【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 平成28年7月20日に発行された一般社団法人日本建築学会2016年度大会(九州)学術講演梗概集第129頁−第130頁で公開
【文献】
GOOD DESIGN AWARD 2018,日本,2020年 7月10日,URL,https://www.g-mark.org/award/describe/47899?token=oJ6oGoW8IG
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、本発明の技術的範囲を以下の実施形態および図示例に限定するものではない。
【0019】
図1において符号1は、建物躯体を示す。この建物躯体1は、基礎2上に構築されたものであり、鉛直構造体である柱3と、この柱3に対して取り付けられた水平構造体である梁8とによって形成されている。
柱3は、建物躯体1の四隅と、これら四隅の柱3,3の中間に位置するようにして基礎2の上面に立設されており、梁8は、建物躯体1の二階が構築される高さ位置と、屋根が構築される高さ位置において隣り合う柱3,3間に架け渡されて設けられている。これによって、建物躯体1は、柱3と梁8からなる門型フレームによって構成された状態となっている。なお、建物躯体1は、
図1に示すように、X方向に沿った門型フレームのスパンが長く、Y方向に沿った門型フレームのスパンが短い。
【0020】
柱3は、複数の軸材4と、複数の建築用パネル5と、を主体として構成されており、その他にも、柱脚金物6と、柱頭金物7と、を備え、
図2,
図3等に示すように四角筒状に形成されている。また、柱3は、上下階間に亘って設けられており、大断面かつ欠損の少ない通し柱として機能している。
【0021】
軸材4は、上下階間に亘って設けられた長尺木質材(いわゆる角材)であり、柱3の四隅に配置されている。つまり、この軸材4も、上下階間に亘って設けられる通し柱として機能することになる。換言すれば、柱3は、このような軸材4を備えることによって、通し柱として機能していることになる。
また、軸材4は、下端面から突出するとともに柱脚金物6との連結に用いられる連結ボルト4aと、下端面に設けられて当該下端面を補強する金属製の補強キャップ4bと、を有する。
【0022】
建築用パネル5は、住宅等の建物の建築に使用される、いわゆる木質接着パネルである。この建築用パネル5は、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、このように形成された矩形枠の内部に補助桟材が適宜組み付けられて枠体5aが構成され、この枠体5aの両面に面材5bが貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。その内部中空な部分には、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填されている。このように中空状の建築用パネル5を用いることで、柱3の軽量化を図ることができる。
また、柱3を形成するに当たって、この建築用パネル5は複数用いられており、これら複数の建築用パネル5が、軸材4の長さ方向に沿って上下に重ねられた状態で、軸材4に固定されている。
そして、本実施形態においては、上下二枚の建築用パネル5が、隣り合う軸材4,4間に積み重ねられるようにして設けられて、これら隣り合う軸材4,4同士を連結している。つまり、本実施形態における柱3は、四隅の軸材4と、柱3の四側面に設けられた上下二枚の建築用パネル5とによって、その本体部分(柱として主要な部分)が形成された状態となっている。
【0023】
柱脚金物6は、
図1,
図2に示すように柱3の脚部(下端面)に取り付けられるものであり、本実施形態では、柱3を基礎2に接合するため、柱3の一体性を高めるために用いられている。
この柱脚金物6は、
図4に示すように、前後左右に離間して配置された四つの箱形金物6aと、これら箱形金物6aどうしを連結する四つの連結部材6bとを備えて枠状に形成されている。
【0024】
箱形金物6aは、四角筒状に形成された筒部材60と、この筒部材60の上下端面を塞ぐようにして当該筒部材60の上下端にそれぞれ溶接等によって固定された矩形状の板部材61,61とによって構成されている。
筒部材60の一つの側面には矩形状の開口部62が形成されている。また、上の板部材61の略中央部には貫通孔63が一つ形成されており、下の板部材61の略中央部にも貫通孔64が形成されている。
【0025】
連結部材6bは、ウェブ65と、上フランジ66と、下フランジ67と、を有する溝形鋼であり、柱脚金物6の四隅に設けられた四つの箱形金物6a同士を連結している。
上フランジ66の上面と、箱形金物6aにおける上の板部材61の上面は面一となっており、下フランジ67の下面と、箱形金物6aにおける下の板部材61の下面は面一となっている。
上フランジ66には、その長さ方向に間隔を空けて複数のビス孔が形成されており、当該上フランジ66に当接する柱3における建築用パネル5の下端面にビスを打ち込んで固定できるようになっている。そのため、下フランジ67は、ウェブ65からの突出寸法が、上フランジ66よりも短く設定されており、ビスを打ち込みやすくなっている。
【0026】
このような柱脚金物6は、
図5に示すように、柱3における四本の軸材4の下端面から突出する四本の連結ボルト4aが、各筒部材60における上の板部材61に形成された貫通孔63にそれぞれ挿通されるとともに、補強キャップ4bが箱形金物6aの上面に当接されたうえで、連結ボルト4aにナットが螺合されて締め付けられている。
さらに、柱3の建築用パネル5の下端面が連結部材6bの上フランジ66の上面に接着剤を介して当接されたうえで、この上フランジ66に形成された多数の孔からビスが建築用パネル5の下端面にねじ込まれる。
このようにして、軸材4の下端面と建築用パネル5の下端面とがそれぞれ箱形金物6aの上面と上フランジ66の上面(接合面)に接合され、これによって、柱3の下端面が柱脚金物6の上面に接合されている。
【0027】
また、柱脚金物6は、基礎2の上面に設置されている。基礎2は鉄筋コンクリートで形成されており、この基礎2に突設されたアンカーボルト2aが、箱形金物6aにおける下の板部材61の貫通孔64に挿通され、この挿通されたアンカーボルト2aにナットが螺合されて締め付けられている。
このようにして、柱3の下端面が柱脚金物6を介して基礎2の上面に接合されている。換言すれば、このようにして基礎2上に柱3を立設することができる。
なお、基礎2上に柱3を立設する際における、連結ボルト4aにナットを螺合する作業や、アンカーボルト2aにナットを螺合する作業は、箱形金物6aに形成された開口部62を利用して行われる。
【0028】
柱頭金物7は、
図1,
図2に示すように、柱3の柱頭(上端面)に取り付けられるものであり、柱3の柱頭を保護するため、柱3の一体性を高めるために用いられている。
この柱頭金物7は、金属製のプレートが四角枠状に形成されたものであり、その四つ角が、柱3における四隅の軸材4に対応し、四つ角間の辺が、柱3における建築用パネル5に対応している。そして、この柱頭金物7には複数のビス孔が形成されており、柱3の上端面に接着剤を介して当接されたうえで、ビスが軸材4および建築用パネル5にねじ込まれる。
【0029】
以上のような柱3に対して取り付けられる梁8は、
図6,
図7に示すように、柱3と同様に四角筒状に形成されており、四隅の軸材9(弦材とも言う)と、これら四隅の軸材9同士を連結する建築用パネル10と、を備える。なお、この梁8は、
図7に示すように、その断面が、上下寸法に対して左右寸法が長い矩形枠状に形成されている。
軸材9は、隣り合う柱3,3間に架け渡される長尺木質材(いわゆる角材)であり、後述する支持金物11によって直接的に支持される部位となる。
建築用パネル10は、柱3における建築用パネル5と同様に構成されており、枠体10aと、面材10bと、を有している。また、この建築用パネル10は、隣り合う柱3,3間の間隔に応じて必要な分、複数連続するようにして用いられる。
【0030】
また、梁8における一方の側面から他方の側面までの幅寸法(すなわち、長さ方向と直交する方向の寸法)は、柱3における一方の側面から反対方向にある他方の側面までの幅寸法と略等しいか、若しくは、やや短く設定されている。これによって、柱3における軸材4の位置と、梁8における軸材9の位置とが揃った状態となるように、梁8を柱3に対して取り付けることができる。つまり、軸材4と軸材9同士を接合することが可能となる。さらに、梁8は、隣り合う複数の軸材4,4に跨って取り付けられた状態となる。
【0031】
さらに、梁8における軸材9の長さ方向両側端部のうち少なくとも一方の側端部には、軸材9の高さ方向(梁成方向)に沿って、かつ軸材9の上端面から下端面にかけて形成されたスリット9aがある。
このスリット9aは、後述する支持金物11における被係合部14が挿入される部分である。さらに、軸材9の長さ方向両側端部のうち少なくとも一方の側端部は、スリット9aに被係合部14が挿入された上で、ドリフトピン16によって接合される。すなわち、軸材9の長さ方向両側端部のうち少なくとも一方の側端部(本実施形態では両側端部)そのものが、支持金物11の被係合部14に係合する係合部として機能する。より詳細には、軸材9の長さ方向両側端部のうち少なくとも一方の側端部には、支持金物11の被係合部14に係合する係合部が設けられており、この係合部は、軸材9に形成されたスリット9aと、軸材9と被係合部14とを接合する複数のドリフトピン16と、を有している。また、軸材9には、複数のドリフトピン16を挿通させるための複数の通孔が形成されているものとする。
さらに、スリット9aには、被係合部14が挿入される分の隙間を確保しつつ、後述する支持金物11におけるセット金物15が取り付けられている。
【0032】
支持金物11は、
図6,
図8に示すように、梁8を支持するためのものであり、固定部12と、被載置部13と、被係合部14と、セット金物15と、を備える。
この支持金物11は柱3の軸材4に固定されている。軸材4は、建築用パネル5とは異なり、中空状ではない芯のある角材(無垢材・集成材・積層材)であるため、この支持金物11は、軸材4の長さ方向に沿う任意の位置に取り付けることが可能となっている。換言すれば、梁8は、この支持金物11を介して軸材4に取り付けられている。
【0033】
固定部12は、軸材4の側面における所定の高さ位置(上述した二階および屋根の位置に対応した位置)の箇所に接する板状部であり、軸材4に対して、ラグスクリューボルトやコーチスクリューボルト等のような固定具によって固定されている。
【0034】
被載置部13は、固定部12の下端部から側方に向かって垂直に突出する板状部であり、梁8の軸材9における長さ方向側端部が載置される。
また、軸材9の長さ方向側端部の下面には、被載置部13が合致する凹部9bが形成されている。そして、この凹部9bに被載置部13が合致した状態において、梁8における軸材9の下面と被載置部13の下面とが面一になっている。
【0035】
被係合部14は、被載置部13に梁8の軸材9が載置された状態において軸材9に設けられた係合部(スリット9aを含む軸材9の長さ方向側端部)が係合する板状部である。そして、この被係合部14は、固定部12の中央部から被載置部13の中央部にかけて、これら固定部12と被載置部13とを連結するようにして設けられている。
換言すれば、この被係合部14は、固定部12と被載置部13とを連結して、支持金物11自体の剛性を高める補強リブとして機能している。
また、被係合部14には、複数のドリフトピン16のうち最も高い位置に設けられたドリフトピン16を引っ掛けるための引掛部14aと、その他のドリフトピン16を挿通させるための通孔14bと、が形成されている。
引掛部14aは、被係合部14の上端部に切欠形成されており、軸材9の通孔に予め挿通されたドリフトピン16を引っ掛けることができるようになっている。このような引掛部14aが形成されていることで、梁8を支持金物11の被載置部13に対して載置した際に、ドリフトピン16を引掛部14aに引っ掛けることができるので、安定した状態で、他の通孔14bに対してドリフトピン16を挿通させることができる。
【0036】
セット金物15は、梁8の軸材9に形成されたスリット9aに挿入されて固定される板状の金物であり、被係合部14に対して、ボルト・ナット等の固定具によって接合固定される。
すなわち、この板状のセット金物15は、被係合部14とセットで用いられるものであり、一方側が梁8(軸材9)に対して固定され、他方側が支持金物11(被係合部14)に対して固定されている。このようなセット金物15を用いることで、単に、軸材9と被係合部14同士を接合するだけでなく、セット金物15と軸材9同士、セット金物15と被係合部14同士も接合できるので、梁8と支持金物11との接合強度を向上させることができるので好ましい。
【0037】
軸材9の長さ方向側端部に設けられた係合部(スリット9a、ドリフトピン16)を被係合部14に係合させる形態について、より詳細に説明する。
梁8の軸材9における複数の通孔のうち、最も高い位置に形成された通孔にはドリフトピン16を挿通させておいた状態にする。さらに、セット金物15も、スリット9aに挿入して、同じドリフトピン16で固定しておく。
セット金物15とドリフトピン16を取り付けた状態で、軸材9を被載置部13に載置する。このとき、支持金物11の被係合部14に対して、軸材9のスリット9aが合致するように載置する。さらに、ドリフトピン16を引掛部14aに引っ掛けるようにして載置する。なお、ドリフトピン16を引掛部14aに引っ掛けるようにして軸材9を被載置部13に載置することで、軸材9の位置決めができるようになっている。
このように位置決めが行われた状態においては、軸材9に形成された通孔の位置と被係合部14に形成された通孔14bの位置とが対向した状態となり、その他のドリフトピン16を挿通させることができる。
そして、最も高い位置に設けられたドリフトピン16以外のその他のドリフトピン16によって、軸材9と被係合部14とセット金物15との接合を完了させる。さらに、被係合部14とセット金物15とをボルト・ナット等の固定具によって接合固定する。
このようにして、軸材9の長さ方向側端部に設けられた係合部を、被係合部14に係合させることができる。また、同様の要領で、複数の柱3と複数の梁8とを接合して、建物躯体1を構築することができる。
【0038】
以上のようにして構築された建物躯体1には、
図1に示すように、床版17が設けられて、建物の床が形成されている。なお、
図1において床版17は、二階にのみ設けられているが、一階にも設けられるものとする。
床版17は、建築用床パネルであり、縦横の框材が矩形状に組み立てられるとともに、このようにして形成された矩形枠の内部に補助桟材が適宜組み付けられて枠体が構成され、枠体の上面に面材が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。その内部中空な部分には、グラスウールやロックウール等の断熱材が装填されている。
また、建物躯体1の外周縁に沿った位置には、床版17の外側端面に接合される胴差17aが設けられている。
床版17および胴差17aは、二階の場合は梁8の上面に載置固定され、一階の場合は基礎2の上面に載置固定されている。なお、基礎2には、柱3用のアンカーボルト2aだけでなく、床版17用のアンカーボルトも設けられているものとする。
また、図示はしないが、屋根が構築される高さ位置に設けられた梁8の上面に、屋根版が載置固定される。なお、本実施形態における屋根は陸屋根であり、屋根版の外周縁に沿った位置にはパラペットが設けられるものとする。屋根が勾配屋根である場合には、屋根が構築される高さ位置に設けられた梁8の上面に小屋組が形成されて、上面に野地板や屋根仕上げ材(瓦やスレート等の屋根葺き材)が適宜設けられることで屋根が形成される。
さらに、その他にも、外壁仕上げ材、窓、ドア等が、建物躯体1に取り付けられて、建物の外郭が形成されることになる。また、必要に応じて、庇やバルコニー等の張出部が設けられる。
【0039】
なお、建物躯体1を構成する柱3や梁8は、可能な限り、予め工場で組み立てておくことが好ましく、本実施形態における柱3や梁8は、柱脚金物6や柱頭金物7も予め装着された状態となっているものとする。輸送に支障をきたさない範囲で、支持金物11も予め柱3に取り付けておいてよい。
【0040】
本実施の形態によれば、柱3が、上下階間に亘って設けられた軸材4と、当該軸材4に沿って固定された建築用パネル5と、を主体として構成されており、梁8は、柱3のうち軸材4に対して取り付けられているので、梁8を、軸材4の長さ方向に沿った位置のいずれの箇所にも取り付けることができる。すなわち、梁8が、中空状の建築用パネル5ではなく、軸材4に対して取り付けられているので、その取付状態が安定的かつ強固なものとなり、その取付箇所を、軸材4の長さ方向に沿って任意に設定することができる。また、中空状の建築用パネル5を備えることにより、柱3自体の軽量化を図ることができる。さらに、このように梁8が軸材4に対して取り付けられているので、従来のような重厚な各接合金物を使用する必要がなく、各接合金物を使用しない分、建物躯体1にかかる荷重やコストを減らすことができる。しかも、建物躯体1における構造的な強度の面においてもオーバースペックとならず、戸建て住宅のように小規模な建物や、中高層建築物における上層階部分を構築する上で最適である。
【0041】
また、軸材4には、梁8を支持するための支持金物11が固定されており、梁8は、支持金物11を介して軸材4に取り付けられているので、軸材4が上下階で途切れることがない状態で、梁8を軸材4に取り付けることができる。そのため、上下階間に亘って設けられた軸材4によって、建物躯体1の上下階を構造的に一体化できるので、建物躯体1の耐力を向上させることができる。
【0042】
また、支持金物11が、軸材4に固定される固定部12と、梁8が載置される被載置部13と、被載置部13に梁8が載置された状態において梁8に設けられた係合部が係合する被係合部14と、を備えるので、梁8を被載置部13に載置して係合部を被係合部14に係合させることで、支持金物11によって、被載置部13に載置された梁8を容易かつ安定的に支持することができる。
【0043】
また、梁8の下面に形成された凹部に被載置部13が合致した状態において、梁8の下面と被載置部13の下面とが面一になっているので、支持金物11によって梁8を支持した場合に、梁8の下面に被載置部13による出っ張りが生じない。そのため、梁8の下面に例えば天井材等の部材を取り付ける場合に、出っ張りを考慮する必要がなく、施工性を向上させることができる。
【0044】
また、柱3は、複数の軸材4,4と、これら複数の軸材4,4同士を連結する建築用パネル5によって形成されており、梁8は、複数の軸材4,4に跨って取り付けられているので、例えば一本の軸材4だけに取り付けられる場合に比して、梁8の取付状態をより安定的なものにすることができる。
【0045】
〔変形例〕
なお、本発明を適用可能な実施形態は、上述した実施形態に限定されることなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で適宜変更可能である。以下、変形例について説明する。以下に挙げる変形例は可能な限り組み合わせてもよい。
【0046】
〔変形例1〕
上述の実施形態において、柱3は、上下階間に亘る長さの軸材4が四隅に配置され、四隅の軸材4の隣り合う軸材4,4間に建築用パネル5が設けられ、かつ建築用パネル5が上下に重ねられた状態となるように形成されている。
これに対して、本変形例における柱3A,3Bは、上述の実施形態における柱3よりも構成要素(軸材4、建築用パネル5)が少ない。
図9(a)に示す柱3Aは、上下階間に亘って設けられた一本の軸材4と、当該軸材4に沿って固定された上下の建築用パネル5と、を主体として構成されている。
また、
図9(b)に示す柱3Bは、上下階間に亘って設けられた二本の軸材4,4と、当該軸材4,4に沿って固定された上下の建築用パネル5と、を主体として構成されている。
例えば梁等の水平構造体は、以上のような柱3A,3Bのうち軸材4に対して取り付けられることになる。この場合、水平構造体は、軸材4に直接取り付けられてもよいし、支持金物11を介して取り付けられてもよい。
なお、柱3A,3Bが、
図9(a),(b)に示すように構成されている場合は、柱脚金物および柱頭金物の仕様も、柱3A,3Bに合わせて変更される。
【0047】
本変形例によれば、従来のような重厚な各接合金物を使用せずとも、柱3A,3Bと、梁等の水平構造体とを確実に接合でき、戸建て住宅のように小規模な建物や、中高層建築物における上層階部分を構築する上で最適な建物構造を提供することができる。しかも、以上のような柱3A,3Bを用いて建物躯体1を構築した場合は、柱3A,3Bを構成する要素(軸材4、建築用パネル5)が少ない分、より一層のコスト低減や軽量化による建物への負担軽減を図ることができる。
【0048】
なお、
図9(a)に示す本変形例における柱3Aの構成は、本発明を実現する上で最低限の構成となっている。
図9(a)に示す柱3Aの例よりも、使用される軸材4の本数を増やすことで建築用パネル5の使用数も増えることになり、
図9(b)に示す柱3Bや、上述の実施形態における柱3を形成することができる。すなわち、本発明においては、柱を構成する軸材の本数は一本以上であればよい。
【0049】
〔変形例2〕
本変形例における梁80は複数であり、
図10に示すように、柱3の一側面において隣り合う軸材4,4のそれぞれに取り付けられている。換言すれば、本変形例における梁80は、柱3の一側面において隣り合う軸材4,4には跨らず、隣り合う軸材4,4のそれぞれに取り付けられる形態で建物躯体1を構築している。したがって、複数の梁80同士は、互いに間隔を空けて隣り合い、平行に配置されることになる。床を構成する床版は、これら複数の梁80,80に跨るように設けられる。
【0050】
梁80は、中空状ではない芯のある角材(無垢材・集成材・積層材)であり、
図10〜
図12に示すように、柱3の軸材4に固定された支持金物21を介して軸材4に取り付けられている。
支持金物21は、上述した実施形態における支持金物11と同様に、柱3の軸材4に固定される固定部22と、梁80が載置される被載置部23と、梁80の係合部が係合する被係合部24と、を備える。
【0051】
梁80の長さ方向両側端部のうち少なくとも一方の側端部には、梁80の高さ方向(梁成方向)に沿って、かつ梁80の上端面から下端面にかけて形成されたスリット81があり、支持金物21における被係合部24が挿入される。
さらに、梁80の長さ方向両側端部のうち少なくとも一方の側端部は、スリット81に被係合部24が挿入された上で、ドリフトピン26によって接合される。より詳細には、梁80の長さ方向両側端部のうち少なくとも一方の側端部には、支持金物21の被係合部24に係合する係合部が設けられており、この係合部は、梁80に形成されたスリット81と、梁80と被係合部24とを接合する複数のドリフトピン26と、を有している。また、梁80には、複数のドリフトピン26を挿通させるための複数の通孔が形成されている。
一方、支持金物21における被係合部24は、被載置部23に梁80が載置された状態において軸材9に設けられた係合部(スリット81を含む梁80の長さ方向側端部)が係合する略J字状に形成された板状部であり、固定部22と被載置部23とを連結するようにして設けられている。換言すれば、この被係合部24は、固定部22と被載置部23とを連結して、支持金物21自体の剛性を高める補強リブとして機能している。
また、被係合部24には、複数のドリフトピン26のうち最も高い位置に設けられたドリフトピン26を引っ掛けるための引掛部24aと、その他のドリフトピン26を挿通させるための通孔24bと、が形成されている。
引掛部24aは、梁80の通孔に予め挿通された最も高い位置のドリフトピン26を引っ掛けることができるようになっている。このような引掛部24aが形成されていることで、梁80を支持金物21の被載置部23に対して載置した際に、ドリフトピン26を引掛部24aに引っ掛けることができるので、安定した状態で、他の通孔24bに対してドリフトピン26を挿通させることができる。
【0052】
梁80の長さ方向側端部の下面には、被載置部23が合致する凹部82が形成されている。そして、この凹部82に被載置部23が合致した状態において、梁80の下面と被載置部23の下面とが面一になっている。
【0053】
梁80の長さ方向側端面における上端部には、突出部83が設けられている。この突出部83は、支持金物21よりも上方に位置し、梁80を支持金物21の被載置部23に対して載置した状態において軸材4に接する。これによって、柱3と梁80とが直接的に繋がった状態となるので、柱3と梁80との接合部分にかかる力を効果的に分散することができる。
【0054】
支持金物21における固定部22は、
図12に示すように、軸材4側に突出する複数の筒状部22aを有しており、これら複数の筒状部22aは、軸材4に形成された複数の穴(図示せず)に嵌合できる。これによって、支持金物21を軸材4に固定する際に、筒状部22aを軸材4の穴に嵌めて仮に取り付けた状態から、ラグスクリューボルトやコーチスクリューボルト等の固定具によって固定できるので、支持金物21の取付作業が行いやすい。さらに、筒状部22aと固定具の双方が軸材4に食い込むことになるので、支持金物21の取付強度を向上させることができる。
【0055】
本変形例によれば、従来のような重厚な各接合金物を使用せずとも、柱3と梁80とを確実に接合でき、戸建て住宅のように小規模な建物や、中高層建築物における上層階部分を構築する上で最適な建物構造を提供することができる。しかも、以上のような梁80を用いて建物躯体1を構築した場合は、梁80を構成する材料が、上述の実施形態における梁8に比して少ない分、コストの低減を図ることができる。
【0056】
〔変形例3〕
本変形例では、水平構造体として床版30が採用されている。床版30は、上述した実施形態における床版17と同様の構成であり、枠体の上面に面材が貼設されたものであり、内部中空な構造となっている。
そして、本変形例においては、
図13に示すように、この床版30が、柱3に固定された支持金物31によって支持されている。換言すれば、水平構造体である床版30が、柱3のうち軸材4に対して取り付けられている。
隣り合う軸材4,4のそれぞれに支持金物31が固定されており、床版30は、双方の支持金物31,31に跨って取り付けられている。
【0057】
支持金物31は、上述した実施形態における支持金物11と同様に構成されており、床版30は、支持金物11における被載置部13に載置された状態となっている。そのため、床版30における枠体には、支持金物11における被係合部14が差し込まれるスリットや、被載置部13が合致する凹部が適宜形成されている。
【0058】
本変形例によれば、従来のような重厚な各接合金物を使用せずとも、柱3と、水平構造体である床版30とを確実に接合でき、戸建て住宅のように小規模な建物や、中高層建築物における上層階部分を構築する上で最適な建物構造を提供することができる。
【0059】
〔変形例4〕
本変形例における建物構造は中高層建築物であり、
図14に示すように、下層階部分が、従来の重厚な各接合金物42,43,44によって柱40と梁41とを接合することによって建築されており、上層階部分が、上述した実施形態における柱3や梁8等を利用して建築されている。すなわち、本変形例における建物構造は、従来における建物構造とミックスされた混構造となっている。
【0060】
本変形例における建物構造の下層階部分は、柱40と梁41が、各接合金物42,43,44によって接合されて構成されている。
柱40は、四隅の軸材40aと、隣り合う軸材40a,40a間に配置されて、これら軸材40a,40a同士を連結する二枚重ねで四セットの建築用パネル40bとを備えて構成されている。柱40の上端部および下端部には、柱接合金物43が取り付けられている。
梁41も同様に、四隅の軸材41aと、これら軸材41a,41a同士を連結する二枚重ねで四セットの建築用パネル41bとを備えて構成されている。梁41の長さ方向両端部には、梁接合金物44が取り付けられている。
柱40の上端部に取り付けられた柱接合金物43の上端部には、柱40と梁41とを接合するための柱梁接合金物42が取り付けられている。
【0061】
柱梁接合金物42は、柱40と梁41の延長上の交差部に配置される略直方体状(縦長)の金物であり、内部は空洞となっている。つまり、柱梁接合金物42は、略四角筒状に形成されている。
また、この柱梁接合金物42は、その8つの角部にそれぞれ直方体状の受ブロック42aを有しており、上下に離間する受ブロック42a,42aが四角筒状の縦部材42bによって連結されており、前後左右にそれぞれ離間する受ブロック42a,42aが四角筒状の横部材42cによってそれぞれ連結されている。
【0062】
柱接合金物43および梁接合金物44は、上述した実施形態における柱脚金物6と同様に、四隅の箱形金物と、これら箱形金物を連結する連結部材と、を有する。なお、一つ一つの連結部材は、二つの溝形鋼のウェブ同士を接合して略H字状に形成されたものである。
また、これら柱接合金物43および梁接合金物44は、箱形金物に形成された貫通孔から通されたボルトが、柱梁接合金物42の受ブロック42aに形成されたネジ穴に捩じ込まれることによって、柱梁接合金物42に対して接合される。
【0063】
図14に示す下層階部分における建物躯体は、下層階部分の柱40の上端部に柱接合金物43が取り付けられ、この柱接合金物43の上に柱梁接合金物42が接合され、さらに、長さ方向両端部に梁接合金物44が取り付けられた梁41が柱梁接合金物42の側面に接合されることによって構成されている。
【0064】
以上のように構成された下層階部分の柱梁接合金物42の上に、下端部に柱脚金物6が取り付けられた柱3が接合されている。
より詳細に説明すると、上層階部分の柱3の断面における縦横寸法は、下層階部分の柱40の断面における縦横寸法と略等しく設定されている。これに伴って、上層階部分の柱3の下端部に取り付けられる柱脚金物6のサイズも、下層階部分の柱梁接合金物42のサイズに対応したものとなっている。そして、上層階部分の柱3は、柱脚金物6の箱形金物に形成された貫通孔64から通されたボルトが、下層階部分の柱梁接合金物42の受ブロック42aに形成されたネジ穴に捩じ込まれることによって、下層階部分の柱梁接合金物42に対して接合されている。
さらに、下層階部分の梁41の上面には、上層階部分の柱3を避けるようにして床版17が設置されている。また、建物躯体の外周縁に沿った位置には、床版17の外側端面に接合される胴差17aが設けられている。
【0065】
なお、本変形例においては、上層階部分の柱3の断面における縦横寸法が、下層階部分の柱40の断面における縦横寸法と略等しく、上層階部分における柱脚金物6のサイズも、下層階部分の柱梁接合金物42のサイズに対応したものとなっているため、下層階部分の柱梁接合金物42の上に、下端部に柱脚金物6が取り付けられた柱3を接合できるものとしたが、これに限られるものではない。すなわち、上層階部分の柱3の柱脚金物6における箱形金物に形成された貫通孔が、下層階部分の柱梁接合金物42における受ブロック42aに形成されたネジ穴の位置に対応していればよい。したがって、柱3,40の断面寸法や、柱脚金物6と柱梁接合金物42のサイズに多少のズレがあっても、上層階部分の柱3を、下層階部分の柱梁接合金物42に接合することができればよい。
【0066】
本変形例における中高層建築物の下層階部分は、柱40や梁41が二枚重ねの建築用パネル40b,41bとなっており、さらに接合箇所には重厚な接合金物42,43,44が用いられているため頑健である。そのため、中高層建築物における下層階部分を構築する上で好適である。これに対して、上層階部分には、下層階部分における柱40や梁41よりも軽量な柱3および梁8が採用されているため、中高層建築物における上層階部分を構築する上で最適である。そして、上層階部分の柱3を、下層階部分の柱梁接合金物42に接合することができるので、従来における建物構造とミックスされた混構造の実現に支障が出にくく、施工しやすい。