(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しつつ説明する。なお、本実施の形態では、建設機械の一例として、フロント装置(フロント作業機)の先端に作業具(アタッチメント)としてバケットを備える油圧ショベルを例示して説明するが、ブレーカやマグネットなどのバケット以外のアタッチメントを備える油圧ショベルに本発明を適用することも可能である。また、複数の被駆動部材(ブーム、アーム、アタッチメント等)を連結して校正される多関節型の作業機を有するものであれば油圧ショベル以外の建設機械への適用も可能である。
【0011】
図1は本実施の形態に係る建設機械の一例である油圧ショベルの構成を模式的に示す側面図であり、
図2は本実施の形態に係る油圧ショベルの情報化施工コントローラを油圧回路システムと共に模式的に示す図である。また、
図3はオペレータが搭乗する運転席の様子を示す図であり、
図4は運転席に配置されたスイッチパネルの一例を一部抜き出して示す図である。
【0012】
図1において、油圧ショベル1は、多関節型のフロント作業機30と、フロント作業機30を支持する上部旋回体20と、上部旋回体20を旋回可能に支持する下部走行体10とで構成されている。上部旋回体20と下部走行体10は、油圧ショベル1の車体を構成している。
【0013】
フロント作業機30は、垂直方向にそれぞれ回動する複数の被駆動部材(ブーム31,アーム33及びバケット35)を連結して構成されている。ブーム31の基端は上部旋回体20の前部においてブームピン37を介して回動可能に支持されている。ブーム31の先端にはアームピン38を介してアーム33の一端が回動可能に連結されており、アーム33の他端(先端)にはバケットピン39を介してバケット35が回動可能に連結されている。ブーム31はブームシリンダ32によって駆動され、アーム33はアームシリンダ34によって駆動され、バケット35はバケットシリンダ36によって駆動される。
【0014】
図5はブームの上部旋回体に対する連結部を、
図6はアームのブームに対する連結部を、
図7はバケットシリンダのアームに対する連結部をそれぞれ拡大して示す図である。
【0015】
図5において、ブーム31と上部旋回体20の旋回フレーム21との連結部分には姿勢センサとしてのブーム角度センサ63が設けられている。ブーム角度センサ63は、旋回フレーム21側にブームピン37と同心状に配置されている。ブーム31のブームピン37近傍にはブーム角度センサレバー64が配置されており、ブーム角度センサレバー64から突出したロッド部64aの一端がブーム角度センサ63の検出軸を貫通するよう配置されている。ブーム角度センサ63の検出軸は、ブームピン37と同心上に配置されており、ブームピン37の周方向において旋回フレーム21に対する相対的な回動角度を検出可能である。ブーム31がブームピン37を中心に回動すると、ブーム角度センサレバー64のロッド部64aによってブーム角度センサ63の検出軸が連動して回転するので、ブーム31の姿勢情報として旋回フレーム21に対するブーム31の相対角度(以降、「ブーム角度」と称する)を検出することができる。
【0016】
図6において、アーム33とブーム31との連結部分には姿勢センサとしてのアーム角度センサ65が設けられている。アーム角度センサ65は、ブーム31側にアームピン38と同心状に配置されている。アーム33のアームピン38近傍にはアーム角度センサレバー66が配置されており、アーム角度センサレバー66から突出したロッド部66aの一端がアーム角度センサ65の検出軸を貫通するよう配置されている。アーム角度センサ65の検出軸は、アームピン38と同心上に配置されており、アームピン38の周方向においてブーム31に対する相対的な回動角度を検出可能である。アーム33がアームピン38を中心に回動すると、アーム角度センサレバー66のロッド部66aによってアーム角度センサ65の検出軸が連動して回転するので、アーム33の姿勢情報としてブーム31に対するアーム33の相対角度(以降、「アーム角度」と称する)を検出することができる。
【0017】
図7において、バケットシリンダ36のボトム側端部(ブーム31との連結部側の端部)には、姿勢センサとしてのバケットシリンダストロークセンサ67が設けられている。バケットシリンダストロークセンサ67は、例えば、磁歪効果を利用した磁歪式センサであり、バケットシリンダ36におけるストローク位置を検出可能である。バケットシリンダ36が伸縮すると、バケット35がバケットピン39を中心に連動して回動するので、バケットシリンダ36のストローク位置から、バケット35の姿勢情報としてアーム33に対するバケット35の相対角度(以降、「バケット角度」と称する)を算出することが可能である。
【0018】
なお、本実施の形態においては、ブーム31及びアーム33の姿勢センサとしてブーム角度センサ63及びアーム角度センサ65の各角度センサを用い、また、バケット35の姿勢センサとしてバケットシリンダストロークセンサ67を用いてフロント作業機30の被駆動部材31,33,35の姿勢情報を取得する場合を例示して説明したが、これに限られず、各被駆動部材31,33,35のそれぞれに対応する姿勢センサとして被駆動部材31,33,35の連結部分に設けられる角度センサ、油圧アクチュエータ32,34,36に設けられるストロークセンサ、及び被駆動部材31,33,35に設けられる傾斜センサの少なくとも何れか一種を選択して用いても良い。
【0020】
下部走行体10は、左右一対のクローラフレーム12a(12b)にそれぞれ掛け回された一対のクローラ11a(11b)と、クローラ11a(11b)をそれぞれ駆動する走行油圧モータ13a(13b)(図示しない減速機構を含む)とから構成されている。なお、
図1において、下部走行体10の各構成については、左右一対の構成のうちの一方のみを図示して符号を付し、他方の構成については図中に括弧書きの符号のみを示して図示を省略する。
【0021】
上部旋回体20は、基部となる旋回フレーム21上に各部材を配置して構成されており、上部旋回体20を構成する旋回フレーム21が下部走行体10に対して旋回可能となっている。上部旋回体20の旋回フレーム21上には、オペレータが搭乗して操作レバー装置72,73,74(
図2参照)により油圧ショベル1の操作を行うための運転室170が配置されているほか、原動機であるエンジン22と、エンジン22により駆動されるメイン油圧ポンプ41及びパイロット油圧ポンプ42と、各油圧アクチュエータを駆動するための油圧回路システム40が搭載されている。また、上部旋回体20には、車体の水平面に対する傾きを検出する車体傾斜センサ68が配置されている。
【0022】
図3において、運転室170内には、オペレータが着座する運転席70と、フロント作業機30を操作するための操作レバー72,73,74と、下部走行体10の左右の油圧走行モータ13a,13bを操作するための走行レバー(操作装置)90,91と、走行レバー90,91のそれぞれと互いに連動した操作が可能な左右の走行ペダル90a,91aと、パイロット油圧ポンプ42の吐出ライン(パイロットライン)の遮断/開通を切り換えるゲートロックレバー71と、運転席70の左右側方に設けられたスイッチパネル80とが配置されている。また、運転室170内のオペレータから見やすい位置、かつ、外部視野確保の妨げにならない位置には、油圧ショベル1に関する種々の情報や設定画面等を表示するためのモニタ(表示装置)61が配置されている。モニタ61の表示は、後述する情報化施工コントローラ60により制御されるモニタコントローラ62により制御される。操作レバー72a,73aは、ブームシリンダ32(ブーム31)及びバケットシリンダ36(バケット35)を操作するための操作レバー装置(操作装置)72,73において共有される1つの操作レバーであり、それらを特に区別する場合には、それぞれ、右操作レバー(ブーム)72aおよび右操作レバー(バケット)73aと称する。同様に、操作レバー74aは、アームシリンダ34(アーム33)及び図示しない旋回油圧モータ(上部旋回体20)を操作するための操作レバー装置(操作装置)74において共有される1つの操作レバーであり、それらを特に区別する場合には、左操作レバー(アーム)74aと称する。また、走行レバー90,91は、それぞれ、左走行レバー90および右走行レバー91と称する。
【0023】
スイッチパネル80には、モニタ61に表示される設定画面における画面の切換や項目の選択、決定等の操作を行うための画面切換・決定スイッチ75と、せってい画面における前画面への戻し操作やキャンセル操作等を行うための前画面戻しスイッチ79と、数値を入力するためのテンキー78と、油圧ショベル1の制御装置である情報化施工コントローラ60によるマシンコントロール(後述)の有効(オン)/無効(オフ)を切り換えるMCオン/オフスイッチ77と、MCオン/オフスイッチ77を有効にするためのMCスタンバイスイッチ76とを有している。
【0024】
画面切換・決定スイッチ75や前画面戻しスイッチ79としては、設定画面における項目の選択、決定、キャンセル等の操作を行うことができる構造であれば良いが、例えば、
図4に示すように、画面切換・決定スイッチ75として、周方向に回転させることにより選択操作を行い、押下することにより決定操作を行うスイッチを採用し、また、前画面戻しスイッチ79として、押下することによりキャンセル操作を行うスイッチを採用しても良い。
【0025】
図2において、本実施の形態に係る油圧回路システムでは、エンジン22により駆動されるメイン油圧ポンプ41から各油圧アクチュエータ32,34,36に供給される圧油の方向および流量をコントロールバルブ(スプール)100,101,102により制御している。メイン油圧ポンプ41から吐出された圧油は、コントロールバルブ(スプール)100,101,102を介してブームシリンダ32、アームシリンダ34、及びバケットシリンダ36に供給される。供給された圧油によってブームシリンダ32、アームシリンダ34、及びバケットシリンダ36が伸縮することで、ブーム31、アーム33、及びバケット35がそれぞれ回動し、バケット35の位置及び姿勢が変化する。なお、
図2では、メイン油圧ポンプ41の吐出ラインと各コントロールバルブ(スプール)とを接続する油路は紙面の都合上省略している。
【0026】
なお、
図2においては、油圧ショベル1の油圧アクチュエータとして、フロント作業機30に関するブームシリンダ32、アームシリンダ34、及びバケットシリンダ36のみを示し、他の油圧アクチュエータについては図示および説明を省略したが、図示しないコントロールバルブ(スプール)を介して供給された圧油によって旋回油圧モータが回転することで下部走行体10に対して上部旋回体20が旋回し、また、供給された圧油によって走行油圧モータ13a,13bが回転することで下部走行体10が走行する。なお、本実施の形態ではメイン油圧ポンプ41として固定容量型ポンプを例示しているが、レギュレータによって容量が制御される可変容量型ポンプを用いても良い。
【0027】
パイロット油圧ポンプ42の吐出ライン(パイロットライン)はゲートロックレバー71により切り換えられるゲートロック弁138を通った後、複数に分岐して操作レバー装置72,73,74を介して対応するコントロールバルブ(スプール)100,101,102の受圧部(油圧駆動部)100a,100b,101a,101b,102a,102bに接続されている。
【0028】
ゲートロック弁138は、本実施の形態では、運転室170内のゲートロックレバー71の位置によって開閉を切り換える機械式の切換弁を例示したが、例えば、ゲートロックレバーに位置検出器を設け、その位置検出器と電気的に接続した電磁駆動部によって開閉を切り換える電磁切換弁としてもよい。ゲートロックレバー71のポジションがロック位置にあればゲートロック弁138が閉じてパイロット油圧ポンプ42からの吐出ライン(パイロットライン)が遮断され、ロック解除位置にあればゲートロック弁138が開いてパイロット油圧ポンプ42からの吐出ラインが開通する。つまり、パイロット油圧ポンプ42からの吐出ライン(パイロットライン)が遮断された状態では操作レバー装置72,73,74による操作が無効化され、フロント作業機30による掘削等の動作(旋回動作も含む)が禁止される。
【0029】
操作レバー装置72,73,74は油圧パイロット方式であり、パイロット油圧ポンプ42から吐出される圧油をもとに、それぞれオペレータにより操作される操作レバー72a,73a,74aの操作量(例えば,レバーストローク)と操作方向とに応じたパイロット圧(操作信号と称することがある)を発生する。このように発生したパイロット圧はパイロットラインを介して対応するコントロールバルブ(スプール)100,101,102の油圧駆動部100a,100b,101a,101b,102a,102bに供給され、これらコントロールバルブ(スプール)100,101,102を駆動する操作信号として利用される。
【0030】
操作レバー装置74とコントロールバルブ(アームスプール)100の油圧駆動部100aとを接続するパイロットラインには、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいて操作レバー装置74から出力されるパイロット圧を減圧し油圧駆動部100aに出力する電磁比例弁(アーム押し減速弁)103が配置されている。また、アーム押し減速弁103の上流側からはアーム押し減速弁103を介さずに迂回して油圧駆動部100aに接続するパイロットラインが分岐しており、その分岐部には操作レバー装置74から油圧駆動部100aへのパイロット圧の供給経路をアーム押し減速弁103が配置された一方のパイロットラインと他方のパイロットライン(迂回路)との何れか一方に選択的に切り換えるMC油圧切換弁(アーム押し切換弁)132が配置されている。油圧駆動部100aにパイロット圧(操作信号)が印加されると、メイン油圧ポンプ41からの圧油がアームシリンダ34のロッド側に供給されてアームシリンダ34が縮退駆動される方向にコントロールバルブ(アームスプール)100が駆動され、アーム押し動作が行われる。
【0031】
操作レバー装置74とコントロールバルブ(アームスプール)100の油圧駆動部100bとを接続するパイロットラインには、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいて操作レバー装置74から出力されるパイロット圧を減圧し油圧駆動部100bに出力する電磁比例弁(アーム引き減速弁)104が配置されている。また、アーム引き減速弁104の上流側からはアーム引き減速弁104を介さずに迂回して油圧駆動部100bに接続するパイロットラインが分岐しており、その分岐部には操作レバー装置74から油圧駆動部100bへのパイロット圧の供給経路をアーム引き減速弁104が配置された一方のパイロットラインと他方のパイロットライン(迂回路)との何れか一方に選択的に切り換えるMC油圧切換弁(アーム引き切換弁)133が配置されている。油圧駆動部100bにパイロット圧(操作信号)が印加されると、メイン油圧ポンプ41からの圧油がアームシリンダ34のボトム側に供給されてアームシリンダ34が伸長駆動される方向にコントロールバルブ(アームスプール)100が駆動され、アーム引き動作が行われる。
【0032】
操作レバー装置72とコントロールバルブ(ブームスプール)101の油圧駆動部101aとを接続するパイロットラインには、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいて操作レバー装置72から出力されるパイロット圧を減圧し油圧駆動部101aに出力する電磁比例弁(ブーム下げ減速弁)105が配置されている。また、ブーム下げ減速弁105の上流側からはブーム下げ減速弁105を介さずに迂回して油圧駆動部101aに接続するパイロットラインが分岐しており、その分岐部には操作レバー装置72から油圧駆動部101aへのパイロット圧の供給経路をブーム下げ減速弁105が配置された一方のパイロットラインと他方のパイロットライン(迂回路)との何れか一方に選択的に切り換えるMC油圧切換弁(ブーム下げ切換弁)134が配置されている。油圧駆動部101aにパイロット圧(操作信号)が印加されると、メイン油圧ポンプ41からの圧油がブームシリンダ32のロッド側に供給されてブームシリンダ32が縮退駆動される方向にコントロールバルブ(ブームスプール)101が駆動され、ブーム下げ動作が行われる。
【0033】
操作レバー装置72とコントロールバルブ(ブームスプール)101の油圧駆動部101bとを接続するパイロットラインには、操作レバー装置72からのパイロット圧とパイロット油圧ポンプ42の吐出ラインのパイロット圧のうち高圧側を選択して油圧駆動部101bに導くシャトル弁111が設けられている。シャトル弁111のパイロット油圧ポンプ42の吐出ライン側には、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいてパイロット油圧ポンプ42から出力されるパイロット圧を減圧しシャトル弁111に導く電磁比例弁(ブーム上げ増速弁)106が配置されている。油圧駆動部101bにパイロット圧(操作信号)が印加されると、メイン油圧ポンプ41からの圧油がブームシリンダ32のボトム側に供給されてブームシリンダ32が伸長駆動される方向にコントロールバルブ(ブームスプール)101が駆動され、ブーム上げ動作が行われる。
【0034】
操作レバー装置73とコントロールバルブ(バケットスプール)102の油圧駆動部102aとを接続するパイロットラインには、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいて操作レバー装置73から出力されるパイロット圧を減圧し油圧駆動部102aに出力する電磁比例弁(バケット放土減速弁)107が配置されており、バケット放土減速弁107の下流側にはバケット放土減速弁107からのパイロット圧とパイロット油圧ポンプ42の吐出ラインのパイロット圧のうち高圧側を選択して油圧駆動部102aに導くシャトル弁112が設けられている。また、バケット放土減速弁107の上流側からはバケット放土減速弁107及びシャトル弁112を介さずに迂回して油圧駆動部102aに接続するパイロットラインが分岐しており、その分岐部には操作レバー装置73から油圧駆動部102aへのパイロット圧の供給経路をバケット放土減速弁107及びシャトル弁112が配置された一方のパイロットラインと他方のパイロットライン(迂回路)との何れか一方に選択的に切り換えるMC油圧切換弁(バケット放土切換弁)135が配置されている。また、シャトル弁112のパイロット油圧ポンプ42の吐出ライン側には、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいてパイロット油圧ポンプ42から出力されるパイロット圧を減圧しシャトル弁112に導く電磁比例弁(バケット放土増速弁)108が配置されている。油圧駆動部102aにパイロット圧(操作信号)が印加されると、メイン油圧ポンプ41からの圧油がバケットシリンダ36のロッド側に供給されてバケットシリンダ36が縮退駆動される方向にコントロールバルブ(バケットスプール)102が駆動され、バケット放土動作が行われる。
【0035】
操作レバー装置73とコントロールバルブ(バケットスプール)102の油圧駆動部102bとを接続するパイロットラインには、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいて操作レバー装置73から出力されるパイロット圧を減圧し油圧駆動部102bに出力する電磁比例弁(バケット掘削減速弁)109が配置されており、バケット掘削減速弁109の下流側にはバケット掘削減速弁109からのパイロット圧とパイロット油圧ポンプ42の吐出ラインのパイロット圧のうち高圧側を選択して油圧駆動部102bに導くシャトル弁113が設けられている。また、バケット掘削減速弁109の上流側からはバケット掘削減速弁109及びシャトル弁113を介さずに迂回して油圧駆動部102bに接続するパイロットラインが分岐しており、その分岐部には操作レバー装置73から油圧駆動部102bへのパイロット圧の供給経路をバケット掘削減速弁109及びシャトル弁113が配置された一方のパイロットラインと他方のパイロットライン(迂回路)との何れか一方に選択的に切り換えるMC油圧切換弁(バケット掘削切換弁)136が配置されている。また、シャトル弁113のパイロット油圧ポンプ42の吐出ライン側には、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいてパイロット油圧ポンプ42から出力されるパイロット圧を減圧しシャトル弁113に導く電磁比例弁(バケット掘削増速弁)110が配置されている。油圧駆動部102bにパイロット圧が印加されると、メイン油圧ポンプ41からの圧油がバケットシリンダ36のボトム側に供給されてバケットシリンダ36が伸長駆動される方向にコントロールバルブ(バケットスプール)102が駆動され、バケット掘削動作が行われる。
【0036】
電磁比例弁106,108,110の上流側(パイロット油圧ポンプ42側)には、パイロット油圧ポンプ42から電磁比例弁106,108,110にそれぞれ導かれるパイロット圧の通流/遮断を切り換えるMC油圧遮断弁131が配置されている。MC油圧遮断弁131が通流側に切り換えられるとパイロット油圧ポンプ42から電磁比例弁106,108,110にパイロット圧が導かれ、MC油圧遮断弁131が遮断側に切り換えられるとパイロット油圧ポンプ42から電磁比例弁106,108,110へのパイロット圧の供給が遮断される。
【0037】
MC油圧切換弁132,133,134,135,136、及び、MC油圧遮断弁131は、パイロット油圧ポンプ42からMCオン/オフ電磁弁130を介して導かれるパイロット圧に基づいて切り換えられるものであり、情報化施工コントローラ60からの制御信号(電流)に基づいてMC油圧切換弁132,133,134,135,136、及び、MC油圧遮断弁131を駆動するパイロット圧(制御信号)の通流/遮断を切り換えている。
【0038】
MC油圧切換弁132,133,134,135,136は、受圧部132a,133a,134a,135a,136aに導かれるパイロット圧が遮断されている場合には、操作レバー装置72,73,74からのパイロット圧の供給先を迂回路側に切り換え、受圧部132a,133a,134a,135a,136aにパイロット圧が印加されている場合には、操作レバー装置72,73,74からのパイロット圧の供給先を電磁比例弁103,104,105,107,109が配置されたパイロットライン側に切り換える。
【0039】
また、MC油圧遮断弁131は、受圧部131aに導かれるパイロット圧が遮断されている場合には、パイロット油圧ポンプ42から電磁比例弁106,108,110に供給されるパイロット圧を遮断し、受圧部131aにパイロット圧が印加されている場合には、パイロット油圧ポンプ42からのパイロット圧を電磁比例弁106,108,110に供給する。
【0040】
MC油圧遮断弁131及びMC油圧切換弁132,133,134,135,136の受圧部131a,132a,133a,134a,135a,136aには、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいて通流/遮断を切り換えるMCオン/オフ電磁弁130を介したパイロット圧が導かれている。MCオン/オフ電磁弁130は、非通電時には開度がゼロであるとともに、通電時には開度が最大となる。したがって、情報化施工コントローラ60から制御信号(電流)を出力してMCオン/オフ電磁弁130を駆動すると、電磁比例弁103,104,105,107,109によるパイロット圧(操作信号)の減圧、および、電磁比例弁106,108,110によるパイロット圧(操作信号)の発生を有効とすることができる。
【0041】
電磁比例弁103,104,105,107,109は、非通電時には開度が最大であり、情報化施工コントローラ60からの電流(制御信号)を増大させるほど開度が小さくなる。一方、電磁比例弁106,108,110は、非通電時には開度がゼロであるとともに、通電時には開度を有し、情報化施工コントローラ60からの電流(制御信号)を増大させるほど開度が大きくなる。このように各電磁比例弁の開度は情報化施工コントローラ60からの電流(制御信号)により制御される。したがって、情報化施工コントローラ60から制御信号(電流)を出力して電磁比例弁106,108,110を駆動すると、対応する操作レバー装置72,73がオペレータにより操作されていない場合にもパイロット圧(操作信号)を発生して油圧駆動部101b,102a,102bに印加することができるので、ブーム上げ動作、バケットクラウド/ダンプ動作を強制的に発生することができる。また、同様に、情報化施工コントローラ60により電磁比例弁103,104,105,107,109を駆動すると、操作レバー装置72,73,74のオペレータの操作により発生したパイロット圧を減じたパイロット圧(操作信号)を発生して油圧駆動部100a,100b,101a,102a,102bに印加することができ、ブーム下げ動作、アームクラウド/ダンプ動作、バケットクラウド/ダンプ動作の速度をオペレータによる操作レバー72a,73a,74aの操作量に基づく速度から強制的に低減することができる。
【0042】
本実施の形態においては、コントロールバルブ100,101,102に対する操作信号(パイロット圧)のうち、操作レバー装置72,73,74の操作によって発生したパイロット圧を「第1操作信号」又は「1次圧」と称する。また、コントロールバルブ100,101,102に対する操作信号(パイロット圧)のうち、情報化施工コントローラ60で電磁比例弁103,104,105,107,109を駆動することにより第1操作信号を補正(低減)して生成され油圧駆動部100a,100b,101a,102a,102bに印加されるパイロット圧、および、情報化施工コントローラ60で電磁比例弁106,108,110を駆動して第1制御信号とは別に新たに生成され油圧駆動部101b,102a,102bに印加されるパイロット圧を「第2制御信号」又は「2次圧」と称する。
【0043】
情報化施工コントローラ60は、キャリブレーション姿勢記憶部60aと、キャリブレーション姿勢制御部60bと、マシンコントロール制御部60cとを有している。
【0044】
また、情報化施工コントローラ60には、ゲートロック弁138の下流側のパイロット圧を検出する遮断弁出口圧センサ137の検出結果と、操作レバー装置72,73,74の操作によりそれぞれ出力されるパイロット圧の1次圧を検出するアーム押しパイロット圧1次圧センサ118、アーム引きパイロット圧1次圧センサ119、ブーム下げパイロット圧1次圧センサ120、ブーム上げパイロット圧1次圧センサ121、バケット放土パイロット圧1次圧センサ122、及びバケット掘削パイロット圧1次圧センサ123からの検出結果と、コントロールバルブ100,101,102の油圧駆動部100a,100b,101a,101b,102a,102bに印加されるパイロット圧の2次圧を検出するアーム押しパイロット圧2次圧センサ124、アーム引きパイロット圧2次圧センサ125、ブーム下げパイロット圧2次圧センサ126、ブーム上げパイロット圧2次圧センサ127、バケット放土パイロット圧2次圧センサ128、及びバケット掘削パイロット圧2次圧センサ129の検出結果と、フロント作業機30および車体の姿勢に関する姿勢情報を取得する姿勢センサとしてのブーム角度センサ63、アーム角度センサ65、バケットシリンダストロークセンサ67、及び車体傾斜センサ68の検出結果とが入力されている。また、スイッチパネル80に設けられた画面切換・決定スイッチ75、MCスタンバイスイッチ76、MCオン/オフスイッチ77、テンキー78、及び前画面戻しスイッチ79の操作信号が入力されている。
【0045】
情報化施工コントローラ60は、MCスタンバイスイッチ76が操作(押下)されて操作信号(接点信号)が入力されると、予め定めた一定時間だけMCオン/オフスイッチ77からの操作信号(接点信号)の入力を有効とする。情報化施工コントローラ60は、MCスタンバイスイッチ76が操作(押下)されてMCオン/オフスイッチ77が有効となった状態でMCオン/オフスイッチ77が操作(押下)されて操作信号(接点信号)が入力されると、MCオン/オフ電磁弁130に制御信号(電流)を出力して通流状態となるように駆動し、電磁比例弁103,104,105,107,109によるパイロット圧(操作信号)の減圧、および、電磁比例弁106,108,110によるパイロット圧(操作信号)の発生を有効とする。すなわち、MCスタンバイスイッチ76及びMCオン/オフスイッチ77の操作によって油圧ショベル1におけるマシンコントロールが有効となる。
【0046】
マシンコントロール制御部60cは、油圧ショベル1におけるフロント作業機30のマシンコントロール(MC:Machine Control)に関する制御を行う。本実施の形態におけるマシンコントロールは、姿勢センサとしてのブーム角度センサ63、アーム角度センサ65、及びバケットシリンダストロークセンサ67の検出結果に基づいて、ローカル座標系(油圧ショベル1に対して設定された座標系)におけるフロント作業機30の姿勢と、バケット35の爪先の位置を演算するとともに、操作レバー装置72,73,74を介して入力される掘削操作に対してフロント作業機30が予め定めた条件に沿って動作するように油圧アクチュエータ32,34,36の少なくとも一部を強制的に動作させる、或いは、油圧アクチュエータ32,34,36の少なくとも一部の動作を制限することによりオペレータの掘削操作を補助する制御のことである。このようなマシンコントロールの具体例としては、オペレータの操作による掘削動作中に自動的にブームシリンダ32を制御してブーム上げ動作を適宜加え、バケット35先端位置を目標面上に制限するものなどがある。
【0047】
キャリブレーション姿勢記憶部60a及びキャリブレーション姿勢制御部60bは、マシンコントロールの精度に関係する少なくとも一部の姿勢センサ(ブーム角度センサ63、アーム角度センサ65、バケットシリンダストロークセンサ67)のキャリブレーションの実行に際して、フロント作業機30の姿勢をキャリブレーション作業の実行に必要な姿勢(キャリブレーション姿勢)に調整する操作を半自動で行う「キャリブレーション姿勢制御」(一種のマシンコントロール)を行うものである。「キャリブレーション姿勢制御」において、キャリブレーション姿勢記憶部60aは、姿勢センサ63,65,67のキャリブレーションを行うために予め定めたフロント作業機30の少なくとも1つ(本実施の形態では複数)のキャリブレーション姿勢を記憶しており(キャリブレーション姿勢設定記憶処理)、キャリブレーション姿勢制御部60bは、複数のキャリブレーション姿勢のうち選択的に設定された1つのキャリブレーション姿勢に対応して予め設定された各姿勢センサ63,65,67の検出目標値(角度目標値)と姿勢センサ63,65,67の検出値とが等しくなった場合に油圧アクチュエータ32,34,36を停止させるようにマシンコントロールを実行する(キャリブレーション姿勢制御処理)。
【0048】
図8は、キャリブレーション姿勢記憶部におけるキャリブレーション姿勢設定記憶処理を示すフローチャートである。また、
図11〜
図17は、キャリブレーション姿勢設定記憶処理の各処理ステップにおいてモニタに表示される画面の一例を示す図である。
【0049】
図8において、キャリブレーション姿勢記憶部60aは、モニタ61に表示されたメニュー画面140(
図11)が操作されてキャリブレーション姿勢制御モードに移行した場合にキャリブレーション姿勢設定記憶処理を開始する(ステップS101)。キャリブレーション姿勢制御モードへの移行は、例えば、モニタ61上に表示されるメニュー画面140から画面切換・決定スイッチ75を回してキャリブレーション姿勢制御モードを示す「キャリブレーション姿勢」の項目140aを選択し、画面切換・決定スイッチ75押下することで決定する。
【0050】
キャリブレーション姿勢制御モードに移行すると、モニタコントローラ62を制御してモニタ61に姿勢入力画面141(
図12)を表示し、オペレータに新規のキャリブレーション姿勢を記憶させるための「入力」の項目141aか、過去に記憶したキャリブレーション姿勢を削除するための「削除」の項目141bの何れかを選択的に設定させ(ステップS102)、「入力」の項目141aと「削除」の項目141bの何れの項目が設定されたかを判定する(ステップS103)。「入力」の項目141a又は「削除」の項目141bの設定は、モニタ61上に表示される姿勢入力画面141から画面切換・決定スイッチ75を回して「入力」の項目141a又は「削除」の項目141bを選択し、画面切換・決定スイッチ75押下することで決定する。
【0051】
ステップS103において「入力」の項目が設定されたと判定した場合には、モニタコントローラ62を制御してモニタ61に姿勢番号指定画面142(
図13)を表示し、オペレータに新規のキャリブレーション姿勢を記憶させる姿勢番号を指定させる(ステップS104)。姿勢番号の指定は、例えば、モニタ61上に表示される姿勢番号指定画面142から画面切換・決定スイッチ75を回して姿勢番号の項目142aを姿勢番号「00」〜「99」から選択的に切り換えて選択し、或いは、テンキー78から姿勢番号を直接入力して、画面切換・決定スイッチ75押下することで決定する。なお、本実施の形態においては、姿勢番号として「00」〜「99」の範囲を例示しているがこれに限られず、必要性とコントローラの記憶領域の容量に応じて任意の項目数を設定するよう構成しても良い。
【0052】
続いて、モニタコントローラ62を制御してモニタ61に、入力した姿勢番号に間違いが無いかどうかを確認する画面(図示せず)を表示し、指定した姿勢番号が正しいか否か(「OK」か「NG」か)を入力させ(ステップS105)、「OK」と「NG」の何れが入力されたかを判定する(ステップS106)。姿勢番号に間違いが無いかどうかの入力は、例えば、モニタ61上に表示される確認画面に表示される「OK」/「NG」の選択肢の何れかを画面切換・決定スイッチ75を回して選択し、画面切換・決定スイッチ75押下して決定する。また、姿勢番号指定画面142(
図13)の「レ」(チェックマーク)の項目142bを画面切換・決定スイッチ75を回して選択し、画面切換・決定スイッチ75押下することで「OK」を入力したり、前画面戻しスイッチ79を押下することで「NG」を入力したりしても良い。ステップS106において「NG」が入力されたと判定した場合には、「OK」が入力されるまでステップS104,S105の処理を繰り返す。
【0053】
ステップS106において「OK」が入力されたと判定した場合には、モニタコントローラ62を制御してモニタ61に姿勢目標値入力画面143(
図14)を表示し、オペレータに新規のキャリブレーション姿勢の姿勢情報(姿勢目標値)を入力させる(ステップS107)。ここでは、姿勢情報として被駆動部材31,33,35の角度目標値を入力する場合を例示する。姿勢情報の入力は、例えば、モニタ61上に表示される姿勢目標値入力画面143から画面切換・決定スイッチ75を回して「ブーム角度」の項目143a、「アーム角度」の項目143b、及び、「バケット角度」の項目143cの何れかを入力対象の項目として選択し、画面切換・決定スイッチ75押下することで決定して画面144(
図15)を表示させた後、画面切換・決定スイッチ75を回して入力対象の姿勢情報(角度目標値)の項目144aを複数の候補値から選択的に切り換えて選択し、或いは、テンキー78から姿勢情報(角度目標値)を項目144aに直接入力して、画面切換・決定スイッチ75押下することで決定する。
【0054】
続いて、モニタコントローラ62を制御してモニタ61に、入力した姿勢情報(角度目標値)に間違いが無いかどうかを確認する画面(図示せず)を表示し、入力した姿勢情報が正しいか否か(「OK」か「NG」か)を入力させ(ステップS108)、「OK」と「NG」の何れが入力されたかを判定する(ステップS109)。姿勢情報に間違いが無いかどうかの入力は、例えば、モニタ61上に表示される確認画面に表示される「OK」/「NG」の選択肢の何れかを画面切換・決定スイッチ75を回して選択し、画面切換・決定スイッチ75押下して決定する。また、画面144(
図15)の「レ」(チェックマーク)の項目144bを画面切換・決定スイッチ75を回して選択し、画面切換・決定スイッチ75押下することで「OK」を入力したり、前画面戻しスイッチ79を押下することで「NG」を入力したりしても良い。ステップS109において「NG」が入力されたと判定した場合には、「OK」が入力されるまでステップS107,S108の処理を繰り返す。
【0055】
ステップS109において「OK」が入力されたと判定した場合には、キャリブレーション姿勢記憶部60aに設けられた複数の記憶エリアのうちステップS104で選択した姿勢番号に対応する記憶エリアに入力した姿勢情報(角度目標値)を格納(記憶)する(ステップS110)。
【0056】
また、ステップS103において「削除」の項目が設定されたと判定した場合には、モニタコントローラ62を制御してモニタ61にキャリブレーション姿勢削除画面145(
図16)を表示し、オペレータに削除するキャリブレーション姿勢の姿勢番号を指定させる(ステップS111)。削除する姿勢番号の指定は、例えば、モニタ61上に表示されるキャリブレーション姿勢削除画面145から画面切換・決定スイッチ75を回して姿勢番号の項目145aを姿勢番号「00」〜「99」から選択的に切り換えて選択し、或いは、テンキー78から姿勢番号を直接入力して、画面切換・決定スイッチ75押下することで決定する。
【0057】
ステップS111において削除するキャリブレーション姿勢の姿勢番号が指定されると、モニタコントローラ62を制御してモニタ61に削除対象のキャリブレーション姿勢の現在値を表示する画面146(
図17)を表示し(ステップS112)、削除対象として入力した姿勢番号が正しいか否か(「OK」か「NG」か)を入力させ(ステップS113)、「OK」と「NG」の何れが入力されたかを判定する(ステップS114)。削除対象として入力した姿勢番号に間違いが無いかどうかの入力は、例えば、モニタ61上に表示される確認画面に表示される「OK」/「NG」の選択肢の何れかを画面切換・決定スイッチ75を回して選択し、画面切換・決定スイッチ75押下して決定する。また、画面146(
図17)の「レ」(チェックマーク)の項目146aを画面切換・決定スイッチ75を回して選択し、画面切換・決定スイッチ75押下することで「OK」を入力したり、前画面戻しスイッチ79を押下することで「NG」を入力したりしても良い。
【0058】
ステップS114において「OK」が入力されたと判定した場合には、キャリブレーション姿勢記憶部60aに設けられた複数の記憶エリアのうちステップS111で削除対象として選択した姿勢番号に対応する記憶エリアに記憶されている姿勢情報(角度目標値)を消去する(ステップS115)。
【0059】
ステップS110の記憶処理、又は、ステップS115の消去処理が終了すると、前画面戻しスイッチ79が押下されたかどうか判定し、判定結果がNOの場合にはステップS102〜S115の処理を繰り返し、判定結果がYESの場合には処理を終了する。
【0060】
図9及び
図10は、キャリブレーション姿勢制御部におけるキャリブレーション姿勢制御処理を示すフローチャートである。また、
図18〜
図21は、キャリブレーション姿勢制御処理の各処理ステップにおいてモニタに表示される画面の一例を示す図である。なお、キャリブレーション姿勢制御処理でモニタに表示される画面のうちキャリブレーション姿勢設定記憶処理でモニタに表示される画面と共通のものについてはその図面番号を示して図示を省略する。
【0061】
図9において、キャリブレーション姿勢制御部60bは、モニタ61に表示されたメニュー画面140(
図11)が操作されてキャリブレーション姿勢制御モードに移行した場合にキャリブレーション姿勢設定記憶処理を開始する(ステップS201)。キャリブレーション姿勢制御モードへの移行は、例えば、モニタ61上に表示されるメニュー画面140から画面切換・決定スイッチ75を回してキャリブレーション姿勢制御モードを示す「キャリブレーション姿勢」の項目140aを選択し、画面切換・決定スイッチ75押下することで決定する。
【0062】
キャリブレーション姿勢制御モードに移行すると、モニタコントローラ62を制御してモニタ61に姿勢入力画面141(
図12)を表示し、オペレータにキャリブレーション姿勢を呼び出させるための「呼出」の項目141cを選択的に入力させ(ステップS202)、「呼出」の項目141cが入力されたかどうかを判定する(ステップS203)。「呼出」の項目141cの入力は、モニタ61上に表示される姿勢入力画面141から画面切換・決定スイッチ75を回して「呼出」の項目141cを選択し、画面切換・決定スイッチ75押下することで決定する。ステップS203での判定結果がNOの場合には、判定結果がYESになるまで、すなわち、姿勢入力画面141で「呼出」の項目141cが入力されるまで、ステップS202の処理を繰り返す。
【0063】
また、ステップS203での判定結果がYESの場合には、モニタコントローラ62を制御してモニタ61にキャリブレーション姿勢を呼び出すための姿勢番号指定画面150(
図18)を表示し、オペレータに呼び出し対象となるキャリブレーション姿勢の姿勢番号を指定させる(ステップS204)。姿勢番号の指定は、例えば、モニタ61上に表示される姿勢番号指定画面150から画面切換・決定スイッチ75を回して姿勢番号の項目150aを姿勢番号「00」〜「99」から選択的に切り換えて選択し、或いは、テンキー78から姿勢番号を直接入力して、画面切換・決定スイッチ75押下することで決定する。
【0064】
ステップS204において呼び出すキャリブレーション姿勢の姿勢番号が指定されると、キャリブレーション姿勢記憶部60aに設けられた複数の記憶エリアのうちステップS204で指定した姿勢番号に対応する記憶エリアに格納された姿勢情報(角度目標値)を呼び出し(ステップS205)、モニタコントローラ62を制御してモニタ61に呼び出したキャリブレーション姿勢の姿勢情報(角度目標値)の現在値を表示する画面151(
図19)を表示し(ステップS206)、呼び出した姿勢情報、すなわち、入力した姿勢番号が正しいか否か(「OK」か「NG」か)を入力させ(ステップS207)、「OK」と「NG」の何れが入力されたかを判定する(ステップS208)。呼び出した姿勢情報、すなわち、入力した姿勢番号に間違いが無いかどうかの入力は、例えば、モニタ61上に表示される確認画面に表示される「OK」/「NG」の選択肢の何れかを画面切換・決定スイッチ75を回して選択し、画面切換・決定スイッチ75押下して決定する。また、画面151(
図18)の「レ」(チェックマーク)の項目151aを画面切換・決定スイッチ75を回して選択し、画面切換・決定スイッチ75押下することで「OK」を入力したり、前画面戻しスイッチ79を押下することで「NG」を入力したりしても良い。ステップS208において「NG」が入力されたと判定した場合には、「OK」が入力されるまでステップS204〜S207の処理を繰り返す。
【0065】
ステップS208において「OK」が入力されたと判定した場合には、モニタコントローラ62を制御してモニタ61に、MCスタンバイスイッチ76及びMCオン/オフスイッチ77の操作をオペレータに促す画面(図示せず)を表示し、MCスタンバイスイッチ76及びMCオン/オフスイッチ77を操作させ(ステップS209)、MCスタンバイスイッチ76及びMCオン/オフスイッチ77が操作されたかどうかを判定する(ステップS210)。ステップS210での判定結果がNOの場合には、判定結果がYESになるまでステップS209の処理を繰り返す。
【0066】
ステップS210での判定結果がYESの場合、すなわち、MCスタンバイスイッチ76及びMCオン/オフスイッチ77が操作された場合には、油圧ショベル1におけるマシンコントロールが有効となるので、モニタコントローラ62を制御してモニタ61の画面152(
図20)に、キャリブレーション姿勢制御処理のマシンコントロールを実行中であることをオペレータに報知する情報(例えば、「キャリブレーション姿勢制御動作中」の文字情報152a)を表示する(ステップS211)。
【0067】
続いて、パイロット圧1次圧センサ118〜123の検出結果から被駆動部材(ブーム31、アーム33、バケット35)が操作中であるかどうか、すなわち、操作レバー装置72,73,74が操作中であるかどうかを判定し(ステップS212)。判定結果がNOの場合には、ステップS212での判定結果がYESになるまで、ステップS212の処理を繰り返す。
【0068】
ステップS212の判定結果がYESの場合には、ブーム角度センサ63、
アーム角度センサ65、及びバケットシリンダストロークセンサ67の検出結果からブーム角度、アーム角度、及びバケット角度の現在値を算出し(ステップS213)、ブーム31、アーム33、バケット35のそれぞれについて、ブーム角度、アーム角度、バケット角度の現在値が、ステップS204〜S207で呼び出したキャリブレーション姿勢に対応する角度目標値(姿勢情報)と等しいかどうかを判定する(ステップS214a,S214b,S214c)。
【0069】
ステップS214aでの判定結果がYESの場合には、コントロールバルブ102によるバケットシリンダ36への圧油の供給が遮断されるように電磁比例弁107〜110を動作させる(ステップS215a)。また、ステップS214aの判定結果がNOの場合、又は、ステップS215aの処理が終了した場合には、ステップS216の処理に進む。
【0070】
同様に、ステップS214bでの判定結果がYESの場合には、コントロールバルブ101によるブームシリンダ32への圧油の供給が遮断されるように電磁比例弁105,106を動作させる(ステップS215b)。また、ステップS214bの判定結果がNOの場合、又は、ステップS215bの処理が終了した場合には、ステップS216の処理に進む。
【0071】
また、ステップS214cでの判定結果がYESの場合には、コントロールバルブ100によるアームシリンダ34への圧油の供給が遮断されるように電磁比例103,104を動作させる(ステップS215c)。また、ステップS214cの判定結果がNOの場合、又は、ステップS215cの処理が終了した場合には、ステップS216の処理に進む。
【0072】
ステップS216では、ブーム31、アーム33、バケット35の全てについて、ブーム角度、アーム角度、バケット角度の現在値が角度目標値と等しくなったかどうかを判定し(ステップS216)、判定結果がNOの場合には、ステップS211〜215a,S211〜215b,S211〜215cの処理を繰り返す。また、ステップS216での判定結果がYESの場合には、モニタコントローラ62を制御してモニタ61の画面153(
図21)に、キャリブレーション姿勢制御処理が完了してフロント作業機30がキャリブレーション姿勢となったことをオペレータに報知する情報(例えば、「キャリブレーション姿勢完了」の文字情報153a)を表示し(ステップS217)、処理を終了する。
【0073】
なお、本実施の形態においては、被駆動部材31,33,35の姿勢情報(ブーム角度、アーム角度、バケット角度)の現在値が角度目標値と等しくなった場合に被駆動部材31,33,35を駆動する油圧アクチュエータ32,34,36の動作を停止する構成について説明したが、以下のような構成を併せて有することができる。
【0074】
例えば、各被駆動部材31,33,35について、姿勢情報の現在値と角度目標値の差分が小さくなる方向にのみ油圧アクチュエータ32,34,36を動作可能とし、大きくなる方向には油圧アクチュエータ32,34,36が動作しないようにキャリブレーション姿勢制御処理を行うことができる。これにより、
また、各被駆動部材31,33,35について、姿勢情報と角度目標値の差分が小さくなるのに従って油圧アクチュエータ32,34,36の動作速度が小さくなり、差分が0(ゼロ)になる、すなわち、姿勢情報の現在値が角度目標値と等しくなった場合に油圧アクチュエータ32,34,36の動作を停止するようにキャリブレーション姿勢制御処理を行うことができる。
【0075】
また、本実施の形態においては、ブームシリンダ32について、操作レバー装置72から出力されるパイロット圧を減圧して油圧駆動部101aに出力する電磁比例弁(ブーム下げ減速弁)105のみを配置し、操作レバー装置72から油圧駆動部101bに導かれるパイロット圧を減圧する電磁比例弁(すなわち、ブーム上げ減速弁)については設けない構成とし、ブーム下げ動作においてのみキャリブレーション姿勢制御処理が有効となる場合を例示して示している。しかしながら、これに限られず、例えば、情報化施工コントローラ60からの制御信号に基づいて操作レバー装置72から出力されるパイロット圧を減圧して油圧駆動部101bに出力する電磁比例弁(すなわち、ブーム上げ減速弁)を配置し、被駆動部材31,33,35の全ての駆動方向についてキャリブレーション姿勢制御処理を有効に行うことができるよう構成しても良い。
【0076】
ここで、本実施の形態におけるフロント作業機30のキャリブレーション作業の一例を説明する。
【0077】
本実施の形態の油圧ショベル1のようなマシンコントロールを行う建設機械におけるキャリブレーション(校正)作業は、例えば、フロント作業機30や車体(上部旋回体20及び下部走行体10)に設置された各姿勢センサ63,65,67の検出値から演算されるバケット35の例えばローカル座標系における爪先位置と油圧ショベル1の外部からの測定による爪先位置の差分を解消することにより行う。すなわち、予め規定された複数の姿勢(キャリブレーション姿勢)を各姿勢センサ63,65,67の検出値に基づいて取り、このときのバケット35の爪先位置と外部からの測定による爪先位置の差分を算出し、この差分が無くなるように各姿勢センサ63,65,67の検出値を補正することによって、マシンコントロールにおける各姿勢センサ63,65,67の検出値に基づく爪先位置の精度を担保することができる。
【0078】
なお、以下に示すキャリブレーション作業はあくまで一例であり、要求される施工精度等に応じてキャリブレーション姿勢の形状、姿勢数は適宜変更するものである。
【0079】
図22は外部からの測定基準となるマーカの油圧ショベルへの取り付け位置を説明する側面図であり、
図23は外部からのマーカの測定の様子を示す上面図である。また、
図24〜
図27は、キャリブレーション姿勢の例をそれぞれ示す図である。ここでは、説明の簡単のため、姿勢センサのうち、ブーム31の姿勢センサ(ブーム角度センサ63)に対するキャリブレーション作業を例示して説明する。
【0080】
(手順1)キャリブレーション作業では、まず、ブーム31のブームピン37の中心にマーカ301を、アームピン38の中心にマーカ302をそれぞれ取り付ける。このとき、マーカ301及びマーカ302はフロント作業機30の同一側面上に取り付ける(
図22参照)。
【0081】
(手順2)次に、フロント作業機30の側面のマーカ301,302を視認できる位置にトータルステーション303を設置する(
図23参照)。
【0082】
(手順3)次に、フロント作業機30に設置されたブーム角度センサ63、アーム角度センサ65、及びバケットシリンダストロークセンサ67の検出値に基づいた角度(ブーム角度、アーム角度、バケット角度)に基づいてブーム31、アーム33、バケット35を操作し、
図24に一例として示すキャリブレーション姿勢をとる。
図24に示すキャリブレーション姿勢は、アーム引きフル、バケット引きフル、ブーム上げフルの状態である。このとき、本願発明に係るキャリブレーション姿勢制御処理を行うことにより、フロント作業機30を容易にキャリブレーション姿勢とすることができる。
【0083】
(手順4)次に、マーカ301の高さ304とマーカ302の高さ305をトータルステーション303を使用して測定する。
【0084】
(手順5)次に、マーカ301の高さ304とマーカ302の高さ305のトータルステーション303による測定値からマーカ301の高さ304とマーカ302の高さ305間の高さ306を算出する。
【0085】
(手順6)また、情報化施工コントローラ60に記憶されているブーム31の長さ307とマーカ301の高さ304とマーカ302の高さ305間の高さ306からブーム角度308を算出する。
【0086】
(手順7)次に、キャリブレーション角として、ブーム角度センサ63の検出値と手順3で算出したブーム角度308の差を計算する。
【0087】
(手順8)手順3〜7を他の複数の予め定めたキャリブレーション姿勢に対して行う。他の予め定めたキャリブレーション姿勢には例えば、下記のような姿勢がある。
【0088】
・アーム引きフル、バケット引きフル、ブーム角度:−40度±3度となるようなキャリブレーション姿勢(
図25参照)。
【0089】
・アーム引きフル、バケット引きフル、ブーム角度:−20度±3度となるようなキャリブレーション姿勢(
図26参照)。
【0090】
・アーム引きフル、バケット引きフルでブームを可能な限り下げたキャリブレーション姿勢(
図27参照)。
【0091】
(手順9)それぞれのキャリブレーション姿勢(
図25〜
図27)で計算したキャリブレーション角の最小値と最大値の差が許容範囲内であればキャリブレーション作業の結果としては合格とする。許容範囲は例えば0.4度以内といった値が挙げられる。また、キャリブレーション角が許容範囲から外れる場合には、キャリブレーション角のうち最も外れた値を除去して再測定を行う。再測定を実施しても許容範囲内に入らない場合はブーム31の長さ307を再測定のうえ再度キャリブレーション作業を行う。
【0092】
(手順10)ブーム31以外の被駆動部材(アーム33、バケット35)についてもブーム31と同様の手順でキャリブレーション作業を実施する。
【0093】
次に上記の各実施の形態の特徴について説明する。
【0094】
(1)上記の実施の形態では、複数の被駆動部材(例えば、ブーム31、アーム33、バケット35)を連結して構成された多関節型のフロント作業機30と、操作信号に基づいて前記複数の被駆動部材をそれぞれ駆動する複数の油圧アクチュエータ(例えば、ブームシリンダ32、アームシリンダ34、バケットシリンダ36)と、前記複数の油圧アクチュエータのうち操作者の所望する油圧アクチュエータに前記操作信号を出力する操作装置72,73,74と、前記複数の
被駆動部材の姿勢に関する姿勢情報をそれぞれ検出する複数の姿勢センサ(例えば、ブーム角度センサ63、アーム角度センサ65、バケットシリンダストロークセンサ67)と、前記姿勢センサの検出結果と予め定めた条件とに基づいて前記フロント作業機を動作させるマシンコントロールを実行する制御装置(例えば、情報化施工コントローラ60)とを備える建設機械(例えば、油圧ショベル1)において、前記制御装置は、前記姿勢センサのキャリブレーションを行うために予め定めた前記フロント作業機の少なくとも1つのキャリブレーション姿勢を記憶するキャリブレーション姿勢記憶部60aと、前記キャリブレーション姿勢における前記姿勢センサの検出目標値と前記姿勢センサの検出値とが等しくなった場合に前記油圧アクチュエータを停止させるように前記マシンコントロールを実行するキャリブレーション姿勢制御部60bとを有するものとした。
【0095】
従来技術のように、オペレータがモニタ上の表示を見ながらブーム、アーム、及びバケットを操作することでフロント作業機がキャリブレーションを行うための規定の姿勢(キャリブレーション姿勢)となるように合わせ込む作業を行う場合において、キャリブレーション姿勢はフロント作業機の各部の角度について厳密な調整が必要であり、オペレータは各アクチュエータの操作の積み上げることで規定の姿勢を形作ることとなるため、フロント作業機を規定の姿勢に調整するのに時間がかかってしまい、作業工数増加の一因となっていた。
【0096】
これに対して本実施の形態においては、オペレータによる操作の負担を低減しつつ、オペレータが要求する作業でのみ適切に力や速度を増加させることができ、作業時の力や作業速度の無駄な増加を抑制することができる。
【0097】
(2)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記キャリブレーション姿勢記憶部は、予め定めた複数のキャリブレーション姿勢を記憶し、前記キャリブレーション姿勢制御部は、前記キャリブレーション姿勢記憶部に記憶した複数のキャリブレーション姿勢から1つのキャリブレーション姿勢を選択的に設定するものとした。
【0098】
(3)また、上記の実施の形態では、(1)の建設機械において、前記複数の姿勢センサは、前記フロント作業機における
前記複数の被駆動部材の連結部分に設けられる角度センサ、前記油圧アクチュエータに設けられるストロークセンサ、及び、前記
複数の被駆動部材に設けられる傾斜センサの少なくとも何れか一種であるものとした。
【0099】
<付記>
なお、上記の実施の形態においては、エンジン等の原動機で油圧ポンプを駆動する一般的な油圧ショベルを例に挙げて説明したが、油圧ポンプをエンジン及びモータで駆動するハイブリッド式の油圧ショベルや、油圧ポンプをモータのみで駆動する電動式の油圧ショベル等にも本発明が適用可能であることは言うまでもない。
【0100】
また、本発明は上記の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲内の様々な変形例や組み合わせが含まれる。また、本発明は、上記の実施の形態で説明した全ての構成を備えるものに限定されず、その構成の一部を削除したものも含まれる。また、上記の各構成、機能等は、それらの一部又は全部を、例えば集積回路で設計する等により実現してもよい。また、上記の各構成、機能等は、プロセッサがそれぞれの機能を実現するプログラムを解釈し、実行することによりソフトウェアで実現してもよい。