【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 コンクリート工学 Vol.54 No.8 pp.768−776 テクニカルレポート「2000mを超える長距離圧送におけるコンクリートの配合および品質管理に関する一考察」 発行日 平成28年8月1日
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記静置工程が、その内部に前記セメント組成物が充填された前記筒体をフローテーブル上に載置し、前記筒体の前記フローテーブルと接触する外縁部を被覆して静置する工程である請求項1又は2に記載のセメント組成物のコンシステンシー試験方法。
前記フロー測定工程が、前記フローテーブルを所定回数落下運動させた後、前記セメント組成物のフロー値を測定する工程である請求項3に記載のセメント組成物のコンシステンシー試験方法。
その周囲がコーキングされ、前記筒体に充填された前記セメント組成物の打設面におかれた蓋の上から、前記錘により荷重する請求項6に記載のセメント組成物のコンシステンシー試験方法。
【背景技術】
【0002】
セメント組成物の材料の品質として、混練直後のまだ固まらない状態における流動性が、コンシステンシー、レオロジー及び材料分離抵抗性等の特性で評価されている。コンシステンシーを測定する試験として、例えば、JIS A 1101で規定されているスランプ試験やJIS A 1150で規定されているスランプフロー試験、JIS R 5201で規定されているフロー試験、JHS A 313で規定されているシリンダーフロー試験が挙げられる。
【0003】
スランプ試験及びスランプフロー試験は、セメント組成物をスランプコーンに充填し、突棒で突いて均質化した後、スランプコーンを持ち上げて、セメント組成物の頂部が沈下した高さおよび同心円状に広がったセメント組成物のフローの直径の最大値と該直径に直交する直径の値を測定する方法である。フロー試験及びシリンダーフロー試験は、セメント組成物をフローコーンに充填し、突棒で突いて均質化した後、フローコーンを持ち上げた際、同心円状に広がったセメント組成物のフローの直径の最大値と該直径に直交する直径の値を測定する方法である。
このような試験結果を踏まえて、セメント組成物の配合処方を検討、評価している。
【0004】
上記の試験では、セメント組成物を構成する各種材料(以下、「セメント材料」ともいう)を混練して作製した直後、或いは凝結する前のセメント組成物を使用する。従って、トラックアジテートで工場から運搬され、打設現場で荷下ろした直後から打ち込みを完了するまでのセメント組成物の流動性を評価する指標として既に通用している。
セメント組成物は、セメント材料を混練した直後から凝固するまで、材料特性が経時的に変化するので、工事現場でトラックアジテートから荷下した後、打設箇所まで運ぶ際に、セメント組成物の材料特性は経時的に変化する。また、セメント組成物がコンクリートポンプで圧送される場合、配管内で圧力を受けたセメント組成物の材料特性を正確に評価できず、ポンプ圧送に適した配合を選定できないことが問題であった。
【0005】
レディーミクストコンクリートを始めとするセメント組成物は、運搬中は撹拌されてせん断力の影響を受けている。圧力作用下のセメント組成物の材料特性を正確に評価するためには、圧力を除く外力による影響を取り除く必要がある。また、ポンプ配管内での管内圧力が過大になる要因として、コンクリートの再圧送時の圧送負荷が挙げられる。配管距離がある程度長い場合、脈動も広義的に再圧送に類すると言える。再圧送は、一旦、コンクリートの流動が止まり、静置した状態のコンクリートを圧力で押し出すことであるから、静置した状態の材料特性を評価する必要がある。その方法として、上記スランプ試験を改良した静置スランプ試験が提案されている(例えば、非特許文献1参照)。
当該方法は、スランプ試験において、セメント組成物をスランプコーンに充填してから、スランプ値を測定するまで、所定時間スランプコーン内にセメント組成物を充填して静置するという方法である。所定時間スランプコーン内にセメント組成物を充填して静置することで、セメント組成物の構成材料が密度に応じて自重により分離する。そのため、静置スランプ試験は、撹拌の影響を受けないセメント組成物の材料特性の経時変化を評価することができる。
【0006】
近年、コンクリートの現場では、コンクリートポンプ車を使用し、配管を通して打設箇所までセメント組成物を圧送する圧送工法を用いることが主流である。そのため、セメント組成物には、配管の長さや形状を問わず、円滑に流動できる圧送性が要求されている。斯かる状況に鑑み、スランプコーンを逆さに用いた場合のセメント混和物の流下時間を指標として、圧送工法に用いられるセメント混和物のポンプ圧送性を簡易に評価する方法が提案されている(特許文献1)。
【0007】
ところで、所定量のセメント組成物をコンクリートポンプで圧送し、ポンプを停止すると、配管内のセメント組成物は、自重に加え、圧力の影響が残った状態で滞留することとなる。そのため、セメントペーストと骨材が分離し易くなり、配管内におけるセメント組成物の流動性や変形性が低下する場合がある。従って、ポンプを再始動してセメント組成物を再圧送する際、セメント組成物が配管内を円滑に移動できず、過度な圧送負荷が加わると配管が破裂するという問題が起こり得る。
斯かる問題から、圧力作用下で配管内に滞留したセメント組成物の再圧送時における変形性を簡易に評価できる方法が要望されている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をその好適な実施形態に即して詳細に説明する。但し、本発明は下記の実施形態に限定されるものでは無く、本発明の特許請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0016】
[1.セメント組成物のコンシステンシー試験方法]
本発明の試験方法は、少なくとも水硬性材料、水、及び混和剤を含有するセメント材料を混練してセメント組成物を作製する作製工程と、両端が開口した筒体にセメント組成物を充填する充填工程と、筒体内部に充填したセメント組成物を充填開始から所定時間経過するまで静置する静置工程と、所定時間経過後に、セメント組成物のフロー値を測定するフロー測定工程と、を有するセメント組成物のコンシステンシー試験方法であって、静置工程が、筒体に充填したセメント組成物に荷重をかけてセメント組成物を静置する工程である、セメント組成物のコンシステンシー試験方法である。
【0017】
本発明の試験方法では、静置工程において、筒体に充填したセメント組成物に荷重をかけることにより、セメント組成物は自重に加えて、荷重の分の圧力の影響を受ける。そのため、圧送工法において、ポンプ停止時の、圧力作用下で配管内部に滞留されたセメント組成物のコンシステンシーを評価し得る。
【0018】
本発明の試験方法は、フロー測定工程が、フローテーブルを所定回数落下運動させた後、セメント組成物のフロー値を測定する工程であることが好ましい。
本工程は、JIS R 5201で規定するフロー試験を模したものである。かかるフロー値を測定することで、セメント組成物の相対的な柔らかさを評価し得る。そのため、圧送工法において、ポンプを再始動する際のセメント組成物の降伏値を評価し得る。
なお、「降伏値」とは、セメント組成物におけるせん断応力−せん断ひずみ速度の関係が線形になるビンガム流体とみなした場合において、セメント組成物が流動し始めるのに要する応力をいう。
【0019】
[2.作製工程]
作製工程は、少なくとも水硬性材料、水、及び混和剤を含有するセメント材料を混練してセメント組成物を作製する工程である。
【0020】
<セメント組成物>
セメント組成物は、少なくとも水硬性材料、水、及び混和剤を含有するセメント材料を混練して作製するものである。
【0021】
水硬性材料としては、例えば、セメント、石膏(半水石膏、二水石膏など)、ドロマイトが挙げられる。
セメントは、水硬性セメントであれば特に限定されない。例えば、普通、低熱、中庸熱、早強、超早強、耐硫酸塩等のポルトランドセメント、ポルトランドセメントの低アルカリ形、高炉セメント(A種、B種、C種)、シリカセメント(A種、B種、C種)、フライアッシュセメント(A種、B種、C種)、エコセメント(普通、速硬)、シリカヒュームセメント、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント、セメント系固化材が挙げられる。
【0022】
水としては、例えば、上水道水、上水道水以外の水(河川水、湖沼水、井戸水、地下水、工業用水等)、回収水(上澄水、スラッジ水)が挙げられる。
【0023】
混和剤としては、例えば、セメント分散剤、水溶性高分子、高分子エマルジョン、セメント湿潤剤、膨張剤、防水剤、遅延剤、増粘剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、硬化促進剤、消泡剤、AE剤、界面活性剤、減水剤、高性能減水剤、AE減水剤、高性能AE減水剤、流動化剤、圧送助剤、低チキソトロピー性助剤等の公知のセメント用添加剤が挙げられる。
なお、混和剤は、1種単独で使用してもよく、2種以上の混和剤を任意の比率で組み合わせて用いもよい。
【0024】
セメント分散剤としては、例えば、ポリカルボン酸塩、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物、リグニンスルホン酸塩等の分散剤が挙げられる。
【0025】
水溶性高分子としては、例えば、ポリアルキレングリコールが挙げられる。より詳細には、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリプロピレングリコール、ポリエチレンポリブチレングリコール等が挙げられる。
【0026】
遅延剤としては、例えば、グルコン酸(塩)、クエン酸(塩)等のオキシカルボン酸類;グルコース等の糖類;ソルビトール等の糖アルコール類が挙げられる。
【0027】
硬化促進剤としては、例えば、塩化カルシウム、亜硝酸カルシウム、硝酸カルシウム等の可溶性カルシウム塩類;塩化鉄、塩化マグネシウム等の塩化物類;チオ硫酸塩;ギ酸及びギ酸カルシウム等のギ酸塩類が挙げられる。
【0028】
増粘剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、公知のセルロースナノファイバー、公知のセルロースナノクリスタルが挙げられる。
【0029】
消泡剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、フローリック社製の「フローリックDF−753」が挙げられる。
【0030】
高性能AE減水剤としては、市販品を用いてもよい。例えば、フローリック社製の「フローリックSF500S」や「フローリックSF500R」が挙げられる。
【0031】
低チキソトロピー性助剤としては、フローリック社製の「フローリックFBL−200」が挙げられる。
【0032】
セメント材料はまた、骨材を含有してもよい。骨材は、細骨材及び粗骨材のいずれであってもよく、細骨材及び粗骨材を併用してもよい。骨材としては、例えば、砂、砂利、砕石;水砕スラグ;再生骨材、回収骨材、人工軽量骨材;珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が挙げられる。
【0033】
<混練>
各材料を混練する方法は、特に限定されるものではない。例えば、上記各成分と水とを同時に混練する方法、混和剤を予め水に添加しておく方法、混和剤を後添加若しくは分割添加する方法が挙げられる。混練時間は、使用する混練機にもよるが、一般には、全材料を混練機に投入後、少なくとも60秒以上であり、好ましくは90秒〜10分間である。
【0034】
[3.充填工程]
充填工程は、その両端が開口した筒体にセメント組成物を充填する工程である。
セメント組成物は、上記の作製工程で作製したセメント組成物である。
【0035】
図1は、本発明の試験方法における充填工程で、筒体にセメント組成物を充填している状態を示す模式図であり、
図1を参照して充填工程を簡単に説明する。
図1に示すように、上記の作製工程で作製したセメント組成物1を、筒体2に充填する。なお、
図1において、筒体2はフローテーブル6の上面に載置されている。
【0036】
筒体は、両端が開口したものであればよく、円筒状や円錐台状等の形状を有したものなどが挙げられる。また、後述するフロー測定工程で、フロー値を測定する際、筒体を上部に持ち上げることでセメント組成物が自重によって流動するので、筒体の大きさによっては把持部を備えることが好ましい。把持部は、1人で筒体を持ち上げる場合、筒体の外表面上で180°の角度に2か所とり付けることが好ましく、2人で筒体を持ち上げる場合、筒体の外表面上で180°の角度に2か所又は筒体の外表面上で90°の角度に4か所とり付けることが好ましい等、筒体を持ち上げる人数に応じて選定される。
そのような筒体としては、例えば、JIS A 1101で規定されているスランプコーン、JIS R 5201で規定されているフローコーン、JIS A 1171で規定されているミニスランプコーン、JHS A 313で規定されているシリンダーフローコーンが挙げられる。
【0037】
セメント組成物を筒体に充填する方法は特に限定されるものではない。例えば、セメント組成物を筒体に一度で充填してもよく、複数回に分けて充填してもよい。中でも、好ましい充填方法は、次の通りである。筒体に充填するセメント組成物の体積の総量の1/3に相当する量を一層目として筒体に充填し、セメント組成物の上面を突き棒で所定回数突く。次に、再び一層目と同量のセメント組成物を二層目として筒体に充填し、セメント組成物の上面を突き棒で所定回数突く。最後に、三層目として筒体の容器内部全てにセメント組成物を充填し、上面を平らに均し所定の充填量を得る。
【0038】
筒体は、両端が開口しているので、通常、フロー値を測定する際のフローテーブルの上面若しくは厚みがあり剛性のある板に載置する。フローテーブルとしては、筒体を載置する上面が地面と水平であり、後述するフロー測定工程でセメント組成物のフロー値を測定する際、セメント組成物のフロー値を測定可能な面積を有するものである限り、特に限定されるものではないが、上下運動に対する衝撃に対し変形することのない剛性を有するものが好ましく、JIS R 5201あるいはASTM C 124に準じたものがより好ましい。好適な実施形態については、後述のフロー測定工程で説明する。
【0039】
[4.静置工程]
静置工程は、筒体内部に充填したセメント組成物に荷重をかけて、充填開始から所定時間経過するまで静置する工程である。充填完了直後から速やかに荷重することが好ましい。
本工程を行うことにより、セメント組成物は、自重に加えて、荷重の分の圧力の影響を受けた状態となる。そのため、圧力作用下で配管内部に滞留したセメント組成物の材料特性の経時変化を評価し得る。従って、圧送工法で使用し得るセメント組成物を評価し得る。なお、筒体内部にセメント組成物を充填して静置する際、荷重したセメント組成物の評価結果と、荷重しないセメント組成物の評価結果の相違によって、圧力作用下でのセメント組成物の材料特性の変化を理解することができる。
【0040】
静置工程は、その内部にセメント組成物が充填された筒体をフローテーブル上に載置し、筒体のフローテーブルと接触する外縁部を被覆して静置する工程であることが好ましく、錘又は載荷試験機により荷重する工程であることがより好ましく、その周囲がコーキングされ、筒体に充填されたセメント組成物の打設面に置かれた蓋の上から、錘により荷重する工程であることがさらに好ましい。
なお、ここでいう「打設面」とは、筒体の上部開口部から充填されたセメント組成物の上表面をいう。
【0041】
筒体のフローテーブルと接触する外縁部を被覆することが好ましく、それによりフローテーブルと接触する筒体の下部開口部から水分が漏れることを防止し得る。セメント組成物を荷重して静置する場合、自重や圧力によりセメント組成物から水分が分離し、セメント組成物の配合や載荷条件によっては、フローテーブルと接触する筒体の下部開口部から漏れる可能性がある。この現象は、荷重により助長される傾向にある。水分が漏れた場合、セメント組成物が保有する水分量が減少するため、圧力作用下で配管内部に滞留したセメント組成物のコンシステンシーを評価し得るものとはならない場合がある。
筒体の下部開口部のフローテーブルと接触する外縁部を被覆する材料は、水分の流出を防止可能なものである限り、特に限定されるものではないが、筒体を引き上げる直前に比較的容易に除去できるものが好ましい。例えば、油粘土が挙げられる。
【0042】
蓋の周囲をコーキング材で止水することにより、筒体の上部開口部から水分が漏れることを防止し得る。セメント組成物に錘又は載荷試験機を荷重して静置する場合、セメント組成物の配合によっては、自重や圧密によりセメント組成物からブリーディング水が浮上し、筒体の上部開口部から漏れる可能性がある。水分が漏れた場合、セメント組成物の水分量が減少するため、圧力作用下で配管内部に滞留したセメント組成物のコンシステンシーを評価し得るものとはならない場合がある。
コーキング材の充填材料としては、従来公知のものを使用することができる。例えば、オルガノポリシロキサン等のシリコーン系樹脂;シリル基を末端に有するポリエーテル等の変性シリコーン系樹脂;ポリウレタン系の樹脂が挙げられる。
【0043】
前記荷重をかけるために錘を用いることができる。錘としては、セメント組成物に所望の荷重を加える重さのものが好ましい。また、その大きさは、蓋に置くことができる大きさのものを用いる。なお、バケツ等の容器に小型の錘を複数個入れる態様であってもよい。
【0044】
荷重は、セメント組成物の体積に応じて選択することが好ましい。また、錘又は載荷試験機による荷重の場合、セメント組成物に対して、脱水することのない範囲で所定の時間、静的に加えられ続けた積算荷重として考慮して、試験時の加圧力を設計することがより好ましい。
【0045】
錘の重さは、圧送工法において使用されるコンクリートポンプの性能を考慮して決定することが好ましい。フレッシュコンクリートの圧送性を事前に評価する簡易な方法として、加圧ブリーディング試験方法JSCE−F502−2010が確立している。この試験方法では、コンクリート試料を加圧ブリーディング容器に入れて、通常の条件でコンクリートがコンクリートポンプのシリンダの中で受ける最大の圧力として3.5N/mm
2の圧力を加えることとしている。ただし、加圧ブリーディング試験では、水分の移動のし易さを定量的に評価することを目的としており、10分間圧力を保持させたコンクリート試料の脱水量を測定する。
これに対し、本発明の目的は、圧力作用下のセメント組成物のコンシステンシーの評価であり、上記の加圧ブリーディング試験とは異なる。加圧ブリーディング試験で試料に加えている3.5N/mm
2の圧力は過大ではあるが、これを参考値として、本発明における錘の重さを設定することは、圧力環境下に晒されたセメント組成物のコンシステンシーを評価する上で有意義であると考える。錘の重さは、セメント組成物に載荷し続ける時間の長さについても考慮する必要があり、長い時間錘を載荷したセメント組成物の方が、荷重によってコンシステンシーに及ぼす影響は大きくなる。
【0046】
錘の重さの下限は、セメント組成物の体積1mm
3に対して、通常、0.0001g以上であり、0.001g以上であることが好ましく、0.0015g以上であることがより好ましく、0.003g以上であることがさらに好ましい。斯かる範囲であることで、圧送工法において、圧力作用下で配管内部に滞留したセメント組成物のコンシステンシーを評価し得る。一方、圧送工法において使用するポンプの性能に鑑み、錘の重さの上限は、セメント組成物の体積1mm
3に対して、通常、0.25g以下であり、0.045g以下であることが好ましく、0.015g以下であることがさらに好ましい。
【0047】
蓋としては、水分を吸収せず、水分を通過しない材料であり、錘を置いても形状が変化しない材質のものを使用する。大きさや形状は、筒体の上部開口端部と接触せず、セメント組成物の打設面とのみ接触する大きさや形状とする。蓋の取り外しが容易になるように、例えば、蓋の底部で直交するよう2〜4方向にテープで仮止めし、筒体との隙間からテープを出して、引き上げられるようにしておくことが好ましい。錘と蓋を一体化しておくことも手法として挙げられる。
【0048】
荷重して静置する所定時間は、圧送工法において使用するポンプの待機時間を考慮すると、5〜180分であることが好ましく、10〜90分であることがより好ましく、20〜60分であることがさらに好ましい。
【0049】
図2は、従来の静置スランプ試験方法における、静置工程の一実施形態を示す模式図である。
図2を参照して従来の静置スランプ試験方法を簡単に説明する。
図2に示す通り、フローテーブル6の上面に載置した筒体2に充填したセメント組成物1を静置する。この際、筒体2の上部開口部からセメント組成物1の水分が蒸発することを防止するため、保護部材8を置くことが好ましい。保護部材は湿布などを用いることができる。静置することにより、筒体2の内部に充填したセメント組成物1の材料成分が密度の相違に応じて分離する。材料分離によってブリーディング水が筒体2の下部から漏水しないように、油粘土のような止水材7により筒体2のフローテーブル6の上面と接触する外縁部を被覆することが好ましい。このように、従来の静置スランプ試験方法は、セメント組成物の自重による材料特性の経時変化を確認し得る。
【0050】
図3は、本発明の試験方法における静置工程において、筒体に充填されたセメント組成物を加圧している状態の一実施形態を示す模式図である。
図3を参照して静置工程を簡単に説明する。
図3に示す通り、本発明の試験方法における静置工程においては、筒体2の内部に充填したセメント組成物1の打設面に蓋3をおき、その上に錘5を載せて充填開始から所定時間経過するまで静置する。このように荷重をかけて静置することで、セメント組成物の材料特性の経時変化のみならず、圧力作用下でポンプ配管内部に滞留したセメント組成物のコンシステンシーを評価し得る。
なお、
図3においては、蓋3と筒体2の隙間をコーキング材4で充填しつつ、錘5によって荷重を加えている。従来の静置スランプ試験と同様に、筒体2の内部に充填したセメント組成物の材料分離によってブリーディング水が筒体2の下部開口部から漏水しないように、油粘土を始めとする止水材7により筒体2のフローテーブル6の上面と接触する外縁部を被覆する。このように本発明の試験方法では、錘等による荷重によってセメント組成物の材料分離の度合いが助長されることから、ブリーディング水も増量すると考えられるため、コーキング材4と止水材7は、試験に支障のない範囲で入念に施すことが好ましい。
【0051】
圧送工法において、配管内部に滞留するセメント組成物にかかる圧力の方向と重力の方向が同一方向ではない場合がある。一方、
図3に示すように、錘5により荷重する場合、セメント組成物にかかる錘による圧力の方向と自重の方向は同一方向である。圧力が加わる方向により、セメント組成物のセメント粒子や骨材等の配向に影響を及ぼし、流動性や降伏値に影響を及ぼすことを鑑みると、当業者は本発明を通じて、セメント組成物に対して、自重と同一方向に圧力を加えるという設計を行うものではない。
【0052】
[5.フロー測定工程]
フロー測定工程は、所定時間経過後に、セメント組成物のフロー値を測定する工程である。フロー値の測定方法は特に限定されるものではない。例えば、JIS A 1150で規定されているフロー試験に準拠して測定し得る。
【0053】
図4及び
図5は、本発明の試験方法におけるフロー測定工程で、セメント組成物の一実施形態を示す模式図である。
筒体を上方に持ち上げると、自重や水分の影響により、
図4に示すように、セメント組成物1はフローテーブル6の上面に広がる。なお、筒体を持ち上げる際、油粘土やコーキング材を施した蓋は取り外しておく。
セメント組成物のフロー値は、
図5に示すように、フローテーブル6の上面に広がったセメント組成物1の最大直径l1と該直径l1と直交する方向の直径l2を測定し、両直径l1とl2の平均値として算出する。セメント組成物から水分が著しく脱水した場合のフロー測定は、セメント組成物の固定部位を測定対象とする。また、フローテーブルの落下運動による衝撃が加えられた際に、骨材のみがセメント組成物から分離して固体部位から外れた場合は、該骨材はセメント組成物の固体部位とみなさないものとする。
【0054】
本発明の試験方法で測定されるセメント組成物のフロー値は、使用する筒体の底面の直径に対する百分率で判断する。フロー値の下限は、好ましくは100%以上であり、より好ましくは103%以上であり、さらに好ましくは105%以上である。斯かる数値範囲であることで、圧力作用下で滞留したセメント組成物の流動性を確保し得る。セメント組成物のフロー値が大きくなるほど、衝撃に対するセメント組成物の変形性が鈍化することを考慮したものである。一方、その上限は、好ましくは300%以下であり、より好ましくは275%以下であり、さらに好ましくは250%以下である。斯かる数値範囲であることで、ポンプを再始動する場合等、圧力作用下で衝撃が加わった場合のセメント組成物の降伏値を評価し得る。
【0055】
フロー測定工程はまた、フローテーブルを所定回数落下運動させた後、セメント組成物のフロー値を測定する工程であることが好ましい。落下運動を行った後のフロー値を測定することで、セメント組成物の見かけの粘性やこわばりによる締りの影響が反映された相対的な軟らかさを評価し得る。そのため、圧送工法において、ポンプを再始動する場合等、圧力作用下で衝撃が加わった場合のセメント組成物の降伏値や変形性を評価し得る。
【0056】
図6は、本発明の試験方法における、フローテーブルの一実施形態を示す模式図であり、
図7は、本発明の試験方法における、フローテーブルの落下運動後のセメント組成物の一実施形態を側面から見た模式図であり、
図8は、本発明の試験方法における、フローテーブルの落下運動後のセメント組成物の一実施形態を斜め上方から見た模式図である。
【0057】
フロー測定工程として、フローテーブルを所定回数落下運動させた後、セメント組成物のフロー値を測定する場合、
図6に示す実施形態のフローテーブルを用いることが好ましい。このような形態のフローテーブル6は、手動によりハンドル9を回すことでフローテーブルを落下運動させることができる。フローテーブルは、一定の速度で落下運動させることが好ましく、機械により落下速度を制御することもできる。
【0058】
落下運動させることで、
図8に示すように、フローテーブル6の上面にセメント組成物1が広がる。このセメント組成物1の最大直径l3と該直径l3と直交する方向の直径l4を測定し、両直径l3とl4の平均値をフロー値とする。このフロー値により圧送工法において、ポンプを再始動する場合等、圧力作用下で衝撃が加わった場合のセメント組成物の降伏値や変形性を評価し得る。
【0059】
セメント組成物の相対的な軟らかさは、例えば、フローテーブルの側面を木槌等でたたくことにより、型崩れしたセメント組成物のフロー値を測定することでも評価し得る。しかしながら、落下運動は、上記の荷重の際に錘等で荷重がかかった方向と同じ方向でセメント組成物に力を加える。
圧送工法において、ポンプ停止時に加わる圧力と、ポンプ再始動時に加わる圧力は同じ方向であることを考慮すると、落下運動により型崩れしたセメント組成物のフロー値を測定する方が、より圧送工法に模したデータが得られるので好ましい。
【0060】
落下運動を行う場合、落下運動は0.05〜1回/秒であることが好ましい。斯かる設定範囲で落下運動を行うことにより、ポンプを再始動する場合等、圧力作用下で衝撃が加わった場合のセメント組成物の降伏値や変形性を評価し得る。
【0061】
落下運動を行う場合、本発明の試験方法で測定されるフロー値の好適な数値範囲は、落下回数に応じて異なり、フローテーブルによる衝撃を加える前のセメント組成物のフロー値に対する百分率で判断する。例えば、落下回数が5回の場合、その下限は、好ましくは105%以上であり、より好ましくは110%以上であり、さらに好ましくは115%以上である。斯かる数値範囲であることで、圧送工法において、ポンプを再始動する場合等、圧力作用下で衝撃が加わった場合のセメント組成物の降伏値や変形性を評価し得る。一方、その上限は、好ましくは200%以下であり、より好ましくは180%以下であり、さらに好ましくは165%以下である。斯かる数値範囲であることで、ポンプを再始動する場合等、圧力作用下で衝撃が加わった場合のセメント組成物の降伏値や変形性を評価し得る。
【0062】
[6.セメント組成物]
本発明のセメント組成物は、本発明の試験方法により、圧力作用下で滞留した際のコンシステンシーが評価されたセメント組成物である。そのため、近年のコンクリート工事の現場で使用される圧送工法に適したセメント組成物である。
【0063】
「本発明の試験方法により、圧力作用下で滞留した際のコンシステンシーが評価された」とは、次のパラメータを有することをいう。
<パラメータ1>作製後速やかに充填した直後のセメント組成物における、落下運動前(落下運動回数0回)のフロー値Aに対する、荷重条件下で静置されたセメント組成物の落下運動前(落下運動回数0回)のフロー値Bが、B/A=25〜100%である。
<パラメータ2>荷重条件下で静置されたセメント組成物の落下運動前(落下運動回数0回)のフロー値Cに対する、同条件で静置されたセメント組成物の15回落下運動させた際のフロー値Dが、D/C=125〜400%である。
なお、上記パラメータ中、荷重条件とは、9.6MPaの圧力が加わった条件をいう。以下、各パラメータの有する技術的意義を説明する。
【0064】
<パラメータ1>
本発明のセメント組成物は、作製後速やかに筒体に充填した直後のセメント組成物における、落下運動前(落下運動回数0回)のフロー値Aに対する、荷重条件下で静置されたセメント組成物の落下運動前(落下運動回数0回)のフロー値Bが、B/A=25〜100%であり、70〜100%が好ましい。斯かる数値範囲であることで、圧力作用下、配管内部で滞留したセメント組成物であっても、流動性が良好であり、良好なコンシステンシーといえる。そのため、圧送工法において好適に使用し得るセメント組成物であるといえる。
【0065】
<パラメータ2>
また、本発明のセメント組成物は、荷重条件下で静置されたセメント組成物の落下運動前(落下運動回数0回)のフロー値Cに対する、同条件で静置されたセメント組成物の15回落下運動させた際のフロー値Dが、D/C=125〜400%であり、130〜300%が好ましく、200〜300%がより好ましい。斯かる数値範囲であることで、圧力作用下、配管内部で滞留したセメント組成物であっても、降伏値が過度に高くないと評価し得る。そのため、圧送工法において好適に使用し得るセメント組成物であるといえる。
【0066】
上記パラメータ1〜2を満たす本発明のセメント組成物は、例えば、次のようにして製造し得る。まず、従来公知のセメント材料を用いて第一のセメント組成物を作製する。作製した第一のセメント組成物について、上記「本発明のセメント組成物のコンシステンシー試験方法」に記載の方法により、上記パラメータ1〜2を確認する。パラメータ1〜2を満たさない場合は、混和剤や水等の成分の種類や量を変更した第二のセメント材料を用いて第二のセメント組成物を作製する。作製した第二のセメント組成物について、上記「本発明のセメント組成物のコンシステンシー試験方法」に記載の方法により、上記パラメータ1〜2を再度確認する。この一連の操作を繰り返すことにより、上記パラメータ1〜2を満たす、本発明の評価方法により、圧力作用下で滞留した際のコンシステンシーが評価された本発明のセメント組成物を製造することができる。
【0067】
[7.コンクリート]
本発明のコンクリートは、上記の本発明のセメント組成物を用いたものである。そのため、ポンプを用いた圧送工法に使用するのに適しており、高層ビルのCFTコンクリートやトンネル等のインバートコンクリート等の長距離圧送に及ぶ範疇まで好適に使用し得る。
【実施例】
【0068】
以下、本発明を実施例により詳細に説明する。以下の実施例は、本発明を好適に説明するためのものであって、本発明を限定するものではない。なお、以下の実施例の記載中、「部」は、特に記載がない限り質量部を意味し、「%/C」とは、水硬性材料の重量に対する割合を示す。
【0069】
(セメント組成物(1)〜(2)の作製)
下記表1に示す配合処方のセメント材料を用いて、ホバートミキサー(商品名:ハイパワーミキサーCB−34、製造元:株式会社丸東製作所)を用いて混練することでセメント組成物を作製した。混練手順の詳細を以下に記す。下記表1に示す骨材成分(S1、S2)と、水硬性材料を低速で10秒混練し、水、高性能AE減水剤と消泡剤を加えて低速で30秒混練した。その後、必要に応じて圧送助剤(低チキソトロピー性助剤)を加えて高速で90秒混練した。環境温度は20℃とし、練り量は2.0Lとした。圧送助剤を添加せず作製したものをセメント組成物(1)とし、圧送助剤を添加して作製したものをセメント組成物(2)とした。
【0070】
【表1】
【0071】
表1中の略称の詳細を以下に記す。
C:(水硬性材料、高炉セメントB種(宇部三菱社製、密度3.04))
W:水
S1:骨材(山砂(千葉県君津市産、表面密度2.64、F.M.2.50))
S2:骨材(石灰砕砂(埼玉県飯能市産、表面密度2.65、F.M.3.00))
【0072】
消泡剤は、フローリック社製「DF−753」を0.005%/C、圧送助剤(低チキソトロピー性助剤)は、フローリック社製「フローリックFBL−200」を0.22g、混和剤は、フローリック社製の高性能AE減水剤遅延形I種「フローリックSF500R」を用いた。
なお、混和剤の添加率は、圧送助剤を添加しないときは1.4%/C、圧送助剤を添加したときは1.35%/Cとした。
【0073】
作製したセメント組成物を用いて、セメント組成物を撹拌して試験に供する撹拌法、セメント組成物をコーンに静置する静置法、コーンに充填したセメント組成物を加圧して静置する載荷法の実験を行った。なお、コーンとしてはアクリル製のシリンダーコーン(内径φ80×高さ80mm)を用いた。なお、落下運動は0.1回/秒で行った。
【0074】
(参考例1:撹拌法)
作製直後のセメント組成物(1)を、フローテーブル(株式会社マルイ「MIC−302−0−01」)上に載置したシリンダーコーンに充填した後、シリンダーコーンを上部に持ち上げた。この際のフロー値と、フローテーブルを落下運動(5回、10回、15回)させた際のフロー値を測定した。測定結果を表2に示す。
なお、当該データのうち、落下運動回数0回での値が、セメント組成物(1)のフロー値Aである。
【0075】
(参考例2〜8:撹拌法)
作製したセメント組成物((1)又は(2))を表2に示す時間、ボウル等の容器に入れておき、シリンダーコーンに充填する直前に再度右回りに10回、左回りに10回さじを用いて撹拌したこと以外は、参考例1と同様にしてフロー値を測定した。測定結果を表2に示す。
なお、参考例5のデータのうち、落下運動回数0回での値が、セメント組成物(2)のフロー値Aである。
【0076】
【表2】
【0077】
(参考例9:静置法)
作製直後のセメント組成物(1)を、フローテーブル(株式会社マルイ「MIC−302−0−01」)上に載置したシリンダーコーンに充填した。シリンダーコーンの底部外縁部を油粘土で防水し、上部開口部をシリンダーコーンと同じ材質のアクリル板で覆い、シリンダーコーン内部にセメント組成物(1)を30分静置した。その後、シリンダーコーンを上部に持ち上げた。この際のフロー値と、フローテーブルを落下運動(5回、10回、15回)させた際のフロー値を測定した。測定結果を表3に示す。
【0078】
(参考例10〜14:静置法)
作製したセメント組成物((1)又は(2))について、シリンダーコーン内部に静置した時間を表3に示す条件に変更したこと以外は、参考例9と同様にしてフロー値を測定した。測定結果を表3に示す。
【0079】
【表3】
【0080】
(実施例1:載荷法)
作製直後のセメント組成物(1)を、フローテーブル(株式会社マルイ「MIC−302−0−01」)上に載置したシリンダーコーンに充填した。シリンダーコーンの底部外縁部を油粘土で防水し、セメント組成物の打設面に蓋をし、蓋の周囲をコーキング材で止水した。蓋の上に500gの錘を載せて、シリンダーコーン内部にセメント組成物(1)を30分加圧した状態で静置した。その後、シリンダーコーンを上部に持ち上げた。この際のフロー値と、フローテーブルを落下運動(5回、10回、15回)させた際のフロー値を測定した。測定結果を表4に示す。
なお、当該データのうち、落下運動回数0回での値が、実施例1でのフロー値B及びCであり、落下運動回数15回での値が、実施例1でのフロー値Dである。
【0081】
(実施例2〜12:載荷法)
作製したセメント組成物((1)又は(2))について、錘の重さ及びシリンダーコーン内部に静置した時間を表4に示す条件に変更したこと以外は、実施例1と同様にしてフロー値を測定した。測定結果を表4に示す。
なお、各データのうち、落下運動回数0回での値が、各実施例のフロー値B及びCであり、落下運動回数15回での値が、各実施例のフロー値Dである。
【0082】
【表4】
【0083】
表2〜4からわかるように、圧送助剤(低チキソトロピー性助剤)を添加することで、フローテーブル落下後のセメント組成物(モルタル)のフロー値が向上した。これは、モルタルを撹拌してフロー試験に供した撹拌法、シリンダーコーン内部に静置した静置法の結果に限らず、本発明の圧力作用下で滞留したセメント組成物(モルタル)のコンシステンシー試験方法である載荷法においても確認された。低チキソトロピー性助剤は、圧力作用下に滞留したセメント組成物(モルタル)のコンシステンシーを改善するために用いられることから、本発明による試験方法の妥当性が示された。
なお、各実施例のB/Aは次のとおりである。90%(実施例1)、78%(実施例2)、71%(実施例3)、90%(実施例4)、88%(実施例5)、82%(実施例6)、80%(実施例7)、75%(実施例8)、70%(実施例9)、93%(実施例10)、90%(実施例11)、83%(実施例12)。また、各実施例のD/Cは次のとおりである。158%(実施例1)、165%(実施例2)、170%(実施例3)、159%(実施例4)、161%(実施例5)、167%(実施例6)、156%(実施例7)、160%(実施例8)、151%(実施例9)、144%(実施例10)、150%(実施例11)、151%(実施例12)。
【0084】
(セメント組成物(3)〜(4)の作製)
下記表5に示す配合処方のセメント材料を用いて、強制二軸ミキサ(商品名:スーパーダブルミキサーSD−55、製造元:太平洋機構株式会社)を用いて混練することでセメント組成物を作製した。混練手順の詳細を以下に記す。下記表5に示す骨材成分(S、G)と、水硬性材料で10秒混練し、水・高性能AE減水剤・AE剤・消泡剤を加えて90秒混練した。その後、必要に応じて圧送助剤(低チキソトロピー性助剤)を加えて30秒混練した。環境温度は20℃とし、練り量は50.0Lとした。圧送助剤(低チキソトロピー性助剤)を添加せずに作製したものをセメント組成物(3)とし、圧送助剤(低チキソトロピー性助剤)を添加して作製したものをセメント組成物(4)とした。
【0085】
【表5】
【0086】
表5中の略称の詳細を以下に記す。
C:(水硬性材料、普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製、密度3.16))
W:水
S:細骨材(山砂(静岡県掛川市産、表面密度2.58、F.M.2.78))
G:粗骨材(硬質砂岩砕石2005(東京都青梅市産、表面密度2.65、実積率59.5%))
【0087】
消泡剤は、フローリック社製「フローリックDF−753」を0.05%/高性能AE減水剤使用量、圧送助剤(低チキソトロピー性助剤)は、フローリック社製「フローリックFBL−200」を14g、混和剤は、フローリック社製の高性能AE減水剤標準形I種「フローリックSF500S」を用いた。
なお、混和剤の添加率は、圧送助剤を添加しないときは1.0%/C、圧送助剤を添加したときは0.95%/Cとした。
【0088】
作製したセメント組成物を用いて、セメント組成物を撹拌して試験に供する撹拌法、荷重を加えたままセメント組成物をコーンに静置した載荷法の実験を行った。なお、コーンの容器としてはアクリル製のシリンダーコーン(内径φ200×高さ175mm)を用いた。なお、落下運動は0.1回/秒でおこなった。
【0089】
(参考例15:撹拌法)
作製直後のセメント組成物(3)を、コンクリートフローテーブル(製造元:株式会社西日本試験機「C−279」)上に載置したシリンダーコーンに充填した後、シリンダーコーンを上部に持ち上げた。この際のフロー値と、フローテーブルを落下運動(5回、10回、15回)させた際のフロー値を測定した。測定結果を表6に示す。
なお、当該データのうち、落下運動回数0回での値が、セメント組成物(3)のフロー値Aである。
【0090】
(参考例16〜18:撹拌法)
作製したセメント組成物((3)又は(4))を表6に示す時間、コンクリート用の練り舟に入れておき、シリンダーコーンに充填する直前にスコップによってセメント組成物を切返して流動性を定常状態にしたこと以外は、参考例15と同様にしてフロー値を測定した。測定結果を表6に示す。
なお、参考例17のデータのうち、落下運動回数0回での値が、セメント組成物(4)のフロー値Aである。
【0091】
【表6】
【0092】
(実施例13:載荷法)
作製直後のセメント組成物(3)を、フローテーブル(製造元:株式会社マルイ「MIC−302−0−01」)上に載置したシリンダーコーンに充填した。シリンダーコーンの底部外縁部を油粘土で防水し、セメント組成物の打設面に蓋をし、蓋の周囲をコーキング材で止水した。蓋の上に18.8kgの錘を載せて、シリンダーコーン内部にセメント組成物を60分加圧した状態で静置した。その後、シリンダーコーンを上部に持ち上げた。この際のフロー値と、フローテーブルを落下運動(5回、10回、15回)させた際のフロー値を測定した。測定結果を表7に示す。
なお、当該データのうち、落下運動回数0回での値が、実施例13でのフロー値B及びCであり、落下運動回数15回での値が、実施例13でのフロー値Dである。
【0093】
(実施例14:載荷法)
実施例13のセメント組成物(3)を、セメント組成物(4)に変更した以外は、実施例13と同様にしてフロー値を測定した。測定結果を表7に示す。
なお、当該データのうち、落下運動回数0回での値が、実施例14でのフロー値B及びCであり、落下運動回数15回での値が、実施例14でのフロー値Dである。
【0094】
【表7】
【0095】
表6〜7からわかるように、低チキソトロピー性助剤を添加することで、フローテーブル落下後のセメント組成物(コンクリート)のフロー値が向上した。これは、コンクリートを撹拌してフロー試験に供する撹拌法に限らず、本発明の圧力作用下で滞留したコンクリートのコンシステンシー試験方法である載荷法においても確認された。低チキソトロピー性助剤は、圧力作用下で滞留したコンクリートのコンシステンシーを改善するために用いられることから、本発明による試験方法の妥当性が示された。
なお、各実施例のB/Aは次のとおりである。57%(実施例13)、55%(実施例14)。また、各実施例のD/Cは次のとおりである。164%(実施例13)、200%(実施例14)。
【0096】
表2〜4及び表6〜7の結果からわかるように、本発明のコンシステンシー試験方法では、撹拌法や静置法に比べて落下運動に対するフロー値の挙動が、特異な傾向をもって現出された。これは圧力作用下におけるコンシステンシー性は、撹拌法や静置法で得られる値からは信頼できる評価結果が得られないことを示しており、圧力作用下という特異な条件下では本発明で示す載荷法が、正確なコンシステンシー評価を行う上で重要であることを示す。