(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来の排水栓装置では、電動操作時に電動部の故障が発生した場合、浴槽のエプロン部分を取り外し、さらに操作部の下方に配置されている駆動部も取り外して故障原因を探らなければならず、その間、手動操作ができなくなるという問題がある。
【0005】
そこで、本発明は、このような問題に鑑みなされたものであり、電動操作時に電動部の故障が発生した場合でも緊急避難的に手動操作へ容易に切り替え可能な遠隔操作式排水栓装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するため、本発明に係る遠隔操作式排水栓装置は、槽体底部の排水口を弁体の昇降で開閉させ、前記弁体の昇降を手動による遠隔操作と電気信号による遠隔操作とを兼用する遠隔操作式排水栓装置であって、手動による遠隔操作の入力を受け付ける手動操作部と、電気信号による遠隔操作の入力に基づいて動作指示を出力する電動操作指示部と、手動操作部の操作および電動操作指示部からの動作指示のいずれかにより昇降するスイッチ軸と、前記弁体を昇降させるワイヤへスイッチ軸の昇降を伝達する駆動部と、手動操作部が前記スイッチ軸を回転させる操作を受け付けたときに、前記電動操作指示部からスイッチ軸への動力伝達を遮断して手動による遠隔操作に切り替える切替手段とを備え、前記手動操作部は、その上面に摘持可能なツマミ部を有し、当該ツマミ部の回転により前記スイッチ軸を回転させる操作を受け付けることを特徴とする。
【0007】
これにより、手動操作部の上面のツマミ部を回転させるだけで、電動操作指示部からの動力伝達を遮断して手動操作のみを受け付ける完全手動状態に切り替えるので、電動操作指示部が故障する等が発生しても、緊急避難的に手動操作へ容易に切り替えることができる遠隔操作式排水栓装置が実現可能となる。
【0008】
ここで、前記ツマミ部は、前記手動操作部の上面から上方へ突出する凸状部であるとしてもよく、前記ツマミ部は、前記手動操作部の上面から下方へ掘り下げられた凹状部であるとしてもよい。
【0009】
これにより、操作者はツマミ部を摘まみやすくなり、手動操作への切替が容易となる。
【0010】
また、前記ツマミ部は、中心側へ向けて周縁を切り欠いて、周方向に形成される切欠部を有するとしてもよく、前記ツマミ部は、外側へ向けて周方向に形成される凸部を有するとしてもよい。
【0011】
これによれば、操作者はツマミ部の周方向の切欠部または凸部を5本の指先で摘まみやすくなり、手動操作への切替をさらに容易にすることができる。
【発明の効果】
【0012】
以上のように、本発明に係る遠隔操作式排水栓装置によれば、手動操作部の上面に形成されたツマミ部を回転させるだけで、電動操作指示部からの動力伝達を遮断して手動操作のみを受け付けるようにするので、電動操作指示部が故障する等の異常状態に陥っても、緊急避難的に手動操作へ容易に切り替えることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図6】遠隔操作式排水栓装置を浴槽に設置した例を示す斜視図である。
【
図7】完全手動状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図8】通常使用時における弁体開口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図9】通常使用時における弁体閉口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図11】完全手動状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図12】通常使用時における弁体開口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図13】通常使用時における弁体閉口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図15】通常使用時における弁体開口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図16】通常使用時における弁体閉口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図18】通常使用時における弁体開口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図19】通常使用時における弁体閉口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図21】通常使用時における弁体開口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【
図22】通常使用時における弁体閉口状態の手動操作部を示す拡大斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明に係る遠隔操作式排水栓装置について図を参照しながら説明する。
【0015】
図1は遠隔操作式排水栓装置の平面図であり、
図2はA−A線断面を示す図である。
図3はB−B線断面を示す断面図であり、
図4は
図2のC−C線断面を示す図である。
【0016】
本実施形態に係る遠隔操作式排水栓装置1は、洗面台や浴槽等の槽体の排水口を、遠隔的に開閉操作する装置であり、槽体4の底部にある排水口5内に設けられた弁体6と、弁体6に接続され内部のインナーワイヤーの進退により弁体6を昇降させるワイヤ15と、手動操作および電動操作のいずれかの操作入力により昇降するスイッチ軸12の動きをワイヤ15へ伝達する駆動部13と、駆動部13を収容する駆動部収納部14とを備えている。
【0017】
手動スイッチ11は、手動による遠隔操作の入力を受け付け、手動操作の入力によりスイッチ軸12を昇降させる。手動操作部である手動スイッチ11は、遠隔操作式排水栓装置1の上面に配置され、槽体4が浴槽の場合は、浴槽の上縁に配置される。以下では、槽体4が浴槽の場合を例に挙げて説明する。
【0018】
スイッチ軸12は、手動スイッチ11の操作により昇降し、また、電動操作によっても昇降する軸部材であり、その昇降の動きが駆動部13を介してワイヤ15へ伝達される。
【0019】
駆動部13は、手動操作および電動操作のいずれかの操作入力により昇降するスイッチ軸12の動きをワイヤ15へ伝達する。駆動部13は、手動操作の場合には、手動スイッチ11を押下する操作によりスイッチ軸12を昇降させ、その動きをワイヤ15へ伝達する。電動操作の場合には、浴室外(例えば、台所)に設置された電動操作部からの操作入力に基づいて駆動部13はスイッチ軸12を昇降させ、その動きをワイヤ15へ伝達する。
【0020】
なお、電動操作部基板19が電気回路を搭載した基板であり、入力された電動操作に基づいて動作の指示を出力する電動操作指示部となっている。電動操作部基板19は浴室外(例えば、台所)に設置された電動操作部からの操作入力に基づいてモーター14aを起動させる。モーター14aが作動すると、モーター14aの回転がラックとピニオンギアとで構成されるギア部13aによってスイッチ軸12を昇降させる動力に変換され、駆動部13へ伝達される。
【0021】
駆動部収納部14は、駆動部13やモーター14a、電動操作部基板19を収容する収納部である。水が流入することでモーター14aや電動操作部基板19等の電動部材に故障が発生することがある。また、水に含まれるゴミやヌメリ成分によってスイッチ軸12の動きが阻害されることもある。駆動部収納部14は、駆動部13やモーター14a、電動操作部基板19を収容して外部から水や異物が入らないようにするためのものである。
【0022】
信号発生部16は、スイッチ軸12の先端に設けられて、所定の信号を発生させる。信号受信部17は、モーター14a側に設けられ、信号発生部16の発生させる信号を検知するセンサである。ここでは、信号発生部16として磁性体を用いており、信号受信部17として磁気センサを用いている。すなわち、スイッチ軸12の先端に凹部を形成して磁性体を嵌め入れ、磁気センサである信号受信部17が磁性体の発する磁気を検知するときは正常状態とし、信号受信部17が磁気を検知しないときは異常状態とする。ここでは信号受信部17を上下に配置している。スイッチ軸12への動力伝達が正常であれば、スイッチ軸12の先端の信号発生部16は上下の信号受信部17のいずれかと正対するので磁気を検知することができる。一方、スイッチ軸12への動力伝達が異常をきたすと、スイッチ軸12の先端の信号発生部16は上下どちらの信号受信部17とも正対しなくなるので磁気を検知することができなくなる。
【0023】
なお、ここにいう異常状態とは、信号発生部16の信号を信号受信部17が受信しない場合に限られるものではない。信号発生部16の信号を信号受信部17が受信している場合でも異常状態は発生しうる。異常状態としては、モーター14a等の動力部の故障、信号受信部17等のセンサ部の故障、ギア部13a等の動力伝達部の異常が考えられる。動力部の故障には、モーター14aの故障により、全く作動しない場合や、モーター14aが作動し続ける過負荷状態、モーター14aの脱調状態がある。センサ部の故障には、信号受信部17の故障により全く検知しない状態がある。動力伝達部の異常には、ラックとピニオンギアが異常位置で停止する場合がある。異常位置での停止は、停電等で途中で停止してしまうときに起こりうる。
【0024】
切替手段18は、上記のような異常状態に陥ったとき、手動による任意の操作に基づいて、電動操作部基板19側から駆動部13への動力伝達を遮断する。手動による任意の操作とはスイッチ軸12を回転させる操作である。
図4(a)は、信号発生部16と信号受信部17とが正対する位置にあって信号受信部17が信号発生部16の磁気を検知しており、電動操作部基板19側からの動力伝達がされている正常状態である。ここで、モーター14a等の動力部の故障や、信号受信部17等のセンサ部の故障、ギア部13a等の動力伝達部の不具合等の異常状態が発生した場合に、スイッチ軸12を回転させる操作を受け付けると切替手段18は、
図4(b)に示すように、信号発生部16と信号受信部17との位置がずれて信号受信部17が信号発生部16の磁気を検知しなくなり異常状態を維持した上で、電動操作部基板19側からの動力伝達を遮断し、手動スイッチ11による手動操作のみを受け付けるように切り替える。また、切替手段18は、手動による任意の操作と反対の操作に基づいて、すなわち、反対方向へスイッチ軸12を回転させる操作により動力伝達の遮断を解除可能に構成されている。
【0025】
以下では、スイッチ軸12を回転させる操作を受け付ける手動操作部の構成について例を挙げながら説明する。
【0026】
図5に示す手動スイッチ21は、ツマミ部22と本体部23とで構成されている。手動スイッチ21は、押し操作によって浴槽2の排水口に位置する弁体を上下動させて排水口を開閉させる手動操作部である。また、手動スイッチ21は、スイッチ軸12を回転させる操作を受け付ける手動操作部でもあり、回転操作で手動操作のみを受け付ける完全手動状態への切替を可能とする。
【0027】
ツマミ部22は、手動スイッチ21の上面から、操作者が指先で摘みやすい高さに突出して形成される凸状部である。なお、ツマミ部22は凸状部でなくても、手動スイッチ21の上面から下方へ操作者が指先で摘みやすい深さに掘り下げて凹状部を形成することにより構成してもよい。すなわち、ツマミ部22は、手動スイッチ21の上面に操作者が摘持可能に形成されるツマミ片やツマミ構造であれば足り、後に例示するように、その形状は種々のものが考えられる。
【0028】
本体部23は、手動スイッチ21を配置するために浴槽の上縁に穿設される孔と同一形状(その多くは円柱形状)を有し、手動スイッチ21の上下動により上記孔を摺動する手動スイッチ21の本体部分である。
【0029】
図6では、遠隔操作式排水栓装置が浴槽2に配置された例が示されている。なお、ホース3はワイヤ15等を被覆するためのものである。
【0030】
図7に完全手動状態にある手動スイッチ21の位置を示す。
図8に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が開口した状態にある手動スイッチ21の位置を示す。
図9に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が閉口した状態にある手動スイッチ21の位置を示す。操作者が手動スイッチ21のツマミ部22を摘まみ、浴槽2の長手方向と平行にツマミ部22を回転させる操作を行うと、切替手段18は電動操作部基板19側からの動力伝達を遮断し、手動スイッチ21による手動操作のみを受け付ける完全手動状態に切り替える。また、操作者が手動スイッチ21のツマミ部22を摘まみ、浴槽2の奥行き方向と平行にツマミ部22を回転させる操作を行うと、切替手段18は電動操作部基板19側からの動力伝達の遮断を解除し、電動操作部からの操作入力と手動スイッチ21による手動操作とを受け付けるように切り替える。弁体が開口した状態(弁体が上昇した状態)のときでも、ツマミ部22を摘まむことができるようになっており、弁体が開口状態であると閉口状態であるとを問わず、ツマミ部22を回転操作することで弁体の開閉を手動で切替できるように構成されている。なお、ここでは、ツマミ部22が浴槽2の長手方向と平行になっている位置を完全手動状態としているが、これとは反対に、ツマミ部22が浴槽2の奥行き方向と平行になっている位置を完全手動状態としてもよい。
【0031】
別の例として、
図10に示す手動スイッチ31は、ツマミ部32と本体部33とで構成されている。
【0032】
ツマミ部32が十字型に形成されている点で、上記の手動スイッチ21と異なっている。その他は手動スイッチ21の例と同様である。
【0033】
図11に完全手動状態にある手動スイッチ31の位置を示す。同様に、
図12に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が開口した状態にある手動スイッチ31の位置を示す。
図13に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が閉口した状態にある手動スイッチ31の位置を示す。
【0034】
なお、ここでは、
図11に示すツマミ部32の十字方向が浴槽2の長手方向と奥行き方向と一致する場合を完全手動状態としているが、これとは反対に、
図13に示すツマミ部32の十字方向が浴槽2の長手方向と奥行き方向と一致しない場合を完全手動状態としてもよい。
【0035】
また、別の例として、
図14に手動スイッチ41を示す。手動スイッチ41は、本体部43の上に設けられているツマミ部42に、中心側へ向けて周縁を切り欠いて、周方向に切欠部44を形成することにより、操作者が5本の指先でツマミ部42を摘みやすいようにして手動スイッチ41の回転操作を容易ならしめるものである。なお、ここでは切欠部44を一定の間隔で周方向に全周に亘って形成しているが、一部のみ切欠部44を形成するようにしてもよい。
【0036】
図15に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が開口した状態にある手動スイッチ41の位置を示す。
図16に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が閉口した状態にある手動スイッチ41の位置を示す。
【0037】
さらに、別の例として、
図17に手動スイッチ51を示す。手動スイッチ51は、本体部53の上に設けられているツマミ部52に、外側へ向けて周方向に凸部54を形成することにより、操作者が5本の指先でツマミ部52を指先で摘みやすいようにして手動スイッチ51の回転操作を容易ならしめるものである。なお、ここでは凸部54を一定の間隔で周方向に全周に亘って形成しているが、一部のみ凸部54を形成するようにしてもよい。
【0038】
図18に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が開口した状態にある手動スイッチ51の位置を示す。
図19に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が閉口した状態にある手動スイッチ51の位置を示す。
【0039】
図20に手動スイッチ61を示す。手動スイッチ61は、手動スイッチ61の上面から下方へ操作者が指先で摘みやすい深さに本体部63を掘り下げて凹状部64を形成することによりツマミ部62を構成するものである。
図21に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が開口した状態にある手動スイッチ61の位置を示す。
図22に通常使用時(電動操作正常時)における弁体が閉口した状態にある手動スイッチ61の位置を示す。
凹状部64を形成することによりツマミ部62を構成する手動スイッチ61によれば、浴槽上縁からツマミ部62が突出することなく浴槽上縁と面一となり、使用者が浴槽に入る際に足をツマミ部62に引っ掛けるおそれがない。また、浴槽上縁部を清掃する際にツマミ部62が突起していないため清掃作業がしやすいというメリットがある。
【0040】
このように構成された遠隔操作式排水栓装置1は、手動によるスイッチ軸12の回転操作に基づいて、切替手段18が電動操作部基板19側からの動力伝達を遮断して手動操作のみを受け付けるようにするので、電動操作指示部が故障する等の異常状態に陥っても、電動操作指示部からの動力伝達を遮断し、緊急避難的に完全手動状態へ切り替えることができる。このとき、手動操作部である手動スイッチの上面に凸状のツマミ部が形成されているので、操作者が指先で摘みやすくなり容易に回転操作を実行することができる。
【0041】
以上、本発明に係る遠隔操作式排水栓装置について、実施形態に基づいて説明したが本発明はこれに限定されるものではなく、本発明の目的を達成でき、かつ発明の要旨を逸脱しない範囲内で種々設計変更が可能であり、それらも全て本発明の範囲内に包含されるものである。
【0042】
例えば、上記実施の形態では、槽体が浴槽の場合を例に挙げて説明したが、槽体は浴槽に限られるものではなく、洗面台やシンクなどであってもよい。