(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記コントローラは、前記加振信号の複数種の波形候補の中から前記N節直径モードの振幅が最大となる波形を選択し、該選択された波形の前記加振信号を前記加振器の各々に出力するように構成された
ことを特徴とする請求項1乃至4の何れか一項に記載の非接触加振システム。
前記コントローラは、前記コントローラによる前記加振信号の出力時点に対する、前記加振器による加振力の発生時点の遅れ位相に基づいて、各々の前記加振器による加振タイミングを補正するように構成された
ことを特徴とする請求項1乃至6の何れか一項に記載の非接触加振システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した特許文献に記載のものでは、回転翼の周縁に対向する位置で全周にわたって配置した複数の加振器のうち、予め設定した振動モードに対応して選択された加振器を所定のタイミングでONすることで、予め設定した振動モードで動翼が振動するようにしている。
しかし、上述した特許文献に記載のものでは、加振器が円周方向に所定の間隔で配置されているため、予め設定した振動モードに対応して動翼を加振させたい位置と加振器の配置位置とにずれが生じることがある。そのため、予め設定した振動モードで、動翼を高精度に振動させることが難しくなるおそれがある。
【0005】
上述の事情に鑑みて、本発明の少なくとも一実施形態は、予め設定した振動モードで、動翼を高精度に振動させることができる、非接触加振システムを提供することを目的とする。また、本発明の少なくとも一実施形態は、回転機械に生じる振動を抑制する回転機械の振動抑制システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
(1)本発明の少なくとも一実施形態に係る非接触加振システムは、
回転機械の動翼列に加振力をそれぞれ付与可能に構成されるとともに周方向に配列された複数の加振器と、
前記動翼列の回転数を検出するための回転数センサと、
前記複数の加振器にそれぞれ加振信号を出力するためのコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記回転数センサの検出結果から得られる前記動翼列の回転周波数f
rpmと、N節直径モードでの動翼の固有振動数f
iとを用いて、f
in=f
rpm×N±f
iにより表される周波数f
inの前記加振信号を前記加振器の各々に出力するように構成された
ことを特徴とする。
【0007】
上記(1)の構成によれば、f
in=f
rpm×N±f
iにより表される周波数f
inの加振信号を加振器の各々に出力することで、動翼列をN節直径モードで精度よく加振することができる。
【0008】
(2)幾つかの実施形態では、上記(1)の構成において、
前記複数の加振器は、前記周方向において角度γずれて設けられる一対の加振器を含み、
前記コントローラは、前記一対の加振器のうち一方の加振器に出力する加振信号を基準として、N×γの位相差を有する加振信号を前記一対の加振器のうち他方の加振器に出力するように構成された
ことを特徴とする。
【0009】
上記(2)の構成によれば、周方向において角度γずれて設けられる一対の加振器のうち一方の加振器に出力する加振信号を基準として、N×γの位相差を有する加振信号が一対の加振器のうち他方の加振器に出力される。これにより、周方向において角度γずれて設けられる一対の加振器に出力する加振信号の位相を適切化できる。
【0010】
(3)幾つかの実施形態では、上記(1)又は(2)の構成において、前記加振器の個数は2N以下であることを特徴とする。
【0011】
上記(3)の構成によれば、個数が2N以下の加振器によって、回転している動翼列を節直径数Nの高節直径モードの固有振動数f
iで加振することができる。これにより、非接触加振システムにおける加振器の数が2N以下で済むので、非接触加振システムのコスト増を抑制できる。
【0012】
(4)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(3)の何れかの構成において、前記コントローラは、正弦波又は正弦半波で表される前記加振信号を前記加振器の各々に出力するように構成されたことを特徴とする。
【0013】
上記(4)の構成によれば、正弦波又は正弦半波で表される加振信号が加振器の各々に出力されるので、設定した節直径モードで励振しやすくなる。
【0014】
(5)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(4)の何れかの構成において、前記コントローラは、前記加振信号の複数種の波形候補の中から前記N節直径モードの振幅が最大となる波形を選択し、該選択された波形の前記加振信号を前記加振器の各々に出力するように構成されたことを特徴とする。
【0015】
上記(5)の構成によれば、加振信号の複数種の波形候補の中からN節直径モードの振幅が最大となる波形が選択され、該選択された波形の加振信号が加振器の各々に出力されるので、設定した節直径モードで励振しやすくなる。
【0016】
(6)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(5)の何れかの構成において、
前記動翼列の回転方向における基準位置を示す基準位置信号を検出する基準位置センサをさらに備え、
前記コントローラは、前記基準位置信号に基づいて決定される加振タイミングに従って、前記加振信号を生成するように構成されたことを特徴とする。
【0017】
上記(6)の構成によれば、コントローラが基準位置信号に基づいて決定される加振タイミングに従って加振信号を生成するので、精度のよいN節直径モードの振動を動翼列に励起することができる。
【0018】
(7)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(6)の何れかの構成において、前記コントローラは、前記コントローラによる前記加振信号の出力時点に対する、前記加振器による加振力の発生時点の遅れ位相に基づいて、各々の前記加振器による加振タイミングを補正するように構成されたことを特徴とする。
【0019】
上記(7)の構成によれば、加振信号の出力時点に対する加振力の発生時点の遅れ位相に基づいて、各々の加振器による加振タイミングが補正されるので、動翼列に対して加振力を効率的に与えることができる。
【0020】
(8)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(7)の何れかの構成において、
前記複数の加振器は、
第1加振器と、
前記回転機械の軸方向において前記動翼列を挟んで前記第1加振器とは反対側に設けられた第2加振器と、
を含み、
前記コントローラは、前記第1加振器に出力される第1加振信号を基準として、180°位相をずらした第2加振信号を前記第2加振器に出力するように構成された
ことを特徴とする。
【0021】
上記(8)の構成によれば、複数の加振器は、第1加振器と、回転機械の軸方向において動翼列を挟んで第1加振器とは反対側に設けられた第2加振器とを含む。そして、コントローラは、第1加振器に出力される第1加振信号を基準として、180°位相をずらした第2加振信号を第2加振器に出力するように構成されている。これにより、動翼列をより強い加振力で加振することができる。
【0022】
(9)幾つかの実施形態では、上記(1)乃至(8)の何れかの構成において、
前記動翼列の振動変位を検出するための振動変位検出装置をさらに備え、
前記コントローラは、前記振動変位検出装置により検出された前記振動変位が前記動翼列の目標振動変位に近づくように、前記加振器の各々に出力される前記加振信号を補正することを特徴とする。
【0023】
上記(9)の構成によれば、コントローラが、振動変位検出装置により検出された動翼列の振動変位が目標振動変位に近づくように、加振器の各々に出力される加振信号を補正する。これにより、精度のよいN節直径モードの振動を動翼列に励起することができる。
【0024】
(10)幾つかの実施形態では、上記(9)の構成において、
前記振動変位検出装置は、
前記周方向に沿って配列され、前記動翼列の各動翼の通過をそれぞれ検出するための複数の通過検出センサと、
前記複数の通過検出センサの検出信号を処理するための信号処理部と、
を含み、
前記信号処理部は、
前記動翼列が振動していないと仮定したときに前記複数の通過検出センサを各動翼が通過する第1通過タイミングをそれぞれ算出し、
算出した前記第1通過タイミングと前記複数の通過検出センサで実際に検出した各動翼の第2通過タイミングとを比較して前記動翼の振動による変位を算出し、
算出した前記動翼の振動による変位に基づいて前記動翼列の振動変位を算出する
ように構成されたことを特徴とする。
【0025】
上記(10)の構成によれば、振動変位検出装置は、周方向に沿って配列され、動翼列の各動翼の通過をそれぞれ検出するための複数の通過検出センサと、複数の通過検出センサの検出信号を処理するための信号処理部とを含む。信号処理部は、動翼列が振動していないと仮定したときに複数の通過検出センサを各動翼が通過する第1通過タイミングをそれぞれ算出し、算出した第1通過タイミングと複数の通過検出センサで実際に検出した各動翼の第2通過タイミングとを比較して動翼の振動による変位を算出し、算出した動翼の振動による変位に基づいて動翼列の振動変位を算出する。これにより、動翼列の振動変位を精度よく算出できるので、コントローラにおける加振信号の補正の精度が向上し、精度のよいN節直径モードの振動を動翼列に励起することができる。
【0026】
(11)本発明の少なくとも一実施形態に係る回転機械の振動抑制システムは、
回転機械の動翼列に加振力をそれぞれ付与可能に構成されるとともに周方向に配列された複数の加振器と、
前記動翼列の振動変位を検出するための振動変位検出装置と、
前記動翼列の回転数を検出するための回転数センサと、
前記振動変位検出装置により検出される前記振動変位が小さくなるように、前記複数の加振器にそれぞれ加振信号を出力するためのコントローラと、を備え、
前記コントローラは、前記回転数センサの検出結果から得られる前記動翼列の回転周波数f
rpmと、N節直径モードでの動翼の固有振動数f
iとを用いて、f
in=f
rpm×N±f
iにより表される周波数f
inの前記加振信号を生成するように構成された
ことを特徴とする。
【0027】
上記(11)の構成によれば、振動変位検出装置により検出される振動変位が小さくなるように、複数の加振器にそれぞれ加振信号を出力するためのコントローラを備える。このコントローラは、回転数センサの検出結果から得られる動翼列の回転周波数f
rpmと、N節直径モードでの動翼の固有振動数f
iとを用いて、f
in=f
rpm×N±f
iにより表される周波数f
inの加振信号を生成するように構成されている。
これにより、f
in=f
rpm×N±f
iにより表される周波数f
inの加振信号を加振器の各々に出力することで、動翼列のN節直径モードでの振動を効果的に抑制できる。
【0028】
(12)幾つかの実施形態では、上記(11)の構成において、
前記振動変位検出装置は、
前記周方向に沿って配列され、前記動翼列の各動翼の通過をそれぞれ検出するための複数の通過検出センサと、
前記複数の通過検出センサの検出信号を処理するための信号処理部と、
を含み、
前記信号処理部は、
前記動翼列が振動していないと仮定したときに前記複数の通過検出センサを各動翼が通過する第1通過タイミングをそれぞれ算出し、
算出した前記第1通過タイミングと前記複数の通過検出センサで実際に検出した各動翼の第2通過タイミングとを比較して前記動翼の振動による変位を算出し、
算出した前記動翼の振動による変位に基づいて前記動翼列の振動変位を算出する
ように構成された
ことを特徴とする。
【0029】
上記(12)の構成によれば、振動変位検出装置は、周方向に沿って配列され、動翼列の各動翼の通過をそれぞれ検出するための複数の通過検出センサと、複数の通過検出センサの検出信号を処理するための信号処理部とを含む。信号処理部は、動翼列が振動していないと仮定したときに複数の通過検出センサを各動翼が通過する第1通過タイミングをそれぞれ算出し、算出した第1通過タイミングと複数の通過検出センサで実際に検出した各動翼の第2通過タイミングとを比較して動翼の振動による変位を算出し、算出した動翼の振動による変位に基づいて動翼列の振動変位を算出する。これにより、動翼列の振動変位を精度よく算出できるので、動翼列のN節直径モードでの振動をより効果的に抑制できる。
【発明の効果】
【0030】
本発明の少なくとも一実施形態によれば、予め設定した振動モードで、動翼を高精度に振動させることができる。また、本発明の少なくとも一実施形態によれば、回転機械に生じる振動を効果的に抑制できる。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、添付図面を参照して本発明の幾つかの実施形態について説明する。ただし、実施形態として記載されている又は図面に示されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
例えば、「ある方向に」、「ある方向に沿って」、「平行」、「直交」、「中心」、「同心」或いは「同軸」等の相対的或いは絶対的な配置を表す表現は、厳密にそのような配置を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の角度や距離をもって相対的に変位している状態も表すものとする。
例えば、「同一」、「等しい」及び「均質」等の物事が等しい状態であることを表す表現は、厳密に等しい状態を表すのみならず、公差、若しくは、同じ機能が得られる程度の差が存在している状態も表すものとする。
例えば、四角形状や円筒形状等の形状を表す表現は、幾何学的に厳密な意味での四角形状や円筒形状等の形状を表すのみならず、同じ効果が得られる範囲で、凹凸部や面取り部等を含む形状も表すものとする。
一方、一の構成要素を「備える」、「具える」、「具備する」、「含む」、又は、「有する」という表現は、他の構成要素の存在を除外する排他的な表現ではない。
【0033】
〔実施形態1〕
本発明の実施形態1に係る非接触加振システム100を、
図1〜
図7を参照して説明する。
この非接触加振システム100は、振動モード励振装置110(
図1、
図2参照)と、コントローラ200(
図4参照)を主要部材として構成されている。
【0034】
<回転振動試験装置50及び振動モード励振装置110の説明>
まず
図1を参照して、回転振動試験装置50を説明する。この回転振動試験装置50は、本実施形態の非接触加振システム100の振動モード励振装置110が組み込まれて、回転振動試験をするものである。
【0035】
図1に示すように、タービン40は回転軸41と動翼列42とを有する。動翼列42は、回転軸41に多数枚の動翼42aが放射状に配置されることで形成されている。このタービン40の回転試験振動をする場合には、動翼列42を試験室51内に配置した状態で、回転軸41を回転支持柱52,53により回転自在に支持する。試験室51内には、動翼列42に対面する状態で振動モード励振装置110を近接して配置している。
また、タービン40の回転数及び回転方向のゼロ位置を検出する回転検出器60が、回転軸41に近接して配置されている。
【0036】
ここで振動モード励振装置110の構成を、動翼列42側から見た状態で示す
図2を参照して説明する。
図2に示すように、ベッド111上に配置した脚台112により、円環状の支持環113が支持されている。この支持環113の内周側には、円環状の取付治具114が取り付けられている。この例では、8台の加振器115−1〜115−8と8台の受振器116−1〜116−8が取付治具114に取り付けられている。なお、加振器115−1〜115−8及び受振器116−1〜116−8の設置台数は8台に限定されるものではなく、その設置台数は任意に設定することができる。本実施形態では、後述するように動翼列42に対して加振力を与えるように構成されているので、精度のよいN節直径モードの振動を動翼列42に励起することができるとともに、従来の非接触加振システムと比べて加振器115の個数を削減できる。例えば、本実施形態では、節直径数Nの2倍(2N)以下の個数の加振器115によって精度のよいN節直径モードの振動を動翼列42に励起することができる。
【0037】
加振器115−1〜115−8は電磁石であり、電流が供給されると、動翼42aを吸引する吸引力を発生する。受振器116−1〜116−8は、磁性体である動翼42aが高速で通過すると、電磁誘導作用により電圧を発生し、この誘起電圧を検出信号として出力する。
【0038】
加振器115−1〜115−4は、
図2において、取付治具114の右側領域において周方向に沿い並んで配置されている。具体的には、加振器115−1の配置位置から見て、時計回り方向に11.25°、22.5°、33.75°ずれた位置に、加振器115−2,115−3,115−4が配置されている。
加振器115−5〜115−8は、
図2において、取付治具114の左側領域において周方向に沿い並んで配置されている。具体的には、加振器115−5の配置位置から見て、時計回り方向に11.25°、22.5°、33.75°ずれた位置に、加振器115−6,115−7,115−8が配置されている。また、加振器115−5は、加振器115−1から見て、周方向に180°ずれた位置に配置されている。
なお、11.25°=(90°÷8)であり、22.5°=(90°÷8)×2であり、33.75°=(90°÷8)×3である。
【0039】
回転振動試験をする際には、図示しない回転駆動源により回転軸41に回転力を入力して、タービン40を試験に必要な回転数で回転させる。また予め設定した振動モード(例えば、8節直径モード)で動翼42aが面外方向、すなわち動翼列42における各動翼42aが配列された面とは交差する方向に振動するように、加振器115−1〜115−8により動翼42aに吸引力を与えて加振する。
【0040】
動翼列42が振動すると、受振器116−1〜116−8からは、そのときの振動状態に応じた検出信号が出力され、コントローラ200は検出信号を基に、動翼42aの振動状態(振動モード等)を検出することができる。なお、
図3は、動翼列42が8節直径モードで面外方向に振動している状態を示す模式図である。
このようにして、回転している動翼列42が、予め設定した振動モードで振動しているときに、動翼42aに取り付けた各種センサ(図示省略)により動翼42aの状態を検出して、動翼42aの振動応答を計測し、振動特性(固有振動数、減衰など)を分析している。
【0041】
<コントローラ200の説明>
次に
図4を参照しつつ、コントローラ200の構成及びコントローラ200による制御について説明する。なお、コントローラ200は、ソフトウエア(プログラム)とハードウエア(コンピュータ)とが協働して情報処理を行う情報処理装置であり、
図4では、各演算処理機能(演算処理プロセス)をブロック図にして示している。
【0042】
入力部210から、コントローラ200に、予め設定した振動モード(節直径モード)を示す節直径数N(但し、Nは整数)が入力される。コントローラ200は、節直径数Nで示す振動モード(N節直径モード)で動翼列42が振動するように、通電指令部201−1〜201−8から加振指令信号a1〜a8を出力する。加振指令信号a1〜a8は、波形、出力タイミング、周波数、位相が調整されたものであり、その調整状態については後述する。
【0043】
アンプ220−1〜220−8は、加振指令信号a1〜a8に対応した波形、出力タイミング、周波数、位相となっている加振電流A1〜A8を発生して加振器115−1〜115−8に供給する。電流検出センサ221−1〜221−8は、加振電流A1〜A8の波形、出力タイミング、周波数、位相をセンシングしてフィードバック信号f1〜f8を通電指令部201−1〜201−8にフィードバックする。通電指令部201−1〜201−8は、フィードバック信号f1〜f8を受けてフィードバック制御をすることにより、加振指令信号a1〜a8の波形、出力タイミング、周波数、位相をより適切に調整する。
【0044】
このようにして、波形、出力タイミング、周波数、位相が適切に調整された加振電流A1〜A8が加振器115−1〜115−8に供給されると、加振器115−1〜115−8は、加振電流A1〜A8の波形、出力タイミング、周波数、位相に応じた吸引力を発生して、回転している動翼列42を加振する。
【0045】
受振器116−1〜116−8は、回転している動翼列42の振動に応じた検出信号b1〜b8を出力する。検出信号b1〜b8は、アンプ222−1〜222−8で増幅されてから、コントローラ200の振動モード検出部202に送られる。振動モード検出部202は、検出信号b1〜b8を基に、動翼列42の振動モードを検出する。検出した振動モード波形は、表示部203に表示される。
【0046】
回転検出器60は、タービン40の回転数及び回転方向のゼロ位置を検出して、回転数信号R及びゼロ位置信号Zを出力する。回転数信号R及びゼロ位置信号Zはコントローラ200に送られる。
【0047】
ここで、加振指令信号a1〜a8の波形、出力タイミング、周波数、位相をどのように選択し調整するのかを説明する。
【0048】
コントローラ200は、前述した通電指令部201−1〜201−8、振動モード検出部202、表示部203の他に、統合演算・指令部204、加振周波数・位相演算部205、加振タイミング演算部206、加振波形選択部207、調整位相演算部208を有している。これらの演算部が協調して下記の演算処理を行っている。
【0049】
(加振指令信号の周波数の決定)
加振周波数・位相演算部205は、入力部210から節直径数N(例えばN=8)が入力されると、N節直径モードで動翼列42を振動させる、加振指令信号a1〜a8の周波数(加振周波数)を、次の知見に基づき求める。
なお加振周波数・位相演算部205は、下記の演算に先立ち、回転数信号R及びゼロ位置信号Zを基に、動翼列42の周波数(回転周波数)f
rpm及び静止座標系から見た動翼列42の回転角度αを取得する。
【0050】
図5は回転している動翼列42を模式的に示したものであり、αは静止座標系から見た動翼列42の回転角度、θは回転座標系からみた動翼列42の回転角度であり、動翼列42の回転速度は2πf
rpmである。このため、θとαの関係は、
θ=2πf
rpmt±α ・・・(1)
となる。
回転座標系での振動モードの形状を表す式x
θは次式(2)で示される。なお、f
iは、節直径数Nの高節直径モードでの動翼42aの固有振動数である。X
iは任意の値であり、加振器115−1〜115−8による吸引力により決定される。
x
θ=X
i cos(2πf
it+Nθ) ・・・(2)
回転座標系での振動モードの形状を示す式(2)に、式(1)を代入すると、静止座標系での振動モードの形状を表す式x
θは次式(3)で示される。
x
θ=X
i cos(2π(Nf
rpm±f
i)t+Nα) ・・・(3)
【0051】
よって、動翼列42が周波数f
rpmで回転している場合、加振指令信号a1〜a8の加振周波数f
inを、f
in=f
rpm×N±f
iにすれば、節直径数Nの高節直径モードの固有振動数f
iで動翼42aを加振することができる。
加振周波数・位相演算部205は、上記知見に基づき、加振指令信号a1〜a8の加振周波数f
in=f
rpm×N±f
iとして決定する。
【0052】
(加振指令信号の位相の決定)
また、加振周波数・位相演算部205は、加振指令信号a1に対する加振指令信号a2、a3、a4、a5、a6、a7、a8の位相を次のようにして演算する。
即ち、加振器115−1の配置位置から見て、時計回り方向に11.25°、22.5°、33.75°ずれた位置に、加振器115−2,115−3,115−4が配置されており、加振器115−1の配置位置から見て、時計回り方向に、180°、180°+11.25°、180°+22.5°、180°+33.75°ずれた位置に、加振器115−5,115−6,115−7,115−8が配置されている。したがって、節直径数Nであるときには、加振指令信号a1に対する加振指令信号a2、a3、a4、a5、a6、a7、a8の位相遅れ(位相ずれ)は、11.25°×N、22.5°×N、33.75°×N、180°×N、(180°+11.25°)×N、(180°+22.5°)×N、(180°+33.75°)×Nとする。なお、N=8のときには、11.25°×Nは90°、22.5°×Nは180°、33.75°×Nは270°になる。
【0053】
一般的に言えば、予め決めた特定の加振器115−1に向けて送る加振指令信号a1の位相に対して、この特定の加振器115−1に対して機械的に所定角度γずれた位置に配置した加振器に向けて送る加振指令信号の位相を、N×γずらしている。
【0054】
このようにして、加振周波数・位相演算部205は、加振指令信号a1〜a8の周波数と、加振指令信号a1に対する加振指令信号a2〜a8の位相を決定する。
【0055】
(加振タイミングの決定)
加振タイミング演算部206は、回転検出器60から出力された回転数信号R及びゼロ位置信号Zを基に、加振指令信号a1〜a8の出力タイミング(加振タイミング)を決定する。つまり、動翼列42の周方向に関して同じ位置に加振力を加えて、N節直径モードの振動を効率的に生起させる出力タイミングを決定する。
例えば、加振タイミング演算部206は、加振器115−1により動翼42aを加振する位置が周方向に関して同じ位置であるように、1回転ごとに又は数回転ごとにゼロ位置信号Zに基づいて加振指令信号a1の出力タイミングを修正する。
【0056】
(加振指令信号の波形の決定)
加振波形選択部207は、加振指令信号a1〜a8の信号波形として、各種の波形を決定する。例えば、
図6(a)に示す矩形波形や、
図6(b)に示す正弦半波や、
図6(c)に示す正弦波が予め規定(設定)されており、その中から特定の波形を選択して、加振指令信号a1〜a8の信号波形として決定する。
【0057】
統合演算・指令部204は、加振周波数・位相演算部205で求めた加振指令信号a1〜a8の加振周波数f
inと位相、及び、加振タイミング演算部206で求めた加振指令信号a1〜a8の出力タイミング(加振タイミング)を保持する。
【0058】
統合演算・指令部204は、保持した加振周波数f
inと位相、出力タイミングで、矩形波形(
図6(a)参照)の加振指令信号a1〜a8を通電指令部201−1〜201−8から出力させ、加振器115−1〜115−8により、回転している動翼列42をプレ加振する。そして、このときの、振動モード波形を振動モード検出部202から取り込んで、その振動モード波形の振幅を記憶する。
また、統合演算・指令部204は、保持した加振周波数f
inと位相、出力タイミングで、正弦半波(
図6(b)参照)の加振指令信号a1〜a8を通電指令部201−1〜201−8から出力させ、加振器115−1〜115−8により、回転している動翼列42をプレ加振する。そして、このときの、振動モード波形を振動モード検出部202から取り込んで、その振動モード波形の振幅を記憶する。
更に、統合演算・指令部204は、保持した加振周波数f
inと位相、出力タイミングで、正弦波(
図6(c)参照)の加振指令信号a1〜a8を通電指令部201−1〜201−8から出力させ、加振器115−1〜115−8により、回転している動翼列42をプレ加振する。そして、このときの、振動モード波形を振動モード検出部202から取り込んで、その振動モード波形の振幅を記憶する。
そして、振動モード波形の振幅を最も大きくすることができる波形、即ちN節直径モードの振動を起こしやすい波形(例えば正弦波)を決定する。
【0059】
(調整位相の演算)
調整位相演算部208には、各加振器115−1〜115−8の応答遅れを補正(調整)する調整位相θc1〜θc8が設定されている。
図7は加振器115−1〜115−8のうちのいずれか一つの出力特性を示しており、
図7(a)は当該加振器に入力される加振電流を二乗した波形を示し、
図7(b)は当該加振器から出力される加振力(吸引力)を示している。
図7(a),(b)の特性より当該加振器の加振力の遅れが分るので、この加振力の遅れを補正する調整位相を、調整位相演算部208に設定している。
【0060】
また、調整位相演算部208には、電流検出センサ221−1〜221−8の検出応答遅れを補正(調整)する調整位相θc11〜θc18が設定されている。この調整位相θc11〜θc18は、電流検出センサ221−1〜221−8の検出応答遅れ特性を予め測定することにより求めている。
【0061】
更に、調整位相演算部208には、回転検出器60が、回転数とゼロ位置を検出してから回転数信号Rとゼロ位置信号Zを出力するまでの、応答遅れを補正(調整)する調整位相θcr、θcZが設定されている。この調整位相θcr、θcZは、回転検出器60の応答遅れ特性を予め測定することにより求めている。
【0062】
結局、調整位相演算部208には、通電指令部201−1〜201−8から加振指令信号a1〜a8が出力されてから、加振器115−1〜115−8から加振力が出力されるまでに発生する遅れを補正するため、加振器115−1〜115−8用の調整位相θc1〜θc8と、電流検出センサ221−1〜221−8用の調整位相θc11〜θc18と、回転検出器60用の調整位相θcr、θcZが設定されている。
【0063】
統合演算・指令部204は、加振指令信号a1〜a8の波形、出力タイミング、周波数、位相を次にようにして決定する。
【0064】
(1)加振指令信号a1
加振指令信号a1の加振周波数f
inは、加振周波数・位相演算部205により決定した、加振周波数f
in=f
rpm×N±f
iを採用する。
加振タイミング(出力タイミング)は、加振タイミング演算部206により決定した、加振指令信号a1用の出力タイミングを採用する。
加振指令信号a1の波形は、加振波形選択部207により決定した、波形を決定する。
加振指令信号a1の位相は、調整位相演算部208で求めた、調整位相θc1、θc11、θcr、θcZの分だけ位相調整する。
【0065】
(2)加振指令信号a2
加振指令信号a2の加振周波数f
inは、加振周波数・位相演算部205により決定した、加振周波数f
in=f
rpm×N±f
iを採用する。
加振タイミング(出力タイミング)は、加振タイミング演算部206により決定した、加振指令信号a2用の出力タイミングを採用する。
加振指令信号a2の波形は、加振波形選択部207により決定した、波形を決定する。
加振指令信号a2の位相は、調整位相演算部208で求めた、調整位相θc2、θc12、θcr、θcZの分だけ位相調整し、更に、加振周波数・位相演算部205で求めた、加振指令信号a2用の位相ずれ(加振指令信号a1に対する位相ずれ)の分も位相調整する。
【0066】
(3)加振指令信号a3〜a8
加振指令信号a3〜a8の加振周波数f
inは、加振周波数・位相演算部205により決定した、加振周波数f
in=f
rpm×N±f
iを採用する。
加振タイミング(出力タイミング)は、加振タイミング演算部206により決定した、加振指令信号a3〜a8用の出力タイミングを採用する。
加振指令信号a3〜a8の波形は、加振波形選択部207により決定した、波形を決定する。
加振指令信号a3〜a8の位相は、加振周波数・位相演算部205で求めた、調整位相演算部208で求めた、調整位相θc3〜θc8、θc13〜θc18、θcr、θcZの分だけ位相調整し、更に、加振指令信号a3〜a8用の位相ずれ(加振指令信号a1に対する位相ずれ)の分も位相調整する。
【0067】
統合演算・指令部204は、上記のようにして決定した波形、出力タイミング、周波数、位相となっている加振指令信号a1〜a8を、通電指令部201−1〜201−8から出力するよう指令する。
これにより、上記のようにして決定した波形、出力タイミング、周波数、位相調整された位相となっている加振指令信号a1〜a8が通電指令部201−1〜201−8から出力され、加振指令信号a1〜a8に対応する加振電流A1〜A8が加振器115−1〜115−8に供給され、加振器115−1〜115−8により動翼42aを加振(吸引)する。この結果、入力部210から入力された節直径数Nに対応する精度のよいN節直径モードの振動を動翼列42に励起することができる。
【0068】
このように本実施形態では、加振指令信号a1〜a8の波形、出力タイミング、周波数、位相を調整することにより、入力された節直径数Nに対応する精度の良いN節直径モードの振動モードを、動翼列42に励起しやすくなる。
つまり、加振指令信号a1〜a8の波形の形状をコントロールすることにより、設定した節直径モードで励振しやすくなり、また加振指令信号a1〜a8の周波数と加振タイミングをコントロールすることにより無駄なく正確に加振力を動翼に入力可能となり、更にモード形状に合わせて加振指令信号a1〜a8の位相をコントロールすることにより、振動モードに合わせて加振力を入力可能となり、設定した振動モードを励起しやすくなる。
【0069】
このようにして、動翼列42の加振の同期を取り、無駄なく加振力を入力することができるため、加振器の数を従来に比べて削減しても、目的とした加振モードが適切に励起することができる。
【0070】
すなわち、上述した実施形態1に係る非接触加振システム100では、次の作用効果を奏する。
(1)非接触加振システム100は、回転機械の動翼列42に加振力をそれぞれ付与可能に構成されるとともに周方向に配列された複数の加振器115と、動翼列42の回転数を検出するための回転数センサである回転検出器60と、複数の加振器115にそれぞれ加振信号を出力するためのコントローラ200とを備える。コントローラ200は、回転検出器60の検出結果から得られる動翼列42の回転周波数f
rpmと、N節直径モードでの動翼42aの固有振動数f
iとを用いて、f
in=f
rpm×N±f
iにより表される周波数f
inの加振信号を加振器115の各々に出力するように構成されている。
これにより、f
in=f
rpm×N±f
iにより表される周波数f
inの加振信号である加振電流A1〜A8を加振器115の各々に出力することで、動翼列42をN節直径モードで精度よく加振することができる。
【0071】
(2)複数の加振器115は、周方向において角度γずれて設けられる一対の加振器115を含む。コントローラ200は、一対の加振器115のうち一方の加振器115に出力する加振信号を基準として、N×γの位相差を有する加振信号を一対の加振器115のうち他方の加振器115に出力するように構成されている。
これにより、周方向において角度γずれて設けられる一対の加振器115に出力する加振信号の位相を適切化できる。
【0072】
(3)個数が2N以下の加振器115によって、回転している動翼列42を節直径数Nの高節直径モードの固有振動数f
iで加振することができる。これにより、非接触加振システム100における加振器115の数が2N以下で済むので、非接触加振システム100のコスト増を抑制できる。
【0073】
(4)コントローラ200は、正弦波又は正弦半波で表される加振信号を加振器115の各々に出力するように構成されている。
これにより、正弦波又は正弦半波で表される加振信号が加振器115の各々に出力されるので、設定した節直径モードで励振しやすくなる。
【0074】
(5)コントローラ200は、加振信号の複数種の波形候補の中からN節直径モードの振幅が最大となる波形を選択し、該選択された波形の加振信号を加振器115の各々に出力するように構成されている。
これにより、加振信号の複数種の波形候補の中からN節直径モードの振幅が最大となる波形が選択され、該選択された波形の加振信号が加振器115の各々に出力されるので、設定した節直径モードで励振しやすくなる。
【0075】
(6)非接触加振システム100は、動翼列42の回転方向における基準位置を示す基準位置信号を検出する基準位置センサである回転検出器60を備える。コントローラ200は、基準位置信号に基づいて決定される加振タイミングに従って、加振信号を生成するように構成されている。
これにより、コントローラ200が基準位置信号に基づいて決定される加振タイミングに従って加振信号を生成するので、精度のよいN節直径モードの振動を動翼列42に励起することができる。
【0076】
(7)コントローラ200は、コントローラ200による加振信号の出力時点に対する、加振器115による加振力の発生時点の遅れ位相に基づいて、各々の加振器115による加振タイミングを補正するように構成されている。
これにより、加振信号の出力時点に対する加振力の発生時点の遅れ位相に基づいて、各々の加振器115による加振タイミングが補正されるので、動翼列42に対して加振力を効率的に与えることができる。
【0077】
〔実施形態2〕
次に、
図8及び
図9を参照して、2台の振動モード励振装置110a、110bにより、タービン40の動翼列42を励振するものを、実施形態2として説明する。
【0078】
図8に示すように、実施形態2では、タービン40の動翼列42を間に挟んだ状態で、2台の振動モード励振装置110a、110bを対面配置している。これにより動翼列42の一方の側に加振器115−1〜115−8と受振器116−1〜116−8を配置すると共に、動翼列42の他方の側にも加振器115−1〜115−8と受振器116−1〜116−8を配置している。振動モード励振装置110a、110bは実施形態1において示した振動モード励振装置110と同じ構造である。なお
図8において、
図1に示すものと同一のものには同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0079】
図9(a)は、振動モード励振装置110aが発生する加振力(吸引力)を示しており、同図において縦軸方向の上方に向かうにしたがい、動翼42aを振動モード励振装置110a側に吸引する力が強くなることを示している。
図9(b)は、振動モード励振装置110bが発生する加振力(吸引力)を示しており、同図において縦軸方向の下方に向かうにしたがい、動翼42aを振動モード励振装置110b側に吸引する力が強くなることを示している。
【0080】
図9(a)及び
図9(b)に示すように、振動モード励振装置110aの加振力(吸引力)が最大のときに振動モード励振装置110bの加振力(吸引力)が最小になり、振動モード励振装置110aの加振力(吸引力)が最小のときに振動モード励振装置110bの加振力(吸引力)が最大になるように、両者の吸引力の位相を180°ずらしている。
即ち、振動モード励振装置110aの加振器115−1〜115−8に供給する加振電流A1〜A8(加振指令信号a1〜a8)と、振動モード励振装置110bの加振器115−1〜115−8に供給する加振電流A1〜A8(加振指令信号a1〜a8)との位相差を、180°に設定している。
このため、
図9(c)に一点鎖線で示すように、動翼42aを励振する力は、振動モード励振装置110aが発生する加振力(実線)に、振動モード励振装置110bが発生する加振力(点線)が加わった力となり、動翼42aをより強い加振力で加振することができる。
【0081】
このように、上述した実施形態2に係る非接触加振システム100では、複数の加振器115は、振動モード励振装置110aが有する第1加振器としての加振器115と、回転機械の軸方向において動翼列42を挟んで上記第1加振器としての加振器115とは反対側に設けられた、振動モード励振装置110bが有する第2加振器と、を含む。コントローラ200は、上記第1加振器に出力される第1加振信号を基準として、180°位相をずらした第2加振信号を上記第2加振器に出力するように構成されている。
これにより、動翼列をより強い加振力で加振することができる。
【0082】
なお、実施形態1では振動モード励振装置110に配置した受振器116−1〜116−8により、実施形態2では振動モード励振装置110a、110bに配置した受振器116−1〜116−8により、タービン40の動翼列42の振動状態(振動モード)を検出しているが、振動モードの検出手段はこれに限定するものではない。
例えば、振動モード励振装置110、110a、110bには受振器116−1〜116−8を配置せず、その代わりに、振動検出センサを動翼42aなどに取り付けるようにしてもよい。
【0083】
更に、実施形態1では、コンローラ200内に、振動モード検出部202及び表示部203が備えられていたが、コンローラ200内には、振動モード検出部202及び表示部203を備えず、振動モード検出部202及び表示部203を外部システムに備えるようにしてもよい。
【0084】
〔実施形態3〕
次に、
図10〜
図14を参照して、実施形態3について説明する。
上述した実施形態1及び実施形態2では、受振器116−1〜116−8から出力された検出信号に基づいて動翼列42の振動モードを検出していた。実施形態3では、動翼列42の周囲に配置した各動翼42aの通過を検出するための通過検出センサからの検出信号に基づいて動翼列42の振動モードを検出する。以下、詳細に説明する。なお、以下の説明では、実施形態1と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、実施形態1と同じである。
【0085】
図10は、実施形態3における動翼列42の振動モードの検出方法に係る構成を示した図である。回転軸41の周囲にはn枚の動翼42aである第1動翼42a−1、第2動翼42a−2、第3動翼42a−3・・・第n動翼42a−nが取付けられている。実施形態3における振動モード励振装置110では、各動翼42aの外周側(先端側)の端部と対向する位置に、等ピッチまたは不等ピッチでm個の通過検出センサ117である第1通過検出センサ117−1、第2通過検出センサ117−2、第3通過検出センサ117−3・・・第m通過検出センサ117−mが設置される。各通過検出センサ117は、例えば、光学式のセンサであってもよく、静電容量式のセンサであってもよく、渦電流式のセンサであってもよい。動翼42aの通過を検出できるのであれば、通過検出センサ117には、様々な検出方式のセンサを用いることができる。
各通過検出センサ117の検出信号は、コントローラ200に入力されてコントローラ200で処理されるように構成されている。
すなわち、実施形態3に係る振動変位検出装置70は、周方向に沿って配列され、動翼列42の各動翼42aの通過をそれぞれ検出するための複数の通過検出センサ117と、複数の通過検出センサ117の検出信号を処理するための信号処理部としてのコントローラ200とを含む。
なお、コントローラ200には、回転軸41のゼロ位置(基準位置)を検出するための基準位置センサである、上述した回転検出器60の信号も入力される。
【0086】
図11は、実施形態3における動翼列42の振動モードの検出方法に係る波形処理の説明図である。
図11において、上から順に第1通過検出センサ117−1、第2通過検出センサ117−2、第3通過検出センサ117−3・・・の出力を示し、最下段には回転検出器60の出力を示す。なお、実線は動翼列42が振動していない基準状態における各通過検出センサ117からの出力を示す。破線は動翼列42が振動している状態(振動状態)における各通過検出センサからの出力を示す。
第1通過検出センサ117−1は、第1動翼42a−1の通過による信号S11、第2動翼42a−2の通過による信号S12、第3動翼42a−3の通過による信号S13・・・を出力する。第2通過検出センサ117−2は、第1動翼42a−1の通過による信号S21、第2動翼42a−2の通過による信号S22・・・を出力する。同様に、第3通過検出センサ117−3は、第1動翼42a−1の通過による信号S31・・・を出力する。
【0087】
コントローラ200は、動翼列42が振動していないと仮定したときに各通過検出センサ117を各動翼42aが通過する第1通過タイミングをそれぞれ算出する。すなわち、コントローラ200は、
図11において実線で示したような、基準状態において出力されると推定される各通過検出センサ117からの信号の出力タイミングを第1通過タイミングとして算出する。
また、コントローラ200は、
図11において破線で示したような、各通過検出センサ117で実際に検出した信号に基づいて、各動翼42aの通過タイミングを第2通過タイミングとして取得する。
そして、コントローラ200は、算出した上記第1通過タイミングと各通過検出センサ117で実際に検出した各動翼42aの第2通過タイミングとを比較して、通過時間差△τを算出する。
【0088】
具体的には、コントローラ200は、第1動翼42a−1について、第1通過検出センサ117−1の設置位置における第1動翼42a−1の基準状態と振動状態とでの通過時間差Δτ1、第2通過検出センサ117−2の設置位置における第1動翼42a−1の基準状態と振動状態とでの通過時間差Δτ2、第3通過検出センサ117−3の設置位置における第1動翼42a−1の基準状態と振動状態とでの通過時間差Δτ3・・・を算出する。同様に、コントローラは、他の動翼42a−2〜動翼42a−nについて、各通過検出センサ117の設置位置における各動翼42a−2〜動翼42a−nの基準状態と振動状態とでの通過時間差Δτをそれぞれ算出する。
【0089】
コントローラ200は、上述のようにして算出した通過時間差△τと、動翼列42の周速uとに基づいて、第1動翼42a−1についての変位(振幅)δ1−1、δ1−2、δ1−3・・・を求める。
このようにして得られた振幅δ1−1、δ1−2、δ1−3・・・を
図12に示すように時間軸を横軸にとってプロットすることで、第1動翼42a−1の振動波形が得られる。
図12は、第1動翼42a−1の振動波形を示すグラフである。すなわち、コントローラ200は、算出した振幅δ1−1、δ1−2、δ1−3・・・を
図12に示すように時間軸を横軸にとってプロットすることで、第1動翼42a−1の振動波形を取得する。
【0090】
コントローラ200は、他の動翼42a−2〜動翼42a−nについても同様に、振動波形を取得する。そして、コントローラ200は、取得したこれらの振動波形に基づいて動翼列42の面外方向への振動変位を算出して、動翼列42の振動モードを検出する。
【0091】
このように、上述した振動変位検出装置70は、周方向に沿って配列され、動翼列42の各動翼42aの通過をそれぞれ検出するための複数の通過検出センサ117と、複数の通過検出センサ117の検出信号を処理するための信号処理部としてのコントローラ200とを含む。コントローラ200は、動翼列42が振動していないと仮定したときに複数の通過検出センサ117を各動翼42aが通過する第1通過タイミングをそれぞれ算出する。コントローラ200は、算出した第1通過タイミングと複数の通過検出センサ117で実際に検出した各動翼42aの第2通過タイミングとを比較して動翼42aの振動による変位(振幅)を算出する。コントローラ200は、算出した動翼42aの振動による変位に基づいて動翼列42の振動変位を算出する。
これにより、動翼列42の振動変位を精度よく算出できる。
【0092】
なお、さらに実施形態3では、上述のようにして算出した動翼列42の面外方向への振動変位と、動翼列42に励起させようとしているN節直径モードの振動の振動変位との差を算出し、この差が少なくなるように加振信号を補正する。
図13は、動翼列42に励起させようとしている振動のモード形状の一例としての6節直径モードのモード形状と、動翼列42に生じる実際の振動モードのモード形状とを示すグラフである。
【0093】
例えば動翼42a毎に回転軸41との固定状態に僅かな差が存在したり、動翼42aの製造公差内の僅かな差が存在するなど、許容され得る僅かな差などの影響により、動翼42a毎の固有振動数に僅かな差が生じることから、N節直径モードで振動するように加振力を与えてもN節直径モードのモード形状が歪んでしまうおそれがある。例えば、動翼列42を
図13の二点鎖線で示す曲線91のようにモード形状が整った6節直径モードで振動させようとしても、動翼列42の実際の振動のモード形状は、
図13の実線で示す曲線92のように歪んでしまうおそれがある。
そこで、本実施形態では、以下のようにして、N節直径モードのモード形状の歪みを修正する。
【0094】
図14は、コントローラ200で実行される、N節直径モードのモード形状の歪みを修正する処理を示すフローチャートである。例えば、N節直径モードで振動するようにコントローラ200からの加振指令信号の出力が開始されると本プログラムの処理がコントローラ200で実行される。
ステップS10において、コントローラ200は、動翼列42に励起しようとしているN節直径モードのモード形状を目標となるモード形状として算出する。次いで、ステップS20において、コントローラ200は、通過検出センサ117からの出力信号に基づいて上述したようにして算出した動翼列42の振動変位から、動翼列42の実際の振動のモード形状を算出する。そして、ステップS30において、コントローラ200は、ステップS10で算出した目標となるモード形状と、ステップS20で算出した実際の振動のモード形状との差を算出する。
【0095】
ステップS40において、コントローラ200は、ステップS30で算出した目標となるモード形状と実際の振動のモード形状との差が予め定められた許容範囲内であるか否かを判断する。
目標となるモード形状と実際の振動のモード形状との差が予め定められた許容範囲内でなければ、ステップS40が否定判断され、ステップS50に進む。ステップS50において、コントローラ200は、実際の振動のモード形状が目標となるモード形状に近づくように、加振指令信号a1〜a8の波形、出力タイミング、周波数、位相を調整する補正処理を行う。そしてコントローラ200は、補正処理後の加振指令信号a1〜a8に対応する加振電流A1〜A8を出力するよう各部を制御してステップS20へ戻る。
目標となるモード形状と実際の振動のモード形状との差が予め定められた許容範囲内であれば、ステップS40が肯定判断され、本プログラムによる処理を終了する。
【0096】
このように、本実施形態に係る非接触加振システム100では、動翼列42の振動変位を検出するための振動変位検出装置70を備える。コントローラ200は、振動変位検出装置70により検出された振動変位が動翼列42の目標振動変位に近づくように加振指令信号a1〜a8を補正することで、加振器115−1〜115−8の各々に出力される加振信号である加振電流A1〜A8を補正する。
これにより、精度のよいN節直径モードの振動を動翼列42に励起することができる。
【0097】
〔実施形態4〕
図15〜
図17を参照して、実施形態4について説明する。
実施形態4では、実施形態3においてN節直径モードのモード形状の歪みを修正する原理を利用して、N節直径モードにおける振動の振幅がゼロに近づける。すなわち、実施形態4では、振動している動翼列42に加振力を与えることで、動翼列42の振動を打ち消すようにしている。なお、以下の説明では、実施形態3と同じ構成要素には同じ符号を付して相違点を主に説明する。特に説明しない点については、実施形態3と同じである。
【0098】
図15は、実施形態4に係る回転機械の振動抑制システム300の全体構成を示すブロック図である。振動抑制システム300は、加振器115−1〜115−8と、振動変位検出装置70と、回転検出器60と、コントローラ200とを備える。振動変位検出装置70は、通過検出センサ117すなわち第1通過検出センサ117−1から第m通過検出センサ117−mと、通過検出センサ117の検出信号を処理するための信号処理部としてのコントローラ200とを含む。
【0099】
図16は、コントローラ200で実行される、振動抑制処理を示すフローチャートである。例えば、実施形態4に係る振動抑制システム300が起動されると本プログラムの処理がコントローラ200で実行される。
ステップS110において、コントローラ200は、各通過検出センサ117からの信号の出力タイミングに基づいて、実施形態3で説明したように、動翼列42の振動変位を算出する。そして、ステップS120において、コントローラ200は、ステップS110で算出した動翼列42の振動変位に基づいて動翼列42の振動モードを判定する。すなわち、コントローラ200は、ステップS110で算出した動翼列42の振動変位に基づいて、節直径モードの振動の節直径数Nを求める。
【0100】
ステップS130において、コントローラ200は、動翼列42の振動を打ち消すような加振指令信号a1〜a8を生成する。すなわち、コントローラ200は、ステップs120で算出した節直径数Nと、回転検出器60からの検出信号に基づいて算出される動翼列42の周波数(回転周波数)f
rpmと、予めわかっている節直径数Nの高節直径モードでの動翼42aの固有振動数f
iとに基づいて、加振指令信号a1〜a8の加振周波数f
in=f
rpm×N±f
iとして決定する。
そして、コントローラ200は、実施形態1と同様にして加振指令信号a1に対する加振指令信号a2、a3、a4、a5、a6、a7、a8の位相を決定する。また、コントローラ200は、回転検出器60から出力された回転数信号R及びゼロ位置信号Zを基に、加振指令信号a1〜a8の出力タイミング(加振タイミング)を決定する。また、コントローラ200は、ステップS110で算出した動翼列42の振動変位に基づいて、加振指令信号a1〜a8の波形及び振幅を決定する。
【0101】
なお、ステップS130では、コントローラ200は、ステップS110で算出した動翼列42の振動変位に基づいて、上述した実施形態3における
図14のステップS50の補正処理と同様の処理を行うことで、動翼列42の振動の振幅がゼロに近づくように、加振指令信号a1〜a8の波形、出力タイミング、周波数、位相をさらに調整する処理を行う。
【0102】
ステップS140において、ステップS130で生成した加振指令信号a1〜a8に対応する加振電流A1〜A8を出力するよう各部を制御する。
【0103】
このようにステップS110からステップS140の処理を実行することで、
図17の実線の曲線93で示すようなモード形状で振動している動翼列42に加振力が与えられて、動翼列42の振動が打ち消され、
図17の二点鎖線の曲線94で示すように動翼列42の振動の振幅がゼロに近づく。なお、
図17は、上記の振動抑制処理を行う前に動翼列42に生じている振動のモード形状の一例と、上記の振動抑制処理によって動翼列42に生じている振動を抑制した場合のモード形状とを模式的に示した図である。
【0104】
このように、実施形態4に係る振動抑制システム300は、回転機械の動翼列42に加振力をそれぞれ付与可能に構成されるとともに周方向に配列された複数の加振器115と、動翼列42の振動変位を検出するための振動変位検出装置70と、動翼列42の回転数を検出するための回転数センサである回転検出器60と、振動変位検出装置70により検出される振動変位が小さくなるように、複数の加振器115にそれぞれ加振信号を出力するためのコントローラ200とを備える。コントローラ200は、回転検出器60の検出結果から得られる動翼列42の回転周波数f
rpmと、N節直径モードでの動翼42aの固有振動数f
iとを用いて、f
in=f
rpm×N±f
iにより表される周波数f
inの加振信号を生成するように構成されている。
これにより、f
in=f
rpm×N±f
iにより表される周波数f
inの加振信号である加振電流A1〜A8を加振器115の各々に出力することで、動翼列42のN節直径モードでの振動を効果的に抑制できる。
【0105】
実施形態4では、振動変位検出装置70は、周方向に沿って配列され、動翼列42の各動翼42aの通過をそれぞれ検出するための複数の通過検出センサ117と、複数の通過検出センサ117の検出信号を処理するための信号処理部としてのコントローラ200とを含む。コントローラ200は、動翼列42が振動していないと仮定したときに複数の通過検出センサ117を各動翼42aが通過する第1通過タイミングをそれぞれ算出し、算出した第1通過タイミングと複数の通過検出センサ117で実際に検出した各動翼42aの第2通過タイミングとを比較して動翼42aの振動による変位を算出する。コントローラ200は、算出した動翼42aの振動による変位に基づいて動翼列42の振動変位を算出する。
これにより、動翼列42の振動変位を精度よく算出できるので、動翼列42のN節直径モードでの振動をより効果的に抑制できる。
【0106】
本発明は上述した実施形態に限定されることはなく、上述した実施形態に変形を加えた形態や、これらの形態を適宜組み合わせた形態も含む。
例えば、上述した各実施形態では、受振器116や通過検出センサ117を用いて動翼42aの振動状態を検出している。しかし、受振器116や通過検出センサ117に代えて、例えば各動翼42aに取り付けた歪ゲージを用いて動翼42aの振動状態を検出するようにしてもよい。また、通過検出センサ117に代えて、通過検出センサ117と同様の位置に配置した複数の圧力センサを用い、動翼42aの通過に伴う風圧の変動を検出することで動翼42aの振動状態を検出するようにしてもよい。
なお、歪ゲージや圧力センサの配置数は、励起させようとする振動モードに応じて適宜設定される。
【0107】
上述した実施形態では、非接触加振システム100及び振動抑制システム300の振動制御の対象としてタービン40を例に挙げて説明したが、上述した非接触加振システム100及び振動抑制システム300の振動制御の対象は、タービン40に限らず、様々な回転機械で用いられる複数の翼を有する回転体であれば、どのようなものであってもよい。例えば、蒸気タービン、ガスタービン、ターボ圧縮機、ポンプ、送風機、水車、風車、真空ポンプなどで用いられている各種の回転機械の回転体であってもよい。