特許第6860303号(P6860303)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860303
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】薬液容器
(51)【国際特許分類】
   B65D 39/04 20060101AFI20210405BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B65D39/04
   A61J1/05 313C
【請求項の数】4
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2016-140659(P2016-140659)
(22)【出願日】2016年7月15日
(65)【公開番号】特開2018-8738(P2018-8738A)
(43)【公開日】2018年1月18日
【審査請求日】2019年6月17日
(73)【特許権者】
【識別番号】000115991
【氏名又は名称】ロート製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【弁理士】
【氏名又は名称】坂西 俊明
(72)【発明者】
【氏名】小久保 繁彦
【審査官】 加藤 信秀
(56)【参考文献】
【文献】 特開平05−124663(JP,A)
【文献】 特開平09−156662(JP,A)
【文献】 国際公開第2004/103453(WO,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2011/0297703(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B65D 39/04
A61J 1/05
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の内外を連通する筒状の口部が形成された容器本体と、
前記容器本体の前記口部に基端側が嵌入された筒状のノズルと、を備え、
前記ノズルは、硬質の樹脂によって形成された内筒と、前記内筒を形成する樹脂よりも軟質の樹脂によって形成された外筒とを有し、
前記内筒は、基端において径方向外側に突出する環状部を含み、
前記外筒は、前記環状部よりも先端側において前記内筒の外周に配置され、
前記環状部は、外径が基端側から先端側に向けて漸次拡径した拡径部と、前記拡径部の頂部と、前記頂部を基点として先端側において外径が縮径した縮径部とを含み、
前記頂部は、前記口部の内周面と全周にわたって密着し、
前記拡径部及び前記縮径部は、前記口部の内周面から離間しており、
前記縮径部と前記口部の前記内周面との間には、空間が形成されている、薬液容器。
【請求項2】
前記ノズルは、中心軸からの距離が前記頂部と等しいガイド部を有し、
前記ガイド部は、前記縮径部よりも先端側に位置し、
前記頂部から前記ガイド部までの区間では、前記ノズルの外周面は前記口部の内周面から離間している、請求項1に記載の薬液容器。
【請求項3】
前記外筒は、径方向外側に突出した環状の第1フィン部及び第2フィン部を有し、
前記第1フィン部は、前記ガイド部よりも先端側に位置し、
前記第2フィン部は、前記第1フィン部よりも先端側に位置し、
前記第1フィン部及び前記第2フィン部は、前記口部の内周面全周にわたって密着しており、
前記第1フィン部から前記第2フィン部までの区間では、前記外筒の外周面は前記口部の内周面から離間している、請求項2に記載の薬液容器。
【請求項4】
前記外筒を構成する軟質の樹脂には、機能性添加剤が含有されている、請求項1〜3のいずれか一項に記載の薬液容器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液容器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、薬液を収容する容器本体と、容器本体に設けられるノズルとを備えた薬液容器が知られている。このような薬液容器では、ポリエチレンのような軟質の樹脂によってノズルが形成される場合がある。この場合、薬液に含まれる成分がノズルを形成する樹脂に吸着されることで、薬液が変質する虞がある。そこで、薬液の変質を抑制するために、二重構造のノズルを備えた薬液容器が提案されている。例えば特許文献1に開示されている薬液容器は、硬質合成樹脂製の内筒と軟質合成樹脂製の外筒とからなるノズルを有している。内筒の下部には、容器本体の口部に嵌合する鍔部が形成されている。また、外筒の内側には、内筒における鍔部の上部側が配置されている。そして、内筒と外筒とを上下に貫通する注出孔が形成されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平5−124663公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載された薬液容器では、内筒における鍔部外周、及び、鍔部の上部側に配置された外筒の外周が、容器本体の口部の内周面に沿った面状に形成されている。そのため、内筒及び外筒が口部に圧入された状態では、面状に形成された内筒及び外筒と口部とが面接触する。この場合、口部に過度に外力が加わることによって、口部が損傷する虞がある。
【0005】
本発明の一側面は、収容された薬液の変質を抑制するとともに、容器の損傷を抑制することができる薬液容器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面の薬液容器は、容器の内外を連通する筒状の口部が形成された容器本体と、容器本体の口部に基端側が嵌入された筒状のノズルと、を備え、ノズルは、硬質の樹脂によって形成された内筒と、内筒を形成する樹脂よりも軟質の樹脂によって形成された外筒とを有し、内筒は、基端において径方向外側に突出する環状部を含み、外筒は、環状部よりも先端側において内筒の外周に配置され、環状部は、外径が基端側から先端側に向けて漸次拡径した拡径部と、拡径部の頂部と、頂部を基点として外径が先端側に向けて縮径した縮径部とを含み、頂部は、口部の内周面と全周にわたって密着し、拡径部及び縮径部は、口部の内周面から離間している。
【0007】
上記の薬液容器では、内筒と外筒とによって形成されたノズルが、容器本体に形成された口部の内側に嵌入されている。このノズルでは、外筒が内筒の環状部よりも先端側に配置されている。そのため、ノズルの基端側は、外筒から露出した内筒の環状部によって構成される。口部にノズルが嵌入されている状態では、口部の内周面に環状部の頂部が密着しているので、容器本体に収容された薬液が外筒に接触することが抑制される。また、頂部が内周面に密着した状態では、拡径部及び縮径部が口部の内周面から離間している。すなわち、環状部の頂部は、口部の内周面に対して線接触的に密着している。そのため、ノズルが口部の内周面に面接触して押し広げてしまう場合に比べて、口部に加わるノズルからの外力を小さくすることができる。したがって、収容された薬液の変質を抑制するとともに、容器の損傷を抑制することができる。
【0008】
また、一側面においては、ノズルは、中心軸からの距離が頂部と等しいガイド部を有し、ガイド部は、縮径部よりも先端側に位置し、頂部からガイド部までの区間では、ノズルの外周面は口部の内周面から離間している。この構成によれば、頂部及びガイド部が口部の内周面に密着した状態における、ノズルのぐらつきを抑制することができる。そのため、口部に対してノズルが傾いて嵌入されることが抑制される。なお、中心軸からの距離が等しいとは、厳密に中心軸からの距離が等しい場合だけでなく、機能上等しいと見做せる程度の誤差を含む。
【0009】
また、一側面においては、外筒は、径方向外側に突出した環状の第1フィン部及び第2フィン部を有し、第1フィン部は、ガイド部よりも先端側に位置し、第2フィン部は、第1フィン部よりも先端側に位置し、第1フィン部及び第2フィン部は、口部の内周面全周にわたって密着しており、第1フィン部から第2フィン部までの区間では、外筒の外周面は口部の内周面から離間している。この構成によれば、第1フィン部と第2フィン部との間に空気溜りが形成される。これにより、空気溜りの空気圧の作用によって、外筒と口部との間からの液漏れを一層抑制することができる。また、ガイド部よりも先端側に各フィン部が設けられているので、フィン部が傾いて嵌入されることが抑制される。
【0010】
また、一側面においては、外筒を構成する軟質の樹脂には、機能性添加剤が含有されている。この場合、ノズルの外周に対して任意の機能を付与することができる。また、添加剤が薬液中に溶出する虞がない。
【発明の効果】
【0011】
一側面の薬液容器によれば、収容された薬液の変質を抑制するとともに、容器の損傷を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】一実施形態に係る薬液容器の正面図である。
図2】薬液容器の縦断面図である。
図3】ノズルを示す図であり、(a)は正面図であり、(b)は縦断面図である。
図4図2の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明に係る実施の形態について図面を参照しながら具体的に説明する。便宜上、実質的に同一の要素には同一の符号を付し、その説明を省略する場合がある。また、以下の説明において、「同じ」、「等しい」などの用語は、製造上の誤差等を考慮したものであり、厳密に同じ又は等しい場合だけでなく、機能上同じ又は等しいと見做せる程度の誤差を含む概念である。なお、本発明は、容器本体の口部に嵌入されるノズルを備えた薬液容器に広く適用可能であるが、ここでは薬液容器として点眼容器の一例について説明する。
【0014】
図1は、一形態に係る点眼容器を示す正面図である。また、図2は、点眼容器を示す縦断面図である。図3はノズルを示す図であり、図3の(a)はノズルを単体で示す正面図であり、図3の(b)はノズルを単体で示す縦断面図である。また、図4は、図2の部分拡大図である。点眼容器1は、容器本体10と、ノズル20と、キャップ40とを備えている。なお、図1では容器本体10及びノズル20と、キャップ40とが互いに分離している状態を示し、図2では容器本体10及びノズル20にキャップ40が取り付けられた状態を示している。
【0015】
図1及び図2に示されるように、容器本体10は、薬液が収容される収容部11と、収容部11に形成された口部13とを有する。収容部11は、周壁11aによって囲まれた内部空間Sを有している。本実施形態では、収容部11は、正面視において角がR面取りされた略二等辺三角形状をなしている。また、収容部11は、図1の紙面に垂直な方向に扁平な形状となっている。
【0016】
口部13は、正面視において、収容部11の斜辺に相当する位置に形成されている。この斜辺に相当する位置には、緩やかな傾斜を有する傾斜面12が形成されている。また、口部13は、収容部11の内外を連通している。口部13は、断面円形の内周面13aを有する略円筒状をなしており、収容部11から突出している。口部13の外周面には係止突起15が形成されている。係止突起15は、軸方向Lの一部において周方向の全周にわたって突出して形状を有している。すなわち、係止突起15は、円環状をなしている。容器本体10は、例えば、ダイレクトブロー、インジェクションブロー等のブロー成形によって一体的に形成されている。容器本体の材料としては、例えば、ポリエチレンテレフタレート(PET)等の硬質の樹脂が挙げられる。
【0017】
キャップ40は、正面視において頂角部分がR面取りされた略二等辺三角形状をなしており、斜辺側が開口したカップ状をなしている。また、収容部11と同様に、キャップ40は、図1の紙面に垂直な方向に扁平な形状となっている。キャップ40の内側には、一対の係止アーム43が形成されている。一対の係止アーム43は、頂角部分を挟んだ位置に配置されている。係止アーム43の先端には、係止突起15と係合可能な爪部43aが形成されている。一対の係止アーム43間、すなわち、キャップ40の内側における頂角の位置には、突起部45が形成されている。突起部45は、基端側の外径がノズル20の内径よりも大きく、且つ、先端側の外径がノズル20の内径よりも小さい円錐台形状をなす筒状となっている。突起部45は、ノズル20の先端20aを液密にシールし得る。キャップは、例えばポリプロピレン(PP)等の材料によって一体的に形成されている。
【0018】
本実施形態では、キャップ40は、いわゆるツイストキャップである。すなわち、例えば、一対の係止アーム43間に口部13の先端側が配置された状態で、キャップ40を容器本体10側に押圧することによって、キャップ40を容器本体10に取り付けることができる。また、軸Lを中心にキャップ40を回転させることによって、キャップ40を容器本体10から取り外すことができる。
【0019】
ノズル20は、略円筒状をなしており、その先端が外部に露出するように容器本体10の口部13に嵌入されている。ノズル20は、硬質の樹脂によって形成された内筒21と、内筒21を形成する樹脂よりも軟質の樹脂によって形成された外筒31とを有している。内筒21を形成する樹脂としては、例えばポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレート(PEN)等が挙げられる。また、外筒31を形成する樹脂としては、例えばポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等が挙げられる。また、外筒31は、例えばエラストマーによって形成されてもよい。ノズル20は例えば二色成形によって製造することができる。
【0020】
図3に示されるように、内筒21は略円筒状をなしている。内筒21の基端には、径方向の外側に突出する環状部22が形成されている。環状部22の外周面は、拡径部22aと、頂部22bと、縮径部22cと、平坦部22dとを有している。拡径部22aは、軸方向Lにおいて環状部22の基端から先端に向かって形成されている。拡径部22aでは、基端側から先端側に向けて外径が漸次拡径している。頂部22bは、拡径部22aの最も先端側であり、環状部22のなかで最大の外径を有する。本実施形態では、頂部22bはエッジ状に形成されている。頂部22bは、口部13の内周面13aに全周にわたって密着できるように、口部13の内径と同じ外径を有している。
【0021】
縮径部22cは、頂部22bの先端側に形成されている。縮径部22cでは、頂部22bを基点として外径が先端側に向けて縮径している。縮径部22cの先端の外径は、拡径部22aの基端の外径と同じとなっている。平坦部22dは、縮径部22cの先端を起点として先端側に形成されている。平坦部22dの外径は、縮径部22cの先端と同じとなっており、軸方向Lで一定となっている。軸方向Lにおいて、縮径部22cが形成されている区間は、拡径部22aが形成されている区間よりも短くなっている。そのため、縮径部22cの勾配は、拡径部22aの勾配に比べて大きくなっている。
【0022】
また、内筒21の基端には、径方向の内側に延在する底壁25が形成されている。底壁25の径方向の中心には、底壁25を軸方向Lに貫通する貫通孔25aが形成されている。内筒21における軸方向Lの中央よりも先端側には、径方向の外側に突出する抜け止め部27が形成されている。抜け止め部27は、内筒21が外筒31から抜け落ちることを防止している。
【0023】
外筒31は、略円筒状をなし、環状部22よりも軸方向Lの先端側において内筒21の外周に配置されている。すなわち、内筒21の環状部22よりも先端側の外周面は、外筒31によって被覆されている。外筒31の外周面には、基端側から順番に、ガイド部33、第1フィン部35、第2フィン部36及び鍔部37が形成されている。外筒31の基端は、内筒21に形成された環状部22の平坦部22dに連続している。すなわち、外筒31の基端の外周面は、平坦部22dと同じ外径を有する平坦部32aとなっている。
【0024】
ガイド部33は、軸方向Lにおいて平坦部32aの先端に形成されている。ガイド部33は、外筒31の外周面から径方向の外側に向かって突出しており、周方向の全周にわたって環状に形成されている。本実施形態では、ガイド部33は、断面視において径方向の外側に突出するように湾曲している。ガイド部33の最大外径は、環状部22の頂部22bの外径と同じとなっている。換言すると、ガイド部33では、中心軸Lからの距離が頂部22bと等しくなっている。すなわち、ガイド部33の最大外径は、口部13の内径と同じとなっている。
【0025】
第1フィン部35は、外筒31の外周面においてガイド部33が形成された位置から先端側に離間した位置に形成されている。外筒31の外周面におけるガイド部33と第1フィン部35との間は、平坦部32bとなっている。平坦部32bの外径は、例えば平坦部32aよりも小さくてもよい。第1フィン部35は、外筒31の外周面から径方向の外側に向かって突出しており、周方向の全周にわたって環状に形成されている。本実施形態では、第1フィン部35は、軸方向Lに板厚を有する円環板状に形成されている。第1フィン部35の外径は、頂部22b及びガイド部33の外径よりも大きくなっている。
【0026】
第2フィン部36は、外筒31の外周面において第1フィン部35が形成された位置から先端側に離間した位置に形成されている。外筒31の外周面における第1フィン部35と第2フィン部36との間は、平坦部32cとなっている。平坦部32cの外径は、例えば平坦部32bの外径と同じであってよい。第2フィン部36は、外筒31の外周面から径方向の外側に向かって突出しており、周方向の全周にわたって環状に形成されている。本実施形態では、第2フィン部36は、軸方向Lに板厚を有する円環板状に形成されている。第2フィン部36の外径は、頂部22b及びガイド部33の外径よりも大きくなっており、第1フィン部35の外径と同じである。
【0027】
軸方向Lにおいて第2フィン部36の先端側には、外径が一定の平坦部32d、外径が一定の平坦部32e、及び、鍔部37が順次形成されている。平坦部32dの外径は、例えば平坦部32cの外径と同じであってよい。平坦部32eの外径は、ガイド部33及び頂部22bの外径と同じとなっている。すなわち、平坦部32eは、口部13の内径と同じ外径を有している。鍔部37は、外筒31の外周面から径方向の外側に突出しており、口部13の内径よりも大きな外径を有している。
【0028】
外筒31において鍔部37よりも軸方向Lの先端側は、口部13の外側に露出する露出部31aとなっている。露出部31aは、鍔部37から先端に向かって外径が漸次縮径する首部38と、首部38の先端に形成される頭部39とを有している。頭部39の基端は首部38の先端から径方向の外側に突出している。そのため、首部38と頭部39との境界部分には、くびれが形成されている。頭部39は、先端に向かって漸次縮径しており、外方に向かって凸状の湾曲面39aを有している。本実施形態では、首部38の縮径における軸Lに対する勾配に比べて、頭部39の基端39bが外側に拡径する勾配が大きくなっている。ノズル20から注出された薬液は、ノズル20の角度に応じて湾曲面39aで液滴を形成し、滴下される。この場合、首部38と頭部39との境界部分のくびれによって、液滴が首部38側に伝うことが抑制されている。これにより、例えば鉛直方向と軸方向Lとのなす角度を90°傾けた状態でも滴下することが可能になっている。また、鉛直方向と軸方向Lとのなす角度が0°〜90°の範囲で、滴下前の液滴と湾曲面39aとの接触面積が一定に保持されるので、液滴の大きさが一定に保たれやすくなっている。
【0029】
外筒31を構成する樹脂には、着色剤、撥水剤、抗菌剤及び離型剤の少なくとも一つ以上を含む機能性添加剤が含有されていてもよい。着色剤としては、例えば無機顔料、有機顔料、染料等が挙げられる。撥水剤としては、例えばオレフィン・シリコーン共重合体等が挙げられる。抗菌剤としては、例えば金属イオン(銀、銅、亜鉛等)、金属酸化物、金属単体等の無機系抗菌剤、有機ヨード系、ベンツイミダゾール系、イソチアゾリン系、ニトリル系、ピリジン系、トリアジン系、N−ハロアルキルチオ系、ピリチオン系、有機銅系、有機ヒ素系等の有機系抗菌・防かび剤等が挙げられる。離型剤としては、例えば炭化水素、金属せっけん、アミド、エステル等が挙げられる。なお、本明細書において、離型剤は滑沢剤を包含する概念である。また、樹脂に対する機能性添加剤の含有量は、例えば0.05〜20重量%である。
【0030】
図4に示されるように、ノズル20が口部13に嵌入された状態では、ノズル20の外筒31に形成された鍔部37が口部13の先端に当接している。また、口部13の内径と同じ外径を有する頂部22b、ガイド部33及び平坦部32eは、口部13の内周面13aと全周にわたって密着している。また、第1フィン部35及び第2フィン部36は、口部13の内周面13aの全周にわたって密着している。第1フィン部35及び第2フィン部36は、口部13の内径よりも大きな外径を有するため、ノズル20の軸方向Lの先端側に撓むように変形している。第1フィン部35及び第2フィン部36は比較的軟質の樹脂によって形成されているので、撓みによって破損することが抑制されている。
【0031】
一方で、ノズル20の軸方向Lの基端から頂部22bまでの区間である拡径部22aは、口部13の内周面13aから離間している。また、頂部22bからガイド部33までの区間である平坦部22d及び平坦部32aも口部13の内周面13aから離間している。同様に、平坦部32b,32c,32dも内周面13aから離間している。平坦部22d,32aが面する空間、平坦部32bが面する空間、平坦部32cが面する空間、及び、平坦部32dが面する空間は、それぞれ気密性を有する空気溜りを形成している。
【0032】
以上説明した点眼容器1では、内筒21と外筒31とによって形成されたノズル20が、容器本体10に形成された口部13の内側に嵌入されている。このノズル20では、外筒31が内筒21の環状部22よりも先端側に配置されている。そのため、ノズル20の基端側は、外筒31から露出した内筒21の環状部22によって構成される。口部13にノズル20が嵌入されている状態では、口部13の内周面13aに環状部22の頂部22bが密着しているので、容器本体10に収容された薬液が外筒31に接触することが抑制される。また、頂部22bが口部13の内周面13aに密着した状態では、拡径部22a及び縮径部22cが内周面13aから離間している。すなわち、環状部22の頂部22bは、内周面13aに対して線接触的に密着している。そのため、ノズルが内周面13aに面接触で密着する場合に比べて、口部13に加わるノズルからの外力を小さくすることができる。したがって、収容された薬液の変質を抑制するとともに、容器本体10の損傷を抑制することができる。
【0033】
また、容器本体10が、例えばダイレクトブロー成形によって製造される場合には、口部13の内周面13aが平滑に形成されないことがある。この場合、従来技術のように、口部の内周面に対してノズルの外周を面接触で密着させようとしても、口部の内周面とノズルの外周面との間に僅かな隙間が形成され、気密性を保持できない虞がある。上記の点眼容器1では、内周面13aが平滑に形成されない場合であっても、頂部22bが僅かに変形することによって、口部13の内周面13aに対して線接触的に密着することができる。
【0034】
また、ガイド部33は、縮径部22cよりも先端側に位置し、頂部22bからガイド部33までの区間では、ノズル20の外周面は口部13の内周面13aから離間している。ノズル20は、口部13に対して基端側から嵌入される。この場合、ノズル20が口部13の内側に押圧されることによって、ノズル20の環状部22が口部13に嵌入される。そして、さらにノズル20が軸方向の基端側に押圧されると、ガイド部33が口部13に嵌入される。この状態では、環状部22の頂部22bとガイド部33とが口部13の内周面13aに密着した状態となっている。軸方向に互いに離間した頂部22bとガイド部33とが内周面13aに密着することによって、ノズル20のぐらつきを抑制することができる。そのため、口部13に対してノズル20が傾いて嵌入されることが抑制される。故に、ガイド部33よりも軸方向の先端側に設けられた第1フィン部35及び第2フィン部36が傾いて口部13に嵌入されることが抑制される。
【0035】
また、第1フィン部35と第2フィン部36との間に空気溜りが形成されている。これにより、空気溜りの空気圧の作用によって、外筒31と内周面13aとの間からの液漏れを一層抑制することができる。また、図4に示されるように、口部13にノズル20が嵌入された状態では、第1フィン部35及び第2フィン部36は、軸方向Lの先端側に撓むように変形している。そのため、ノズル20を引く抜く方向に外力が加わったとしても、第1フィン部35及び第2フィン部36が抵抗となることによって、ノズル20が抜け難くなる。
【0036】
また、外筒31を構成する樹脂に機能性添加剤が含有されている場合、ノズル20の外周に対して任意の機能を付与することができる。また、容器本体10に収容された薬液が外筒31に接触することが抑制されているので、添加剤が薬液中に溶出する虞がない。なお、本実施形態では、機能性添加剤は、着色剤、撥水剤、抗菌剤、離型剤のうちの少なくとも一つを含んでいる。この場合、ノズル20に対して色彩、撥水性、抗菌性、及び、製造時における離型性のうち少なくとも一つを付与することができる。すなわち、外筒31を構成する樹脂に着色剤が含有されている場合、ノズル20に所望の色彩を施すことができる。この場合、使用者はノズルを視認しやすくなるため、点眼を容易に行うことができる。また、薬液の成分が結晶化してノズルに付着した際に、結晶を視認しやすく、結晶を容易に除去することができる。また、外筒31を構成する樹脂に撥水剤が含有されている場合、ノズル20に撥水性を付与することができる。この場合、ノズル20から薬液が滴下され易く、点眼を容易に行うことができる。また、外筒31を構成する樹脂に抗菌剤が含有されている場合、ノズル20に抗菌性を付与することができる。この場合、ノズル20の表面における細菌の増殖を抑制することができる。また、外筒31を構成する樹脂に離型剤が含有されている場合、ノズル20に離型性を付与することができる。この場合、製造時において金型から容易にノズル20を分離することができる。
【0037】
以上、本発明の実施の形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではない。
【0038】
例えば、ノズル20が略円筒状をなす例を示したが、これに限定されない。ノズルは、容器本体に形成された口部に嵌入できればよい。すなわち、ノズルの形状は、口部の内周の形状に合わせて設計されていればよい。例えば、口部が楕円筒形状である場合には、ノズルの形状は楕円筒形状であってよい。
【0039】
また、ガイド部33が外筒31に形成されている例を示したが、これに限定されない。例えば、ガイド部は内筒に形成されていてもよい。この場合、例えば、内筒21と外筒31との境界は、ガイド部33と第1フィン部35との間の平坦部32bの位置であってもよい。
【0040】
また、縮径部22cが、軸方向Lにおける所定の区間にわたって形成されている例を示したが、これに限定されない。縮径部は頂部22bと平坦部22dとを接続する部分であり、例えば、縮径部は軸方向Lに垂直な平面によって形成されてもよい。この場合、頂部と、縮径部と、平坦部の起点との軸方向Lにおける位置が一致する。
【0041】
また、環状に形成されたガイド部33が、口部13の内周面13aと全周にわたって密着している例を示したが、これに限定されない。例えば、環状に形成されたガイド部が、口部13の内周面13aに対して一部で接触していなくてもよい。また、ガイド部は必ずしも環状に形成されている必要はなく、例えば、外筒31の外周面から径方向の外側に向かって突出する複数の突起によって形成されていてもよい。
【0042】
また、第1フィン部35及び第2フィン部36の2つのフィン部によって空気溜りを形成する例を示したが、フィン部は3つ以上形成されてもよい。
【符号の説明】
【0043】
1…点眼容器、10…容器本体、13…口部、13a…内周面、20…ノズル、21…内筒、22…環状部、22a…拡径部、22b…頂部、22c…縮径部、31…外筒、33…ガイド部、35…第1フィン部、36…第2フィン部。
図1
図2
図3
図4