(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記表示制御部は、複数の前記不具合情報が前記不具合情報抽出部により抽出されると、前記作業内容及び前記不具合関連情報を、前記類似度の高い順に優先的に前記表示部に表示する、
請求項2又は3に記載の作業指示装置。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記特許文献1に記載の技術に対して、作業者の習熟度を更に適切に判定することが望まれている。
【0006】
本発明は、上記課題を解決するもので、作業者の習熟度を更に適切に判定する作業指示装置、作業指示方法および作業指示プログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の第1態様は、
製品の生産作業に従事する作業者に対して作業内容を指示する作業指示装置であって、
表示部と、
実施されることが決定された前記生産作業の作業内容を含む作業情報を記憶するとともに、過去に前記生産作業に従事した実績を表す作業実績を前記作業者毎に記憶する記憶部と、
前記生産作業が実施される作業現場において前記生産作業に従事する前記作業者を特定作業者として識別する作業者識別部と、
前記記憶部に記憶されている前記作業情報に含まれる前記生産作業のうちで、次に実施される選択生産作業とする選択を受け付ける作業選択受付部と、
前記記憶部に記憶されている前記特定作業者が過去に従事した前記生産作業のうちで、前記選択生産作業の作業内容との類似度が所定の第1閾値以上である作業内容を有する生産作業を類似生産作業として抽出し、前記類似生産作業の抽出数に基づき、前記選択生産作業に対する前記特定作業者の習熟度の高低を判定する習熟度判定部と、
前記習熟度判定部の判定結果に基づき、前記選択生産作業の作業内容を前記記憶部から読み出して前記表示部に表示する表示制御部と、を備えるものであ
り、
前記類似度は、コサイン類似度である。
【0008】
本発明の第2態様は、
製品の生産作業に従事する作業者に対して作業内容を指示する作業指示方法であって、
前記生産作業が実施される作業現場において前記生産作業に従事する前記作業者を特定作業者として識別する作業者識別ステップと、
実施されることが決定された前記生産作業のうちで、次に実施される選択生産作業とする選択を受け付ける作業選択受付ステップと、
前記特定作業者が過去に従事した前記生産作業のうちで、前記選択生産作業の作業内容との類似度が所定の第1閾値以上である作業内容を有する生産作業を類似生産作業として抽出し、前記類似生産作業の抽出数に基づき、前記選択生産作業に対する前記特定作業者の習熟度の高低を判定する習熟度判定ステップと、
前記習熟度判定ステップの判定結果に基づき、前記選択生産作業の作業内容を表示部に表示する表示制御ステップと、を備えるものであ
り、
前記類似度は、コサイン類似度である。
【0009】
本発明の第3態様は、
製品の生産作業に従事する作業者に対して作業内容を指示する作業指示装置のコンピュータに実行させる作業指示プログラムであって、
前記作業指示装置のコンピュータに、
前記生産作業が実施される作業現場において前記生産作業に従事する前記作業者を特定作業者として識別する作業者識別ステップと、
実施されることが決定された前記生産作業のうちで、次に実施される選択生産作業とする選択を受け付ける作業選択受付ステップと、
前記特定作業者が過去に従事した前記生産作業のうちで、前記選択生産作業の作業内容との類似度が所定の第1閾値以上である作業内容を有する生産作業を類似生産作業として抽出し、前記類似生産作業の抽出数に基づき、前記選択生産作業に対する前記特定作業者の習熟度の高低を判定する習熟度判定ステップと、
前記習熟度判定ステップの判定結果に基づき、前記選択生産作業の作業内容を表示部に表示する表示制御ステップと、を実行させるものであり、
前記類似度がコサイン類似度である。
【0010】
第1態様〜第3態様では、特定作業者が過去に従事した生産作業のうちで、特定作業者が選択した選択生産作業の作業内容との類似度が第1閾値以上の生産作業が抽出され、その抽出数に基づき習熟度が判定される。したがって、本態様によれば、同一製品を生産することが少ない工場であっても、類似する生産作業に従事した作業実績に基づいて、特定作業者の習熟度を判定することができる。
【0011】
上記第1態様において、例えば、前記表示制御部は、前記習熟度判定部により前記習熟度が高いと判定されると、前記選択生産作業の作業内容のみを前記記憶部から読み出して前記表示部に表示してもよい。
【0012】
上記第1態様において、例えば、前記表示制御部は、前記習熟度判定部により前記習熟度が低いと判定されると、前記選択生産作業の作業内容に加えて、追加情報を前記記憶部から読み出して前記表示部に表示してもよい。
【0013】
上記第1態様において、例えば、不具合情報抽出部を更に備えてもよい。前記記憶部は、過去に不具合が発生した前記生産作業の作業内容と前記不具合に関連する情報である不具合関連情報とを含む不具合情報を更に記憶してもよい。前記不具合情報抽出部は、前記習熟度が低いと判定されると、前記記憶部に記憶されている前記不具合情報のうちで、前記選択生産作業の作業内容との類似度が所定の第2閾値以上である作業内容を有する生産作業を含む不具合情報を抽出してもよい。前記表示制御部は、前記習熟度が低いと判定されると、前記選択生産作業の作業内容に加えて、前記不具合情報抽出部により抽出された前記不具合情報に含まれている前記生産作業の作業内容及び前記不具合関連情報を、前記表示部に表示してもよい。
【0014】
本態様では、習熟度が低いと判定されると、選択生産作業の作業内容に加えて、不具合情報に含まれる、選択生産作業の作業内容との類似度が第2閾値以上の作業内容及び不具合関連情報が表示部に表示される。したがって、本態様によれば、習熟度が低い特定作業者に対して、選択生産作業を実施するに際しての注意すべき点を提示することができる。
【0015】
上記第1態様において、例えば、前記不具合関連情報は、前記不具合が発生した原因と、前記不具合に対して実施された対応策と、を含んでもよい。
【0016】
本態様によれば、不具合が発生した原因と、不具合に対して実施された対応策とが表示部に表示されるので、習熟度が低い作業者に対して、選択生産作業を実施するに際しての注意すべき点として、不具合の原因及び対応策を具体的に提示することができる。
【0017】
上記第1態様において、例えば、前記表示制御部は、複数の前記不具合情報が前記不具合情報抽出部により抽出されると、前記作業内容及び前記不具合関連情報を、前記類似度の高い順に優先的に前記表示部に表示してもよい。
【0018】
本態様によれば、習熟度が低い作業者に対して、選択生産作業を実施するに際しての注意すべき点を、役に立つ可能性の高い順で提示することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、特定作業者が過去に従事した生産作業のうちで、特定作業者が選択した選択生産作業の作業内容との類似度が第1閾値以上の生産作業が抽出され、その抽出数に基づき習熟度が判定されるので、類似する生産作業に従事した作業実績に基づいて、特定作業者の習熟度を判定することができる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(本発明の基礎となった知見)
まず、本発明の基礎となった知見が説明される。顧客からの要求仕様に基づいて、一品一様で受注製品を生産する機械系の工場では、一つの設備において実施される生産作業の作業内容を受注製品毎に適切に変更して半製品を加工し、複数の設備を通過させることによって半製品から様々な種類の受注製品を生産することがある。この場合、受注製品毎に生産作業の作業内容が変更されるため、一人の作業者が同一の作業内容を何度も繰り返して実施することが殆ど無い。このため、作業内容に対する作業者の習熟度が向上するまでに時間を要する。
【0022】
一方、上記特許文献1に記載の技術では、上述のように、検査作業者の習熟度を示す実績値が検査項目ごとに積算されて、各作業者の習熟度が判定されている。しかし、同一の作業内容を繰り返して実施することが殆ど無い場合には、同一の作業内容の実績値が積算されることは殆ど無い。このため、習熟度を示す実績値を適切に得ることができない。その結果、作業者の習熟度を適切に判定することが困難となっている。
【0023】
そこで、本発明者は、完全に同一の作業内容でなくても、類似する作業内容を実施していれば習熟度が向上していると判定する技術を想到した。これによって、作業者の習熟度を適切に判定することが可能になっている。
【0024】
(実施の形態)
以下、本発明の一実施の形態が、図面を参照しながら説明される。なお、各図面において、同じ構成要素には同じ符号が用いられ、詳細な説明は、適宜、省略される。
【0025】
(構成)
図1は、本実施形態における作業指示装置の構成の一例を概略的に示すブロック図である。本実施形態における作業指示装置は、受注製品を生産する工場において、生産作業に従事する作業者に対して作業内容を指示する。
図1に示されるように、本実施形態における作業指示装置100は、表示部110、入力部120、メモリ130、記憶部140、及び中央演算処理装置(CPU)150を備える。作業指示装置100は、例えばパーソナルコンピュータで構成される。
【0026】
表示部110は、例えば液晶ディスプレイパネルを含む。表示部110は、CPU150により制御されて、作業者が実施する生産作業の作業内容等を表示する。なお、表示部110は、液晶ディスプレイパネルに限られない。表示部110は、有機EL(electroluminescence)パネルなどの他のパネルを含んでもよい。
【0027】
入力部120は、例えばマウス又はキーボードを含む。入力部120は、ユーザにより操作されると、その操作内容を示す操作信号をCPU150に出力する。なお、表示部110がタッチパネル式ディスプレイの場合には、マウス又はキーボードに代えて、タッチパネル式ディスプレイが入力部120を兼用してもよい。
【0028】
メモリ130は、例えば半導体メモリ等により構成される。メモリ130は、例えばリードオンリーメモリ(ROM)、ランダムアクセスメモリ(RAM)、電気的に消去書き換え可能なROM(EEPROM)などを含む。メモリ130のROMは、CPU150を動作させる本実施形態の制御プログラムを記憶する。
【0029】
CPU150は、メモリ130に記憶された本実施形態の制御プログラムに従って動作することによって、作業者識別部151、作業選択受付部152、習熟度判定部153、不具合情報抽出部154、表示制御部155の機能を有する。CPU150の各部の具体的な機能は、後述される。なお、作業指示装置100は、CPU150に代えて、同一機能を果たす他のハードウェアを備えてもよい。
【0030】
記憶部140は、例えばハードディスク又は半導体メモリ等により構成される。記憶部140は、作業情報記憶部141、作業実績記憶部142、不具合情報記憶部143を含む。各記憶部141〜143は、互いに別の媒体で構成されてもよい。代替的に、各記憶部141〜143は、記憶領域が分けられた一つの媒体で構成されてもよい。
【0031】
図2は、作業情報記憶部141に記憶されている生産作業情報200を概略的に示す図である。受注製品を生産する際に実施される生産作業の作業内容は、通常予め定められている。作業情報記憶部141は、その予め定められている生産作業に関する情報である生産作業情報200を記憶する。生産作業情報200は、オーダ番号欄201と、作業内容欄202と、を含む。オーダ番号欄201には、生産作業に対応付けられたオーダ番号が記載されている。作業内容欄202には、生産作業の作業内容が記載されている。
【0032】
図3は、作業実績記憶部142に記憶されている作業実績300を概略的に示す図である。作業実績記憶部142は、過去における生産作業の作業実績300を作業者毎に記憶する。
図3に示されるように、作業実績300は、オーダ番号欄301と、作業者欄302と、作業内容欄303と、作業日欄304と、を含む。オーダ番号欄301には、生産作業に対応付けられたオーダ番号が記載されている。作業者欄302には、生産作業に従事した作業者が記載されている。作業内容欄303には、生産作業の作業内容が記載されている。作業日欄304には、生産作業が実施された年月日が記載されている。
【0033】
図4は、不具合情報記憶部143に記憶されている不具合報告書400を概略的に示す図である。不具合情報記憶部143は、過去に不具合が発生した生産作業における作業内容、不具合に関連する情報である不具合関連情報などを含む不具合報告書400(不具合情報の一例に相当)を記憶する。
図4に示されるように、不具合報告書400は、オーダ番号欄401と、作業者欄402と、作業内容欄403と、作業日欄404と、不具合原因欄405と、対応策欄406と、を含む。オーダ番号欄401には、不具合が発生した生産作業に対応付けられたオーダ番号が記載されている。作業者欄402には、不具合が発生した生産作業に従事した作業者が記載されている。作業内容欄403には、不具合が発生した生産作業の作業内容が記載されている。作業日欄404には、不具合が発生した生産作業が実施された年月日が記載されている。不具合原因欄405(不具合関連情報の一例に相当)には、不具合の発生原因が記載されている。対応策欄406(不具合関連情報の一例に相当)には、不具合に対して実施された対応策が記載されている。
【0034】
(動作)
図5は、
図1に示される作業指示装置100の動作の一例を概略的に示すフローチャートである。
図5のステップS501において、作業者識別部151は、生産作業に従事する作業者を特定作業者として識別する。作業者識別部151は、CPU150と通信可能に構成されたICカードリーダから識別情報を受け取ってもよい。このICカードリーダは、例えば生産作業が実施される作業現場に配置され、近接場型無線通信を利用する。作業者は、例えば保有する識別情報(ID)カードをICカードリーダの筐体表面に接触させる。作業者識別部151は、ICカードリーダにより読み取られた識別情報に基づき、作業者を特定作業者として識別する。本実施形態では、識別された特定作業者は、「Aさん」とする。
【0035】
作業者識別部151は、作業者名のリストが表示された作業者選択画面を表示部110に表示してもよい。作業者識別部151は、作業者選択画面に表示された作業者名のリストから、入力部120を用いて作業者により選択された作業者を特定作業者として識別してもよい。
【0036】
ステップS502において、作業選択受付部152は、特定作業者による、次に実施する生産作業の選択を受け付ける。
【0037】
図6は、表示部110に表示される作業選択画面600を概略的に示す図である。作業選択画面600は、
図6に示されるように、オーダ番号欄601を含む。作業者が例えばマウスポインタをオーダ番号「2017−001」に置いた状態でマウスをクリックすると、作業選択受付部152は、オーダ番号「2017−001」に対応づけられた生産作業(選択生産作業の一例に相当)の選択を受け付ける。作業者は、本実施形態では、例えば作業手順書などによって、次に選択すべき生産作業のオーダ番号を既に知っているものとする。
【0038】
表示部110がタッチパネル式の場合には、作業者は、表示部110のオーダ番号「2017−001」が表示された領域に指等を接触させてもよい。表示部110に表示される作業選択画面600には、オーダ番号欄601に並べて、作業内容欄を設けて作業内容を表示してもよい。或いは、作業選択画面600には、オーダ番号欄601に並べて、作業対象の図面を表示させるための表示ボタンを設けてもよい。そして、表示ボタンが操作されると、作業対象の図面を表示する表示画面に遷移するようにしてもよい。
【0039】
図5に戻って、ステップS503において、習熟度判定部153は、ステップS502で選択が受け付けられた生産作業に類似する生産作業を作業実績から抽出する。具体的には、習熟度判定部153は、作業実績記憶部142に記憶されている作業実績300から、ステップS501で識別された特定作業者の作業実績を抽出する。本実施形態では、上述のように、ステップS501で識別された特定作業者は、「Aさん」である。そこで、習熟度判定部153は、作業実績記憶部142に記憶されている作業実績300(
図3)から、「Aさん」の作業実績であるオーダ番号「2016−010」の生産作業を抽出する。
【0040】
習熟度判定部153は、抽出した作業実績に含まれる生産作業の作業内容を表す文章と、ステップS502で選択が受け付けられた生産作業の作業内容を表す文章との類似度を算出する。本実施形態では、習熟度判定部153は、類似度として、一般的な手法であるコサイン類似度を用いる。習熟度判定部153は、コサイン類似度が所定の第1閾値(本実施形態では例えば0.8)以上の作業内容を有する生産作業を類似生産作業として抽出する。
【0041】
コサイン類似度は、以下のようにして算出される。まず、比較する2つの文章の少なくとも一方に含まれる単語を要素とするベクトルを、比較する文章毎に作成する。この場合において、ベクトルの要素の値は、各ベクトルに対応する文章に含まれる単語の出現頻度で表現される。文章を単語に区分する手法としては、例えば形態素解析等の公知の手法が用いられる。
【0042】
比較する2つの文章に各々対応する2つのベクトルを用いて、以下の式(F1)で計算される値がコサイン類似度である。
【0043】
コサイン類似度
=(Vec_A・Vec_B)/(|Vec_A|×|Vec_B|) (F1)
式(F1)において、Vec_AとVec_Bとは、比較する2つの文章に対応するベクトルである。また、「・」はベクトルの内積を表す。また、|Vec_A|は、ベクトルVec_Aのユークリッドノルムを表す。
【0044】
ステップS502で選択が受け付けられた生産作業は、オーダ番号「2017−001」に対応する生産作業である。
図2から分かるように、この生産作業の作業内容を表す文章から作成される単語ベクトルは、
(内面,の,目違い,は,、,1,.,5,mm,以下,に,なる,よう,調整,し,管,端,を,,:,4,勾配,切削,する,。)
である。一方、習熟度判定部153により抽出されたオーダ番号「2016−010」に対応する生産作業の作業内容を表す文章から作成される単語ベクトルは、
図3から分かるように、
(内面,の,目違い,を,、,0,.,5,mm,以下,に,なる,よう,調整,し,管,端,1,:,6,,勾配,切削,する,。)
である。
【0045】
図7は、上記両方の作業内容を表す文章の少なくとも一方に含まれる単語を要素とするベクトルを概略的に表す図である。式(F1)から分かるように、単語の要素の順を変更しても、コサイン類似度の値は変化しない。したがって、両方の作業内容を表す文章の少なくとも一方に含まれる単語を要素とするベクトルは、例えば
図7に示されるように、
(0,1,4,5,6,、,.,。,:,mm,し,する,なる,に,の,は,よう,を,以下,管,端,勾配,切削,調整,内面,目違い)
である。
【0046】
対応する2つのベクトルの要素は、このベクトルの各単語の出現頻度である。したがって、ステップS502で選択が受け付けられた生産作業に対応するベクトルVec_Aは、
図7に示されるように、
Vec_A
=(0,2,1,1,0,2,1,1,1,1,1,1,2,4,2,1,2,1,2,1,1,1,1,1,1,1)
となる。また、習熟度判定部153により抽出されたオーダ番号「2016−010」の生産作業に対応するベクトルVec_Bは、
図7に示されるように、
Vec_B
=(1,1,0,1,1,2,1,1,1,1,1,1,1,3,2,0,1,2,2,1,1,1,1,1,1,1)
となる。
【0047】
したがって、式(F1)から算出される、これら2つのベクトルVec_A,Vec_Bのコサイン類似度は、小数点第3位以下を四捨五入すると、
コサイン類似度
=46/(√57×√44)
=0.92
となる。コサイン類似度が第1閾値(本実施形態では例えば0.8)以上であるので、習熟度判定部153は、2つの作業内容が類似すると判定する。習熟度判定部153は、オーダ番号「2016−010」の生産作業を類似生産作業として抽出する。
【0048】
図5に戻って、ステップS504において、習熟度判定部153は、作業者の習熟度が低いか否かを判定する。習熟度判定部153は、ステップS503で抽出した生産作業の件数が、所定の閾値(本実施形態では例えば10件)以上であれば、習熟度が高いと判定し、所定の閾値未満であれば、習熟度が低いと判定する。本実施形態では、作業者「Aさん」の過去における生産作業のうち、コサイン類似度が0.8以上の実績件数は、オーダ番号「2016−010」の1件である。このため、10件未満であるので、習熟度判定部153は、作業者「Aさん」の習熟度が低いと判定する。
【0049】
習熟度が低いと習熟度判定部153により判定されると(ステップS504でYES)、処理はステップS505に進み、習熟度が高いと習熟度判定部153により判定されると(ステップS504でNO)、処理はステップS507に進む。
【0050】
ステップS505において、不具合情報抽出部154は、不具合報告書400(
図4)から、不具合が発生した生産作業のうちで、ステップS502で選択が受け付けられた生産作業の作業内容に類似する作業内容を有する生産作業(不具合事例)を抽出する。不具合情報抽出部154は、習熟度判定部153と同様に、コサイン類似度を用いて、ステップS502で選択が受け付けられた生産作業の作業内容に類似する作業内容を有する生産作業を抽出する。
【0051】
ステップS502で選択が受け付けられた生産作業(オーダ番号「2017−001」に対応)の作業内容を表す文章から作成される単語ベクトルは、上述のように、
(内面,の,目違い,は,、,1,.,5,mm,以下,に,なる,よう,調整,し,管,端,を,,:,4,勾配,切削,する,。)
である。一方、不具合報告書400(
図4)に含まれる生産作業(オーダ番号「2015−009」に対応)の作業内容を表す文章から作成される単語ベクトルは、
(内面,の,目違い,は,、,1,.,mm,以下,に,調整,し,管,端,を,,:,7,勾配,切削,する,。)
である。
【0052】
図8は、上記両方の作業内容を表す文章の少なくとも一方に含まれる単語を要素とするベクトルを概略的に表す図である。上述のように、単語の要素の順を変更しても、コサイン類似度の値は変化しない。したがって、両方の作業内容を表す文章の少なくとも一方に含まれる単語を要素とするベクトルは、例えば
図8に示されるように、
(0,1,4,5,7,、,.,。,:,mm,し,する,なる,に,の,は,よう,を,以下,管,端,勾配,切削,調整,内面,目違い)
である。
【0053】
対応する2つのベクトルの要素は、このベクトルの各単語の出現頻度である。したがって、ステップS502で選択が受け付けられた生産作業に対応するベクトルVec_Aは、
図8に示されるように、
Vec_A
=(0,2,1,1,0,2,1,1,1,1,1,1,2,4,2,1,2,1,2,1,1,1,1,1,1,1)
となる。また、不具合情報抽出部154により抽出されたオーダ番号「2015−009」の生産作業に対応するベクトルVec_Bは、
図8に示されるように、
Vec_B
=(1,3,0,1,1,2,1,1,1,1,1,1,0,2,2,0,0,2,2,1,1,1,1,1,1,1)
となる。
【0054】
したがって、式(F1)から算出される、これら2つのベクトルVec_A,Vec_Bのコサイン類似度は、小数点第3位以下を四捨五入すると、
コサイン類似度
=38/(√57×√37)
=0.83
となる。コサイン類似度が第2閾値(本実施形態では例えば0.8)以上であるので、不具合情報抽出部154は、2つの作業内容が類似すると判定する。よって、不具合情報抽出部154は、オーダ番号「2015−009」に対応する生産作業を不具合事例として抽出する。
【0055】
図5に戻って、ステップS506において、表示制御部155は、ステップS502で選択が受け付けられた生産作業の作業内容と、ステップS505で抽出された不具合事例とを含む案内画面900(
図9)を表示部110に表示する。その後、
図5の処理は終了する。ステップS507において、表示制御部155は、ステップS502で選択が受け付けられた生産作業の作業内容を表す案内画面1000(
図10)を表示部110に表示する。その後、
図5の処理は終了する。
【0056】
図9は、ステップS506で表示部110に表示される案内画面900を概略的に示す図である。
図10は、ステップS507で表示部110に表示される案内画面1000を概略的に示す図である。
図9に示される案内画面900は、作業者の習熟度が低いときに表示部110に表示される。
図10に示される案内画面1000は、作業者の習熟度が高いときに表示部110に表示される。
【0057】
図10において、案内画面1000は、ステップS502で選択が受け付けられたオーダ番号「2017−001」に対応する生産作業の作業内容欄202(
図2)に記載された作業内容を含む。作業者の習熟度が高いため、案内画面1000には、単に作業内容のみが含まれている。
【0058】
図9において、案内画面900は、選択作業内容欄901と、不具合事例欄902とを含む。選択作業内容欄901には、ステップS502で選択が受け付けられたオーダ番号に対応する生産作業の作業内容が記載されている。不具合事例欄902には、ステップS505において、不具合情報抽出部154によって抽出された不具合事例が記載されている。
【0059】
不具合事例欄902は、作業内容欄903と、不具合原因欄904と、対応策欄905と、作業日欄906と、を含む。作業内容欄903には、不具合が発生した生産作業の作業内容が記載されている。不具合原因欄904(不具合関連情報の一例に相当)には、不具合の発生原因が記載されている。対応策欄905(不具合関連情報の一例に相当)には、不具合に対して実施された対応策が記載されている。作業日欄906には、不具合が発生した生産作業が実施された年月日が記載されている。
【0060】
なお、ステップS505において、不具合事例が抽出されない場合もあり得る。すなわち、ステップS502で選択が受け付けられた生産作業の作業内容を表す文章から作成される単語ベクトルと、不具合報告書400(
図4)に含まれる生産作業の作業内容を表す文章から作成される単語ベクトルとのコサイン類似度が、全て第2閾値未満であれば、不具合情報抽出部154は、不具合事例を抽出しない。この場合、ステップS506において、表示制御部155は、案内画面1000(
図10)を表示部110に表示する。すなわち、不具合事例が抽出されないため、不具合事例は表示部110に表示されない。
【0061】
以上説明されたように、本実施形態では、作業内容を表す文章のコサイン類似度が第1閾値以上である生産作業が作業実績から所定件数以上抽出されると、作業者の習熟度が高いと判定される。したがって、本実施形態によれば、作業内容が全く同一の生産作業が繰り返されることが殆ど無い、受注製品を生産する機械系の工場においても、作業者の習熟度を適切に判定することができる。
【0062】
また、本実施形態では、作業者の習熟度が低いと判定されると、過去に不具合が発生した類似する生産作業の作業内容と、不具合の発生原因及び対応策とが、表示部110に表示されている。したがって、本実施形態によれば、習熟度の低い作業者に対して注意を喚起することができる。
【0063】
(変形された実施形態)
(1)上記実施形態では、習熟度判定部153は、生産作業の抽出数が所定の閾値(例えば10件)以上であれば、習熟度が高いと判定し、所定の閾値未満であれば、習熟度が低いと判定しているが、これに限られない。習熟度判定部153は、過去一定期間の抽出数に基づき、習熟度を判定してもよい。
【0064】
例えば、習熟度判定部153は、作業実績300(
図3)の作業日欄304に基づき、過去の一定期間の件数のみを抽出してもよい。習熟度判定部153は、抽出した生産作業の件数が過去の一定期間で所定の閾値(例えば過去1年間で10件)以上であれば、習熟度が高いと判定し、過去の一定期間で所定の閾値未満であれば、習熟度が低いと判定してもよい。
【0065】
例えば、抽出した生産作業の件数が10件以上であっても、過去10年間に亘っての10件では、習熟度が高いとは言いにくい。したがって、この変形された実施形態によれば、作業者の習熟度をより適切に判定することができる。
【0066】
(2)上記実施形態では、不具合情報抽出部154は、不具合事例として、オーダ番号「2015−009」に対応する生産作業を1件抽出している。そして、表示制御部155は、選択が受け付けられた生産作業の作業内容と、抽出された不具合事例とを含む案内画面900(
図9)を表示部110に表示している。しかし、案内画面900は、
図9に示される例に限られない。
【0067】
図11、
図12は、ステップS506で表示部110に表示される案内画面900の
図9と異なる例を概略的に示す図である。
図11、
図12では、不具合情報抽出部154により、不具合事例として、複数の生産作業が抽出されている。
【0068】
図11では、不具合情報抽出部154により不具合事例として抽出された複数の生産作業が一覧で示されている。この場合、表示制御部155は、案内画面900に含まれる不具合事例として、抽出された複数の生産作業を、案内画面900の上からコサイン類似度の高い順に表示してもよい。更に、
図11に代えて、表示制御部155は、案内画面900に含まれる不具合事例として、抽出された複数の生産作業を、コサイン類似度の高い順にページ毎に表示してもよい。この変形された実施形態によれば、習熟度が低い作業者に対して、選択された生産作業を実施するに際しての注意すべき点を、より役に立つ可能性の高い順で、提示することができる。
【0069】
図12では、案内画面900の不具合事例欄902は、類似度欄907を更に含む。類似度欄907には、算出されたコサイン類似度が記載されている。作業者は、類似度欄907に記載されているコサイン類似度を参照して、参考にする不具合事例を選ぶことができる。