(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1,2に記載の椅子は、支持体側のフランジ部に座体側の凹溝を長手方向の端部から挿入して座体を支持体に組み付ける構造とされているため、凹溝からのフランジ部の脱落を防止するために構成部材の肉厚を厚くせざるを得ないうえ、フランジ部と凹溝の間の摺動隙間を狭めてガタ付きを抑制しようとした場合に、フランジ部に対する凹溝の組付けが難しくなる、という問題がある。
【0007】
特許文献3に記載の椅子は、支持体側の断面略T字状の固定レールに、座体側のアリ溝状の可動レールを長手方向の端部から挿入して座体を支持体に組み付ける構造とされているため、構成部材の肉厚を極端に厚くしなくても固定レールから可動レールの脱落を防止することができる。しかし、特許文献2に記載の椅子の場合も、固定レールと可動レールの間の摺動隙間を狭めてガタ付きを抑制しようとすると、固定レールに対する可動レールの組付けが難しくなる。
【0008】
そこで本発明は、摺動部の隙間を狭めたまま、座体と支持体を容易に組み付けることができる椅子を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る椅子は、上記課題を解決するために、以下の構成を採用した。
即ち、本発明に係る椅子は、着座者が着座する座体と、前記座体を支持する支持体と、前記支持体に一方向に摺動自在な状態で保持されるとともに、前記座体に取り付けられる摺動部材と、前記摺動部材を前記座体に固定する固定手段と、を備え、前記座体は、前記摺動部材の上面に当接して前記摺動部材を支持する下向き支持面と、前記摺動部材の摺動方向の端部側の下面に当接して前記摺動部材を支持する上向き支持面と、を有し、前記摺動部材の摺動方向の端部側の下面
は、前記摺動部材が前記支持体に一方向に摺動自在に保持された状態において、前記座体の上向き支持面に前記固定手段によって固定され
、前記固定手段は、前記摺動部材の摺動方向の端部側に設けられた雌ねじ部と、前記座体の下面側から前記座体の挿通孔を貫通して前記雌ねじ部に螺合されるボルトと、を備えていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成により、座体を支持体に組み付けるときには、摺動部材を支持体に一方向に摺動自在な状態で予め組み付けておく。この状態から、座体を支持体に対して若干傾斜させる等して、支持体に組み付けられた摺動部材の端部を座体の上向き支持面上に配置し、座体の傾斜姿勢を元に戻す等して摺動部材を座体の上向き支持面と下向き支持面とに当接させる。この後、摺動部材の摺動方向の端部側を固定手段によって座体に固定する。本発明に係る椅子は、摺動部材と支持体の間の摺動隙間を狭めても、上記のように座体を支持体に対して容易に組み付けることができる。
また、この場合、摺動部材の摺動方向の端部側を座体側の上向き支持面に当接させた状態において、座体の下面側から座体の挿通孔にボルトを挿入し、そのボルトを摺動部材の雌ねじ部に締め込むことにより、摺動部材の端部側を座体に対して容易に固定することが可能になる。
【0011】
前記座体のうちの、前記摺動部材の摺動方向の端部側が配置される部位には、前記下向き支持面よりも下方に膨出する支持ブロックが配置され、前記支持ブロックに前記摺動部材の摺動方向の端部が挿入される挿入溝が設けられ、前記挿入溝の上面が前記上向き支持面とされるようにしても良い。
この場合、支持体に予め組み付けられた摺動部材を座体側に固定するときには、座体を支持体に対して若干傾斜させた姿勢で、摺動部材の摺動方向の端部を座体側の支持ブロックの挿入溝に差し込み、その状態で座体の傾斜姿勢を戻すことによって、摺動部材を座体側の上向き支持面(挿入溝の上面)と下向き支持面とに当接させることが可能になる。したがって、この構成を採用することにより、支持体に対して座体を容易に組み付けることが可能になる。
【0013】
前記雌ねじ部は、前記摺動部材の摺動方向の端部側の上面に固定された固定ナットであり、前記座体には、前記下向き支持面よりも上方側に窪み、若しくは、上方側に開放されて前記固定ナットとの干渉を回避する逃げ溝、若しくは、逃げ孔が形成されるようにしても良い。
この場合、摺動部材の摺動方向の端部側を座体の上向き支持面に当接させるときに、固定ナットが座体と干渉するのを回避することができる。したがって、この構成を採用した場合には、座体に対する摺動部材の組み付けを容易にすることができる。
【0014】
前記支持体は、上方に突出して前記摺動部材を一方向に摺動自在に案内し、かつ、前記摺動部材の摺動方向と交差する方向の変位を規制する案内レールを有し、前記座体の下面には、上方に向かって凹状に窪み、内部に前記摺動部材と前記案内レールの上部が配置される凹状部が設けられる構成としても良い。
この場合、摺動部材と、その摺動部材を摺動自在に案内する案内レールの上部が座体の下面の凹状部内に配置されるため、案内レールと摺動部材の摺動部分に周囲から異物等が進入して咬み込まれにくくなるうえ、摺動部分が外部から見えにくくなり外観も向上する。
【0015】
前記摺動部材は、上下方向に貫通する貫通孔を有し、前記座体と前記支持体の一方は、前記貫通孔を貫通して突出する係止突起を有し、前記座体と前記支持体の他方は、前記貫通孔を貫通して突出した前記係止突起と当接することによって、前記支持体に対する前記座体の摺動方向の移動範囲を規制する規制凹部を有する構成としても良い。
この場合、座体と支持体の一方に突設された支持突起が、摺動部材の貫通孔を貫通して、座体と支持体の他方に設けられた規制凹部に当接することにより、支持体に対する座体の変位が規制される。したがって、この構成を採用することにより、部品点数の少ない簡単な構成でありながら、支持体に対する座体の摺動方向の移動範囲を規制することが可能になる。
【0016】
前記係止突起は前記座体に設けられ、前記規制凹部は前記
支持体に設けられていることが望ましい。
この場合、摺動部材と一体に移動する座体側に係止突起が設けられているため、摺動部材に形成する貫通孔を小さくして、支持体に対する摺動部材の当接面積の拡大や摺動部材の剛性確保を図ることができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、摺動部材を支持体に一方向に摺動自在な状態で予め組み付けておき、摺動部材の摺動方向の端部側の下面を座体側の上向き支持面に当接させ、かつ摺動部材の上面を座体側の下向き支持面に当接させた状態において、摺動部材の摺動方向の端部側を固定手段によって座体に固定することができるため、摺動部の隙間を狭めたまま、座体と支持体を容易に組み付けることができる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図1は、本実施形態に係る椅子100を側方から見た斜視図である。
図2は、椅子100を後方(背凭れ側)から見た斜視図である。
以下の説明においては、説明の便宜上、座体4に正規姿勢で着座した着座者が前を向く方向を「前方」と称し、その反対方向を「後方」と称する。また、以下の説明における上下、左右の向きは、着座者が座体4に正規姿勢で着座したときの着座者を中心とした向きと合致する向きを意味するものとする。なお、図中の適所には、前方を指す矢印FRと、上方を指す矢印UPと、左側方を指す矢印LHが記されていている。
【0020】
図1,
図2に示すように、椅子100は、床面F上に設置される脚部1と、脚部1の上部に設置されるボックス状の支基2と、支基2の上部に取り付けられた座受部材3と、座受部材3の上部に前後方向に位置調整可能に支持された座体4と、支基2の両側部に枢支されて支基2内の不図示のリクライニング機構により傾動し得る側面視略L字状の背凭れ支持体70と、背凭れ支持体70の上部の前面側に取り付けられた背凭れ本体71と、背凭れ支持体70の下部側の前縁部に取り付けられ、着座者の肘先が載せ置かれる左右一対の肘掛け74と、を備えている。背凭れ支持体70と背凭れ本体71とは、着座者の背部の荷重を支持する背凭れ7を構成している。
【0021】
脚部1は、キャスタ11A付きの多岐脚11と、多岐脚11の中央部より起立し昇降機構であるガススプリング(不図示)を内蔵する脚柱12と、を有している。
脚柱12の下部を構成する外筒13は、多岐脚11に回転不能に嵌合して支持されている。脚柱12の上部を構成する内筒14は、上端部に支基2を固定して支持するとともに、下部が外筒13に水平方向で回転可能に支持されている。
支基2には、脚柱12の昇降調整機構と背凭れ7のリクライニング機構が内蔵されている。
【0022】
図3は、一部の部品を取り去った椅子100を座体4の左下前方から見た図である。
図3に示すように、座受部材3は、左右両側の前部領域と後部領域とが前アーム60fと後アーム60rを介して支基2の上部に揺動可能に連結されている。前アーム60fは、支基2の前端部から上方に向かって湾曲しつつ椅子幅方向外側に延出し、下端側が椅子幅方向に沿う軸線を中心として支基2の前部に回動可能に支持されている。後アーム60rは、下端部が背凭れ支持体70の後述する前向き腕部72bに一体に結合され、前向き腕部72bから上方に向かって湾曲しつつ椅子幅方向外側に延出している。背凭れ支持体70の前向き腕部72bの前端部は支基2内の後部寄りのリクライニング機構の軸に連結されている。このため、後アーム60rは、リクライニング機構の操作に応じて椅子幅方向に沿う軸回りに傾動する。
【0023】
座受部材3は、前アーム60fと後アーム60rの各上端部に回動可能に連結されている。したがって、座受部材3は、前アーム60f、後アーム60r、及び、支基2とともに平行リンク機構を構成し、背凭れ支持体70の傾動動作に連動して前後方向に変位するようになっている。
【0024】
図4は、座体4と、座体4に連結された座受部材3を下方側から見た図である。
図5は、座受部材3の左前部領域を右前部上方側から見た図であり、
図6は、
図5のVI−VI線に沿う断面を示す図である。なお、
図4,
図5においては、座体4と座受部材3の左半分のみが示されているが、座体4と座受部材3はほぼ左右対称形状に形成されている。
これらの図にも示すように、座受部材3は、左右一対の側部フレーム部61と、左右の側部フレーム部61の前部領域同士を連結する連結フレーム部62、を有している。この実施形態の場合、左右の側部フレーム部61と連結フレーム部62とは一体部材として形成されている。左右の側部フレーム部61は相互に平行になるように配置されている。左右の各側部フレーム部61の上部には、座体4を前後方向に摺動自在に支持するため案内レール63が突設されている。本実施形態においては、側部フレーム部61(座受部材3)が、座体4を支持する支持体を構成している。
【0025】
左右の各側部フレーム部61は、前後方向に長尺な略長方体状のブロックによって構成されている。これに対し、側部フレーム部61に接続された連結フレーム部62は、
図5に示すように、下向きに凹の略円弧状の断面形状が椅子幅方向に延びる形状に形成されている。換言すれば、連結フレーム部62の上面側には、椅子幅方向に連続する凹部62aが形成されている。左右の各側部フレーム部61の連結フレーム部62の延長上位置には、
図6に示すように、下方側に凹状に開口する肉抜き部61aが設けられている。各側部フレーム部61の肉抜き部61aの椅子幅方向内側には、連結フレーム部62の凹部62aに隣接する内側側壁61bが設けられ、肉抜き部61aの椅子幅方向外側には、下方に突出する支持壁61cが設けられている。内側側壁61bと支持壁61cには、枢支ピン64が嵌入される嵌合孔61b−h,61c−hがそれぞれ形成されている。
【0026】
前述した前アーム60fの上端部には、側部フレーム部61の肉抜き部61aに挿入される連結片65が突設されている。連結片65には、枢支ピン64が回動可能に挿入される挿通孔65aが形成されている。挿通孔65aには、枢支ピン64を回動可能に支持するための滑りブッシュ33が圧入されている。連結片65は、側部フレーム部61の肉抜き部61a内に配置された状態において、内側側壁61bと支持壁61cに嵌入固定される枢支ピン64が挿入され、それによって側部フレーム部61に対して回動可能に連結されている。なお、
図6中の符号66は、前アーム60fの上端部の連結片65の椅子幅方向外側位置に突設された遮蔽壁である。遮蔽壁66は、支持壁61cの椅子幅方向外側に配置され、支持壁61cと枢支ピン64の嵌合部を椅子幅方向外側から遮蔽する。遮蔽壁66は、枢支ピン64を直接支持しないため、内側側壁61bや支持壁61cに比較して椅子幅方向の肉厚が薄くなっている。
【0027】
また、枢支ピン64は、二面幅を有する非円形の外面形状に形成されており、枢支ピン64の嵌入される内側側壁61bと支持壁61cの各嵌合孔61b−h,61c−hも枢支ピン64の外面形状と合致するように非円形形状に形成されている。
図5,
図6中の符号67は、一部が側部フレーム部61に係止された状態において、枢支ピン64に軸直交方向から螺合される抜け規制用のイモネジである。枢支ピン64は、嵌合孔61b−h,61c−hとの非円形部での嵌合と、イモネジ67との協働によって側部フレーム部61に対する回転と抜けを規制されている。
【0028】
座体4は、
図3,
図4に示すように、着座荷重を受け止める硬質樹脂製の座シェル40(荷重支持部材)と、座シェル40の上部に配置された不図示のクッション部材と、クッション部材と座シェル40の上方と周域とを覆う表皮部材41と、座シェル40の下面の椅子幅方向に離間した位置に設けられた一対のフレーム受部42と、を有している。左右の各フレーム受部42は、座受部材3の左右の側部フレーム部61と対応する位置に設けられ、座体4の前後方向に沿って延出している。フレーム受部42は、側部フレーム部61の案内レール63よりも幅が広く、かつ、該案内レール63よりも前後方向に長尺に形成されている。左右のフレーム受部42は、座シェル40と一体部品として構成されている。ただし、フレーム受部42は座シェル40と別体部品として形成して、座シェル40に固定手段によって固定するようにしても良い。
【0029】
背凭れ支持体70は、その主要部がアルミニウム合金等の金属材料から成り、
図1〜
図3に示すように、椅子幅方向に離間して配置された左右一対の主フレーム72と、椅子幅方向に延出して主フレーム72の上端部同士を連結する連結フレーム73と、を備えている。左右の主フレーム72は、側面視が略L字状に形成されており、座体4の後部下方位置から上方に起立する起立部72aと、起立部72aの下端から湾曲しつつ前方に延びる前向き腕部72bと、を有している。前向き腕部72bの前端部は、前述のように支基2に設けられたリクライニング機構の軸に結合されている。また、左右の主フレーム72の起立部72aは、上方に向かうにつれて両者の離間幅が次第に広がるように椅子幅方向外側に傾斜している。
【0030】
背凭れ本体71は、樹脂製の背凭れ枠75と、背凭れ枠75に張設されて着座者の背中からの入力荷重を直接受ける張材76と、を有している。背凭れ枠75は、
図2に示すように、左右の枠辺75sの離間幅が下方に向かって次第に窄まり、かつ、左右の枠辺75sの上端部同士が椅子幅方向に延出する上部側の枠辺75uによって連結される逆三角形状の正面視形状に形成されている。背凭れ枠75の左右の各枠辺75sには、上部寄り領域から後方側に向かって突出する上部連結アーム69uと、下部寄り領域から後方側に向かって突出する下部連結アーム69lと、が延設されている。上部連結アーム69uは、背凭れ支持体70の左右の対応する主フレーム72の起立部72aのうちの上部領域に連結され、下部連結アーム69lは、背凭れ支持体70の左右の対応する主フレーム72の起立部72aのうちの下部領域に連結されている。
【0031】
図7は、
図4のVII−VII線に沿う断面を示す図であり、
図8は、座体4の左側後部を前部下方側から見た図である。
座体4の下面の左右両側に設けられた各フレーム受部42の下面には、座体4の前後方向に略沿って延出する断面略矩形状の凹状部43が形成されている。
【0032】
凹状部43は、座体4の前後方向に長尺な底壁43aと、底壁43aの椅子幅方向内側と外側の各端部から下方に向かって起立する側壁43sと、底壁43aの前端部から下方に向かって起立する前壁43fと、底壁43aの後端部から下方に向かって起立する後壁43rと、を有している。凹状部43には、後に詳述する長尺なガイド金具44(摺動部材)が収容配置されるようになっている。凹状部43の底壁43aの下面の一部は、ガイド金具44の上面に当接してガイド金具44を支持する下向き支持面43a−1を構成している。また、凹状部43内の後壁43rの幅方向中央領域には、前方に向かって膨出する略直方体状の支持ブロック45が延設されている。支持ブロック45の上部には、ガイド金具44の後端部(摺動方向の端部)が前方から挿入される挿入溝46が形成されている。挿入溝46の上面は、挿入溝46に挿入されたガイド金具44の後部側の下面に当接してガイド金具44を支持する上向き支持面46uを構成している。
【0033】
ガイド金具44は、後に詳述するように座受部材3の左右の側部フレーム部61の案内レール63に組み付けられた後に、後端部が挿入溝46に挿入されることによってその下面が上向き支持面46uに当接し、さらに、中央領域と前方側領域の上面が凹状部43内の下向き支持面43a−1に当接する。ガイド金具44は、この状態において後縁部と前縁部とがフレーム受部42にボルト締結される。ガイド金具44は、堅牢な金属板によって構成されており、座体4の対応するフレーム受部42に取り付けられた状態において、座体4の座シェル40の側部下方を補強するように機能する。
【0034】
ガイド金具44の後縁部には、ボルト挿通孔(符号省略)が形成されているとともに、その上面に固定ナット47が溶接固定されている。固定ナット47は、本実施形態における雌ねじ部を構成している。支持ブロック45には上下方向に貫通する挿通孔48が形成されており、その挿通孔48には、ガイド金具44を固定するためのボルトBrが挿入されるようになっている。ボルトBrは、支持ブロック45の下方側から挿通孔48に挿入され、その状態でガイド金具44の固定ナット47に締め込まれる。ガイド金具44の後縁部は、これによって上向き支持面46uに当接した状態において支持ブロック45に固定される。また、ガイド金具44の前縁部は、下向き支持面43a−1に当接した状態において、ボルトBfによって凹状部43内の底壁43aに締結固定される。本実施形態においては、ボルトBrと固定ナット47が、摺動部材であるガイド金具44の摺動方向の端部側の下面を上向き支持面46Uに固定するための固定手段を構成している。
【0035】
また、各フレーム受部42の凹状部43内の後端側領域には、下向き支持面43a−1よりも上方側に窪む逃げ溝49が形成されている。逃げ溝49は、凹状部43内の底壁43aの幅方向の中央領域に、支持ブロック45よりも若干広い幅に形成されている。また、逃げ溝49は、支持ブロック45よりも所定距離前方側から凹状部43内の後壁43rに達する範囲に亘って形成されている。逃げ溝49は、座体4を後下方に傾斜させた状態でガイド金具44の後端部を挿入溝46に挿入する際に、ガイド金具44の上面側に固定された固定ナット47が凹状部43の底壁43a側と干渉するのを回避する。なお、逃げ溝49に代えて、フレーム受部42を上下方向に貫通する逃げ孔としても良い。
【0036】
図7に示すように、ガイド金具44の前後方向の中央部よりも後方側寄り位置には、上下方向に貫通する貫通孔39が形成されている。貫通孔39は、前後方向に長い長孔状に形成されている。また、ガイド金具44が取り付けられる凹状部43の底壁43aには、貫通孔39を貫通して下方に突出する係止突起38が突設されている。これに対し、ガイド金具44を摺動可能に保持する案内レール63の上面には、貫通孔39から下方に突出した係止突起38と当接することによって、案内レール63に対する座体4の前後方向(摺動方向)の移動範囲を規制する規制凹部37が形成されている。座体4は、係止突起38が規制凹部37の後部壁37rに当接することによって後方側へのスライド移動を規制され、係止突起38が規制凹部37の前部壁37fに当接することによって前方側へのスライド移動を規制される。なお、係止突起38は、案内レール63の上面に突設し、凹状部43の底壁43a側に規制凹部37を形成することも可能である。
【0037】
図9は、座体4の左側のフレーム受部42の一部を下方から見た図である。
図10は、座体4の左側のフレーム受部42と座受部材3の側部フレーム部61との組付け部の一部を断面にして左前部上方側から見た図である。また、
図11は、
図4のXI−XI線に沿う断面を示す図であり、
図12は、
図4のXII−XII線に沿う断面を示す図である。
座受部材3の左右の側部フレーム部61は、
図10〜
図12にも示すように、ガイド金具44を前後スライド可能に保持する案内レール63を有している。案内レール63は、側部フレーム部61の本体部分に連接する下部領域の幅が上部領域の幅よりも狭い断面略T字状に形成されている。案内レール63については、幅の狭い下部領域をくびれ部63aと称し、幅の広い上部領域を頭部63bと称するものとする。
案内レール63の頭部63bの上面と左右の側面には、摺動性の良い薄肉の樹脂部材36が被着されている。なお、樹脂部材36のうちの、案内レール63の上記の規制凹部37に対応する部位には、同形状の開口(符号省略)が形成されている。
【0038】
一方、ガイド金具44は、樹脂部材36を介して案内レール63の頭部63bの上面に当接する上壁44uと、樹脂部材36を介して案内レール63の頭部63bの左右の側面に当接する一対の側壁44sと、左右の各側壁44sの下端から案内レール63のくびれ部63a方向に屈曲する抜け規制壁44aと、を有している。左右の側壁44sは、樹脂部材36を介して案内レール63の頭部63bの側面に当接することによって座体4の椅子幅方向の変位を規制する。また、抜け規制壁44aは、案内レール63の頭部63bの下面に当接することによって案内レール63からの座体4の上方変位(上方への抜け)を規制する。側部フレーム部61の案内レール63は、摺動部材であるガイド金具44を前後方向(一方向)に摺動自在に案内し、かつ、ガイド金具44の摺動方向と交差する方向(上下方向と左右方向)の変位を規制する。
【0039】
また、ガイド金具44の上壁44uは、前部領域と中央領域の上面が、凹状部43内の下向き支持面43a−1に当接するとともに、後端領域が支持ブロック45の挿入溝46に挿入され、その後端領域の下面(摺動方向の端部側の下面)が支持ブロック45の上向き支持面46uに当接するようになっている。なお、本実施形態においては、ガイド金具44の上壁44uの後端領域の下面が座体4側の上向き支持面46uに当接する構成とされているが、ガイド金具44の上壁44u以外の部分、例えば、抜け規制壁44aの後端側の下面(摺動方向の端部側の下面)が座体4側の上向き支持面に当接する構造としても良い。
【0040】
ところで、座体4の左側のフレーム受部42と、座受部材3の左側の側部フレーム部61の間には、座受部材3に対する座体4の前後方向のスライド位置を固定するスライドロック機構20が設けられている。
【0041】
左側のフレーム受部42には、ロック爪30aを有する操作レバー21(回動操作部材)が回動可能に取り付けられている。これに対し、側部フレーム部61の案内レール63の下方側の左側面には、複数のロック溝31が前後方向に沿って(側部フレーム部61の長手方向に沿って)形成されている。
【0042】
操作レバー21のロック爪30aは、座体4の前後方向の移動位置に応じて、側部フレーム部61側のいずれかのロック溝31に選択的に係合されるようになっている。スライドロック機構20は、ロック爪30aと複数のロック溝31とを主要な構成要素として構成されている。
【0043】
図9に示すように、左側のフレーム受部42の左側の側部には、椅子幅方向内側に向かって窪む凹部50が設けられている。凹部50内の前側の壁と後側の壁には、相互に対向するように枢軸51が突設されている。枢軸51は、フレーム受部42のスライド方向(前後方向)に沿うように突設されている。
【0044】
枢軸51の外周面は、
図10,
図11に示すように完全な円形ではなく、枢軸51の軸心(軸線o)を中心とする円弧形状である円弧部51aと、該円弧部51aの両端部を直線状に結ぶ直線部51bと、を有する非円形形状に形成されている。円弧部51aは、中心角が180°以上の円弧形状とされている。また、
図9に示すように、凹部50の底部側の壁には下面視が略L字状のブラケット52が突設されている。ブラケット52は、円柱状のスプリング保持部52aを有し、そのスプリング保持部52aが枢軸51と同軸になるように配置されている。
【0045】
フレーム受部42の一対の枢軸51には、回動操作部材である操作レバー21が回動可能に保持されている。また、ブラケット52のスプリング保持部52aには、操作レバー21を初期位置に向けて回動付勢する付勢スプリング53(コイルスプリング)が保持されている。
【0046】
図13は、操作レバー21の取付部の構造と、操作レバー21の組付け手順を(A),(B),(C)の順に示した模式的な断面を示す図である。
操作レバー21は、
図10〜
図13に示すように、枢軸51を回動可能に保持する一対の枢軸保持部22と、枢軸保持部22に接続された平板状の把持操作片23と、把持操作片23の操作端から離間した位置から把持操作片23の把持面と交差する方向に延びるアーム部24と、を有している。アーム部の24の先端部には、上述したロック爪30aが略直角方向に屈曲して突出している。本実施形態の場合、ロック爪30aは一対設けられている。
【0047】
以下、操作レバー21については、説明の便宜上、枢軸51に保持されたときに枢軸51に沿う方向を幅方向と称するものとする。
一対の枢軸保持部22は、把持操作片23の幅方向に離間した二位置に設置されている。各枢軸保持部22は、把持操作片23の把持面と交差する方向に膨出して形成されている。枢軸保持部22は、対応する枢軸51を枢軸51の軸線o方向と略直交する方向から挿入係合可能な挿入開口25と、挿入開口25の内側(奥側)において枢軸51を回動可能に保持する保持孔26と、を有している。
【0048】
挿入開口25は、その開口幅w1が枢軸51の最小直径Dmin(直線部51bの延出方向と略直交する方向の直径)よりも広く、かつ、枢軸51の最大直径Dmaxよりも狭い幅に形成されている。したがって、枢軸51は、
図13(A)に示すように、最小直径Dminとなる角度姿勢で挿入開口25に挿入されるときには、保持孔26内を通過することができるが、最大直径Dmaxとなる角度姿勢で挿入開口25に挿入されるときには、保持孔26内を通過することができない。
挿入開口25への枢軸51の通過を許容し得る枢軸保持部22と枢軸51の相対回動位置範囲を第1の相対位置範囲P1と称する。なお、本実施形態においては、挿入開口25への枢軸51の通過を許容し得る相対回動範囲が狭いため、
図13においては、幅を持たない一位置のように第1の相対位置範囲P1が示されている。
【0049】
後に詳述するように操作レバー21の使用時における枢軸保持部22と枢軸51の相対回動位置の範囲P2〜P3(以下、「操作角度範囲P2〜P3」と称する。)は、第1の相対位置範囲P1から離間した相対位置範囲に設定されている。したがって、操作レバー21は、枢軸保持部22と枢軸51の相対回動位置が第1の相対位置範囲P1にあるときには、枢軸保持部22を枢軸51に脱着することができるが、両者の相対回動位置が操作角度範囲P2〜P3にあるときには、枢軸51からの枢軸保持部22の脱着が制限される。
【0050】
枢軸保持部22の保持孔26は、内周面が円弧状の円弧面26aと、円弧面26aの円周方向の両端部から円弧面26aの中心方向に向かって膨出する断面略三角形状の規制突起26bと、を有している。規制突起26bは、円弧面26aの両端部から突起の頂部に向かって直線状に延びる一対の当接面26b−1,26b−2を有している。
保持孔26の円弧面26aの中心角は、枢軸51の円弧部51aの中心角よりも所定角度大きく設定されている。また、保持孔26の円弧面26aの直径は、枢軸51の最大直径Dmaxとほぼ等しく(枢軸51の最大直径Dmaxよりも若干大きく)設定されている。
【0051】
操作レバー21は、挿入開口25を通して保持孔26内に枢軸51が挿入された状態においては、保持孔26内の規制突起26bが枢軸51の外周面の直線部51bに当接することで、使用時の操作角度範囲P2〜P3が規制されている。即ち、操作レバー21は、規制突起26bの一方の当接面26b−1が枢軸51の外周面の直線部51bに当接する回動位置P2と、当接面26b−2が枢軸51の外周面の直線部51bに当接する回動位置P3との間で回動可能とされている。
【0052】
また、操作レバー21は、座体4のフレーム受部42が、座受部材3の側部フレーム部61に組み付けられる前に、第1の相対位置範囲P1において、フレーム受部42の枢軸51に対して組み付けられる。なお、このとき操作レバー21には付勢スプリング53の一端部が係止される。これにより、操作レバー21には、第1の相対位置範囲P1に向かう方向に付勢スプリング53の付勢力が作用するようになる。
【0053】
この後、フレーム受部42を側部フレーム部61に組み付けるときには、操作レバー21を付勢スプリング53の付勢力に抗して第1の相対位置範囲P1から離間した相対回動位置まで相対回動させておく。こうしてフレーム受部42が側部フレーム部61に組み付けられると、操作レバー21のロック爪30aが付勢スプリング53の付勢力を受けて側部フレーム部61上のいずれかのロック溝31に嵌合状態で当接する。このとき、操作レバー21は、第1の相対位置範囲P1への回動変位を規制され、使用時の操作角度範囲P2〜P3に維持される。
【0054】
以上のように、本実施形態に係る椅子100は、座体4側のフレーム受部42に、摺動部材であるガイド金具44の上面に当接してガイド金具44を支持する下向き支持面43a−1と、ガイド金具44の後端部側(摺動方向の端部側)の下面に当接してガイド金具44を支持する上向き支持面46uが設けられ、ガイド金具44の後端部側の下面が上向き支持面46uに固定手段であるボルトBrと固定ナット47によって固定されている。このため、ガイド金具44を支持体である側部フレーム部61に前後方向に摺動自在に予め組み付けておき、ガイド金具44の後端部側の下面をフレーム受部42側の上向き支持面46uに当接させ、かつガイド金具44の上面をフレーム受部42側の下向き支持面に当接させた状態で、ガイド金具44の後端部側をボルトBrと固定ナット47によって固定することができる。
したがって、本実施形態に係る椅子100においては、ガイド金具44と側部フレーム部61の間の摺動隙間を狭めて両者の間のガタ付きを抑制した状態において、座体4を座受部材3に容易に組み付けることができる。
【0055】
また、本実施形態に係る椅子100では、座体4側のフレーム受部42の後部のガイド金具44が配置される部位に、下向き支持面43a−1よりも下方に膨出する支持ブロック45が配置され、支持ブロック45にガイド金具44の後端部が挿入される挿入溝46が設けられるとともに、挿入溝46の上面が上向き支持面46uとされている。このため、側部フレーム部61に摺動自在に組み付けられたガイド金具44を座体4側のフレーム受部42に固定するときには、座体4を後下方に若干傾斜させた姿勢で、ガイド金具44の後端部を支持ブロック45の挿入溝46に差し込み、その状態で座体4の傾斜姿勢を戻すことによって、フレーム受部42側の上向き支持面46uと下向き支持面43a−1とにガイド金具44を当接させることができる。
したがって、この構成を採用した場合には、座体4を座受部材3に対してより容易に組み付けることができる。
【0056】
また、本実施形態においては、ガイド金具44の後部側の上面に固定された固定ナット47と、支持ブロック45の挿通孔48を貫通して固定ナット47に螺合されるボルトBrとにより、ガイド金具44の後部側を座体4に固定するための固定手段が構成されている。このため、この構成を採用することにより、座体4の下面側から挿通孔48にボルトBrを挿入し、そのボルトBrをガイド金具44の固定ナット47に締め込むことにより、ガイド金具44の後部側を座体4に対して容易に固定することが可能になる。
【0057】
さらに、本実施形態に係る椅子100おいては、座体4側のフレーム受部42に、下向き支持面43a−1よりも上方側に窪んで固定ナット47との干渉を回避する逃げ溝49が形成されている。このため、ガイド金具44の後部側をフレーム受部42側の上向き支持面46uに当接させるときに、固定ナット47がフレーム受部42と干渉するのを回避することができる。したがって、この構成を採用した場合には、ガイド金具44をフレーム受部42により容易に組み付けることができる。
【0058】
また、本実施形態に係る椅子100においては、支持体である側部フレーム部61が、ガイド金具44を前後方向に摺動自在に案内し、かつ、ガイド金具44の摺動方向と交差する方向の変位を規制する案内レール63を有し、座体4側のフレーム受部42の下面には、上方に向かって凹状に窪み、内部にガイド金具44と案内レール63の上部が配置される凹状部43が設けられている。このため、ガイド金具44と案内レール63の上部が座体4の下方側で凹状部43内に配置され、凹状部43の前壁43fと左右の側壁43sと後壁43rとによって周囲を取り囲まれることになる。したがって、この構成を採用した場合には、ガイド金具44と案内レール63の摺動部に異物が咬み込まれにくくなるとともに、摺動部が外部から見えにくくなって外観も向上する。
【0059】
また、本実施形態に係る椅子100は、上下方向に貫通する貫通孔39がガイド金具44に形成されるとともに、ガイド金具44の貫通孔39を貫通して下方に突出する係止突起38が座体4側のフレーム受部42に形成され、側部フレーム部61の案内レール63に、係止突起38と当接することによって座体4の前後方向の移動範囲を規制する規制凹部37が設けられている。このため、この構成を採用した場合には、部品点数の少ない簡単な構成でありながら、座体4の前後方向の移動範囲を規制することができる。
【0060】
また、係止突起38は支持体である側部フレーム部61側に設け、規制凹部37は座体4側のフレーム受部42に設けることも可能であるが、本実施形態においては、係止突起38が、ガイド金具44と一体に移動するフレーム受部42側に突設され、規制凹部37が、ガイド金具44と相対変位する側部フレーム部61側に設けられている。このため、本実施形態の構成を採用した場合、ガイド金具44に形成する貫通孔39の開口面積をより小さくし、案内レール63に対するガイド金具44の当接面積を拡大することができるとともに、ガイド金具44の剛性確保も図ることができる。
【0061】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。例えば、上記の実施形態においては、上向き支持面46u(挿入溝46)を構成する部材が支持ブロック45によって構成されているが、上向き支持面46u(挿入溝46)を構成する部材は、板状の部材であっても良い。
さらに、上記の実施形態の座体4は、座シェル40の上部にクッション材が配置され、クッション材と座シェル40の周域が表皮部材41によって被覆された構造とされているが、座体は、座枠にメッシュ状の張材を張設した構造であっても良い。