(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860375
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ホイール固定用ボルトナット装着型アオリ保護具
(51)【国際特許分類】
B60B 3/16 20060101AFI20210405BHJP
B62D 33/027 20060101ALI20210405BHJP
F16B 37/14 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
B60B3/16 E
B62D33/027 Z
F16B37/14 C
【請求項の数】1
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2017-32240(P2017-32240)
(22)【出願日】2017年2月23日
(65)【公開番号】特開2018-135055(P2018-135055A)
(43)【公開日】2018年8月30日
【審査請求日】2020年2月5日
(73)【特許権者】
【識別番号】593176966
【氏名又は名称】株式会社パーマンコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100095647
【弁理士】
【氏名又は名称】濱田 俊明
(72)【発明者】
【氏名】山田 慎也
【審査官】
浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】
特開2012−154377(JP,A)
【文献】
特開2006−219015(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60B 3/16
B62D 33/027
F16B 37/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アオリを架装した車両のホイールを固定しているボルトナットに装着する前記アオリの保護具であって、一端面に前記ボルトナットの挿入口を形成した円筒状胴部の他端側にドーム状先端部を有した弾性変形する素材からなり、その内部と外気とを連通する貫通孔を設けたキャップ状本体を備え、該キャップ状本体の内部には、前記挿入口から前記ドーム状先端部に向かって大・中・小の三段の前記ボルトナットの挿入部が形成され、前記大の挿入部は前記ナットを軸方向に嵌め込む断面六角形のナット嵌合部とし、前記小の挿入部は前記ナットから突出する前記ボルトの先端部を軸方向に嵌め込む断面円形のボルト嵌合部とし、前記中の挿入部は前記ボルトの先端部の周囲に空洞を形成する中間空洞部として、前記アオリが前記ドーム状先端部に接触したとき前記ドーム状先端部が偏平方向に弾性変形すると共に、前記中間空洞部が前記ドーム状先端部の変形能を高めたことを特徴としたホイール固定用ボルトナット装着型アオリ保護具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、荷台の周囲にアオリを設けたトラックのアオリ当たりゴムに係り、詳しくは、荷の積み卸しの際に垂れ下げた左右の側アオリがホイールを固定しているボルトナットと接触して傷つくことを防止するために、ボルトナットに装着するキャップ状のアオリ保護具に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般貨物運搬用トラックのうち平ボディと称されるトラックは、
図5・6に示すように、シャーシ上の荷台Dの左右に蝶番を介して側アオリAと称される側板が上下に開閉可能に架装されており、この側アオリAを開いて垂れ下げた状態で荷の積み卸しを行う。なお、アオリには上述した左右の側アオリAの他、車両後方にも後アオリがあり、通常、側アオリAを垂れ下げた静止状態では、ホイールWを固定しているボルトナットBNとの間に隙間があり、側アオリAがボルトナットBNと直接接触することはない。また、セーコーラックと称されるアオリの開閉補助装置(図示せず)を装備するトラックであれば、アオリがゆっくり開くため、開く勢いで側アオリAがボルトナットBNと接触することもない。
【0003】
ただし、垂れ下がった状態の側アオリAは軽く手で押しただけで、さらに車体側に回転するため、荷を積み卸しするフォークリフトのフォークが接触したときはもちろん、風によっても車体側に回転し、ボルトナットBNと接触して傷がつくという問題があった(
図7参照)。なお、こうした接触の状態で、車両を移動させれば、側アオリAに環状の傷がつくことになる。
【0004】
これに対して特許文献1の側板保護具は、ゴム製又は弾性樹脂製の筒状体から構成され、これをホイール固定用ボルトナットの外側に装着することにより、アオリが接触しても傷がつかないとされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−219015号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の側板保護具は、筒状体が有する弾性によってアオリが接触した際の衝撃をある程度吸収すると推測できるが、実際にアオリが接触した状態について図示等の説明がなく、具体的に、どのようにして衝撃を吸収するのかは不明である。
【0007】
この点について、特許文献1の
図1や
図2には、保護具を構成する筒状体として円筒状のものが示されており、この形態の場合、円形の先端面にアオリが面接触して、保護具を軸方向に圧縮する力が作用することになるが、通常、円筒体を軸方向に圧縮変形させることは困難である。したがって、特許文献1の保護具では、十分な変形能を有さず、アオリがアルミニウム製であれば、保護具の先端面に応じた円形の窪みが生じるおそれがある。
【0008】
本発明は上述した課題を解決するためになされたもので、その目的とするところは、十分な変形能を有して、より確実にアオリを保護することができるホイール固定用ボルトナット装着型アオリ保護具を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上述した目的を達成するために本発明では、アオリを架装した車両のホイールを固定しているボルトナットに装着する前記アオリの保護具であって、一端面に前記ボルトナットの挿入口を形成した円筒状胴部の他端側にドーム状先端部を一体に有して、弾性変形する素材からなるキャップ状本体を備える。このキャップ状本体の内部は、前記挿入口から前記ドーム状先端部に向かって大・中・小の三段構成からなる前記ボルトナットの挿入部が形成されている。大の挿入部は、前記ナットを嵌め込む断面六角形のナット嵌合部である。また、小の挿入部は、前記ナットから突出する前記ボルトの先端部を嵌め込む断面円形のボルト嵌合部である。そして、中の挿入部は、前記ナット嵌合部と前記ボルト嵌合部との間に位置し、前記ナット嵌合部の仮想外接円よりも小径で、前記ボルト嵌合部よりも大径の断面円形をなし、前記ボルトの先端部の周囲に空洞を形成する中間空洞部である。
【0010】
この手段によれば、本発明の保護具をホイールを固定している任意のボルトナットに装着することで、アオリが接触すれば、キャップ状本体のドーム状先端部がひしゃげるように弾性変形して衝撃を吸収する。その際、中間空洞部が存在することにより、ドーム状先端部の弾性変形能が高まる。
【0011】
より好ましくは、ボルト嵌合部は、ナットから突出するボルトの先端部よりも長い深さを有して、装着時に前記ボルト先端部との間に空間が形成される。この空間もドーム状先端部の弾性変形能の向上に寄与するからである。また、ホイールがスチール製であるかアルミ製であるかによって、ナットから突出するボルトの先端部の長さ(出幅)が異なるが、より大きい出幅に合わせた深さのボルト嵌合部とすることによって、スチール製とアルミ製の何れのホイールであっても、そのボルトナットに対応して装着することができる。
【0012】
さらに好ましくは、キャップ状本体に、その内部と外気とを連通する貫通孔を設ける。本発明の保護具をボルトナットに装着する際、キャップ状本体の内部空気が排気されて、スムーズに装着することができるからである。なお、ここで内部とは、ナット嵌合部、ボルト嵌合部、または中間空洞部の何れかである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、本体の先端部をドーム状とすると共に、内部のナット嵌合部とボルト嵌合部の間に中間空洞部を形成したことにより、ドーム状先端部が十分な変形能を有して、アオリとの接触による衝撃の吸収力が高く、より確実にアオリに傷が入ることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の一実施形態に係るホイール固定用ボルトナット装着型アオリ保護具の(a)断面図、(b)底面図
【
図2】同、保護具をボルトナットに装着する前の状態説明図
【
図3】同、保護具をボルトナットに装着後の状態説明図
【
図4】同、保護具の衝撃吸収の変形状態を示す概略図
【
図7】同、側アオリがホイール固定用ボルトナットに接触した状態を示す説明図
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好ましい実施の形態を添付した図面に従って説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るホイール固定用ボルトナット装着型アオリ保護具の(a)断面図、(b)底面図であり、図中、1はキャップ状本体、2はキャップ状本体1の内部に設けたナット嵌合部、3はボルト嵌合部、4は中間空洞部である。
【0016】
キャップ状本体1は、一端面に挿入口1aを形成した円筒状胴部1bの他端側にドーム状先端部1cを一体に有し、シリコンやゴム、または柔軟な樹脂などの弾性変形する素材によって成型される。
【0017】
ナット嵌合部2は、断面六角形とし、
図2・3に示すように、ホイール固定用のボルトナットのナットNが軸方向に沿って完全に嵌り込む深さを有する。
【0018】
ボルト嵌合部3は、ナット嵌合部2と連続して設けられ、
図2・3に示したように、ナットNから突出するボルトの先端部Bが軸方向に沿って嵌り込む断面円形状をなしている。本実施形態では、ボルト嵌合部3はボルトの先端部Bの長さよりも深いものとして、本保護具をボルトナットに装着したとき、ボルトの先端部Bの先方に空間Sが形成されるものとしている。
【0019】
中間空洞部4は、ナット嵌合部2とボルト嵌合部3との間に形成される断面円形の空洞であって、その直径は、ナット嵌合部2の仮想外接円Cの直径よりも小さく、ボルト嵌合部3の直径よりも大きく設定している。
【0020】
こうした構造によって、キャップ状本体1の内部は三段構成からなるボルトナットの挿入部が構成されている。また、キャップ状本体1には、ボルト嵌合部3の中心からドーム状先端部1cの頂部に向けて真っ直ぐに貫通孔5を形成しており、キャップ状本体1の内部と外気とを連通している。この貫通孔5によってキャップ状本体1の内部空気の排気が可能となり、本保護具をスムーズにボルトナットに装着することができる。
【0021】
図4は、ボルトナットに装着した本保護具に側アオリAが接触したときの状態を示している。同図に示すように、本保護具に側アオリAが接触すると、ドーム状先端部1cが側アオリAと点接触して、アオリAがボルトナットと直接接触することを防止すると共に、この状態で、アオリAに車体側(図面上、左側に向かう矢印方向)に向かう力が作用すれば、ドーム状先端部1cは偏平方向にひしゃげる。このようなドーム状先端部1cの弾性変形によって、アオリAとの接触による衝撃を吸収し、もってアオリAに傷がつくことを防止する。
【0022】
特に、本発明では、中間空洞部4の存在により、ここが中実である場合と比較して、ドーム状先端部1cの変形能が高まる。したがって、より高いクッション性を有して、本保護具そのものによるアオリAに損傷も防止することができる。
【0023】
さらに、本実施形態では、ボルト嵌合部3にボルト先端部Bとの空間Sを形成しており、この空間Sがボルト先端部Bで埋まるまでドーム状先端部1cの弾性変形が許容されるため、よりドーム状先端部1cの変形能が高い構成である。その際、空間Sの空気は貫通孔5から排気されるから、この空気によってドーム状先端部1cの弾性変形が阻害されることもない。
【0024】
なお、本保護具の装着対象は、ホイールを固定している全部のボルトナットに装着するのが最も確実だが、1または数本のボルトナットに装着してもよい。その場合、どのボルトナットに装着するかは、側アオリの大きさ、ボルトナットの突出量に応じて選択する。また、本保護具は荷役時に側アオリを降ろすときに使用するものであるから、走行中は取り外しておくことができる。ただし、本保護具を着脱することは手間であるから、走行中に不用意に外れないような装着力(ナット嵌合部やボルト嵌合部の嵌合力)を有することが好ましい。
【符号の説明】
【0025】
1 キャップ状本体
1a 挿入口
1b 円筒状胴部
1c ドーム状先端部
2 ナット嵌合部
3 ボルト嵌合部
4 中間空洞部
5 貫通孔