(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
近年、落雷の発生頻度が多くなっていることから落雷の回数を精度よく検出したいという要望がある。
【0003】
従来の落雷検知システムは、避雷器とこの避雷器に接続された放電度数計とを備えており、送電線などの線路に落雷すると、その落雷のエネルギーは、線路に接続された避雷器から地面に放出されると共に、避雷器から放電度数計に供給されて落雷の回数がカウントされる仕組みになっている。
【0004】
また、避雷器には、落雷発生時の大電流の他、通常の0.2〜0.3mA程度までの微少な漏れ電流が流れる。このため、放電度数計には、漏れ電流を計測するための電流計が設けられているものが多く、標準的な避雷器の電流測定レンジとしては例えば0〜2mA程度か0〜5mA程度の範囲とされる。
【0005】
ところで、避雷器が接続されている線路にはノイズなどが突発的に発生し、漏れ電流以上の電流、例えば数10mA以上の電流が一時的に流れることがあり、このようなノイズについても放電度数計は落雷としてカウントすることがあり、これでは落雷の発生回数が正しく測れない。
【0006】
そこで、ユーザーからは、ノイズについても上記放電度数計で落雷として計数せずに、電流計の指針の振れで視認したいという要望がある。
【0007】
しかしながら、漏れ電流を視認するための電流計で、ノイズなどの電流についても目視できる程度に測定レンジを広げる場合、限られた表示窓の範囲に0〜30mAまたは0〜50mA程度までの間で指針が振れるような目盛板を作る必要があるが、この場合、目盛りを等間隔にすると、漏れ電流のような微弱な電流の値は最小の1目盛りの範囲にも現れなくなり、微小な電流の変化を目視で確認することが不可能になる。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、図面を参照して、実施形態を詳細に説明する。
【0014】
(第1実施形態)
図1は第1実施形態の落雷検知システムを示す図である。
図1に示すように、第1実施形態の落雷検知システムは、交流送電を行う電線などの送配電系統(線路)に接続された避雷器1とこの避雷器1に接続された放電度数計2とを備える。避雷器1は線路端子3、接地端子4を有する。線路端子3は送配電系統に接続されている。接地端子4は地面(大地)に接地されている。
【0015】
避雷器1は、酸化亜鉛を主成分とする避雷素子を碍管などの絶縁容器に格納したものである。避雷器1は、通常は絶縁体であり、落雷などの高電圧(異常電圧)が印加されたときに導体となり、異常電圧を大地に放電させる。
【0016】
放電度数計2は、避雷器1の接地端子4に接続および固定された中継端子5と、地面に接地された接地端子6とを有する。中継端子5は避雷器1を通じた電流(漏れ電流および雷撃電流の一部など)を放電度数計2に流す。接地端子6は放電度数計2を通じた電流を地面(大地)に流す。
【0017】
図2に示すように、放電度数計2の正面部には、カウンタ7、電流計8などを備えた表示パネル9が設けられている。電流計8は例えば可動コイル型などであり、永久磁石、コイルなどの内部回路(図示せず)と、目盛板10および指針11を有する。指針11は電流が流れたコイルの動きに応じて支点を中心に弧を描くように動作する。
【0018】
このように電流計8は避雷器1から入力される雷撃以外の電流(漏れ電流、ノイズなど)をコイルに流し、コイルに流れる電流に応じて指針11を振らせる。
【0019】
図3に示すように、目盛板10には、例えばmAなどの単位12と目盛13、補助目盛13aなどが印字または刻印などにより設けられている。目盛り13の間隔は等間隔ではなく、
図6に示す電圧−電流特性(非線形特性)に対応する間隔とされている。補助目盛13aは4mA以下の目盛13の間隔をさらに細分するように設けられている。つまり目盛板10は電流計8の指針の振れに合わせて間隔を変えて目盛を付したものである。
【0020】
図6に示す電圧−電流特性では、電圧が0〜4V弱程度までは電流値もほぼ1対1の割合で0〜4mAへ第1の傾斜角度で直線的に変化し、電圧が4V〜6Vの範囲は、電流値の変化の割合が増大し、1対5程度の第2の傾斜角度で5mA〜14mAへ直線的に変化する。なおこの例では目盛板10を実効値表示としたが波高値表示としてもよい。
【0021】
図4に示すように、放電度数計2は、避雷器1から雷撃電流を大地へ逃がす避雷素子19と、この避雷素子19と並列に接続された雷撃計数および検流回路20とを有する。
【0022】
雷撃計数および検流回路20は、避雷器1を通じた電流のうち避雷素子19に流れた雷撃電流の一部の電流や避雷器1から常に流れる微少な漏れ電流などを取り込み、漏れ電流を検流すると共に落雷などの異常電流を検出した場合に落雷回数を計数(カウント)する。
【0023】
放電度数計2は、端子P1−端子P8間に接続された低抵抗酸化亜鉛素子ZnOなどの避雷素子19と、端子P1に接続された端子P2−端子P4間に接続されたコンデンサCと、このコンデンサCに抵抗素子R0を介して接続された駆動コイルTと、端子P3−端子P4間に駆動コイルTと並列に接続されたコンデンサC1と、端子P4−端子P8間に接続された保護ギャップGと、端子P4と端子P6間に接続された非線形特性電流生成回路22と、この非線形特性電流生成回路22に接続された電流計8とを有する。この
図4に示した回路のうち避雷素子19を除いた回路が雷撃計数および検流回路20である。
【0024】
非線形特性電流生成回路22は、避雷器1の通常の漏れ電流(0.2mA、0.3mA程度)の範囲を超える所定の電流値(例えば4mAか5mA付近)を境に電圧−電流特性(
図6参照)が変化するよう構成された回路である。つまり非線形特性電流生成回路22は、漏れ電流の範囲を超える所定の閾値を境に電流の特性が変化する非線形特性の電流を生成するよう構成されている。
【0025】
具体的には、非線形特性電流生成回路22は、端子P4−端子P5間に接続された抵抗素子R1と、端子P5−端子P6間に接続されたツェナーダイオードZDと、端子P5と電流計8との間に接続された抵抗素子R2、R3と、これら抵抗素子R2と抵抗素子R3の間の端子P7と端子P6間に接続された逆並列接続型のダイオード群Dとを有する。
【0026】
保護ギャップGは端子P4−端子P8間に接続した電流計8などを保護するためのギャップ(放電素子)である。
【0027】
ツェナーダイオードZDはツェナー電圧以上(一定電圧以上)の電流を電流計8に流さないようパイパスするものであり、過大な電流から電流計8を保護するためのものである。つまりツェナーダイオードZDは、電流計8に過大な電流が流れて破損しないように保護する目的で使用している。
【0028】
電流計8は避雷器1から駆動コイルTおよび非線形電流回路22を通じて入力される電流に応じて指針を振らせる。つまり電流計8は避雷器1から放電度数計2に流れる漏れ電流やノイズなどの電流に応じて指針11を振らせるアナログタイプの電流計である。
【0029】
コンデンサCは避雷素子19に流れた雷撃のエネルギーの一部を蓄え、蓄えた一部のエネルギーを、抵抗素子R0を通じて駆動コイルTとコンデンサC1に供給する。
【0030】
駆動コイルTはコンデンサCから供給されるエネルギーによりカウンタ7を動作させて雷撃(落雷)の回数を計数(カウント)するためのものである。
【0031】
抵抗素子R0とコンデンサC1とで感度調整回路21が構成されている。感度調整回路21は駆動コイルTの落雷計数のための感度を鈍化させる回路である。この回路の抵抗素子R0とコンデンサC1の定数を変えることで、駆動コイルTの感度を可変(調整)できる。つまり感度調整回路21は落雷カウントアップ時の感度調整用の回路である。
【0032】
この例では、避雷器1の漏れ電流の100倍以上の電流(例えば100A以上の電流)で駆動コイルTが計数動作を行うよう抵抗素子R0とコンデンサC1の定数を設定している。この例では、抵抗素子R0の定数を例えば5.1KΩとしている。なお抵抗素子R0の定数は5KΩ〜10KΩの範囲で適用することがよい。
【0033】
コンデンサC1は落雷発生時にコンデンサCから供給されるエネルギーの一部を蓄電することで駆動コイルTに供給されるエネルギーを少なくし駆動コイルTの感度を調整する。
【0034】
通常、駆動コイルTは、数10mA程度の交流電流で動作してしまうため、コンデンサC1はインピーダンスを変えて50mA程度の電流では駆動コイルTが動作しないように動作感度を下げる(感度調整する)ためのものである。
【0035】
すなわち駆動コイルTに並列に接続されたコンデンサC1と、コンデンサCと駆動コイルT間に接続された抵抗素子R0は、コンデンサCから駆動コイルTへのエネルギーの一部を吸収することで駆動コイルTの感度を低下させる感度調整用の素子である。
【0036】
抵抗素子R2と抵抗素子R3は、電流を、電流計8とダイオード群Dに分流する抵抗である。
【0037】
逆並列接続型のダイオード群Dとは接続方向の異なる2つのダイオード群を並列に接続したものである。この例は交流電流(時間によって位相が反転する特徴を持つ電流)回路に適用しているため、2つのダイオード群を逆方向に並列に接続した逆並列接続の形態を採用している。
【0038】
この例では、複数のダイオードを接続したダイオード群Dとしたが、この他、外部から制御可能なトランジスタ群などのスイッチング素子群を用いてもよい。この場合、外部からの制御により非線形特性となるポイントの点Q(
図6参照)を可変することができる。
【0039】
つまりこの逆並列接続型のダイオード群Dは、交流電流で電流の極性が反転したときにも一定方向の電流を電流計8へ流し電流計8の指針11を目盛板10の目盛13の方向に振らせるためのものである。
【0040】
避雷素子19は雷撃による避雷器1からの大電流の大部分をバイパスして地面(大地)に流す保護回路として機能する。避雷素子19は避雷器1の避雷素子と同等の性能を有する。
【0041】
以下、この落雷検知システムの作用・効果を説明する。
ダイオード群Dがない場合、抵抗R3と電流計8に流れる電流をI0、端子P7の電圧をV0とすると、
図5に示すような直線的な電流−電圧特性となり、傾きをZ0とすると、V0=I0×Z0となる。
【0042】
一方、本実施形態のように電流計8にダイオード群Dを接続した場合、
図6に示すようにダイオード群Dの各ダイオードのオン電圧(
図6の点Q)付近から、それまで抵抗素子R3と電流計8にだけ流れていた電流が抵抗素子R2を通じて分流し、ダイオード群Dにも流れ込むようになる。
【0043】
このときの抵抗素子R3と電流計8に流れる電流をI0´、ダイオード群DのインピーダンスをZ1、ダイオード群Dに流れ込む電流をI1、端子P5の電圧をV1とすると、V1=I1×Z1=I0´×Z0となる。
【0044】
図6は説明のためのイメージ図であるが、実際には
図7に示すような非直線的な電流−電圧特性となる。
【0045】
この実施形態では、ダイオード群Dに、1.2V程度のON電圧のダイオードを使用している。この場合、抵抗素子R2に30Ω、抵抗素子R3に概ねその3倍の抵抗値(100Ω程度)のものを利用している。
【0046】
これにより、実際の電流計8には、
図7に示すような非線形特性に従った電流が流れるようになるため、この特性に合わせて電流計8の目盛板10を、
図3に示すように、目盛13の間隔が異なる目盛板10に変更している。目盛13の間隔は、上記特性と共に使用部品の個体差を十分に考慮し、実測に合せて印字位置を細かく調整するものとする。
【0047】
この実施形態では、新たに導入する部品(コンデンサC1、ダイオード群D、抵抗素子R2、R3など)の値や目盛13の間隔を調整し、電流値の範囲が0−3mA間のレンジでは細かな補助目盛13aを設けて読み取り精度を上げて、3mA−50mA間のレンジでの目盛13は間引いて配置したが、この例以外にも別の要求性能に合わせて部品の値や目盛間隔を調整することで、高精度の読み取りと間引いた読み取りに変更することも可能である。
【0048】
このようにこの実施形態の落雷検知システムによれば、既存の放電度数計の回路の一部に、新たな部品(部品定数を調整したコンデンサC1、抵抗素子R3、ダイオード群Dなど)を増設しまた電流計8の目盛板10を交換することで、例えば0.2mA、0.3mA程度の漏れ電流からその100倍程度の大きな電流(30mAまたは50mA程度)までを一つの指針11の振れで視認することができるワイドレンジ表示で低コストな放電度数計2を提供することができる。表示レンジとしては、例えば10mA−100mA程度でも可能である。
【0049】
また、既存の放電度数計(既存品)をベースとした構造のため、放電度数計2の気密容器、回路部品を流用できるので、製造コストを低く抑え、製品としての放電度数計2を安価に提供することができる。
【0050】
また、電流計8についても既存品をベースとし、目盛板10に圧縮目盛(間隔を変化させた目盛13:
図3参照)を採用し、また3mA以下のレンジには目盛13の間隔をさらに細分する形の補助目盛13aを設けることで、通常測定する範囲の電流(漏れ電流)を正確に読み取ることができ、かつ50mA程度の大きな電流についても同じ表示パネル9で指針11の振れを見ながら電流の変化を目視で確認することができる。
【0051】
上記実施形態では、放電度数計2を例にして説明したが、本実施形態は、放電度数をカウンタする機能の無い電流計、つまり電流表示装置単体にも適用できる。
【0052】
また上記実施形態では、交流放電度数計について説明したが、
図8に示すように、直流送電線路30に接続される直流放電度数計31にも適用できる。
【0053】
この場合、駆動コイルTに並列にコンデンサC1を接続すると共に、直流電流計47の前段のフィルタ回路F(コンデンサ41、43、抵抗素子R2、ダイオード44、45などから構成される)に、直列接続型のダイオード群D1とツェナーダイオードZD1を接続する。この例は直流回路のためダイオード群D1とツェナーダイオードZD1は一方向のみのものを使用する。
【0054】
また直流電流計47の目盛板は、
図3に示した目盛板10を用いるものとする。符号33はダイオードブリッジ、符号19、39は低抵抗ZnO素子、符号48は付磁コイルである。
【0055】
このようこの例によれば、直流送電線路30に接続される直流放電度数計31の直流電流計47に、コンデンサC1、ダイオード群D1、ツェナーダイオードZD1などの部品を追加することで、直流回路用避雷器の漏れ電流をワイドレンジで監視することができ、落雷検知システムを直流電線路用として提供することができる。
【0056】
また、
図9に示すように、
図1に示した放電度数計2の駆動コイルT(カウントアップコイル)にリレーコイル51を介して警報用リレー52を接続し、この警報用リレー52の接点53を放電度数計2のケース50に設けることで、放電度数計2を継電器に接続し、避雷器動作時の接点信号を放電度数計2から継電器へ出力することができるようになる。
【0057】
上記実施形態では、電流計8を内蔵した放電度数計2について説明したが、放電度数計2と電流計8を分離してもよい。すなわち避雷器1からの雷撃電流を大地へ逃がすための避雷素子19を有し雷撃の回数を計数し、雷撃以外の避雷器1からの漏れ電流を出力する放電度数計に電流計測装置を接続してもよい。
【0058】
この場合、避雷器1からの雷撃電流を大地へ逃がす避雷素子19と、雷撃の回数を計数する機能は、
図4の回路(コンデンサC、C1、抵抗素子R0、駆動コイルTなど)を利用し、雷撃以外の避雷器1からの漏れ電流を外部へ出力するポートを設けるものとする。
【0059】
電流計測装置には、非線形特性電流生成回路22と、この非線形特性電流生成回路22に接続された電流計8(
図4参照)と、この電流計8の指針の振れに合わせて目盛13を付した目盛板10(
図3参照)とを備える。
【0060】
非線形特性電流生成回路22は、漏れ電流の範囲を超える電流の閾値(5mA付近)を境に電圧−電流特性(
図6参照)が変化するよう構成されている。電流計8は放電度数計から非線形特性電流生成回路22を通じて入力される漏れ電流を計測する。
【0061】
また、避雷器1に、雷撃以外の電流(漏れ電流)を出力するポートを設け、このポートに電流計測装置を接続し、避雷器1から入力される漏れ電流を電流計測装置が計測するようにしてもよい。
【0062】
この場合、電流計測装置には、非線形特性電流生成回路22と、この非線形特性電流生成回路22に接続された電流計8、この電流計8に設けられた目盛板10を備えるものとする。
【0063】
非線形特性電流生成回路22は、漏れ電流の範囲を超える電流の閾値(5mA付近)を境に電圧−電流特性が変化するよう構成する。電流計8は雷撃以外に避雷器1から入力される避雷器1の電流を計測し、計測した電流に応じて指針を振らせる。目盛板10は電流計8の指針の振れに合わせて目盛13を付したものとする。
【0064】
本発明の実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。