(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
燃料電池及び前記燃料電池へ供給される燃料ガスをそれぞれ貯蔵する複数のタンクを備える電池システムであって、前記電池システムの停止時に前記複数のタンクの各々から前記燃料電池への前記燃料ガスの供給を遮断する遮断機構を備える電池システムの制御装置であって、
外気温の変化に伴う前記タンクの内圧の変化しやすさに相当する値である指標値を前記複数のタンクの各々について推定する推定部と、
前記複数のタンクのうち前記指標値が大きい前記タンクを前記燃料電池への前記燃料ガスの供給源として使用される前記タンクである供給源タンクとして優先的に決定する決定部と、
を備える、
電池システムの制御装置。
前記決定部は、前記供給源タンクと異なる他のタンクの前記指標値が前記供給源タンクの前記指標値と比較して閾値以上大きくなった場合に、前記他のタンクを前記供給源タンクとして決定する、
請求項1〜3のいずれか一項に記載の電池システムの制御装置。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
【0017】
<1.電池システムの概略>
まず、
図1〜
図3を参照して、本発明の実施形態に係る電池システム1の概略について説明する。
図1は、本実施形態に係る電池システム1の概略構成の一例を示す模式図である。
図2は、本実施形態に係るタンク21a,21bの車両8内における配置の一例を示す模式図である。以下では、電池システム1が車両8に搭載される例について主に説明するが、電池システム1は車両8と異なる他の装置に搭載されてもよい。
【0018】
電池システム1は、例えば、
図1に示したように、燃料電池10と、水素ガス供給系20と、空気供給系30と、排気系40とを備える。
【0019】
燃料電池10は、燃料ガスとしての水素ガス及び酸化ガスとしての空気を反応させて発電を行う。具体的には、燃料電池10は、燃料極と、空気極と、燃料極及び空気極により挟まれる電解質膜とを備える。燃料極に水素ガスが供給され、空気極に空気が供給されることによって、各電極において反応が進行する。それにより、燃料電池10における発電が実現される。なお、燃料極は電子を失う側の電極であるアノード電極に相当し、空気極は電子を得る側の電極であるカソード電極に相当する。燃料電池10への水素ガス及び酸化ガスの供給量は制御装置100によって制御される。それにより、燃料電池10における発電量が制御される。
【0020】
燃料電池10により発電された電力は、例えば、車両8の駆動輪を駆動するモータ等の車両8に搭載される各装置へ供給される。
【0021】
燃料電池10は、例えば、
図2に示したように、車両8の車室P10の底部に相当するフロアパネル85より下方、かつ、車両8の底部を覆うアンダーカバー87より上方の空間である床下P30に配設される。例えば、燃料電池10は、床下P30において、フロントシート81の下方に配設され得る。
【0022】
水素ガス供給系20は、燃料電池10へ燃料ガスとしての水素ガスを供給可能である。水素ガス供給系20は、例えば、
図1に示したように、水素ガス通路25と、タンク21a,21bと、開閉弁23a,23bと、調整弁27とを備える。なお、以下では、タンク21a,21bを、特に区別しない場合には、単にタンク21とも称する。また、開閉弁23a,23bを、特に区別しない場合には、単に開閉弁23とも称する。
【0023】
水素ガス通路25は、水素ガスが通過する通路であり、タンク21に貯蔵される水素ガスを燃料電池10へ送るために設けられる。水素ガス通路25の下流側端部は、燃料電池10と接続される。また、水素ガス通路25の上流側端部は、分岐し各タンク21と接続される。具体的には、水素ガス通路25は上流側において分岐路25a及び分岐路25bに分岐し、分岐路25a及び分岐路25bの上流側端部はタンク21a,21bとそれぞれ接続される。
【0024】
タンク21a,21bは、燃料電池10へ供給される燃料ガスとしての水素ガスを貯蔵する。タンク21a,21bに貯蔵される水素ガスは、水素ガス通路25を通過して燃料電池10へ供給される。本明細書では、理解を容易にするために、電池システム1がタンク21を2つ備える例について主に説明するが、タンク21の数は係る例に限定されず、3以上であってもよい。
【0025】
タンク21a,21bは、例えば、
図2に示したように、床下P30に配設される。具体的には、タンク21a,21bは、床下P30において、リアシート83の下方に配設され得る。なお、タンク21a,21bは、車両8内においてリアシート83より後方に設けられる荷室デッキボード89によって車室P10と区画された当該荷室デッキボード89の下方の空間である荷室P20に配設されてもよい。
【0026】
タンク21a,21bには、圧力センサ51a,51bと、温度センサ53a,53bとがそれぞれ設けられる。
【0027】
圧力センサ51a,51bは、タンク21a,21bの内圧をそれぞれ検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。なお、以下では、圧力センサ51a,51bを、特に区別しない場合には、単に圧力センサ51とも称する。
【0028】
温度センサ53a,53bは、タンク21a,21bの温度をそれぞれ検出し、検出結果を制御装置100へ出力する。なお、以下では、温度センサ53a,53bを、特に区別しない場合には、単に温度センサ53とも称する。
【0029】
また、タンク21a,21bには、各タンク21の内圧が圧力閾値Pthに到達したときに各タンク21内の燃料ガスを外部へ排出する安全弁がそれぞれ設けられてもよい。
【0030】
開閉弁23a,23bは、分岐路25a,25bにそれぞれ設けられ、分岐路25a,25bを開放又は閉鎖する。開閉弁23a,23bが開放されている状態において、タンク21a,21bから燃料電池10へ水素ガスがそれぞれ供給される。一方、開閉弁23a,23bが閉鎖されている状態において、タンク21a,21bから燃料電池10への水素ガスの供給はそれぞれ遮断される。開閉弁23a,23bの動作は、制御装置100によって制御される。それにより、開閉弁23a,23bの開閉状態が制御されることにより、タンク21a,21bから燃料電池10への水素ガスの供給が制御される。開閉弁23は、例えば、タンク21の口金に内蔵され得る。
【0031】
開閉弁23a,23bは、電池システム1の停止時に閉鎖される。それにより、電池システム1の停止時にタンク21a,21bから燃料電池10への水素ガスの供給は遮断される。ゆえに、電池システム1の停止時に水素ガスはタンク21a,21b内に封止される。このように、開閉弁23a,23bは、電池システム1の停止時にタンク21a,21bから燃料電池10への水素ガスの供給を遮断する本発明に係る遮断機構に相当する。なお、電池システム1は、例えば、車両8の停車時又は電池システム1の故障時に停止する。電池システム1の停止時に、電池システム1を構成する開閉弁23a,23b等の各装置への電力の供給は停止し得る。それにより、電池システム1の停止時に開閉弁23a,23bを閉鎖することが実現され得る。
【0032】
調整弁27は、水素ガス通路25における分岐路25a,25bより下流側に設けられ、水素ガス通路25を通過する水素ガスの流量を調整する。水素ガスの流量は、具体的には、調整弁27の開度が大きいほど多くなる。調整弁27の動作は、制御装置100によって制御される。それにより、水素ガスの流量が制御されることにより、燃料電池10への水素ガスの供給量が制御される。
【0033】
空気供給系30は、燃料電池10へ酸化ガスとしての空気を供給可能である。空気供給系30は、例えば、
図1に示したように、空気通路35と、エアフィルタ31と、コンプレッサ33とを備える。
【0034】
空気通路35は、空気が通過する通路であり、車両8の外部から取り込んだ空気を燃料電池10へ送るために設けられる。空気通路35の下流側端部は、燃料電池10と接続される。また、空気通路35の上流側端部は、車両の外部から空気を取り込み可能な吸気口と接続される。吸気口から取り込まれた空気は、空気通路35を通過して燃料電池10へ供給される。
【0035】
エアフィルタ31は、空気通路35における上流側端部より下流側に設けられ、吸気口から取り込まれた空気に含まれる異物を除去する。
【0036】
コンプレッサ33は、空気通路35におけるエアフィルタ31より下流側に設けられ、コンプレッサ33より下流側へ空気を送出する。コンプレッサ33の動作は、制御装置100によって制御される。それにより、空気通路35を通過する空気の流量が制御されることにより、燃料電池10への空気の供給量が制御される。なお、空気通路35におけるエアフィルタ31より下流側には、空気を下流側へ送出するブロワがコンプレッサ33に替えて設けられてもよい。その場合、ブロワの動作が制御装置100によって制御されることにより、燃料電池10への空気の供給量が制御される。
【0037】
排気系40は、燃料電池10において発電に使用されなかった未使用の水素ガス又は空気を車両8の外部へ排出可能である。排気系40は、例えば、未使用の水素ガス又は空気が通過する通路である未使用ガス通路を備える。未使用ガス通路の上流側端部は、燃料電池10と接続される。また、未使用ガス通路の下流側端部は、車両8の外部へ未使用ガスを排出可能な排気口と接続される。それにより、燃料電池10において発電に使用されなかった未使用の水素ガス又は空気は、排気口から車両8の外部へ排出される。
【0038】
制御装置100は、演算処理装置であるCPU(Central Processing Unit)、CPUが使用するプログラムや演算パラメータ等を記憶する記憶素子であるROM(Read Only Memory)、CPUの実行において適宜変化するパラメータ等を一時記憶する記憶素子であるRAM(Random Access Memory)等で構成される。
【0039】
制御装置100は、電池システム1を構成する各装置の動作を制御する。例えば、制御装置100は、制御対象である各装置に対して電気信号を用いて動作指示を出力することによって、各装置の動作を制御する。具体的には、制御装置100は、開閉弁23a,23bの動作を制御することによって、タンク21a,21bから燃料電池10への水素ガスの供給を制御し得る。また、制御装置100は、調整弁27の動作を制御することによって、燃料電池10への水素ガスの供給量を制御し得る。また、制御装置100は、コンプレッサ33の動作を制御することによって、燃料電池10への空気の供給量を制御し得る。
【0040】
制御装置100は、各装置から出力された情報を受信する。制御装置100と各装置との通信は、例えば、CAN(Controller Area Network)通信を用いて実現される。例えば、制御装置100は、圧力センサ51a,51b及び温度センサ53a,53bから出力される検出結果を受信する。なお、本実施形態に係る制御装置100が有する機能は複数の制御装置により分割されてもよく、その場合、当該複数の制御装置は、CAN等の通信バスを介して、互いに接続されてもよい。
【0041】
本実施形態に係る制御装置100は、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量の指標値に基づいて、燃料電池10への水素ガスの供給源として使用されるタンク21である供給源タンクを複数のタンク21の中から決定する。そして、制御装置100は、決定した供給源タンクから燃料電池10へ水素ガスを供給させる。
【0042】
上述したように、電池システム1の停止時において、開閉弁23a,23bが閉鎖されることによって、水素ガスはタンク21a,21b内に封止される。よって、電池システム1の停止時には、外気温の上昇に伴って各タンク21の温度が上昇することにより各タンク21の内圧が上昇し得る。このような外気温の上昇に伴うタンク21の内圧の上昇は繰り返し発生し得る。
【0043】
ところで、電池システム1の停止時におけるタンク21の温度の上昇量は、各タンク21の間で異なり得る。例えば、
図2に示したように、タンク21bの寸法がタンク21aと比較して小さい場合、タンク21bの熱容量Cはタンク21aと比較して小さくなりやすい。ゆえに、タンク21bの温度の外気温に対する変化率は、タンク21aと比較して大きくなりやすい。よって、電池システム1の停止時におけるタンク21bの温度の上昇量は、タンク21aと比較して大きくなりやすい。
【0044】
なお、タンク21の熱容量Cは、固体である容器としてのタンク21とタンク21に貯蔵される水素ガスとを含むタンク21全体の熱容量を意味してもよく、固体である容器としてのタンク21の熱容量を意味してもよい。以下では、タンク21の熱容量Cがタンク21全体の熱容量を意味するものとして主に説明する。また、以下では、ある物理量の外気温に対する変化率は、外気温が単位温度変化した場合における当該物理量の変化量を意味するものとして説明する。換言すると、ある物理量の外気温に対する変化率は、外気温の変化に伴う当該物理量の変化しやすさを意味する。
【0045】
図3は、参考例に係る電池システムの停止時における各タンク21の内圧の推移の一例を示す模式図である。
図3では、実線及び一点鎖線によりタンク21a及びタンク21bの内圧の推移がそれぞれ示されている。参考例に係る電池システムは、本実施形態に係る電池システム1と比較して、制御装置が行うタンク21から燃料電池10への水素ガスの供給の制御について異なる。参考例に係る制御装置は、本実施形態に係る制御装置100が行う指標値に基づく供給源タンクの決定を行わず、例えば、各タンク21の間で水素ガスの残量Nが一致するように各タンク21から燃料電池10へ水素ガスを供給させる制御を行う。
【0046】
電池システム1の停止時において、タンク21の内圧の上昇量はタンク21の温度の上昇量が大きいほど大きくなりやすい。参考例では、各タンク21の間で水素ガスの残量Nが一致するので、
図3に示したように、電池システム1の停止時におけるタンク21bの内圧の上昇量はタンク21aと比較して大きくなる。ゆえに、電池システム1の停止時においてタンク21bの内圧は過剰に上昇しやすいので、タンク21bにおいて疲労破壊が促進されるおそれがある。また、電池システム1の停止時においてタンク21bの内圧は、
図3に示したように、電池システムの停止後の時刻T1においてタンク21bに設けられる安全弁についての圧力閾値Pthに到達し得る。それにより、タンク21b内から安全弁により未使用の水素ガスが排出され得る。ゆえに、燃費が低下し得る。
【0047】
ここで、本実施形態に係る制御装置100が行う指標値に基づく供給源タンクの決定によれば、電池システム1の停止時にタンク21の内圧が過剰に上昇することを抑制することができる。このような制御装置100の詳細については、次節にて説明する。
【0048】
<2.制御装置>
続いて、
図4及び
図5を参照して、本実施形態に係る制御装置100の詳細について説明する。
【0049】
[2−1.機能構成]
まず、
図4を参照して、本実施形態に係る制御装置100の機能構成について説明する。
図4は、本実施形態に係る制御装置100の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0050】
制御装置100は、例えば、
図4に示したように、推定部110と、決定部130と、制御部150とを含む。
【0051】
(推定部)
推定部110は、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量の指標値を複数のタンク21の各々について推定する。また、推定部110は、指標値についての推定結果を決定部130へ出力する。推定部110による推定結果は、決定部130による供給源タンクの決定処理に利用される。指標値は、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量についての各タンク21間の大小関係を予測し得る値である。
【0052】
具体的には、推定部110は、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値を指標値として推定する。電池システム1の停止時には、外気温の上昇に伴って各タンク21の温度が上昇することにより各タンク21の内圧が上昇し得る。ゆえに、タンク21の内圧の外気温に対する変化率が大きいほど、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量は大きくなる。よって、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値を指標値として推定することによって、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量についての各タンク21間の大小関係を適切に予測することができる。
【0053】
例えば、推定部110は、タンク21の温度の外気温に対する変化率と関連するパラメータに基づいて指標値を推定する。具体的には、推定部110は、タンク21の温度の外気温に対する変化率と関連するパラメータに基づいて、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値を指標値として推定する。電池システム1の停止時には、水素ガスはタンク21内に封止された状態になる。ゆえに、タンク21の内圧の外気温に対する変化率は、タンク21の温度の外気温に対する変化率と相関を有する。よって、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値を精度良く推定することができる。したがって、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量についての各タンク21間の大小関係を上記パラメータに応じてより適切に予測することができる。
【0054】
具体的には、推定部110は、上記パラメータとしてのタンク21の熱容量Cに基づいて、指標値を推定する。以下、このような推定部110の具体的な機能構成について説明する。
【0055】
推定部110は、例えば、
図4に示したように、残量推定部111と、熱容量推定部113と、指標値推定部115とを含む。
【0056】
残量推定部111は、タンク21における水素ガスの残量Nを複数のタンク21の各々について推定する。また、残量推定部111は、水素ガスの残量Nについての推定結果を熱容量推定部113及び指標値推定部115へ出力する。残量推定部111による推定結果は、熱容量推定部113による熱容量Cの推定処理及び指標値推定部115による指標値の推定処理に利用される。
【0057】
例えば、残量推定部111は、理想気体の状態方程式に基づいて、水素ガスの残量Nを各タンク21について推定する。
【0058】
具体的には、残量推定部111は、圧力センサ51a,51bから出力される検出結果に基づいて各タンク21の内圧の検出値を取得し得る。また、残量推定部111は、温度センサ53a,53bから出力される検出結果に基づいて各タンク21の温度の検出値を取得し得る。また、各タンク21の容積及び気体定数Rの設定値は、制御装置100の記憶素子に予め記憶される。残量推定部111は、記憶素子から各タンク21の容積及び気体定数Rの設定値を取得し得る。残量推定部111は、このようにして得られる各タンク21の内圧、温度及び容積並びに気体定数Rの各値を用いて、理想気体の状態方程式に基づく水素ガスの残量Nの推定処理をタンク21a,21bの各々について実行し得る。
【0059】
熱容量推定部113は、タンク21の熱容量Cを複数のタンク21の各々について推定する。また、熱容量推定部113は、タンク21の熱容量Cについての推定結果を指標値推定部115へ出力する。熱容量推定部113による推定結果は、指標値推定部115による指標値の推定処理に利用される。
【0060】
例えば、熱容量推定部113は、固体である容器としてのタンク21についての熱容量及びタンク21に貯蔵される水素ガスの熱容量の和をタンク21の熱容量Cとして各タンク21について推定する。なお、熱容量推定部113は、タンク21に貯蔵される水素ガスの熱容量を利用せず、固体である容器としてのタンク21についての熱容量をタンク21の熱容量Cとして推定してもよい。
【0061】
具体的には、固体である容器としての各タンク21についての熱容量の設定値は、制御装置100の記憶素子に予め記憶される。熱容量推定部113は、記憶素子から固体である容器としての各タンク21についての熱容量の設定値を取得し得る。また、熱容量推定部113は、残量推定部111により推定された各タンク21についての水素ガスの残量N及び水素ガスの比熱に基づいて、各タンク21に貯蔵される水素ガスの熱容量を算出し得る。水素ガスの比熱の設定値は、制御装置100の記憶素子に予め記憶される。熱容量推定部113は、記憶素子から水素ガスの比熱の設定値を取得し得る。熱容量推定部113は、このようにして得られる固体である容器としての各タンク21についての熱容量及び各タンク21に貯蔵される水素ガスの熱容量の各値を用いて、熱容量Cの推定処理をタンク21a,21bの各々について実行し得る。
【0062】
固体である容器としての各タンク21についての熱容量の設定値は、例えば、各タンク21の寸法に応じて設定される。ここで、物体の熱容量は、当該物体の寸法が小さいほど小さい。ゆえに、固体である容器としての各タンク21についての熱容量の設定値は、具体的には、タンク21の寸法が小さいほど小さな値に設定され得る。例えば、
図2に示したように、タンク21bの寸法がタンク21aと比較して小さい場合、固体である容器としてのタンク21bについての熱容量の設定値はタンク21aと比較して小さな値に設定される。なお、固体である容器としての各タンク21についての熱容量の設定値は、各タンク21の材質に応じて設定されてもよい。
【0063】
指標値推定部115は、タンク21の熱容量Cに基づいて指標値を複数のタンク21の各々について推定する。また、指標値推定部115は、指標値についての推定結果を決定部130へ出力する。指標値推定部115による推定結果は、決定部130による供給源タンクの決定処理に利用される。
【0064】
ここで、タンク21の温度の外気温に対する変化率は、タンク21の熱容量Cが小さいほど大きい。換言すると、タンク21の温度の外気温に対する変化率は、タンク21の熱容量Cが大きいほど小さい。このように、タンク21の熱容量Cは、タンク21の温度の外気温に対する変化率と関連するパラメータに相当する。
【0065】
例えば、指標値推定部115は、水素ガスの残量Nを熱容量Cで除して得られる値N/Cを指標値として推定する。値N/Cは、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値である。ゆえに、値N/Cが大きいほど、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量は大きくなる。
【0066】
上記のように、推定部110は、タンク21の温度の外気温に対する変化率と関連するパラメータとしてのタンク21の熱容量Cに基づいて指標値を推定し得る。それにより、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量についての各タンク21間の大小関係をタンク21の熱容量Cに応じてより適切に予測することができる。
【0067】
また、上記のように、推定部110は、タンク21における水素ガスの残量Nに基づいて指標値を推定し得る。それにより、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値を指標値として推定することを具体的に実現することができる。
【0068】
(決定部)
決定部130は、指標値に基づいて、燃料電池10への水素ガスの供給源として使用されるタンク21である供給源タンクを複数のタンク21の中から決定する。また、決定部130は、決定した供給源タンクを示す情報を制御部150へ出力する。決定部130から出力される供給源タンクを示す情報は、制御部150によるタンク21から燃料電池10への水素ガスの供給の制御に利用される。
【0069】
具体的には、決定部130は、複数のタンク21のうち指標値が大きいタンク21を燃料電池10への水素ガスの供給源として使用されるタンク21である供給源タンクとして優先的に決定する。
【0070】
例えば、決定部130は、複数のタンク21のうち最も大きい指標値と対応するタンク21を供給源タンクとして決定する。具体的には、決定部130は、タンク21bの指標値がタンク21aの指標値と比較して大きい場合、タンク21bを供給源タンクとして決定する。なお、決定部130は、複数のタンク21を供給源タンクとして決定してもよい。例えば、電池システム1にタンク21が3つ設けられる場合、複数のタンク21のうち最も大きい指標値と対応するタンク21及び次に大きい指標値と対応するタンク21を供給源タンクとして決定してもよい。
【0071】
(制御部)
制御部150は、供給源タンクを示す情報に基づいてタンク21から燃料電池10への水素ガスの供給を制御する。
【0072】
具体的には、制御部150は、供給源タンクから燃料電池10へ優先的に水素ガスを供給させる。
【0073】
例えば、制御部150は、供給源タンクから燃料電池10へ水素ガスを供給させ、供給源タンク以外のタンク21から燃料電池10への水素ガスの供給を遮断させる。具体的には、制御部150は、供給源タンクと対応する開閉弁23を開放し、供給源タンク以外のタンク21と対応する開閉弁23を閉鎖することによって、上記のようにタンク21から燃料電池10への水素ガスの供給を制御する。
【0074】
より具体的には、制御部150は、タンク21bが供給源タンクとして決定された場合、タンク21bと対応する開閉弁23bを開放し、タンク21aと対応する開閉弁23aを閉鎖する。それにより、タンク21bから燃料電池10へ水素ガスを供給させ、タンク21aから燃料電池10への水素ガスの供給を遮断させることができる。
【0075】
本実施形態に係る制御装置100によれば、推定部110は、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量の指標値を複数のタンク21の各々について推定する。具体的には、推定部110は、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値を指標値として推定する。それにより、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量についての各タンク21間の大小関係を適切に予測することができる。また、決定部130は、複数のタンク21のうち指標値が大きいタンク21を燃料電池10への水素ガスの供給源として使用されるタンク21である供給源タンクとして優先的に決定する。それにより、複数のタンク21のうち電池システム1の停止時における内圧の上昇量が大きいと予測されるタンク21内に貯蔵される水素ガスの残量Nを優先的に減少させることができる。よって、電池システム1の停止時にタンク21の内圧が過剰に上昇することを抑制することができる。したがって、各タンク21において疲労破壊が促進されることを抑制することができる。また、各タンク21b内から安全弁により未使用の水素ガスが排出されることを抑制することができるので、燃費を向上させることができる。
【0076】
本実施形態では、推定部110は、具体的には、タンク21の熱容量Cに基づいて指標値を推定する。それにより、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量についての各タンク21間の大小関係をタンク21の熱容量Cに応じてより適切に予測することができる。ゆえに、タンク21の寸法が各タンク21の間で異なる場合等のタンク21の熱容量Cが各タンク21の間で異なる場合において、電池システム1の停止時にタンク21の内圧が過剰に上昇することを特に有効に抑制することができる。
【0077】
[2−2.動作]
続いて、
図5に示すフローチャートを参照して、本実施形態に係る制御装置100が行う処理の流れについて説明する。
図5は、本実施形態に係る制御装置100が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。制御装置100は、例えば、
図5に示した処理を設定時間おきに繰り返し実行する。
【0078】
本実施形態では、
図5に示したように、まず、残量推定部111は、各タンク21における水素ガスの残量Nを推定し(ステップS501)、水素ガスの残量Nについての推定結果を熱容量推定部113及び指標値推定部115へ出力する。次に、熱容量推定部113は、各タンク21の熱容量Cを推定し(ステップS503)、タンク21の熱容量Cについての推定結果を指標値推定部115へ出力する。次に、指標値推定部115は、値N/Cを指標値として各タンク21について推定し(ステップS505)、指標値についての推定結果を決定部130へ出力する。
【0079】
そして、決定部130は、複数のタンク21のうち最も大きい指標値と対応するタンク21を供給源タンクとして決定し(ステップS507)、決定した供給源タンクを示す情報を制御部150へ出力する。
【0080】
そして、制御部150は、供給源タンクと対応する開閉弁23を開放し、供給源タンク以外のタンク21と対応する開閉弁23を閉鎖する(ステップS509)。それにより、供給源タンクから燃料電池10へ水素ガスを供給させ、供給源タンク以外のタンク21から燃料電池10への水素ガスの供給を遮断させることができる。そして、
図5に示した処理は終了する。
【0081】
<3.変形例>
続いて、
図6〜
図8を参照して、変形例に係る制御装置200について説明する。変形例に係る制御装置200は、上述した制御装置100と比較して、推定部210が行う指標値の推定処理について異なる。
【0082】
[3−1.機能構成]
まず、
図6及び
図7を参照して、変形例に係る制御装置200の機能構成について説明する。
図6は、変形例に係る制御装置200の機能構成の一例を示すブロック図である。
図7は、変形例に係るタンク21の車両8内における配置の一例を示す模式図である。
【0083】
制御装置200は、例えば、
図6に示したように、推定部210と、決定部130と、制御部150とを含む。
【0084】
推定部210は、上述した推定部110と同様に、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量の指標値を複数のタンク21の各々について推定する。また、推定部210は、指標値についての推定結果を決定部130へ出力する。推定部210は、具体的には、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値を指標値として推定する。
【0085】
変形例に係る推定部210は、上述した推定部110と異なり、タンク21の温度の外気温に対する変化率と関連するパラメータとしてのタンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qに基づいて指標値を推定する。以下、このような推定部210の具体的な機能構成について説明する。
【0086】
推定部210は、例えば、
図6に示したように、残量推定部111と、流入熱量推定部213と、指標値推定部215とを含む。
【0087】
流入熱量推定部213は、タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qを複数のタンク21の各々について推定する。また、流入熱量推定部213は、タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qについての推定結果を指標値推定部215へ出力する。流入熱量推定部213による推定結果は、指標値推定部215による指標値の推定処理に利用される。
【0088】
例えば、各タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qの設定値は、制御装置200の記憶素子に予め記憶される。流入熱量推定部213は、記憶素子から各タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qの設定値を取得し得る。流入熱量推定部213は、このようにして得られる各設定値を各タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qとして推定する。
【0089】
タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qは、例えば、タンク21の車両8における設置位置に依存する。ゆえに、各タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qの設定値は、各タンク21の設置位置に応じて設定され得る。例えば、
図7に示したように、タンク21a及びタンク21bが床下P30及び荷室P20にそれぞれ配設される場合がある。荷室P20の温度の外気温に対する変化率は、床下P30の温度の外気温に対する変化率と比較して大きくなりやすい。それにより、タンク21bへの流入熱量の外気温に対する変化率Qはタンク21aと比較して大きくなりやすい。
【0090】
なお、タンク21bへの流入熱量の外気温に対する変化率Qがタンク21aと比較して大きい場合、タンク21bの温度の外気温に対する変化率はタンク21aと比較して大きくなりやすい。よって、電池システム1の停止時におけるタンク21bの温度の上昇量は、タンク21aと比較して大きくなりやすい。
【0091】
指標値推定部215は、タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qに基づいて指標値を複数のタンク21の各々について推定する。また、指標値推定部215は、指標値についての推定結果を決定部130へ出力する。指標値推定部215による推定結果は、決定部130による供給源タンクの決定処理に利用される。
【0092】
ここで、タンク21の温度の外気温に対する変化率は、タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qが大きいほど大きい。換言すると、タンク21の温度の外気温に対する変化率は、タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qが小さいほど小さい。このように、タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qは、タンク21の温度の外気温に対する変化率と関連するパラメータに相当する。
【0093】
例えば、指標値推定部215は、水素ガスの残量Nにタンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qを乗じて得られる値NQを指標値として推定する。値NQは、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値である。ゆえに、値NQが大きいほど、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量は大きくなる。
【0094】
上記のように、推定部210は、タンク21の温度の外気温に対する変化率と関連するパラメータとしてのタンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qに基づいて指標値を推定し得る。それにより、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量についての各タンク21間の大小関係をタンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qに応じてより適切に予測することができる。
【0095】
また、変形例に係る制御装置200によれば、上述した制御装置100と同様に、決定部130は、複数のタンク21のうち指標値が大きいタンク21を燃料電池10への水素ガスの供給源として使用されるタンク21である供給源タンクとして優先的に決定する。それにより、複数のタンク21のうち電池システム1の停止時における内圧の上昇量が大きいと予測されるタンク21内に貯蔵される水素ガスの残量Nを優先的に減少させることができる。よって、電池システム1の停止時にタンク21の内圧が過剰に上昇することを抑制することができる。したがって、各タンク21において疲労破壊が促進されることを抑制することができる。また、各タンク21b内から安全弁により未使用の水素ガスが排出されることを抑制することができるので、燃費を向上させることができる。
【0096】
また、変形例によれば、上述したように、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量についての各タンク21間の大小関係をタンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qに応じてより適切に予測することができる。ゆえに、タンク21の設置位置が各タンク21の間で異なる場合等のタンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qが各タンク21の間で異なる場合において、電池システム1の停止時にタンク21の内圧が過剰に上昇することを特に有効に抑制することができる。
【0097】
[3−2.動作]
続いて、
図8に示すフローチャートを参照して、変形例に係る制御装置200が行う処理の流れについて説明する。
図8は、変形例に係る制御装置200が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。変形例に係る制御装置200が行う処理の流れは、上述した制御装置100が行う処理の流れと比較して、水素ガスの残量Nの推定処理(ステップS501)より後、かつ、供給源タンクの決定処理(ステップS507)より前の処理が異なる。
【0098】
変形例では、
図8に示したように、水素ガスの残量Nの推定処理(ステップS501)の次に、流入熱量推定部213は、各タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qを推定し(ステップS603)、タンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qについての推定結果を指標値推定部215へ出力する。次に、指標値推定部215は、値NQを指標値として各タンク21について推定し(ステップS605)、指標値についての推定結果を決定部130へ出力する。そして、供給源タンクの決定処理(ステップS507)へ進む。
【0099】
<4.応用例>
続いて、
図9〜
図11を参照して、応用例に係る制御装置300について説明する。応用例に係る制御装置300は、上述した制御装置100と比較して、決定部330が行う供給源タンクの決定処理について異なる。
【0100】
[4−1.機能構成]
まず、
図9及び
図10を参照して、応用例に係る制御装置300の機能構成について説明する。
図9は、応用例に係る制御装置300の機能構成の一例を示すブロック図である。
【0101】
制御装置300は、例えば、
図9に示したように、推定部110と、決定部330と、制御部150とを含む。
【0102】
決定部330は、上述した決定部130と同様に、複数のタンク21のうち指標値が大きいタンク21を燃料電池10への水素ガスの供給源として使用されるタンク21である供給源タンクとして優先的に決定する。また、決定部330は、決定した供給源タンクを示す情報を制御部150へ出力する。
【0103】
応用例に係る決定部330は、上述した決定部130と異なり、供給源タンクと異なる他のタンク21の指標値が供給源タンクの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなった場合に、他のタンク21を供給源タンクとして決定する。なお、指標値閾値は、本発明に係る閾値に相当する。以下、このような決定部330の具体的な機能構成について説明する。
【0104】
決定部330は、例えば、
図9に示したように、判定部331と、供給源決定部333とを含む。
【0105】
判定部331は、供給源タンクと異なる他のタンク21の指標値が供給源タンクの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなったか否かを判定する。また、判定部331は、判定結果を供給源決定部333へ出力する。判定部331による判定結果は、供給源決定部333による供給源タンクの決定処理に利用される。
【0106】
指標値閾値は、供給源タンクの切り替えが過剰に多発するハンチングが生じることを抑制し得る値に適宜設定され得る。
【0107】
供給源決定部333は、判定部331による判定結果に基づいて、供給源タンクを複数のタンク21の中から決定する。
【0108】
具体的には、供給源決定部333は、供給源タンクと異なる他のタンク21の指標値が供給源タンクの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなったと判定された場合に、他のタンク21を供給源タンクとして決定する。
【0109】
例えば、供給源タンクとしてタンク21bが決定されているときに、供給源決定部333は、タンク21aの指標値がタンク21bの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなったと判定された場合に、タンク21aを供給源タンクとして決定する。一方、供給源決定部333は、タンク21aの指標値がタンク21bの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなったと判定されなかった場合には、タンク21aの指標値がタンク21bの指標値と比較して大きい場合であっても、供給源タンクの切り替えを行わない。
【0110】
図10は、応用例に係る決定部330が行う供給源の決定処理について説明するための説明図である。
図10では、縦軸及び横軸をそれぞれタンク21a及びタンク21bの指標値とした指標値平面が示されている。
図10に示した指標値平面上における各ドットは、各ドットの位置に対応するタンク21a及びタンク21bの指標値のペアを示す。直線Leは、指標値平面上においてタンク21a及びタンク21bの指標値が一致するペアを示す直線である。直線L1は、指標値平面上においてタンク21aの指標値がタンク21bの指標値と比較して指標値閾値だけ大きいペアを示す直線である。直線L2は、指標値平面上においてタンク21bの指標値がタンク21aの指標値と比較して指標値閾値だけ大きいペアを示す直線である。
【0111】
ここで、供給源タンクとしてタンク21bが決定されているときにおけるタンク21a及びタンク21bの指標値の変化について考える。例えば、指標値平面上において直線L2よりタンク21bの指標値が高い側の領域に位置するドットd1に対応する値からのタンク21a及びタンク21bの指標値の変化について考える。供給源タンクとしてタンク21bが決定されているので、時間の経過に伴いタンク21bの水素ガスの残量Nが減少する。ゆえに、時間の経過に伴いタンク21bの指標値が減少する。よって、タンク21a及びタンク21bの指標値は、指標値平面上においてドットd1、ドットd2、ドットd3及びドットd4を順に辿るように変化する。
【0112】
タンク21a及びタンク21bの指標値が直線Le上のドットd2から直線L1上のドットd3へ移行するように変化する間において、タンク21aの指標値はタンク21bの指標値と比較して大きい。しかしながら、タンク21aの指標値はタンク21bの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなっていない。ゆえに、決定部330は、供給源タンクの切り替えを行わない。
【0113】
タンク21a及びタンク21bの指標値が直線L1よりタンク21aの指標値が高い側の領域に位置するドットd4に対応する値となった場合には、タンク21aの指標値はタンク21bの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなっている。ゆえに、決定部330は、タンク21aを供給源タンクとして決定する。
【0114】
このように、決定部330は、供給源タンクの決定において、ヒステリシス制御を行う。それにより、供給源タンクの切り替えが過剰に多発するハンチングが生じることを抑制することができる。
【0115】
[4−2.動作]
続いて、
図11に示すフローチャートを参照して、応用例に係る制御装置300が行う処理の流れについて説明する。
図11は、応用例に係る制御装置300が行う処理の流れの一例を示すフローチャートである。応用例に係る制御装置300が行う処理の流れは、上述した制御装置100が行う処理の流れと比較して、指標値の決定処理(ステップS505)より後の処理が異なる。
【0116】
応用例では、
図11に示したように、指標値の決定処理(ステップS505)の次に、判定部331は、供給源タンクと異なる他のタンク21の指標値が供給源タンクの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなったか否かを判定する(ステップS701)。供給源タンクと異なる他のタンク21の指標値が供給源タンクの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなったと判定されなかった場合(ステップS701/NO)、
図11に示した処理は終了する。
【0117】
一方、供給源タンクと異なる他のタンク21の指標値が供給源タンクの指標値と比較して指標値閾値以上大きくなったと判定された場合(ステップS701/YES)、供給源決定部333は、他のタンク21を供給源タンクとして決定し(ステップS703)、決定した供給源タンクを示す情報を制御部150へ出力する。そして、制御部150は、供給源タンクと対応する開閉弁23を開放し、供給源タンク以外のタンク21と対応する開閉弁23を閉鎖する(ステップS509)。それにより、供給源タンクから燃料電池10へ水素ガスを供給させ、供給源タンク以外のタンク21から燃料電池10への水素ガスの供給を遮断させることができる。そして、
図11に示した処理は終了する。
【0118】
<5.むすび>
以上説明したように、本実施形態では、推定部110は、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量の指標値を複数のタンク21の各々について推定する。また、決定部130は、複数のタンク21のうち指標値が大きいタンク21を燃料電池10への水素ガスの供給源として使用されるタンク21である供給源タンクとして優先的に決定する。それにより、複数のタンク21のうち電池システム1の停止時における内圧の上昇量が大きいと予測されるタンク21内に貯蔵される水素ガスの残量Nを優先的に減少させることができる。よって、電池システム1の停止時にタンク21の内圧が過剰に上昇することを抑制することができる。したがって、各タンク21において疲労破壊が促進されることを抑制することができる。また、各タンク21b内から安全弁により未使用の水素ガスが排出されることを抑制することができるので、燃費を向上させることができる。
【0119】
なお、上記では、理解を容易にするために、熱容量Cに基づいて指標値を推定する推定部110及び変化率Qに基づいて指標値を推定する推定部210についてそれぞれ説明したが、本発明に係る推定部は熱容量C及び変化率Qの双方に基づいて指標値を推定してもよい。その場合、推定部は、例えば、水素ガスの残量Nにタンク21への流入熱量の外気温に対する変化率Qを乗じて得られる値NQをタンク21の熱容量Cで除して得られる値NQ/Cを指標値として推定する。値NQ/Cは、タンク21の内圧の外気温に対する変化率に相当する値である。ゆえに、値NQ/Cが大きいほど、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量は大きくなる。熱容量C及び変化率Qの双方に基づいて指標値を推定することにより、電池システム1の停止時におけるタンク21の内圧の上昇量についての各タンク21間の大小関係をさらに適切に予測することができる。
【0120】
また、上記では、制御装置100について、ヒステリシス制御を利用した供給源タンクの決定処理を行う決定部330を適用した例として応用例に係る制御装置300を説明したが、ヒステリシス制御を利用した供給源タンクの決定処理を行う決定部330は変形例に係る制御装置200についても適用し得る。また、ヒステリシス制御を利用した供給源タンクの決定処理を行う決定部330は、推定部が熱容量C及び変化率Qの双方に基づいて指標値を推定する場合についても適用し得る。
【0121】
また、本明細書においてフローチャートを用いて説明した処理は、必ずしもフローチャートに示された順序で実行されなくてもよい。いくつかの処理ステップは、並列的に実行されてもよい。例えば、
図8に示したフローチャートについて、ステップS501,S603の処理は当該フローチャートに示された順序で実行されなくてもよく、並列的に実行されてもよい。また、追加的な処理ステップが採用されてもよく、一部の処理ステップが省略されてもよい。
【0122】
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明は係る例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例又は応用例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。