特許第6860478号(P6860478)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6860478全体的に活性化された単球を得るための方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860478
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】全体的に活性化された単球を得るための方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/0786 20100101AFI20210405BHJP
   C12M 3/00 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   C12N5/0786ZNA
   !C12M3/00 Z
【請求項の数】7
【全頁数】67
(21)【出願番号】特願2017-520001(P2017-520001)
(86)(22)【出願日】2015年7月3日
(65)【公表番号】特表2017-525756(P2017-525756A)
(43)【公表日】2017年9月7日
(86)【国際出願番号】EP2015065199
(87)【国際公開番号】WO2016001405
(87)【国際公開日】20160107
【審査請求日】2017年3月16日
【審判番号】不服2019-3741(P2019-3741/J1)
【審判請求日】2019年3月20日
(31)【優先権主張番号】62/020,547
(32)【優先日】2014年7月3日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】1413665.9
(32)【優先日】2014年8月1日
(33)【優先権主張国】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】515181948
【氏名又は名称】トランシミューン アーゲー
(73)【特許権者】
【識別番号】515183023
【氏名又は名称】イェール ユニバーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100092783
【弁理士】
【氏名又は名称】小林 浩
(74)【代理人】
【識別番号】100120134
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 規雄
(74)【代理人】
【識別番号】100110663
【弁理士】
【氏名又は名称】杉山 共永
(74)【代理人】
【識別番号】100104282
【弁理士】
【氏名又は名称】鈴木 康仁
(72)【発明者】
【氏名】バウアー,ギュンター
(72)【発明者】
【氏名】ダックワース,ジャスティン
(72)【発明者】
【氏名】ティゲラー,ロバート
(72)【発明者】
【氏名】エデルソン,リチャード
(72)【発明者】
【氏名】ジラルディ,マイケル
(72)【発明者】
【氏名】ヘンコ,カーステン
(72)【発明者】
【氏名】ヘイデイ,エイドリアン
【合議体】
【審判長】 長井 啓子
【審判官】 千葉 直紀
【審判官】 小暮 道明
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2003/0219420号明細書
【文献】 米国特許出願公開第2005/0084966号明細書
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/00-7/08
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
JSTPlus/JST7580/JMEDPlus(JDreamIII)
DWPI(Derwent Innovation)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
全体的に活性化された単球を得るための方法であって、
単球を含む哺乳動物対象の血液試料を前記単球が全体的に活性化されるように物理的な力に供するステップを少なくとも含み、
前記全体的に活性化された単球が、(i)少なくともHLA−DR、PLAURおよびICAM−1の発現の増加と、(ii)GILZ発現の増加がないことと、(iii)前方散乱/側方散乱複雑度の増加と、によって特定され、
前記哺乳動物対象の血液試料が、前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される前記単球に剪断力が適用されるようにデバイスのフローチャンバーを通る前記哺乳動物対象の血液試料の流速の固定または調節可能な調整を可能にする前記デバイスの前記フローチャンバーに前記哺乳動物対象の血液試料を通すことによって物理的な力に供され、
血小板が、前記フローチャンバーに接着して活性化し、
前記単球が、活性化血小板との相互作用を通じて活性化され、全体的に活性化された単球に分化するように誘導され、ここで、前記血小板は、前記哺乳動物対象の血液試料内に含まれ得る、または少なくとも単球を含む前記哺乳動物対象の血液試料から分離されて提供され得るものであり、
前記方法は、光活性化可能作用因子およびUVAの非存在下で実施され、
ただし、ex vivoでアポトーシス性細胞とのインキュベーションを含まない、
前記方法。
【請求項2】
前記全体的に活性化された単球が追加的に少なくともABCA1、CCL2、CCL7、CD68、CRK、FAS、IL10、RAB7B、RALA、SCARF1、および/またはTHBS1の発現の増加によって特徴付けられる、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記全体的に活性化された単球が追加的に少なくともCXCL1、CXCL2、CXCL5、CXCL16、ITGA5、ITGAV、MMP9、MSR1、OLR1、PLAU、PLAUR、SIRPa、TIMP1および/またはTNFの発現の増加によって特徴付けられる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記全体的に活性化された単球が表6の少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個または25個のマーカーの発現の増加によって同定可能である、請求項1から3のいずれかに記載の方法。
【表2】
【請求項5】
前記活性化血小板が40:1から400:1の高さ幅比を有する前記フローチャンバーを通される、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項6】
前記活性化血小板が、前記フローチャンバーを0.1から20.0dyn/cmの剪断力下で通される、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【請求項7】
前記単球が、0.1から20.0dyn/cmの剪断力を産生するように前記フローチャンバーを10ml/分から200ml/分の流速で通される、請求項1からのいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体的に活性化された単球を産生するための方法およびその使用に関する。
【背景技術】
【0002】
樹状細胞(DC)は、ヒトにおいて細胞性免疫応答の開始および制御のため強力な抗原提示細胞であると認識されている。DCは、T細胞の応答性特異的クローンとの相互作用のときにそれらがその潜在的特性のどちらのセットを発現するかに依存して、免疫賦活性または免疫抑制性のいずれになる場合もあることから、T細胞媒介性免疫反応における非常に重要な中心的演者であると考えられている。広義だが広く支持された一般論として、未成熟DCはそれらのより成熟した対応物よりも「免疫寛容原性」であり、一方成熟DCはそれらの未成熟前駆体よりも「免疫原性」であると考えられている。単球からex vivoで生成され、特定の抗原を有し、いずれの免疫学的方向においても有効に機能するDCの能力は、患者に戻された後のそれらの生存率および活力に依存する。対抗的な免疫賦活と免疫抑制DCとの間の均衡が、DC依存性治療用免疫応答の方向および強度の両方の主な決定要因であることが論理的に結論される。
【0003】
トランス免疫化と呼ばれるプロセスによる樹状細胞を含む免疫賦活または免疫抑制抗原提示細胞の産生は、それぞれPCT/EP2014/050010およびPCT/EP2014/050012に記載されている。それらに記載されている方法は、体外循環式光化学療法(extracorporeal photopheresis)(ECP)の特定の機序的態様を解析することに基づいている。
【0004】
体外循環式光化学療法(ECP)は、患者のサブセットにおいて皮膚T細胞リンパ腫(CTCL)を処置するために良好に使用されている。ECPではCTCLに罹患している患者は、光活性化可能化合物8−メトキシソラレン(8−MOP)を受ける。次いで患者は、バフィーコートを得るために白血球アフェレーシスされ、これらのバフィーコートは白血球アフェレーシスされたバフィーコートを照射するために連続的閉鎖環式紫外線曝露デバイスに通され、それにより曝露されたリンパ球に致死性の障害を与える。このやり方では8−MOPは、DNAの塩基対を共有結合的に架橋するように誘導される。ECPの構想は、CTCLの増殖性転移性T細胞を破壊し、次いで死にかけた細胞を患者に静脈内で再導入することである。このプロセスが、外来性サイトカインの追加による刺激を必要とすることなく、通過された血液単球のDCへの変換を追加的に生じることが知られている。これらのECP誘導DCは、8−MOPとUV照射との組合せによって破壊された腫瘍細胞から抗原をさらに内部移行、処理および提示すると想定されている。これらのロードされた樹状細胞の患者への再導入が、CTLCを処置するときのECPの成功の少なくとも部分的な要因となっていることが仮定されている。
【0005】
しかし、ECPまたはECP様プロセスが切断型、すなわち免疫抑制または免疫寛容原DCをもたらし、骨髄幹同種移植後に一般に続く移植片対宿主病の処置においてECPの臨床的有効性に大きく貢献すると考えられることが見出されている。単球の免疫賦活または免疫抑制DCへの分化でのECPの正確な機序的態様は、理解しにくいままである(ECPプロセスの概説についてGirardi et al. (2002), Transfusion and Apheresis Science, 26, 181-190を参照されたい)。
【0006】
したがってECPおよびECP様プロセスは、免疫賦活および免疫抑制DCの複合体混合物をもたらすと考えられる。当然のことながら、とりわけ臨床的展望から、ECPおよびECP様プロセスがこれらの制限を克服するためにどのように改変でき、どのように合目的的および選択的優先的に免疫抑制DCよりも免疫賦活DCを得ることができるか、逆も同様、を理解することは重要である。さらに古典的ECPプロセスは、得られた樹状細胞混合物が患者に再注入されることから原理的にin vivo法である。しかし、ヒトまたは動物の身体外で免疫抑制DCよりも免疫賦活DCの優先的産生を可能にする、逆も同様、方法を利用できるようにすることは望ましい。
【0007】
PCT/EP2014/050010およびPCT/EP2014/050012に記載されているトランス免疫化プロセスは、樹状細胞を含む免疫賦活または免疫抑制抗原提示細胞の優先的産生を可能にする。単球は、力学的ストレスなどの物理的な力および血小板などの血漿構成成分との潜在的な相互作用を通じて活性化される。これらの活性化単球は、樹状細胞などの抗原提示細胞に発達でき、例えばアポトーシス性疾患抗原排出細胞との同時インキュベーションによって支持され得る。活性化プロセスは、例えばHLA−DR/CD83の共発現によってモニターされ得る。しかしこれらの活性化単球の分化は、例えば8−メトキシソラレン(8−MOP)およびUV−Aを適用することによって樹状細胞などの免疫抑制抗原提示細胞に向けても導かれ得る。樹状細胞などの免疫抑制抗原提示細胞への分化は、GILZの発現の増加によってモニターされ得る。
【0008】
PCT/EP2014/050010およびPCT/EP2014/050012に記載の樹状細胞などの免疫賦活または免疫抑制抗原提示細胞は、ある種の利益を提供する。それらは、他の因子によるごくわずかな影響を有して比較的多量に産生でき、患者特異的である。一般的方法以外に、そのような免疫賦活樹状細胞の生成は複雑でかなり高価なサイトカインカクテルを必要としない。これらの標準的方法ではサイトカインは、生理的条件下のin vivoで遭遇するよりも非常に高い濃度(しばしば桁で異なる)で用いられる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、PCT/EP2014/050010およびPCT/EP2014/050012に記載のトランス免疫化プロセスが全体的に活性化された単球(GAM)を得ることを可能にし、これらのGAMが樹状細胞などの免疫賦活または免疫抑制抗原提示細胞を得るために使用され得るだけでなく、それらの貪食(phagocytizing)特性の観点から、例えば治療的に活性な抗体で例えば処置される腫瘍の直接腫瘍死滅のため、創傷治癒のため、および/または再生医学の目的のためにも使用され得ることを理解した。
【0010】
本発明の1つの目的は、全体的に活性化された単球を産生するための方法を提供することである。
【0011】
本発明の別の目的は、抗腫瘍治療、創傷治癒および再生医学のためのそのような全体的に活性化された単球の使用である。
【0012】
これらおよび他の目的は、それらが以下の記載から明らかになることから、独立請求項の主題によって解決される。本発明のいくつかの好ましい実施形態は、独立請求項の主題を形成する。本発明のさらに他の実施形態は、以下の記載から理解され得る。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は、PCT/EP2014/050010およびPCT/EP2014/050012に記載のトランス免疫化プロセスが全体的に活性化された単球(GAM)を得ることを可能にするという理解にある程度基づいている。さらにそのようなGAMは、貪食活性を有する場合があり、それによりがんの処置、創傷治癒および/または再生医学のために使用され得る。それらは、樹状細胞などの免疫賦活または免疫抑制抗原提示細胞への分化のためにも使用され得る。これらの態様は、図24に模式的に要約されている。
【0014】
治療用抗体媒介治療がマクロファージによる抗体標識化腫瘍細胞の貪食を含む場合があると示されたことから、GAMは例えばそれらの貪食活性の方法によって腫瘍細胞を死滅するために使用できると想定される(例えばTseng et al., PNAS, 110 (27), 11103-11108 (2013)またはGul et al., The Journal of Clinical Investigation, 124(2), 812-823 (2014)を参照されたい)。
【0015】
同様に貪食マクロファージは、創傷治癒プロセスに関与している(例えばWillenborg et al. Blood, 120 (3), 613-625, 2012を参照されたい)。さらに創傷の発生および創傷治癒プロセスの開始は、GAMを得るための本明細書に記載の方法に多少類似している(図25も参照されたい)。それにより本明細書に記載の方法において単球は、例えば力学的ストレスによって活性化される。
【0016】
単球由来細胞の構想およびそれらの使用は、例えばHume et al., J Leukoc Biol.; 92:433 (2012)においてさらに考察されている。
【0017】
本発明は、(i)古典的ECP手順のいくつかの態様を模倣すること、(ii)体外の量の血液における単球の免疫賦活自己樹状細胞への分化の誘導の細胞性、分子性機序および生物物理学的条件を解明することを可能にする小型化され拡張可能なデバイスについて以下に示されるデータにある程度基づいている。このデータは、血小板の活性化および剪断力の条件下でのそのような活性化血小板への単球の結合が免疫賦活自己樹状細胞を得るために有益であることを示している。以下に記載の実験によって示されるとおり、これらの免疫賦活自己樹状細胞は、免疫賦活自己樹状細胞の指標となる分子マーカーの発現によって特徴付けることができる。データは、グルココルチコイド誘導ロイシンジッパー(GILZ)の発現の増加を導く条件が単球の免疫抑制自己樹状細胞への分化を有利に可能にすることも示している。データは、免疫賦活樹状細胞を得るプロセスが、全体的な単球活性化ステップ、およびそれに続く単球から免疫賦活抗原提示細胞(例えば樹状細胞)への分化ステップを含むと考えられることをさらに示唆している。これらのステップは、例えば本明細書に記載のデバイスを通して最初に活性化された単球の通過は活性化および分化を改善できる場合があるが、例えば活性化に十分な単球の初期精製または濃縮の際に生じる物理的な力での単球の物理的活性化に最初に依存すると考えられる。さらに、活性化および分化が(ECPプロセスにおいて使用される、およびされた)光活性化可能作用因子およびUV−Aの非存在下で行われる場合、免疫抑制樹状細胞の形成は、GILZの発現が低減されると好都合に低減されると考えられる。本データは、免疫賦活樹状細胞を同定するために使用できる分子マーカーの性質をさらに明らかにする。
【0018】
このデータに基づく実施形態のいくつかは、以下により詳細に記載される。
【0019】
第1の態様では、本発明は、全体的に活性化された単球を得るための方法であって、
a)単球を含む体外量の哺乳動物対象の血液試料を前記単球が全体的に活性化されるように物理的な力に供するステップ
を少なくとも含み、
前記全体的に活性化された単球が少なくともHLA−DR、PLAURおよびICAM−1の発現の増加によって特徴付けられる方法に関する。
【0020】
一般に、好適な分子マーカーは、以下に記載され、例えば表6から選ばれてよい。HLA−DR、PLAURおよびICAM−1などのマーカーは、全体的な単球活性化の指標であると考えられる。全体的に活性化された単球は、追加的に少なくともABCA1、CCL2、CCL7、CD68、CRK、FAS、IL10、RAB7B、RALA、SCARF1、および/またはTHBS1の発現の増加によって好ましくは特徴付けることができる。さらにそのような全体的に活性化された単球は、追加的に少なくともCXCL1、CXCL2、CXCL5、CXCL16、ITGA5、ITGAV、MMP9、MSR1、OLR1、PLAU、PLAUR、SIRPa、TIMP1、および/またはTNFの発現の増加によって特徴付けることができる。それにより全体的に活性化された単球は、表6の少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個または25個のマーカーの発現の増加によって同定可能である場合もある。一般に、全体的に活性化された単球は、GILZの発現の増加を示さない。発現の増加は、力学的ストレスなどの物理的な力に細胞を供する前後でのこれらのマーカーの発現の比較を指す。
【0021】
この第1の態様の一実施形態では、単球の全体的な活性化は、とりわけ、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料が、前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される前記単球に剪断力が適用されるようにデバイスのフローチャンバーを通る前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料の流速の調整を可能にする前記デバイスの前記フローチャンバーに前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を通すまたは循環させることによって物理的な力に供されることにおいて達成される。
【0022】
したがって、単球の全体的な活性化および全体的に活性化された単球の誘導は、そのようなデバイスのフローチャンバーを通る体外量の哺乳動物対象の血液試料の流力を変更すること、フローチャンバーの流路の形状を変更すること、フローチャンバーの寸法を変更すること、フローチャンバーの、したがって体外量の哺乳動物対象の血液試料の温度を変更すること、流路の生物物理学的および形状の表面特性を変化させること、フローチャンバー内の体外量の哺乳動物対象の血液試料の可視またはUV光への曝露を可能にすることなどによって達成され、影響を受け得る。
【0023】
以下に示すとおり、単球の全体的な活性化および例えばそれに続く免疫賦活自己樹状細胞への分化の誘導は、単球が以下に記載のデバイスによって提供され得る物理的な力を経験する状況での単球と活性化血小板および/または特異的血漿構成成分との相互作用に応じて最適化されてよい。
【0024】
この第1の態様の別の実施形態では、したがって本発明は、物理的な力を経験し、活性化血小板および/または、フィブリノーゲンもしくはフィブロネクチンなどの血漿構成成分と相互作用する単球の全体的な活性化に関する。活性化は次のステップ(i)単離された構成成分としてまたは体外量の哺乳動物対象の血液試料の部分としてのいずれかでのフィブリノーゲンまたはフィブロネクチンなどの血漿構成成分を前記デバイスのフローチャンバーに固定するステップ(ii)体外量の哺乳動物対象の血液試料から精製画分としてまたは体外量の哺乳動物対象の血液試料の部分として得ることができる血小板を、血小板が血漿構成成分と相互作用でき、それによって活性化されるようにフローチャンバーを通すステップ、ならびに(iii)体外量の哺乳動物対象の血液試料から精製画分としてまたは体外量の哺乳動物対象の血液試料の部分として得ることができる単球を、単球が活性化血小板および/または血漿構成成分と相互作用でき、それによって活性化されるようにフローチャンバーを通すステップ、を含むプロセスであってよい。
【0025】
したがって、構造およびデバイスが操作される条件に関連する上に記載のパラメーターおよび変更に加えておよび/または代替的に、単球の全体的な活性化および例えばそれに続く免疫賦活自己樹状細胞への分化の誘導は、血漿構成成分の性質、純度および濃度、血小板の性質、純度および濃度、血漿構成成分および/または血小板がフローチャンバーに通されるおよび/または配置されるステップの順序、フローチャンバーが血漿構成成分および/または血小板でコートされる密度、体外量の哺乳動物対象の血液試料、具体的には血小板および/または単球がそのようなデバイスのフローチャンバーを通る流力、体外量の哺乳動物対象の血液試料、具体的には血小板および/または単球がそのようなデバイスのフローチャンバーを通る温度および/または時間など、体外量の哺乳動物対象の血液試料に、具体的には単球に添加される8−MOPおよび/またはサイトカインなどの追加的因子の性質、純度および濃度を、変更することによって達成され、影響を受け得る。
【0026】
しかし、そのようなデバイスが全体的な単球活性化を誘導することにおいて特に有効である場合がある一方で、単球が最初の精製または、以下に記載のFicoll−Hypaque濃縮などの濃縮の際に経験する物理的な力が単球を活性化し、全体的に活性化された単球へのそれらの分化およびそれに続く樹状細胞などの免疫賦活抗原提示細胞への誘導を誘導するために既に十分である場合があることは理解される必要がある。同様に活性化血小板および/または特異的血漿構成成分は、全体的な単球活性化および樹状細胞などの免疫賦活抗原提示細胞への分化を増加させることにおいて役立つ場合があるが、それらは絶対に必要でなくてもよい。全体的な単球活性化に影響を与えるために、したがって本発明は最少必要要件としての物理的な力の適用を企図する。可能な限り影響を受けずにこのプロセスを進行させるために、本発明は、好ましい実施形態として、単球の例えば免疫賦活自己樹状細胞への成熟および分化を達成するために、ならびに例えば、光活性化可能作用因子およびUV−Aの同時適用などのGILZの発現の増加を導く条件を回避するために分子カクテルを適用しないことを常に考慮する。
【0027】
全体的に活性化された単球は、上のマーカーによって同定されてよく、樹状細胞などの免疫賦活抗原提示細胞から分化され得る。全体的に活性化された単球由来の免疫賦活樹状細胞についてのマーカーはPLAUR、NEU1、CD80、CCR7、LOX1、CD83、ADAMデシシン(Decysin)、FPRL2、GPNMB、ICAM−1、HLA−DRおよび/またはCD86を含む。
【0028】
これらの実施形態に追加的または代替的に、本発明は、GILZの発現の増加ならびに/またはCD4CD25Foxp3細胞の数の増加ならびに/またはCD80、CD86およびCD83の下方制御を回避する条件下で実施されるそのような方法にも関する。したがって本発明は、例えば、8−MOPなどの光活性化可能作用因子の非存在下で、UV−Aなどの光への曝露を伴わずに実施される方法に関する。
【0029】
別の実施形態は、がんを処置する際の使用のための本明細書に記載の全体的に活性化された単球に関する。がんの処置は、全体的に活性化された単球による腫瘍細胞の貪食によって好ましくは起きる。このプロセスは、抗体によって認識されるがん細胞が全体的に活性化された単球によって貪食され得ることから、治療的に活性な抗体で処置されるがんに罹患している個体の処置によって開始され得る。がんの処置は、化学療法および/またはガンマ照射療法などの放射線療法を受けている患者について好ましくは検討され得る。本明細書に示すデータの観点において(具体的には実験9を参照されたい)、本明細書に記載の全体的に活性化された単球が、化学療法、放射線療法またはこれらの組合せの結果としてそのような患者において放出された腫瘍関連抗原を取り込むことができ、それにより腫瘍関連抗原を示す樹状細胞などの不変の(immutable)賦活抗原提示細胞にさらに発達し、それにより抗腫瘍応答を媒介すると想定することは合理的であると考えられる。そのような患者では、全体的に活性化された単球は、患者が治療的に活性な抗体での治療を受けていない場合でも抗腫瘍活性を提供できる。実際に、本明細書に記載され、本明細書に記載の方法によって得ることができる全体的に活性化された単球は、他の疾患に罹患している患者を処置する際の使用について、患者が疾患関連抗原の放出を媒介する治療を受けている場合に検討される。
【0030】
したがって本発明は、抗体治療を受けている個体におけるがんを処置する際の使用のための本明細書に記載の全体的に活性化された単球にも関する。したがって全体的に活性化された単球は、非抗原特異的なやり方でがんを処置するために使用され得る。
【0031】
本発明は、創傷治癒における使用のための本明細書に記載の全体的に活性化された単球にも関する。そのような創傷は、慢性創傷、糖尿病性創傷、静脈うっ血を含む血管不全(vascular compromised)創傷、手術後創傷などである。
【0032】
本発明は、変性関節疾患または変性神経および脳疾患(例えばアルツハイマー病)、発毛/再発毛(例えば男性型脱毛症)におけるものなどの組織修復(創傷治癒を超える)の刺激などの再生医学における使用のための本明細書に記載の全体的に活性化された単球にも関する。
【0033】
一般に、本発明は、貪食細胞における使用のための本明細書に記載の全体的に活性化された単球にも関する。そのような貪食された細胞は、抗体コート腫瘍細胞、アポトーシス性腫瘍細胞を含むアポトーシス性細胞などを含む抗体コート細胞を含んでよい。貪食活性を有する細胞の形成は、ECPプロセスを受けた試料について観察されている。この観察は、本発明の方法がFSC/SSC複雑度の増加によって検出される全体的に活性化された単球を得ることを可能にするという発見と共に、全体的に活性化された単球も貪食活性を有することを示唆している。この貪食活性は、アポトーシス性または壊死性細胞によって発せられる情報を認識すること、例えば創傷治癒および/または再生医学の内容では、そのような破壊的な情報を止めること、損傷を除去することおよび再生を刺激することに関与する可能性がある。
【0034】
それらの貪食活性の観点から、全体的に活性化された単球は、炎症性疾患を処置するためにも使用され得る。
【0035】
全体的に活性化された単球は、細胞を身体に再注入することによって全身に、または例えば創傷または炎症が生じたところに局所送達によって投与されてよい。
【0036】
本発明が、専門用語「がんを処置する際の使用のための本明細書に記載の全体的に活性化された単球」または「創傷治癒における使用のための本明細書に記載の全体的に活性化された単球」などの「…を処置する際の使用のための本明細書に記載の全体的に活性化された単球」または「…における使用のための本明細書に記載の全体的に活性化された単球」を使用する場合は、これが全体的に活性化された単球を投与することによって対応する「処置の方法」または「使用の方法」、例えば「がんを処置する方法」または「創傷治癒の方法」を開示することを意味することは理解される必要がある。同様に、この表現は「がんを処置するための薬物の製造のための全体的に活性化された単球の使用」または「創傷治癒薬物の製造のための全体的に活性化された単球の使用」などの「処置するための薬物の製造のための全体的に活性化された単球の使用」または「における使用のための薬物の製造のための全体的に活性化された単球の使用」を開示することを意図する。
【0037】
さらなる実施形態は、以下に記載される。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】単球血小板相互作用の数および続く単球表現型への血小板密度の効果を示すグラフである。単球は、低、中または高密度の血小板でコートされた平行プレートに通された。(A)単球−血小板相互作用の数は、高密度の血小板でコートされたプレートについて実質的に増加した。(B)一晩インキュベーション後、高レベルの血小板に曝露された単球は、膜CD83およびHLA−DRの発現によって評価されたとおり、DC分化に一致する表現型を有意に発達させやすかった(高密度対中または低密度:p<0.0001、中密度対低密度:p<0.005)。示されたデータは、少なくとも6回の独立した実験の平均(+/−SD)である。lpf、低倍率視野。
図2】血小板への曝露後の遺伝子発現を示すグラフである。単球は流れにおいて高または低レベルの血小板に曝露された。一晩インキュベーション後、細胞はRT−PCRを使用して遺伝子発現における差異について評価された。図2は、高レベルの血小板に曝露された単球における遺伝子発現変化を低レベルに曝露されたものと比較して示す。DC分化および/または機能に関連する7個の遺伝子が上方制御されたことが見出された一方で、3個は下方制御された。下方制御された遺伝子のGPNMBおよびFPRL2は、それぞれサイトカイン産生の減少およびDC成熟の阻害において公知の機能を有する。上方制御された遺伝子は、すべて免疫促進機能またはDC生物学の多岐にわたる役割のいずれかを有する。遺伝子の具体的な記載については本文を参照されたい。示されたデータは、2回の独立した実験の平均(+/−SD)である。
図3】静止条件での単球分化への血小板の影響を示すグラフである。単球は、低、中または高濃度の血小板と共に流れのない静止条件で18時間、共培養された。これらの条件下で、DC分化への血小板の影響は観察されず、すべての条件は、低い、ベースラインレベルのDCマーカー発現細胞を生じた。さらに、培養物中のトロンビンでの血小板の活性化(青線)は、血小板を含有し、トロンビンによって活性化されない培養物のもの(赤線)と比較して単球分化において識別可能な差異を生じなかった。
図4】プレートへの血小板接着での血漿タンパク質の影響を示すグラフである。血小板は、フィブリノーゲン、血漿、フィブロネクチンまたはRMPIでコートされたプレートをx軸によって示される剪断ストレスレベルで通された。流れの中の血小板は、フィブロネクチンに最適に接着した。すべてのタンパク質に関して、血小板接着は最大で0.5から1.0dyn/cm lpf、低倍率視野の間で生じた。示されたデータは、少なくとも2回の独立した実験の平均(+/−SD)である。
図5】フィブリノーゲン(A)またはフィブロネクチン(B)でコートされたプレートへの血小板接着についての血漿タンパク質の影響を示すグラフである。血小板は、未処置(ベースライン)、またはRGD断片(+RGD)もしくはガンマ断片(+ガンマ)のいずれかで事前処置のいずれかであり、それらの続くフィブリノーゲン(左パネル)およびフィブロネクチン(右パネル)への接着が評価された。フィブリノーゲンへの血小板結合は、ガンマ断片によって減少し(p<0.05)、一方フィブロネクチンへの結合はRGDペプチドによって減少した(p<0.001)。lpf、低倍率視野。示されたデータは、少なくとも2回の独立した実験の平均(+/−SD)である。
図6】単球血小板相互作用へのタンパク質の関与を示すグラフである。単球は、x軸によって示される条件下で、0.5dyn/cm2の壁剪断ストレスで血小板コートプレート間を通された:血小板は抗P−セレクチン(P−)またはアイソタイプ対照(P+)のいずれかで事前処置され、単球はRGDペプチド(RGD−)または対照断片(RGD+)のいずれかで事前処置された。単球血小板相互作用は、デジタル顕微鏡を使用して各セットの条件下で定量され、P+/RGD+の条件下で見られた最大値の割合として図に表されている。相互作用は、3秒未満持続したもの(短期間、黒バー)と安定結合を含んで3秒を超えて持続したもの(長期間、灰色バー)とに分割された。抗P−セレクチン(P−)でのブロッキングを含むすべての条件は、短期間および長期間の両方の相互作用における有意な減少を生じた(**、p<0.01)、RGD(RGD−)だけのブロッキングは長期間の相互作用における有意な減少を生じた(*、p<0.05)が、短期間の相互作用に変化を生じなかった。示されたデータは、3回の独立した実験の平均(+/−SD)である。
図7】単球インテグリンへのp−セレクチン曝露の効果を示すグラフである。プラスチックプレートは、x軸によって示される相対密度で血小板でコートされた。次いで血小板は、抗p−セレクチン(破線)もしくはアイソタイプ対照(灰色線)で事前処置された、または事前処置を受けなかった(黒線)。単球は、0.5dyn/cm2でプレートを通され、次いで活性β1インテグリンの発現についてフローサイトメトリーによってただちに評価された。y軸は、インテグリンが開いたコンフォメーションにある場合にだけ曝露されるエピトープに方向付けられた抗体に結合した単球の百分率を示している。示されたデータは、3回の独立した実験の平均(+/−SD)である。
図8】一晩インキュベーション後の単球表現型へのP−セレクチン曝露の効果を示すグラフである。血小板コートプレートは、未処置(第1のカラム)、またはアイソタイプ対照(第2のカラム)もしくは抗P−セレクチン(第3のカラム)で事前処置のいずれかであった。単球は、0.5dyn/cm2でプレートを通され、次いで一晩インキュベートされた。y軸は、DC分化と一致する表現型、すなわち、膜HLA−DR+/CD83+を生じた単球の百分率を示している。示されたデータは、3回の独立した実験の平均(+/−SD)である。
図9】DC分化への単球の誘導について提案された機序を示す図である。本原稿に表されたデータに基づいて、次の事象の配列が推論される:(1)血漿フィブリノーゲンがフローチャンバーのプラスチック表面をコートする、(2)それらのαIIbβ3受容体を通じて、活性化されていない血小板が固定化フィブリノーゲンのガンマ構成成分に結合する、(3)血小板が活性化され、瞬間的に予め形成されているP−セレクチンおよび他の表面タンパク質を発現する、(4)通過した単球は、PSGL−1を介して一過的にP−セレクチンに結合し、部分的な単球活性化およびインテグリン受容体コンフォメーション変化を生じる、(5)部分的に活性化された単球は、ここでさらに相互作用でき、RGDドメインを含有するものを含む追加的血小板発現リガンドに結合する、(6)最終的に、そのように影響を受けた単球は、18時間以内にDC成熟経路に効率的に入る。in−vivoで上記ステップ(1)は、局所内皮で作用する組織由来炎症性シグナルによって生理学的に置き換えられる場合があり、同様のやり方で血小板を動員および活性化するようにそれを生じることに注目されたい。
図10】GILZの発現が、単球が未成熟MoDCに分化すると急速に下方制御され、デキサメタゾンへの曝露後に上方制御されることを示す図である。A.)CD11c+MoDCでのGILZ mRNA発現は、新鮮に単離された単球と比較した倍数変化として表される。B.)0および36時間後の細胞内および細胞表面マーカーについての蛍光強度中央値。C.)24時間後のCD11c+MoDCでのGILZ mRNA発現はデキサメタゾンを受けていないMoDCと比較した倍数変化として表される。D.)CD11c+MoDCでのGILZ mRNA発現は0時間でのMoDCと比較した倍数変化として表される。E.)24時間後のCD11c+MoDCでのGILZ mRNA発現は未処置MoDCと比較した倍数変化として表される。F.)CD11c+MoDCでのGILZ mRNA発現は未処置MoDCと比較した倍数変化として表される。すべてのデータは、最少3回の独立した実験についての平均±標準偏差として表される。差次的遺伝子発現について:*≧2.5倍変化およびp<0.05、**≧2.5倍変化およびp<0.01、***≧2.5倍変化およびp<0.001
図11】8−MOPに加えてUVA光が、未成熟MoDCにおいてGILZを線量依存的様式で上方制御することを示す図である。A.)GILZ発現は、1J/cm2および2J/cm2のUVA光で8−MOP濃度の関数として表される。PUVA処置24時間後のCD11c+MoDCにおけるGILZ mRNA発現は、8−MOPを受けていないMoDCと比較した倍数変化として表される。B.)GILZ発現は、UVA線量を乗じた8−MOP濃度の関数として表される。C.)24時間後の初期アポトーシス性CD11c+細胞の百分率。D.)24時間後の後期アポトーシス性CD11c+細胞の百分率。E.)1J/cm2および2J/cm2のUVA線量でのCD11c+ゲート細胞のドットプロットは、4回の実験から代表的な1回について示されている。アネキシン−V+/7−AAD−またはアネキシン−V+/7−AAD+表現型を示しているCD11c+細胞の百分率が示されている。初期および後期アポトーシス性マーカーを発現しているF.)CD11c+細胞およびG.)CD3+細胞の百分率は、8−MOP(100ng/mL)およびUVA光(1J/cm2)での処置の24時間後に定量された。すべてのデータは、少なくとも4回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。差次的遺伝子発現について:*≧2.5倍変化およびp<0.05、**≧2.5倍変化およびp<0.01
図12】8−MOPに加えてUVA光が、未成熟MoDCにおいて線量依存的なやり方でCD83、CD80およびCD86を下方制御し、HLA−DRを上方制御することを示すグラフである。A.)HLA−DRおよびCD83、ならびにB.)CD80およびCD86の膜発現についての相対蛍光強度は、PUVA処置の24時間後にUVA線量(1または2J/cm2)を乗じた8−MOP濃度(0から200ng/mL)の関数として表される。未処置MoDCは、対照となり、RFI値1を与えられる。データは、4回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*p<0.05、**p<0.01
図13】アポトーシス性リンパ球に曝露された未成熟MoDCがGILZを上方制御することを示す図である。A.)共培養24時間後のCD11c+MoDCにおけるGILZ mRNA発現は、単独で培養された未処置MoDCと比較した倍数変化として表される。B.)共培養24時間後のCD11c+MoDCにおけるGILZ mRNA発現は、単独で培養された未処置MoDCと比較した倍数変化として表される。C.)共培養24時間後の細胞内GILZについての相対蛍光強度。D.)CD80およびCD86ならびにE.)HLA−DRおよびCD83についてのLPS刺激後から前の相対蛍光強度は、次のとおり算出された:(MFI処置LPS後−MFI処置LPS前)/(MFI未処置LPS後−MFI未処置LPS前)。データは、少なくとも4回の独立した実験についての平均±標準偏差を表す。差次的遺伝子発現について:*≧2.5倍変化、p<0.05
図14】GILZを発現しているMoDCがIL−10の産生を増加させ、種々の炎症促進性サイトカインおよびケモカインの産生を減少させることを示す図である。LPS刺激24時間後に、培養上清はA.)IL−10および炎症促進性サイトカインB.)IL−12p70およびIFN−γ、C.)IL−6およびTNF−αについての磁気ビーズ多重免疫アッセイによるサイトカイン定量のために採取された。同じ分析が炎症促進性ケモカインD.)IL−8ならびにE.)MCP−1、MIP−1βおよびRANTESについて実施された。データは、3回の独立した実験についての平均±標準偏差として表される。*p<0.05未処置MoDC群と比較。
図15】GILZのsiRNA媒介性ノックダウンは、免疫寛容原性DCに特徴的なIL−10対IL−12p70比の増加を消滅させることを示す図である。A.)GILZ mRNA発現は、単独で培養された未処置MoDCと比べた倍数変化として表される。*≧2.5倍数変化およびp<0.05。B.)LPS刺激後の培養上清におけるIL−10およびIL−12p70タンパク質レベルの定量。データは、3回の独立した実験の平均±標準偏差を表す。*p<0.05、siRNAで形質移入されていない、同一に処置されたMoDCと比較。
図16】UVAおよび8−MOPの存在下での古典的ECPプロセスにおける単球の流れを示す図である。中央の単球は、チャネルの表面に向いた単球よりも低いUVA曝露を経験する。
図17】古典的ECPプロセスにおいて使用されるデバイスのチャネルの設計を示す図である。
図18-1】a)からd)は、本発明の方法のために使用できるデバイスのフローチャンバーのさまざまな形状を示す図である。
図18-2】a)からd)は、本発明の方法のために使用できるデバイスのフローチャンバーのさまざまな形状を示す図である。
図19】A)実施例のいくつかにおいて使用されるデバイスの形状を示す図である。B)代替的デバイスの形状を示す図である。
図20図19のデバイスを通じた単球の物理的活性化でのHLA−DRの発現の増加を示すグラフである。
図21図19のデバイスを通じた単球の物理的活性化でのFSC/SSC複雑度(complexity)の増加を示す図である。
図22図19のデバイスを通すことによる単球の物理的活性化でのFSC/SSC複雑度の増加を示すグラフである。
図23図19のデバイスを通じた単球の物理的活性化でのHLA−DR、CD86、ICAM−1、PLAURの発現およびまたはFSC/SSC複雑度の増加を示す図である。
図24】例えば全体的に活性化されたマクロファージの連続体を示す、M1、M2、M3での単球の潜在的全体的な活性化を模式的に示す図である。
図25】創傷治癒の模式的態様を示す図である。
図26】A)実験7、8および9において使用されたフローチャンバーを示す図である。B)A)に示すフローチャンバーを組み立てる1つの選択肢を示す図である。
図27】個々のマウスについてのYUMM腫瘍の増殖阻害を示すグラフである。8−MOP/UVA処置Yumm1.7細胞は、PBMCまたはPBSと混合され、同じフローチャンバーを通され、8−MOP/UVAに供された。破線は、フローチャンバー通過PBMCで処置されなかった個々の対照群マウスの腫瘍サイズを示す。実線は、フローチャンバー通過PBMCで処置された個々の処置群マウスの腫瘍サイズを示す。腫瘍容積は細胞計数によって決定された。
図28】対照および処置群にわたって平均化された図27のYUMM腫瘍の複合増殖阻害を示すグラフである。破線は、マウスがフローチャンバー通過PBMCで処置されなかった対照群の腫瘍サイズを示す。実線は、マウスがフローチャンバー通過PBMCで処置された処置群の腫瘍サイズを示す。腫瘍容積は細胞計数によって決定された。
図29】実験7の数匹の処置マウスを示す図である。
図30】対照および処置群にわたって平均化されたYUMM腫瘍の複合増殖阻害を示すグラフである。8−MOP/UVA処置Yumm1.7細胞は、PBMCまたはPBSと混合され、同じフローチャンバーを通過したが8−MOP/UVAには供されなかった。破線は、フローチャンバー通過PBMCで処置されなかった個々の対照群マウスの腫瘍サイズを示す。実線は、フローチャンバー通過PBMCで処置された個々の処置群マウスの腫瘍サイズを示す。腫瘍容積は細胞計数によって決定された。
図31】対照および処置群にわたって平均化されたYUMM腫瘍の複合増殖阻害を示すグラフである。3個の処置群(各マウス5匹)は、8−MOP/UVA処置フローチャンバー通過Yumm1.7だけを受けた(YUMM単独)、フローチャンバーを通過したが8−MOP/UVAに供されなかったPBMCだけを受けた(PBMC、PP w/o YUMM)、フローチャンバーを通過したが8−MOP/UVAに供されなかったPBMCを受け、−MOP/UVA処置フローチャンバー通過Yumm1.7細胞(群4、O/N YUMMUVA PPnoUVA)またはPBSと一晩同時インキュベートされた。腫瘍容積は細胞計数によって決定された。
【発明を実施するための形態】
【0039】
本発明がそのいくつかの好ましい実施形態に関して詳細に記載される前に、次の全般的定義が示される。
【0040】
次に例示的に記載される本発明は、本明細書に具体的に開示されていない任意の1つまたは複数の要素、1つまたは複数の制限の非存在下で好適に実施できる。
【0041】
本発明は、具体的な実施形態に関しておよび特定の図を参照して記載されるが、本発明はそれらではなく特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0042】
本記載および特許請求の範囲において用語「含む(comprising)」が使用される場合、それは他の要素を排除しない。本発明の目的のために用語「からなる(consisting of)」は、用語「を構成する(comprising of)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下で、群が少なくとも一定数の実施形態を含むと定義される場合、これは、好ましくはこれらの実施形態だけからなる群を開示するとも理解される。
【0043】
本発明の目的のために用語「得られた(obtained)」は、用語「得ることができる(obtainable)」の好ましい実施形態であると考えられる。以下で例えば抗体が具体的な供給源から得ることができると定義される場合、これはこの供給源から得られる抗体を開示するとも理解される。
【0044】
不定または定冠詞が単数名詞、例えば「a」、「an」または「the」を参照して使用される場合、これは、他に具体的に述べられている場合を除いてその名詞の複数を含む。本発明の内容では、用語「約(about)」または「およそ(approximately)」は、当業者が問題となる特質の技術的効果をまだ確保すると理解する正確さの区間を記す。用語は、±20%、好ましくは±15%、より好ましくは±10%、さらにより好ましくは±5%の示された数値からの偏差を典型的には示す。
【0045】
さらに、記載および特許請求の範囲における用語「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」または「(i)」、「(ii)」、「(iii)」、「(iv)」などは、逐次的または時間的順序を記載する必要がない、類似の要素間を識別するために使用される。そのように使用される用語が適切な環境下で互換的であり、本明細書に記載の本発明の実施形態が本明細書に記載または例示される以外の配列において運用できることは理解される。
【0046】
用語「第1の(first)」、「第2の(second)」、「第3の(third)」または「(a)」、「(b)」、「(c)」、「(d)」または「(i)」、「(ii)」、「(iii)」、「(iv)」などが、方法または使用またはアッセイのステップに関する場合、他に示さない限りステップ間に時間または時間間隔の干渉性はない、すなわち本明細書上記または下記に明記された適用において他に示さない限り、ステップは同時に実行されてよいまたはそのようなステップ間に数秒、数分、数時間、数日、数週間、数カ月もしくは数年の時間間隔があってよい。
【0047】
技術的用語は、それらの一般的な意味で使用される。具体的な意味が特定の用語に移される(conveyed)場合、用語の定義は次の用語が使用される内容において示される。
【0048】
既に述べたとおり、本発明は、(i)古典的ECP手順のいくつかの態様を模倣すること、(ii)体外の量の血液における全体的な単球活性化および例えばそれに続くそのような全体的に活性化された単球の免疫賦活樹状細胞への分化の誘導の細胞性および分子性機序を解明することを可能にする小型化されたデバイスについて、以下に提示するデータにある程度基づいている。
【0049】
以下に提示するデータは、原理上は剪断ストレスが全体的な単球活性化およびそれに続くDCの誘導の原因であることを示唆している。例えば、以下に記載の小型化されたモデルデバイスを使用することにより、白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって得られたのではない実質的に少ない量の体外血液が使用される場合でも、8−MOPが体外の量の血液に加えられない場合でさえ、およびUV−Aでの照射が行われない場合でさえ、免疫賦活DCの誘導が生じることが示された。したがって、古典的ECP手順の中心的ステップの削除にもかかわらず全体的な単球活性化およびDCの誘導が生じた。しかし、剪断ストレスは、最初に単球を全体的に活性化するためおよびそれに続いて免疫賦活DCを得るための決定的な一要因であると考えられる。全体的な単球活性化および例えばそれに続くDC形成の誘導に肯定的な影響を有する他のステップは、血漿構成成分による血小板の活性化およびそのような活性化血小板による単球の活性化であると考えられる。データは、剪断ストレスが8−MOPおよびUVAでの照射の存在下で行われるDC形成の誘導を誘導する場合、グルココルチコイド誘導ロイシンジッパー(GILZ)の発現が増加し、次に切断型、すなわち免疫抑制免疫寛容原DCの形成を導く経路を活性化する(実施例2を参照されたい)ことをさらに示唆している。剪断ストレスが誘導した免疫賦活DCの誘導が、8−MOPの添加を伴わず、UV−Aでの照射も伴わずに剪断ストレスを適用することによって達成できたという事実は、古典的ECP手順では、プラスチックチャネルの寸法のために、最初に剪断ストレスに誘導されたDCの一部は、これらのDCが免疫賦活DCにさらに発達できた結果から効果的に照射されなかったことをさらに示唆している(図16を参照されたい)。この以前のデータは、図17の全体構造を有するデバイスを使用して得られた。しかし古典的ECPおよびECP様手順では、免疫賦活自己と免疫抑制自己樹状細胞との混合物が得られた。以下に示すデータに基づいて、例えば、先行技術のECPおよびECP様プロセスの必要要件のいくつか、例えば白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって処理される必要がある多量の血液を使用することは省略できる。さらに、免疫賦活自己または免疫抑制自己樹状細胞のいずれかを意図的に得るために、物理的な力を単球に発揮するために使用されるプロセスパラメーターおよびデバイスの設計を意図的に適合させることができる。
【0050】
さらに本明細書に提示するデータおよび結論は、免疫賦活樹状細胞を得るプロセスが全体的な単球活性化ステップおよび単球から免疫賦活抗原提示細胞(例えば樹状細胞)への分化ステップを含むと考えられることを示唆している。これらのさまざまなステップは、上に記載の分子マーカーによって、FACS分析によって決定可能である前方散乱/側方散乱複雑度(FSC/SSC複雑度)によっておよびECPを受けている細胞について観察された貪食活性によって追跡可能であると考えられる。分子マーカーは、それらの公知の機能、例えば抗原提示の分子マーカー、細胞接着の分子マーカーなどによりさらにグループ分けできる。HLA−DR、CD86およびCD80は、抗原提示を代表するものであると考えられる。PLAURおよびICAM−1は、細胞接着を代表するものであると考えられる。HLA−DR、PLAURおよびICAM−1などのマーカーならびにFSC/SSC複雑度は、全体的な単球活性化の指標であるとさらに考えることができる一方で、例えばCD83、ADAM−デシシン、CD40、CD80、LAMP−3およびCCR7の発現の増加は、単球から樹状細胞への分化の指標であると考えられる。
【0051】
以下に記載の方法は、全体的な単球活性化および例えばそれに続く免疫賦活自己樹状細胞などの抗原提示細胞への成熟および分化を達成するために分子カクテルの必要性なく実施できる。さらに、本発明が体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される全体的な活性化単球に基づくことから、活性化およびそれに続く分化プロセスは典型的サイトカインカクテルによって引き起こされる場合がある分子事象に限定されない。どちらかといえば、以下に記載の方法で得ることができる全体的に活性化された単球および樹状細胞は、これらの樹状細胞の広い機能性の代表であると考えられる同期化されたパターンだがさらに複雑な分子を有すると考えられる。
【0052】
第1の態様では、したがって本発明は、全体的に活性化された単球を得るための方法であって、
a)単球を含む体外量の哺乳動物対象の血液試料を前記単球が全体的に活性化されるように物理的な力に供するステップ
を少なくとも含み、
前記全体的に活性化された単球が少なくともHLA−DR、PLAURおよびICAM−1の発現の増加によって特徴付けられる方法に関する。
【0053】
一般に好適な分子マーカーは、以下に記載され、例えば表6から選ばれてよい。HLA−DR、PLAURおよびICAM−1などのマーカーは、全体的な単球活性化の指標であると考えられる。全体的に活性化された単球は、追加的に少なくともABCA1、CCL2、CCL7、CD68、CRK、FAS、IL10、RAB7B、RALA、SCARF1、および/またはTHBS1の発現の増加によって好ましくは特徴付けることができる。さらにそのような全体的に活性化された単球は、追加的に少なくともCXCL1、CXCL2、CXCL5、CXCL16、ITGA5、ITGAV、MMP9、MSR1、OLR1、PLAU、PLAUR、SIRPα、TIMP1および/またはTNFの発現の増加によって特徴付けることができる。全体的に活性化された単球は、したがって表6の少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個または25個のマーカーの発現の増加によっても同定可能である場合もある。全体的に活性化された単球は、GILZの発現の増加を示さない場合がある。発現の増加は、力学的ストレスなどの物理的な力に細胞を供する前後でのこれらのマーカーの発現の比較を指す。
【0054】
既に述べたとおり以下に記載の方法は、全体的な単球活性化後に免疫賦活および免疫抑制細胞の産生を可能にすると示されており、これは、それらの分子マーカーが樹状細胞と一般に称される細胞に対応しない場合でも関連すると考えられるためである。したがって本発明による免疫賦活細胞は、免疫賦活樹状細胞と名付けられている。しかし樹状細胞は抗原提示細胞と称することができる細胞の広範なクラスの代表である。したがって以下に記載の方法は、免疫賦活樹状細胞が好ましい免疫賦活抗原提示細胞の産生に一般に言及する。
【0055】
用語「免疫賦活自己樹状細胞」は、したがって、前記体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を本明細書に記載のとおり処置することによって単球に由来でき、次に記載の分子マーカーによって同定可能である細胞を指す。これらの分子マーカーはMHC IおよびMHC IIの方法によって抗原を提示できる樹状細胞に関する文献において考察されている。本明細書に記載の方法により得ることができ、本明細書に記載の分子マーカーによって同定可能である免疫賦活自己樹状細胞は、既に十分に分化し、内部移行されている樹状細胞であると考えられてよく、それぞれの体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有されている細胞傷害性T細胞などのアポトーシス性細胞由来の、例えば腫瘍特異的抗原、またはそれぞれの体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有されている例えばウイルス性もしくは細菌性抗原でさえそれらが免疫賦活抗原提示樹状細胞と見なされてよいように提示することは理解される。しかしプロセスは、樹状細胞が、まだ内部移行されず、抗原を提示していない免疫賦活樹状細胞の指標となる分子マーカーを発現するような方法で実施してもよい。一実施形態では用語「免疫賦活自己樹状細胞」は、免疫賦活自己抗原提示樹状細胞を包含する。樹状細胞などの免疫賦活抗原提示細胞が本明細書で述べられる場合、これは、これらの細胞がそのような抗原と接触した後に、例えば疾患特異的抗原をそれらの表面に提示する能力を有する樹状細胞などの免疫賦活抗原提示細胞を指すことは、理解される必要がある。
【0056】
実施例に記載のとおり、本明細書に記載の方法により得ることができる免疫賦活自己樹状細胞の指標である分子マーカーは、健常志願者のいずれかに由来する体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を小型化されたデバイスを使用するプロセスに供することによって同定された(表1のマーカー88から99を参照されたい)。さらに、実施例においても記載されるとおり、免疫賦活自己樹状細胞の指標である分子マーカーは、健常志願者またはCTCLもしくはGv疾患(GvHD)に罹患している患者のいずれかに由来する体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球をECPプロセスに供することによって同定された(表1のマーカー1から87を参照されたい)。次いで樹状細胞は、単離され、免疫賦活樹状細胞において役割を演じることが公知であるまたは疑われる分子マーカーの発現の上方制御が分析された。免疫賦活および免疫抑制樹状細胞の複合混合物を生じると想定されるECPプロセスに関して同定されたマーカーのいくつかは、免疫賦活樹状細胞だけを導くはずである、小型化されたデバイスでのプロセスによって得られた樹状細胞について観察されたものと同じである。したがって、ECPプロセスが樹状細胞機能と関連する場合がある分子マーカーの上方制御を導く範囲で、これらのマーカーが、免疫賦活樹状細胞を同定するためにも好適であると想定することは、それらが小型化されたデバイスなどの本明細書に記載のプロセスによって得ることができることから正当であると考えられる。全体で99個の分子マーカーは、本明細書に記載の方法により得ることができる免疫賦活自己樹状細胞について上方制御されるとして同定された。このセットは、比較分析を通じて将来的にはさらなる分子マーカーによって拡大される可能性がある。
【0057】
これにより実施例1および3のデータは、免疫賦活自己樹状細胞の指標であると考えられる99個のマーカーのセットをもたらす。これらのマーカーを表1に要約する。
【0058】
【表1-1】
【0059】
【表1-2】
【0060】
免疫賦活DC機能の表面マーカー/機能メディエーターを表す87個の遺伝子(表1のマーカー1から87)の内、66個は「古典的」樹状細胞についての発現データベースとの比較後にECP誘導プロセス(プレートを通過し、一晩培養された、実施例を参照されたい)樹状細胞において、独自に同定されたことが見出された。これらは、ABCA1、ACVR1B、ATP6V0B、BASP1、BEST1、CPM、CRK、CSF2RA、CTNND1、CTSB、CXCL16、ENG、FLOT1、GNA15、GPR137B、GPR157、HEXB、HOMER3、ICAM1、IRAK1、ITGA5、ITGB8、KCTD11、LAMP2、LEPROT、MARCKSL1、MCOLN1、MFAP3、MGAT4B、MR1、MRAS、MSR1、NEU1、OLR1、OMG、PI4K2A、PLAUR、PMP22、PVRL2、RAB13、RAB8B、RAB9A、RALA、RNASE1、SC5DL、SEMA6B、SIRPA、SLC1A4、SLC22A4、SLC31A1、SLC35E3、SLC39A6、SLC6A6、SLC6A8、STX3、STX6、TM9SF1、TMBIM1、TMEM33、TNFRSF10B、TNFRSF11A、TNFRSF1A、TNFRSF1B、TNFSF14、TNFSF9、YKT6である。
【0061】
免疫賦活自己樹状細胞は、したがって本明細書に記載の方法によって得ることができる免疫賦活自己樹状細胞に対する少なくとも1つの分子マーカーの発現を決定すること、および体外量の哺乳動物対象の血液試料内に含有される単球についてその発現を比較することによって同定可能である。免疫賦活自己樹状細胞対単球について発現の増加が観察される場合、これは単球の免疫賦活自己樹状細胞への分化の指標である。
【0062】
好ましくは、免疫賦活自己樹状細胞は、表1から選択可能である少なくとも2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個、25個、30個、35個、40個、45個、50個以上の分子マーカーについての発現を決定することによって同定可能である。例えば、PLAUR、NEU1、CTSB、CXCL16、ICAM1、MSR1、OLR1、SIRPa、TNFRSF1A、TNFSF14、TNFSF9、PMB22、CD40、LAMP3、CD80、CCR7、LOX1、CD83、ADAMデシシン、FPRL2、GPNMBおよび/またはCD86を含む群から選択可能な少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、11個、12個、13個、14個、15個、16個、17個、18個、19個、20個、21個または22個の分子マーカーについて発現を決定することによって免疫賦活自己樹状細胞を同定できる。より好ましくは、PLAUR、NEU1、CD80、CCR7、LOX1、CD83、ADAMデシシン、FPRL2、GPNMBおよび/またはCD86を含む群から選択可能な少なくとも1個、2個、3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個または10個の分子マーカーについての発現を決定することによって免疫賦活自己樹状細胞を同定できる。免疫賦活自己樹状細胞の指標であると考えられる最も好ましいマーカーは、PLAUR、NEU1、CD80、CD83および/またはCD86である。
【0063】
本明細書に提示するデータおよび結論は、免疫賦活樹状細胞を得るプロセスが全体的な単球活性化ステップおよび単球から免疫賦活抗原提示細胞(例えば樹状細胞)への分化ステップを含むと考えられることを示唆している。これらのさまざまなステップは、上に記載の分子マーカー、およびFACS分析によって決定可能である前方散乱/側方散乱複雑度(FSC/SSC複雑度)によって追跡可能であると考えられる。分子マーカーは、それらの公知の機能、例えば抗原提示の分子マーカー、細胞接着の分子マーカーなどによりさらにグループ分けできる。HLA−DR、CD86およびCD80は、抗原提示を代表するものであると考えられる。PLAURおよびICAM−1は、細胞接着を代表するものであると考えられる。HLA−DR、PLAURおよびICAM−1などのマーカーならびにFSC/SSC複雑度は、全体的な単球活性化の指標であるとさらに考えることができる一方で、例えばCD83、ADAM−デシシン、CD40、CD80、LAMP−3およびCCR7の発現の増加は、単球から樹状細胞への分化の指標であると考えられる。
【0064】
全体的に活性化された単球の同定のためおよび免疫賦活抗原提示細胞または免疫抑制抗原提示細胞に対する識別のために使用できるマーカーのセットは、下の表6に見出される。FSC/SSC複雑度の増加(実験5を参照されたい)によって全体的な単球活性化を同定した後、実験3および4の結果は、上方制御された遺伝子(>2倍の変化を有する466遺伝子、P<0.05)を貪食または創傷治癒と関連すると文献においてまたは商業的セットとして同定された遺伝子と比較することによって再評価された。これは、実験3および4において同定され、貪食または創傷治癒と関連した26遺伝子のセットをもたらした。GEO2Rソフトウェアは、すべてのPreECP試料対実験3および4におけるすべてのPostECP試料を比較するために使用された。GEO2Rは、Log2倍数変化および調整されたP<0.05値を報告する。
【0065】
【表2】
【0066】
本明細書に記載のとおり、方法がGILZ(配列番号100)、IDO(インドールアミン)(配列番号101)、KMO(キヌレニン3−ヒドロキシラーゼ)(配列番号102)、形質転換増殖因子−ベータ(TGFβ)(配列番号103)および/またはIL−10(インターロイキン10)(配列番号104)の発現の増加を可能にするように実施される場合、体外量の哺乳動物対象の血液試料内に含有される全体的に活性化された単球は免疫賦活自己樹状細胞へ分化せず、むしろ未成熟、いわゆる切断型または免疫抑制樹状細胞になる。したがって、全体的に活性化された単球および免疫賦活自己樹状細胞は、前述の分子マーカーの発現を決定することによってだけでなく、GILZ、IDO、KMO、TGFβおよび/またはIL−10の発現が免疫賦活自己樹状細胞対単球について増加していないことを決定することによっても同定可能である。GILZ、IDO、KMO、TGFβおよび/またはIL−10発現の増加が決定された場合、これは免疫抑制樹状細胞が少なくとも一部は形成されたことの指標であると考えられる。免疫抑制樹状細胞についての指標であると考えられる好ましい分子マーカーは、現在のところGILZである。
【0067】
上に述べたとおり以下に記載の方法は、全体的単球活性化ならびにそれに続く単球の免疫賦活自己樹状細胞への成熟および分化を達成するために分子カクテルの必要性なく実施できる。そのようなカクテルは、例えばIL−4、GM−CSF、LPS、IFN−γ、IL−1βおよびTNF−αなどの因子を含む場合がある。
【0068】
理解および対応するツール、例えば全体的に活性化された単球、免疫賦活自己抗原提示細胞と免疫抑制自己抗原提示細胞との間を識別するために手元にある分子マーカーをここに有することを考えると、体外量の哺乳動物対象の血液試料、したがって単球が物理的な力を経験するために通るデバイスおよびフローチャンバーの設計、ならびに全体的な単球活性化ならびにそれに続く単球の全体的に活性化された単球およびそれに続く免疫賦活自己樹状細胞への分化の誘導のプロセスが実施されるパラメーターを、意図的に変更することがいまやできる。
【0069】
上に述べたとおり、体外量の哺乳動物対象の血液試料はデバイスのフローチャンバーを前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される前記単球に剪断力が適用されるように通される。単球の全体的な活性化に影響を与える、デバイスおよびフローチャンバーの設計の修正は、流力の変更、フローチャンバーの流路の形状の変更、フローチャンバーの寸法の変更、温度調整の実現性、フローチャンバー中の体外量の哺乳動物対象の血液試料の可視またはUV光への曝露の実現性などを含む。物理的な力の適用は、例えば体外の量の血液試料をフローチャンバーに通すことによってだけでなく、体外の量の血液試料を例えばMacopharmaから得ることができるEVAプラスチックバッグに入れ、この血液試料を満たしたバッグを穏やかに動かすまたは振ることによっても達成できる(例えばAndreu et al., (1994), Trans. Sci., 15(4), 443-454を参照されたい)。
【0070】
上に述べ、以下で示すとおり単球の全体的な活性化およびそれに続く免疫賦活自己樹状細胞への分化の誘導は、単球が以下に記載のデバイスによって提供され得る物理的な力を経験する状況での単球と活性化血小板および/または特異的血漿構成成分との相互作用に依存している。したがってプロセスパラメーターの変更は、血漿構成成分の性質、純度および濃度、血小板の性質、純度および濃度、血漿構成成分および/または血小板がフローチャンバーに通されるおよび/または配置されるステップの順序、フローチャンバーが血漿構成成分および/または血小板でコートされる密度、体外量の哺乳動物対象の血液試料、具体的には血小板および/または単球がそのようなフローチャンバーのフローチャンバーを通る流力、体外量の哺乳動物対象の血液試料、具体的には血小板および/または単球がそのようなデバイスのフローチャンバーを通る温度および/または時間など、体外量の哺乳動物対象の血液試料に、具体的には単球に加えられる8−MOPおよび/またはサイトカインなどの追加的因子の性質、純度および濃度を、変更することを含む。
【0071】
デバイスおよびフローチャンバーの設計ならびにプロセスパラメーターに関連する因子は、単球の全体的な活性化およびそれに続く免疫賦活自己樹状細胞への分化に対するそれらの関連に関して、ここでより詳細に考察される。次に考察される任意の実施形態について、単球の全体的な活性化は達成され、全体的に活性化された単球は上に記載の分子マーカーの発現を決定すること、および/またはGILZの発現を決定することによって同定可能であることは理解される。さらに次に考察されるすべての実施形態について、体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球が全体的に活性化されるために剪断ストレスなどの物理的な力に供されることは理解される。
【0072】
第1の態様の一実施形態では、本発明は、体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を全体的に活性化する方法に関し、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料は、前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される前記単球に剪断力が適用されるように、前記デバイスの前記フローチャンバーを通る前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料の流速の調整を可能にする、デバイスのフローチャンバーに前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を通すことによって物理的な力に供される。
【0073】
第1の態様の別の実施形態では、本発明は、体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を全体的に活性化する方法に関し、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料は、前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される前記単球に剪断力が適用されるように、デバイスのフローチャンバーを通る前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料の流速の調整を可能にする、前記デバイスの前記フローチャンバーに前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を通すことによって物理的な力に供され、前記デバイスの前記フローチャンバーは前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される前記単球に剪断力が適用されるようにする設計を有する。
【0074】
第1の態様の別の実施形態では、本発明は、体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を全体的に活性化する方法に関し、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料は、前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される前記単球に剪断力が適用されるように、デバイスのフローチャンバーを通る前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料の流速の調整を可能にする、前記デバイスの前記フローチャンバーに前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を通すことによって物理的な力に供され、前記デバイスは温度および露光を含む群から選択される少なくとも1つのパラメーターの調整を追加的に可能にする。
【0075】
第1の態様の別の実施形態では、本発明は、体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を全体的に活性化する方法に関し、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料は、前述のデバイスのフローチャンバーに前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を通すことによって物理的な力に供され、前記単球は活性化血小板および/または血漿構成成分との相互作用を通じて全体的に活性化される。
【0076】
例えば、第1の態様の一実施形態では、本発明は、体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を全体的に活性化する方法に関し、前記方法は、
a)少なくとも単球を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料が通ることができるフローチャンバーを提供するように構成されているデバイスに適用するステップ、
b)前記体外量の前記哺乳動物対象の血液内に含まれ得る、または少なくとも単球を含む前記哺乳動物対象の血液試料から分離されて提供され得る血小板を活性化するステップ、
c)前記単球がステップb)において得られた前記活性化血小板に結合することによって全体的に活性化されるように前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される単球に物理的な力を適用することによって、少なくとも単球を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を前記デバイス中で処置するステップ
を少なくとも含む。
【0077】
第1の態様の別の実施形態では、本発明は、体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を全体的に活性化する方法に関し、前記方法は、
a)少なくとも単球を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料が通ることができるフローチャンバーを提供するように構成されているデバイスに適用するステップ、
b)前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料内に含まれ得る、または前記哺乳動物対象の血液試料から分離されて提供され得る血漿構成成分を通すステップ、
c)前記単球がステップb)において得られた前記血漿構成成分に結合することによって全体的に活性化されるように前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される単球に物理的な力を適用することによって、少なくとも単球を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を前記デバイス中で処置するステップ
を少なくとも含む。
【0078】
第1の態様のさらに別の実施形態では、本発明は、体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を全体的に活性化する方法に関し、前記方法は、
a)少なくとも単球を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料が通ることができるフローチャンバーを提供するように構成されているデバイスに適用するステップ、
b)前記体外量の前記哺乳動物対象の血液内に含まれ得る、または前記哺乳動物対象の血液試料から分離されて提供され得る血漿構成成分を通すステップ、
c)前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料内に含まれ得る、または少なくとも単球を含む前記哺乳動物対象の血液試料から分離されて提供され得る血小板を活性化するステップ、
d)前記単球がステップb)およびc)において得られた前記活性化血小板および/または血漿構成成分に結合することによって全体的に活性化されるように前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される単球に物理的な力を適用することによって、少なくとも単球を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液を前記デバイス中で処置するステップ
を少なくとも含む。
【0079】
第1の態様のさらに別の実施形態では、本発明は、体外量の哺乳動物対象の血液試料に含有される単球を全体的に活性化する方法に関し、前記方法は、
a)任意選択で、血小板に富む血漿を、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料が通ることができるフローチャンバーを提供するように構成されているデバイスを通すステップ、
b)少なくとも単球を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料が通ることができるフローチャンバーを提供するように構成されているデバイスに適用するステップ、
c)前記単球がステップa)の前記血小板に富む血漿に任意選択で結合することによって全体的に活性化されるように前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される単球に物理的な力を適用することによって、少なくとも単球を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液を前記デバイス中で処置するステップ
を少なくとも含む。
【0080】
血小板を活性化するステップならびに続く単球の活性化は(i)血漿タンパク質などの血漿構成成分はデバイスのフローチャンバーを通され、それによりこれらの構成成分はフローチャンバーの壁に接着する、(ii)血小板はフローチャンバーを通され、血漿構成成分への結合によって活性化される、および(iii)少なくとも単球を含む体外量の前記哺乳動物対象の血液などの単球含有画分は、フローチャンバーを通され、活性化血小板への結合によって活性化される、実施形態について次に考察される。しかし、これらの活性が、全血画分が下に記載のとおり体外の量の血液から得られた場合と同様に血漿画分または血漿タンパク質もしくはその断片、血小板画分および単球含有画分が、チャネルまたはチャネル様構造を同時に通る場合にも生じることは理解される。プロセスが、血漿構成成分だけをフローチャンバーの壁に接着させ、単球を血漿構成成分と相互作用させることによっても同じ有効性ではないが実施できることもさらに理解される。それでも次にこれらの態様は、好ましい実施形態、すなわちステップ(i)、(ii)および(iii)が実現される場合に関して次に考察される。
【0081】
第1のステップに関して、フィブリノーゲンもしくはフィブロネクチン、またはフィブリノーゲンのガンマ構成成分などのその断片などのタンパク質を含む血漿構成成分は、体外の量の血液試料から得られた画分としてまたは他の供給源から精製された形態、例えば組換え的に発現されたタンパク質の形態のいずれかで提供されてよい。フィブリノーゲンおよびフィブロネクチンなどの血漿タンパク質による血小板の活性化は十分であり、これらのタンパク質の組換え的に発現された形態が十分であると考えられるが、体外の量の血液試料から得られ、これらのタンパク質を含む血漿画分を使用することは、これらの血漿画分がさらに複雑な組成を有し、血小板の最適な活性化を提供するすべての血漿構成成分を含み得ることから、好ましい場合がある。
【0082】
血漿タンパク質画分、血漿タンパク質またはその断片は、チャネルまたはチャネル様構造の壁に接着させるためにプラスチックまたはガラスなどの非プラスチック材料で作ることができるフローチャンバーを通すことができる。血漿画分または血漿タンパク質が、例えば具体的な圧力などの具体的な物理的な力でフローチャンバーを通される必要性はない。しかしプロセスを能率化するために、血漿画分または血漿タンパク質をフローチャンバーに、下により詳細に記載される単球活性化のために必要とされる剪断ストレスと同一でなくとも同等である剪断ストレスで通すことが構想される。一般に、血漿画分または血漿タンパク質は、フィブロネクチンおよびフィブリノーゲンを含む血漿タンパク質でその表面をコートするために最初にフローチャンバーをポンプで通される。フローチャンバーを通る血漿タンパク質画分、血漿タンパク質またはその断片の流速は、プラスチック表面へのタンパク質接着の所望のレベルを得るために制御される。所望により流れは一定時間停止される場合があり、血漿構成成分はフローチャンバーの表面を「浸漬」する場合がある。フローチャンバーを通して血漿構成成分を進ませるポンプの速度および時間を制御することによって、コーティングの程度を制御できる。一手法では、血漿画分または血漿タンパク質は、フローチャンバー構造の表面に約1から60分の間、約1から約30分の間、約1から約20分の間または約1から約10分の間の時間曝露される。フローチャンバーの表面への血漿タンパク質接着を増強するために、流れは一時的に中止してよく(約60分間まで)、再開の前に、または手順のこの相の際に流速は充填速度(100ml/分まで)から5ml/分まで遅くしてよい。
【0083】
フローチャンバーの表面が、例えば精製された血漿タンパク質またはフィブリノーゲンのガンマ構成成分などのその断片でプレコートされているフローチャンバーを有するデバイスが使用される筋書きも構想できる。そのようなプレコートされたデバイスは、例えば1回限りの使用のために構成されている、フローチャンバーを備えるカートリッジを含む手持ち式のデバイスでプロセスが実施される場合に使用できる。フローチャンバーの表面が、例えば血小板に富む血漿でプレコートされているフローチャンバーを有するデバイスのために使用される筋書きも構想できる。
【0084】
血漿画分もしくは血漿タンパク質またはその断片がチャネルまたはチャネル様構造を通され、その表面が血漿タンパク質でコートされた後に、血小板画分は、例えばポンプによってチャネルまたはチャネル様構造に入れられて通される。チャネルまたはチャネル様構造内での血小板の流速および滞留時間は、チャネルまたはチャネル様構造の表面に既に接着しており、それにより活性化されている、血漿構成成分またはタンパク質もしくはその断片への血小板の結合を可能にするように選択される。
【0085】
本明細書に提示するデータは血漿構成成分による血小板の活性化が、不活性化血小板が最初にフィブロネクチンのガンマ構成成分に結合し、それにより活性化され、次いでフィブロネクチンまたはフィブリノーゲンなどの多くの血漿タンパク質において見出されるRGDモチーフ(アルギニン、グリシン、アスパラギン酸)に結合する場合がある逐次的プロセスであることを示唆している。精製されたおよび/または組換え的に発現された血漿タンパク質またはその断片が血小板の活性化のために使用される場合、それにより少なくともフィブリノーゲンのガンマ構成成分および任意選択で追加的にRGDペプチドを有するプレコートチャネルまたはチャネル様構造が構想できる。これらの血漿タンパク質断片およびペプチドは、血小板の効率的な活性化、および同時にチャネルまたはチャネル様構造の表面のコーティングプロセスの最適な制御を可能にできる。当然のことながらこれらすべての構成成分は、体外の量の血液から得られた血漿画分がコーティングおよび活性化のために使用される場合に、存在する。
【0086】
血小板の血漿構成成分への効率的な結合およびそれによる活性化のために、流速は血漿構成成分のコーティングステップと比較して上方にまたは下方に調整される場合がある、または流れは血漿構成成分に結合した所望のレベルの血小板を得るために一定時間停止されてよい。血漿活性化のための流速は、選択されたデバイスに依存して典型的には約5ml/分から約200ml/分、約10ml/分から約150ml/分、約10ml/分から約100ml/分または約5ml/分から約50ml/分の範囲であってよい。典型的には、約1から60分の間、約1から約30分の間、約1から約20分の間、または約1から約10分の間、血小板を血漿構成成分に結合できるようにすることが望ましい。
【0087】
剪断ストレスが血小板の活性化について、単球の全体的な活性化についてと同じ重要性であるとは考えないが、血小板画分を、約0.2から約0.4まで、約0.5まで、約0.6まで、約0.7まで、約0.8まで、約0.9まで、約1まで、約2まで、約3まで、約4まで、約5までまたは約6dyn/cmまでなどの約0.01から約100.0dynes/cm、約0.05から約50.0dynes/cm、約0.1から約20.0dyn/cm、約0.2から約15.0dyn/cm、約0.3から約10.0dyn/cmの剪断力下でフローチャンバーを通すことは好ましい場合がある。血小板含有画分の典型的流速は、それぞれのデバイスに依存して約5ml/分から約200ml/分、約10ml/分から約150ml/分、約10ml/分から約100ml/分または約5ml/分から約50ml/分の範囲である場合がある。流速は、フローチャンバーのサイズおよび形状にある程度依存し、下に述べる寸法のフローチャンバーが使用される場合に具体的に使用できる。一般に、前述の剪断ストレス値を達成するために流速を選択できる。
【0088】
したがって、約0.1から約10.0dyn/cmの剪断力を産生するために約10ml/分から約200ml/分の流速で、血小板含有画分をチャネルまたはチャネル様構造に通すことが企図される。
【0089】
血小板がチャネルまたはチャネル様構造を通され、チャネルまたはチャネル様構造の表面に配置されている血漿タンパク質またはその断片によって活性化された後に、単球含有画分、例えば前記体外量の哺乳動物対象の血液試料または体外の量の血液試料から得られた下に述べる白血球もしくはバフィーコート画分は、物理的な力を適用することによって、例えばポンプによってチャネルまたはチャネル様構造に入れられて通されることによって通される。血漿構成成分との相互作用を通じた血小板の活性化が血漿構成成分への血小板の接着を導くことは理解される。
【0090】
血小板および血漿構成成分を含む体外量の哺乳動物対象の血液試料がフローチャンバーを通される場合に上記と同じ事象が起きることも理解される。この場合血漿構成成分は、フローチャンバーの壁に接着し、次いで血小板を活性化する。しかしこの筋書きでは、プロセスは制御可能ではない場合があり、血小板および血漿構成成分を含む体外量の哺乳動物対象の血液試料のフローチャンバーでの滞留時間が増加することによりこのことが考慮される場合がある。
【0091】
活性化血小板の代わりに、単球を活性化するために十分である血小板由来の因子を使用できることはさらに注目される。これらの因子は、例えばフィブロネクチンを含み、P−セレクチン、インテグリンα5β1C型レクチン受容体、CD61、CD36、CD47ならびにCD55およびCD59などの補体阻害剤、またはTREM様転写物−1などの因子も含む場合がある。そのような血小板由来因子は、例えば精製された構成成分の混合物または、例えば体外量の哺乳動物対象の血液試料内に含有される血小板の溶解によって得られた構成成分の混合物としてのいずれかでフローチャンバーの表面に直接配置されてもよい。この場合、例えばフローチャンバーの表面を血漿構成成分でコーティングする必要性は、省くことができる。
【0092】
本明細書に示すデータは、血小板が一度活性化されると、P−セレクチンおよびRGD含有リガンドなどのタンパク質が活性化血小板によって発現され、次いで単球と相互作用し、免疫賦活樹状細胞へのそれらの分化を活性化することを示唆している。さらに、活性化血小板による単球活性化および樹状細胞誘導は、静止条件下では生じないことが見出された。むしろ単球は、物理的な力の適用下でチャネルまたはチャネル様構造を通される必要がある。活性化において血小板が、次いで単球を活性化するP−セレクチンなどの因子を発現するために約60から約120分間を必要とすることを考えると、単球の通過は血小板がこれらの因子を発現し始めるまで、例えば約60から約120分間、遅らせてもよい。単球、血小板および血漿構成成分を含む体外量の哺乳動物対象の血液試料がフローチャンバーを通される場合、この時間はより長い時間に調整してよい。
【0093】
単球と活性化血小板、血小板由来因子または血漿構成成分との相互作用が、同時の物理的な力の適用なしでは単球の全体的な活性化のために不十分であることは理解される。
【0094】
フローチャンバーを通して単球含有画分を動かすための物理的な力の適用は、好ましくは体外量の哺乳動物対象の血液試料などの単球含有画分が剪断ストレス下でフローチャンバーを通って動かされることを意味できる。典型的には、単球含有画分は、約0.2から約0.3まで、約0.4まで、約0.5まで、約0.6まで、約0.7まで、約0.8まで、約0.9まで、約1まで、約1.5までまたは約2dyn/cmまでなどの約0.01から約100.0dynes/cm、約0.05から約50.0dynes/cm、約0.1から約20.0dyn/cm、約0.2から約10.0dyn/cmの剪断力下でフローチャンバーを通してよい。流速は、フローチャンバーのサイズおよび形状にある程度依存し、下に述べる寸法のチャネルまたはチャネル様構造が使用される場合に具体的に使用できる。一般に、前述の剪断ストレス値を達成するために流速を選択できる。
【0095】
単球の活性化を可能にする好適な剪断力は、約50:1から約300:1または約50:1から約250:1などの約40:1から約400:1の前述の高さ幅比を有するフローチャンバーによって達成され得る。温度は、単球の全体的な活性化に影響を与える別の因子である。本発明による方法は、約18℃から約42℃の範囲、好ましくは約22℃から約41℃の範囲およびより好ましくは約37℃から約41℃の範囲で実施してよい。
【0096】
単球の全体的な活性化を調節するために変更してよい1つのパラメーターは、フローチャンバーが血漿構成成分およびしたがって血漿構成成分に結合する血小板でコートされる密度である。一般に、フローチャンバーの表面が血漿構成成分および血小板でより高密度にコートされればされるほど、単球活性化はより効率的になる。
【0097】
血小板が血漿構成成分への結合によって活性化されることは上に述べられている。本発明による用語「活性化血小板」は、フィブロネクチンおよび/またはフィブリノーゲンなどの血漿構成成分への血小板の結合の結果としてP−セレクチン、αIIb−β3インテグリンおよび/またはフィブロネクチン、フィブリノーゲンもしくはビトロネクチンなどのRGD含有タンパク質の発現の増加を示す血小板を指して使用される。発現は、RT−PCR、ウエスタンブロッティングまたはFACS分析などの従来の方法によって決定できる。本発明による用語「非活性化血小板」は、フィブロネクチンまたはフィブリノーゲンなどの血漿タンパク質へのその結合が、血小板をフィブリノーゲンのガンマ構成成分と事前インキュベートすることによって低減できない血小板を指して使用される。
【0098】
単球が、剪断ストレス条件下での活性化血小板への結合によって全体的に活性化され、免疫賦活自己樹状細胞への分化を始めることは上に述べられている。
【0099】
単球の活性化およびそれに続くこれらの単球の免疫賦活自己DCへの分化の誘導が小型化されたデバイスにおいて達成できるという発見は、少量の体外血液試料で全体的な単球活性化のプロセスを実施できるようにする。上に述べたとおり古典的ECP手順は、単球ならびに血漿構成成分および血小板を含む白血球を含む約200mlから500mlの最終容量を得るために、白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって患者から典型的には得られる2.5Lから6Lの血液の処理を必要とする。
【0100】
しかし、本発明による方法は、実質的に少ない量の血液試料を必要とする可能性があり、それにより患者への考慮すべき負担である白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスまたは他のプロセスの必要性を省くことができる。
【0101】
したがって本発明は、白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスに対する必要性なく実施でき、そのような全体的に活性化された単球を得るプロセス全体が手持ち式のデバイスで実施できる。
【0102】
したがって上に記載の実施形態と組み合わせることができる本発明の第1の態様の一実施形態では、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液が白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって得られない第1の態様による方法を実施することが企図される。
【0103】
前記体外量の前記哺乳動物対象の血液は、典型的にはそれぞれの対象の全血液量の0.1%〜10%の間であってよい。前記哺乳動物対象の血液の量は、体外の量の哺乳動物の血液試料の約1mlから約100mlの間、約1mlから約50mlの間、約1mlから約40mlの間、または約1mlから約30mlの間の最終容量をもたらすように、前記哺乳動物対象の体外血液の約5mlから約500mlの間、約10mlから約450mlの間、約20mlから約400mlの間、約30mlから約350mlの間、約40mlから約300mlの間、または約50mlから約200mlの間または約50mlから約100mlの間であってよい。
【0104】
採血され、デバイスに適用された体外血液の量は、全血であってよい。代替的に、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液は、0.5*10〜50*10個の間の単核細胞から白血球を単離することによって得られてもよい。白血球は、約5mlから約500ml、約10mlから約450mlの間、約20mlから約400mlの間、約30mlから約350mlの間、約40mlから約300mlの間または約50mlから約200mlの間または約50mlから約100mlの間の前記哺乳動物対象の体外全血から単離されてもよい。
【0105】
前記体外量の前記哺乳動物対象の血液は、約5mlから約500mlの間、約10mlから約450mlの間、約20mlから約400mlの間、約30mlから約350mlの間、約40mlから約300mlの間または約50mlから約200mlの間また約50mlから約100mlの間の前記哺乳動物対象の体外全血からバフィーコートを単離することによっても得ることができる。
【0106】
前述のすべての場合(全血、白血球画分、バフィーコート)において、前記体外の量の血液は、典型的には単核細胞約5×10個/mlなどの約1×10個から約1×10個の間を含む。
【0107】
当業者は、ろ過、分画遠心分離を含む、全血、その白血球画分またはそのバフィーコート画分をどのように得るかに精通している(例えばBruil et al., Transfusion Medicine Reviews (1995), IX (2), 145-166を参照されたい)。好ましい方法は、例えばPallから入手可能であるフィルターによる。そのようなフィルターは、体外試料の処理を手持ち式のデバイス中で行えるようにデバイスに組み入れられてよい。供給源として、例えば臍帯の血液も使用できる。
【0108】
遠心分離を使用する場合、例えば17または18ゲージゲージ針を有するシリンジを通して全血を得ることができる。そのような全血試料は、デブリおよび他の構成成分を除去するために遠心分離されてよい。次いで全血試料は、Pallから得られるなどの一般的フィルターを通してろ過されてよい。
【0109】
単核白血球画分を得るために、記載の全血試料を得る場合があり、次いでそのような試料を例えばFicoll−Hypaqueに重層できる。続いて遠心分離ステップが例えば180gなどの約100gから約200gで実施され、次いで単核白血球画分は界面から収集され、HBSSなどの一般的緩衝液で洗浄されてよい。次いで洗浄された単核白血球画分は、RPMI−1640培地(GIBCO)などの血清不含有細胞培養培地に再懸濁されてよい。単核白血球画分を得るための他の方法は、水簸、ろ過、密度遠心分離などを含む。
【0110】
全体的な活性化の前は、単球は、血液試料中でCD13細胞として同定され得る。
【0111】
上で指摘したとおり、全体的な単球活性化およびDC形成の誘導のための決定的ステップは、血漿構成成分による血小板の活性化およびそのような活性化血小板による単球の活性化を含むと考えられる。原理上は、剪断ストレス下で全血試料をデバイスに通すことができる。次いでそのような試料の血漿構成成分は、フローチャンバーの表面に結合し、血漿構成成分によるそのような試料内の血小板の接着および活性化を可能にする。そのような試料の単球は、次いで活性化血小板に結合し、それら自体が活性化される。
【0112】
同様に、上に記載のとおり得られた全血試料を全血試料のデブリを分離するために約150gなどの約100gから約180gで、約15分間などの約10分間から約20分間遠心分離することによって得ることできる画分を含有する血小板に富む血漿などの種々の構成成分の組合せを得ることができる。血小板に富む血漿層は、次いで収集され、約900gなどの約700gから約1000gで、約5分間などの約3分間から約10分間再遠心分離される。生じたペレットは、次いで血清不含有細胞培養培地に再懸濁される。
【0113】
しかし、プロセス全体について最良の制御を得るために、最初に血漿構成成分をフローチャンバーに通し、それらを接着させ、次いで血小板、次いで単球含有画分であることは望ましい。この手法について、単球または単球を含むバフィーコート画分を含み、血漿構成成分を含まず、血小板を含まない白血球画分を得ることは望ましい場合がある。そのような血漿および血小板を含まない単球含有画分は、当技術分野において記載のとおり得ることができる。白血球またはバフィーコート画分が上に記載のとおり得られる場合、それらは血漿または血小板を本発明の目的のために十分な程度含まない。この手法のために血小板および/または血漿画分を有することは望ましい。
【0114】
したがって本発明は、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液が前記デバイスに適用される前に体外量の前記哺乳動物対象の血液から分離されている血小板を使用することを企図する。次いでこれらの血小板は、フィブロネクチンなどの血漿構成成分でコートされたフローチャンバーを通してよい。
【0115】
別の実施形態では、本発明は、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液が前記デバイスに適用される前に体外量の前記哺乳動物対象の血液から分離されている血漿構成成分を使用することを考慮する。次いでこれらの血漿構成成分は、それらが接着できるようにフローチャンバーを通してよい。
【0116】
体外の量の血液から得られた血漿構成成分を使用する代わりに、例えば組換えタンパク質発現などの他の供給源から単離された血漿構成成分を使用することもできる。そのような血漿構成成分は、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、P−セレクチン、およびフィブリノーゲンのガンマ構成成分などのその断片を含む。
【0117】
白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって得られなかった体外の量の血液を使用することは好ましい場合があるが、白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって得られた体外の量の血液を使用することは、本発明によって排除されない。
【0118】
したがって本発明の第1の態様の別の実施形態では、上に記載の方法を実施することが企図され、前記体外量の前記哺乳動物対象の血液は、白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって得られる。
【0119】
白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスは、当技術分野において公知のとおり実施できる。したがって、2.5Lから6lなどの体外量の血液が対象から得られ、3つの画分、すなわち血漿、血小板およびバフィーコートを得るために従来の白血球アフェレーシスによって処置されてよい。フィブロネクチンおよびフィブリノーゲンなどのタンパク質を含有する血漿は、最も軽い血液画分であり、したがって遠心分離によって選択的に除去され、チャネルまたはチャネル様構造を通される血液の第1の部分である。血漿がチャネルまたはチャネル様構造をポンプで通され、その表面が血漿タンパク質でコートされた後に、白血球アフェレーシス遠心分離物において二番目に軽い構成成分、血小板画分が、チャネルまたはチャネル様構造をポンプで入れられて通される。白血球アフェレーシス遠心分離物から溶出される三番目に軽い画分は、白血球細胞を含有するバフィーコートであり血液単球を含む。次いで単球を含むバフィーコートは、チャネルまたはチャネル様構造をポンプで通される。血液試料はTherakosデバイス、Spectra cell separator(Andreu et al., (1994), Transf. Sci., 15(4), 443-454を参照されたい)、またはMacopharmaからのTheraflexデバイスを使用して得られてもよい。
【0120】
したがって本発明は、一実施形態において本発明は、単球を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液が前記デバイスに適用される前に体外量の前記哺乳動物対象の血液から白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって分離されている血小板を使用することを考慮する。
【0121】
別の実施形態では、本発明は、単球および/または血小板を含む前記体外量の前記哺乳動物対象の血液が前記デバイスに適用される前に体外量の前記哺乳動物対象の血液から白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって分離されている血漿構成成分を使用することを考慮する。
【0122】
体外の量の血液から得られた血漿構成成分を使用する代わりに、例えば組換えタンパク質発現などの他の供給源から単離された血漿構成成分も使用できる。そのような血漿構成成分は、フィブリノーゲン、フィブロネクチンまたはP−セレクチンを含む。アミノ酸400〜411(配列番号105、His−His−Leu−Gly−Gly−Ala−Lys−Gln−Ala−Gly−Asp−Val)に対応するフィブリノーゲンのガンマ構成成分などの血漿タンパク質の断片も使用できる。このガンマ構成成分は、血小板を活性化できることが本明細書において表されるデータによって示されている。したがって、主にではなくても少なくともフィブロネクチンを含む血漿画分を使用することが好ましい場合がある。同様に、例えば組換え的に発現されたおよび/または精製されたフィブロネクチンまたはそのガンマ構成成分を、血小板を活性化するために使用することが好ましい場合がある。
【0123】
体外の量の血液が白血球アフェレーシスなどのアフェレーシスによって得られたまたは得られていない本発明の第1の態様の両方の実施形態について、3つすべての画分、すなわち血漿構成成分、血小板および単球含有画分を、例えば全血試料の形態であってもまたは全血の事前精製だけされた画分を使用することによってでも同時にフローチャンバーを通すことは、これらの画分を前述の逐次的通過でフローチャンバーを通すことがプロセス全体のより良い制御を提供できる場合もあるが、考慮することができる。全血の事前精製された画分は、例えば血液バッグを遠心分離し、白血球細胞および血小板が濃縮されている上清を絞り出すことによって得ることができる。
【0124】
前述のとおり、フローチャンバーを通る流速、およびそれにより生じる剪断ストレスは、単球の全体的な活性化に影響を与えるように調整されてよい。フローチャンバーの設計および寸法は、単球への物理的な力の適用を操作し、さらに改善するためにも使用されてよい。
【0125】
チャネルまたはチャネル様構造を含むフローチャンバーを有するデバイスは、好適である場合がある。古典的ECP手順のために使用されるデバイスの全体構造、より小さな寸法だが、を有するそのようなフローチャンバーは、図17に示されている。
【0126】
しかし図18a)からd)または図26に示すものなどの他の形状も使用できる。したがって本明細書に記載の発見は、プロセスの際に生じる乱流および剪断ストレスに関してプロセス全体に良い制御を有することを可能にする顕著に簡易化された形状のフローチャンバーを考慮することを可能にする。
【0127】
多数のフローチャンバーを有するデバイスは、好適である場合がある。古典的ECP手順のために使用されるデバイスの全体構造、より小さな寸法だが、を有するフローチャンバーは、図17に示されている。
【0128】
チャネルなどのフローチャンバーは、原理上は上に記載の目的のために好適な任意の断面形状を有してよい。したがってそれらは、矩形、円形、楕円形、または他の断面形態を有する場合がある。そのようなフローチャンバーの寸法は、下で主に矩形断面に関して考察されているが、楕円形または円形断面を有するチャネルなどのフローチャンバーが使用されることは、そのような断面が例えば血漿構成成分でのさらに均質なコーティングおよび/または乱流をあまり含まないさらに継続的な流れ特性を可能にするはずであることから好ましい場合がある。
【0129】
フローチャンバーは、一般に約20μmの高さから約2000μmまでの高さ、約5mmから約200mmの幅および約10mmの長さから約400mmの長さを有してよく、単球が付着し、それにより活性化されるために十分な表面を有することを確実にすることによって効率的な活性化を可能にする。
【0130】
さらにより好ましい実施形態は、約50:1から約300:1または約50:1から約250:1などの約40:1から約400:1の高さ幅比を有するフローチャンバーに関する。そのような寸法は、単球の効率的な活性化を可能にする。
【0131】
矩形断面を有する場合、チャネルなどのフローチャンバーは、約5μmから約500μmまでの高さおよび約5μmから約500μmまでの幅の寸法を有する場合がある。チャネルまたはチャネル様構造は、約10μmから約400μmを含むそれ以下の高さおよび約5mmから約2000mmを含むそれ以下の幅、約10μmから約300μmを含むそれ以下の高さおよび約10μmから約300μmを含むそれ以下の幅、約10μmから約250μmを含むそれ以下の高さおよび約10μmから約250μmを含むそれ以下の幅、約10μmから約100μmを含むそれ以下の高さおよび約10μmから約100μmを含むそれ以下の幅、または約10μmから約50μmを含むそれ以下の高さおよび約10μmから約50μmを含むそれ以下の幅の寸法を有してよい。そのようなフローチャンバーは、約50:1から約300:1または約50:1から約250:1などの約40:1から約400:1の高さ幅比を有してよい。
【0132】
楕円形断面のチャネルなどのフローチャンバーが使用される場合、前述の高さおよび幅の寸法は、相当する容積を可能にするように相応に適合される必要がある。
【0133】
円形断面のチャネルなどのフローチャンバーが使用される場合、直径は、典型的には約5μmから約500μmを含むそれ以下、約10μmから約400μmを含むそれ以下、約10μmから約300μmを含むそれ以下、約10μmから約250μmを含むそれ以下、約10μmから約100μmを含むそれ以下、または約10μmから約50μmを含むそれ以下の範囲であってよい。
【0134】
さらに小さな寸法は、50μmなどの100μm未満の高さ、幅または直径について具体的な優先性を有するフローチャンバーにとって一般に好ましく、その理由は、そのようなさらに小さな寸法について、血小板との単球の相互作用がさらに効率的および均一であり、フローチャンバーの表面および中心での流れ特性がさらに同等であることであると考えられる。
【0135】
チャネルチャネル様構造などのフローチャンバーの長さは、フローチャンバーが体外血液の容量の通過を可能にするように通常選択される。例えばフローチャンバーおよびデバイスは、約1mlから約50mlの間、約1mlから約40mlの間、または約1mlから約30mlの間の全容量の通過を可能にするように構成されていてよい。
【0136】
図26に示されるフローチャンバーは、特に好ましい。そのようなフローチャンバーは、約20μmの高さから約2000μmまでの高さ、約5mmから約100mmの幅および約40mmの長さから約100mmの長さを有してよく、単球が付着し、それにより活性化されるために十分な表面を有することを確実にすることによって効率的な活性化を可能にする。さらにより好ましい実施形態は、約50:1から約300:1または約50:1から約250:1などの約40:1から約400:1の高さ幅比を有するフローチャンバーに関する。
【0137】
前述の高さ幅比は、単球を活性化するために本明細書に記載の方法を実施する場合に特に好ましいパラメーターである場合がある。それらは、上に述べたとおり流速および剪断ストレスと組み合わされてよい。
【0138】
フローチャンバーは、表面積を増加させるためまたは流れの状態を不均一でないようにするために内部サブ構造を有してよい。
【0139】
フローチャンバーは、表面積を増加させるためまたは流れの状態を不均一でないようにするために粒子で満たされてよい。
【0140】
フローチャンバーの材料はプラスチックまたは非プラスチックであってよい。
【0141】
非プラスチック材料を考慮する場合、ガラスを使用してよい。
【0142】
チャンバーの表面は、共有結合的にまたは吸着を介してコートしてよい。
【0143】
補助チューブ、チャンバー、バルブなどのための材料は、血液構成成分との相互作用を低減するように選択してよい。
【0144】
補助チューブ、チャンバー、バルブなどの表面は、血液構成成分との相互作用を低減するように処置/コートしてよい。
【0145】
プラスチック材料を考慮する場合、アクリル、ポリカーボネート、ポリエーテルイミド、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、スチレン、ポリウレタン、ポリエチレン、テフロンまたは任意の他の適切な医療グレードプラスチックを使用してよい。本発明の好ましい実施形態ではフローチャンバーは、アクリルプラスチックから作られている。
【0146】
フローチャンバーは、単球含有画分などのフローチャンバー内の試料を可視またはUV光、好ましくはUV−Aで照射できるようなある程度の透明度を提供する材料で作ることができる。実験によって示されるとおり、UV−Aおよび8−MOPへの曝露は、GILZの発現の増加、ならびにそれによる単球の全体的な活性化および免疫抑制自己樹状細胞への分化を導く。したがってUV−Aなどの光および8−MOPなどのDNA架橋剤への曝露は、全体的に活性化された単球を産生する場合には、一般に回避されるべきである。
【0147】
典型的なフローチャンバーは、図19A)に示す形状を有してよい。流路は、20mm×80mmの寸法を有する。チャンバーは、ポリスチレン、PET(ポリエチレンテレフタレート)、PMMA(ポリ(メチルメタクリレート))およびシリコンで作られている。血液試料は、例えば細胞1010個/mlの白血球細胞の濃度を有する試料例えば8mlを得るためにFicoll勾配を通して低速で遠心してよい。チャンバーは、血小板に富む血漿でプレコートしてよい。試料は約0.028Paで数分間チャンバーを通してよい。次いでチャンバーは、RPMI約3ml、0.028Paで洗浄されてよい。RPMI 30〜55mlでの2回目の洗浄は、約1.2Paで実施してよい。収集された活性化単球を次いで組み合わせ、さらなる分析のために使用する。
【0148】
全体的に活性化された単球が本発明による方法によって得られると、それらは具体的な目的のために一般にさらに処理されてよい。それらは、免疫賦活樹状細胞または免疫抑制樹状細胞に分化されてよい。免疫賦活樹状細胞は、例えば、それらの成熟を完了させるために標準的条件下でインキュベートされてよい。これらの免疫賦活樹状細胞の培養は、標準的条件下、例えば37℃、5%CO、15%AB血清(例えばGemini Bio−Productsから入手できる)を補充したRPMI−1640培地(例えばGIBCOから入手できる)などのヒト細胞の培養のための標準的培地中で実施してよい。
【0149】
しかし、全体的に活性化された単球は、上に述べたとおり、例えばがんの処置などの治療的処置のためまたは創傷治癒のためにも使用されてよい。全体的に活性な単球はいくらかの貪食活性を有することが想定されることから、それらは例えば、治療的に活性な抗体での治療を受けているがん患者の処置のために使用されてよい。
【0150】
全体的に活性化された単球は、第1の態様およびその実施形態による方法を上に記載のとおり、いかなるアポトーシス剤も非存在下で、具体的には8−MOP/UVAの非存在下で(例えばフローチャンバー、血小板および/または血漿構成成分などを使用することによって)実施することによって得ることができる。したがって第1の態様による方法は、単球がヒトまたは動物の身体の外にある限り、いかなるアポトーシス剤も非存在下で、具体的には8−MOP/UVAの非存在下でヒトまたは動物の身体の外にある単球を活性化するために使用される。第1の態様のこの実施形態によって得られた全体的に活性化された単球は、化学療法、ガンマ照射療法などの放射線療法またはそれらの組合せを受けている患者におけるがんを処置するために具体的には好適である。化学療法は、治療的に活性な抗体での処置を含んでよいが、治療的に活性な抗体の非存在下でのドセタキセルおよびパクリタキセルを含むタキサン、アントラサイクリン、シクロホスファミド、ビンカアルカロイド、シスプラチン、カルボプラチン、5−フルオロ−ウラシル、ゲムシタビン、カペシタビン、ナベルビンまたはゾレドロネートなどの細胞傷害性物質での処置も含んでよい。放射線療法は、X線療法およびガンマ照射療法などの光子療法;ならびに電子、プロトン、中性子、炭素イオン、アルファ粒子およびベータ粒子療法などの粒子療法を含んでよい。
【0151】
そのような患者では、例えば化学療法、ガンマ照射療法などの放射線療法またはそれらの組合せによって放出される場合がある腫瘍関連抗原がある。全体的に活性化された単球は、単球がヒトまたは動物の身体の外にある限りそれらが第1の態様による方法によって具体的にはアポトーシス剤の非存在下で得られることから、そのような患者に再導入される場合、そのような腫瘍関連抗原が取り込まれ、それにより抗腫瘍応答を始められる樹状細胞などの抗原を提示している抗原提示細胞に成熟すると想定された。しかし、単球がアポトーシス剤の非存在下、具体的には8−MOP/UVAの非存在下でヒトまたは動物の身体の外で活性化されることから、8−MOP/UVAの切断および/または寛容原性効果が低減されることが想定される。結果として免疫賦活抗原提示細胞は、寛容原性樹状細胞を超えて有利に形成されるはずであり腫瘍が免疫監視を免れる可能性を低減する。
【0152】
そのような全体的に活性化された単球は、化学療法および/または放射線療法を受けているならびにリンパ腺がんまたは、肺がん、乳がん、結腸がん、前立腺がん、頭頸部がん、脳がん、卵巣、筋肉、結合組織、腎臓がんもしくはメラノーマなどの皮膚がんを含む群から選択される固形腫瘍などの固形腫瘍のいずれかに罹患している患者におけるがんの処置のために使用されてよい。
【0153】
そのような全体的に活性化された単球は、がんに罹患しており、化学療法、放射線療法または治療的に活性な抗体での処置を含むその組合せを受けている患者においても当然のことながら使用されてよい。実際に、そのような全体的に活性化された単球は、ヒト身体において疾患関連抗原の放出を導く処置レジメンを受けている患者におけるがん以外の他の疾患の処置を可能にすることが想定される。
【0154】
本発明は、いくつかの具体的な実施例に関してここに記載されるが、それは例示的な目的であり、限定的なやり方で解釈されない。
【0155】
実験
実験1−単球活性化を誘導するための剪断ストレスおよび血小板活性化
材料および方法
白血球および血小板の調達
すべての試料は、アスピリンを含む血小板機能に影響を与えることが公知である薬物療法を受けていない若年の健康な対象から取得された。試料は、Yale Human Investigational Review Boardのガイドラインの下で得られ、インフォームドコンセントは、ヘルシンキ宣言に従って提供された。末梢血検体は、前腕前部の血管からヘパリンを含有するシリンジに19−ゲージ針を通して収集され、次いでFicoll−Hypaque(Gallard−Schlessinger、Carle Place、N.Y.)に重層された。180gでの遠心分離後、単核白血球画分を含有する界面は収集され、HBSS中で2回洗浄され、次いで単核細胞5×10個/mlの最終濃度でRPMI−1640培地(GIBCO)中に再懸濁された。細胞は取得の1時間以内に利用された。
【0156】
血小板に富む血漿の調製
全血は150gで15分間、室温で遠心分離された。血小板に富む血漿(PRP)層は収集され、900gで5分間遠心分離され、血小板ペレットはRPMI 1640中、所望の濃度に再懸濁された。
【0157】
平行プレートの調製
平行プレートフローチャンバー様のもの2個がECPの流動力学をモデル化するために使用された。流れ後の細胞表現型の評価を含む実験がlarger Glycotech system(Glycotech、Rockville、MD)を使用して実施された。この系は、流量路容積測定20000×10000×254ミクロン(長さ×幅×高さ)からできていた。この系の下部プレートは、ガスケットによって分けられた15mmペトリ皿(BD Biosciences、Durham、NC)からできており、上部プレートを形成するアクリルフローデッキに真空接続されていた。血小板でプレコートされたプレートを必要とする実験のために、フローチャンバーを組み立てる前に、所望の濃度のPRPの20滴がペトリ皿の中央に置かれ、血小板を20分間、室温で定着させた。ペトリ皿はRPMI 2mlで2回洗浄され、次いでフローチャンバーが組み立てられた。
【0158】
流れ後の細胞の収集および表現型決定を含まない実験のために、Vena8 biochips(Cellix Ltd、Dublin、Ireland)が層流を作るために使用された。Vena8 biochipsのチャネルについての流量路容積は20000×400×100ミクロン(長さ×幅×高さ)と測定された。これらのチップのタンパク質コーティングは、下の適切なセクションに記載されている。
【0159】
平行プレートを使用する実験
平行プレートフローチャンバーは、対物レンズ10×を有する位相差光学顕微鏡(CK40、Olympus、Japan)のステージにマウントされた。すべての実行は室温で実施された。均一な層流場はほとんど一定の容積流量を生成できるシリンジポンプ(KD Scientific、New Hope、PA)の使用によってシミュレートされた。立体配置の構成成分は、管を最少にするように考案された。プレートを通して細胞懸濁物を注入する前に、系はRPMI 5ml、およそ1dyn/cmの壁剪断ストレスを生じる流速で洗浄された。次いで目的の細胞懸濁物は固定の流速および壁剪断ストレスでチャンバーを通された。
【0160】
すべての実験はリアルタイムで見られ、DP200デジタルカメラおよびソフトウェア(DeltaPix、Maalov、Denmark)を使用して1秒あたり15.2コマで記録され、Image J software(NIH)を使用して分析された。
【0161】
一晩培養
一晩培養が必要であった場合、細胞は遠心分離され、15%AB血清(Gemini Bio−Products)を補充したRPMI−1640培地(GIBCO)中に最終濃度、細胞5×106個/mlで再懸濁した。細胞を12ウエルポリスチレン組織培養プレート(1ウエルあたり2ml)中、37℃、5%CO2で18時間、一晩培養した。
【0162】
免疫表現型検査
免疫表現型検査のためのモノクローナル抗体は、CD14(LPS受容体、単球)、CD11c(インテグリンサブユニット、単球およびDC)、HLA−DR(クラスII MHC分子)、CD83(DCマーカー)、CD62p(P−セレクチン、活性化血小板)およびCD61(インテグリンサブユニット、血小板)を含んでいた。抗体はBeckman Coulter(CD14、CD11c、HLADR、CD83)またはSigma(CD62p、CD61)から得られ、それらの予め決定された最適希釈で使用された。バックグラウンド染色は適切なアイソタイプ対照で確立され、免疫蛍光はFC500 flow cytometer(Beckman Coulter)を使用して分析された。2色膜染色は、FITCまたはPEに直接コンジュゲートされた両方の抗体を予め決定された最適濃度で加え、20分間、4℃でインキュベートすることによって実施され、次に未結合抗体を除去するために洗浄された。膜および細胞質の組合せ染色は細胞固定および透過処理についての製造業者の説明書(Intraprep kit、Beckman Coulter)に従って実施された。
【0163】
定量的リアルタイムPCR
遺伝子発現が平行プレートを通って流れる際に血小板の低(10±5/低倍率視野[lpf])対高(102±32/lpf)レベルに曝露され、次に一晩培養された細胞間で比較された。細胞RNAは、RNeasy Mini Kit columns with on−column DNase I treatment(QIAGEN)を使用して単離された。RNA収量および純度はNanoDrop ND−1000分光光度計およびAgilent 2100 Bioanalyzerを使用して測定された。RNAは、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)を使用してcDNAに逆転写された。逆転写は、96−well thermocycler(MJ Research PTC−200)で次の条件で実行された:25℃10分間、37℃120分間、85℃5秒間。TaqManリアルタイムPCRは、DC−LAMP、CD40、ADAMデシシン、Lox1、CCR7、CD80、CD83、CD86、FPRL2およびGPNMBの転写物を検出するために使用された。各配列に対するプライマーおよびプローブは、一覧のTaqman Gene Expression Assays(Applied Biosystems)として得られた。HPRT1は参照遺伝子として使用された。
【0164】
単球との血小板の共培養
追加的血小板を含む単球の共培養を含む実験は、いくつかの必要な改変を伴って一晩培養セクションにおいて記載のとおり実施された。Ficoll−Hypaque分離に続いて、単核細胞は、30%AB血清/RMPIに最終濃度細胞10×106個/mlで再懸濁され、その1mlは16ウエルプレートの各ウエルに配分された。血小板(RPMI中に懸濁、所望の最終濃度の2×)または血小板を含まないRPMIの追加的な1mlを次いで各ウエルに加えた。血小板を活性化するために、トロンビン2単位を含有する500μlを半分のウエルに加え、RPMIの500μlを、容量を揃えるために他に加えた。次いで細胞を既に記載のとおりインキュベートした。
【0165】
血小板接着研究
血小板接着実験は、上に記載のVena8フローチャンバーを使用して実施された。フィブリノーゲンおよびフィブロネクチン(Sigma)はPBSに最終濃度200mcg/mlで溶解された。Vena8 chipsのチャネルは、室温、加湿したチャンバー中で2時間、タンパク質溶液、自己血漿またはPBS単独と共にインキュベートされた。チャネルは、5×容量のRPMIで洗浄された。次いで血小板に富む血漿は一定に保たれた表示の剪断ストレスでタンパク質コートチャネルを通じて灌流された。各チャネルについてさらに画像が流路に沿って位置付けられた4個の予め定めた低倍率視野(視野は、注入の開始点から2500、7500、12500および17500ミクロンに中心を置いた)での実験で正確に90秒間取得された。
【0166】
いくつかの実験は、チャネルを通じた注入の前にタンパク質断片での血小板に富む血漿の事前処置を含む。アミノ酸配列Arg−Gly−Asp−Serを含有する小さなRGDペプチド、アミノ酸配列Ser−Asp−Gly−Argを含有するDRGペプチドまたはアミノ酸配列His−His−Leu−Gly−Gly−Ala−Lys−Gln−Ala−Gly−Asp−Valを含有するフィブリノーゲンの400〜411断片は、2mMの濃度にてPRPで20分間、室温でインキュベートされた。次いでPRPは、既に記載のとおりチャネルを通じて灌流された。
【0167】
受容体リガンド研究
血小板コートVena8チャネルは、40μg/ml抗P−セレクチン(R&D Systems)または40μg/mlアイソタイプ対照のいずれかで30分間、室温で事前処置され、次いで5×容量のRPMIで洗浄された。単核細胞懸濁物はRGDまたはDGRペプチドのいずれかの濃度2.5mMで事前処置された。400コマ(26.3秒間)継続するビデオ試料を、流れの開始点から7500ミクロンに中心を置いた400ミクロンにわたる視野の低倍率視野を使用して、流れの開始後60秒間記録した。
【0168】
β−1インテグリンコンフォメーションは、Glycotechフローチャンバーを使用して評価された。15mm血小板コートペトリ皿(上に記載)は、40μg/ml抗P−セレクチンまたはアイソタイプ対照で20分間、室温で事前処置され、次いで5×容量のRPMIで洗浄された。血小板を通す灌流の直後に、細胞は、抗CD29 HUTS−21(BD Biosciences)、β1インテグリンの活性(開いた)コンフォメーションに特異的に結合する抗体で免疫表現型検査された。
【0169】
結果
流れ中の単球は固定化された血小板と一過的に相互作用する
ECPは、紫外線A(UVA)活性化8−メトキシソラレン(8−MOP)、DNA架橋薬への病原性白血球の体外化学療法的曝露を可能にする手段として最初は開発された。したがってECPは、1mm離された大きな透明のプラスチック平行プレートの間の白血球アフェレーシスされた血液の流れを含む。ECPの際に関連する流動力学の詳細な分析を可能にするために、UVA/8−MOP曝露とは無関係に、ECPの流れの条件は、0.8mmだけの表面積を有し、100ミクロン離された縮小型平行プレートを使用して再産生された。このモデルは、デジタル顕微鏡を使用する視覚化を可能にした。モデルを使用する研究は、次の配列(ビデオ分析によって決定された):流れからプレートへの血小板の最初の接着、続く固定化された血小板への通過単球の一過的結合を明らかにした。
【0170】
DC誘導は、単球血小板相互作用の数と相関する
上に記載の最初の定性的観察に基づいて、血小板は流れの条件下で単球からDCへの分化を誘導すると仮定された。単球からDCへの分化についての血小板の影響を検査するために、単球は低(10±5/低倍率視野[lpf])、中(44±20/lpf)および高(102±32/lpf)密度での自己血小板でプレコートされた平行プレートの間を通された。細胞は、後毛細血管細動脈での壁剪断ストレスと類似の、0.5dyn/cmの壁剪断ストレスを生じる流速でプレートを通された。単位時間あたりの単球血小板相互作用の数は、血小板の密度(ビデオ分析によって決定された)の増大に比例して増加した。1秒あたりlpfあたり平均52.3±15の単球血小板相互作用が高密度プレートで観察され、中および低密度プレートで相互作用1秒あたり18.3±14および3.4±1にそれぞれ下がった(図1a)。
【0171】
一晩インキュベーション後、DC表現型を発達させた細胞の百分率と、前日に観察された単球血小板物理的相互作用の頻度との間に相関が観察された(図1b)。単球血小板相互作用の数の増加は、DC分化と一致するマーカー、膜HLA−DRおよびCD83を発現している細胞の割合の増加と相関していた。高密度血小板コートプレートに曝露された単球の平均14.2%は一晩インキュベーション後にHLA−DR+/CD83+であり、中および低レベルの血小板でコートされたプレートに曝露された単球のそれぞれ4.9%および0.8%と比較された。
【0172】
血小板への単球の曝露は遺伝子発現における変化を生じる
血小板曝露後に観察された単球表現型での記載した変化に捕捉して、RT−PCRが遺伝子発現での変化を評価するために実施された。単球は、前のセクションにおいて記載のとおり高または低密度の血小板でコートされた平行プレートを通された。一晩インキュベーション後、RNAは抽出され、RT−PCRがDCに関連する10個の遺伝子についての発現レベルを決定するために実施された(図2)。CD40、成熟DC上での公知の発現を有する同時刺激分子(Cella et al., 1996、参考文献表を参照されたい)は、高密度の血小板に曝露された単球では低レベルに曝露された単球と比較して567%を超えて上方制御されることが見出された。LAMP3、DC分化に特異的なマーカー(de Saint-Vis at al., 1998、参考文献表を参照されたい)は、398%まで上方制御された。CD80は、APC活性化において上方制御されることが公知の同時刺激分子であり(Slavik et al., 1999、参考文献表を参照されたい)、高レベルの血小板に曝露された単球においては220%まで上方制御される。CCR7、リンパ器官へのDC遊走において役割を演じることが公知のケモカイン受容体は、376%まで上方制御された。LOX1、CD83、CCR7およびADAMデシシン、DCに関連するすべての遺伝子も(Berger et al., 2010、参考文献表を参照されたい)、高レベルの血小板に曝露された単球で上方制御された。FPRL2、GPNMBおよびCD86は、高レベルの血小板に曝露された単球において、すべて下方制御された。FPRL2は、活性化された場合にDC成熟を阻害することが公知の受容体である(Kang et al., 2005、参考文献表を参照されたい)GPNMBは、サイトカイン産生減少に関与するタンパク質である(Ripoll et al., 2007、参考文献表を参照されたい)、CD86はAPCによって発現される同時刺激分子である。
【0173】
血小板の存在下でのDC誘導は静止条件下では生じない
血小板は、受容体リガンド相互作用を通じて直接、またはサイトカインおよび他の分泌メディエーターを介して単球に影響を与える可能性がある。単球からDCへの分化の血小板誘導が流動力学を必要とするどうかを決定するために、本発明者らは静止条件下で血小板の役割を検査した。単球は、低(<50,000/mm)、中(100〜200,000/mm)および高(>400,000/mm)濃度の血小板と、血小板が不活性または活性状態(トロンビンの添加によって誘導された)のいずれかで共培養された。静止条件での一晩インキュベーション後(剪断ストレス=0)、本発明者らは、活性化または不活性化血小板のいずれも流れの非存在下では単球のDC分化を誘導できなかったことを見出した(図3を参照されたい)。
【0174】
流れに懸濁された血小板は、プレートに吸着された血清タンパク質に結合する
フィブロネクチンおよびフィブリノーゲンを含む、血漿中に多量に存在するいくつかのタンパク質は、ガラスおよびプラスチック表面に吸着することが周知であり、したがって血小板接着および活性化への接着血漿タンパク質の寄与が評価された。平行プレートは、フィブリノーゲン、フィブロネクチン、血漿または生理食塩水のいずれかでプレコートされた。次いで非活性化血小板は0.2から6.0dyn/cmの範囲の壁剪断ストレスを生じる剪断速度で通された。最も高い濃度の血小板がフィブリノーゲンでコートされたプレートに接着した(図4)。フィブロネクチンコート、血漿コートおよび未コートプレートへの接着は同様に観察されたが、有意に低い程度であった(p<0.05)。流れの非存在下では、血小板接着は、すべてのタンパク質基質について同等であった。
【0175】
フィブリノーゲンおよびフィブロネクチンの両方は、アミノ酸配列アルギニン(R)−グリシン(G)−アスパラギン酸(D)、RGDを含むセグメントを含有する。RGDセグメントは、多数のインテグリン受容体、特にインテグリンが活性コンフォメーションにある場合に曝露されるベータサブユニットのI/Aドメインと相互作用することが周知である(Xiongら、2002、参考文献を参照されたい)。フィブリノーゲンコートプレートを使用する実験では、血小板接着はRGDペプチドとの血小板の事前インキュベーションによって顕著に変えられなかった、しかし接着は、フィブリノーゲンのアミノ酸400〜411に対応するペプチド断片、タンパク質のガンマ構成成分での血小板の事前インキュベーションによって有意に減少された(p<0.05)(図5a)。フィブロネクチンコートプレートを使用する実験では、RGDペプチドと事前インキュベートした血小板は接着が有意に減少した、一方フィブリノーゲンのアミノ酸400〜411に対応するペプチド断片と事前インキュベートした血小板は影響されなかった(図5b)。興味深いことに、タンパク質のRGDドメインと相互作用することが公知であるインテグリンのI/Aドメインとは異なり、フィブリノーゲンのガンマ構成成分と相互作用することが見出されたインテグリンの領域が、インテグリンの不活性状態で曝露されることは注目されるべきである(Weiselら、1992、参考文献を参照されたい)。したがってこのデータは、流れの中の非活性化血小板はフィブリノーゲンコートプレートのガンマ構成成分に結合することを示唆している。非活性化状態の血小板についてフィブリノーゲンに結合する能力は、前段落で説明したフィブリノーゲンコートプレートにおいて見られるより高い血小板接着レベルを説明できる。
【0176】
血小板はプレートへの接着によって活性化される
血小板は、細胞内顆粒中に保存されている多量のタンパク質と共に不活性状態で生理的には循環している。内皮の損傷またはトロンビンなどの刺激との遭遇で、血小板は活性化され、ほとんど瞬間的にこれらの細胞内タンパク質を血漿膜に移行させる(Kaplan et al., 1979、参考文献を参照されたい)。プラスチックプレート/吸収されたタンパク質への血小板接着は、周知の刺激によって生じるものに類似の血小板活性化を生じることが推論された。この仮説を検査するために、血小板活性化の周知のマーカー、P−セレクチンの表面発現が、接着の前後で評価された。接着の前に血小板の6±3%は、平均蛍光強度(MFI)12.4±6.9でP−セレクチンを発現していることが見出され、接着後に、P−セレクチン陽性は64±13%(MFI 98.2±14)に増加した。陽性対照、トロンビンで活性化した血小板は、71±18%P−セレクチン陽性(MFI 108.3±23)であった。P−セレクチンの発現は、血小板接着後30、60および90分でさらに評価され、P−セレクチン発現は、接着後90分で72±11%の血小板がP−セレクチン陽性で、すべての時点で安定のままであり、血小板が手順の間に活性状態のままであることを示していた。同様の傾向がαIIb−β3、フィブリノーゲン結合インテグリンの評価において、このタンパク質の表面発現の接着前4±3%から接着後49±18%への増加を伴って見出された。
【0177】
単球は、活性化血小板で発現されたP−セレクチンおよびRGD含有リガンドと相互作用する
ビデオで観察された単球血小板相互作用は、2つの種類に分割される:(1)短期作用型、3秒間(46コマ)未満について生じる接触として任意に定義される、および(2)長期作用型、安定結合を含んで3秒間より長い接触として定義される。ECP系における血小板は活性状態にあり、活性化血小板はP−セレクチンおよびRGD含有タンパク質(例えばフィブロネクチン、フィブリノーゲンおよびビトロネクチン)を含む多量のタンパク質を発現することが既に判定されていることから、存在する場合、これらのタンパク質の関与が短期間のまたは長期間のいずれの相互作用にあるかを決定することが試みられた。プレートは、血小板でプレコートされ、4種の条件が検査された:(1)無関係なアイソタイプ対照で事前処置された血小板、および単球未処置(P+RGD+)、(2)無関係なアイソタイプ対照で事前処置された血小板、およびRGDペプチドで事前インキュベートされた単球(P+RGD−)、(3)抗P−セレクチンで事前処置された血小板、および未処置単球(P−RGD+)、(4)抗P−セレクチンで事前処置された血小板、およびRGDペプチドで事前処置された単球(P−RGD−)。RGDペプチドで単球を事前処置することは、血小板によって発現されるRGD含有タンパク質と相互作用できる遊離RGD認識受容体の数の減少を生じるはずであることが想定された。したがって検査した4種の条件は、2個の血小板リガンド、P−セレクチンおよびRGD含有タンパク質との潜在的相互作用のすべての順列を表している。図6に示すとおり、RGDおよびP−セレクチンがどちらもブロッキングされなかった場合(P+RGD+)に、短期作用型および長期作用型相互作用の両方が最大になった、他のすべての条件における相互作用のレベルは、この最大値の百分率として表された。抗P−セレクチン単独でのブロッキング(P−RGD+)は、短期および長期の両方の単球血小板相互作用におけるほぼゼロ(p<0.01、図6、ビデオ分析によっても確認された)への減少を生じた。対照的にRGD単独(P+RGD−)のブロッキングは、短期間相互作用の数を有意に変えなかったが、長期間単球血小板相互作用を44%(p<0.05、図6)まで減少させた。P−セレクチンおよびRGDの両方の同時のブロッキング(P−RGD−)は、長期および短期相互作用の両方がほぼゼロに低減して、P−セレクチンだけがブロッキングされた場合に見られるものと類似のパターンを生じた。4種の条件それぞれにおいて観察された相互作用のパターンに基づいて最適な結論は、次のとおりである:(1)P−セレクチンは、主に短期間相互作用に関与する、(2)血小板によって発現されるRGD含有タンパク質は長期間相互作用に関与するが、短期間相互作用にはしない、(3)P−セレクチンとの単球相互作用は血小板によって発現されるRGD含有タンパク質との単球相互作用の上流で生じなければならない。この最終結論は、P−RGD+の条件が短期間および長期間相互作用の両方をほとんどゼロに減少させ、一方P+RGD−条件が長期相互作用だけを減少させた観察に基づいている。相互作用が逐次的でなかった場合、P−RGD+の条件は、長期相互作用に関してP+RGD+と同様の結果をもたらすはずである。さらに相互作用の順序、すなわちP−セレクチンがRGD相互作用の上流で作用することは、P+RGD−の条件だけが長期相互作用に影響を与え、一方P−RGD+の条件がP−RGD−のものと同様の結果をもたらすという発見から明らかである。
【0178】
P−セレクチンへの単球曝露は下流単球インテグリン活性化を生じる
インテグリン受容体は、それらの開いたコンフォメーションで、RGD含有リガンドと相互作用することが公知である(Ruoslathi et al., 1996、参考文献を参照されたい)。β1インテグリンがその開いたコンフォメーションにある場合だけ曝露されるエピトープを認識する抗体を使用して、本発明者らはモデルを通って流れる前後での単球インテグリンのコンフォメーションを評価した。図7は、短期作用型単球血小板相互作用の数が増加すると流れの直後に、開いたコンフォメーションでインテグリンを発現している単球の百分率における対応する増加があったことを示している。黒線は、少数(<5.1+2/lpf×秒)の血小板相互作用を受けた単球の9%と比較して、多数(>61±19/lpf×秒)の血小板相互作用を受けた単球の平均71%がβ1を活性形態で発現したことを示している。これらの結果は、無関係なアイソタイプ対照で接着血小板を事前処置することによって顕著な影響を受けなかった(灰色線)。対照的に抗P−セレクチンで事前処置した血小板は、単球血小板相互作用をほとんどゼロに低減し、これらの条件で流れから現れた単球(破線)は、それらが曝露された血小板の密度とは無関係に低レベルの活性β1インテグリンを示した。すべての細胞集団がプレートの通過前には同様の低レベルのベースラインインテグリン活性化(<10%)を実証したことは注目に値し、したがって、短期間単球血小板相互作用において見られる差異は、流れの前のインテグリンコンフォメーションにおける差異の結果ではなかった。
【0179】
P−セレクチンへの単球曝露はDC分化のために必要である
単球血小板相互作用の血小板P−セレクチンへの依存を仮定して、本発明者らは、時間0でのP−セレクチンへの単球の曝露と、一晩インキュベーション、18時間後に単球によって後から現れる表現型との間に関連があるかどうかを判定することを計画した(図8)。単球は、未処置(非ブロッキング)、または抗P−セレクチンもしくはアイソタイプ対照のいずれかで事前処置のいずれかの高密度の血小板(108±36/lpf)でコートされた平行プレートを通された。非ブロッキング血小板に曝露された単球の15.5±4%は一晩インキュベーション後に膜HLA−DR+/CD83+(成熟DCのマーカー)になり、無関係なアイソタイプ対照でブロッキングされた血小板に曝露されたものは13±4%であった。対照的に抗P−セレクチンでブロッキングされた血小板に曝露された単球の3±2%だけが一晩インキュベーション後にHLA−DR+/CD83+になった。
【0180】
実験2−免疫抑制樹状細胞に対する分子マーカーの同定
材料および方法
試料収集および単球濃縮
末梢血検体は、健康な対象からYale Human Investigational Review Boardのガイドラインの下で取得され、インフォームドコンセントは、ヘルシンキ宣言に従って提供された。PBMCは、Ficoll−Hypaque勾配(Isolymph、CTL Scientific)上で遠心分離によって単離された。単球は、新鮮に単離されたPBMCから:1)デキサメタゾン用量漸増実験のためにプラスチック接着(純度:71.6±5.6%CD14)、2)PUVA用量漸増実験のためにCD14磁気ビーズ正の選択(Miltenyi Biotec)(純度:88.1±3.5%CD14)、および3)LPS刺激実験のためにMonocyte Isolation Kit II(Miltenyi Biotec)(純度:83.8±3.8%CD14)によって濃縮された。
【0181】
単球由来DC(MoDC)の生成
単球は、細胞5×10個/mLの密度、6および12ウエルポリスチレン組織培養プレート、37℃、5%COで、熱不活性化15%AB血清(Gemini)および1%ペニシリン/ストレプトマイシンを補充したRPMI−1640(Gibco)(ここで完全培地と呼ばれている)中で培養された。800IU/mL組換えヒトGM−CSF(R&D Systems)および1000IU/mL組換えヒトIL−4(R&D Systems)は、記載の単球からDCへの分化を誘導するために36時間培養物に添加された。
【0182】
8−MOPおよびUVA光処置
培養物は、8−MOP(Uvadex、20μg/mL)と共に30分間、暗所でインキュベートされ、次いで連続した直管蛍光灯12本を有する卓上UVAライトボックスで照射された。管は、320から400nmの範囲のUVA光を発光した。UVA照射量(出力、W/m)は光ダイオードを使用して測定された。測定された照射量および系の種々の構成成分の吸収特性を考えると、所与の線量のUVA照射(J/cm)を細胞に送るために曝露する必要がある時間(秒)を決定できた。
【0183】
MoDC/リンパ球共培養
プラスチック接着の間に除去された非接着細胞(純度:66.0±4.5%CD3)は、現在一般にリンパ球と呼ばれている。リンパ球は、8−MOP(100ng/mL)およびUVA(1J/cm)で処置され、PBSで洗浄され、完全培地37℃、5%CO中で、PUVA処置または未処置MoDCのいずれかとリンパ球を5または10対MoDCを1の比で共培養された。100nMデキサメタゾン(Sigma)で24時間処置されたMoDCは、陽性対照群となった。24時間後、細胞は採取され、MoDCは再精製された。RNAがリンパ球からは相当量では単離されなかったことを確実にするために、CD11c磁気ビーズ(Miltenyi Biotec)正の選択を使用してすべての培養物からMoDCを再精製することは重要であった(純度:96.4±1.0%CD11c)。CD11c MoDCは、細胞0.5〜1.0×10個/mLで完全培地に再び蒔かれ、100ng/mL LPS(Sigma)で刺激された。LPS刺激24時間後、細胞はRNA単離および免疫表現型検査のために採取され、上清は、サイトカイン定量のために収集された。陰性対照として、並行群はLPSを受けなかった。
【0184】
siRNA実験
Silencer select pre−designed and validated GILZ siRNA(Invitrogen)は、オフ標的予測アルゴリズムと共にGILZ発現をノックダウンするために使用された。Mo−DCはLipofectamine RNAiMAX Reagent(Invitrogen)を使用して形質移入された。RNA二重鎖およびリポフェクタミン試薬は、一緒に20分間インキュベートされ、次いでMoDC培養物に加えられ、2時間、37℃、5%COでインキュベートされた。形質移入MoDCは、MoDC/リンパ球共培養物についての記載と同一の様式で処置された。MoDCもスクランブルsiRNAで形質移入された。
【0185】
免疫表現型検査
モノクローナル抗体は、HLA−DR、CD80、CD83、CD3、CD86、CD14、CD11cおよびGILZを含んだ。抗体は、Beckman−CoulterおよびeBioscienceから得られ、それらの予め決定された最適希釈で使用された。アポトーシスは、アポトーシス性細胞の表面上のホスファチジルセリン(PS)を認識するアネキシン−Vと共にAnnexin−V Apoptosis Detection Kit(eBioscience)を使用して評価された。7−AADが細胞生存率色素としてPIの代わりとなった。アネキシン−V/7−AAD表現型を提示する細胞は初期アポトーシス性細胞として分類され、およびアネキシン−V/7−AAD表現型を提示している細胞は後期アポトーシス性細胞として分類された。二重膜および細胞質内染色は、IntraPrep fix and permeabilization Kit(Beckman−Coulter)を使用して実施された。バックグラウンド染色は、適切なアイソタイプおよび蛍光から1つの対照を引いて確立された。免疫蛍光は、FACSCalibur L(BD Biosciences)を使用して、2%パラホルムアルデヒドでの固定の2時間以内に分析された。最低10,000事象が各群について収集された。
【0186】
定量的リアルタイムPCR
RNAは、QIAShredder column(QIAGEN)およびRNeasy Mini Kit(QIAGEN)をon−column Dnase I treatment(QIAGEN)と共に使用してCD11c MoDCから単離された。RNA収量および純度はNanoDrop ND−1000分光光度計を使用して評価された。cDNAは、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)を使用して、96−well thermocycler(MJ Research PTC−200)で得られた。TaqManリアルタイムPCRは、GILZ、CD80、およびCD86の転写物を検出するために使用された。プライマーおよびプローブは、予め設計され、検証されたTaqman Gene Expression Assays(Applied Biosystems)として得られた。SYBR green real−time PCR(Applied Biosystems)は、IL−12、IL−10、IL−6、TNF−アルファおよびTGF−βの転写物を検出するために使用された。プライマーは、プライマー3Plusを使用してイントロン連結に広がるように設計された。プライマー融解曲線は単一の産生物を確認するために得られた。HPRT−1およびGAPDHは、参照遺伝子として使用された。試料は7500 Real Time PCR System(Applied Biosystems)で3連で実行された。三角三角C(t)法が倍数変化を算出するために使用された。
【0187】
サイトカイン定量
培養上清は、IL−6、IL−8、IL−10、IL−12p70、IFN−γ、TNF−α、RANTES、MCP−1、およびMIP−1βへの磁気ビーズ(BioRad Laboratories)を利用する多重フォーマットで分析された。siRNA実験のために上清は、酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)キットでIL−10(R&D Systems)およびIL−12p70(Enzo Life Science)について分析された。すべての試料および標準物質は2連で実行され、LUMINEX 200(LUMINEX)またはBioTek EL800(BioTek)を使用して分析された。
【0188】
統計解析
スチューデントのt検定が、p値<0.05を統計的に有意として群間の統計的比較のために使用された。差次的遺伝子発現は、≧2.5倍変化およびp値<0.05で統計的に有意と見なされた。
【0189】
結果
GILZの発現は、単球が未成熟MoDCに分化する際に急速に下方制御される
新鮮に単離されたCD14単球はGILZを発現するが、それらが未成熟MoDCに分化すると、99%を超えてGILZを急速に下方制御する(図10A)。GILZ mRNAにおける低減は、GILZタンパク質レベルにおける61%減少によって確認された(図10B)。GILZ下方制御は、CD14の発現の低減(単球特異的マーカー、Zhouら、参考文献を参照されたい)、および細胞質性CD83の発現の増加と関連する(未成熟MoDCマーカー、Kleinら、参考文献を参照されたい)。重要なことに、MoDCは未成熟のままであり、低い膜CD83(成熟DCマーカー、Renzoら、参考文献を参照されたい、p=0.16)を発現している。MoDCは、デキサメタゾン(dex)での処置後に用量依存的なやり方でGILZを上方制御する(図10C)。24時間の100nM dexでの処置がMoDCにおいてGILZ発現を誘導することの陽性対照として選択された(Dex−DC)(図10D)。
【0190】
8−MOPまたはUVA処置単独は、GILZ発現に影響を与えなかった(図10E)。しかしMoDCが8−MOPおよびUVA光の組合せで処置された場合(PUVA−DC)、GILZ発現は5.5倍増加した。GILZの誘導は、処置24時間後にピークに達し、72時間顕著に上昇したままになる遅い経時変化を示した(図10F)。比較してDex−DCは、処置わずか2時間後にGILZを上方制御した。
【0191】
8−MOPおよびUVA光の組合せで処置された未成熟MoDCはGILZを上方制御し、免疫寛容原性、免疫抑制性の表現型をとる
GILZ発現にPUVA用量依存的効果があるかどうかが次に試験された。1J/cm UVAおよび100または200ng/mL 8−MOPで処置されたMoDCは、GILZを2.9および4.4倍それぞれ上方制御した(図11A)。類似の用量依存的現象は、8−MOPの濃度50ng/mLで開始した2J/cmで観察された。0.5J/cmでの処置は、8−MOP濃度が200ng/mLに達するまでGILZ発現に効果を有さず、4J/cmでの処置は高レベルの非特異的細胞死を生じた(データ未記載)。塩基対10個あたりで形成された光付加体の数は、8−MOP濃度とUVA投与量との積に直接関連する、Gasparroら、参考文献を参照されたい。8−MOPとUVAとの積が100に達すると、GILZは3倍上方制御され、積が200および400に増加すると、GILZはそれぞれ4.8および8.6倍に上方制御された(図11B)。
【0192】
初期アポトーシス性CD11c細胞の百分率は、検査した8−MOPのすべての用量についての1J/cmと比較して2J/cmで少なくとも高かった(p>0.05)(図11C)。2J/cmおよび200ng/mLでは、初期アポトーシス性CD11c細胞の百分率において未処置MoDCと比較して増加があった(図11C)。後期アポトーシス性CD11c細胞の百分率は、検査した8−MOPのすべての用量について1J/cmで13%未満、および2J/cmで16%未満でのままであった(図11D)。さらに、ドットプロットは、PUVAの増量に伴うMoDCのプロアポトーシス性効果への相対的抵抗性を強調している(図11E)。培養物から回収された細胞の数は、1または2J/cmで処置されたいずれの群においても統計的に異ならず(データ未記載)、90%を超えるCD11c細胞(91.0〜97.5%の範囲)が処置後に採取された。
【0193】
対照的にリンパ球は、1J/cmおよび100ng/mLでの処置後わずか2時間でアネキシン−Vを示す(データ未記載)。100ng/mLおよび1J/cmで処置したMoDC(図11F)とは対照的に、同じ用量のPUVAで処置した24時間後に、初期アポトーシス性リンパ球の百分率は未処置MoDCでの6.6%からPUVA−DCでの44.3%に増加し、後期アポトーシス性リンパ球の百分率は4.5%から33.7%に増加した(図11G)。リンパ球の64.3±3.2%が処置24時間後にアネキシン−Vであったと考えて、PUVA処置リンパ球は、次にアポトーシス性リンパ球と呼ばれる(ApoL)。
【0194】
GILZのPUVA用量依存的誘導は、CD80、CD86およびCD83の細胞表面発現における減少と関連した(図12A、3B)。これらのマーカーの下方制御はGILZの誘導と平行し(図11Bを参照されたい)、1および2J/cmの両方について100ng/mLの8−MOP濃度で始まる。8−MOPとUVAとの積が100を超えると、CD83、CD80およびCD86発現はそれぞれ31%、30%および54%まで低減され、HLA−DR発現は38%まで増加した。
【0195】
アポトーシス性リンパ球に曝露されたMoDCは、GILZを上方制御し、LPS誘導完全成熟に抵抗性である
PUVAおよびアポトーシス性細胞への曝露の個々の寄与を精査するために、MoDCは最初にApoLと比を変化させて共培養された。GILZは、ApoLに用量依存的様式で上方制御された(図13A)。PUVA−DCがApoLに曝露された場合、GILZは、単独で培養されたPUVA−DCにおいてよりも高いレベルで発現された(図13B)。ApoLに曝露されたPUVA−DCもApoLに曝露された未処置MoDCにおいてよりもGILZを高いレベルで発現した(それぞれ6.7倍および3.6倍高い)。GILZ mRNAが上方制御されたすべての群においてGILZタンパク質レベルにおける対応する1.5倍増加があった(図13C)。GILZの上方制御を実証したすべての群において<12%の初期アポトーシス性(3.8〜11.4%範囲)および後期アポトーシス性(6.3〜11.5%範囲)CD11c細胞があったことから、GILZの誘導は初期または後期アポトーシス性CD11c細胞の数における増加と関連しなかった。
【0196】
未処置MoDCよりも2.5倍を超えるGILZを発現しているMoDCは、LPSによる完全成熟に抵抗性であり、半成熟、免疫寛容原性表現型を表した。LPS刺激は、GILZを上方制御しているMoDCにおいてCD80発現を、未処置MoDCにおけるLPS刺激後に見られるレベルの50%だけ増加させ(図13D、0.48〜0.57%範囲)、CD86発現を未処置MoDCの45%だけ増加させた(図13D、0.42〜0.47%範囲)。同様の結果がHLA−DRおよびCD83から得られた(図14E、LPS後にそれぞれ未処置MoDCの47〜65%および23〜57%範囲)。さらに、GILZを上方制御しているMoDCは、qRT−PCRによって評価されたとおり未処置MoDCのCD80 mRNAの6%(4.5〜7.5%範囲)を発現し、未処置MoDCのCD86 mRNAの50%を発現した(12.4〜85.1%範囲)。
【0197】
GILZを発現しているMoDCは、免疫寛容原性サイトカインプロファイルを示し、GILZのノックダウンはIL−10対IL−12p70比を低減する
上清は、図13Bに記載のとおり共培養から採取された。Dex−DCは、GILZを4.29倍に上方制御し(図13Bを参照されたい)、IL−10の産生を増加させ(図14A)、検査したすべての炎症促進性サイトカイン(図14B、14C)およびケモカイン(図14D、14E)の産生を減少させた。比較して、PUVA−DCは、GILZを2.78倍に上方制御し(図13Bを参照されたい)、IL−10の産生を増加させ、TNF−αおよびIFN−γを除く検査したすべての炎症促進性サイトカインおよびケモカインの産生を減少させた。ApoLに曝露されたPUVA−DCまたは未処置MoDCは、GILZを単独で培養されたPUVA−DCよりも高レベルで発現した(それぞれ3.6および6.7倍高い、図13Bを参照されたい)。これら2群はIL−10の産生が増加し、検査したすべての炎症促進性サイトカインおよびケモカインの産生が減少した。サイトカインレベルは、GILZを上方制御するMoDCが未処置MoDCよりも8倍のIL−10 mRNAの上方制御を実証して(5.5〜11.8範囲、p<0.01)、RNAレベルで確認された。IL−12、TNF−α、およびIL−6における低減もRNAレベルで確認された(データ未記載)。TGF−βは、GILZを上方制御しているMoDCにおいて2.5倍上方制御された(データ未記載)。TGF−βは、多重分析に含まれず、したがってmRNAレベルで分析されただけであった。
【0198】
免疫寛容原性DCがIL−10対IL−12p70比の増加によって特徴付けられることから、IL−10対IL−12p70比は、免疫寛容原性の有用な指標である、Steinmanら、参考文献を参照されたい)。IL−10対IL−12p70の比は、未処置MoDCでの6.7からDex−DCにおける67.7に増加した。同様にIL−10対IL−12p70比は、PUVA−DCにおいて38.7に、未処置MoDCおよびApoLに曝露されたPUVA−DCにおいてそれぞれ89.4および114.9に増加した(p<0.05)。
【0199】
GILZの誘導が免疫寛容原性サイトカインプロファイルを媒介するかどうかを評価するために、MoDCは、GILZ発現をノックダウンするためにsiRNAで形質移入された。GILZ siRNAでの形質移入はMo−DCにおいてGILZ発現を68%まで低減した(図15A、59〜79%範囲)。スクランブルsiRNAでの形質移入は、GILZ発現を顕著に変化させなかった。非形質移入群と比較して、siRNAで形質移入した任意の群から回収された細胞の数においても顕著な差異はなかった(データ未記載)。
【0200】
未処置MoDCよりもGILZを2.5倍高く上方制御している処置MoDCは、より高いレベルのIL−10を産生し(図15B)、GILZのノックダウンは39%まで(34〜48%範囲、p<0.05)IL−10産生を低減した。未処置MoDCよりもGILZを2.5倍高く上方制御している処置MoDCは、少量のIL−12p70も産生し(図15C)、GILZのノックダウンはIL−12p70産生を188%まで(149〜214%範囲、p<0.05)増加させた。スクランブルsiRNAでの処置は、IL−10またはIL−12p70の産生に感知できる効果を有さなかった。GILZのノックダウンは、GILZ誘導後に上昇していたIL−10対IL−12p70比を低減させた。GILZ siRNAで処置したDex−DCは、IL−10対IL−12p70比における、非形質移入MoDCでの15.3から形質移入Dex−DCでの3.9への低減を実証した。PUVA−DCでは、比は非形質移入MoDCでの8.4からPUVA−DCでの2.9に減少し、未処置MoDCおよびApoLに曝露されたPUVA−DCでは、それぞれ18.1から7.8および28.4から8.3の比の低減が観察された。
【0201】
これらの結果は、他の免疫抑制メディエーターと同様に、PUVAがGILZの発現を誘導し、同時刺激分子CD80およびCD86、ならびに成熟マーカーCD83の低い発現によって特徴付けられる免疫寛容原性免疫抑制樹状細胞を生成することを実証している。GILZ誘導は、IL−10産生の増加、IL−12p70を含む炎症促進性サイトカインおよびケモカイン産生の減少によって特徴付けられる免疫寛容原性サイトカインプロファイルへの分極のために必要である。これらの結果は、さらにGILZをアポトーシス性細胞の免疫抑制効果を媒介する分子スイッチとして関連付ける。
【0202】
実験3−免疫賦活樹状細胞に対するさらなる分子マーカーの同定
材料および方法
患者試料
ECPを受けている患者由来の白血球は、UVAR XTS Photopheresis System(Therakos)を使用して、Yale Human Investigational Review Boardのガイドラインの下で得られ、インフォームドコンセントは、ヘルシンキ宣言に従って提供された。アリコートは、3つの時点で調達された:処置前(ECP前)、8−MOP/紫外線A(UVA)曝露直後(ECP 0日目)または処置された血液単核白血球の1−L血小板保存バッグ(PL−2410、Baxter)での18時間インキュベーション後(ECP 1日目)。
【0203】
正常対象
ECPが健康な対象由来の単球のDCへの変換を誘導するかどうかを決定するために、正常対象由来の単核白血球は2つの方法で試験された。正常対象由来の白血球アフェレーシスされた白血球(N=3)は、処置前(ECP前)、ECP直後(ECP 0日目)、およびECP後18時間(ECP 1日目)に研究された。UVA光源およびプラスチック曝露プレートを組み入れている卓上装置は、臨床ECP系の実験室での再現および平行するRNA単離、免疫表現型検査および機能研究への試料利用を可能にした。代替的に正常対象由来の血液単位は、輸送用バッグに入れられ、処置患者のもの(N=3)と同一の様式でECP処置装置を通された。正常血液の単位から得られた細胞は、マイクロアレイおよび抗原提示アッセイのために使用された。
【0204】
ソラレン添加
ECPの際に日常的に行われるとおり、標準8−MOP濃度溶液(Therakos)は、臨床ECP装置、および実験室モデル系に直接加えられた。導入のモードは、臨床手順および実験の間にわたって正確な100〜200ng/mLの濃度を可能にした。
【0205】
一晩培養
ECPでは、処置された単球が患者にただちに再注入されることから、処置された単球の表現型的機能的変化を試験することは不可能である。したがってECP後に細胞は、誘導された単球の遺伝子活性化、成熟および機能を研究するために18時間培養された(RPMI 1640/15%自己血清)。ECPの前(ECP前)および直後に(ECP 0日目)、患者および正常対象の試料は、Ficoll−Hypaque勾配上での遠心分離によって単離された。細胞は、7.5%AB血清、7.5%AB血清(Gemini Bio−Products)を補充されたRPMI−1640培地(Gibco)に再懸濁され、6ウエルポリスチレン組織培養プレート中、細胞5*10個/mLの密度で(患者について)、およびBaxter血小板保存バッグ(正常対象について37℃、5%CO)中で培養された。一晩培養後(ECP 1日目)、細胞は単球濃縮を受ける前に採取された。比較表現型分析用のDCを生成するために、細胞はRPMI 1640 15%血清中、GMCSFおよびIL4(25ng/mL、R&D Systems)1mLの存在下で6日間培養された。
【0206】
単球集団の磁気ビーズ濃縮
ECPが単球を樹状細胞成熟経路に方向付ける遺伝子を活性化するかどうかの決定を可能にするために、単球の物理的または細胞膜摂動を最少化しながらトランスクリプトーム分析へのリンパ球の寄与を除外する、陰性単球の穏やかな濃縮方法を開発する必要があった。単球は、親和性カラムの単回通過によって単核細胞プールから濃縮された。この陰性選択法は、物理的摂動を限定する一方で、関連モノクローナル抗体(抗CD4、CD8、CD19)にコンジュゲートした磁気マイクロビーズ(Miltenyi Biotec)に接着したリンパ球は枯渇した。しかし、ECP損傷リンパ球によるリンパ球マーカーの表面提示の減少が、TおよびB細胞の画分のカラムでの保持を免れさせることから、60%〜80%を超えるECP 1日目の単球の濃縮は、課題であると証明された。単球純度をさらに増強するための、反復的な親和性カラム通過は、この手法が受動的にろ過された単球の物理的摂動を複雑にすることから、選択肢ではなかった。幸運にも、一連の分析は、リンパ球のECP選択的損傷が、DC遺伝子活性化レベルの正確な評価のための単球の完全な精製の必要性をなくすことを明らかにした。UVA活性化8−MOPへのそれらの極端な感受性のために、ECP処理リンパ球の99%が、一晩インキュベーション後にアポトーシス性であった(APO2−PE、トリパンブルーおよび/またはアネキシンフルオレセインイソチオシアネートFITC/ヨウ化プロピジウムでの染色によって決定されたとおり)。ECPが全体的なリンパ球アポトーシスを生じることから、ECP 1日目画分中の生単核白血球の90%〜95%は単球であった。この現象が次のとおり実施され、95%を超える単球純度をもたらすアポトーシス性リンパ球の複数ステップ磁気ビーズ除去が、研究した細胞集団において観察された遺伝子発現レベルを変えないという観察の主な理由である。比較を成し遂げるために、本発明者らは、磁気ビーズおよびEasySep magnetを使用する陰性選択プロトコールを適合させることによって単球精製手順を改変した。末梢血単核細胞は、血小板を除去するために低速(120g、10分間)で遠心分離された。次いで細胞は、次の改変と共に製造業者の手順に従ってMonocyte Isolation Kit II(Miltenyi Biotec)を使用して標識された:(1)緩衝液は2%自己血清および1mM EDTA(エチレンジアミン四酢酸)を含有する氷冷リン酸緩衝生理食塩水からなる、(2)ブロッキング時間は10分間に延ばされた、(3)ビオチン抗体カクテルでの標識は20分間に延ばされた、および(4)細胞はビオチン抗体カクテルでと抗Biotin Microbeadでの標識化との間に1度洗浄された。単球をカラムに通過させることにより単球を刺激することを回避するために、代わりに磁気的に標識化された細胞は、未標識単球からEasySep magnet(StemCell Technologies)を使用して分離された。5mLポリスチレンチューブ中緩衝液2ml中の細胞は、磁石中に10分間置かれ、次いで未標識細胞は新たなチューブに注意深く捨てられた。この手順は単球純度を最大に増強するために2回反復された。この点で純度がまだ不十分であったことから、細胞はMonocyte Isolation Kit II試薬で再標識化され、EasySep magnet中に追加的に10分間置かれ、未標識単球は溶出された。最終純度(X=96%+4.5)は、CD14染色のフローサイトメトリー分析によって評価された。
【0207】
免疫表現型検査
単球および樹状細胞に対して特異的なモノクローナル抗体は、CD14(リポ多糖類[LPS]受容体、単球)、CD36(アポトーシス性細胞に対する受容体、単球)、ヒト白血球抗原DR−1(HLA−DR、クラスII主要組織適合性複合体[MHC]分子)、CD83(樹状細胞マーカー)、細胞質性樹状細胞リソソーム関連膜タンパク質(DC−LAMP、樹状細胞マーカー)ならびにCD80およびCD86(B7.1およびB7.2同時刺激分子)を含む。抗体は、Beckman Coulterから得て、それらの予め決定された最適希釈で使用された。バックグラウンド染色は、適切なアイソタイプ対照で確立され、免疫蛍光はFC500 flow cytometer(Beckman Coulter)を使用して分析された。膜および細胞質の組合せ染色は細胞固定および透過処理についての製造業者の説明書(Intraprep kit、Beckman Coulter)に従って実施された。
【0208】
抗原提示アッセイ
志願者の新鮮に単離された、磁気ビーズ濃縮、抗原を経験したCD4集団(2*10/mL、50μL/ウエル)は、破傷風トキソイド(10μg/mL、100μL/ウエル)およびRPMI培地1640/15%自己血清の存在下で単球(2*10/mL、50μL/ウエル)に加えられた。5日間の培養後、細胞は1μCiの[H]−チミジンを受け、一晩インキュベートされ、採取され、ベータ液体シンチレーションカウンター(PerkinElmer)で計数された。結果は、5回反復培養の平均および標準偏差として表される。
【0209】
MLR/CMLアッセイ
ECP処理単球がCD8T細胞によるMHCクラスI限定細胞傷害性を機能的に刺激できるかどうかを評価するために、3名の正常対象由来の単核白血球が研究された。HLA−A2陽性志願者3名それぞれから新鮮に調達された抗凝固血液1単位は、実際のECP手順と同一のやり方で臨床ECP装置を通じて処理される前後に、刺激単球/樹状細胞の供給源となった。単核画分は、ECP処理の直前(ECP前)およびECP直後(ECP D0)に血液から単離された。一方向性のT細胞刺激を確実にするためのガンマ照射(3000rad、セシウム源)後、ECP前画分は、RPMI 1640/15%自己血清中に系列希釈され、細胞25000から250個を含有する100μLは、円形底マイクロタイタープレートウエルに、5回反復で蒔かれた。ECP D0画分は、18時間、ラージウエルプレートでインキュベートされ、接着細胞を剥がすためにウエルをこすることによって採取された。次いで再懸濁細胞は、系列希釈され、上に記載のとおり蒔かれた。A−2−陰性正常ドナーは、応答者CD4およびCD8T細胞の供給源となり、Miltenyi磁気ビーズカラムでの陽性選択によって精製された(平均純度98%)。次いで応答者T細胞(50000/ウエル100μL中)は、ECP前またはECP−D0刺激因子のいずれかを含有するウエルに加えられ、プレートは7日間、37℃、CO2インキュベーター中で培養された。標的細胞について、A−2陽性T−B融合細胞リンパ芽球細胞系、174×CWM.T1、は51Crで標識され、MLR培養物に細胞10個/ウエルで加えられた。4時間インキュベーション後、プレートは遠心分離され、ガンマカウンターでの計数のために各ウエルから上清100μLが除去された。「比溶解百分率」は、次の割合:
平均cpm(試料)−平均cpm(T細胞のみ)
平均cpm(界面活性剤最大遊離)−平均cpm(T細胞のみ)
の100倍として定義された。
【0210】
RNA単離およびマイクロアレイハイブリダイゼーション
全RNAは、RNeasy Mini Kit columns with on−column DNase I treatment(QIAGEN)を使用して単離された。RNA収量および純度はNanoDrop ND−1000分光光度計およびAgilent 2100 Bioanalyzerを使用して測定された。断片化cRNAは、Affymetrix HG U133 Plus 2.0 human chipsにハイブリダイズされ、ヒト遺伝子およそ47400個についてスクリーニングされ、ESTはthe Yale University W.M.Keck Resource Laboratoryによって実施された。マイクロアレイ結果は、遺伝子発現情報データベース受入番号GSE23604で利用可能である。
【0211】
データ分析
Affymetrix GeneChip Operating Software Version 1.2(GCOS 1.2、Affymetrix)から生成された標準化していない生データは、Genespring software 7.2(Agilent Technologies−Silicon Genetics)を使用して分析された。データは、Robust Multi−Arrayを使用して標準化された。最少倍数変化>2.0と組み合わせて、白血球アフェレーシスまたは処置試料いずれかにおいて500以上の平均シグナル強度を有するプローブセットだけを分析に含めた。差次的遺伝子発現は、>2倍数変化およびP<.05とされた。誘導されたトランスクリプトームの主成分分析(PCA)は、標準的方法によって実施された。シグナル伝達経路関与は、MetaCore Software Version 1.0(GeneGo)で同定された。
【0212】
定量的リアルタイムPCR
選択された遺伝子のマイクロアレイ発現は、同じRNA試料のアリコートにおいて定量的リアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)を使用して確認された。RNAは、High Capacity cDNA Reverse Transcription Kit(Applied Biosystems)を使用してcDNAに逆転写された。逆転写は、96−well thermocycler(MJ Research PTC−200)で次の条件:25℃10分間、37℃120分間、85℃5秒間で実行された。TaqManリアルタイムPCRは、DC−LAMP、CCR7、CD80、CD86およびCD14の転写物を検出するために使用された。各配列に対するプライマーおよびプローブは、一覧のTaqman Gene Expression Assays(Applied Biosystems)として得られた。HPRT1は、参照遺伝子として使用された。
【0213】
結果
個々の遺伝子発現における大きなECP誘導変化
単球における個々の遺伝子活性化のECPによる刺激は、関連遺伝子についてのECP1日目対ECP前発現の比として表される。単球濃縮の際の偶発性遺伝子誘導をなくすために、陰性カラム精製法が使用され、それによりリンパ球は保持され、単球は受動的にろ過された。結果は患者および正常対象の両方由来のECP処理単球が、共有トランスクリプトームサインを再現性よく発現するために十分生存可能であることを明らかにした。
【0214】
遺伝子は、ECP前と比較して倍数変化が>2であり、有意性がP<.05であった場合に、ECPによって有意に上方または下方制御されたと見なされた。遺伝子およそ3000個からのRNA転写物のレベルは、各患者群と正常対象において顕著に変化した(表2)。全体的に遺伝子1129個は、CTCLおよびGVHD患者および正常対象の両方由来のECP処理単球によって共通して上方または下方制御され、ECP誘導遺伝子活性化における共有性を示している。
【0215】
【表3】
【0216】
樹状細胞分化、接着、および機能に関連する多数の遺伝子の発現の増加(表3)は、単球の経路への進入のECP刺激をさらに支持する。
【0217】
【表4】
【0218】
その発現が増加することが見出され、免疫賦活樹状細胞の分子マーカーであると考えられる場合があるさらなる遺伝子は、表1に示されている。
【0219】
単球から樹状細胞への成熟の際に予測されるとおり、ECP処理単球の一晩培養後に、患者および正常対象すべての単球集団での平均蛍光強度を測定することによって評価されたとおり、CD14(単球マーカー)発現は減少された。この結果は、患者のECP後細胞のRT−PCR研究において確認された(結果未記載)。その発現の低減が単球から樹状細胞への成熟を示すさらなる因子を表4に示す。
【0220】
【表5】
【0221】
その発現が低減され、それにより単球から免疫抑制樹状細胞への成熟を示すさらなる因子は表5に示されている。
【0222】
【表6】
【0223】
実験4−免疫賦活DCの表面分子マーカーおよび機能性メディエーター
ECP誘導樹状細胞トランスクリプトームのさらなる分析は、免疫賦活樹状細胞のマーカーおよび機能メディエーターとしての表面分子遺伝子産生物のサブセットを同定するために実施された。ECP誘導樹状細胞において上方制御された466個の遺伝子は、87個の共有表面タンパク質を同定するためにおよそ2000個の公知のまたは推定される全長ヒト膜貫通遺伝子と相互参照された。
【0224】
材料および方法
白血球および血小板の調達
すべての試料は、アスピリンを含む血小板機能に影響を与えることが公知である薬物療法を受けていない若年の健康な対象から取得した。試料は、Yale Human Investigational Review Boardのガイドラインの下で得られ、インフォームドコンセントは、ヘルシンキ宣言に従って提供された。末梢血検体は、前腕前部の血管からヘパリンを含有するシリンジに19−ゲージ針を通して収集され、次いでFicoll−Hypaque(Gallard−Schlessinger、Carle Place、N.Y.)に重層された。180gでの遠心分離後、単核白血球画分を含有する界面は収集され、HBSS中で2回洗浄され、次いで単核細胞5×10個/mlの最終濃度でRPMI−1640培地(GIBCO)中に再懸濁された。細胞は取得の1時間以内に利用された。
【0225】
血小板に富む血漿の調製
全血は150gで15分間、室温で遠心分離された。血小板に富む血漿(PRP)層は収集され、900gで5分間遠心分離され、血小板ペレットはRPMI 1640中、所望の濃度に再懸濁された。
【0226】
プレートの調製
プレートの通過はGlycotech system(Glycotech、Rockville、MD)を使用して行われた。この系は、流量路容積測定20000×10000×254ミクロン(長さ×幅×高さ)からできていた。この系の下部プレートは、ガスケットによって分けられた15mmペトリ皿(BD Biosciences、Durham、NC)からできており、上部プレートを形成するアクリルフローデッキに真空接続されていた。血小板でプレコートするために、フローチャンバーを組み立てる前に、所望の濃度のPRPの20滴がペトリ皿の中央に置かれ、血小板を20分間、室温で定着させた。ペトリ皿はRPMI 2mlで2回洗浄され、次いでフローチャンバーが組み立てられた。
【0227】
一晩培養
一晩培養が必要であった場合、細胞は遠心分離され、15%AB血清(Gemini Bio−Products)を補充したRPMI−1640培地(GIBCO)中に最終濃度、細胞5×106個/mlで再懸濁した。細胞を12ウエルポリスチレン組織培養プレート(1ウエルあたり2ml)中、37℃、5%CO2で18時間、一晩培養した。
【0228】
免疫表現型検査
免疫表現型検査のためのモノクローナル抗体は、CD14(LPS受容体、単球)、CD11c(インテグリンサブユニット、単球およびDC)、HLA−DR(クラスII MHC分子)、CD83(DCマーカー)、CD62p(P−セレクチン、活性化血小板)およびCD61(インテグリンサブユニット、血小板)を含む。抗体はBeckman Coulter(CD14、CD11c、HLADR、CD83)またはSigma(CD62p、CD61)から得られ、それらの予め決定された最適希釈で使用された。バックグラウンド染色は適切なアイソタイプ対照で確立され、免疫蛍光はFC500 flow cytometer(Beckman Coulter)を使用して分析された。2色膜染色は、FITCまたはPEに直接コンジュゲートされた両方の抗体を予め決定された最適濃度で加え、20分間、4℃でインキュベートし、次に未結合抗体を除去するために洗浄することによって実施された。膜および細胞質の組合せ染色は細胞固定および透過処理についての製造業者の説明書(Intraprep kit、Beckman Coulter)に従って実施された。
【0229】
結果
プレート通過および/またはPBMC D1集団は、SIRPa、ICAM1、CXCL16、LIGHT、PLAUR(CD87、プラスミノーゲン活性化因子、ウロキナーゼ受容体)、MSR1、Neu1(シアリダーゼ)、CD137LおよびCATB(CTSB、カテプシンB)の分析された表面発現の顕著な上方制御を示した。
【0230】
実験5−単球をフローチャンバーに通した後の分子マーカーの発現およびFSC/SSC複雑度の決定
材料および方法
単球は、図19に示すデバイスを通された。簡潔には、血液試料は、例えば細胞1010個/mlの濃度の末梢血単核細胞(PBMC)を含む試料8mlを例えば得るためにFicoll勾配を通して低速で遠心した。チャンバーは、血小板でプレコートされた。試料は、約0.028Paでチャンバーを通された。次いでチャンバーは、RPMI約3ml、0.028Paで洗浄された。RPMI 30〜55mlでの2回目の洗浄は、約1.2Paで実施された。収集された活性化単球は、合わせられ、1日インキュベートされ、さらなる分析のために使用された(PP D1 PBMC)。対照としてPBMCは、デバイスを通されずに、1日インキュベートされた(D1 PBMC)。別の対照として未成熟fast DCは、PBMCをGM−CSFおよびIL−4の存在下で直接培養することによって得られた(未成熟Fast DC)。さらにPBMCは、Ficoll勾配を通じた採取直後に分析された(新鮮(Ficoll)PBMC)。
【0231】
次いで細胞および対照は、HLA−DR、CD86、ICAM−1およびPLAURの発現について分析された。それらは、FSC/SSC複雑度についてさらに分析された。結果は、HLA−DRについては図20に、FSC/SSC複雑度については図21および22に示されている。要約は図23に示されている。
【0232】
結果
結果は、これらの細胞を1日インキュベートした(D1 PBMC)ことから明らかになるとおり、Ficoll勾配を通じた遠心分離に供された細胞が分化し始めるために十分な物理的な力を既に経験したと考えられることを示している。しかし活性化および分化は、デバイスを通じたプレート通過でよりはっきりする(PP D1 PDMC)。例えば8−MOPおよびUV−Aの非存在下で本発明による方法によって得られた樹状細胞は、サイトカインカクテルで得られた未成熟Fast DCよりもさらに複雑で異なるパターンを有する。
【0233】
実験6−貪食活性の決定
実験3のプレート継代ECP細胞は、T−細胞をマークする抗CD3抗体とインキュベートされ、記録される。貪食活性を有する細胞が形成されたことが観察される。
【0234】
実験7
材料および方法
メラノーママウスモデルの生成
公知のYUMM1.7メラノーマ細胞株(Theodosakis, N et al., Mol Cancer Ther.Published OnlineFirst May 6, 2015; doi:10.1158/1535-7163.MCT-15-0080)がオスC57BL/6マウスにおいてメラノーマ腫瘍を生成するために使用された。PBS中のYUMM1.7細胞10個は、腫瘍形成を誘導するために9匹の4週齢オスC57BL/6マウス右側腹皮下に注入された。
【0235】
マウスは約10mmの小さな腫瘍を確立するようにおよそ11〜13日間成長させた。次いでマウスは2個のコホートに分割された。1個のコホート(マウス4匹)は処置群(群1)と称され、第2のコホート(マウス5匹)はPBS対照群(群2)と称された。
【0236】
11〜13日後、群1についての各処置はマウスを採血し、マウス1匹あたり全血200μlを取ることによって開始された。血液は、赤血球を除去し、細胞8.33*10個/mlの量で末梢血単核細胞(PBMC)を得るためにFicoll勾配を通して遠心された。並行して、同数のYUMM1.7細胞はPBSに懸濁され、Yumm1.7細胞を図26に示すフローチャンバーを通すことによって8−MOPおよびUVA処置(4J/cmおよび100ng/ml 8−MOP)に供された。流速は0.1ml/分であった。
【0237】
次いで8−MOP/UVA処置Yumm1.7細胞は、PBMCと混合され、同じフローチャンバーを通された。流速は0.1ml/分であり、8−MOPおよびUVA処置(2J/cmおよび100ng/ml 8−MOP)に供された。
【0238】
細胞は遠心で落とされ、マウスの血清(マウス1匹あたり100μl)に再懸濁され、マウスの後眼窩洞内に静脈内注射で戻された。
【0239】
群2についてPBMCがPBS緩衝液で置き換えられたことを除いて同じ手順が実施された。この手順は次の3週間にわたって1週間に2回反復された(全体で処置6回)。続いて腫瘍容積は細胞計数によって決定された。
【0240】
結果
個々のマウスについての結果は図27に示されている。組み合わされた結果は、図28に示されている。図4は数匹の処置マウスを示している。結果は、図29に示されている。腫瘍容積の明らかな低減が群1について観察されるが、群2についてはされない。
【0241】
実験8
材料および方法
YUMM1.7細胞は、実験7に記載のとおり生成されるように皮下に注入された。
【0242】
マウスは約10mmの小さな腫瘍を確立するようにおよそ11〜13日間成長された。次いでマウスは2個のコホートに分割された。1個のコホート(マウス5匹)は処置群(群1)と称され、第2のコホート(マウス5匹)はPBS対照群(群2)と称された。
【0243】
11〜13日後、群1についての各処置はマウスを採血し、マウス1匹あたり全血200μlを取ることによって開始された。血液は、赤血球を除去し、細胞8.3*10個/mlの量でPBMCを得るためにFicoll勾配を通して遠心された。並行して、同数のYUMM1.7細胞はPBSに懸濁され、Yumm1.7細胞を図26に示すフローチャンバーを通すことによって8−MOPおよびUVA処置(4J/cmおよび100ng/ml 8−MOP)に供された。流速は0.1ml/分であった。
【0244】
次いで8−MOP/UVA処置Yumm1.7細胞はPBMCと混合され、8−MOPおよびUVAに適用しないこと以外は実験7においてと同じフローチャンバーを通された。したがってPBMCはいかなるアポトーシス性チャレンジにも供されなかった。
【0245】
細胞は遠心で落とされ、マウスの血清(マウス1匹あたり100μl)に再懸濁され、マウスの後眼窩洞内に静脈内注射で戻された。
【0246】
群2についてPBMCがPBS緩衝液で置き換えられたことを除いて同じ手順が実施された。この手順は次の3週間にわたって1週間に2回反復された(全体で処置6回)。続いて腫瘍容積は細胞計数によって決定された。
【0247】
結果
結果は図30に示されている。腫瘍容積の明らかな低減が群1について観察されるが、群2についてはされない。
【0248】
実験9
材料および方法
YUMM1.7細胞は、実験7に記載のとおり生成されるように皮下に注入された。
【0249】
マウスは約10mmの小さな腫瘍を確立するようにおよそ11〜13日間成長させた。次いでマウスは4個のコホートに分割された。1個のコホート(マウス5匹)はPBS対照群(群1)と称され、3個のコホート(群2から4、各マウス5匹)は処置群であった。
【0250】
11〜13日後、群2についての各処置はマウスを採血し、マウス1匹あたり全血200μlを取ることによって開始された。血液は、赤血球を除去し、細胞8.3*10個/mlの量でPBMCを得るためにFicoll勾配を通して遠心された。並行して、同数のYUMM1.7細胞はPBSに懸濁され、Yumm1.7細胞を図26に示すフローチャンバーを通すことによって8−MOPおよびUVA処置(4J/cmおよび100ng/ml 8−MOP)に供された。流速は0.1ml/分であった。
【0251】
Yumm1.7細胞は遠心で落とされ、マウスの血清(マウス1匹あたり100μl)に再懸濁され、PBMCを含まずに(Yumm単独)マウスの後眼窩洞内に静脈内注射で戻された。この手順は次の3週間にわたって1週間に2回反復された(全体で処置6回)。続いて腫瘍容積は細胞計数によって決定された。
【0252】
群1について純粋なPBS(Yumm細胞またはPBMCを含まない)がマウスに注射されたことを除いて同じ手順が実施された。
【0253】
群3について、PBMCは群1について記載のとおり得られた。PBMCは、PBSに再懸濁され、図1のフローチャンバーに8−MOP/UVA処置を伴わずに0.1ml/分の流速で通された。フローチャンバー通過PBMCは、遠心で落とされ、マウスの血清(マウス1匹あたり100μl)に再懸濁され、Yumm細胞を含まずにマウスの後眼窩洞内に静脈内注射で戻された(PBMC、PP w/o YUMM)。この手順は次の3週間にわたって1週間に2回反復された(全体で処置6回)。続いて腫瘍容積は細胞計数によって決定された。
【0254】
群4について、PBMCは群3と同様に得られ、図1のフローチャンバーに8−MOP/UVA処置を伴わずに0.1ml/分の流速で通された。並行して、YUMM1.7細胞はPBSに懸濁され、Yumm1.7細胞を図26に示すフローチャンバーを通すことによって8−MOPおよびUVA処置(4J/cmおよび100ng/ml 8−MOP)に供され、流速は0.1ml/分であった。
【0255】
次いで8−MOP/UVA処置Yumm1.7細胞およびPBMCは15%マウス血漿を補充したRPMI培地中、37℃、5%COで一晩同時インキュベートされた。細胞は遠心で落とされ、マウスの血清(マウス1匹あたり100μl)に再懸濁され、マウスの後眼窩洞内に静脈内注射で戻された(O/N YUMMUVA PPnoUVA)。この手順は次の3週間にわたって1週間に2回反復された(全体で処置6回)。続いて腫瘍容積は細胞計数によって決定された。
【0256】
結果
結果は図31に示されている。腫瘍容積の明らかな低減が群2および群3対対照群1について観察される。腫瘍低減は群4で最も進歩している。
なお、本発明は、以下の態様をも包含するものである。
<1> がんを処置する際の使用のための全体的に活性化された単球であって、
前記がんが抗腫瘍治療用抗体と組み合わせて処置され、
前記全体的に活性化された単球が、
a)単球を含む体外量の哺乳動物対象の血液試料を前記単球が全体的に活性化されるように物理的な力に供するステップ
を少なくとも含む方法によって得ることができ、
前記全体的に活性化された単球が少なくともHLA−DR、PLAURおよびICAM−1の発現の増加によって特徴付けられる、がんを処置する際の使用のための全体的に活性化された単球。
<2> 全体的に活性化された単球を得るための方法であって、
a)単球を含む体外量の哺乳動物対象の血液試料を前記単球が全体的に活性化されるように物理的な力に供するステップ
を少なくとも含み、
前記全体的に活性化された単球が少なくともHLA−DR、PLAURおよびICAM−1の発現の増加によって特徴付けられる方法。
<3> 前記全体的に活性化された単球が前方散乱/側方散乱複雑度によって特徴付けられる、<2>に記載の方法。
<4> 前記全体的に活性化された単球が追加的に少なくともABCA1、CCL2、CCL7、CD68、CRK、FAS、IL10、RAB7B、RALA、SCARF1、および/またはTHBS1の発現の増加によって特徴付けられる、<2>または<3>に記載の方法。
<5> 前記全体的に活性化された単球が追加的に少なくともCXCL1、CXCL2、CXCL5、CXCL16、ITGA5、ITGAV、MMP9、MSR1、OLR1、PLAU、PLAUR、SIRPa、TIMP1および/またはTNFの発現の増加によって特徴付けられる、<2>〜<4>のいずれかに記載の方法。
<6> 前記全体的に活性化された単球が表6の少なくとも3個、4個、5個、6個、7個、8個、9個、10個、15個、20個または25個のマーカーの発現の増加によって同定可能である、<2>〜<5>のいずれかに記載の方法。
<7> 前記全体的に活性化された単球がGILZ発現の増加を示さない、<2>〜<6>のいずれかに記載の方法。
<8> 前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料が、前記哺乳動物対象の血液試料内に含有される前記単球に剪断力が適用されるようにデバイスのフローチャンバーを通る前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料の流速の固定または調節可能な調整を可能にする前記デバイスの前記フローチャンバーに前記体外量の前記哺乳動物対象の血液試料を通すことによって物理的な力に供される、<2>〜<7>のいずれかに記載の方法。
<9> 前記単球が活性化血小板および/または血漿構成成分との相互作用を通じて活性化され、全体的に活性化された単球に分化するように誘導される、<2>〜<8>のいずれかに記載の方法。
<10> 前記血小板が約40:1から400:1の高さ幅比を有する前記フローチャンバーを通される、<8>または<9>に記載の方法。
<11> 前記血小板が、前記フローチャンバーを約0.1から約20.0dyn/cmの剪断力下で通される、<8>〜<10>のいずれかに記載の方法。
<12> 前記単球が、約0.1から約20.0dyn/cmの剪断力を産生するように前記フローチャンバーを約10ml/分から約200ml/分の流速で通される、<8>〜<11>のいずれかに記載の方法。
<13> 8−MOPおよびUVAなどの光活性化可能作用因子の非存在下で実施される、<8>〜<12>のいずれかに記載の方法。
<14> <2>〜<13>のいずれかに記載の方法によって得ることができる全体的に活性化された単球。
<15> がんを処置する際の使用のための、<14>に記載の全体的に活性化された単球。
<16> 処置される患者が化学療法、放射線療法またはその組合せを受けている、<15>に記載の使用のための全体的に活性化された単球。
<17> 前記がんが抗腫瘍治療用抗体と組み合わせて処置される、<15>または<16>に記載の使用のための全体的に活性化された単球。
<18> 創傷治癒における使用のための、<14>に記載の全体的に活性化された単球。
<19> 前記創傷が慢性創傷、糖尿病性創傷、静脈うっ血を含む血管不全創傷および/または手術後創傷である、<18>に記載の使用のための全体的に活性化された単球。
<20> 再生医学における使用のための、<14>、<18>または<19>に記載の全体的に活性化された単球。
<21> <20>に記載の使用のための、変性関節疾患、変性神経もしくは脳疾患、および/または(再)発毛における組織修復の刺激により全体的に活性化された単球。
<22> 貪食細胞における使用のための、<14>に記載の全体的に活性化された単球。
<23> 前記貪食された細胞が抗体コート腫瘍細胞および/またはアポトーシス性細胞を含む抗体コート細胞である、<22>に記載の使用のための全体的に活性化された単球。
【0257】
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図2
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【配列表】
[この文献には参照ファイルがあります.J-PlatPatにて入手可能です(IP Forceでは現在のところ参照ファイルは掲載していません)]