特許第6860386号(P6860386)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許6860386-セメント用添加剤 図000007
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860386
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】セメント用添加剤
(51)【国際特許分類】
   C04B 24/26 20060101AFI20210405BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20210405BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C04B24/26 A
   C04B28/02
   C08F290/06
【請求項の数】4
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2017-47336(P2017-47336)
(22)【出願日】2017年3月13日
(65)【公開番号】特開2017-178775(P2017-178775A)
(43)【公開日】2017年10月5日
【審査請求日】2019年12月5日
(31)【優先権主張番号】特願2016-61944(P2016-61944)
(32)【優先日】2016年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004628
【氏名又は名称】株式会社日本触媒
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】川上 宏克
(72)【発明者】
【氏名】森本 正和
【審査官】 内藤 康彰
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−091580(JP,A)
【文献】 特開2012−166978(JP,A)
【文献】 特開2011−207633(JP,A)
【文献】 特開2001−220417(JP,A)
【文献】 特開平09−086990(JP,A)
【文献】 特開平07−053249(JP,A)
【文献】 特開2011−207752(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C04B 2/00−32/02
C04B 40/00−40/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉱化剤及び/又は融剤由来成分を含むセメントに用いられる添加剤であって、
該添加剤は、モノカルボン酸系不飽和単量体(A)由来の構造単位(a)と下記式(1);
【化1】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。(AO)は、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。yは、0であり、zはである。)で表される単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する重合体を含むことを特徴とする鉱化剤及び/又は融剤由来成分含有セメント用添加剤。
【請求項2】
前記重合体は、構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して1〜99質量%であることを特徴とする請求項1に記載の鉱化剤及び/又は融剤由来成分含有セメント用添加剤。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の鉱化剤及び/又は融剤由来成分含有セメント用添加剤と、鉱化剤及び/又は融剤由来成分含有セメントとを含むことを特徴とするセメント組成物。
【請求項4】
請求項3に記載のセメント組成物と骨材とを含むことを特徴とするモルタル又はコンクリート組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、セメント用添加剤に関する。より詳しくは、鉱化剤及び/又は融剤由来成分を含むセメントに好適に用いられるセメント用添加剤に関する。
【背景技術】
【0002】
セメントは、従来、原料を高温で焼成して製造されるが、現在、省エネ・低炭素化の社会的要請が高まっており、焼成工程における省エネルギー技術として、セメント原料への鉱化剤・融剤添加により焼成温度を低下させることが知られている。一方、鉱化剤・融剤を添加して焼成されたセメントを用いたセメントペーストは、鉱化剤・融剤由来成分の影響を受け、流動性が低下することも知られている。この問題に対して、ポリオキシエチレンモノアリルモノメチルエーテル(α−アリル−ω−メトキシポリオキシエチレン)、無水マレイン酸及びスチレンを共重合させた重合体を、鉱化剤・融剤を添加して焼成されたセメントに添加剤として用いることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0003】
【非特許文献1】松澤 一輝(K MATSUZAWA)他3名「セメント サイエンス アンド コンクリート テクノロジー(CementScience and Concrete Technology)」、(日本)、2015年、第68巻、p68−74
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述のとおり、非特許文献1には、鉱化剤を用いて低温焼成して得られたセメントに使用される添加剤が開示されているが、セメント分散性能が充分でなく、改善の余地があった。
【0005】
本発明は、上記現状に鑑みてなされたものであり、鉱化剤及び/又は融剤を添加して焼成されたセメントに対して、優れたセメント分散性能を発揮するセメント用添加剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明者らは、セメント用添加剤について種々検討したところ、特定の構造単位を有する重合体を、添加剤として鉱化剤及び/又は融剤由来成分を含むセメントに用いると、セメント分散性が向上することを見いだし、上記課題をみごとに解決することができることに想到し、本発明に到達したものである。
【0007】
すなわち本発明は、鉱化剤及び/又は融剤由来成分を含むセメントに用いられる添加剤であって、上記添加剤は、モノカルボン酸系不飽和単量体(A)由来の構造単位(a)と下記式(1);
【0008】
【化1】
【0009】
(式中、R、R及びRは、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基を表す。Rは、水素原子、又は、炭素数1〜30の炭化水素基を表す。(AO)は、同一又は異なって、オキシアルキレン基を表す。nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜300の数である。yは、0〜2の数を表す。zは、0又は1を表す。)で表される単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する重合体を含む鉱化剤及び/又は融剤由来成分含有セメント用添加剤である。
以下に本発明を詳述する。
なお、以下において記載する本発明の個々の好ましい形態を2つ以上組み合わせたものもまた、本発明の好ましい形態である。
【0010】
本発明の鉱化剤及び/又は融剤由来成分含有セメント用添加剤(以下、単に本発明の添加剤ともいう。)は、モノカルボン酸系不飽和単量体(A)由来の構造単位(a)と上記式(1)で表される単量体(B)由来の構造単位(b)とを有する重合体を含むことを特徴とする。
本発明の添加剤は、このような重合体を含むことにより、鉱化剤及び/又は融剤由来成分を含むセメントに使用された場合に、優れたセメント分散性能を発揮する。
ジカルボン酸系単量体を用いる場合よりも、モノカルボン酸系不飽和単量体を重合反応に用いた場合、単量体(B)との重合率を向上させることができる利点があり、添加剤中の重合体量を向上させることができる。
ここで、鉱化剤及び/又は融剤由来成分を含むセメントとは、セメント原料に鉱化剤及び/又は融剤を添加して焼成されたセメントである。そして原料に添加された鉱化剤及び/又は融剤は、焼成工程等において、酸化等の反応等により鉱化剤及び/又は融剤に含まれる化合物等の構成元素の一部が他の元素に置換される等、鉱化剤及び/又は融剤の形態が変化する場合があり、上記鉱化剤及び/又は融剤由来成分とは、セメント原料に添加されたときの鉱化剤及び/又は融剤に含まれる化合物又はイオンの状態のものと、焼成工程等を経ることにより鉱化剤及び/又は融剤の形態が変化したものとを含む成分を意味する。
【0011】
上記鉱化剤は、セメント製造においてエーライトの安定限界をより低温とし、液相内でのエーライトの反応速度を高め、生成反応を促進するものであれば特に制限されないが、具体的には、例えば、LiF、KF、NaF、KCl、NaCl、KBr、NaBr、KI、NaI等のアルカリ金属のハロゲン化物;CaF、BaF、MgF、CaCl、CaBr、CaI等のアルカリ土類金属のハロゲン化物;NHF、NHCl、NHBr、NHI等のハロゲン化物のアンモニウム塩;NaSiF、MgSiF等のヘキサフルオロケイ酸塩等が挙げられる。これらの中でも、KF、CaF、NaF、BaF、MgF、NaSiF、MgSiF等のフッ素化合物が好ましい。より好ましくはKF、CaF、であり、更に好ましくはKFである。
上記鉱化剤の形態が変化したものとしては、鉱化剤由来の成分を含むものであれば特に制限されない。
【0012】
上記融剤は、結晶化を促進するために必要な液相をより低温から生じさせる、又は、液相量をより多く生成させるものであれば特に制限されないが、具体的には、例えば、CaSO、MgSO等のアルカリ土類金属の硫酸塩;NaO、KO、LiO、CaO、MgO、Fe、Al、TiO、ZnO、CuO、NiO等の金属酸化物;SiO等が挙げられる。
上記融剤として好ましくはCaO、MgO等のアルカリ土類金属の酸化物;遷移金属の酸化物;Fe、Al;アルカリ土類金属の硫酸塩、であり、より好ましくはCaSO、MgSOである。
上記融剤の形態が変化したものとしては、融剤由来の成分を含むものであれば特に制限されない。
【0013】
本発明の添加剤が使用されるセメントに含まれる鉱化剤及び融剤由来成分の合計の割合は、特に制限されないが、セメント重量100質量%に対して、0.01〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.2〜5質量%である。
【0014】
上記重合体の原料であるモノカルボン酸系不飽和単量体(A)は、不飽和炭化水素基と、カルボキシル基を1つ有するものであれば特に限定されないが、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸等の炭素数3〜6の不飽和モノカルボン酸又はこれらの塩;フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、シトラコン酸等の炭素数4〜6の不飽和ジカルボン酸と後述する炭素数1〜30のアルコールとのハーフエステル、炭素数1〜30のアミンとのハーフアミド等が挙げられる。
【0015】
上記塩としては、金属塩、アンモニウム塩、有機アミン塩等であることが好ましい。金属塩を形成する金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属原子等の1価の金属原子;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属原子等の2価の金属原子;アルミニウム、鉄等の3価の金属原子が好適であり、また、有機アミン塩としては、エタノールアミン塩、ジエタノールアミン塩、トリエタノールアミン塩等のアルカノールアミン塩や、トリエチルアミン塩が好適である。
上記塩としては、アルカリ金属塩が好ましく、より好ましくは、ナトリウム塩である。
【0016】
上記炭素数1〜30のアルコールとしては、例えば、メタノール、エタノール、1−プロパノール、2−プロパノール、1−ブタノール、2−ブタノール、1−ペンタノール、2−ペンタノール、3−ペンタノール、1−ヘキサノール、2−ヘキサノール、3−ヘキサノール、オクタノール、2−エチル−1−ヘキサノール、ノニルアルコール、ラウリルアルコール、セチルアルコール、ステアリルアルコール等の脂肪族アルコール類;シクロヘキサノール等の脂環族アルコール類;(メタ)アリルアルコール、3−ブテン−1−オール、3−メチル−3−ブテン−1−オール等の不飽和アルコール類等が挙げられる。
上記炭素数1〜30のアミンとしては、メチルアミン、ジメチルアミン、エチルアミン、ジエチルアミン、プロピルアミン、ジプロピルアミン、ブチルアミン、ジブチルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン等の脂肪族アミン類を挙げることができる。
【0017】
上記モノカルボン酸系不飽和単量体(A)として好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸である。
【0018】
上記単量体(B)は、上記式(1)におけるR、R及びRが、同一又は異なって、水素原子、又は、メチル基である。好ましくはR、Rが水素原子であって、Rが水素原子、又は、メチル基である。
上記式(1)におけるRは、水素原子、又は、炭素数1〜30の炭化水素基である。炭素数1〜30の炭化水素基としては、炭素数1〜30の脂肪族アルキル基、炭素数3〜30の脂環式アルキル基、炭素数2〜30のアルケニル基、炭素数2〜30のアルキニル基、炭素数6〜30のフェニル基、アルキルフェニルキ基、フェニルアルキル基、(アルキル)フェニル基で置換されたフェニル基、ナフチル基等のベンゼン環を有する芳香族基等が挙げられる。上記炭素数1〜30の炭化水素基としては、炭素数1〜22が好ましく、1〜18がより好ましく、1〜12が更に好ましく、1〜4が特に好ましい。また、Rが水素原子の場合が最も好ましい。具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基等が挙げられる。
【0019】
上記式(1)中、AOは、「同一又は異なって、」オキシアルキレン基を表すが、これは、ポリアルキレングリコール中にn個存在するAOのオキシアルキレン基が全て同一であってもよく、異なっていてもよいことを意味する。
上記式(1)中、AOで表されるオキシアルキレン基は、アルキレンオキシド付加物であり、このようなアルキレンオキシドとしては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、1−ブテンオキシド、2−ブテンオキシド、スチレンオキシド等の炭素数2〜8のアルキレンオキシドが挙げられる。より好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド等の炭素数2〜4のアルキレンオキシドであり、更に好ましくは、エチレンオキシド、プロピレンオキシドである。
また、上記ポリアルキレングリコールが、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、スチレンオキシド等の中から選ばれる任意の2種類以上のアルキレンオキシド付加物である場合、ランダム付加、ブロック付加、交互付加等のいずれの形態であってもよい。尚、親水性と疎水性とのバランス確保のため、ポリアルキレングリコール中のオキシアルキレン基として、オキシエチレン基を必須成分として有することが好ましく、50モル%以上がオキシエチレン基であることがより好ましく、90モル%以上がオキシエチレン基であることが更に好ましい。
【0020】
上記式(1)中、nは、オキシアルキレン基の平均付加モル数を表し、1〜300である。好ましくは2以上であり、より好ましくは5以上であり、更に好ましくは10以上であり、特に好ましくは15以上であり、最も好ましくは20以上であり、また、250以下であることが好ましい。また、好適範囲としては、2〜300であり、より好ましくは5〜300、更に好ましくは10〜250、特に好ましくは15〜250、一層好ましくは20〜200である。
上記式(1)中、yは、0〜2の数を表し、zは、0又は1を表すが、zが0の場合には、yは1又は2であることが好ましい。この場合、Rはメチル基であることがより好ましく、Rは水素原子であることが好ましい。
上記zが1の場合には、yは0であることが好ましい。この場合、Rは水素原子、又は、メチル基であることがより好ましい。
【0021】
上記単量体(B)としては、エチレングリコール(メタ)アクリレート、ジエチレングリコール(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;エチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールメトキシ(メタ)アクリレート等のアルキレングリコールの付加モル数1〜300のアルコキシ(ポリ)アルキレングリコール(メタ)アクリレート;ビニルアルコール、アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オール、3−メチル−2−ブテン−1−オール、2−メチル−3−ブテン−1−オール、2−メチル−2−ブテン−1−オール等の炭素数2〜8の不飽和アルコールにアルキレンオキサイドを1〜300モル付加させた化合物及びこれらの末端疎水変性物等;が挙げられる。これらの中でも、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート;アリルアルコール、メタリルアルコール、3−メチル−3−ブテン−1−オールにアルキレンオキサイドを付加させたものが好適である。
【0022】
本発明の添加剤に含まれる重合体は、単量体(A)及び(B)以外のその他の単量体(E)由来の構造単位(e)を有していてもよい。単量体(E)は、単量体(A)又は(B)と共重合することができる限り特に制限されないが、以下の単量体を挙げることができる。
ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート等のヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート類;メチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのエステル類;(無水)マレイン酸、フマル酸、イタコン酸等の不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアルコールとのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのジアミド類;上記アルコールやアミンに炭素原子数2〜18のアルキレンオキシドを1〜500モル付加させたアルキル(ポリ)アルキレングリコールと上記不飽和ジカルボン酸類とのジエステル類;上記不飽和ジカルボン酸類と炭素原子数2〜18のグリコール又はこれらのグリコールの付加モル数2〜500のポリアルキレングリコールとジエステル類;(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート等の(ポリ)アルキレングリコールジ(メタ)アクリレート類;ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類。ポリエチレングリコールジマレート等の(ポリ)アルキレングリコールジマレート類;ビニルスルホネート、(メタ)アリルスルホネート、2−メチルプロパンスルホン酸(メタ)アクリルアミド、スチレンスルホン酸等の不飽和スルホン酸(塩)類;メチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和モノカルボン酸類と炭素原子数1〜30のアミンとのアミド類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等のビニル芳香族類;1,4−ブタンジオールモノ(メタ)アクリレート等のアルカンジオールモノ(メタ)アクリレート類;ブタジエン、イソプレン等のジエン類;(メタ)アクリル(アルキル)アミド、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド等の不飽和アミド類;(メタ)アクリロニトリル等の不飽和シアン類;酢酸ビニル等の不飽和エステル類;(メタ)アクリル酸アミノエチル、(メタ)アクリル酸ジメチルアミノエチル、ビニルピリジン等の不飽和アミン類;ジビニルベンゼン等のジビニル芳香族類;(メタ)アリルアルコール、グリシジル(メタ)アリルエーテル等のアリル類;(メトキシ)ポリエチレングリコールモノビニルエーテル、(メトキシ)ポリエチレングリコールモノ(メタ)アリルエーテル等のビニルエーテルあるいは(メタ)アリルエーテル類。
【0023】
本発明の添加剤に含まれる重合体は、構造単位(a)の割合が全構造単位100質量%に対して1〜99質量%であることが好ましい。構造単位(a)の割合が上記好ましい範囲であれば、セメント分散性能がより向上する。
上記構造単位(a)の割合としてより好ましくは全構造単位100質量%に対して1〜50質量%であり、更に好ましくは2〜45質量%であり、特に好ましくは3〜40質量%である。
なお、構造単位(a)のカルボキシル基が塩型である場合、その質量は、対応する酸型の構造単位として質量を計算するものとする。例えば(メタ)アクリル酸ナトリウム由来の構造であれば、(メタ)アクリル酸由来の構造として質量割合を計算する。後述するその他の単量体も同様に単量体が塩型である場合には、酸型の単量体として質量を計算する。
【0024】
本発明の添加剤に含まれる重合体は、構造単位(b)の割合が全構造単位100質量%に対して1〜99質量%であることが好ましい。上記構造単位(b)の割合としてより好ましくは全構造単位100質量%に対して50〜99質量%であり、更に好ましくは55〜98質量%であり、特に好ましくは60〜97質量%である。
【0025】
本発明の添加剤に含まれる重合体は、構造単位(e)の割合が全構造単位100質量%に対して0〜70質量%であることが好ましい。上記構造単位(e)の割合としてより好ましくは全構造単位100質量%に対して0〜49質量%であり、更に好ましくは0〜40質量%であり、特に好ましくは0〜30質量%である。
【0026】
本発明の添加剤に含まれる重合体は、重量平均分子量が4000〜200000であることが好ましく、より好ましくは8000〜100000である。重量平均分子量が上記好ましい範囲であれば、鉱化剤及び/又は融剤に由来する成分の含有量が多いセメントに使用した場合にも、分散性の低下をより充分に抑制することができ、少量の添加量で充分な分散性能を発揮することができる。更に好ましくは10000〜80000であり、一層好ましくは12000〜80000であり、特に好ましくは15000〜80000であり、最も好ましくは15000〜50000である。
上記重合体の重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、後述する実施例に記載の条件で測定することができる。
【0027】
<重合体の製造方法>
本発明の添加剤に含まれる重合体の製造は特に制限されないが、単量体成分を重合することにより製造することができ、単量体成分の具体例及び好ましい例は、上述のとおりである。また、単量体成分100質量%に対する単量体(A)、(B)及び(E)の含有割合は、上述の全構造単位100質量%に対する構造単位(a)、(b)及び(e)の割合と同様である。
【0028】
得られる重合体の分子量調整のために、連鎖移動剤を使用することができる。連鎖移動剤としては、例えば、メルカプトエタノール、チオグリセロール、チオグリコール酸、3−メルカプトプロピオン酸、チオリンゴ酸、2−メルカプトエタンスルホン酸等のチオール系連鎖移動剤;イソプロピルアルコール等の2級アルコール;亜リン酸、次亜リン酸及びその塩(次亜リン酸ナトリウム、次亜リン酸カリウム等)、亜硫酸、亜硫酸水素、亜二チオン酸、メタ重亜硫酸及びその塩(亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、亜二チオン酸ナトリウム、メタ重亜硫酸ナトリウム等)の低級酸化物及びその塩等の親水性連鎖移動剤が挙げられる。
【0029】
上記連鎖移動剤としてはまた、疎水性連鎖移動剤を使用することもできる。疎水性連鎖移動剤としては、例えば、ブタンチオール、オクタンチオール、デカンチオール、ドデカンチオール、ヘキサデカンチオール、オクタデカンチオール、シクロヘキシルメルカプタン、チオフェノール、チオグリコール酸オクチル、3−メルカプトプロピオン酸オクチル等の炭素数3以上の炭化水素基を有するチオール系連鎖移動剤が好適に使用される。
また、共重合体の分子量調整のためには、単量体(E)として、(メタ)アリルスルホン酸(塩)類等の連鎖移動性の高い単量体を用いることも有効である。
【0030】
上記連鎖移動剤の使用量は、適宜設定すればよいが、単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.25モル以上、更に好ましくは0.5モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、より好ましくは15モル以下、更に好ましくは10モル以下である。
【0031】
上記重合反応は、必要に応じてラジカル重合開始剤を使用し、溶液重合や塊状重合等の方法により行うことができる。溶液重合は、回分式でも連続式でも又はそれらの組み合わせでも行うことができ、その際に使用される溶媒としては、例えば、水;メチルアルコール、エチルアルコール、イソプロピルアルコール等のアルコール;ベンゼン、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、n−ヘキサン等の芳香族又は脂肪族炭化水素;酢酸エチル等のエステル化合物;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン化合物;テトラヒドロフラン、ジオキサン等の環状エーテル化合物等が挙げられる。中でも、水溶液重合法によって重合することが好適である。
【0032】
上記水溶液重合を行う場合は、ラジカル重合開始剤として、水溶性の重合開始剤、例えば、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩;過酸化水素;2,2′−アゾビス−2−メチルプロピオンアミジン塩酸塩等のアゾアミジン化合物、2,2′−アゾビス−2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン塩酸塩等の環状アゾアミジン化合物、2−カルバモイルアゾイソブチロニトリル等のアゾニトリル化合物等の水溶性アゾ系開始剤等が使用され、この際、亜硫酸水素ナトリウム等のアルカリ金属亜硫酸塩、メタ二亜硫酸塩、次亜燐酸ナトリウム、モール塩等のFe(II)塩、ヒドロキシメタンスルフィン酸ナトリウム二水和物、ヒドロキシルアミン塩酸塩、チオ尿素、L−アスコルビン酸(塩)、エリソルビン酸(塩)等の促進剤を併用することもできる。中でも、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム等の過硫酸塩、過酸化水素とL−アスコルビン酸(塩)等の促進剤との組み合わせが好ましい。これらのラジカル重合開始剤や促進剤はそれぞれ単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
また、低級アルコール、芳香族若しくは脂肪族炭化水素、エステル化合物又はケトン化合物を溶媒とする溶液重合を行う場合、又は、塊状重合を行う場合には、ベンゾイルパーオキシド、ラウロイルパーオキシド、ナトリウムパーオキシド等のパーオキシド;t−ブチルハイドロパーオキシド、クメンハイドロパーオキシド等のハイドロパーオキシド;アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物等がラジカル重合開始剤として用いられる。この際アミン化合物等の促進剤を併用することもできる。更に、水−低級アルコール混合溶媒を用いる場合には、上記の種々のラジカル重合開始剤又はラジカル重合開始剤と促進剤の組み合わせの中から適宜選択して用いることができる。
【0033】
上記ラジカル重合開始剤の使用量は、単量体成分の総量100モルに対し、好ましくは0.001モル以上、より好ましくは0.01モル以上、更に好ましくは0.1モル以上、特に好ましくは0.2モル以上であり、また、好ましくは20モル以下、更により好ましくは10モル以下、特に好ましくは5モル以下、最も好ましくは3モル以下である。
【0034】
上記重合反応において、重合温度等の重合条件としては、用いられる重合方法、溶媒、重合開始剤、連鎖移動剤により適宜定められるが、重合温度としては、0℃以上であることが好ましく、また、150℃以下であることが好ましい。より好ましくは30℃以上であり、更に好ましくは50℃以上である。また、より好ましくは120℃以下であり、更に好ましくは100℃以下である。
【0035】
各単量体の反応容器への投入方法としては、全量を反応容器に初期に一括投入する方法、全量を反応容器に分割若しくは連続投入する方法、一部を反応容器に初期に投入し、残りを反応容器に分割若しくは連続投入する方法のいずれでもよい。好適な投入方法として、具体的には、単量体(A)と単量体(B)の全部とを反応容器に連続投入する方法、単量体(B)の一部又は全部を反応容器に初期に投入し、単量体(A)と単量体(B)の残りを反応容器に連続投入する方法、又は、単量体(B)の一部と単量体(A)の一部とを反応容器に初期に投入し、単量体(A)の残りと単量体(B)の残りとをそれぞれ反応容器に交互に数回に分けて分割投入又は連続投入する方法が挙げられる。更に、反応途中で各単量体の反応容器への投入速度を連続的又は段階的に変えることにより各単量体の単位時間当りの投入質量比を連続的又は段階的に変化させて、共重合体中の構成単位(a)と構成単位(b)との比率が異なる共重合体の混合物を重合反応中に合成するようにしてもよい。尚、ラジカル重合開始剤は反応容器に初めから仕込んでもよく、反応容器へ滴下してもよく、また目的に応じてこれらを組み合わせてもよい。
【0036】
本発明の添加剤は、本発明の添加剤とは異なる公知のセメント分散剤を含有することが可能であり、2種類以上の公知のセメント分散剤の併用も可能である。尚、公知のセメント分散剤を用いる場合、本発明の添加剤と公知のセメント分散剤との配合質量比は、使用する公知のセメント分散剤の種類、配合及び試験条件等の違いにより一義的には決められないが、それぞれ固形分換算での質量割合(質量%)として、1〜99/99〜1が好ましく、5〜95/95〜5がより好ましく、10〜90/90〜10がさらに好ましい。
上記併用する公知のセメント分散剤としては、例えば、ナフタレンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のポリアルキルアリールスルホン酸塩系;メラミンスルホン酸ホルムアルデヒド縮合物等のメラミンホルマリン樹脂スルホン酸塩系;アミノアリールスルホン酸−フェノール−ホルムアルデヒド縮合物等の芳香族アミノスルホン酸塩系;リグニンスルホン酸塩、変成リグニンスルホン酸塩等のリグニンスルホン酸塩系;ポリスチレンスルホン酸塩系等の分子中にスルホン酸基を有する各種スルホン酸系分散剤;特公昭59−18338号公報、特開平7−223852号公報に記載の如くポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリル酸エステル系単量体、(メタ)アクリル酸系単量体、及び、これらの単量体と共重合可能な単量体から得られる共重合体;特開平10−236858号公報、特開2001−220417号公報、特開2002−121055号公報、特開2002−121056号公報に記載の如く不飽和(ポリ)アルキレングリコールエーテル系単量体、マレイン酸系単量体又は(メタ)アクリル酸系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とカルボキシル基とを有する各種ポリカルボン酸系分散剤;特開2006−52381号公報に記載の如く(アルコキシ)ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、リン酸モノエステル系単量体、およびリン酸ジエステル系単量体から得られる共重合体等の分子中に(ポリ)オキシアルキレン基とリン酸基とを有する各種リン酸系分散剤等が挙げられる。
【0037】
<セメント組成物>
本発明はまた、鉱化剤及び/又は融剤由来成分含有セメント用添加剤と、鉱化剤及び/又は融剤由来成分含有セメントとを含むセメント組成物でもある。
上記鉱化剤及び融剤は上述のとおりである。
上記セメント組成物に含まれる鉱化剤及び融剤由来成分の合計の割合は、特に制限されないが、セメント重量100質量%に対して、0.01〜20質量%であることが好ましい。より好ましくは0.1〜10質量%であり、更に好ましくは0.2〜5質量%である。
【0038】
本発明のセメント組成物において使用されるセメントとしては、ポルトランドセメント(普通、早強、超早強、中庸熱、耐硫酸塩及びそれぞれの低アルカリ形)、各種混合セメント(高炉セメント、シリカセメント、フライアッシュセメント)、白色ポルトランドセメント、アルミナセメント、超速硬セメント(1クリンカー速硬性セメント、2クリンカー速硬性セメント、リン酸マグネシウムセメント)、グラウト用セメント、油井セメント、低発熱セメント(低発熱型高炉セメント、フライアッシュ混合低発熱型高炉セメント、ビーライト高含有セメント)、超高強度セメント、セメント系固化材、エコセメント(都市ごみ焼却灰、下水汚泥焼却灰の一種以上を原料として製造されたセメント)が好適であり、更に、高炉スラグ、フライアッシュ、シンダーアッシュ、クリンカーアッシュ、ハスクアッシュ、シリカヒューム、シリカ粉末、石灰石粉末等の微粉体や石膏を添加してもよい。
【0039】
上記セメント組成物における本発明の添加剤の配合割合は、特に制限されないが、セメント重量100質量%に対して0.01〜5.0%とすることが好ましい。この添加により、単位水量の低減、強度の増大、耐久性の向上等の各種の好ましい諸効果がもたらされる。上記配合割合が0.01%未満では性能的に不充分となるおそれがあり、逆に5.0%を超える多量を使用しても、その効果は実質上頭打ちとなり経済性の面からも不利となるおそれがある。より好ましくは0.02%以上であり、また、2.0%以下であり、更に好ましくは0.05%以上であり、また、1.0%以下であり、このような比率の量を添加すればよい。また、配合割合の好適範囲としては、より好ましくは0.02〜2.0%であり、更に好ましくは0.05〜1.0%である。
【0040】
本発明の添加剤を含むセメント組成物において、その1mあたりの単位水量、セメント使用量及び水/セメント比は、特に制限はなく、単位水量100〜185kg/m、使用セメント量250〜800kg/m、水/セメント比=10〜70重量%、好ましくは単位水量120〜175kg/m、使用セメント量270〜800kg/m、水/セメント比=20〜65%が推奨され、貧配合〜富配合まで幅広く使用可能であり、単位セメント量の多い高強度コンクリート、単位セメント量が300kg/m以下の貧配合コンクリートのいずれにも有効である。
【0041】
本発明のセメント添加剤と組み合わせて用いることができる他のセメント添加剤としては、更に、水溶性高分子物質、高分子エマルジョン、遅延剤、早強剤・促進剤、鉱油系消泡剤、油脂系消泡剤、脂肪酸系消泡剤、脂肪酸エステル系消泡剤、オキシアルキレン系消泡剤、アルコール系消泡剤、アミド系消泡剤、リン酸エステル系消泡剤、金属石鹸系消泡剤、シリコーン系消泡剤、AE剤、その他界面活性剤、防水剤、防錆剤、ひび割れ低減剤、膨張材等が挙げられ、これらは、特開2012−131997号公報に記載のものと同様のものを用いることができる。
【0042】
その他のセメント添加剤(材)として、例えば、セメント湿潤剤、増粘剤、分離低減剤、凝集剤、乾燥収縮低減剤、強度増進剤、セルフレベリング剤、着色剤、防カビ剤、等が挙げられる。
これら公知のセメント添加剤(材)は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0043】
本発明はまた、本発明のセメント組成物と骨材とを含むモルタル又はコンクリート組成物でもある。
上記骨材としては、砂利、砕石、水砕スラグ、再生骨材等以外に、珪石質、粘土質、ジルコン質、ハイアルミナ質、炭化珪素質、黒鉛質、クロム質、クロマグ質、マグネシア質等の耐火骨材が使用可能である。
【発明の効果】
【0044】
本発明の鉱化剤及び/又は融剤由来成分含有セメント用添加剤は、上述の構成よりなり、従来のセメント添加剤よりも鉱化剤及び/又は融剤由来成分の影響を受けず、優れたセメント分散性能を発揮するため、鉱化剤及び/又は融剤由来成分を含むセメント等に好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
図1】実施例1〜17及び参考例1〜6の添加剤添加量と0打フロー値との関係を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。なお、特に断りのない限り、「部」は「重量部」を、「%」は「質量%」を意味するものとする。
【0047】
<重量平均分子量の測定条件>
重合体の重量平均分子量の測定は、下記条件で、GPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて行った。
装置:Waters社製、Waters Alliance(2695)
解析ソフト:Waters社製、Empowerプロフェッショナル+GPCオプション
使用カラム:東ソー社製、TSK guard column SWXL+TSKgelG4000SWXL+G3000SWXL+G2000SWXL
検出器:示差屈折率計(RI)検出器(Waters社製、Waters 2414)
溶離液:水10999g及びアセトニトリル6001gの混合溶媒に酢酸ナトリウム三水和物115.6gを溶解し、更に酢酸でpH6.0に調整した溶液
較正曲線作成用標準物質:ポリエチレングリコール[ピークトップ分子量(Mp)300000、200000、107000、50000、27700、11840、6450、1470]
較正曲線:上記ポリエチレングリコールのMp値と溶出時間とを基礎にして3次式で作成流量:1.0mL/min
カラム温度:40℃
測定時間:45分
試料液注入量:100μL(試料濃度0.5質量%の溶離液調製溶液)
【0048】
<合成例1>
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水350部を仕込み、撹拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数25個)315.2部、メタクリル酸83.7部、水170.1部および30%水酸化ナトリウム水溶液6.5部を混合し、さらに連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸8.6部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調整した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸ナトリウム水溶液49.5部をそれぞれ3時間で滴下し、滴下終了後さらに10%過硫酸ナトリウム水溶液16.5部を1時間で滴下した。その後1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。そして、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して重量平均分子量(GPCによるポリエチレングリコール換算;以下、同様とする。)10,000の重合体水溶液からなる本発明のセメント用添加剤(1)を得た。
【0049】
<合成例2>
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水350部を仕込み、撹拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数25個)315.2部、メタクリル酸83.7部、水174.1部および30%水酸化ナトリウム水溶液6.5部を混合し、さらに連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸4.3部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調整した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸ナトリウム水溶液49.5部をそれぞれ3時間で滴下し、滴下終了後さらに10%過硫酸ナトリウム水溶液16.5部を1時間で滴下した。その後1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。そして、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して重量平均分子量(GPCによるポリエチレングリコール換算;以下、同様とする。)18,900の重合体水溶液からなる本発明のセメント用添加剤(2)を得た。
【0050】
<合成例3>
温度計、攪拌機、滴下ロート、窒素導入管および還流冷却器を備えたガラス製反応容器に水350部を仕込み、撹拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で80℃まで加熱した。次にメトキシポリエチレングリコールモノメタクリル酸エステル(エチレンオキシドの平均付加モル数25個)315.2部、メタクリル酸83.7部、水175.7部および30%水酸化ナトリウム水溶液6.5部を混合し、さらに連鎖移動剤としてメルカプトプロピオン酸3.3部を均一に混合することにより、単量体混合物水溶液を調整した。この単量体混合物水溶液及び10%過硫酸ナトリウム水溶液49.5部をそれぞれ3時間で滴下し、滴下終了後さらに10%過硫酸ナトリウム水溶液16.5部を1時間で滴下した。その後1時間引き続いて80℃に温度を維持し、重合反応を完結させた。そして、30%水酸化ナトリウム水溶液で中和して重量平均分子量(GPCによるポリエチレングリコール換算;以下、同様とする。)29,500の重合体水溶液からなる本発明のセメント用添加剤(3)を得た。
【0051】
<比較合成例1>
温度計、攪拌機、窒素導入管及び還流冷却器を備えたガラス製反応容器に、イオン交換水20g、アリルアルコールに平均35モルのエチレンオキシドを付加した不飽和ポリアルキレングリコールエーテル16g、マレイン酸1.2gを仕込み、撹拌下で反応容器内を窒素置換し、窒素雰囲気下で75℃まで昇温した。反応容器内を75℃に保った状態で、5%過硫酸アンモニウム水溶液3.2gを添加した。さらに反応容器内を75℃に保った状態で、4時間後に5%過硫酸アンモニウム水溶液3.2gを添加した。その後、4時間引き続いて75℃に温度を維持した後、重合反応を完結させた。冷却後、水酸化ナトリウム水溶液を加えて、pH=7、重量平均分子量が8,600の重合体水溶液からなる比較セメント用添加剤(1)を得た。
【0052】
<モルタル試験>
セメント用添加剤(1)〜(3)の基本性能を観るために、以下の通り、モルタル配合・調製を行い、それぞれ合成したセメント用添加剤を添加したモルタルのフロー値と空気量を測定した。モルタル試験は温度が20℃±1℃、相対湿度が60%±10%の環境下で行った。
【0053】
(モルタル配合)
モルタル配合はC/S/W=900/1350/270(g)とした。
但し、
C:普通ポルトランドセメント(太平洋セメント社製)
S:セメント強さ試験用標準砂(セメント協会製)
W:セメント用添加剤(1)〜(3)、消泡剤のイオン交換水溶液、5%フッ化カリウム水溶液及び純水
Wとして表1に示した添加量のセメント用添加剤(1)〜(3)を量り取り、消泡剤MA−404を有姿でセメント用添加剤の固形分に対して40質量%加え、イオン交換水を加えたのち、さらに必要量の5%フッ化カリウム水溶液を加え、所定量として、充分に均一溶解させた。
表1において各成分の添加量はセメント質量に対する各成分の固形分の質量%で表されている。
【0054】
(モルタル調製)
モルタルの調製は以下の手順で行った。
ホバート型モルタルミキサー(型番N−50;ホバート社製)にステンレス製ビーター(撹拌羽根)を取り付け、C、Wを投入し、1速で30秒間混練した。更に1速で混練しながら、Sを30秒かけて投入した。S投入終了後、2速で30秒間混練した後、ミキサーを停止し、15秒間モルタルの掻き落しを行い、その後、75秒間静置した。静置後、更に60秒間2速で混練を行い、モルタルを調製した。
【0055】
(0打フロー値の測定)
0打フロー値の測定は以下の手順で行った。
モルタルを混練容器からポリエチレン製1L容器に移し、スパチュラで20回撹拌した後、直ちにフロー測定板(SUS製30cm×30cm)に置かれたフローコーン(JIS−R−5201(1997年改正)に記載)(上端内系70mm、下端内系100mm、高さ60mm)に半量詰めて15回つき棒で突き、更にモルタルをフローコーンの摺り切りいっぱいまで詰めて15回つき棒で突き、最後に不足分を補い、フローコーンの表面をならした。その後、直ちにフローコーンを垂直に引き上げ、広がったモルタルの直径を2箇所(最も長い部分の直径(長径)及び前記長径に対して90度をなす部分の直径)測定し、その平均値を0打フロー値とした。結果を表1及び図1に示した。
なお、0打フロー値は数値が大きいほど、分散性能が優れていることを示している。
【0056】
(モルタル空気量の測定)
モルタル空気量の測定はJIS−A−1128(2005年改正)の方法により行った。モルタルを500mlのガラス製メスシリンダーに約200ml詰め径8mmの丸棒で突き、手で軽く振動させて粗い気泡を抜いた。更にモルタルを約200ml加えて同様に気泡抜いた後、モルタルの体積と質量を測り、各材料の密度から空気量を計算した。
【0057】
【表1】
【0058】
上記モルタル試験の参考例1〜6ではKFを添加せずに調製したモルタルを用い、実施例1〜17ではKFを添加して調製したモルタルを用いた。
表1及び図1より、実施例1〜17では、モルタルにKFを添加した場合にも、所定の添加量で良好なモルタル分散性能を示すことがわかる。
また、参考例1〜6のKFを添加せずに調製したモルタルでは、本発明のセメント添加剤は分子量が低いほど少量の添加剤添加量で良好なモルタル分散性能を示す。これに対して、セメントにKFを1質量%添加した場合、本発明の添加剤の分子量が高いほど少量の添加剤添加量で良好なモルタル分散性能を発揮することも明らかとなった。
【0059】
また、セメント用添加剤(2)、(3)及び比較セメント用添加剤(1)について、0打フロー値210mmを示すために必要なセメント用添加剤の添加量を求めた。試験に用いたモルタルの調製は、モルタルの配合をC/S/W=500/1350/225(g)とした以外は、上述のとおり行った。0打フロー値の測定及びモルタル空気量の測定は、上述のとおり行った。結果を表2に示した。セメント用添加剤の添加量が少ないほうが分散性に優れていることを示す。
【0060】
【表2】
【0061】
比較例1と比較して、実施例18、19のセメント用添加剤(2)、(3)は、KFを添加した場合にも、フロー値210mmを得るための添加量が少ないことが明らかとなった。
【0062】
KF未添加の場合のセメント用添加剤の添加量に対する、KF添加量0.3質量%、1.0質量%の場合のセメント用添加剤の添加量比率を表2の結果から求めた。結果を表3に示した。
【0063】
【表3】
【0064】
実施例18、19のセメント用添加剤(2)、(3)は、KF添加に伴うセメント用添加剤添加量の増加率が、比較例1よりも小さいことが明らかとなった。

図1