(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施の形態に係る基板位置認識装置(基板位置認識ユニット100)、位置認識加工装置10および基板製造方法について、図面を参照しながら説明する。なお、位置認識加工装置10を説明するのに先立って、検査対象となるフレキシブルプリント基板100の構成について説明し、その後に、位置認識加工装置10および基板製造方法について説明する。
【0020】
図1は、検査対象であるLEDパッケージが実装された基板を示す概略的な図である。基板20は、たとえばフレキシブルプリント基板21に、アルミニウム製の放熱板22が貼付されたものである。このフレキシブルプリント基板21の所定の位置には、たとえば表面実装タイプのLEDパッケージ30が実装されている。このLEDパッケージ30は、白色光を発光するものであり、青色に発光可能なLED素子31と、そのLED素子31を覆うように配置された黄色の蛍光体32を備えている。このため、LED素子31が青色に発光すると、蛍光体32では、青色の補色である黄色を発光する。そして、これらの光を混合することで、白色光を出射可能としている。
【0021】
また、蛍光体32の周囲には、モールド部33が設けられている。モールド部33は、白色または白色に近い明度が高い色に設けられている。なお、本実施の形態では、蛍光体32とモールド部33は、矩形または略矩形となるように設けられている(
図2参照)。しかしながら、蛍光体32およびモールド部33は、円形など、その他の形状に設けられていても良い。
【0022】
また、基板20は、フレキシブルプリント基板21を用いているが、リジット基板等のようなフレキシブルプリント基板21以外の基板を用いても良い。また、アルミニウム製の放熱板22を備えない構成を採用しても良い。
【0023】
図2は、基板20の構成を示す平面図である。なお、
図2では、基板20において形成予定の取付孔24を破線で示している。
図2に示すように、基板20には、角度ターゲット23が形成されている。この角度ターゲット23は、フレキシブルプリント基板21の予め定められた位置に形成されている。そして、基板20に、レンズを取り付けるための取付孔24を加工する場合には、この角度ターゲット23と、LEDパッケージ30の蛍光体32の位置を認識し、その認識結果に基づいて、取付孔24を基板20に形成する。
【0024】
ここで、角度ターゲット23は、たとえば2つ等のように複数設けることで、それぞれの角度ターゲット23の位置に基づいて、基板20の傾斜角度を算出することができる。このため、角度ターゲット23は、基板20の傾斜角度を算出するために用いられている。なお、角度ターゲット23は、基板20の銅箔をエッチング等で除去した部位であっても良く、除去されずに残存した島状の部分であっても良く、銅箔のみならずポリイミドの基材を貫通した貫通孔であっても良い。また、角度ターゲット23は、基板20ではなく放熱板22に形成しても良く、基板20と放熱板22の両方に形成しても良い。
【0025】
図3は、本実施の形態の位置認識加工装置10の構成を示す概略図である。
図1に示すように、位置認識加工装置10は、基板位置認識ユニット100と、基板加工ユニット120と、駆動機構130と、制御装置140と、画像処理装置200(画像処理手段に対応)を有している。なお、基板位置認識ユニット100は、基板位置認識装置に対応している。また、基板加工ユニット120は基板加工手段に対応し、画像処理装置200は画像処理手段に対応している。
【0026】
基板位置認識ユニット100は、設置された基板に対して、青色光を照射し、基板から反射された反射光をカメラ103で撮像する。そして、撮像された画像データに基づいて、基板に実装されているLEDパッケージ30の位置を認識するものである。
【0027】
この基板位置認識ユニット100は、照明灯101と、観察フィルタ102と、カメラ103と、レンズ鏡筒104とを有している。なお、照明灯101は照明手段に対応し、カメラ103は撮像手段に対応する。
【0028】
照明灯101は、LEDパッケージ30が実装された基板20に青色の光を照射する。この照明灯101は、たとえばリング状に設けられていても良く、複数個の光源を備える構成としても良い。なお、認識対象が青色に発光可能なLED素子31と蛍光体32で構成される白色のLEDパッケージ30である場合、照明灯101は、青色光か、または青色成分を含む光(たとえば白色光)を照射する構成となっている。なお、青色光としては、たとえば435nm〜480nmの波長の光があるが、本実施の形態の青色光は、この波長よりも若干異なる領域であっても良い。たとえば、本実施の形態における青色光は、400nm〜500nmの範囲の波長の光であっても良い。
【0029】
なお、照明する波長としては、認識対象のLEDパッケージ30が使用している蛍光体32が吸収する励起波長帯であることが好ましい。なぜなら、この励起波長帯で観察すれば、照明光が吸収され暗く映り、白色のモールド部33は光の波長に関係なく一定の反射率を有するからである。白色のLEDパッケージ30を認識対象とした場合、照明光の波長としては一般的な白色のLEDパッケージ30で採用されている青色のLED素子31の波長帯である450nm〜470nmのものを採用することができる。それは、LEDパッケージ30の蛍光体32が当該波長の光を吸収して蛍光発光するように選択されているはずだからである。また、観察フィルタ102は、後述するように蛍光体32からの蛍光をカットするため、照明は励起波長を含む白色でも良く、認識対象と同じLEDパッケージを照明手段としても良い。その場合でも、照明手段のLEDパッケージが備えるLED素子が、認識対象のLEDパッケージ30が備えるLED素子31と同一なため、認識対象のLEDパッケージ30の蛍光体32は、照明光を吸収して蛍光発光する。
【0030】
また、上記の青色光を含む白色光を出射可能なハロゲンランプ、キセノンランプ等の白色照明を照明手段としても良い。その場合には、カメラ103に近赤外光が入射しないよう、照明灯101(光源)側またはカメラ103側に近赤外カットフィルタを配置する。
【0031】
観察フィルタ102は、基本的にカメラ103が感度を有する波長帯で励起波長以外の光をカットするものである。つまり、観察フィルタ102は、蛍光体32からの蛍光をカットするように構成されている。観察フィルタ102は、照明光よりも長波長領域の光を全てカットするものとしても良いが、蛍光領域の光を少なくともカットできるものであれば、長波長領域の光を全てカットできなくても良い。
【0032】
なお、青色光を出射するLED素子31を使用すると共に黄色に発光する蛍光体32を使用する白色のLEDパッケージ30を認識対象とする場合、観察フィルタ102は、市販のRGBフィルタのうちの400nm〜500nmの波長の光を透過するBフィルタ(青色フィルタ)を使用することができる。なお、RGBフィルタとしては、ダイクロイックフィルタの方がコントラストが良好であるが、色素タイプのフィルタを用いることもできる。ダイクロイックタイプのBフィルタは、たとえば400nm〜500nmの波長領域で透過率が90%である。これに対し、色素タイプのフィルタでは、透過率を縦軸、波長を横軸としたグラフにおいて透過率を示す曲線は、透過率のピークが50%程度のなだらかな山型となる。また、ダイクロイックフィルタでは、フィルタ製作時に透過波長域の調整が可能なので、認識対象とするLED素子31と蛍光体32の特性に合わせて選択することができる。
【0033】
青色光を出射するLED素子を使用すると共に、緑色に発光する緑色蛍光体と赤色に発光する赤色蛍光体を使用する高演色タイプのLEDパッケージを認識する場合には、緑色蛍光体の発光スペクトルが500nmよりも短波長の領域に差し掛かる。このため、Bフィルタ(青色フィルタ)を使用した場合にコントラストが十分でない場合、波長のカット端が500nmよりも短波長となるフィルタ(たとえば、480nmの波長の光からカットするようなフィルタ)を使用することで、コントラストを向上させることができる。
【0034】
カメラ103は、CCD(Charge Coupled Device)イメージセンサやCMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサ等の撮像素子を搭載していて、撮影によって基板20の画像データを取得することが可能となっている。なお、カメラ130は、白黒カメラの方が分解能が高いが、カラーカメラでも良い。
【0035】
また、レンズ鏡筒104は、カメラ103のうち光が入射される側に取り付けられている。レンズ鏡筒104の内部には、たとえばテレセントリックレンズのような光学系が収納されていて、このレンズ鏡筒104を通過した光像(出射光)をカメラ103に出射する。
【0036】
次に、基板加工ユニット120について説明する。基板加工ユニット120は、レーザ発振器121と、光路122と、集光系123と、ノズル124と、アシストガス供給源125と、を備えている。
【0037】
レーザ発振器121は、所定の波長のレーザ光を発振する部分である。光路122は、たとえばミラーや光ファイバ等のように、レーザ発振器121から出射されたレーザ光を集光系123に導く部分である。集光系123は、光路122から出射されたレーザ光を、適切なビーム径に集光する部分である。ノズル124は、集光系123で集光されたレーザ光を出射する部分である。なお、ノズル124から出射されたレーザ光は、上述した基板20の取付孔24を形成する部位に出射することで、取付孔24が基板20に形成される。
【0038】
また、基板位置認識ユニット100および基板加工ユニット120は、駆動機構130によって移動可能となっている。駆動機構130は、図示を省略するモータを備え、このモータの駆動によって、基板位置認識ユニット100および基板加工ユニット120を、基板20と平行な平面方向(X方向およびY方向;
図2参照)に移動可能としている部分である。また、駆動機構130は、さらに基板20に対して上下する方向である高さ方向に移動可能としても良い。なお、駆動機構130は、基板位置認識ユニット100および基板加工ユニット120を移動可能とする構成ではなく、基板20側を移動可能とする構成としても良い。
【0039】
また、制御装置140は、駆動機構130の駆動を制御する部分である。この制御装置140は、画像処理装置200に接続されていて、その画像処理装置200での画像処理結果に基づいて、駆動機構130の駆動を司る。なお、画像処理装置200は、たとえばコンピュータであり、外部記憶装置を含むメモリに記憶されている所定の画像処理プログラムを実行することで、カメラ103から送信された画像データに対して、所定の画像処理を実行することを可能としている。
【0040】
なお、
図4に示すように、画像処理装置200は、CPU(Central Processing Unit)210と、主記憶装置211と、補助記憶装置212と、画像処理回路213と、インターフェース214と、バス215と、表示装置216と、入力装置217とを主要な構成要素としている。CPU210は、主記憶装置211や補助記憶装置212に格納されているプログラムに従って各種演算処理を実行すると共に、基板位置認識ユニット100、基板加工ユニット120、および駆動機構130やその他の装置の動作を制御する部分である。
【0041】
主記憶装置211は、CPU210が直接アクセスできる記憶装置であり、たとえばROM211aやRAM211bを備えている。ROM211aは、CPU210が実行する基本的なプログラムやデータを格納しているメモリである。RAM211bは、CPU210が実行途中のプログラムや、演算途中のデータ等を一時的に格納するメモリである。
【0042】
補助記憶装置212は、ハードディスクやフラッシュメモリといった記録媒体を備え、CPU210からの要求に応じて、記録媒体に記録されているデータやプログラムを読み出すと共に、CPU210の演算処理の結果として発生したデータを、記録媒体に記録する記録装置である。
【0043】
画像処理回路213は、ビデオメモリ等を備え、CPU210から供給された描画命令に基づいて描画処理を実行し、得られた画像データを映像信号に変換して表示装置216に供給する。なお、たとえば画像処理回路213としてGPU(Graphics Processing Unit)を用いた場合には、CPU210と比較して並列的な演算速度が速いものの、GPUを省略してCPU210にて演算させる構成とすることもできる。
【0044】
インターフェース214は、入力装置217やカメラ103といった機器から供給された情報の表現形式を内部形式に変換して読み込む部分である。かかるインターフェース214としては、USB(Universal Serial Bus)を始めとして、種々の規格のものを用いることができる。バス215は、CPU210、主記憶装置211、補助記憶装置212、画像処理回路213およびインターフェース214を相互に接続し、これらの間でデータの授受を可能とする信号線である。
【0045】
表示装置216は、たとえば、LCD(Liquid Crystal Display)モニタやCRT(Cathode Ray Tube)モニタ等のように、画像処理回路213から出力された映像信号に応じた画像を表示する装置である。また、入力装置217は、たとえばキーボードまたはマウス等の入力デバイスであり、ユーザの操作に応じた情報を生成して出力する。
【0046】
<機能ブロックと処理フローについて>
以上のようなCPU210等のハードウエアと、主記憶装置211や補助記憶装置212に記憶されているソフトウエアおよび/またはデータの協働、または特有の処理を行う回路や構成要素の追加等によって、
図5のブロック図に示す構成が機能的に実現されている。
図5は、カメラ103から送信された画像データが画像処理装置200へ入力された場合に、その画像データに対して画像処理を行う際の機能ブロックを示す図である。
【0047】
図5に示すように、画像処理装置200は、外形サーチ部220と、蛍光体近傍領域切出部221と、蛍光体抽出部222と、重心計算部223と、角度ターゲット算出部224と、取付孔算出部225とを有している。なお、これらの構成については、
図6の処理フローの各ステップの説明の中で、併せて説明する。
【0048】
(ステップS1:基板の撮像)
所定の撮像タイミングが到来した場合、または作業者からの指示等によって、制御装置140は、照明灯101を作動させ、さらにカメラ103を作動させて、LEDパッケージ30を含めた基板20の撮像を行う。このとき、照明灯101からは基板20およびLEDパッケージ30に向けて、青色光または青色成分を含む光(白色光など)が出射される。すると、
図7に示すような画像データD10が取得され、カメラ103は、その画像データを画像処理装置200に送信する。なお、このステップS1は、撮像工程に対応する。
【0049】
ここで、本実施の形態では、カメラ103で基板20を撮像する際に、青色の観察フィルタ102を介して撮像されている。したがって、この撮像においては、モールド部33から反射される光のうち、短波長域の青色光の成分は、青色の観察フィルタ102を通過するが、蛍光体32から出射される黄色の蛍光は、青色の観察フィルタ102で反射または吸収され、ほとんど通過することができない。そのため、青色の観察フィルタ102を介してカメラ103で撮像すると、白色のモールド部33は明るく映り、蛍光体32は暗く映る。
【0050】
なお、以下の説明では、白色のモールド部33を撮像した部位を、モールド部撮像部位D11と称呼する。また、蛍光体32を撮像した部位を、蛍光体撮像部位D12と称呼する。また、モールド部撮像部位D11の周囲に存在する、基板20を撮像した暗い領域を、基板撮像部位D13と称呼する。
【0051】
(ステップS2:LEDパッケージの外形形状のサーチ)
次に、画像処理装置200は、画像データD10の中から、LEDパッケージ30の外形形状をサーチする。
図5に示す外形サーチ部220は、カメラ103から送信された画像データD10の中から、LEDパッケージ30の外形形状をサーチする部分である。
図7に示すように、撮像された画像データD10においては、LEDパッケージ30を撮像したモールド部撮像部位D11と、その周囲の基板撮像部位D13とでは、明暗の差が大きくなっている。
【0052】
すなわち、上述した青色の観察フィルタ102を介してカメラ103が受光すると、モールド部撮像部位D11では階調値が大きく、周囲の基板撮像部位D13では階調値が小さくなっている。したがって、この明暗差に基づいて、LEDパッケージ30の外形(輪郭)の位置を認識することが可能となっている。この場合、たとえば、明るい部分(モールド部撮像部位D11)と暗い部分(周囲の基板撮像部位D13)との間の明るさに対応した所定の閾値を超えるか否かにより、外形のエッジを認識可能となっている。
【0053】
ここで、この外形サーチ部220での外形形状のサーチは、蛍光体32を探索するための手がかりとなる部分であるので、サーチ精度はさほど高くなくても良い。また、LEDパッケージ30の外形(輪郭)としては、実際のLEDパッケージ30の外形(輪郭)としても良く、実際のLEDパッケージ30の外形(輪郭)ではなくモールド部33の外形(輪郭)を外形の代わりとしても良い。なお、ステップS2からステップS5は、蛍光体位置算出工程に対応する。
【0054】
(ステップS3:蛍光体近傍領域の切り出し)
次に、ステップS2でサーチされた外形形状に基づいて、蛍光体近傍領域切出部221では、蛍光体32を含んだ蛍光体近傍隣接領域D14の切り出しを行う。
図8は、蛍光体近傍領域切出部221で切り出される、画像データD10の中の蛍光体近傍隣接領域D14のイメージを示す図であり、破線で囲まれた部分が切り出される。
【0055】
この蛍光体近傍隣接領域D14には、蛍光体撮像部位D12と、その周囲のモールド部撮像部位D11が含まれている。そして、
図8から明らかなように、蛍光体撮像部位D12とモールド部撮像部位D11の間では、明暗の差が大きくなっている。したがって、この明暗差に基づいて、蛍光体32の外形(輪郭)の位置を認識することが可能となっている。
【0056】
(ステップS4:蛍光体近傍領域の2値化)
次に、蛍光体抽出部222では、ステップS3で切り出された蛍光体近傍隣接領域D14の2値化処理を行う。
図9は、2値化処理を行ったイメージを示す図である。ステップS3で切り出された蛍光体近傍隣接領域D14は、
図8に示すように、蛍光体撮像部位D12と、その周囲のモールド部撮像部位D11が含まれており、それらの間の明暗差が大きくなっている。したがって、所定の閾値で、たとえば白または黒の2階調となるように2値化処理を行うことで、蛍光体32の撮像部位である、蛍光体撮像部位D12に対応する部分が黒色となり、蛍光体32が存在する領域を判別することができる。以下の説明では、2値化処理を行った結果、蛍光体32が存在する黒色の部分を、蛍光体2値化領域D15と称呼する。
【0057】
ここで、蛍光体撮像部位D12を2値化した場合、その処理結果によっては、蛍光体2値化領域D15内の黒い部分の中に白い部分が所々に存在する場合がある。しかし、そのような部位も、本来は蛍光体32が存在する部分のはずである。したがって、この2値化処理では、蛍光体2値化領域D15内の白い部分を黒色となるように穴埋めしてから後述するステップS5での重心計算を行っても良く、白い部分が存在するままの状態でステップS5の重心計算を行っても良い。
【0058】
なお、上述の2値化処理では、蛍光体32の境界線を定めるのに際して、モールド部33が示す画素値と、黒色の蛍光体32が示す画素値との間の勾配の中間近傍としても良い。
【0059】
(ステップS5:抽出された蛍光体の中心位置の算出)
次に、重心計算部223では、ステップS4の2値化処理により抽出された蛍光体32の面積の重心位置を算出することで、蛍光体32の中心位置を算出する。この場合、たとえば蛍光体2値化領域D15の領域内に存在する黒色の画素の位置情報(X座標とY座標)を積算し、画素数で除算したX座標およびY座標の平均値を、重心位置とする。このとき、蛍光体2値化領域D15の輪郭で囲まれた範囲内を、すべて黒色の画素であるとして、重心位置を算出することができる。あるいは、たとえば蛍光体2値化領域D15の輪郭で囲まれた範囲内を、すべて黒色の画素であるとし、その蛍光体32の隅角点(たとえば蛍光体2値化領域D15(蛍光体32)が矩形である場合には4つの隅角点)のX座標およびY座標を求め、それらの隅角点のX座標およびY座標の平均値を、重心位置として使用しても良い。
【0060】
また、蛍光体2値化領域D15(蛍光体32)が矩形であれば、この蛍光体2値化領域D15の輪郭を構成する4つの辺におけるそれぞれ中点を求める等して、中心位置の計算を行うようにしても良い。しかしながら、重心位置を計算し、それを中心位置とすれば、蛍光体32の形状が矩形や円形、楕円形等のような矩形以外の任意の形状であっても、同じ方法により計算することができる。
【0061】
(ステップS6:角度ターゲット間の角度の算出)
次に、角度ターゲット算出部224は、カメラ103から送信された画像データD10に基づいて、角度ターゲット23間の角度の算出処理を行う。この角度ターゲット23は、基板20上のLEDパッケージ30に対して、所定の距離だけ離間した位置に存在している。したがって、角度ターゲット算出部224が基板20上における角度ターゲット23の位置を算出する場合、上述で算出された蛍光体2値化領域D15(蛍光体32)の重心位置から、大まかな角度ターゲット23の位置を算出し、その角度ターゲット23の位置に基づいて2つの角度ターゲット23間の角度を算出することができる。
【0062】
このとき、蛍光体撮像部位D12(蛍光体32)とモールド部撮像部位D11(モールド部33)の境界の傾きや位置から、角度ターゲット23の大まかな位置を算出するようにしても良い。この算出により、上述のように角度ターゲット23が存在すると予想された基板20上の領域から、画像データD10の一部を切り出す。その後、角度ターゲット算出部224は、ステップS4の2値化処理と同様の処理を行い、さらにステップS5と同様の重心位置を算出する。それにより、角度ターゲット算出部224は、基板20上における、2つの角度ターゲット23の位置を算出し、角度ターゲット23間の角度を算出することができる。
【0063】
なお、ステップS6の角度ターゲット23の認識処理は、LEDパッケージ30に対する蛍光体32の重心位置を算出するのに先立って、行うようにしても良い。この場合、角度ターゲット23の基板20上の位置を起点として、基板20におけるLEDパッケージ30の大まかな位置を算出することができる。なお、このステップS6は、角度ターゲット位置算出工程に対応する。
【0064】
(ステップS7:取付孔を形成する位置の算出)
次に、ステップS5で算出された蛍光体32の重心位置と、ステップS6で算出された角度ターゲット23の角度に基づいて、取付孔算出部225は、基板20において取付孔24を形成する位置を算出する。
図2に示すように、基板20には、たとえば2つの角度ターゲット23が形成されていて、基板20の位置や傾き等は、この角度ターゲット23から算出可能となっている。したがって、2つの角度ターゲット23に対する蛍光体32が分かれば、基板20において取付孔24を形成する位置を算出することができる。したがって、取付孔算出部225は、角度ターゲット23と蛍光体32に基づいて、基板20において取付孔24を形成する位置を算出する。なお、このステップS7は、取付孔位置算出工程に対応する。
【0065】
(ステップS8:取付孔の形成)
次に、ステップS7で算出された、基板20において取付孔24を形成する位置に対し、基板加工ユニット120を作動させて、取付孔24を形成する。このとき、制御装置140は、駆動機構130を作動させて基板20に対する、ノズル124の位置合わせを行いながら、レーザ発振器121を作動させて、ノズル124からレーザ光を出射する。さらに、駆動機構130は、ノズル124からレーザ光を出射しながら基板加工ユニット120を移動させる。この移動は、レーザ光の照射部位が取付孔24の輪郭となるように行う。それにより、基板20に取付孔24が形成される。このとき、蛍光体32の位置に基づいて取付孔24が形成されているので、蛍光体32と取付孔24の位置精度は高い状態となっている。したがって、取付孔24にレンズを取り付けた場合、蛍光体32とレンズとの間の位置精度が高くなり、蛍光体32に対してレンズの光軸がずれるのを防止可能となっている。なお、このステップS8は、取付孔形成工程に対応する。
【0066】
なお、このステップS8の後に、取付孔24を介して光学部品を基板20に取り付ける。それにより、光学部品とLEDパッケージ30の光軸は、精度良く位置合わせされた状態となる。
【0067】
<3.効果について>
以上のような構成の基板位置認識装置(基板位置認識ユニット100)、位置認識加工装置10および基板製造方法によると、作動時に蛍光発光する蛍光体32を備えるLEDパッケージ30の基板20における実装位置を認識する基板位置認識装置(基板位置認識ユニット100)においては、基板20に対して青色成分を含む光を、照明灯101(照明手段)から照射する。また、観察フィルタ102は、基板20からの励起波長域の反射光は透過させると共に、その励起波長域より長波長の蛍光発光は透過させない。照明灯101が白色の場合、青色光よりも長波長の反射光もあるが、観察フィルタ102で蛍光と共にカットされる。また、カメラ103(撮像手段)は、観察フィルタ102を透過した光を撮像し、画像処理装置200(画像処理手段)は、カメラ103(撮像手段)が撮像した画像データD10に基づいて、基板20における蛍光体32の位置を算出する。
【0068】
したがって、観察フィルタ102では、青色光は透過される。一方、蛍光体32は、励起光である青色光を吸収して長波長である黄色の蛍光を発するため、青色の反射率は低い。しかしながら、白色のモールド部33は、青色光をそのまま反射するため、青色光の反射率は高い。そのため、青色の観察フィルタ102を通して撮像すると、
図7に示すように、カメラ103が撮像した画像データD10には、モールド部撮像部位D11と蛍光体撮像部位D12との間の明暗差(階調値の差)が大きくなる。したがって、画像データD10における蛍光体撮像部位D12の位置を容易に算出することができ、それによって基板20における蛍光体32の位置を算出することが可能となる。
【0069】
また、特許文献1の第1の実施形態の構成にて実施して見たところ、蛍光体32とモールド部33とを撮像した画像データD30において、モールド部33に対応するモールド部撮像部位D31と、蛍光体32に対応する蛍光体撮像部位D32との明暗差が、
図10に示すように小さくなった。これは、特許文献1の第1の実施形態の構成では、青色光を透過させるものの黄色光はカットする観察フィルタ102に相当する構成が存在しない。蛍光体32では、入射された青色光は黄色光に変換されるが、白黒カメラは、青色光にも黄色光にも感度を有している。そのため、モールド部33で反射した青色光と蛍光体32から出射される黄色の蛍光の間の明暗差は小さくなる。
【0070】
これに対して、本実施の形態では、特許文献1の第1の実施形態に開示の構成とは異なり、基板位置認識装置(基板位置認識ユニット100)は、観察フィルタ102を有している。したがって、蛍光体32から出射される黄色の蛍光を透過させずにカットするので、蛍光体32を暗く撮像することができる。したがって、モールド部撮像部位D11と蛍光体撮像部位D12との間の明暗差(階調値の差)が大きくなるので、画像データD10における蛍光体撮像部位D12の位置を容易に算出することができ、それによって基板20における蛍光体32の位置を算出することが可能となる。
【0071】
図11は、特許文献2のように蛍光体32が明るく撮像されると共にモールド部33が暗く撮像される場合の、蛍光体32の周囲の撮像結果を示す図である。
図11に示すように、蛍光体32を撮像した際に、モールド部33よりも明るく撮像された場合の様子を示す図である。
図11に示す画像データD20では、蛍光体32を撮像した場合、その周囲に存在する、暗く撮像されたモールド部33に対応するモールド部撮像部位D21に、明るく撮像された蛍光体32に対応する蛍光体撮像部位D22との影響が及んでしまい、蛍光体32(蛍光体撮像部位D22)の輪郭が不明確になってしまう。それは、蛍光体32からの蛍光が白色のモールド部33でそのまま反射し、散乱するためである。したがって、蛍光体32を撮像した蛍光体撮像部位D22の重心位置は、たとえば階調値の閾値の設定状況等により、その位置精度が低下してしまう。
【0072】
これに対して、本実施の形態では、照明灯101での照明の波長に蛍光体32の励起波長を使用するので、白色のモールド部33で散乱した反射光は、蛍光体32で吸収され、蛍光に変換される。蛍光は観察フィルタ102でカットされるため、画像データD20上の蛍光体撮像部位D12に対して、白色のモールド部33からの散乱光の影響は少なく、蛍光体32の輪郭が明確な状態で撮像可能となる。それにより、蛍光体32を撮像した蛍光体撮像部位D12の重心位置を精度良く算出することができる。
【0073】
また、本実施の形態では、画像処理装置200(画像処理手段)は、基板20に形成されている複数の角度ターゲット23の位置を算出することで複数の角度ターゲット23間の角度を算出するための角度ターゲット算出部224を備えている。この角度ターゲット算出部224は、蛍光体32の基板20上における位置を算出するのに前後して、複数の角度ターゲット23間の角度を算出している。
【0074】
このため、基板20上では、取付孔24を形成する位置をレンズ等の光学部品に対して精度良く位置決めすることができる。したがって、基板20の取付孔24を介してレンズ等の光学部品を取り付けた際に、光学部品の光軸に対して蛍光体32が位置ずれするのを防止することが可能となる。
【0075】
また、本実施の形態では、画像処理装置200(画像処理手段)は、画像データD10の中から蛍光体32の画像部位を抽出する蛍光体抽出部222を備えている。この蛍光体抽出部222では、蛍光体抽出部222の画像部位を含む画像データである蛍光体近傍隣接領域D14の2値化処理を行うことで、蛍光体32の画像部位(蛍光体撮像部位D12)を抽出している。このようにする場合、画像データD10の中から、蛍光体32に対応する部位を容易に抽出することができる。
【0076】
また、本実施の形態では、画像処理装置200(画像処理手段)は、蛍光体抽出部222で抽出された蛍光体32の画像部位(蛍光体撮像部位D12)に基づいて、蛍光体32の面積における重心位置を算出する重心計算部223を備えている。したがって、この重心計算部223での計算結果に基づくことで、LEDパッケージ30(蛍光体32)の中心に対して取付孔24を形成する位置を、精度良く算出することができる。
【0077】
さらに、本実施の形態では、画像処理装置200(画像処理手段)は、蛍光体32の位置の算出結果と、複数の角度ターゲット23間の角度の算出結果に基づいて、基板20において取付孔24を形成する位置を算出する。したがって、基板20において取付孔24を形成する位置を精度良く算出することができる。
【0078】
また、本実施の形態の位置認識加工装置10では、画像処理装置200(画像処理手段)での基板20における蛍光体32の位置の算出結果に基づいて、LEDパッケージ30に対して位置調整された状態で基板20に光学部品を取り付けるための取付孔24を形成する。このため、基板20には、蛍光体32に対して精度の高い状態で、レンズ等の光学部品を取り付けるための取付孔24を形成することができる。
【0079】
<4.変形例>
以上、本発明の一実施の形態について説明したが、本発明はこれ以外にも種々変形可能となっている。以下、それについて述べる。
【0080】
上述の実施の形態においては、基板加工ユニット120を用いて、ノズル124からレーザ光を出射して取付孔24を形成するようにしている。しかしながら、基板20への取付孔24の形成は、レーザ光に限られるものではない。たとえば、ドリル等の工具を装着した工作機械を用いて、取付孔24を形成しても良い。
【0081】
また、
図1においては、角度ターゲット23は、基板20を打ち抜いた部分としている。しかしながら、角度ターゲット23は、角度ターゲット23に所定の色でマーキングする等、基板20を打ち抜かない部分としても良い。また、たとえば基板20に対して非貫通の凹状のパンチ穴を形成し、そのパンチ穴を角度ターゲット23としても良い。
【0082】
また、上述の実施の形態では、基板20は、フレキシブルプリント基板21に、アルミニウム製の放熱板22が貼付されたものとしている。しかしながら、基板20は、その他の基板であっても良い。その他の基板としては、たとえばフレキシブルプリント基板に別途のフィルムを貼り合わされたりメッキ部が設けられたもの等が挙げられる。
【0083】
また、上述の実施の形態では、光学部品としては、レンズを例示している。しかしながら、光学部品はレンズに限られるものではない。たとえば、ミラーを始めとする反射板、偏光板、波長板、プリズム等が挙げられる。
【0084】
また、上述の実施の形態では、観察フィルタ102は、照明灯101とレンズ鏡筒104の間に配置されている。しかしながら、観察フィルタ102は、照明灯101と基板20の間に配置しても良い。また、物理的な観察フィルタ102を用いず、画像処理フィルタを用いて、同様の効果を得るようにしても良い。
【0085】
また、上述の実施の形態において、カメラ103として、撮像素子が青色光を認識可能なセンサ素子と、赤色光を認識可能なセンサ素子と、緑色光を認識可能なセンサ素子とを備えるカラーカメラの場合、青色光を認識可能なセンサ素子のみの受光結果に基づいて、後述するような画像データD10を得るようにしても良い。この場合、白黒カメラと比較して、分解能は低下するものの、観察フィルタ102を用いる場合と同様の効果を得ることが可能となる。
【0086】
また、上述の実施の形態では、位置認識加工装置10は、基板位置認識ユニット100と基板加工ユニット120とを有しており、さらに制御装置140および画像処理装置200を有している。しかしながら、これらは1つの装置に組み込まれた構成としても良く、これらが別体的に設けられてネットワーク等を介して接続される構成としても良い。なお、1つの画像処理装置200に対して、複数の位置認識加工装置10がネットワークを介して接続される構成としても良い。この場合、それぞれの位置認識加工装置10のカメラ103から送信される画像データについて画像処理装置200で画像処理を行い、その画像処理結果である取付孔24を形成する位置に関する情報を、制御装置140に送信するようにしても良い。