特許第6860469号(P6860469)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2015.5.11 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860469
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】内燃機関の点火装置
(51)【国際特許分類】
   F02P 3/00 20060101AFI20210405BHJP
   F02P 17/12 20060101ALI20210405BHJP
   F02P 15/10 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   F02P3/00 G
   F02P17/00 R
   F02P15/10 301A
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2017-238517(P2017-238517)
(22)【出願日】2017年12月13日
(65)【公開番号】特開2019-105228(P2019-105228A)
(43)【公開日】2019年6月27日
【審査請求日】2019年8月15日
(73)【特許権者】
【識別番号】000003609
【氏名又は名称】株式会社豊田中央研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】特許業務法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】木下 雅夫
(72)【発明者】
【氏名】冬頭 孝之
(72)【発明者】
【氏名】増田 糧
(72)【発明者】
【氏名】佐山 勝悟
(72)【発明者】
【氏名】杉浦 明光
【審査官】 沼生 泰伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開2016−217189(JP,A)
【文献】 特開2013−007351(JP,A)
【文献】 特開2014−224493(JP,A)
【文献】 特開2015−063931(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02P 3/00
F02P 15/10
F02P 17/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
火花放電路のインダクタンス又は電圧に対する電流の位相遅れを検出することによって前記火花放電路の現在の形状を推定し、推定された前記火花放電路の現在の形状に応じて前記火花放電路を広げるように制御を行うことを特徴とする内燃機関の点火装置。
【請求項2】
請求項1に記載の内燃機関の点火装置であって、
火電流を増加させることによって前記火花放電路を広げるように制御を行うことを特徴とする内燃機関の点火装置。
【請求項3】
請求項1に記載の内燃機関の点火装置であって、
記火花放電路に電気エネルギーを供給することによって前記火花放電路を広げるように制御を行うことを特徴とする内燃機関の点火装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の内燃機関の点火装置であって、
前記火花放電路に高周波信号を重畳印可する高周波重畳回路と、
前記高周波信号の電圧と電流との位相差から前記インダクタンス又は前記位相遅れを検出する検出回路と、
を備えることを特徴とする内燃機関の点火装置。
【請求項5】
請求項に記載の内燃機関の点火装置であって、
前記高周波信号は、パルス信号の繰り返しであることを特徴とする内燃機関の点火装置。
【請求項6】
請求項に記載の内燃機関の点火装置であって、
前記高周波信号は、ランダムな信号であることを特徴とする内燃機関の点火装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内燃機関の点火装置に関する。
【背景技術】
【0002】
内燃機関の点火装置であって、点火回路の二次電流(放電電流)を時間変化の小さい矩形型とすることで、火花放電路の吹き消えや再放電の発生及びこれに伴う点火エネルギーの損失を抑制する技術が開示されている(特許文献1)。また、当該点火回路の二次電圧や二次電流を一次回路にフィードバックすることで効率を高める技術が開示されている(特許文献2、3)。
【0003】
また、点火電流により形成された磁場によって火花放電路にローレンツ力を作用させ、火花放電を周囲空間に飛翔させる点火装置が開示されている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2014−206068号公報
【特許文献2】特開2015−63931号公報
【特許文献3】特開2015−200284号公報
【特許文献4】国際特許公報WO91/15677号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、図7(a)〜図7(d)に示すように、点火プラグの電極間に形成された火花放電路は、エンジン筒内の気流によってその下流方向に伸長する。その伸長は、時間経過とともに増大する。一方、エンジン筒内の気流は乱れを伴っており、その方向と速度が変動する。そのため、放電路の伸長過程では、図7(e)に示すように、放電路の近接・接触による短絡現象が生じる。放電路に短絡が生じると、放電路長さが急激に短くなるために、周囲の混合気を加熱する効果が著しく低下する。その結果、初期火炎の成長が抑制されて、熱発生速度の低下や失火をもたらす。
【0006】
火花放電路の近接を検知する方法や検知された結果から火花放電の短絡を抑制する技術は知られていなかった。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の1つの態様は、火花放電路の近接を予測し、前記火花放電路の近接が予測されたときに前記火花放電路を広げるように制御を行うことを特徴とする内燃機関の点火装置である。
【0008】
ここで、前記火花放電路の近接が予測されたときに短絡を抑制するために点火電流を増加させてローレンツ力により放電路を反発させることが好適であり、前記火花放電路に電気エネルギーを供給することが好適である。
【0009】
また、火花放電路のインダクタンスを検出することによって前記火花放電路の近接を予測することが好適である。
【0010】
また、前記火花放電路に高周波信号を重畳印可する高周波重畳回路と、前記高周波信号の電圧と電流との位相差から前記火花放電路のインダクタンスを検出する検出回路と、を備えることが好適である。
【0011】
また、前記高周波信号は、パルス信号の繰り返しであることが好適である。また、前記高周波信号は、ランダムな信号であることが好適である。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、火花放電路の近接を予測することができ、火花放電の短絡を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の実施の形態における内燃機関の点火装置の構成を示す図である。
図2】本発明の実施の形態におけるインダクタンスの検出方法の原理を示す図である。
図3】火花放電路の形状とインダクタンスの関係を説明する図である。
図4】本発明の実施の形態におけるインダクタンスの検出用信号の印加・重畳を説明する図である。
図5】本発明の実施の形態における点火電流の制御を説明する図である。
図6】本発明の実施の形態における火花放電路に作用するローレンツ力と火花放電路の短絡の抑制を説明する図である。
図7】従来の内燃機関の点火装置における課題を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<基本構成>
本発明の実施の形態における内燃機関の点火装置100は、図1に示すように、主回路102、インダクタンス検出回路104、補助電流供給回路106及びエンジン制御装置108を含んで構成される。
【0015】
主回路102は、内燃機関に設けられた点火プラグに対して電気エネルギーを供給して、燃料を点火するために設けられる回路である。点火コイルA2は、1次コイルと、1次コイルよりも巻数が多い2次コイルとを電磁気的に結合させた構成とされる。1次コイルの一端はバッテリーA1と2次コイルの一端に接続され、他端はスイッチA3を介して接地される。二次コイルの他端は、点火プラグA4の中心電極に接続される。
【0016】
主回路102では、所望の点火開始時期に先んじて、スイッチA3をオンにし、バッテリーA1から点火コイルA2に電流を流して点火コイルA2に電気エネルギーを蓄積する。所望の点火開始時期に、スイッチA3をオフにして、点火コイルA2に蓄積していた電気エネルギーを点火プラグA4に向けて放出する。その結果、点火プラグA4の電極間に火花放電が形成される。スイッチA3の切り替えはエンジン制御装置108からの信号を受けて行われる。
【0017】
本実施の形態では、主回路102は、バッテリーA1と点火コイルA2とスイッチA3とからなる簡素な構成としている。主回路102は、特開2014−206068号公報や特開2007−211631で示される形態としてもよい。さらに、これらの事例に限らず、その機能を満たす構成であればよい。
【0018】
<インダクタンスの検出>
図2に示すように、抵抗R、インダクタンスLを持つ電気回路に角速度ωで交番する正弦電圧Eを印可すると、その回路に流れる電流Iは電圧Eに対して位相遅れθを生じる。位相遅れθはインダクタンスLの関数で、インダクタンスLが大きくなると位相遅れθも増大する。
【数1】
【0019】
インダクタンス検出回路104は、火花放電路に微弱な高周波信号である交番電圧信号Eを印可・重畳する高周波重畳回路を含む。インダクタンス検出回路104は、火花放電路に微弱な交番電圧信号Eを重畳印加し、その信号電流Iの位相遅れθから火花放電路のインダクタンスLを検出する。図3に示すように、火花放電路が円形状に近い場合にはインダクタンスLが大きく、偏平形状ではインダクタンスLは小さくなる。偏平形状の放電路では火花放電路の短絡が生じやすいため、インダクタンスLの大きさから放電路の短絡を予測することができる。
【0020】
インダクタンス検出回路104は、主回路102に付加される。インダクタンス検出回路104は、点火プラグA4の放電開始に同期して、角速度ωの正弦電圧信号B1を発生させる。図4に示すように、電圧信号B1はフィルタB2(バンドパスフィルタ又はハイパスフィルタ)を介して、火花放電路に電圧信号B1を印可・重畳させる。そして、インダクタンス検出回路104は、抵抗B3の端子電圧を測定することによって、その信号電流の位相遅れθを計測し、火花放電路の形状に応じて変化するインダクタンスLを検出する。
【0021】
なお、インダクタンス検出回路104によるインダクタンスLの検出は、容量放電期間tsを終えてから開始することが好適である。容量放電期間は、静電エネルギーの放出による火花放電が行われる期間であり、その持続時間は例えば放電開始時から0.02ms程度の期間である。容量放電期間では、火花放電路は伸張しないために、その期間のインダクタンスLは小さくなる。
【0022】
また、火花放電路の近接の判断において、正弦波電圧Eに代えて、パルス電圧を繰り返し印加して、電流Iの位相遅れを計測する構成としてもよい。また、正弦波電圧Eに代えて、時間経過に比例して増加又は減少する電圧を繰り返し印加して、電流Iの位相遅れを計測する構成としてもよい。
【0023】
さらに、正弦波電圧Eに代えて、ホワイトノイズに代表されるランダムな信号電圧Eを印加して、電流Iの位相遅れを計測する構成としてもよい。この場合、次式で表されるフーリエ変換を用いて位相差を算出することができる。
【数2】
ここで、Z(t)は時間領域のインピーダンスであり、時間領域における電圧履歴E(t)を時間領域における電流履歴I(t)で除したものである。これをフーリエ変換することにより、周波数領域におけるインピーダンスの絶対値Z(f)と周波数領域におけるインピーダンスの位相(2πft+θ)を算出することができる。これにより、信号電圧Eと電流Iとの位相差θを求めることができる。
【0024】
<点火電流の制御>
図5(a)に示すように、インダクタンス検出回路104において検出されたインダクタンスLが所定の閾値Llより下回った場合、火花放電路が近接していると予想できる。そこで、図5(b)に示すように、補助電流供給回路106は、火花放電路の近接が予想された場合に火花放電路に補助電流を供給する。その結果、図6に示すように、近接した放電路には両者が反発する方向にローレンツ力Fが作用して、火花放電路同士が反発して、その短絡を抑制する作用が生ずる。さらに、放電電流の増加により放電路の抵抗が低下することで、近接する放電路の両者の電位差が低下して、短絡が生じ難くなる。
【0025】
補助電流供給回路106は、火花放電路に補助電流を供給する回路である。補助電流供給回路106は、主回路102に付加され、火花放電路に補助電流を供給する。
【0026】
補助電流供給回路106は、バッテリーA1の電圧を昇圧してエネルギー投入用コンデンサC1に蓄えさせる昇圧回路と、エネルギー投入用コンデンサC1に蓄えられた電気エネルギーを主回路102の点火コイルA2の1次コイルの中間タップに投入する投入エネルギー制御手段とを備える。昇圧回路は、一端がバッテリーA1に接続されたチョークコイルC2と、チョークコイルC2の通電状態を断続させる昇圧用スイッチング素子C3と、昇圧用スイッチング素子C3のオン/オフ動作によりチョークコイルC2に蓄えられた電気エネルギーを充電するエネルギー投入用コンデンサC1と、エネルギー投入用コンデンサC1に蓄えられた電気エネルギーがチョークコイルC2に逆流することを防ぐダイオードC4とを含む。補助電流供給回路106では、周期的に昇圧用スイッチング素子C3をオン/オフさせることで、エネルギー投入用コンデンサC1に電気エネルギーを蓄積させる。
【0027】
投入エネルギー制御手段は、エネルギー投入用コンデンサC1に蓄積された電気エネルギーを主回路102の点火コイルA2の1次コイルに投入するためのエネルギー投入用スイッチング素子C5と、投入エネルギーの逆流を防ぐためのダイオードC6を含む。
【0028】
補助電流供給回路106は、インダクタンス検出回路104で検出されたインダクタンスLが閾値Llより下回った時期tlにエネルギー投入用スイッチング素子C5をオンすることで、主回路102に含まれる点火プラグA4に対して補助電流を供給する。その結果、火花放電路に補助電流が重畳され、互いに近接し合った放電路間に両者が反発する方向のローレンツ力Fが作用して、その短絡が抑制される。
【0029】
なお、補助電流供給回路106において、チョークコイルC2及びエネルギー投入用コンデンサC1を設けず、バッテリーA1の電流をエネルギー投入用スイッチング素子C5で直接制御する構成としてもよい。また、補助電流供給回路106のチョークコイルC2に代えて、点火コイルA2を併用するようにしてもよい。また、補助電流供給回路106の機能を点火コイルA2の2次側(高電圧側)に持たせてもよい。
【0030】
なお、補助電流供給回路106は、特開2007−211631に開示されている制御回路、またはその一部を利用してもよい。
【0031】
また、火花放電路の近接の判断において、インダクタンスLに代えて位相遅れθを補助電流供給開始の指標としてもよい。すなわち、位相遅れθが所定の閾値θ1より下回った場合、火花放電路が近接していると予想できる。そこで、補助電流供給回路106において、位相遅れθの値に基づいて火花放電路の近接が予想された場合に火花放電路に補助電流を供給するようにすればよい。
【0032】
また、点火電圧と点火電流から放電路の電気抵抗を算出することで、火花放電路の長さを推定することができる。そこで、火花放電路の近接の判断において、インダクタンスLに代えて火花放電路の単位長さ当たりのインダクタンスL’を補助電流供給開始の指標としてもよい。補助電流供給回路106において、火花放電路の単位長さ当たりのインダクタンスL’の値に基づいて火花放電路の近接が予想された場合に火花放電路に補助電流を供給するようにすればよい。
【0033】
また、火花放電路の長さの変化に伴って放電電圧が変化する。そこで、火花放電路の近接の判断において、インダクタンスLに代えて、放電電圧から放電路長さを推定し、それに基づいて得られた火花放電路の単位長さ当たりのインダクタンスL’’を補助電流供給開始の指標としてもよい。補助電流供給回路106において、火花放電路の単位長さ当たりのインダクタンスL’’の値に基づいて火花放電路の近接が予想された場合に火花放電路に補助電流を供給するようにすればよい。
【符号の説明】
【0034】
100 点火装置、102 主回路、104 インダクタンス検出回路、106 補助電流供給回路、108 エンジン制御装置、A1 バッテリー、A2 点火コイル、A3 スイッチ、A4 点火プラグ、B1 電圧信号、B2 フィルタ、B3 抵抗、C1 エネルギー投入用コンデンサ、C2 チョークコイル、C3 昇圧用スイッチング素子、C4 ダイオード、C5 エネルギー投入用スイッチング素子、C6 ダイオード。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7