(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0020】
<1.充電システムの構成>
まず、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る車両の充電システム10の概略構成について説明する。
図1は、本実施形態に係る充電システム10の概略構成の一例を示す模式図である。充電システム10は、例えば、
図1に示したように、エンジン11と、駆動力伝達系51と、駆動輪21と、高電圧バッテリ31と、走行用モータジェネレータ(走行用M/G)41と、ポンプ用モータジェネレータ(ポンプ用M/G)61と、ランキンサイクル70と、制御装置100と、を備える。
【0021】
エンジン11は、車両の走行状態に応じて運転又は停止する。例えば、エンジン11は、車両の走行中において要求トルクに応じて運転又は停止する。エンジン11の運転により生成された駆動力は、駆動力伝達系51を介して、駆動輪21へ伝達される。エンジン11のシリンダブロックやシリンダヘッドには、冷却水が循環する冷却水流路13が、エンジン11を冷却するために設けられている。エンジン11の廃熱は、冷却水流路13内を循環する冷却水によって回収される。冷却水流路13は、エンジン11の外部においてランキンサイクル70の熱交換器74と接続され、熱交換器74においてランキンサイクル70の作動媒体と熱交換を行う。
【0022】
高電圧バッテリ31は、高電圧(例えば、200V)の電力供給源である。具体的には、高電圧バッテリ31は、ポンプ用モータジェネレータ61及び走行用モータジェネレータ41へ電力をそれぞれ供給する他、車両内の各種装置へ電力を供給する低電圧バッテリへ電力を供給する。高電圧バッテリ31には、ポンプ用モータジェネレータ61により発電された電力及び走行用モータジェネレータ41により発電された電力が、それぞれ蓄電される。
【0023】
走行用モータジェネレータ41は、車両の駆動力を生成する駆動用モータとしての機能を有する。また、走行用モータジェネレータ41は、車両の減速時に車両の運動エネルギを用いて発電し、発電された電力を高電圧バッテリ31へ蓄電する制動発電用発電機としての機能を有する。走行用モータジェネレータ41は、例えば、三相交流式のモータとインバータ装置とを備え、当該インバータ装置を介して高電圧バッテリ31と電気的に接続されている。なお、当該インバータ装置はコンバータ装置としての機能も有する。
【0024】
走行用モータジェネレータ41が駆動用モータとして機能する場合、高電圧バッテリ31から走行用モータジェネレータ41へ直流電力が供給される。走行用モータジェネレータ41において、当該直流電力は、インバータ装置によって交流電力に変換され、モータへ供給される。それにより、走行用モータジェネレータ41のモータによって駆動力が生成される。走行用モータジェネレータ41により生成された駆動力は、駆動力伝達系51を介して、駆動輪21へ伝達される。制御装置100は、走行用モータジェネレータ41のインバータ装置を制御することによって、走行用モータジェネレータ41による駆動力の生成を制御する。
【0025】
走行用モータジェネレータ41が車両の減速時に制動発電用発電機として機能する場合、制御装置100により走行用モータジェネレータ41のインバータ装置が制御されることによって、駆動輪21の回転エネルギを用いてモータにより発電が行われる。発電された交流電力は、インバータ装置により直流電力に変換され、高電圧バッテリ31へ蓄電される。それにより、駆動輪21の回転に抵抗が与えられ、制動力が発生する。制御装置100は、走行用モータジェネレータ41のインバータ装置を制御することによって、走行用モータジェネレータ41による発電を制御する。具体的には、制御装置100は、インバータ装置を介して走行用モータジェネレータ41の出力電圧を制御する。
【0026】
ランキンサイクル70は、車両のエンジン11の廃熱を用いて、機械エネルギを生成する。ランキンサイクル70は、例えば、
図1に示したように、作動媒体流路71と、ポンプ73と、熱交換器74と、膨張器75と、凝縮器77と、タンク79と、バイパス流路76と、流量調整機構72と、を含む。
【0027】
作動媒体流路71は、加熱される作動媒体が循環する流路である。作動媒体として、例えば、水、フロン、又はアルコールが適用され得る。作動媒体流路71には、ポンプ73、熱交換器74、膨張器75、凝縮器77、及びタンク79が順に設けられる。
【0028】
ポンプ73は、作動媒体流路71内で作動媒体を循環させる。具体的には、タンク79にはポンプ73により吸い上げられる作動媒体が貯留され、ポンプ73はタンク79に貯留された作動媒体を吸い上げる。それにより、作動媒体流路71内で作動媒体が循環する。ポンプ73は、ポンプ用モータジェネレータ61と連結される。例えば、ポンプ用モータジェネレータ61は三相交流式のモータとインバータ装置とを備え、ポンプ73の回転軸が当該モータの回転子と連結される。また、ポンプ73は、ポンプ用モータジェネレータ61によって駆動される。具体的には、制御装置100からの動作指示に基づいてポンプ用モータジェネレータ61により駆動力が生成され、当該駆動力がポンプ73の回転軸へ出力されることによって、ポンプ73の駆動が制御されるように構成される。
【0029】
熱交換器74には、作動媒体流路71及び冷却水流路13が接続される。熱交換器74において、作動媒体と冷却水との間で熱交換が行われる。それにより、作動媒体は、エンジン11の廃熱を有する冷却水によって加熱され、気化する。このように、ランキンサイクル70の作動媒体は、例えば、車両のエンジン11の廃熱によって加熱されてもよい。
【0030】
膨張器75は、作動媒体を膨張させて回転エネルギを生成する。具体的には、膨張器75は、熱交換器74で気化した作動媒体を膨張させて回転エネルギを生成する。例えば、膨張器75において、作動媒体は膨張室へ吸入され、膨張室で作動媒体が膨張し、羽根車が作動媒体の流れを受けることにより、当該羽根車と接続された回転軸の回転運動のエネルギが生成される。膨張器75はポンプ用モータジェネレータ61と連結される。具体的には、膨張器75の回転軸がポンプ用モータジェネレータ61のモータの回転子と連結される。ゆえに、膨張器75により生成された回転エネルギは、膨張器75の回転軸を介してポンプ用モータジェネレータ61へ伝達される。
【0031】
凝縮器77は、膨張器75を通過した気相の作動媒体を凝縮する。凝縮器77は、具体的には、作動媒体が有する熱を作動媒体流路71の外部へ放出させることによって、当該作動媒体を冷却する。それにより、気相の作動媒体が凝縮される。凝縮器77によって凝縮された作動媒体は、タンク79へ貯留される。タンク79へ貯留された作動媒体は、再び、ポンプ73によって吸い上げられる。このように、作動媒体は、ポンプ73、熱交換器74、膨張器75、凝縮器77、及びタンク79を順に流れることによって、ランキンサイクル70において循環する。
【0032】
ポンプ用モータジェネレータ61は、ポンプ73及び膨張器75とそれぞれ連結される本発明に係るモータジェネレータに相当する。ポンプ用モータジェネレータ61は、ポンプ73を駆動するための駆動力を出力可能である。また、ポンプ用モータジェネレータ61は、膨張器75により生成された回転エネルギを用いて発電可能である。ポンプ用モータジェネレータ61は、例えば、上述したように、三相交流式のモータとインバータ装置を備え、当該インバータ装置を介して高電圧バッテリ31と電気的に接続されている。なお、当該インバータ装置はコンバータ装置としての機能も有する。
【0033】
ポンプ用モータジェネレータ61がポンプ73を駆動するための駆動力を出力する駆動用モータとして機能する場合、高電圧バッテリ31からポンプ用モータジェネレータ61へ直流電力が供給される。ポンプ用モータジェネレータ61において、当該直流電力は、インバータ装置によって交流電力に変換され、モータへ供給される。それにより、ポンプ用モータジェネレータ61のモータによって駆動力が生成される。ポンプ用モータジェネレータ61により生成された駆動力は、ポンプ73の回転軸へ出力される。それにより、ポンプ73が駆動される。なお、ポンプ用モータジェネレータ61により生成された駆動力は、膨張器75の回転軸へも出力され得る。制御装置100は、ポンプ用モータジェネレータ61のインバータ装置を制御することによって、ポンプ用モータジェネレータ61による駆動力の生成を制御する。
【0034】
ポンプ用モータジェネレータ61が膨張器75により生成された回転エネルギを用いて発電する熱発電用発電機として機能する場合、制御装置100によりポンプ用モータジェネレータ61のインバータ装置が制御されることによって、発電が行われる。発電された交流電力は、インバータ装置により直流電力に変換され、高電圧バッテリ31へ蓄電される。制御装置100は、ポンプ用モータジェネレータ61のインバータ装置を制御することによって、ポンプ用モータジェネレータ61による発電を制御する。具体的には、制御装置100は、インバータ装置を介してポンプ用モータジェネレータ61の出力電圧を制御する。
【0035】
バイパス流路76は、作動媒体流路71におけるポンプ73より下流側と上流側とを連通する。例えば、バイパス流路76は、
図1に示したように、一端が作動媒体流路71におけるポンプ73と熱交換器74との間の部分と接続され、他端が作動媒体流路71におけるタンク79とポンプ73との間の部分と接続される。ポンプ73により吐出される作動媒体は、ポンプ73により吸引される作動媒体と比較して、高圧である。ゆえに、ポンプ73により吐出された作動媒体の一部は、バイパス流路76内を一端側から他端側へ還流し得る。換言すると、ポンプ73により吐出された作動媒体の一部は、バイパス流路76内を作動媒体流路71におけるポンプ73より下流側から上流側へ還流し得る。
【0036】
バイパス流路76は、上述したように、作動媒体流路71におけるポンプ73より上流側において、作動媒体流路71における凝縮器77より下流側と接続されてもよい。換言すると、バイパス流路76の他端は、凝縮器77とポンプ73との間の部分と接続されてもよい。それにより、バイパス流路76を通って還流された作動媒体が再び凝縮器77を通ることに起因する圧力損失の増大を防止することができる。ゆえに、燃費の低下を抑制することができる。
【0037】
また、バイパス流路76は、上述したように、作動媒体流路71におけるポンプ73より上流側において、作動媒体流路71におけるタンク79より下流側と接続されてもよい。換言すると、バイパス流路76の他端は、タンク79とポンプ73との間の部分と接続されてもよい。それにより、バイパス流路76を通って還流された作動媒体が再びタンク79からポンプ73により吸い上げられることに起因するエネルギ損失の増大を防止することができる。ゆえに、燃費の低下をより効果的に抑制することができる。
【0038】
流量調整機構72は、バイパス流路76内を流れる作動媒体の流量を調整可能である。具体的には、流量調整機構72は、バイパス流路76内を作動媒体流路71におけるポンプ73より下流側から上流側へ還流する作動媒体の流量である還流量を調整可能である。流量調整機構72の動作は、制御装置100によって制御される。それにより、流量調整機構72により調整される作動媒体の還流量が制御される。ゆえに、ポンプ73の吐出流量のうち膨張器75へ送られる流量が制御される。
【0039】
具体的には、流量調整機構72は、バイパス流路76に設けられバイパス流路76の流路面積を調整することによって作動媒体の還流量を調整可能なオリフィスを含む。オリフィスによるバイパス流路76の流路面積の調整は、例えば、制御装置100からの動作指示に基づいて開度を調整可能な電磁弁によって実現され得る。バイパス流路76の流路面積が大きくなるにつれて、バイパス流路76内を還流する作動媒体の還流量は多くなる。ゆえに、バイパス流路76の流路面積が大きくなるにつれて、ポンプ73の吐出流量のうち膨張器75へ送られる流量は少なくなる。また、バイパス流路76の流路面積が0である場合には、ポンプ73から吐出された作動媒体は、バイパス流路76内を還流せずに膨張器75へ送られる。このように、制御装置100は、具体的には、流量調整機構72へ動作指示を出力することにより、バイパス流路76の流路面積を制御することによって、作動媒体の還流量を制御し得る。なお、流量調整機構72は、バイパス流路76における還流量を調整可能であればよく、係る例に限定されない。
【0040】
充電システム10には、各種センサが設けられてもよい。例えば、充電システム10には、
図1に示したように、ポンプ回転速度センサ201、蒸気温センサ205、及び水温センサ207が設けられてもよい。
【0041】
ポンプ回転速度センサ201は、ポンプ73の回転速度を検出し、検出結果を出力する。ポンプ回転速度センサ201は、例えば、ポンプ73の回転軸の近傍に設けられる。
【0042】
蒸気温センサ205は、膨張器75へ供給される作動媒体の温度である蒸気温を検出し、検出結果を出力する。蒸気温センサ205は、例えば、ランキンサイクル70の作動媒体流路71における膨張器75より上流側に設けられる。
【0043】
水温センサ207は、エンジン11の冷却水の温度を検出し、検出結果を出力する。水温センサ207は、例えば、エンジン11の近傍に設けられる。
【0044】
制御装置100は、本発明に係るランキンサイクルの制御装置に相当する。制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0045】
制御装置100は、充電システム10を構成する各装置の動作を制御する。例えば、制御装置100は、制御対象である各装置に対して電気信号を用いて動作指示を出力することによって、各装置の動作を制御する。具体的には、制御装置100は、走行用モータジェネレータ41のインバータ装置の動作を制御することによって、走行用モータジェネレータ41の駆動及び発電を制御する。また、制御装置100は、ポンプ用モータジェネレータ61のインバータ装置の動作を制御することによって、ポンプ用モータジェネレータ61の駆動及び発電を制御する。また、制御装置100は、流量調整機構72の動作を制御することによって、流量調整機構72により調整される作動媒体の還流量を制御する。
【0046】
また、制御装置100は、各装置から出力された情報を受信する。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。例えば、制御装置100は、ポンプ回転速度センサ201、蒸気温センサ205、及び水温センサ207から出力される各種検出結果を受信する。なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0047】
本実施形態に係る制御装置100は、蒸気温に応じて、作動媒体の還流量を制御する。それにより、蒸気圧を蒸気温に応じて適切に調整することができるので、装置をより効果的に小型化することができる。なお、このような制御装置100の詳細については、後述する。
【0048】
<2.制御装置>
続いて、
図2〜
図5を参照して、本実施形態に係る制御装置100の詳細について説明する。
【0049】
制御装置100は、流量調整機構72の動作を制御することによって、流量調整機構72により調整される作動媒体の還流量を制御する。具体的には、制御装置100は、流量調整機構72へ動作指示を出力することにより、バイパス流路76の流路面積を制御することによって、作動媒体の還流量を制御し得る。また、制御装置100は、作動媒体の還流量を制御することによって、ポンプ73の吐出流量のうち膨張器75へ送られる流量を制御し得る。それにより、ポンプ73の吐出流量のうち膨張器75へ送られる流量と膨張器75の吐出量との差を調整することが実現される。ゆえに、膨張器75に供給される気相の作動媒体の体積に相当する蒸気体積流量を調整することが実現される。なお、蒸気体積流量は、上述したように、換言すると、膨張器75を単位時間あたりに通過する気相の作動媒体の体積に相当する。
【0050】
本実施形態に係る制御装置100は、流量調整機構72により調整される作動媒体の還流量を、蒸気温に応じて制御する。ゆえに、ポンプ73の吐出流量のうち膨張器75へ送られる流量を蒸気温に応じて制御することができる。よって、蒸気体積流量を蒸気温に応じて調整することができる。
【0051】
制御装置100は、具体的には、膨張器75へ供給される気相の作動媒体の圧力である蒸気圧が、蒸気温に応じて設定される蒸気圧の目標値としての目標蒸気圧に近づくように、作動媒体の還流量を制御する。目標蒸気圧は、例えば、車両の各種設計仕様等に基づいて予め設定された蒸気圧の上限値P10に優先的に設定される。上限値P10は、具体的には、ランキンサイクル70を構成する部材の機械的強度又は作動媒体の物性に基づいて、より大きな発電量を確保する観点から設定され得る。以下、
図2及び
図3を参照して、蒸気温と目標蒸気圧との関係性について説明する。
【0052】
図2は、作動媒体の蒸気圧曲線C10の一例を示す説明図である。
図2では、横軸に作動媒体の温度をとり、縦軸に作動媒体の圧力をとった場合における、各圧力に対する沸点を表す蒸気圧曲線C10が示されている。なお、
図2に示した蒸気圧曲線C10は、作動媒体の状態図の一部に相当し、
図2において、各圧力に対する凝固点を表す融解曲線及び各温度に対する昇華圧を表す昇華曲線の図示は、省略されている。
【0053】
図2に示したように、蒸気圧の上限値P10に対応する沸点は、蒸気圧曲線C10上の点D1に対応する温度Tmb10となる。蒸気圧曲線C10より高温側の領域において、作動媒体は気相となり、蒸気圧曲線C10より低温側の領域において、作動媒体は液相となる。ゆえに、作動媒体の圧力が上限値P10である場合において、作動媒体の温度が温度Tmb10より高いときには、作動媒体は気相となる。よって、蒸気温が温度Tmb10より高い場合、目標蒸気圧は、
図3に示したように、上限値P10に設定される。
【0054】
一方、作動媒体の圧力が上限値P10である場合において、作動媒体の温度が温度Tmb10より低いときには、作動媒体は液相となる。ここで、作動媒体は、各温度において、
図2に示した蒸気圧曲線C10上の点に対応する圧力である飽和蒸気圧以下の領域において、気相となる。よって、蒸気温が温度Tmb10以下である場合、目標蒸気圧は、例えば、各蒸気温についての飽和蒸気圧に設定される。飽和蒸気圧は、
図2に示したように、作動媒体の温度が低くなるにつれて低下する。ゆえに、蒸気温が温度Tmb10以下である場合、目標蒸気圧は、具体的には、
図3に示したように、蒸気温が低いほど、小さい値に設定される。
【0055】
制御装置100は、具体的には、蒸気圧が
図3に示した目標蒸気圧となるように、蒸気温に応じて、作動媒体の還流量を制御する。制御装置100は、例えば、
図4に示したマップM10を用いて流量調整機構72の動作を制御することによって、作動媒体の還流量を制御する。マップM10は、蒸気温とバイパス流路76の流路面積との関係性を表すマップの一例であり、制御装置100の記憶素子に予め記憶される。制御装置100は、バイパス流路76の流路面積がマップM10において現在の蒸気温と対応する値となるように、流量調整機構72の動作を制御する。作動媒体の還流量はバイパス流路76の流路面積と相関を有するので、蒸気温と作動媒体の還流量との関係性は、マップM10により表される蒸気温とバイパス流路76の流路面積との関係性と対応し、例えば、
図5に示した関係性となる。
【0056】
なお、制御装置100は、蒸気温センサ205から出力される検出結果に基づいて、現在の蒸気温の値を取得し得る。また、制御装置100は、水温センサ207から出力される検出結果及びエンジン11の回転数の検出値に基づいて、現在の蒸気温を推定してもよい。その場合、制御装置100は、エンジン11の回転数を検出可能な図示しないセンサから出力される検出結果を受信し得るように構成される。それにより、制御装置100は、エンジン11の回転数の検出値を取得し得る。
【0057】
ここで、ポンプ73及び膨張器75の吐出流量は、ポンプ73の回転数に応じて変化し得る。ゆえに、作動媒体の還流量と蒸気体積流量との関係性は、ポンプ73の回転数に応じて異なり得る。よって、制御装置100は、具体的には、ポンプ73の回転数に応じて互いに異なるマップを用いて流量調整機構72の動作を制御してもよい。各マップは、対応するポンプ73の回転数についての蒸気温とバイパス流路76の流路面積との関係性を表す。各マップは、対応するポンプ73の回転数について蒸気圧を
図3に示した目標蒸気圧となるように調整し得るように設定される。それにより、制御装置100は、ポンプ73の回転数によらず、蒸気圧が
図3に示した目標蒸気圧となるように、蒸気温に応じて、作動媒体の還流量を制御することができる。以下、理解を容易にするために、このような各マップのうちの一例としてのマップM10を参照して、制御装置100が行う作動媒体の還流量の制御について説明する。
【0058】
図3に示したように、蒸気温が温度Tmb10より高い場合、目標蒸気圧は、蒸気温によらず上限値P10である。理想気体の状態方程式によれば、蒸気圧は、蒸気温を蒸気体積流量によって除して得られる値と相関を有する。ゆえに、蒸気温が温度Tmb10より高い場合において、蒸気温が高くなるにつれて蒸気体積流量が増大するように作動媒体の還流量を制御することによって、蒸気圧を蒸気温によらず上限値P10に維持することができる。具体的には、マップM10において、
図4に示したように、蒸気温が温度Tmb10より高い場合、バイパス流路76の流路面積は、蒸気温が高いほど大きい値に設定される。それにより、
図5に示したように、蒸気温が温度Tmb10より高い場合において、蒸気温が高くなるにつれて、作動媒体の還流量を増大させることができる。ゆえに、蒸気温が温度Tmb10より高い場合において、蒸気温が高くなるにつれて、蒸気体積流量を増大させることができる。
【0059】
このように、制御装置100は、蒸気温が所定の圧力である上限値P10における作動媒体の沸点である温度Tmb10より高い場合、蒸気温が高くなるにつれて、作動媒体の還流量を増大させてもよい。それにより、蒸気温が温度Tmb10より高い場合において、蒸気温が高くなるにつれて、蒸気体積流量を増大させることができる。ゆえに、蒸気温が温度Tmb10より高い場合において、蒸気圧を蒸気温によらず上限値P10に維持することができる。
【0060】
上述したように、蒸気温が温度Tmb10より高い場合において、蒸気圧を蒸気温によらず上限値P10に維持することによって、蒸気温が上昇することに伴い蒸気圧が過剰に高くなることを防止することができる。それにより、膨張器75が破損することを防止することができる。また、蒸気温が温度Tmb10より高い場合において、蒸気圧を蒸気温によらず上限値P10に維持することによって、蒸気温が低下することに伴い蒸気圧が過剰に低くなることを防止することができる。それにより、膨張器75によって生成される回転エネルギの減少に伴い発電量が減少することを防止することができる。
【0061】
また、
図3に示したように、蒸気温が温度Tmb10以下である場合、目標蒸気圧は、蒸気温が低いほど小さい値に設定される。具体的には、蒸気温が温度Tmb10以下である場合、目標蒸気圧は、各蒸気温についての飽和蒸気圧に設定される。理想気体の状態方程式によれば、蒸気圧は、蒸気体積流量が大きいほど低くなる。ゆえに、蒸気温が温度Tmb10以下である場合において、蒸気温が低くなるにつれて蒸気体積流量が増大するように作動媒体の還流量を制御することによって、蒸気圧を蒸気温が低いほど小さい値にすることができる。それにより、蒸気温が温度Tmb10以下である場合において、蒸気圧を各蒸気温についての飽和蒸気圧に一致させることができる。具体的には、マップM10において、
図4に示したように、蒸気温が温度Tmb10以下である場合、バイパス流路76の流路面積は、蒸気温が低いほど大きい値に設定される。それにより、
図5に示したように、蒸気温が温度Tmb10以下である場合において、蒸気温が低くなるにつれて、作動媒体の還流量を増大させることができる。ゆえに、蒸気温が温度Tmb10以下である場合において、蒸気温が低くなるにつれて、蒸気体積流量を増大させることができる。
【0062】
このように、制御装置100は、蒸気温が上限値P10における作動媒体の沸点である温度Tmb10以下である場合、蒸気温が低くなるにつれて、作動媒体の還流量を増大させてもよい。それにより、蒸気温が温度Tmb10以下である場合において、蒸気温が低くなるにつれて、蒸気体積流量を増大させることができる。ゆえに、蒸気温が温度Tmb10以下である場合において、蒸気圧を蒸気温が低いほど小さい値にすることができるので、蒸気圧を各蒸気温についての飽和蒸気圧に一致させることができる。
【0063】
上述したように、蒸気温が温度Tmb10以下である場合において、蒸気圧を各蒸気温についての飽和蒸気圧に一致させることによって、作動媒体の圧力が飽和蒸気圧を超えることを防止することができる。それにより、作動媒体の一部が熱交換器74で蒸発せずに留まることを防止することができるので、タンク79内に貯留される作動媒体の液面の低下を防止することができる。ここで、タンク79内に貯留される作動媒体の液面が低下することに起因して、ポンプ73により空気が吸入される場合がある。そのような場合には、ポンプ73内においてキャビテーションが発生し得るので、異音又はポンプ73におけるエロージョンが生じ得る。ゆえに、作動媒体の圧力が飽和蒸気圧を超えることを防止することによって、このような異音及びポンプ73におけるエロージョンの発生を防止することができる。また、蒸気温が温度Tmb10以下である場合において、蒸気圧を各蒸気温についての飽和蒸気圧に一致させることによって、各蒸気温について蒸気圧を比較的高い値にすることができる。それにより、各蒸気温について比較的高い発電量を確保することができる。
【0064】
上記のように、本実施形態に係る制御装置100は、流量調整機構72により調整される作動媒体の還流量を、蒸気温に応じて制御する。ゆえに、ポンプ73の吐出流量のうち膨張器75へ送られる流量を蒸気温に応じて制御することができる。よって、蒸気体積流量を蒸気温に応じて調整することができる。それにより、ポンプ73及び膨張器75がポンプ用モータジェネレータ61とそれぞれ連結されるランキンサイクル70において、ポンプ73又は膨張器75の1回転あたりの吐出量を調整する機構等の比較的部品点数が多い機構を設けることなく、蒸気圧を蒸気温に応じて適切に調整することができる。ゆえに、装置をより効果的に小型化することができる。
【0065】
<3.むすび>
以上説明したように、本実施形態によれば、ランキンサイクル70において、ポンプ73及び膨張器75はポンプ用モータジェネレータ61とそれぞれ連結される。また、ランキンサイクル70には、作動媒体流路71におけるポンプ73より下流側と上流側とを連通するバイパス流路76及びバイパス流路76内を作動媒体流路71におけるポンプ73より下流側から上流側へ還流する作動媒体の流量である還流量を調整可能な流量調整機構72が設けられる。また、制御装置100は、流量調整機構72により調整される作動媒体の還流量を、蒸気温に応じて制御する。それにより、ポンプ73又は膨張器75の1回転あたりの吐出量を調整する機構等の比較的部品点数が多い機構を設けることなく、蒸気圧を蒸気温に応じて適切に調整することができる。ゆえに、装置をより効果的に小型化することができる。
【0066】
なお、上記では、制御装置100がマップM10を用いて流量調整機構72の動作を制御する例について説明したが、制御装置100による流量調整機構72の制御は係る例に限定されない。例えば、制御装置100は、フィードバック制御を利用して流量調整機構72の動作を制御してもよい。具体的には、制御装置100は、蒸気圧の検出値と目標蒸気圧との差に応じた制御指令を流量調整機構72へ出力することによって、流量調整機構72の動作を制御してもよい。その場合、充電システム10には、蒸気圧を検出可能なセンサが設けられ、制御装置100は当該センサから出力される検出結果を受信することによって、蒸気圧の検出値を取得し得る。当該センサは、例えば、ランキンサイクル70の作動媒体流路71における膨張器75より上流側に設けられる。
【0067】
また、上記では、本発明に係るランキンサイクルの制御装置をハイブリッド車両に適用した例について説明したが、本発明の技術的範囲は係る例に限定されない。例えば、本発明に係るランキンサイクルの制御装置は、エンジン11から出力される駆動力によって走行し、駆動源としての走行用モータジェネレータ41及び高電圧バッテリ31を有しない車両にも適用され得る。その場合、ポンプ用モータジェネレータ61は、車両内の各種装置へ電力を供給する低電圧バッテリと電気的に接続され得る。なお、本発明に係るランキンサイクルの制御装置をハイブリッド車両に適用した場合においても、ポンプ用モータジェネレータ61は、車両内の各種装置へ電力を供給する低電圧バッテリと電気的に接続されてもよい。
【0068】
また、上記では、エンジン11の運転により生成された駆動力は、駆動力伝達系51を介して、駆動輪21へ伝達される例について説明したが、本発明に係る技術的範囲は係る例に限定されない。例えば、エンジン11の運転により生成された駆動力は、エンジン11と接続された図示しない発電機へ伝達され、当該発電機による発電に用いられてもよい。なお、当該発電機によって発電された電力は、高電圧バッテリ31へ蓄電されるように構成され得る。
【0069】
また、上記では、ランキンサイクル70は、車両のエンジン11の廃熱を回収する冷却水との間で熱交換を行うことにより、機械エネルギを生成する例について説明したが、本発明に係る技術的範囲は係る例に限定されない。例えば、ランキンサイクル70は、車両のエンジン11の廃熱を有する排気ガスとの間で熱交換を行うことにより、機械エネルギを生成してもよい。そのような場合において、熱交換器74には、作動媒体流路71及び排気ガスの配管が接続され得る。
【0070】
また、上記では、本発明に係るランキンサイクルの制御装置が、車両に適用される例について説明したが、本発明の技術的範囲は、係る例に限定されない。例えば、本発明に係るランキンサイクルの制御装置は、船舶等の他の移動体や、工場等の施設についても適用可能である。
【0071】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。