(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本技術を実施するための形態(以下、実施の形態と称する)について説明する。説明は以下の順序により行う。
1.第1の実施の形態(ピニング領域の不純物濃度をコンタクトより低くする例)
2.第2の実施の形態(カソード電極およびコンタクトに同電位を印加する例)
3.第3の実施の形態(トランジスタのゲートに負バイアスを印加する例)
3.第4の実施の形態(カソード電極の外部のピニング領域の不純物濃度をコンタクトより低くする例)
3.第5の実施の形態(円形のピニング領域の不純物濃度をコンタクトより低くする例)
6.移動体への応用例
【0016】
<1.第1の実施の形態>
[測距モジュールの構成例]
図1は、本技術の第1の実施の形態における測距モジュール100の一構成例を示すブロック図である。この測距モジュール100は、ToF(Time of Flight)方式を用いて物体までの距離を測定するものであり、発光部110、制御部120、受光部200および測距演算部130を備える。
【0017】
発光部110は、制御部120の制御に従ってパルス光を照射光として照射するものである。
【0018】
受光部200は、間欠光に対する反射光を受光し、制御部120からのクロック信号等に基づいて光の往復時間を示す測定データを生成するものである。この受光部200は、所定数の測定データを測距演算部130に信号線209を介して供給する。
【0019】
制御部120は、発光部110および受光部200を制御するものである。この制御部120は、照射光の発光タイミングを示すタイミング信号を生成して信号線128および129を介して発光部110および受光部200に供給する。
【0020】
測距演算部130は、受光部200からの測定データに基づいて、物体までの距離を演算するものである。この測距演算部130は、演算した距離を示す複数の距離データを二次元格子状に配列した画像データを垂直同期信号に同期して生成して出力する。この画像データは、例えば、距離に応じた度合いのぼかし処理を行う画像処理やジェスチャー認識などに用いられる。
【0021】
[受光部の構成例]
図2は、本技術の第1の実施の形態における受光部200の一構成例を示すブロック図である。この受光部200は、画素アレイ部210および読出し回路230を備える。画素アレイ部210には、複数の画素回路220が二次元格子状に配列される。
【0022】
画素回路220は、反射光を受光した際にパルス信号を生成して読出し回路230に出力するものである。
【0023】
読出し回路230は、画素アレイ部210からパルス信号を読み出すものである。この読出し回路230は、照射光の発光タイミングから、パルス信号の示す受光タイミングまでの往復時間をTDC(Time to Digital Converter)などを用いて測定する。そして、読出し回路230は、測定値を示す測定データを測距演算部130に供給する。測距演算部130は、この往復時間に光速を乗じた値を2で除して、物体までの距離を算出する。
【0024】
[画素回路の構成例]
図3は、本技術の第1の実施の形態における画素回路220の一構成例を示す回路図である。この画素回路220は、抵抗221およびフォトダイオード300を備える。なお、同図において、抵抗221およびフォトダイオード300以外の回路や素子は、省略されている。
【0025】
抵抗221は、電源とフォトダイオード300のカソードとの間に挿入される。フォトダイオード300は、光を光電変換して増幅するものである。フォトダイオード300として、例えば、SPADが用いられる。
【0026】
フォトダイオード300の暗状態のカソード電位をVopとする。フォトダイオード300が反射光を受光してアバランシェ増幅を行うと、大電流が抵抗221に流れて電圧降下が発生する。この電圧降下により、アバランシェ増幅が発生しなくなる電位Vbdまでカソード電位が低下すると、大電流が止まる。この現象はクェンチと呼ばれる。
【0027】
次に、フォトダイオード300に溜まった電荷が、電位Vopによるリチャージで抜けていき、カソード電位はクェンチ直後の電位Vbdから電位Vopに復帰する。電位Vopへの復帰により、フォトダイオード300は、フォトンに反応することができるようになる。ここで、フォトダイオード300に蓄積された電荷量Qは、次の式により表される。
Q=C×(Vop−Vbd)
上式において、Cは、画素回路220の静電容量(画素容量)である。Qの単位は、例えば、クーロン(C)であり、画素容量Cの単位は、例えば、ファラド(F)である。また、電位Vopおよび電位Vbdの単位は、例えば、ボルト(V)である。
【0028】
カソード電位の低下開始の時点から、電位Vopに復帰した時点までの時間は、フォトダイオード300がフォトンに反応することができない時間であり、デッドタイムと呼ばれる。デッドタイムのうち、アバランシェ増幅が発生してからクェンチが生じるまでの時間は非常に短いため、デッドタイムの長さは、ほぼ、フォトダイオード300のリチャージ時間により律速される。このリチャージ時間は、画素容量Cが小さいほど短くなる。このため、高いフレームレート(すなわち、垂直同期信号の周波数)を実現する際には、画素容量Cの低容量化が求められる。
【0029】
なお、画素回路220を測距モジュール200に設けているが、画素回路220を測距モジュール200以外の回路や装置に設けることもできる。例えば、光通信を行う回路等やフォトンカウントを行う回路等に画素回路220を用いることができる。
【0030】
[フォトダイオードの構成例]
図4は、本技術の第1の実施の形態におけるフォトダイオード300の断面図の一例である。このフォトダイオード300の受光面に垂直な方向をZ方向とする。また、受光面に平行な所定方向をX方向とする。X方向およびZ方向に垂直な方向をY方向とする。
【0031】
Z方向から見た際に、フォトダイオード300の外縁の近傍には、画素間を分離する絶縁領域380が設けられる。
【0032】
また、受光面と、絶縁領域380の側面とには、カバーフィルム385が形成される。受光面を最も下の面として、カバーフィルム385の上部には、空乏層370が形成される。空乏層370は、例えば、N型半導体により形成される。空乏層370の上部には、N層361およびP層362からなる増幅領域360が形成される。N層361は、P層362の上部に形成される。
【0033】
また、受光面を裏面として、裏面に対する表面にはピニング領域330が形成され、そのピニング領域330にアノード電極310、カソード電極320およびコンタクト350が埋め込まれている。コンタクト350には、所定の基準電位(接地電位など)が印加される。アノード電極310およびコンタクト350は、例えば、アクセプターの添加により形成され、カソード電極320は、例えばドナーの添加により形成される。なお、コンタクト350は、特許請求の範囲における基準電極の一例である。
【0034】
また、ピニング領域330の不純物濃度は、Z方向においてピニング領域330と増幅領域360との間に、電位障壁のあるバリア領域340が形成されるように調整されている。不純物濃度の詳細については後述する。
【0035】
空乏層370は、光電変換により電荷を生成し、増幅領域360は、その電荷をアバランシェ増幅する。そして、増幅された電荷は、カソード電極320から出力される。
【0036】
また、ピニング領域330の不純物濃度は、コンタクト350よりも低い値、例えば、1E17毎立方センチメートル(/cm
3)に設定される。また、ピニング領域330の不純物濃度は、バリア領域340より高い値であるものとする。
【0037】
図5は、本技術の第1の実施の形態におけるフォトダイオード300の平面図の一例である。Z方向から見てフォトダイオード300の形状は例えば、矩形である。このフォトダイオード300の外縁に沿ってアノード電極310が配置される。アノード電極310の内側に隣接してカソード電極320が配置される。そのカソード電極320の内側に隣接してピニング領域330が設けられる。ピニング領域330の内部(中央など)にコンタクト350が配置される。
【0038】
図6は、本技術の第1の実施の形態におけるフォトダイオード300のポテンシャル図の一例である。同図において、横軸は、X方向における、フォトダイオード300の外縁からの距離を示し、縦軸は、Z方向の距離(深さ)を示す。また、同図において、領域の色が濃いほど、その領域のポテンシャルが高いことを示す。例えば、ピニング領域330のポテンシャルは、コンタクト350よりも高い。これは、ピニング領域330の不純物濃度が、コンタクト350よりも低いためである。
【0039】
図7は、本技術の第1の実施の形態におけるフォトダイオードの深さ方向のポテンシャル図の一例である。同図における縦軸は、ポテンシャルを示し、横軸は、
図6の線分Z1−Z2における表面からの深さを示す。
【0040】
前述したように、ピニング領域330の不純物濃度をコンタクト350よりも低くしたため、ピニング領域330のポテンシャルは、コンタクト350よりも高くなり、カソード電位に近くなる。例えば、3.0ボルト(V)のカソード電位に対し、コンタクト350の電位は、2.7ボルト(V)となる。
【0041】
また、ピニング領域330と増幅領域360との間のバリア領域340のポテンシャルは、ピニング領域330よりも高い。ピニング領域330には、カソード電極320が埋め込まれているため、光が入射されていなくとも、暗電流(言い換えれば、リーク電流)が生じるおそれがある。このリーク電流におけるホールは、ポテンシャルの低い方へ移動する。しかし、ピニング領域330と増幅領域360との間には、バリア領域340において電位障壁が生じているため、ホールが増幅領域360に到達することは無い。その一方で、ピニング領域330と、接地電位のコンタクト350との間には電位障壁が無く、また、コンタクト350の電位がピニング領域330よりも低いため、ホールはグランドに吸収される。
【0042】
また、リーク電流における電子は、ポテンシャルの高い方へ移動する。前述のようにピニング領域330よりカソード電位の方が電位が高いため、電子はカソード電極320から出力され、問題とならない。また、ピニング領域330より増幅領域360の方が電位が低いため、電子が増幅領域360に飛び込むことは無い。
【0043】
この結果、暗電流として湧いたホールは、暗電流として計測されず、DCRの劣化を抑制することができる。
【0044】
さらに、ピニング領域330の不純物濃度をコンタクト350より小さくすると、そうでない場合と比較して、ピニング領域330とカソード電極320とのそれぞれの不純物濃度の差異が小さくなる。これにより、ピニング領域330とカソード電極320との間の空乏層幅が広くなる。空乏層幅が広くなると、ピニング領域330とカソード電極320との接合部分に蓄積することができる電荷量が少なくなり、画素容量Cが減少する。
【0045】
ここで、ピニング領域330の不純物濃度をコンタクト350以上とした比較例を想定する。
図8は、比較例におけるフォトダイオードの深さ方向のポテンシャル図の一例である。
【0046】
ピニング領域330の不純物濃度をコンタクト350以上に大きくすると、バリア領域340の電位障壁が大きくなり、リーク電流を抑制しやすくなる。しかしながら、ピニング領域330とカソード電極320とのそれぞれの不純物濃度の差異が大きくなり、それらの間の空乏層幅が狭くなって画素容量Cが増大してしまう。
【0047】
図9は、本技術の第1の実施の形態における画素回路220の動作の一例を示すタイミングチャートである。タイミングT0においてフォトダイオード300が反射光を受光してアバランシェ増幅を行うと、大電流が抵抗221に流れて電圧降下が発生する。この電圧降下により、タイミングT1においてアバランシェ増幅が発生しなくなる接地電位GND(または0ボルト)までカソード電位が低下すると、大電流が止まる。
【0048】
次に、フォトダイオード300に溜まった電荷が、電位Vopによるリチャージで抜けていき、タイミングT2においてカソード電位はクェンチ直後の接地電位GNDから電位Vopに復帰する。
【0049】
カソード電位の低下開始のタイミングT0から、電位Vopに復帰したタイミングT2までの時間は、デッドタイムに該当する。このデッドタイムの長さは、ほぼ、タイミングT1乃至T2のリチャージ時間により律速される。
【0050】
フォトダイオード300では、ピニング領域330の不純物濃度をコンタクト350より小さくしたため、画素容量Cを減少させてリチャージ時間を短くすることができる。これにより、デッドタイムを短くして高フレームレートを実現することができる。
【0051】
図10は、比較例における画素回路の動作の一例を示すタイミングチャートである。この比較例では、ピニング領域330の不純物濃度をコンタクト350以上としたために画素容量Cが増大し、リチャージ時間が長くなってしまう。この結果、デッドタイムが長くなり、高フレームレートの実現が困難となる。
【0052】
[フォトダイオードの製造方法]
図11は、本技術の第1の実施の形態における基板実装前のフォトダイオード300の断面図の一例である。表面から深い順にイオン注入が行われる。例えば、イオン注入により空乏層370が形成され、次に増幅領域360が形成される。そして、アノード電極310、カソード電極320およびコンタクト350が埋め込まれ、ピニング領域330が形成される。ピニング領域330の形成により、増幅領域360との間には電位障壁(バリア領域340)が生じる。
【0053】
図12は、本技術の第1の実施の形態における基板実装後のフォトダイオード300の断面図の一例である。アノード電極310、カソード電極320およびコンタクト350は、基板401および402に信号線を介して接続される。
【0054】
図13は、本技術の第1の実施の形態における絶縁領域形成前のフォトダイオードの断面図の一例である。基板401および402の接続後において、受光面が、研磨装置410により研磨される。
【0055】
図14は、本技術の第1の実施の形態における絶縁領域形成後のフォトダイオードの断面図の一例である。研磨後において、絶縁領域380がフォトダイオード300の外縁近傍に形成され、画素間が分離される。
【0056】
図15は、本技術の第1の実施の形態におけるカバーフィルム385形成後のフォトダイオードの断面図の一例である。絶縁領域380の形成後において、受光面と、絶縁領域380の側面とにカバーフィルム385が形成される。
【0057】
図16は、本技術の第1の実施の形態におけるフォトダイオード300の製造方法の一例を示すフローチャートである。イオン注入により、空乏層370や増幅領域360が形成される(ステップS901)。次に、信号線が配線され(ステップS902)、裏面が研磨される(ステップS903)。そして、絶縁領域380が形成され(ステップS904)、カバーフィルムが形成される(ステップS905)。ステップS905の後に、残りの工程が実行され、フォトダイオード300の製造工程が終了する。
【0058】
このように、本技術の第1の実施の形態では、ピニング領域330の不純物濃度をコンタクト350よりも低くしたため、ピニング領域330とカソード電極320との不純物濃度の差を小さくして、それらの間の空乏層幅を広くすることができる。これにより、画素回路220の静電容量を減少させることができる。
【0059】
<2.第2の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、ピニング領域330の不純物濃度をコンタクト350よりも低くしていたが、その不純物濃度をコンタクト350以上とする場合と比較して、電位障壁が小さくなる。このため、暗電流が増大した際には、暗電流におけるホールが電位障壁を飛び越えて増幅領域360に飛び込むおそれがある。この第2の実施の形態のフォトダイオード300は、ピニング領域330の不純物濃度の調整以外の方法により、画素容量を減少させた点において第1の実施の形態と異なる。
【0060】
図17は、本技術の第2の実施の形態におけるフォトダイオード300の断面図の一例である。この第2の実施の形態のフォトダイオード300は、コンタクト350がカソード電極320と信号線を介して接続される点において第1の実施の形態と異なる。これにより、コンタクト350には、カソード電位が印加され、コンタクト350とカソード電極320との間の電位差が無くなる。したがって、フォトダイオード300に接続された回路から見た、フォトダイオード300の画素容量Cが第1の実施の形態と比較して減少する。
【0061】
また、コンタクト350およびグランド間の配線と、カソード電極320に接続された配線との間に電位差があると配線容量が生じるが、第2の実施の形態では、これらの配線間に電位差が無いため、配線容量が生じない。したがって、その分、画素容量Cをさらに減少させることができる。
【0062】
また、第2の実施の形態のピニング領域330の不純物濃度は、コンタクト350より小さくしてもよいし、それ以上とすることもできる。なお、第2の実施の形態のフォトダイオード300の製造方法は、コンタクト350とカソード電極320とが接続される点以外は、第1の実施の形態と同様である。
【0063】
なお、カソード電極320およびコンタクト350は、特許請求の範囲に記載の一対の電極の一例である。
【0064】
このように、本技術の第2の実施の形態では、カソード電極320およびコンタクト350に同一の電位を印加したため、それらに異なる電位を印加した場合よりも画素容量を減少させることができる。
【0065】
<3.第3の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、イオン注入によりフォトダイオード300にピニング領域330を形成していたが、イオン注入により、フォトダイオード300を形成する基板上に欠陥ダメージが生じるおそれがある。この第3の実施の形態は、フォトダイオード300に隣接するMOS(Metal Oxide Semiconductor)トランジスタの半導体層をピニング領域として用いる点において第1の実施の形態と異なる。
【0066】
図18は、本技術の第3の実施の形態における画素回路220の断面図の一例である。第3の実施の形態の画素回路220は、トランジスタ390をさらに備える。また、フォトダイオード300にはピニング領域330が形成されない。
【0067】
トランジスタ390は、メタル層391、酸化膜392および半導体層393を備えるMOSトランジスタである。半導体層393は、フォトダイオード300のバリア領域340の上部に設けられ、その上部に酸化膜392が設けられる。また、酸化膜392の上部にメタル層391が設けられる。
【0068】
メタル層391は、トランジスタ390のゲートとして用いられ、半導体層393にはソースおよびドレインが形成される。
【0069】
トランジスタ390のゲートには、基準電位(接地電位など)より低い負バイアスが印加される。これにより、暗電流におけるホールを誘起して暗電流を抑制することができる。すなわち、半導体層393がピニング領域として機能する。
【0070】
一方、フォトダイオード300のシリコン表面には、ピニングのための不純物を添加しなくてもよいため、不純物添加による欠陥ダメージを無くすることができる。また、酸化膜392を高品質なものとすれば、界面準位が低下するため、DCRを低下させることができる。このため、界面準位低下によるDCRの低下分、ピニング領域(半導体層393)の電位を高くすることができる。これにより、第1の実施の形態と比較して、さらに画素容量Cを減少させることができる。
【0071】
このように、本技術の第3の実施の形態によれば、トランジスタ390のゲート電極に負バイアスを印加することにより暗電流を抑制するため、フォトダイオード300にピニング領域を形成する必要が無くなる。これにより、ピニング領域の形成によるフォトダイオード300の欠陥ダメージを無くすことができる。
【0072】
<4.第4の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、カソード電極320をピニング領域330の周囲に形成していたが、画素サイズが大きくなるほど、カソード電極320とピニング領域330との接合部分が長くなり、画素容量が増大してしまう。ここで、接合部分の長さは、カソード電極320とピニング領域330との境界線に平行な方向における長さを意味する。この第4の実施の形態のフォトダイオード300は、カソード電極320をピニング領域330の内部に配置して、画素容量を減少させた点において第1の実施の形態と異なる。
【0073】
図19は、本技術の第4の実施の形態におけるフォトダイオード300の平面図の一例である。この第4の実施の形態のフォトダイオード300では、Z方向から見て、ピニング領域330の内部(中央など)にカソード電極320が配置されている。また、コンタクト350は、ピニング領域330の周囲に配置される。カソード電極320をピニング領域330の内部に配置することにより、カソード電極320とピニング領域330との接合部分が第1の実施の形態より短くなり、画素容量が減少する。
【0074】
このように、本技術の第4の実施の形態では、カソード電極320をピニング領域330の内部に配置したため、カソード電極320をピニング領域330の周囲に配置する場合よりも、接合部分を短くすることができる。これにより、画素回路220の静電容量を減少させることができる。
【0075】
<5.第5の実施の形態>
上述の第1の実施の形態では、フォトダイオード300の形状を矩形としていた。しかし、矩形とした場合、フォトダイオード300の端部において強電界が発生しやすくなり、増幅領域360以外でアバランシェ増幅が発生して画素回路220の駆動が阻害されるおそれがある。この現象は、エッジブレイクダウン現象と呼ばれる。この第5の実施の形態のフォトダイオード300の形状を円形とした点において第1の実施の形態と異なる。
【0076】
図20は、本技術の第5の実施の形態におけるフォトダイオード300の平面図の一例である。この第5の実施の形態のフォトダイオード300は、受光面に平行な平面における形状が円形である点において第1の実施の形態と異なる。フォトダイオード300内の、カソード電極320、ピニング領域330やコンタクト350のそれぞれの形状も円形である。
【0077】
フォトダイオード300の形状を円形にすると、増幅領域360の実効面積が小さくなるためにフォトン1個あたりに対するアバランシェ増幅の発生確率(PDE:Photon Detection Efficiency)が小さくなる可能性がある。しかしながら、フォトダイオード300の端部で強電界が発生しにくくなるため、エッジブレイクダウン現象を抑制することができる。また、長期信頼性を高くすることができる。
【0078】
なお、フォトダイオード300の形状を円形としているが、五角形や六角形などの円に近い多角形であってもよい。
【0079】
このように、本技術の第5の実施の形態では、フォトダイオード300の形状を円形にしたため、エッジが無くなってエッジブレイクダウン現象を抑制することができる。
【0080】
<6.移動体への応用例>
本開示に係る技術(本技術)は、様々な製品へ応用することができる。例えば、本開示に係る技術は、自動車、電気自動車、ハイブリッド電気自動車、自動二輪車、自転車、パーソナルモビリティ、飛行機、ドローン、船舶、ロボット等のいずれかの種類の移動体に搭載される装置として実現されてもよい。
【0081】
図21は、本開示に係る技術が適用され得る移動体制御システムの一例である車両制御システムの概略的な構成例を示すブロック図である。
【0082】
車両制御システム12000は、通信ネットワーク12001を介して接続された複数の電子制御ユニットを備える。
図21に示した例では、車両制御システム12000は、駆動系制御ユニット12010、ボディ系制御ユニット12020、車外情報検出ユニット12030、車内情報検出ユニット12040、及び統合制御ユニット12050を備える。また、統合制御ユニット12050の機能構成として、マイクロコンピュータ12051、音声画像出力部12052、及び車載ネットワークI/F(interface)12053が図示されている。
【0083】
駆動系制御ユニット12010は、各種プログラムにしたがって車両の駆動系に関連する装置の動作を制御する。例えば、駆動系制御ユニット12010は、内燃機関又は駆動用モータ等の車両の駆動力を発生させるための駆動力発生装置、駆動力を車輪に伝達するための駆動力伝達機構、車両の舵角を調節するステアリング機構、及び、車両の制動力を発生させる制動装置等の制御装置として機能する。
【0084】
ボディ系制御ユニット12020は、各種プログラムにしたがって車体に装備された各種装置の動作を制御する。例えば、ボディ系制御ユニット12020は、キーレスエントリシステム、スマートキーシステム、パワーウィンドウ装置、あるいは、ヘッドランプ、バックランプ、ブレーキランプ、ウィンカー又はフォグランプ等の各種ランプの制御装置として機能する。この場合、ボディ系制御ユニット12020には、鍵を代替する携帯機から発信される電波又は各種スイッチの信号が入力され得る。ボディ系制御ユニット12020は、これらの電波又は信号の入力を受け付け、車両のドアロック装置、パワーウィンドウ装置、ランプ等を制御する。
【0085】
車外情報検出ユニット12030は、車両制御システム12000を搭載した車両の外部の情報を検出する。例えば、車外情報検出ユニット12030には、撮像部12031が接続される。車外情報検出ユニット12030は、撮像部12031に車外の画像を撮像させるとともに、撮像された画像を受信する。車外情報検出ユニット12030は、受信した画像に基づいて、人、車、障害物、標識又は路面上の文字等の物体検出処理又は距離検出処理を行ってもよい。
【0086】
撮像部12031は、光を受光し、その光の受光量に応じた電気信号を出力する光センサである。撮像部12031は、電気信号を画像として出力することもできるし、測距の情報として出力することもできる。また、撮像部12031が受光する光は、可視光であっても良いし、赤外線等の非可視光であっても良い。
【0087】
車内情報検出ユニット12040は、車内の情報を検出する。車内情報検出ユニット12040には、例えば、運転者の状態を検出する運転者状態検出部12041が接続される。運転者状態検出部12041は、例えば運転者を撮像するカメラを含み、車内情報検出ユニット12040は、運転者状態検出部12041から入力される検出情報に基づいて、運転者の疲労度合い又は集中度合いを算出してもよいし、運転者が居眠りをしていないかを判別してもよい。
【0088】
マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車内外の情報に基づいて、駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置の制御目標値を演算し、駆動系制御ユニット12010に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両の衝突回避あるいは衝撃緩和、車間距離に基づく追従走行、車速維持走行、車両の衝突警告、又は車両のレーン逸脱警告等を含むADAS(Advanced Driver Assistance System)の機能実現を目的とした協調制御を行うことができる。
【0089】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030又は車内情報検出ユニット12040で取得される車両の周囲の情報に基づいて駆動力発生装置、ステアリング機構又は制動装置等を制御することにより、運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0090】
また、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で取得される車外の情報に基づいて、ボディ系制御ユニット12020に対して制御指令を出力することができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車外情報検出ユニット12030で検知した先行車又は対向車の位置に応じてヘッドランプを制御し、ハイビームをロービームに切り替える等の防眩を図ることを目的とした協調制御を行うことができる。
【0091】
音声画像出力部12052は、車両の搭乗者又は車外に対して、視覚的又は聴覚的に情報を通知することが可能な出力装置へ音声及び画像のうちの少なくとも一方の出力信号を送信する。
図21の例では、出力装置として、オーディオスピーカ12061、表示部12062及びインストルメントパネル12063が例示されている。表示部12062は、例えば、オンボードディスプレイ及びヘッドアップディスプレイの少なくとも一つを含んでいてもよい。
【0092】
図22は、撮像部12031の設置位置の例を示す図である。
【0093】
図22では、撮像部12031として、撮像部12101,12102,12103,12104,12105を有する。
【0094】
撮像部12101,12102,12103,12104,12105は、例えば、車両12100のフロントノーズ、サイドミラー、リアバンパ、バックドア及び車室内のフロントガラスの上部等の位置に設けられる。フロントノーズに備えられる撮像部12101及び車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として車両12100の前方の画像を取得する。サイドミラーに備えられる撮像部12102,12103は、主として車両12100の側方の画像を取得する。リアバンパ又はバックドアに備えられる撮像部12104は、主として車両12100の後方の画像を取得する。車室内のフロントガラスの上部に備えられる撮像部12105は、主として先行車両又は、歩行者、障害物、信号機、交通標識又は車線等の検出に用いられる。
【0095】
なお、
図22には、撮像部12101ないし12104の撮影範囲の一例が示されている。撮像範囲12111は、フロントノーズに設けられた撮像部12101の撮像範囲を示し、撮像範囲12112,12113は、それぞれサイドミラーに設けられた撮像部12102,12103の撮像範囲を示し、撮像範囲12114は、リアバンパ又はバックドアに設けられた撮像部12104の撮像範囲を示す。例えば、撮像部12101ないし12104で撮像された画像データが重ね合わせられることにより、車両12100を上方から見た俯瞰画像が得られる。
【0096】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、距離情報を取得する機能を有していてもよい。例えば、撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、複数の撮像素子からなるステレオカメラであってもよいし、位相差検出用の画素を有する撮像素子であってもよい。
【0097】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を基に、撮像範囲12111ないし12114内における各立体物までの距離と、この距離の時間的変化(車両12100に対する相対速度)を求めることにより、特に車両12100の進行路上にある最も近い立体物で、車両12100と略同じ方向に所定の速度(例えば、0km/h以上)で走行する立体物を先行車として抽出することができる。さらに、マイクロコンピュータ12051は、先行車の手前に予め確保すべき車間距離を設定し、自動ブレーキ制御(追従停止制御も含む)や自動加速制御(追従発進制御も含む)等を行うことができる。このように運転者の操作に拠らずに自律的に走行する自動運転等を目的とした協調制御を行うことができる。
【0098】
例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104から得られた距離情報を元に、立体物に関する立体物データを、2輪車、普通車両、大型車両、歩行者、電柱等その他の立体物に分類して抽出し、障害物の自動回避に用いることができる。例えば、マイクロコンピュータ12051は、車両12100の周辺の障害物を、車両12100のドライバが視認可能な障害物と視認困難な障害物とに識別する。そして、マイクロコンピュータ12051は、各障害物との衝突の危険度を示す衝突リスクを判断し、衝突リスクが設定値以上で衝突可能性がある状況であるときには、オーディオスピーカ12061や表示部12062を介してドライバに警報を出力することや、駆動系制御ユニット12010を介して強制減速や回避操舵を行うことで、衝突回避のための運転支援を行うことができる。
【0099】
撮像部12101ないし12104の少なくとも1つは、赤外線を検出する赤外線カメラであってもよい。例えば、マイクロコンピュータ12051は、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在するか否かを判定することで歩行者を認識することができる。かかる歩行者の認識は、例えば赤外線カメラとしての撮像部12101ないし12104の撮像画像における特徴点を抽出する手順と、物体の輪郭を示す一連の特徴点にパターンマッチング処理を行って歩行者か否かを判別する手順によって行われる。マイクロコンピュータ12051が、撮像部12101ないし12104の撮像画像中に歩行者が存在すると判定し、歩行者を認識すると、音声画像出力部12052は、当該認識された歩行者に強調のための方形輪郭線を重畳表示するように、表示部12062を制御する。また、音声画像出力部12052は、歩行者を示すアイコン等を所望の位置に表示するように表示部12062を制御してもよい。
【0100】
以上、本開示に係る技術が適用され得る車両制御システムの一例について説明した。本開示に係る技術は、以上説明した構成のうち、例えば、車外情報検出ユニット12030に適用され得る。具体的には、
図1の測距モジュール100を、
図21の車外情報検出ユニット12030に適用することができる。車外情報検出ユニット12030に本開示に係る技術を適用することにより、暗電流を抑制して正確な距離データを得ることができるため、車両制御システムの信頼性を向上させることができる。
【0101】
なお、上述の実施の形態は本技術を具現化するための一例を示したものであり、実施の形態における事項と、特許請求の範囲における発明特定事項とはそれぞれ対応関係を有する。同様に、特許請求の範囲における発明特定事項と、これと同一名称を付した本技術の実施の形態における事項とはそれぞれ対応関係を有する。ただし、本技術は実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において実施の形態に種々の変形を施すことにより具現化することができる。
【0102】
なお、本明細書に記載された効果はあくまで例示であって、限定されるものではなく、また、他の効果があってもよい。
【0103】
なお、本技術は以下のような構成もとることができる。
(1)光電変換された電荷を増幅する増幅領域と、
前記増幅された電荷を出力するカソード電極と、
所定の基準電位が印加された基準電極と、
前記カソード電極および前記基準電極が埋め込まれて前記基準電極よりも不純物濃度が低いピニング領域と、
前記ピニング領域と前記増幅領域との間に配置されて前記ピニング領域よりも不純物濃度が低いバリア領域と
を具備するフォトダイオード。
(2)前記カソード電極は、受光面に平行な所定平面において前記ピニング領域の周囲に形成される
前記(1)記載のフォトダイオード。
(3)前記カソード電極は、受光面に平行な所定平面において前記ピニング領域の内部に形成される
前記(1)記載のフォトダイオード。
(4)受光面に平行な所定平面において前記カソード電極、前記基準電極および前記ピニング領域の形状は矩形である
前記(1)から(3)のいずれかに記載のフォトダイオード。
(5)受光面に平行な所定平面において前記カソード電極、前記基準電極および前記ピニング領域の形状は円形および多角形のいずれかである
前記(1)から(3)のいずれかに記載のフォトダイオード。
(6)光電変換された電荷を増幅する増幅領域と、
前記増幅された電荷を出力するための、電位が同一の一対の電極と、
前記一対の電極が埋め込まれたピニング領域と、
前記ピニング領域と前記増幅領域との間に配置されて前記ピニング領域よりも不純物濃度が低いバリア領域と
を具備するフォトダイオード。
(7)光電変換された電荷を増幅する増幅領域と、
前記増幅された電荷を出力するカソード電極と、
所定の基準電位が印加された基準電極と、
前記所定の基準電位よりも低い負バイアスがゲートに印加されたトランジスタと、
前記トランジスタと前記増幅領域との間に配置されたバリア領域と
を具備する画素回路。
(8)光電変換された電荷を増幅する増幅領域を形成する増幅領域手順と、
所定の基準電位が印加される基準電極よりも不純物濃度が低いピニング領域を形成するピニング領域形成手順と、
前記基準電極と前記増幅された電荷を出力するカソード電極とを前記ピニング領域に埋め込む電極形成手順と
を具備するフォトダイオードの製造方法。
(9)光電変換された電荷を増幅する増幅領域を形成する増幅領域手順と、
ピニング領域を形成するピニング領域形成手順と、
前記増幅された電荷を出力するための、電位が同一の一対の電極を前記ピニング領域に埋め込む電極形成手順と
を具備するフォトダイオードの製造方法。