特許第6860372号(P6860372)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860372
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】吸水剤の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 7/00 20060101AFI20210405BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20210405BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20210405BHJP
   A61F 13/53 20060101ALI20210405BHJP
   A61L 15/60 20060101ALI20210405BHJP
   A61L 15/22 20060101ALI20210405BHJP
   A61L 15/44 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C08J7/00 ACER
   B01J20/30
   B01J20/26 D
   A61F13/53 300
   A61L15/60 200
   A61L15/22 200
   A61L15/44 200
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-26445(P2017-26445)
(22)【出願日】2017年2月15日
(65)【公開番号】特開2018-131545(P2018-131545A)
(43)【公開日】2018年8月23日
【審査請求日】2019年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】藤本 拓
(72)【発明者】
【氏名】鎌田 修輔
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 康久
(72)【発明者】
【氏名】池内 博之
【審査官】 大▲わき▼ 弘子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−104119(JP,A)
【文献】 特表2000−513408(JP,A)
【文献】 国際公開第2016/117523(WO,A1)
【文献】 特開平06−312000(JP,A)
【文献】 特表2010−540004(JP,A)
【文献】 特開2018−131546(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C71/04;C08J7/00−7/02;7/12−7/18、
C08J3/00−3/28;99/00、
C08K3/00−13/08;C08L1/00−101/14、
B01J20/00−20/28;20/30−20/34、
A61F13/53,A61L15/22,A61L15/44,A61L15/60
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表される1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を溶解又は分散させた添加液を、吸水性樹脂に添加する添加工程を有し、
上記添加液は、多価アルコール及び水を含んでおり、
上記多価アルコールは、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオール、ポリプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,2−ブチレングリコール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びグリセリンからなる群より選択される少なくとも1つであり、
上記添加液の溶媒又は分散媒中の多価アルコールの濃度は、30重量%以上55重量%以下であることを特徴とする、吸水剤の製造方法。
【化1】
[式中、
は、炭素数が1〜17のアルキル基;炭素数が2〜17のアルケニル基;炭素数が5〜8のシクロアルキル基;炭素数7〜9のビシクロアルキル基;炭素数が1〜4のアルキル基を有するシクロアルキルアルキル基(当該シクロアルキルアルキル基のシクロアルキル残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);アリール基(当該アリール基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルキル基を有するアラルキル基(当該アラルキル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が2〜4のアルケニル基を有するアリールアルケニル基(当該アリールアルケニル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルキル基を有するアリールオキシアルキル基若しくはアリールメルカプトアルキル基(当該アリールオキシアルキル基又はアリールメルカプトアルキル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);ベンズヒドリル基(当該ベンズヒドリル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルキル基を有するフェニルスルホニルアルキル基(当該フェニルスルホニルアルキル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が2〜4のフリル基若しくはアルケニル基を有するフリルアルケニル基(当該フリルアルケニル基中のフリル残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;又はハロゲン原子を表し、
は、水素原子;炭素数が1〜4のアルキル基;炭素数が2〜4のアルケニル基;ハロゲン原子;フェニル基;又はベンジル基を表し、
は、有機塩基;アルカリ金属イオン;アンモニウムイオン;アルカリ土類金属イオン;又は2〜4価のカチオンイオンを表す]
【請求項2】
上記添加工程における上記添加液の温度は、30℃以上90℃以下であることを特徴とする、請求項1に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項3】
上記添加液における上記1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の濃度は、1重量%以上20重量%以下であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項4】
上記添加工程において上記吸水性樹脂に添加する上記添加液の量は、上記吸水性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項5】
上記1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体は、ピロクトンオラミンであることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【請求項6】
上記多価アルコールは、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブチレングリコール(1,2−ブタンジオール)、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール及びグリセリン(1,2,3−プロパントリオール)からなる群より選択される少なくとも1つであることを特徴とする、請求項1〜5の何れか1項に記載の吸水剤の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は吸水剤の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
紙オムツ、生理用ナプキン及びいわゆる失禁パッド等の衛生材料には、体液を吸収させることを目的として、パルプ等の親水性繊維と吸水性樹脂とをその構成材料とする吸水剤が幅広く利用されている。
【0003】
近年、これらの衛生材料は、高機能化が進んでおり、例えば、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体などの抗菌剤を添加することにより、高機能な吸収剤の開発が行われている。
【0004】
特許文献1には、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を含有する抗菌剤を含む、抗菌性ヒドロゲル形成吸収ポリマーが開示されている。同文献には、メチルアルコール溶媒に溶解させて1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体で被覆された吸収性ポリマー粒子の製造方法が記載されている。
【0005】
特許文献2には、抗菌剤をポリオールに溶解させた状態で超吸収体と接触させることにより、抗菌剤のコーティングを有する超吸収体の製造方法が開示されている。
【0006】
特許文献3には、親水性かつ不揮発性である有機溶媒に有機疎水性抗菌剤を溶解してなる抗菌剤溶液を、吸収性物品用材料の原料である吸水性樹脂に適用する工程を有する吸収性物品用材料の製造方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特表2000−513408号公報
【特許文献2】特表2010−540004号公報
【特許文献3】国際公開2016/117523号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように、吸水性樹脂に抗菌剤を添加する方法は種々知られているが、特に、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を吸水性樹脂に配合するにあたり、改善の余地があった。
【0009】
本発明は、このような事情に鑑みて成されたものであり、吸水性樹脂の粉体流動性を損なうことなく、吸水性樹脂の表面近傍に1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体をより均一に近づくように分布させて、当該1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の持つ機能を十分に発揮させ得る吸水剤の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するために、本発明者が鋭意検討した結果、以下の本発明を完成させた。
【0011】
本発明に係る吸水剤の製造方法は、下記一般式(I)で表される1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を溶解又は分散させた添加液を、吸水性樹脂に添加する工程を有し、上記添加液は、多価アルコール及び水を含んでおり、上記添加液の溶媒又は分散媒中の多価アルコールの濃度は、30重量%以上55重量%以下であることを特徴とする。
【0012】
【化1】
【0013】
式中、Rは、炭素数が1〜17のアルキル基;炭素数が2〜17のアルケニル基;炭素数が5〜8のシクロアルキル基;炭素数7〜9のビシクロアルキル基;炭素数が1〜4のアルキル基を有するシクロアルキルアルキル基(当該シクロアルキルアルキル基のシクロアルキル残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);アリール基(当該アリール基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルキル基を有するアラルキル基(当該アラルキル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が2〜4のアルケニル基を有するアリールアルケニル基(当該アリールアルケニル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルキル基を有するアリールオキシアルキル基若しくはアリールメルカプトアルキル基(当該アリールオキシアルキル基又はアリールメルカプトアルキル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);ベンズヒドリル基(当該ベンズヒドリル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルキル基を有するフェニルスルホニルアルキル基(当該フェニルスルホニルアルキル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が2〜4のフリル基若しくはアルケニル基を有するフリルアルケニル基(当該フリルアルケニル基中のフリル残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;又はハロゲン原子を表す。Rは、水素原子;炭素数が1〜4のアルキル基;炭素数が2〜4のアルケニル基;ハロゲン原子;フェニル基;又はベンジル基を表す。Xは、有機塩基;アルカリ金属イオン;アンモニウムイオン;アルカリ土類金属イオン;又は2〜4価のカチオンイオンを表す。
【0014】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記添加工程における上記添加液の温度は、30℃以上90℃以下であることが好ましい。また、添加される吸水性樹脂の温度は、20℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0015】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記添加液における上記1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の濃度は、1重量%以上20重量%以下であることが好ましい。
【0016】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記添加工程において上記吸水性樹脂に添加する上記添加液の量は、上記吸水性樹脂100重量部に対して0.1重量部以上10重量部以下であることが好ましい。
【0017】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体は、ピロクトンオラミンであることが好ましい。
【0018】
本発明に係る吸水剤の製造方法では、上記多価アルコールは、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール及びグリセリン(1,2,3−プロパントリオール)からなる群より選択される少なくとも1つであることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、吸水性樹脂の粉体流動性を損なうことなく、吸水性樹脂の表面近傍に1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体をより均一に近づくように分布させて、当該1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の持つ機能を十分に発揮させ得る吸水剤の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
〔1〕用語の定義
(1−1)吸水剤
本明細書において、「吸水剤」とは、吸水性樹脂を主成分(好ましくは全体の60重量%以上、より好ましくは80重量%以上、さらに好ましくは90重量%以上)とする水性液のゲル化剤であり、その他に、任意成分として水、無機微粒子、カチオン性高分子化合物、水溶性多価金属カチオン含有化合物、界面活性剤、着色防止剤、耐尿性向上剤、消臭剤、香料、抗菌剤、発泡剤、顔料、染料、肥料、酸化剤及び還元剤等を、それぞれ0重量%以上10重量%以下、好ましくは0.001重量%以上5重量%以下含有してもよい。
【0021】
上記吸水剤の粉体流動性指数は、特に限定されないが、75以上であることが好ましく、80以上であることがより好ましく、81よりも高いことがより好ましく、82以上であることがより好ましく、85以上であることがより好ましく、87以上であることがより好ましく、90以上であることが最も好ましい。当該紛体流動性指数の上限値は、特に限定されず、例えば、100、99、98、97、96または95であってもよい。
【0022】
粉体流動性指数は、吸水剤の安息角指数、スパチュラ角指数、圧縮度指数、及び均一度指数(または、凝集度指数)を、ホソカワミクロン社製パウダーテスターPT−Xを用いて測定し、DR.Carrが提案する粉体流動性指数式(下記式A)から算出することができる:つまり、
粉体流動性指数=安息角指数+スパチュラ角指数+圧縮度指数+(均一度指数または凝集度指数)・・・(式A)。
【0023】
(1−2)「吸水性樹脂」
本明細書における吸水性樹脂とは、水膨潤性水不溶性の高分子ゲル化剤を意味する。尚、「水膨潤性」とは、ERT441.2−02で規定するCRC(無加圧下吸収倍率)が5g/g以上であることをいい、また、「水不溶性」とは、ERT470.2−02で規定するExtr(水可溶分)が0重量%以上50重量%以下であることをいう。
【0024】
(1−3)「EDANA」及び「ERT」
「EDANA」は、欧州不織布工業会(European Disposables and Nonwovens Associations)の略称であり、「ERT」は、欧州標準(ほぼ世界標準)の吸水性樹脂の測定法(EDANA Recommended Test Methods)の略称である。本発明では、特に断りのない限り、ERT原本(2002年改定/公知文献)に準拠して、吸水性樹脂の物性を測定する。
【0025】
(1−3−1)「CRC」(ERT441.2−02)
「CRC」は、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離保持容量)の略称であり、吸水性樹脂の無加圧下吸水倍率(「吸水倍率」と称する場合もある)を意味する。
【0026】
具体的には、吸水性樹脂0.2gを不織布製の袋に入れた後、大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液中に30分間浸漬して自由膨潤させ、その後、遠心分離機(250G)で水切りした後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。
【0027】
(1−3−2)「AAP」(ERT442.2−02)
「AAP」は、Absorption Against Pressureの略称であり、吸水性樹脂の加圧下吸水倍率を意味する。
【0028】
具体的には、吸水性樹脂0.9gを大過剰の0.9重量%塩化ナトリウム水溶液に対して、1時間、2.06kPa(21g/cm、0.3psi)荷重下で膨潤させた後の吸水倍率(単位;g/g)のことをいう。なお、荷重条件を4.83kPa(49g/cm、0.7psi)に変更して測定する場合もある。
【0029】
また、ERT442.2−02には、Absorption Under Pressureと表記されているが、実質的に同一内容である。
【0030】
(1−3−3)「PSD」(ERT420.2−02)
「PSD」は、Particle Size Distributionの略称であり、篩分級により測定される、吸水性樹脂の粒度分布を意味する。
【0031】
なお、重量平均粒子径(D50)及び粒度分布の対数標準偏差(σζ)は、米国特許第7638570号に記載された「(3)Mass−Average Particle Diameter (D50) and Logarithmic Standard Deviation (σζ) of Particle Diameter Distribution」と同様の方法で測定する。
【0032】
〔2〕吸水剤の製造方法
本発明に係る吸水剤の製造方法は、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を溶解又は分散させた添加液を吸水性樹脂に添加する添加工程を有している。
【0033】
(2−1)添加工程
本工程は、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を溶解又は分散させた添加液を吸水性樹脂に添加する工程である。
【0034】
(添加液)
添加液は、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を溶解又は分散させた液であり、吸水性樹脂に添加するための液である。
【0035】
添加液は、溶質又は分散質として、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を含む。
【0036】
添加液は、溶媒又は分散媒として、水と多価アルコールとの混合物を用いる。水と多価アルコールとの混合物を溶媒又は分散媒として用いた場合、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を、より均一に近づくよう、吸水性樹脂の表面近傍に分布させやすくなる。
【0037】
添加液の温度は、多価アルコールの種類、多価アルコールの濃度などの条件によるが、20℃以上100℃以下が好ましい。後述する好ましい多価アルコール濃度の範囲においては、添加液の温度は、30℃以上90℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がより好ましい。添加液の温度が30℃以上であることにより、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を析出させることなく、十分に溶解又は分散させることができる。一方、添加液の温度が90℃以下であることにより、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の熱劣化を抑制することができる。また、添加される吸水性樹脂の温度は、20℃以上90℃以下であることが好ましい。
【0038】
添加液のpHとしては、6以上が好ましく、7以上がより好ましく、8以上がさらに好ましい。pHが6以上であることにより、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の溶解度を向上させ得るとともに、吸水性樹脂の変質を抑えることができる。
【0039】
添加液の粘度としては、1mPa・s以上20mPa・s以下が好ましく、1mPa・s以上15mPa・s以下がより好ましく、1mPa・s以上10mPa・s以下がさらに好ましい。粘度が上述の好ましい範囲にあることにより、吸水性樹脂に対する添加液の均一な散布が容易である。
【0040】
また、吸水性樹脂に添加する添加液の量としては、吸水性樹脂100重量部に対し、0.01重量部以上20重量部以下が好ましく、0.05重量部以上10重量部以下がより好ましく、0.1重量部以上5重量部以下がさらに好ましい。添加する量が上述の好ましい範囲にあることにより、吸水性樹脂の十分な吸水性能が得られる。
【0041】
(水と多価アルコールとの混合物)
添加液の溶媒又は分散媒としては、水と多価アルコールとの混合物を用いる。多価アルコールの濃度としては、添加液の溶媒又は分散媒中(すなわち、水及び多価アルコールの合計量を100重量%としたときに)、30重量%以上55重量%以下が好ましく、30重量%以上50重量%以下がより好ましく、30重量%以上45重量%以下が更に好ましく、30重量%以上40重量%以下が最も好ましい。
【0042】
一方、水の濃度としては、添加液の溶媒又は分散媒中(すなわち、水及び多価アルコールの合計量を100重量%としたときに)、45重量%よりも多く70重量%未満が好ましく、50重量%よりも多く70重量%未満が好ましく、65重量%よりも多く70重量%未満が更に好ましく、60重量%よりも多く70重量%未満が最も好ましい。
【0043】
1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体は水に対して難溶性であるため、添加液の溶媒(分散媒)として水のみを使用すると、添加液は懸濁液となる。上記懸濁液を吸水性樹脂に添加しようとしても、懸濁液中の水のみが吸水性樹脂の内部にまで浸透し、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体が吸水性樹脂表面から脱離するおそれがある。一方、多価アルコールは1−ヒドロキシ2−ピリドン誘導体を溶解するが、添加液の溶媒(分散媒)として多価アルコールのみを使用すると、吸水性樹脂に添加液を浸透させることができない。これに対し、上述のように、多価アルコールの量が30重量%以上55重量%以下であることにより、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の、添加液への溶解又は分散と、吸水性樹脂の表面近傍への均一な分布とを両立させることができる。
【0044】
(多価アルコール)
多価アルコールとしては、例えば、エチレングリコール(1,2−エタンジオール)、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール(1,2−プロパンジオール)、1,3−プロパンジオール、ジプロピレングリコール、2,2,4−トリメチル−1,3−ペンタジオール、ポリプロピレングリコール、2−ブテン−1,4−ジオール、1,2−ブチレングリコール(1,2−ブタンジオール)、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール及びグリセリン(1,2,3−プロパントリオール)、および、これらから選択される任意の多価アルコールの混合物等が挙げられる。多価アルコールを用いることにより、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を、水と多価アルコールとの混合物に、より溶解させやすくなる。
【0045】
上述した多価アルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,2−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール及びグリセリン等が好ましく、プロピレングリコール、1,3−プロパンジオール及び1,3−ブタンジオールがより好ましく、プロピレングリコールがさらに好ましい。プロピレングリコールを多価アルコールとして用いることにより、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を、水と多価アルコールとの混合物により溶解させやすくなる。なお、多価アルコールは、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0046】
多価アルコールの沸点は、100℃以上が好ましく、より好ましくは150℃以上である。100℃以上であることにより、吸水剤の製造中に揮発しにくい。
【0047】
(1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体)
1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体は、添加液に分散又は溶解されるものである。
【0048】
1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体は、下記一般式(I)で表される。
【0049】
【化2】
【0050】
[式中、Rは、炭素数が1〜17のアルキル基;炭素数が2〜17のアルケニル基;炭素数が5〜8のシクロアルキル基;炭素数7〜9のビシクロアルキル基;炭素数が1〜4のアルキル基を有するシクロアルキルアルキル基(当該シクロアルキルアルキル基のシクロアルキル残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);アリール基(当該アリール基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルキル基を有するアラルキル基(当該アラルキル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が2〜4のアルケニル基を有するアリールアルケニル基(当該アリールアルケニル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルキル基を有するアリールオキシアルキル基若しくはアリールメルカプトアルキル基(当該アリールオキシアルキル基又はアリールメルカプトアルキル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);ベンズヒドリル基(当該ベンズヒドリル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルキル基を有するフェニルスルホニルアルキル基(当該フェニルスルホニルアルキル基中のアリール残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が2〜4のフリル基若しくはアルケニル基を有するフリルアルケニル基(当該フリルアルケニル基中のフリル残基は、炭素数が1〜4のアルキル基で置換されていてもよい);炭素数が1〜4のアルコキシ基;ニトロ基;シアノ基;又はハロゲン原子を表す。Rは、水素原子;炭素数が1〜4のアルキル基;炭素数が2〜4のアルケニル基;ハロゲン原子;フェニル基;又はベンジル基を表す。Xは、有機塩基;アルカリ金属イオン;アンモニウムイオン;アルカリ土類金属イオン;又は2〜4価のカチオンイオンを表す]。
【0051】
1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の分子量としては、添加液の調製が容易であることから、50以上800以下が好ましく、50以上600以下がより好ましく、50以上400以下がさらに好ましい。このような1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の例としては、ピロクトンオラミン(1−ヒドロキシ−4−メチル−6−(2,4,4−トリメチルペンチル)−2(1H)−ピリドン・2−アミノエタノール;日本国では「オクトピロックス」の商品名でクラリアント・ジャパン株式会社が販売)が挙げられる。
【0052】
また、ピロクトンオラミンは、医薬品医療機器等法に規定されている化粧品基準に収載されているため、一定の安全基準を満たしているという観点からも好ましい。
【0053】
添加液に含まれる1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の量は、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体、水、多価アルコール及び他の任意成分との合計量を100重量%としたときに、1重量%以上20重量%以下であることが好ましく、5重量%以上20重量%以下であることがより好ましく、5重量%以上15重量%以下であることがさらに好ましい。
【0054】
(他の任意成分)
添加液は、水、多価アルコール及び1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体の他に、他の任意成分を含んでいてよい。具体的な他の任意成分としては、消臭剤、金属石鹸、抗菌剤、着色防止剤、耐尿性向上剤、酸化剤及び還元剤等が挙げられる。
【0055】
金属石鹸としては、具体的には、ラウリン酸カルシウム、ラウリン酸マグネシウム、ラウリン酸亜鉛、ラウリン酸アルミニウム、ミリスチン酸カルシウム、ミリスチン酸マグネシウム、ミリスチン酸亜鉛、ミリスチン酸アルミニウム、パルミチン酸カルシウム、パルミチン酸マグネシウム、パルミチン酸亜鉛、パルミチン酸アルミニウム、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸亜鉛及びステアリン酸アルミニウムを挙げることができるが、これらに限定されるものではなく、任意の有機酸と金属塩とを組み合わせることができる。また、該金属石鹸は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0056】
また、着色防止剤及び耐尿性向上剤として、キレート剤(特に有機リン系キレート剤及びアミノカルボン酸系キレート剤)、α−ヒドロキシカルボン酸誘導体、並びに、無機又は有機還元剤(特に硫黄系無機還元剤)から選ばれる着色防止剤又は耐尿性向上剤を含むことが好ましい。なお、表面積の大きい吸水性樹脂は、一般的に着色及び劣化し易い傾向にある。
【0057】
キレート剤としては、米国特許第6599989号、同第6469080号、欧州特許第2163302号等に開示されたキレート剤、例えば、非高分子キレート剤、有機リン系キレート剤及びアミノカルボン酸系キレート剤が挙げられる。α−ヒドロキシカルボン酸誘導体としては、米国特許出願公開第2009/0312183号等に開示されたリンゴ酸塩、琥珀酸塩及び乳酸塩が挙げられる。無機又は有機還元剤としては、米国特許出願公開第2010/0062252号等に開示された硫黄系還元剤、例えば、亜硫酸塩及び亜硫酸水素塩等が挙げられる。
【0058】
着色防止剤又は耐尿性向上剤の使用量は、吸水性樹脂100重量部に対して0重量部以上3重量部以下が好ましく、0.001重量部以上1重量部以下がより好ましく、0.05重量部以上0.5重量部以下がさらに好ましい。
【0059】
添加剤に含まれる他の任意成分の量は、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体、水、多価アルコール及び他の任意成分との合計量を100重量%としたときに、0.001重量%以上5重量%以下であることが好ましく、0.005重量%以上2重量%以下であることがより好ましい。上述の好ましい範囲にあることにより、吸水性樹脂の吸水性能をほとんど損ねることなく、任意成分の効果を発揮することができる。
【0060】
(吸水性樹脂)
吸水性樹脂としては、例えば、ポリアクリル酸(塩)系架橋重合体、デンプン−アクリロニトリルグラフト重合体の加水分解物、デンプン−アクリル酸グラフト重合体、酢酸ビニル−アクリル酸エステル共重合体のケン化物、アクリロニトリル共重合体若しくはアクリルアミド共重合体の加水分解物又はこれらの架橋体、カルボキシル基含有架橋ポリビニルアルコール変性物及び架橋イソブチレン−無水マレイン酸共重合体等を挙げることができ、これらの1種を用いてもよく、2種以上を併用することもできる。これらの中では、最も汎用性の高いポリアクリル酸(塩)系架橋重合体であることが好ましい。
【0061】
吸水性樹脂の中和率は、30モル%以上90モル%以下であることが好ましく、40モル%以上80モル%以下であることがより好ましい。上述の好ましい範囲にあることにより、吸収性能に優れた吸水性樹脂となる。
【0062】
また、吸水性樹脂は、表面架橋された吸水性樹脂であってもよいし、表面架橋されていない吸水性樹脂であってもよく、加圧下の吸収性能を高めるという点から、表面架橋された吸水性樹脂であることが好ましい。さらに、吸水性樹脂の一般的な範囲として、CRCは20g/g以上50g/g以下、AAP2.06kPaは10g/g以上40g/g以下、重量平均粒子径は200μm以上600μm以下、吸水性樹脂中の150μm以下の量は10重量%以下であることが好ましい。
【0063】
(添加方法)
吸水性樹脂に添加液を添加する方法としては、例えば、(1)添加液と吸水性樹脂とを撹拌下で混合させる方法、(2)添加液に吸水性樹脂を浸漬させる方法、及び、(3)添加液を流動状態若しくは攪拌状態の吸水性樹脂に滴下若しくは散布する方法等が挙げられる。吸水性樹脂の表面近傍に均一に添加液を分布させることができるという観点から、上記(1)及び(3)の方法が好ましい。(1)で用いられる混合装置としては、吸水性樹脂と添加液とを均一に混合するために、大きな混合力を備えているものが好ましい。このような混合装置としては、例えば、円筒型混合機、二重壁円錐型混合機、高速攪拌型混合機、V字型混合機、リボン型混合機、スクリュー型混合機、双腕型ニーダー、粉砕型ニーダー、回転式混合機、気流型混合機、タービュライザー、バッチ式レディゲミキサー及び連続式レディゲミキサー等が好適に用いられる。
【0064】
また、添加液を添加する前の吸水性樹脂の温度は、室温(23℃)以上100℃以下が好ましく、30℃以上90℃以下が好ましく、40℃以上80℃以下がさらに好ましい。吸水性樹脂の温度が100℃以下である場合、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体が熱分解してしまうことを抑制できる。このことから、吸水性樹脂に添加液を添加した後に吸水性樹脂の温度が100℃をこえる工程を有さない製造方法が好ましい。一方吸水性樹脂の温度が室温以上である場合、添加液の拡散に多くの時間を要さないため、生産性が向上する。
【0065】
(添加液添加後の工程)
なお、本発明に係る吸水剤の製造方法は、添加液を添加後の吸水性樹脂を、乾燥したり加熱したりする乾燥工程等をさらに有してもよい。加熱することで、吸水性樹脂への添加液中の溶媒又は分散媒の浸透が促進されて、表面が乾燥して迅速に粒子状となりうる。加熱温度は30℃以上150℃以下が好ましく、40℃以上120℃以下が好ましく、50℃以上100℃以下がより好ましい。また、時間も1秒以上3時間以下が好ましく、1分以上1時間以下がより好ましい。
【0066】
また、本発明に係る吸水剤の製造方法は、加熱されることで粒子状となった吸水剤をさらに解砕、分級又は造粒する解砕工程を有していてもよい。
【0067】
(その他の添加剤添加工程)
本発明に係る吸水剤の製造方法は、表面架橋後の吸水性樹脂に種々の機能を与えるために、その他の添加剤を添加する工程を含んでもよい。添加剤としては、無機微粒子、消臭剤、金属石鹸、抗菌剤、着色防止剤、耐尿性向上剤、酸化剤、還元剤、界面活性剤、香料、発泡剤、顔料、染料及び肥料等の添加物を含有し、機能を付与したり高めたりするものであってもよい。
【0068】
添加剤の量は、特に断りがない限り、表面架橋後の吸水性樹脂100重量%に対して10重量%未満、好ましくは5重量%未満、より好ましくは1重量%未満である。また、これらの添加剤添加工程は、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を含有する添加液の添加工程と同時に、又は別工程で行ってもよい。
【実施例】
【0069】
(前駆体吸水性樹脂の準備)
1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体を含有する添加液を添加される吸水性樹脂(A)として、株式会社日本触媒社製のポリアクリル酸(部分中和塩)系架橋重合体である「アクアリックCA」を用いた。吸水性樹脂(A)のCRCは35g/g、AAP2.06kPaは32g/g、重量平均粒子径は370μmであった。
【0070】
[実施例1]
プロピレングリコール4.95g及び水4.05gを混合した溶媒に、1−ヒドロキシ−2−ピリドン誘導体としてピロクトンオラミン(クラリアント社製の「オクトピロックス」)1.0g(添加液中での濃度は10重量%)を50℃にて溶解させ、添加液を調製した。次に、吸水性樹脂(A)100重量部に対し、上記添加液を攪拌下で1重量部滴下し、吸水性樹脂(A)と添加液とを混合した。混合後、混合物を60℃で1時間乾燥させた。得られた乾燥物を目開き850μmのJIS標準篩を通過するまで解砕し、吸水剤を得た。
【0071】
次に、上記吸水剤の粉体流動性を評価した。粉体流動性の評価は、吸水剤の安息角指数、スパチュラ角指数、圧縮度指数、及び均一度指数(または、凝集度指数)を、ホソカワミクロン社製パウダーテスターPT−Xを用いて測定し、DR.Carrが提案する粉体流動性指数式(下記式A)から算出することで行った。
粉体流動性指数=安息角指数+スパチュラ角指数+圧縮度指数+(均一度指数または凝集度指数)・・・(式A)
測定は、室温(23℃)、湿度40%の雰囲気条件下で行った。なお、粉体流動性指数と粉体流動性の評価との関係は以下の通りである。
粉体流動性指数:粉体流動性の評価
80以上:粉体流動性は非常に良好
70〜79:粉体流動性は良好
60〜69:粉体流動性はやや不良
59以下:粉体流動性は不良。
【0072】
上記吸水剤の粉体流動性の評価を、表1に示した。
【0073】
[実施例2]
1,3−プロパンジオール4.68g及び水3.82gを混合した溶媒に、ピロクトンオラミン1.5g(添加液中での濃度は15重量%)を50℃で溶解させ、添加液を調製した。次に、製造例1で得た吸水性樹脂(A)100重量部に対し、上記添加液を攪拌下で1重量部添加し、吸水性樹脂(A)と添加液とを混合した。混合後、実施例1と同様に吸水剤を製造した。吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0074】
[実施例3]
実施例1において、プロピレングリコールの量を4.50g、水の量を4.50gに変更し、ピロクトンオラミンの溶解温度を60℃に変更した以外は同様の操作を行い、得られた吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0075】
[実施例4]
実施例1において、プロピレングリコールの量を3.60g、水の量を5.40gに変更し、ピロクトンオラミンの溶解温度を60℃に変更した以外は同様の操作を行い、得られた吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0076】
[実施例5]
実施例4において、多価アルコールを1,3−ブタンジオールに変更した以外は同様の操作を行い、得られた吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0077】
[実施例6]
実施例1において、プロピレングリコールの量を2.70g、水の量を6.30gに変更し、ピロクトンオラミンの溶解温度を80℃に変更した以外は同様の操作を行い、得られた吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0078】
[実施例7]
グリセリン2.85g及び水6.65gを混合した溶媒に、ピロクトンオラミン0.50g(添加液中での濃度は5重量%)を80℃で溶解させ、添加液を調製した。次に、製造例1で得た吸水性樹脂(A)100重量部に対し、上記添加液を攪拌下で1重量部添加し、吸水性樹脂(A)と添加液とを混合した。混合後、実施例1と同様に吸水剤を製造した。吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0079】
[実施例8]
実施例4において、添加液の添加量を、吸水性樹脂(A)100重量部に対し、2重量部に変更した以外は、同様の操作を行い、得られた吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0080】
[実施例9]
実施例5において、添加液の添加量を、吸水性樹脂(A)100重量部に対し、4重量部に変更した以外は、同様の操作を行い、得られた吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0081】
[実施例10]
実施例1において、得られた吸水剤に無機微粒子としてシリカ(株式会社トクヤマ製レオロシール)を、吸水剤100重量部に対し、0.4重量部添加し、混合した。得られたシリカ入り吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0082】
[実施例11]
実施例7において、得られた吸水剤に無機微粒子としてシリカを、吸水剤100重量部に対し、0.7重量部添加し、混合した。得られたシリカ入り吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0083】
[比較例1]
水9.00gに、ピロクトンオラミン1.0g(液中の濃度は10重量%)を混合したところ、80℃においても溶解せず、均一な分散液が調製できなかった。
【0084】
[比較例2]
1,3−プロパンジオール2.25g及び水6.75gを混合した溶媒に、ピロクトンオラミン1.0g(液中の濃度は10重量%)を混合したところ、80℃においても溶解せず、均一な分散液が調製できなかった。
【0085】
[比較例3]
プロピレングリコール5.40g及び水3.60gを混合した溶媒に、ピロクトンオラミン1.0g(添加液中での濃度は10重量%)を溶解させ、添加液を調製した。その他の条件は、実施例1と同様に吸水剤を製造した。それぞれの吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0086】
[比較例4]
多価アルコールをグリセリンに変更した以外は、比較例3と同様に吸水剤を製造した。得られた吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0087】
[比較例5]
1,3−ブタンジオール9.00gに、ピロクトンオラミン0.10g(添加液中での濃度は10重量%)を室温で溶解させ、添加液を調製した。その他の条件は、実施例1と同様に吸水剤を製造した。得られた吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
【0088】
[比較例6]
比較例3において、得られた吸水剤に無機微粒子としてシリカ(株式会社トクヤマ製レオロシール)を、吸水剤100重量部に対し、0.7重量部添加し、混合した。得られたシリカ入り吸水剤の粉体流動性を評価し、表1に示した。
(吸水剤の性能)
なお、実施例1から9および比較例1から6において、得られた吸水剤のCRCは34g/gから35g/g、AAP2.06kPaは29g/gから32g/g、重量平均粒子径は360μmから390μmであり、前駆体である吸水性樹脂(A)の性質はほぼ維持されていた。
【0089】
【表1】
【0090】
表1より、添加液の溶媒又は分散媒中における多価アルコールの濃度が、実施例の範囲(30重量%以上55重量%以下)ならば、得られる吸水剤は良好な粉体流動性を有することが示された。逆に、多価アルコールの濃度が上記範囲未満にある場合(比較例1、2)、ピロクトンオラミンの溶解が困難となり、一方、多価アルコールの濃度が上記範囲超にある場合(比較例3、4、5)、粉体流動性は低下する。
【産業上の利用可能性】
【0091】
本発明は、紙オムツ、生理用ナプキン及び失禁パット等の衛生材料の吸水剤の製造に適している。