データやミシン10から取得した様々なデータ等を記憶する。なお、本実施形態においては、刺繍枠情報や縫製データ、操作案内用プログラム、音声データ、表示データ等を記憶保存する。表示制御部32は、表示部30の表示を制御する。本実施形態においては、刺繍枠のイメージ表示を半透過の状態で表示したり、半透過の状態で表示した刺繍枠のイメージ表示と撮像部25を介して入力される使用者が用いる刺繍枠の映像とを重ねて表示させる。
【0053】
<縫製システムの処理>
図3から図14を用いて、本実施形態に係る縫製システムの処理について説明する。
【0054】
タブレット端末20の縫製アプリケーションを起動すると、布地に対する布に刺繍を施す領域の情報を入力する。具体的には、図5に示すように、布に刺繍を施す領域に相当する布地の大きさを縦と横の長さで指定する。以下では、一例として、W=570mm、H=630mmと入力した場合について説明する。
【0055】
刺繍枠情報取得部22は、使用する刺繍枠40の種類指定を使用者に対して求める(ステップS101)。具体的には、刺繍枠情報取得部22は、図7に示すようなリスト表示を行い、このリストの中から使用者が選択した刺繍枠40の種類を、刺繍に用いる刺繍枠40であると特定する。ここでは、枠種GRが選択されたものとして、以下の説明を行う。なお、刺繍枠40の種類毎のサイズ等のデータは、記憶部31に保存されているが、ミシン10や他のネットワークに接続されたサーバ等と通信して取得してもよい。なお、上記では、刺繍枠40の種類の指定を使用者に委ねていたが、刺繍枠情報取得部22は、撮像部25による撮像画像から刺繍に用いられる刺繍枠40の種類を特定して、その特定した刺繍枠40の種類に応じた刺繍枠40の情報を取得するようにしてもよい。例えば、撮像部25による撮影画像を解析して、撮影された刺繍枠40の形状から認識してもよいし、刺繍枠上に文字やバーコード等を表示しておいて、これを画像認識してもよい。
【0056】
刺繍枠情報取得部22により取得された刺繍枠情報と使用者により入力された布に刺繍を施す領域情報に基づいて、予め複数パターン用意されているスティップリング模様の刺繍模様の内、大きいものから指定された布に刺繍を施す領域に収まるかを判定し、おおよそ、その中に納まれば、±10%以内でサイズ調整を行って、ちょうどよい大きさの刺繍模様を生成する。ここで張り替える枚数(刺繍実行回数)と刺繍模様が確定する(ステップS102)。例えば、刺繍模様として200mm×200mmのスティップリングデータを用いた場合、縦方向、横方向に3枚ずつ配置しなければならないが、横方向は長すぎるので95%のサイズに縮小する。縦方向は短すぎるので105%に拡大する。つまり、190mm×210mmに変形した刺繍模様を生成する。
【0057】
ステップS102で生成した刺繍模様データを送信部28を介して、ミシン10に送信する(ステップS103)。ここで、例えば、指定されたサイズから横方向に3回、縦方向に3回、枠を張り替えながら連結する場合、刺繍枠40をセットするための模様の中心位置を9カ所マーキングする。布地にマーキングした9カ所の内、コーナーの4カ所のマークの中心に刺繍枠40をセットし、ステップS102において大きさが確定した190mm×210mmのスティップリング模様を図6のように、刺繍する。
【0058】
次に間の空いている5カ所にスティップリング模様を順次刺繍して行くが、ピッタリ収まるように大きさの調整が必要となる。そのために、下記の操作を行う。図6に示すように、空間部分(隙間部分)の中心位置マークと刺繍枠の中心位置がおおよそ合うように布地に刺繍枠を取り付ける。図8のように、刺繍枠情報取得部22において取得した刺繍枠のイメージ画像が半透明で表示され、カメラ機能が起動する(ステップS104)。
【0059】
図9に示すように、タブレット端末20を刺繍枠40の上方に手で保持し、タブレット端末20に半透明で描画されている刺繍枠のイメージ画像と被写体の刺繍枠40が重なるように撮像位置を調整する。なお、このとき、操作案内部29が起動し、半透明で描画されている刺繍枠のイメージ画像と被写体の刺繍枠40とが一致して重なるように、案内表示あるいは音声案内によって、使用者の動作をアシストする。このような機能を搭載することにより、タブレット端末20での撮影に精通していない使用者であっても、短時間で、半透明で描画されている刺繍枠のイメージ画像と被写体の刺繍枠40枠イメージと撮像された布50がセットされた刺繍枠40とを一致させることができる。図10に示すように、タブレット画面の半透明のイメージ画像とカメラから入力された刺繍枠の映像が重なったとき、シャッターを押す(ステップS105)。なお、刺繍枠イメージと入力された刺繍枠の映像とを画像解析して、両者が重なったときに、自動的にシャッターを押すようにしてもよい。画像解析によって、シャッター調整を行うことにより、手ぶれ等を防止して正確な画像を得ることができる。枠イメージと撮影画像中の刺繍枠40とが一致して重なっていれば、刺繍枠情報取得部22が取得した刺繍枠40の情報から、刺繍枠40のサイズが既知であるため、撮像画像を実際の寸法との対応を取ることができる。また、刺繍枠40のコーナー部等視認可能な箇所に目印となるマークを設け、タブレット端末20の表示部に表示された刺繍枠のイメージ画像内のマークと入力した刺繍枠画像内のマークとが重なるように、タブレット端末20の位置調整を行ってもよい。
【0060】
刺繍模様であるステッチのイメージ画像をタブレット端末20の表示画面の空間部分(隙間部分)に描画する(ステップS106)。今まで縫って来たスティップリング模様が正確に配置され、縫い縮み等もなければ、スティップリングのカメラ映像と描画したステッチイメージが隙間なく並ぶことになる。しかし、大抵の場合、図11に示すように、刺繍枠取り付け時の誤差や縫い縮みなどにより、若干隙間が空く。
【0061】
ステッチイメージ画像部分をタップすると、図12に示すように、イメージの4隅にカーソルマークが表示される。図13に示すように、このカーソルを対峙する連結させたいスティップリング映像の角にドラッグして調整する(ステップS107)。このカーソルのドラッグについては、使用者が指やペンで行うことが想定されるが、予め布地に刺繍してある刺繍の領域を画像認識することができれば、その領域と連結するように自動的にドラッグさせることも可能である。なお、本実施形態においては、4隅にカーソルマークを表示する例について、説明したが、例えば、4隅のカーソルマークの間等にカーソルマークを設けてもよい。図14は極端な例であるが、4隅のA、B、CおよびDを移動し、角を合わせ、新たな4角形ABCDを作る。4角形ABCDの頂点の座標をステップS108に渡して刺繍模様であるスティップリング模様のステッチデータを変形する。なお、変形方法は図4に示すサブルーチンに記述し、本変形は刺繍模様画像編集部によって編集される。この編集されたステッチのイメージ画像に基づいて、刺繍模様データ生成部24で生成された刺繍模様データを刺繍模様データ編集部33で変形編集し、刺繍する刺繍模様データとする。
【0062】
このようにして変形編集された刺繍模様データをミシン10へ送信し(ステップS109)、撮影した状態の刺繍枠をミシン10にセットし、刺繍を行うと、隙間なくスティップリング模様が縫われることになる。また、残っている空間については、ステップS104からS109を繰り返し実行する(ステップS110)。また、ミシン10への送信対象は、上述した変形編集された刺繍模様データだけではなく、刺繍模様画像編集部27において編集された刺繍模様のイメージ画像データであっても構わない。その場合、イメージ画像データを受信したミシン10は、そのイメージ画像データに基づいて、ミシン10に記録されている刺繍模様データを変形編集する。そのように編集された刺繍模様データに基づいて、刺繍を行う。
【0063】
<ステッチデータの変形処理>
図3図4および図14を用いて、本実施形態に係るステッチデータの変形処理について説明する。
【0064】
図14に示すように、ステッチデータは模様の中心座標を(0、0)とし、左方向および上方を正の座標値、左方向および下方を負の座標値で表すと、各針落ち点のX、Y座標の組が得られる。
【0065】
まず、図3のステップS107で得られた4角形ABCDの頂点座標を基に、各辺の一次方程式を作る(ステップS201)。図14の場合、直線ADおよび直線ABは傾きがあるため、y=ax+bの形式で表される。ここで、aは傾き、bは切片である。また、直線BCおよび直線CDは傾きがないため、x=−L および y=−Mで示される。
【0066】
針落ち点Pnの座標を取り出す(ステップS202)。次に、X座標が第1−4象限に属するか、第2−3象限に属するかを判定する(ステップS203)。第1−4象限に属すると判定された場合(ステップS203)、直線ADが針落ち点のY座標Ynを通過するX座標Xadを求め(ステップS204)、刺繍模様データの横幅の半分XhとXadの比から倍率を求める(ステップS205)。Xnの座標に求めた倍率を掛け、変形後の座標Xn´が求まる(ステップS208)。
【0067】
一方、X座標が第2−3象限に属すると判定された場合(ステップS203)、傾きが無いため、方程式は、X=−Lとなり、Yの位置とは関係なく一定となる(ステップS206)。また、倍率は、XhとLの比で求まる(ステップS207)。
【0068】
次に、PnのY座標が第1−2象限に属するか、第3−4象限に属するかを判定する(ステップS209)。第1−2象限に属すると判定された場合(ステップS209)、直線ABが針落ち点のXnを通過するY座標Yabを求める(ステップS210)。そして、刺繍模様の高さの半分YhとYabの比から倍率を求める(ステップS211)。Ynの座標に倍率を掛け、変形後の座標Yn´を求める(ステップS214)。
【0069】
一方で、Y座標が第3−4象限に属すると判定された場合(ステップS209)、傾きが無いため方程式は、Y=−Mとなり、Xの位置とは関係なく一定となる(ステップS212)。また、倍率はYhとMの比で求まる(ステップS213)。
【0070】
次に、Pn点の座標Xn、Ynが4角形ABCDによって変形され、座標Xn´、Yn´が新たな針落ち点となる。ステップS201からステップS214を全ステッチデータについて行えば、刺繍模様のステッチデータが4角形ABCDの中に納まるように変形される(ステップS215)。
【0071】
<本実施形態の効果>
以上、説明したように、本実施形態によれば、スティップリング模様の刺繍模様をつないで大きなスティップリング模様を刺繍する時、あえて順番に刺繍せずに非連続で縫い、その刺繍された刺繍模様の縫い縮みや刺繍枠にセットする時のずれを後から刺繍する矩形の刺繍模様を空間の形状に合わせて変形することにより空間にフィットしたスティップリング模様を刺繍できるという効果がある。
【0072】
また、寸法が既知である刺繍枠に、非連続でスティップリング模様が刺繍された布地を張り、この刺繍枠の外観を含めて撮影することにより映像の倍率を取得することができる。また、その倍率でスティップリング模様の縫いイメージを、撮影した映像の上に重ねて表示するため、縫いイメージがどの程度ずれていて、重なり具合や隙間を画面上で目視することができる。また、縫いイメージの4隅のカーソルを使用者が最適な位置にドラッグし、画面中の空間に合わせて位置決めすると、この4角形の中にフィットするように刺繍データを変換することができる。
【0073】
尚、スティップリングの刺繍模様を非連続で並べることを例として説明しているが、連続して並べた場合でも縫い縮みなどが累積し、フィットしなくなるため、最後の刺繍模様で調整したくなる場合がある。この場合にも、本実施形態で開示した技術を利用でき、最後の空間に刺繍模様が入るように4角形を調整して所望の布に刺繍を施す領域の中にスティップリング模様を適切に配置することも可能である。
【0074】
また、本実施形態は、スティップリング模様だけでなく、複数個に分割した模様をつなぐ時にも使用できる。従来は、つなげる模様を平行移動したり、回転したりして模様同士を連結しようとした。しかし、これらの編集機能だけでは難しいが、隣にある模様の接線に合わせて、模様自体を変形する本実施形態の技術によれば、隙間なく、かつ容易に連結できるという効果がある。
【0075】
なお、縫製システムあるいは刺繍模様連結データ生成装置の処理をコンピュータシステムあるいはコンピュータが読み取り可能な記録媒体に記録し、この記録媒体に記録されたプログラムを縫製システムあるいは刺繍模様連結データ生成装置に読み込ませ、実行することによって本発明の縫製システムあるいは刺繍模様連結データ生成装置を実現することができる。ここでいうコンピュータシステムあるいはコンピュータとは、OSや周辺装置等のハードウェアを含む。
【0076】
また、「コンピュータシステムあるいはコンピュータ」は、WWW(World Wide Web)システムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。また、上記プログラムは、このプログラムを記憶装置等に格納したコンピュータシステムあるいはコンピュータから、伝送媒体を介して、あるいは、伝送媒体中の伝送波により他のコンピュータシステムあるいはコンピュータに伝送されてもよい。ここで、プログラムを伝送する「伝送媒体」は、インターネット等のネットワーク(通信網)や電話回線等の通信回線(通信線)のように情報を伝送する機能を有する媒体のことをいう。
【0077】
また、上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであってもよい。さらに、前述した機能をコンピュータシステムあるいはコンピュータにすでに記録されているプログラムとの組合せで実現できるもの、いわゆる差分ファイル(差分プログラム)であってもよい。
【0078】
以上、この発明の実施形態につき、図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計等も含まれる。
【符号の説明】
【0079】
10;ミシン
11;ミシン側表示部
12;受信部
13;ミシン側記憶部
14;制御部
15;刺繍枠認識部
16;縫製実行部
20;タブレット端末(刺繍模様連結データ生成装置)
21;入力操作部
22;刺繍枠情報取得部
23;縫製実行回数決定部
24;刺繍模様データ生成部
25;撮像部
26;撮像画像解析部
27;刺繍模様画像編集部
28;送信部
29;操作案内部
30;表示部
31;記憶部
32;表示制御部
33;刺繍模様データ編集部
40;刺繍枠
50;布地
60;無線LAN
70;USBメモリ
図1
図2
図3
図4
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図6
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図10
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