(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の各実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。なお、各実施形態に係る明細書及び図面の記載に関して、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重畳した説明を省略する。
【0011】
一実施形態に係る剥離システムについて、
図1〜
図5を参照して説明する。本実施形態に係る剥離システムは、シートPsの表面に接着された物品を、産業用ロボットによりシートから剥離するためのシステムである。以下、シートPsと、当該シートPsに接着された物品Pgと、を含む全体をパッケージPと称する。
【0012】
まず、パッケージPについて説明する。パッケージPは、複数の物品PgをシートPsの表面に接着することにより、ひとまとめにしたものである。複数の物品PgをパッケージPとしてまとめることにより、物品Pgの可搬性や管理の容易さを高められる。パッケージPとして、物品Pgの納入時(出荷時)の状態が想定される。
【0013】
図1は、パッケージPの一例を示す平面図である。
図1のパッケージPは、複数の物品Pgと、シートPsと、保護フィルムPpと、を備える。
【0014】
物品Pgは、剥離システムによる剥離の対象物であり、接着剤によりシートPsの表面に接着される。物品Pgは、例えば、樹脂、半導体、金属、ゴム、及びガラスなどにより形成された部品や製品などである。
図1の例では、6つの物品PgがシートPs上に等間隔で配置されているが、パッケージPに含まれる物品Pgの数及び配置は任意である。また、パッケージPには、複数種類の物品Pgが含まれてもよい。
【0015】
シートPsは、表面に物品Pgを接着されるシート状部材であり、PET(Polyethylene Terephthalate)などにより形成される。シートPsは、略矩形であり、少なくとも1つの切欠き部Pcを有する。
図1の例では、切欠き部Pcは、シートPsの角に設けられているが、辺上に設けられてもよい。
【0016】
保護フィルムPpは、物品Pgの表面を保護するフィルムであり、物品Pgの表面を覆うようにシートPs上に貼付される。
図1に示すように、保護フィルムPpは、切欠き部Pcからはみ出すように形成されるのが好ましい。これにより、保護フィルムPpは、切欠き部Pcからはみ出した部分を起点として容易に剥離可能となる。
【0017】
次に、本実施形態に係る剥離システムの概要について説明する。
図2は、剥離システムの一例を示す図である。
図2の剥離システムは、作業台1と、産業用ロボット2と、搬送装置3と、制御装置4と、を備える。
【0018】
作業台1は、物品PgをシートPsから剥離する際に、パッケージPが載置される台である。作業台1は、載置部11と、固定部12と、を備える。
【0019】
載置部11は、作業台1の本体部分である。パッケージPは、保護フィルムPpが剥離された状態で、シートPsの裏面が載置部11の表面に接するように、すなわち、物品PgがシートPsの上側に位置するように、載置部11上に載置される。産業用ロボット2は、載置部11上に載置された物品PgをシートPsから剥離する。
【0020】
固定部12は、載置部11上に載置されたパッケージPを固定する板状又は棒状の部材である。固定部12は、載置部11の周縁部に設けられ、載置部11上に載置されたシートPsの一端を、載置部11に対して押圧することにより固定する。すなわち、シートPsは、その一端を、載置部11及び固定部12により挟まれることにより固定される。
【0021】
固定部12は、例えば、載置部11に対して着脱可能に設けられる。この場合、パッケージPは、載置部11から固定部12が取り外された状態で、載置部11上の所定の位置に載置される。固定部12は、シートPsの一端が固定されるように、載置部11に対して取り付けられる。
【0022】
また、固定部12は、載置部11の上方で昇降可能に設けられてもよい。この場合、パッケージPは、載置部11から固定部12を上昇させた状態で、載置部11上の所定の位置に載置される。固定部12は、シートPsの一端が固定されるように、載置部11に対して降下される。
【0023】
産業用ロボット2は、載置部11上に載置された物品PgをシートPsから剥離するロボットであり、制御装置4により制御される。
図2の例では、産業用ロボット2は、垂直多関節ロボットであるが、これに限られない。産業用ロボット2として、後述する剥離処理(剥離方法)を実行可能な任意のロボット(水平多関節ロボットや直交ロボットなど)を利用できる。産業用ロボット2は、土台部21と、アーム部22と、保持部23と、を備える。
【0024】
土台部21は、アーム部22を支持する支持部材である。土台部21には、アームを水平方向(
図2の矢印A1の方向)に回転させるためのモータや、制御装置4からの指示を受け付け、アーム部22及び保持部23を制御するマイコンなどが内蔵される。
【0025】
アーム部22は、産業用ロボット2の可動部分であり、水平方向に回動可能なように、その基部を土台部21に支持される。アーム部22は、例えば、3つの関節及び6軸の自由度を有するが、アーム部22の構造はこれに限られない。アーム部22には、各関節を駆動するためのモータや、各関節の回転角度を検出するためのセンサなどが内蔵される。
【0026】
保持部23は、その先端に物体を保持する部材であり、アーム部22の先端に設けられる。保持部23は、真空チャックや電磁チャックなどのチャックであってもよいし、2つ以上の爪を有するハンドであってもよい。なお、アーム部22の先端には、保持部23と共に、アーム部22の先端方向を撮影する撮影装置(図示省略)が設けられる。産業用ロボット2は、撮影装置により撮影された画像を画像処理することにより、保持部23と物品Pgなどとの間の距離を把握できる。
【0027】
搬送装置3は、ベルトコンベアやローラーコンベアなどのコンベアである。搬送装置3は、その表面に、産業用ロボット2によりシートPsから剥離した物品Pgを載置され、載置された物品を所定の方向(
図2の矢印A2の方向)に搬送し、後工程(組み立て工程など)に送る。
【0028】
制御装置4は、産業用ロボット2を制御するコンピュータであり、インターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワークを介して、産業用ロボット2に接続される。具体的には、制御装置4は、産業用ロボット2に後述する剥離処理を実行させる。
図2の例では、制御装置4がPC(Personal Computer)である場合を想定しているが、制御装置4は、マイコン、サーバ、スマートフォン、タブレット端末、ノートPCなどであってもよい。
【0029】
図3は、制御装置4のハードウェア構成の一例を示す図である。
図3の制御装置4は、CPU(Central Processing Unit)401と、ROM(Read Only Memory)402と、RAM(Random Access Memory)403と、HDD(Hard Disk Drive)404と、入力装置405と、表示装置406と、を備える。また、制御装置4は、通信インタフェース407と、バス408と、を備える。
【0030】
CPU401は、プログラムを実行することにより、制御装置4の各構成を制御し、制御装置4の機能を実現する。すなわち、CPU401がプログラムを実行することにより、制御装置4は、産業用ロボット2に後述する剥離処理を実行させる。
【0031】
ROM402は、CPU401が実行するプログラム(BIOS(Basic Input Output System)など)や各種のデータを記憶する。
【0032】
RAM403は、CPU401に作業領域を提供する。
【0033】
HDD404は、CPU401が実行するプログラム(OS(Operating System)など)や各種のデータを記憶する。
【0034】
入力装置405は、ユーザの操作に応じた情報を制御装置4に入力する。入力装置405には、タッチパネル、キーボード、マウス、ハードウェアボタンなどが含まれる。
【0035】
表示装置406は、ユーザの操作に応じた画面を表示する。表示装置406は、液晶ディスプレイ、有機EL(Electro Luminescence)ディスプレイなどで有り得る。入力装置405及び表示装置406は、操作パネルとして一体に構成されてもよい。
【0036】
通信インタフェース407は、制御装置4をインターネットやLAN(Local Area Network)などのネットワークに接続し、ネットワーク上の外部装置(産業用ロボット2など)との通信を制御する。制御装置4は、通信インタフェース407を介して、外部装置と通信する。
【0037】
バス408は、CPU401、ROM402、RAM403、HDD404、入力装置405、表示装置406、及び通信インタフェース407を相互に接続する。
【0038】
次に、本実施形態に係る剥離システムが実行する剥離処理について説明する。
図4は、剥離処理の一例を示すフローチャートである。以下、固定部12が載置部11の上方で昇降可能に設けられている場合を例に説明する。
【0039】
まず、産業用ロボット2は、シートPsから保護フィルムPpを剥離する(ステップS101)。産業用ロボット2は、例えば、保護フィルムPpからはみ出したシートPsの部分を固定した状態で、シートPsからはみ出した保護フィルムPpの部分を保持部23により保持し、シートPsから引き離すことにより、保護フィルムPpを剥離できる。保護フィルムPpの剥離は、作業台1で行われてもよいし、他の作業台で行われてもよい。また、保護フィルムPpは、作業者により手作業で剥離されてもよいし、産業用ロボット2とは異なる産業用機械により剥離されてもよい。
【0040】
次に、産業用ロボット2は、固定部12を載置部11から上昇させた状態で、保護フィルムPpを剥離されたパッケージPを、載置部11上の所定の位置に載置する(ステップS102)。具体的には、産業用ロボット2は、固定部12を降下させた場合に、シートPsの一端が固定部12により固定される位置に、パッケージPを載置する。なお、パッケージPは、作業者の手作業で載置部11に載置されてもよいし、産業用ロボット2とは異なる産業用機械により載置部11に載置されてもよい。
【0041】
続いて、固定部12が、載置部11上に降下し、載置部11上に載置されたシートPsの一端を固定する(ステップS103)。この際、シートPsの他端は、作業台1に固定されない。固定部12は、産業用ロボット2により降下されてもよいし、作業者の手作業で降下されてもよい。また、作業台1が、制御装置4により制御可能な、固定部12を昇降させる機構を備えてもよい。この場合、パッケージPの載置及びシートPsの固定のための固定部12の昇降は、制御装置4により制御される。
【0042】
シートPsの一端が載置部11に固定されると、産業用ロボット2は、撮影装置により撮影された画像に基づいて、シートPsに接着された物品Pgの中から、剥離対象となる物品Pgを選択する(ステップS104)。後述する通り、産業用ロボット2は、物品Pgを固定部12とは反対方向に搬送することにより、物品PgをシートPsから剥離する。したがって、剥離対象の物品Pgは、その搬送中に他の物品Pgと衝突しないように選択されるのが好ましい。具体的には、産業用ロボット2は、剥離対象の物品Pgとして、固定部12から最も離れた物品Pgを選択するのが好ましい。
【0043】
産業用ロボット2は、物品Pgを選択すると、選択した物品Pgを保持部23により保持する(ステップS105)。
【0044】
ここで、
図5は、物品Pgの剥離過程を示す正面図である。
図5の例では、説明の便宜のため、物品Pgが1つだけ示されている。また、
図5の例では、保持部23がチャックである場合を想定している。保持部23がチャックである場合、
図5(A)に示すように、保持部23は、物品Pgの表面を吸着することにより、物品Pgを保持する。
【0045】
次に、
図5(B)に示すように、産業用ロボット2は、シートPsの一端(固定された側)と同じ側である、物品Pgの一端が他端より高くなるように、物品Pgを持ち上げる(ステップS106)。
図5の例では、シートPsの左側端部が固定されているため、産業用ロボット2は、物品Pgの左側端部が右側端部より高くなるように、物品Pgを持ち上げている。
【0046】
産業用ロボット2は、固定部12から物品Pgの一端までの距離L1が、固定部12から物品Pgの一端までのシートPsの長さL2より、常に短くなるように物品Pgを持ち上げるのが好ましい。これは、シートPsと物品Pgとの間の引張接着強さが保持部23の保持力より強い場合、距離L1が長さL2より長くなると、物品PgがシートPsに引っ張られ、保持部23が物品Pgを保持できなくなる(落とす)おそれがあるためである。言い換えると、産業用ロボット2は、距離L1が長さL2より常に短くなるように物品Pgを持ち上げることにより、物品PgがシートPsに引っ張られることを抑制し、物品Pgをより確実に保持できる。
【0047】
具体的には、産業用ロボット2は、物品Pgを固定部12の方向(シートPsの一端の方向)に移動させながら、物品Pgの一端側が高くなるように、物品Pgを持ち上げればよい。また、産業用ロボット2は、物品Pgを固定部12の方向(シートPsの一端の方向)に移動させた後、物品Pgの一端側が高くなるように、物品Pgを持ち上げてもよい。いずれの持ち上げ方法も、シートPsの他端が固定されていないことにより可能となる。
【0048】
物品Pgを持ち上げると、
図5(C)に示すように、産業用ロボット2は、物品Pgが傾いた状態のまま、物品Pgを、シートPsの他端の方向に(
図5(C)の矢印A3の方向)、作業台1の表面と平行に搬送する(ステップS107)。これにより、物品Pgの裏面に接着されたシートPsが、物品Pgの一端側(
図5(C)の左側)から順次剥離される。言い換えると、シートPsから、物品Pgがその一端側から順次剥離する。
【0049】
なお、産業用ロボット2は、物品Pgを上昇させながら、物品PgをシートPsの他端の方向に搬送してもよい。この場合、物品Pgは、シートPsに対して斜め上方向(
図5(C)の右上方向)に搬送される。以降、
図5(D)に示すように、産業用ロボット2は、物品Pgの裏面に接着されたシートPsが全て剥離するまで、すなわち、物品Pgの全体がシートPgから剥離するまで、物品Pgの搬送を継続する。
【0050】
物品PgがシートPsから剥離すると、産業用ロボット2は、シートPsから剥離した物品Pgを、搬送装置3上に搬送し、載置する(ステップS108)。搬送装置3上に載置された物品Pgは、搬送装置3により所定の方向に搬送される。
【0051】
以上説明した通り、本実施形態によれば、産業用ロボット2は、物品Pgを、一端側(シートPsの固定側)が高くなるように持ち上げた状態で、他端側(シートPsの非固定側)に搬送することにより、シートPsから剥離する。この剥離方法によれば、保持部23の保持力が、物品PgとシートPsとの間の剥離接着強さより強い場合、保持部23は、物品Pgを保持したまま搬送できるため、物品PgをシートPsから剥離できる。
【0052】
これに対して、物品Pgを持ち上げることによりシートPsから剥離する従来の剥離方法では、保持部23の保持力が、物品PgとシートPsとの間の引張接着強さより強い場合、保持部23は、物品PgをシートPsから剥離できる。
【0053】
また、物品PgをシートPsと平行な方向に押圧してから持ち上げることによりシートPsから剥離する従来の剥離方法では、保持部23の保持力が、物品PgとシートPsとの間のせん断接着強さより強い場合、保持部23は、物品PgをシートPsから剥離できる。
【0054】
一般に、パッケージPでは、物品PgをシートPsから剥離しやすいように、物品Pg及びシートPsは、剥離接着強さが、引張接着強さやせん断接着強さより弱くなるように接着される。したがって、本実施形態に係る剥離方法によれば、従来の剥離方法に比べて、物品PgをシートPsから剥離するために要求される保持部23の保持力を弱くできる。言い換えると、保持部23の保持力が弱い場合であっても、物品PgをシートPsから剥離できる。結果として、産業用ロボット2により、シートPsに接着された物品Pgをより確実に剥離できる。
【0055】
なお、以上の実施形態では、産業用ロボット2が制御装置4により制御される場合を例に説明したが、剥離処理を実現するプログラムが産業用ロボット2に組み込まれている場合には、産業用ロボット2は、制御装置4により制御されなくてもよい。この場合、剥離システムには、制御装置4が含まれなくてもよい。
【0056】
また、上記実施形態に挙げた構成等にその他の要素との組み合わせなど、ここで示した構成に本発明が限定されるものではない。これらの点に関しては、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で変更可能であり、その応用形態に応じて適切に定めることができる。