特許第6860487号(P6860487)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860487
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】抹茶香味改善剤
(51)【国際特許分類】
   A23L 27/00 20160101AFI20210405BHJP
【FI】
   A23L27/00 C
   A23L27/00 Z
【請求項の数】10
【全頁数】28
(21)【出願番号】特願2017-536399(P2017-536399)
(86)(22)【出願日】2016年8月19日
(86)【国際出願番号】JP2016074195
(87)【国際公開番号】WO2017033850
(87)【国際公開日】20170302
【審査請求日】2019年8月9日
(31)【優先権主張番号】特願2015-166714(P2015-166714)
(32)【優先日】2015年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(31)【優先権主張番号】特願2015-166724(P2015-166724)
(32)【優先日】2015年8月26日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】591011410
【氏名又は名称】小川香料株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(74)【代理人】
【識別番号】100106769
【弁理士】
【氏名又は名称】新井 信輔
(72)【発明者】
【氏名】馬場 良子
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 信
(72)【発明者】
【氏名】藤巻 雅美
(72)【発明者】
【氏名】生田 祐嗣
(72)【発明者】
【氏名】天野 陽平
(72)【発明者】
【氏名】熊沢 賢二
【審査官】 飯室 里美
(56)【参考文献】
【文献】 GUTH, H and GROSCH, W,Identification of Potent Odourants in Static Headspace Samples of Green and Black Tea Powders on the,Flavour and Fragrance Journal,1993年,Vol. 8,pp. 173-178
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L 27/00
A23F 3/00
A23L 2/00
CAplus/REGISTRY(STN)
FSTA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(1)
【化1】
(式中、破線が付いた単結合は単結合又は二重結合を示し、波線の結合はシス型もしくはトランス型又はシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドからなることを特徴とする、抹茶の風味を有する飲食品の香味改善剤。
【請求項2】
下記式(2)
【化2】
(式中、R1はメチル基又はエチル基であり、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を示す)で表されるアルキルピラジン類の少なくとも1種と、請求項1記載のエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとを含有することを特徴とする、抹茶の風味を有する飲食品の香味改善剤。
【請求項3】
2−メチルブチルアルデヒド及び桂皮酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1又は2記載の香味改善剤。
【請求項4】
ゲラニオール、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−メチル−4−メルカプト−2−ペンタノン、2−アセチルピロリン、2−エチルヘキサノール、フェニルアセトアルデヒド、β−イオノン、シス−ジャスモン、2−アセチル−2−チアゾリン、2−アセチルピリジン、アセチルピラジン、2−アセチルチアゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の香味改善剤。
【請求項5】
(Z)−1,5−オクタジエン−3−オン、3−メチルノナン−2,4−ジオン、α−イオノン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、イソオイゲノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の香味改善剤。
【請求項6】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドが4,5−エポキシ−2−デセナール又は4,5−エポキシ−2,7−デカジエナールである請求項1〜5のいずれか1項に記載の香味改善剤。
【請求項7】
アルキルピラジン類が2,6−ジメチル−3−エチルピラジン又は2,3−ジエチル−5−メチルピラジンである請求項1〜6のいずれか1項に記載の香味改善剤。
【請求項8】
食品用香料と、請求項1〜7のいずれか1項に記載の香味改善剤を含有することを特徴とする抹茶の風味を有する飲食品用の香料組成物。
【請求項9】
抹茶の風味を有する飲食品の香味改善方法であって、抹茶の風味を有する飲食品に、請求項1〜7のいずれか1項に記載の香味改善剤又は請求項8に記載の香料組成物をエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドの濃度が0.1ppt〜10ppmの範囲となるように添加することを特徴とする上記の香味改善方法。
【請求項10】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の香味改善剤又は請求項8に記載の香料組成物を抹茶の風味を有する飲食品に、エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドの濃度が0.1ppt〜10ppmとなるように添加することを特徴とする、抹茶香味が改善された抹茶の風味を有する飲食品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、抹茶の風味を有する飲食品の香味改善剤、及び抹茶の風味を有する飲食品の香味を改善する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
抹茶は、葭簾(よしず)と藁の覆い下で一定期間太陽の光を遮って栽培した茶の新芽を採取し、高温で蒸して酵素を失活させ、揉まずに乾燥して得られた荒茶から茎や葉脈を取り除き、葉揃え、選別、再乾燥を経た後、碾き臼で粉砕して得られる。新芽を太陽の光を遮って栽培することで、茶葉はテアニン等の甘味・旨味成分が増加し、タンニン等の渋み成分が減少する。また、ジメチルスルフィド(dimethyl sulfide)やヨノン(ionone)系化合物を多く含む「覆い香」と呼ばれる海苔に似た香気が生成し、抹茶の香味の特徴となっている(非特許文献1)。その一方、被覆栽培や粉砕等で製造に手間がかかるため、抹茶は煎茶に比べて非常に高価である。
【0003】
抹茶は鎌倉時代に中国から伝えられ、茶の湯に用いられてきたが、近年ではその鮮やかな緑色と優れた香味から、様々な飲食品の色彩や香味づけに用いられることが多くなっている。また、抹茶は粉末にした茶葉をそのまま飲食に供するので、ビタミンEなど茶葉に含まれる脂溶性ビタミン類などの成分を無駄なく摂取できる利点があり、健康食品の素材としても注目されている。さらに抹茶の香味を再現した香料も和洋菓子、アイスクリーム、氷菓、飲料等の飲食品の風味付けに幅広く用いられるようになっており、抹茶フレーバーはバニラやチョコレートと並んで人気の高いフレーバーとなっている。
【0004】
抹茶は人気の高いフレーバーであるにもかかわらず、上記の香気成分分析の報告(非特許文献1)がみられる他は、香料に関する具体的な技術は提案されておらず、ジメチルスルフィド等の一部の香気成分の他はキーとなる香料素材も知られていない。
特許文献1には抹茶風味を付与するものとして粉末抹茶や抹茶抽出物等が例示され、実施例ではアイスクリームの風味づけに粉末抹茶を用いたことが記載されている。この方法は自然な抹茶風味を付与するという点では優れた方法であるが、高価な抹茶の使用はコスト面で好ましくなく、また、抹茶は香りが落ちやすいので、香味の持続性という面でも好ましくない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−259447号公報
【特許文献2】特開2009−082048号公報
【特許文献3】特開2005−082771号公報
【特許文献4】特開2011−068836号公報
【特許文献5】特開2012−075354号公報
【特許文献6】特開2014−054242号公報
【特許文献7】特開2012−152172号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】川上美智子、「被覆茶の香気」、茶の研究ノート、2000年、p59−66、光生館
【非特許文献2】European Food Research and Technology,2012,235(5),881−891
【0007】
【非特許文献3】印藤元一、「合成香料 化学と商品知識」、1996年、p888−895、化学工業日報社
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、抹茶本来の香味を再現し、かつ、安価で安定性にも優れた香料を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは上記課題を解決すべく、抹茶の香気成分及び既存の抹茶香料を詳細に検討した。
その結果、これまで抹茶香料に使用されていなかった特定のエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒド類に抹茶が本来有する甘い香味を付与する効果があり、このエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒド類と特定の香料素材を併用すると、高級抹茶が有するボリュームのある濃厚感(高級感)がさらに付加されることを見出した。このエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒド類を単独又は特定の香料素材と組み合わせて既存の抹茶香料組成物に添加すると、抹茶本来の甘い香味が付与されることで抹茶香味が大幅に改善され、抹茶抽出物等に添加すると、従来は経時的に低下した天然香料の抹茶香味が保持されることを見出し、本発明を完成した。
【0010】
さらに、上記検討の結果、これまで抹茶香料に使用されていなかった特定のアルキルピラジン類に高級抹茶に特有の濃厚感(高級感)を付与する効果があり、さらにこのピラジン類と特定の香料素材を併用すると、濃厚感に加えて抹茶が本来有する甘い香味が付与されることを見出した。このピラジン類を単独又は特定の香料素材と組み合わせて既存の抹茶香料組成物に添加すると高級な抹茶をイメージさせるまろやかでボリュームのある香味が付与されることで抹茶香味が大幅に改善され、抹茶抽出物等に添加すると、天然香料の抹茶香味に高級感が付与されることを見出し、本発明を完成した。
【0011】
すなわち本発明は以下のとおりである。
〔1〕下記式(1)
【化1】
(式中、破線が付いた単結合は単結合又は二重結合を示し、波線の結合はシス型もしくはトランス型又はシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
で表されるエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドからなることを特徴とする、抹茶の風味を有する飲食品の香味改善剤。
〔2〕下記式(2)
【化2】
(式中、R1はメチル基又はエチル基であり、R2、R3、R4はそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を示す)で表されるアルキルピラジン類の少なくとも1種と、〔1〕に記載のエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとを含有することを特徴とする、抹茶の風味を有する飲食品の香味改善剤。
〔3〕2−メチルブチルアルデヒド及び桂皮酸エチルからなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有することを特徴とする〔1〕又は〔2〕に記載の香味改善剤。
〔4〕ゲラニオール、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−メチル−4−メルカプト−2−ペンタノン、2−アセチルピロリン、2−エチルヘキサノール、フェニルアセトアルデヒド、β−イオノン、シス−ジャスモン、2−アセチル−2−チアゾリン、2−アセチルピリジン、アセチルピラジン、2−アセチルチアゾールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有することを特徴とする〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の香味改善剤。
〔5〕(Z)−1,5−オクタジエン−3−オン、3−メチルノナン−2,4−ジオン、α−イオノン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、イソオイゲノールからなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物をさらに含有することを特徴とする〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の香味改善剤。
〔6〕エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドが4,5−エポキシ−2−デセナール又は4,5−エポキシ−2,7−デカジエナールである〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の香味改善剤。
〔7〕アルキルピラジン類が2,6−ジメチル−3−エチルピラジン又は2,3−ジエチル−5−メチルピラジンである〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の香味改善剤。
〔8〕食品用香料と、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の香味改善剤を含有することを特徴とする抹茶の風味を有する飲食品用の香料組成物。
〔9〕抹茶の風味を有する飲食品の香味改善方法であって、抹茶の風味を有する飲食品に、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の香味改善剤をエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドの濃度が0.1ppt〜10ppmの範囲となるように添加することを特徴とする上記の香味改善方法。
〔10〕抹茶の風味を有する飲食品であって、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の香味改善剤が添加されており、エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドの含有量が0.1ppt〜10ppmの範囲であることを特徴とする上記の飲食品。
【発明の効果】
【0012】
本発明の香味改善剤を少量添加することで抹茶風味飲食品に抹茶が本来有する甘い香味を付与することができ、さらに、高級抹茶が有するボリュームのある濃厚感を付加できるので、抹茶香味を大幅に改善することができる。また、経時的に低下した抹茶や抹茶由来の天然香料の香味を保持し、抹茶風味の持続性を高めることができる。
【0013】
さらに、香味改善剤として、エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとアルキルピラジン類を組み合わせて使用すると、抹茶本来の甘い香味が極めて強く、且つとボリュームのある濃厚感(高級感)が一層強く感じられるように改善することができる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下に、本発明をその実施の形態にあわせて具体的に説明する。
〔1〕香味改善剤の有効成分
本発明の香味改善剤は、下記一般式(1)で表されるエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒド、及び/又は、下記一般式(2)で表されるアルキルピラジン類を有効成分として含有する。
【化3】
(式中、破線が付いた単結合は単結合又は二重結合を示し、波線の結合はシス型もしくはトランス型又はシス型とトランス型の任意の割合の混合物を示す)
【0015】
【化4】
(上記式中、Rはメチル基又はエチル基であり、R、R、Rはそれぞれ独立して水素原子、メチル基又はエチル基を示す)
【0016】
(A)エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒド
上記式(1)の化合物は、アルデヒド基から4位と5位の炭素の間にエポキシ基を有し、2位と3位の炭素の間に二重結合を有する4,5−エポキシ−2−デセナールと、7位と8位の炭素の間に二重結合をさらに有する4,5−エポキシ−2,7−デカジエナールに分けることができる。いずれの化合物も4位と5位の炭素原子の立体構造には制限はなく、(4S,5S)、(4S,5R)、(4R,5S)、(4R,5R)のいずれであってもよい。また、2位と3位の間の二重結合はE体、Z体いずれでもよいが、入手が容易なE体の使用が好ましい。7位と8位の間の二重結合はE体、Z体いずれであってもよい。
【0017】
4,5−エポキシ−2−デセナールは2E体が柚子に極微量含まれ、和柑橘類の香気や風味を著しく増強させることが報告されている(特許文献2)。また、trans−4,5−エポキシ−2E−デセナールは甘さのあるシトラス様の香りを有しているが、cis−4,5−エポキシ−2E−デセナールはメタリック様、アルデヒド様、みずみずしい果汁感を想起させる香気香味特徴を有し、trans体よりもアルデヒド様で甘味への寄与度が高いことも報告されている(特許文献3)。4,5−エポキシ−2−デセナールについては他にもイグサ様香料組成物(特許文献4)、豆乳又は豆乳含有飲食品(特許文献5)、味噌含有飲食品の香味改善剤組成物(特許文献6)、ワサビ風味増強剤(特許文献7)などが提案されている。しかし、4,5−エポキシ−2−デセナールと4,5−エポキシ−2,7−デカジエナールがいずれも抹茶本来の甘い香味を付与し、抹茶の香味を改善する効果があることは知られていなかった。
【0018】
本発明で使用する式(1)のエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドは柚子等から見出されているが、存在量がごく微量であるため、化学的に合成したものを用いるのが好ましい。例えば4,5−エポキシ−2−デセナールは、特許文献5記載の方法で合成したものを用いることができ、4,5−エポキシ−2,7−デカジエナールは非特許文献2記載の方法で合成したものを用いることができる。
【0019】
(B)アルキルピラジン類
上記式(2)の化合物は、ピラジン環の炭素原子がメチル基又はエチル基で置換された1〜4置換ピラジン類であり、具体的には、2−メチルピラジン、2−エチルピラジン、2,3−ジメチルピラジン、2,5−ジメチルピラジン、2,6−ジメチルピラジン、2,3,5−トリメチルピラジン、2,3,5,6−テトラメチルピラジン、2−エチル−3−メチルピラジン、2−エチル−5−メチルピラジン、2,6−ジメチル−3−エチルピラジン、2,5−ジメチル−3−エチルピラジン、2,3−ジメチル−5−エチルピラジン、2,3−ジエチルピラジン、2,5−ジエチルピラジン、2,6−ジエチルピラジン、2,3−ジエチル−5−メチルピラジン、2,5−ジエチル−3−メチルピラジン、2,6−ジエチル−3−メチルピラジン等を挙げることができる。
アルキルピラジン類はコーヒー、ナッツ等の香気成分として報告されており(非特許文献3)、香料素材として飲料、冷菓、焼菓子、肉製品等に幅広く使用されている。しかし、抹茶の香気成分としての報告はなく、抹茶用の香料素材として用いられた例も知られていなかった。本発明では上記式(2)のアルキルピラジン類を抹茶風味飲食品に添加することで、高級抹茶が有するボリュームのある濃厚感(高級感)が付与される。なお、高級感とは、甘味を伴い、奥行き・深みのある複雑な味わいを意味する。上記式(2)のアルキルピラジン類は化学的に合成して得ることも可能であるが、シグマアルドリッチジャパン合同会社等から購入することもできる。
【0020】
〔2〕付加成分
本発明の香味改善剤には、上記の有効成分に加え、高級抹茶の高級感や抹茶本来の甘い香味を増強するため、以下の付加成分を配合することができる。
〔A〕高級感を付与する香料素材
上記香味改善剤に特定の香料素材を併用すると、高級抹茶が有するボリュームのある濃厚感(高級感)がさらに付加される。高級感とは、甘味を伴い、奥行き・深みのある複雑な味わいを意味する。
このような香料素材としてゲラニオール、p−ヒドロキシベンズアルデヒド、4−メチル−4−メルカプト−2−ペンタノン、2−メチルブチルアルデヒド、桂皮酸エチル、2−アセチルピロリン、2−エチルヘキサノール、フェニルアセトアルデヒド、β−イオノン、シス−ジャスモン、2−アセチル−2−チアゾリン、2−アセチルピリジン、アセチルピラジン、2−アセチルチアゾールを挙げることができる。これらは従来から香料として使用されているものであるが、抹茶に高級感を付与することについては全く知られていない。これらの香料素材は一般に市販されているものを使用することができる。このうち、2−メチルブチルアルデヒド、桂皮酸エチルが特に好ましい。
【0021】
〔B〕甘い香味を付与する香料素材
上記香味改善剤に特定の香料素材を併用すると、高級感に加えて抹茶本来の甘い香味が付加される。このような香料素材として(Z)−1,5−オクタジエン−3−オン、3−メチルノナン−2,4−ジオン、α−イオノン、2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン、イソオイゲノールを挙げることができる。これらは従来から香料として使用されているものであるが、抹茶本来の甘い香味を付与することについては全く知られていない。これらの香料素材は一般に市販されているものを使用することができる。
【0022】
〔3〕抹茶の風味を有する飲食品
本発明の抹茶風味飲食品は、抹茶を添加した飲食品、及び抹茶そのものは含まれないが香料で抹茶の風味を付与した飲食品である。
具体的には、茶飲料、乳飲料類、炭酸飲料類等の飲料類;アイスクリーム類、シャーベット類、アイスキャンディー類等の冷菓類;ヨーグルト類、チーズ類等の発酵乳製品;和洋菓子類、焼菓子類、ジャム類、チューインガム類、パン類、コーヒー、ココア、紅茶、お茶、タバコ等の嗜好品類;プリン類、ゼリー類、ババロア類、ムース類等のデザート類;和風スープ類、洋風スープ類等のスープ類;風味調味料;各種インスタント飲料乃至食品類、各種スナック食品類などが例示される。
【0023】
本発明のエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドからなる香味改善剤を抹茶風味飲食品に添加する場合の添加量は、一般的には飲食品中に0.1ppt〜10ppm、好ましくは0.5ppt〜1ppm、さらに好ましくは50ppt〜500ppbの範囲を例示することができる。添加量が0.1ppt未満の場合は香味改善効果が十分でない場合があり、添加量が10ppmを超えた場合は当該化合物の香味が浮き出る可能性がある。
【0024】
本発明のアルキルピラジン類からなる香味改善剤を抹茶風味飲食品に添加する場合の添加量は、一般的には飲食品中に0.01ppt〜1.0ppm、好ましくは0.5ppt〜500ppb、さらに好ましくは1ppt〜1ppbの範囲を例示することができる。添加量が0.01ppt未満の場合は香味改善効果が十分でない場合があり、添加量が1.0ppmを超えた場合は当該化合物の香味が浮き出る可能性がある。
【0025】
香味改善剤として上記のアルキルピラジン類に、さらにエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを組み合わせて使用する場合において、エポキシアルデヒド類が4,5−エポキシ−2−デセナールのときは、一般に1ppt〜200ppb、好ましくは20ppt〜2ppbである。また、エポキシアルデヒド類が4,5−エポキシ−2,7−デカジエナールのときは、一般に1ppt〜50ppm、好ましくは50ppt〜500ppbである。
【0026】
本発明の香味改善剤と高級感を付与する香料素材を組み合わせて香味改善剤とする場合、組み合わせる香料素材の飲食品への添加量は素材により異なるが、一般的な添加量と好ましい添加量は表1のようになる。
【0027】
【表1】
【0028】
本発明の香味改善剤と甘い香味を付与する香料素材を組み合わせて香味改善剤とする場合、組み合わせる香料素材の飲食品への添加量は素材により異なるが、一般的な添加量と好ましい添加量は表2のようになる。
【0029】
【表2】
【0030】
〔3〕香料組成物
本発明の香味改善剤はそのまま抹茶風味飲食品に添加して使用することができるが、香味改善剤と他の食品用香料とを組み合わせた香料組成物として抹茶風味飲食品に添加して使用することもできる。
本発明の香料組成物に配合される香料成分としては、通常の食品用香料であれば特に制限は無く、抹茶から溶媒抽出や蒸留によって香気成分を回収した天然香料や、かぶせ茶の香気成分として報告されている合成香料等の他、用途や目的に応じて種々の天然あるいは合成香料素材を組み合わせて使用することができる。
具体的には抹茶らしさが出る成分として、ジャスミンラクトン、フェニル酢酸、バニリン、γ−ヘキサノライド、(E)−2−ノネナール、リナロール、(E,E)−2,4−ノナジエナール、(E,E)−2,4−デカジエナール、(E,E,Z)−2,4,6−ノナトリエナール、(E,E,E)−2,4,6−ノナトリエナール、クマリン、インドール、ダマセノン、3−ヒドロキシ−4,5−ジメチル−2(5H)−フラノンを挙げることができる。
また、ロースト感を付与する成分として、2−アセチルピロール、2−メトキシフェノール、オイゲノール、2−メトキシ−4−ビニルフェノールを挙げることができる。
その他の成分として、(Z)−3−ヘキサナール、1−オクテン−3−オン、1,5−オクタジエン−3−オン、(Z)−3−ヘキセン酸、(Z,Z)−3,6−ノナジエナール、(E,Z)−2,6−ノナジエナールを挙げることができ、一種又は二種以上を使用することができるが、これに制限されるものではない。
【0031】
本発明の香味改善剤を食品用香料に添加して香料組成物を調製する場合の添加量は、一般的には香味改善剤の有効成分であるエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドの濃度として食品用香料中に0.1ppb〜1質量%、好ましくは0.5ppb〜500ppm、さらに好ましくは 5ppb〜50ppmの範囲を例示することができる。添加量が0.1ppb未満の場合は香味改善効果が十分でない場合があり、添加量が1質量%を超えた場合は香味改善剤化合物の香味が浮き出る可能性がある。
香味改善剤の有効成分であるアルキルピラジン類の濃度として食品用香料中に0.1ppb〜0.1質量%、好ましくは0.5ppb〜500ppm、さらに好ましくは5ppb〜50ppmの範囲を例示することができる。添加量が0.1ppb未満の場合は香味改善効果が十分でない場合があり、添加量が0.1質量%を超えた場合は香味改善剤化合物の香味が浮き出る可能性がある。
なお、香味改善剤の有効成分として、エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとアルキルピラジン類を組み合わせて使用する場合は、両者を合計した濃度が上記範囲内であることが好ましい。
【0032】
また、エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドからなる香味改善剤を含む香味料組成物、或いはアルキルピラジン類からなる香味改善剤を含む香味料組成物を抹茶風味飲食品に添加する場合の添加量(賦香率)は、一般的には飲食品中に0.001質量%〜10質量%、好ましくは0.01質量%〜1質量%、さらに好ましくは0.05質量%〜0.5質量%の範囲を例示することができる。添加量が0.001質量%未満の場合は香味改善効果が十分でない場合があり、添加量が10質量%を超えた場合は当該化合物の香味が浮き出る可能性がある。
【0033】
さらに、本発明の香味改善剤や香味料組成物には、飲食品用として通常用いられている他の成分を、香味改善剤の効果を損なわない範囲で、付加的に添加することができる。
付加的に用いられる任意成分としては、例えば溶剤としてエタノールや水、甘味料、着色料、保存料、増粘安定剤、酸化防止剤、苦味料、酸味料、乳化剤、強化剤、製造用剤、賦形剤、崩壊剤、結合剤、滑沢剤、コーティング剤及び可塑剤などであり、これらを添加して各種製剤・剤型として用いることもできる。
【実施例】
【0034】
以下に実施例をあげて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(A)香味改善剤の有効成分がエポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドである場合
〔実施例A1〕(抹茶入り煎茶飲料)
4,5−エポキシ−2−デセナールの200ppbエタノール溶液を調製し、抹茶入り煎茶緑茶抽出液(市販の抹茶入り煎茶粉末に水を加え0.3質量%に調製したもの)に0.1質量%添加し、本発明の香味改善剤を0.2ppb含有する抹茶入り煎茶緑茶飲料aを調製した。
【0035】
〔実施例A2〕(抹茶入り煎茶飲料)
4,5−エポキシ−2,7−デカジエナールの500ppbエタノール溶液を調製し、抹茶入り煎茶緑茶抽出液(市販の抹茶入り煎茶粉末に水を加え0.3質量%に調製したもの)に0.1質量%添加し、本発明の香味改善剤を0.5ppb含有する抹茶入り煎茶緑茶飲料bを調製した。
【0036】
〔比較例A1〕(抹茶入り煎茶飲料)
実施例A1の4,5−エポキシ−2−デセナールの代わりにエチルアルコールを配合して本発明の香味改善剤を含有しない抹茶入り煎茶緑茶飲料cを調製した。
【0037】
〔試験例A1〕
本発明の香味改善剤を含有する抹茶入り煎茶緑茶飲料a及びb、香味改善剤を含有しない抹茶入り煎茶緑茶飲料cについて9名の専門パネルにより、抹茶の甘い香味、濃厚感、余韻の豊かさを以下の7段階で評価した。

1点(極めて弱い)、2点(弱い)、3点(やや弱い)、4点(普通)、5点(やや強い)、6点(強い)、7点(極めて強い)。

結果を表3に示した。表中の「抹茶の甘い香味」、「濃厚感」、「余韻の豊かさ」の点数は9名の専門パネルの平均点である。なお、改善率(%)は煎茶緑茶飲料cの合計点数に対する煎茶緑茶飲料a又はbの合計点数の百分率(a又はbの合計点数/cの合計点数×100)で表される。
【0038】
【表3】
【0039】
その結果、専門パネルの全員が本発明品である香味改善剤を添加した抹茶入り煎茶緑茶飲料a及びbは、抹茶の有する自然な甘さ、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなった結果、抹茶入り煎茶緑茶飲料の香味が改善され嗜好性が向上すると評価した。
【0040】
〔香料組成物〕
表4の処方により実施例A3の香料組成物aと実施例A4の香料組成物bを調製した。また、比較例A2として4,5−エポキシ−2−デセナールと4,5−エポキシ−2,7−デカジエナールのいずれも添加しない香料組成物cを調製した。
【0041】
【表4】
【0042】
〔実施例A5〕(抹茶ミルク飲料)
抹茶ミルク飲料(牛乳にショ糖8質量%、市販の抹茶0.3質量%を加え調製したもの)に実施例A3の香料組成物aを0.1質量%添加し、抹茶ミルク飲料aを調製した。
【0043】
〔実施例A6〕(抹茶ミルク飲料)
抹茶ミルク飲料(牛乳にショ糖8質量%、市販の抹茶0.3質量%を加え調製したもの)に実施例A4の香料組成物bを0.1質量%添加し、抹茶ミルク飲料bを調製した。
【0044】
〔比較例A3〕(抹茶ミルク飲料)
実施例A5、A6と同様に調製した抹茶ミルク飲料に比較例A2の香料組成物cを0.1質量%添加し、実施例A5と同様にして抹茶ミルク飲料cを調製した。
【0045】
〔試験例A2〕
実施例A5、A6の抹茶ミルク飲料a、b及び比較例A3の抹茶ミルク飲料cについて、9名の専門パネルにより、抹茶の甘い香味、濃厚感、余韻の豊かさを以下の7段階で評価した。

1点(極めて弱い)、2点(弱い)、3点(やや弱い)、4点(普通)、5点(やや強い)、6点(強い)、7点(極めて強い)。

結果を表5に示した。なお、表中の点数と改善率は試験例A1と同様である。
【0046】
【表5】
【0047】
その結果、専門パネルの全員が実施例A3、A4の香料組成物を添加した抹茶ミルク飲料a、抹茶ミルク飲料bは、抹茶の有する自然な甘さ、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなった結果、抹茶ミルク飲料の香味が改善され嗜好性が向上すると評価した。
【0048】
〔実施例A7〕(抹茶入りパン)
強力粉1400質量部に水に溶解させた生イースト40質量部を加えてよく撹拌し、28℃で4時間発酵させた。得られた生地に強力粉600質量部、砂糖100質量部、市販の抹茶50質量部、食塩30質量部、実施例A3で調製した香料組成物aを0.1質量部添加し、生地をよくこねた後、容器に詰め、38℃で40分間発酵後、220℃で40分間焼成し、抹茶入りパン1を得た。
同様にして実施例A4で調製した香料組成物bを0.1質量部添加した抹茶入りパン2、及び比較例A2で調製した香料組成物cを0.1質量部添加した抹茶入りパン3を得た。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶入りパン1および抹茶入りパン2の方が抹茶の有する自然な甘さ、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0049】
〔実施例A8〕(抹茶入りハードビスケット)
ショートニング15質量部、砂糖30質量部、全卵3質量部、食塩1質量部、市販の抹茶0.5質量部、実施例A3で調製した香料組成物aを0.1質量部添加し、30分間撹拌後、30分間エージングを行った。得られた生地を型に流し入れ、220℃、5分焼成し、抹茶入りハードビスケット1を得た。
同様にして実施例A4で調製した香料組成物bを0.1質量部添加した抹茶入りハードビスケット2、及び比較例A2で調製した香料組成物cを0.1質量部添加した抹茶入りハードビスケット3を得た。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶入りハードビスケット1及び抹茶入りハードビスケット2の方が抹茶の有する自然な甘さ、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0050】
〔実施例A9〕(抹茶風味アイスクリーム)
牛乳30質量部、水あめ11質量部、全脂加糖練乳10質量部、無塩バター7.5質量部、脱脂粉乳2.5質量部、水34.4質量部を合わせて湯浴にて攪拌溶解し、砂糖2.5質量部、乳化安定剤0.6質量部を添加、加熱攪拌した後、乳化を行いながら、実施例A3で調製した香料組成物aを0.2質量部添加し、攪拌混合した後、エージングを行い、抹茶風味アイスクリーム1を調製した。
同様にして実施例A4で調製した香料組成物bを0.2質量部添加した抹茶風味アイスクリーム2、及び比較例A2で調製した香料組成物cを0.2質量部添加した抹茶風味アイスクリーム3を調製した。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶風味アイスクリーム1及び抹茶風味アイスクリーム2の方が抹茶の有する自然な甘さ、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0051】
〔実施例A10〕(抹茶風味プリン)
全脂加糖練乳15質量部、果糖ぶどう糖液糖3質量部を蒸留水に溶解し、予め蒸留水に分散させていた全脂粉乳2質量部、脱脂粉乳1質量部を加え加熱し40℃付近で、上白糖3.5質量部、安定剤0.7質量部、乳化剤0.02質量部を加え80℃まで加温した。コーンスターチ0.3部を加えた後、80℃で15分間殺菌した。お湯で100質量部に調製し、クリアミックスにて乳化した。これに実施例A3で調製した香料組成物aを0.2質量部添加して撹拌後、ガラス容器にて冷却して抹茶風味プリン1を調製した。
同様にして実施例A4で調製した香料組成物bを0.2質量部添加した抹茶風味プリン2、及び比較例2で調製した香料組成物cを0.2質量部添加した抹茶風味プリン3を調製した。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶風味プリン1および抹茶風味プリン2の方が抹茶の有する自然な甘さ、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0052】
〔実施例A11〕(抹茶入りハードキャンディー)
砂糖60質量部、水あめ40質量部、水35質量部を合わせて155℃まで加熱した後、130℃まで冷却し、市販の抹茶5質量部、実施例A3で調製した香料組成物aを0.2質量部添加し、混合、成型し、抹茶入りハードキャンディー1、を調製した。
同様にして実施例A4で調製した香料組成物bを0.2質量部添加した抹茶入りハードキャンディー2、及び比較例A2で調製した香味料組成物cを0.2質量部添加した抹茶入りハードキャンディー3を調製した。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶入りハードキャンディー1及び抹茶入りハードキャンディー2の方が抹茶の有する自然な甘さ、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0053】
〔実施例A12〕(抹茶入りチョコレート)
刻んだホワイトチョコレート100質量部を湯煎(約50℃)にて溶解した後、市販の抹茶5質量部、実施例A3で調製した香料組成物aを0.2質量部添加し、良く攪拌後に冷却して成型し本発明の抹茶入りチョコレート1を調製した。
同様にして実施例A4で調製した香料組成物bを0.2質量部添加した抹茶入りチョコレート2、及び比較例A2で調製した香料組成物cを0.2質量部添加した抹茶入りチョコレート3を調製した。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶入りチョコレート1及び抹茶入りチョコレート2の方が抹茶の有する自然な甘さ、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0054】
〔実施例A13〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材としてゲラニオールを表4の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、抹茶飲料(牛乳250質量部、砂糖50質量部、抹茶5質量部を混合し、水で総量を1000質量部に調製したもの)に0.2%の賦香率で添加した(飲料中のゲラニオール濃度200ppb)。
これを7名の専門パネルにより、抹茶らしさ(抹茶が本来有する甘い香味)と高級感について、以下の4段階で評価した。結果を表6に示した。

×(弱い)、△(普通)、○(強い)、◎(極めて強い)
【0055】
【表6】
【0056】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとゲラニオールを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0057】
〔実施例A14〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材としてp−ヒドロキシベンズアルデヒドを表4の処方に対して10質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.5%の賦香率で添加した(飲料中のp−ヒドロキシベンズアルデヒド濃度50ppm)。
これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表7に示した。
【0058】
【表7】
【0059】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとp−ヒドロキシベンズアルデヒドを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0060】
〔実施例A15〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材として4−メチル−4−メルカプト−2−ペンタノン(0.1%エタノール溶液)を表4の処方に対して0.1質量部(4−メチル−4−メルカプト−2−ペンタノン0.0001質量部に相当)ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.02%の賦香率で添加した(飲料中の4−メチル−4−メルカプト−2−ペンタノン濃度20ppt)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表8に示した。
【0061】
【表8】
【0062】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドと4−メチル−4−メルカプト−2−ペンタノンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0063】
〔実施例A16〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材として2−メチルブチルアルデヒドを表4の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.05%の賦香率で添加した(飲料中の2−メチルブチルアルデヒド濃度50ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表9に示した。
【0064】
【表9】
【0065】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドと2−メチルブチルアルデヒドを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0066】
〔実施例A17〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材として桂皮酸エチルを表4の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.005%の賦香率で添加した(飲料中の桂皮酸エチル濃度5ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表10に示した。
【0067】
【表10】
【0068】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドと桂皮酸エチルを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0069】
〔実施例A18〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材として2−アセチルピロリン(0.1%エタノール溶液)を表4の処方に対して10質量部(2−アセチルピロリン0.01質量部に相当)ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.005%の賦香率で添加した(飲料中の2−アセチルピロリン濃度500ppt)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表11に示した。
【0070】
【表11】
【0071】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドと2−アセチルピロリンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさが強く高級感は極めて強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0072】
〔実施例A19〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材として2−エチルヘキサノールを表4の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.2%の賦香率で添加した(飲料中の2−エチルヘキサノール濃度200ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表12に示した。
【0073】
【表12】
【0074】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドと2−エチルヘキサノールを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0075】
〔実施例A20〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材としてフェニルアセトアルデヒド(20%エタノール溶液)を表4の処方に対して0.1質量部(フェニルアセトアルデヒド0.02質量部に相当)ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.1%の賦香率で添加した(飲料中のフェニルアセトアルデヒド濃度20ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表13に示した。
【0076】
【表13】
【0077】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとフェニルアセトアルデヒドを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさが強く高級感は極めて強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0078】
〔実施例A21〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材としてβ−イオノンを表4の処方に対して0.001質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.02%の賦香率で添加した(飲料中のβ−イオノン濃度200ppt)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表14に示した。
【0079】
【表14】
【0080】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとβ−イオノンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0081】
〔実施例A22〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材としてシス−ジャスモンを表4の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.01%の賦香率で添加した(飲料中のシス−ジャスモン濃度10ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表15に示した。
【0082】
【表15】
【0083】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとシス−ジャスモンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0084】
〔実施例A23〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材として2−アセチル−2−チアゾリン(1%エタノール溶液)を表4の処方に対して0.1質量部(2−アセチル−2−チアゾリン0.001質量部に相当)ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.01%の賦香率で添加した(飲料中の2−アセチル−2−チアゾリン濃度100ppt)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表16に示した。
【0085】
【表16】
【0086】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドと2−アセチル−2−チアゾリンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0087】
〔実施例A24〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材として2−アセチルピリジンを表4の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.01%の賦香率で添加した(飲料中の2−アセチルピリジン濃度10ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表17に示した。
【0088】
【表17】
【0089】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドと2−アセチルピリジンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0090】
〔実施例A25〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材としてアセチルピラジンを表4の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.01%の賦香率で添加した(飲料中のアセチルピラジン濃度10ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表18に示した。
【0091】
【表18】
【0092】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドとアセチルピラジンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0093】
〔実施例A26〕
実施例A3、A4及び比較例A2の香料組成物a〜cに高級感を付与する香料素材として2−アセチルチアゾールを表4の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例A13と同じ抹茶飲料に0.01%の賦香率で添加した(飲料中の2−アセチルチアゾール濃度10ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例A13と同様の方法で評価した。結果を表19に示した。
【0094】
【表19】
【0095】
エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドと2−アセチルチアゾールを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、抹茶らしさ及び高級感が強いと評価した。エポキシ化脂肪族不飽和アルデヒドを含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は抹茶らしさが弱く、高級感も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0096】
(B)有効成分がアルキルピラジン類の場合
〔実施例B1〕(抹茶入り煎茶飲料)
2,6−ジメチル−3−エチルピラジンの100ppbエタノール溶液を調製し、抹茶入り煎茶緑茶抽出液(市販の抹茶入り煎茶粉末に水を加え0.3質量%に調製したもの)に0.1質量%添加し、本発明の香味改善剤を0.1ppb含有する抹茶入り煎茶緑茶飲料aを調製した。
【0097】
〔実施例B2〕(抹茶入り煎茶飲料)
2,3−ジエチル−5−メチルピラジンの100ppbエタノール溶液を調製し、抹茶入り煎茶緑茶抽出液(市販の抹茶入り煎茶粉末に水を加え0.3質量%に調製したもの)に0.1質量%添加し、本発明の香味改善剤を0.1ppb含有する抹茶入り煎茶緑茶飲料bを調製した。
【0098】
〔比較例B1〕(抹茶入り煎茶飲料)
実施例B1の2,6−ジメチル−3−エチルピラジンの代わりにエチルアルコールを配合して本発明の香味改善剤を含有しない抹茶入り煎茶緑茶飲料cを調製した。
【0099】
〔試験例B1〕
本発明の香味改善剤を含有する抹茶入り煎茶緑茶飲料a及びb、香味改善剤を含有しない抹茶入り煎茶緑茶飲料cについて9名の専門パネルにより、抹茶の甘い香味、濃厚感、余韻の豊かさを以下の7段階で評価した。

1点(極めて弱い)、2点(弱い)、3点(やや弱い)、4点(普通)、5点(やや強い)、6点(強い)、7点(極めて強い)。

結果を表20に示した。表中の「抹茶の甘い香味」、「濃厚感」、「余韻の豊かさ」の点数は9名のパネルの平均点である。なお、改善率(%)は煎茶緑茶飲料cの合計点数に対する煎茶緑茶飲料a又はbの合計点数の百分率(a又はbの合計点数/cの合計点数×100)で表される。
【0100】
【表20】
【0101】
その結果、専門パネルの全員が、本発明品である香味改善剤を添加した抹茶入り煎茶緑茶飲料a、抹茶入り煎茶緑茶飲料bは、これまで抹茶香料に使用されていなかった特定のアルキルピラジン類に高級抹茶に特有の「濃厚感」を付与する効果があることを見出した。
【0102】
〔香料組成物〕
表21の処方により実施例B3の香料組成物aと実施例B4の香料組成物bを調製した。また、比較例B2として2,6−ジメチル−3−エチルピラジンと2,3−ジエチル−5−メチルピラジンのいずれも添加しない香料組成物cを調製した。
【0103】
【表21】
【0104】
〔実施例B5〕(抹茶ミルク飲料)
抹茶ミルク飲料(牛乳にショ糖8質量%、市販の抹茶0.3質量%を加え調製したもの)に実施例B3の香料組成物aを0.1質量%添加し、抹茶ミルク飲料aを調製した。
【0105】
〔実施例B6〕(抹茶ミルク飲料)
抹茶ミルク飲料(牛乳にショ糖8質量%、市販の抹茶0.3質量%を加え調製したもの)に実施例B4の香料組成物bを0.1質量%添加し、抹茶ミルク飲料bを調製した。
【0106】
〔比較例B3〕(抹茶ミルク飲料)
実施例B5、B6と同様に調製した抹茶ミルク飲料に比較例B2の香料組成物cを0.1質量%添加し、実施例B5と同様にして抹茶ミルク飲料cを調製した。
【0107】
〔試験例B2〕
実施例B5、B6の抹茶ミルク飲料a、b及び比較例B3の抹茶ミルク飲料cについて、9名の専門パネルにより、抹茶の高級感、濃厚感、余韻の豊かさを以下の7段階で評価した。

1点(極めて弱い)、2点(弱い)、3点(やや弱い)、4点(普通)、5点(やや強い)、6点(強い)、7点(極めて強い)。

結果を表22に示した。なお、表中の点数と改善率は試験例B1と同様である。
【0108】
【表22】
【0109】
その結果、専門パネルの全員が実施例B3、B4の香料組成物を添加した抹茶ミルク飲料a、抹茶ミルク飲料bは、抹茶の高級感、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなった結果、抹茶ミルク飲料の香味が改善され嗜好性が向上すると評価した。
【0110】
〔実施例B7〕(抹茶入りパン)
強力粉1400質量部に水に溶解させた生イースト40質量部を加えてよく撹拌し、28℃で4時間発酵させた。得られた生地に強力粉600質量部、砂糖100質量部、市販の抹茶50質量部、食塩30質量部、実施例B3で調製した香料組成物aを0.1質量部添加し、生地をよくこねた後、容器に詰め、38℃で40分間発酵後、220℃で40分間焼成し、抹茶入りパン1を得た。
同様にして実施例B4で調製した香料組成物bを0.1質量部添加した抹茶入りパン2、及び比較例B2で調製した香料組成物cを0.1質量部添加した抹茶入りパン3を得た。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶入りパン1および抹茶入りパン2の方が抹茶の高級感、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0111】
〔実施例B8〕(抹茶入りハードビスケット)
ショートニング15質量部、砂糖30質量部、全卵3質量部、食塩1質量部、市販の抹茶0.5質量部、実施例B3で調製した香料組成物aを0.1質量部添加し、30分間撹拌後、30分間エージングを行った。
得られた生地を型に流し入れ、220℃、5分焼成し、抹茶入りハードビスケット1を得た。同様にして実施例B4で調製した香料組成物bを0.1質量部添加した抹茶入りハードビスケット2、及び比較例B2で調製した香料組成物cを0.1質量部添加した抹茶入りハードビスケット3を得た。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶入りハードビスケット1及び抹茶入りハードビスケット2の方が抹茶の高級感、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0112】
〔実施例B9〕(抹茶風味アイスクリーム)
牛乳30質量部、水あめ11質量部、全脂加糖練乳10質量部、無塩バター7.5質量部、脱脂粉乳2.5質量部、水34.4質量部を合わせて湯浴にて攪拌溶解し、砂糖2.5質量部、乳化安定剤0.6質量部を添加、加熱攪拌した後、乳化を行いながら、実施例B3で調製した香料組成物aを0.2質量部添加し、攪拌混合した後、エージングを行い、抹茶風味アイスクリーム1を調製した。
同様にして実施例B4で調製した香料組成物bを0.2質量部添加した抹茶風味アイスクリーム2、及び比較例B2で調製した香料組成物cを0.2質量部添加した抹茶風味アイスクリーム3を調製した。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶風味アイスクリーム1及び抹茶風味アイスクリーム2の方が抹茶の高級感、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0113】
〔実施例B10〕(抹茶風味プリン)
全脂加糖練乳15質量部、果糖ぶどう糖液糖3質量部を蒸留水に溶解し、予め蒸留水に分散させていた全脂粉乳2質量部、脱脂粉乳1質量部を加え加熱し40℃付近で、上白糖3.5質量部、安定剤0.7質量部、乳化剤0.02質量部を加え80℃まで加温した。コーンスターチ0.3部を加えた後、80℃で15分間殺菌した。お湯で100質量部に調製し、クリアミックスにて乳化した。これに実施例B3で調製した香料組成物aを0.2質量部添加して撹拌後、ガラス容器にて冷却して抹茶風味プリン1を調製した。
同様にして実施例B4で調製した香料組成物bを0.2質量部添加した抹茶風味プリン2、及び比較例B2で調製した香料組成物cを0.2質量部添加した抹茶風味プリン3を調製した。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶風味プリン1および抹茶風味プリン2の方が抹茶の高級感、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0114】
〔実施例B11〕(抹茶入りハードキャンディー)
砂糖60質量部、水あめ40質量部、水35質量部を合わせて155℃まで加熱した後、130℃まで冷却し、市販の抹茶5質量部、実施例B3で調製した香料組成物aを0.2質量部添加し、混合、成型し、抹茶入りハードキャンディー1、を調製した。
同様にして実施例B4で調製した香料組成物bを0.2質量部添加した抹茶入りハードキャンディー2、及び比較例B2で調製した香味料組成物cを0.2質量部添加した抹茶入りハードキャンディー3を調製した。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶入りハードキャンディー1及び抹茶入りハードキャンディー2の方が抹茶の高級感、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0115】
〔実施例B12〕(抹茶入りチョコレート)
刻んだホワイトチョコレート100質量部を湯煎(約50℃)にて溶解した後、市販の抹茶5質量部、実施例B3で調製した香料組成物aを0.2質量部添加し、良く攪拌後に冷却して成型し本発明の抹茶入りチョコレート1を調製した。
同様にして実施例B4で調製した香料組成物bを0.2質量部添加した抹茶入りチョコレート2、及び比較例B2で調製した香料組成物cを0.2質量部添加した抹茶入りチョコレート3を調製した。
7名の専門パネルによる官能評価試験を行ったところ、抹茶入りチョコレート1及び抹茶入りチョコレート2の方が抹茶の高級感、濃厚感、余韻が強く感じられ、風味が豊かとなり嗜好性が向上した。
【0116】
〔実施例B13〕
実施例B3、B4及び比較例B2の香料組成物a〜cに甘い香味を付与する香料素材として(Z)−1,5−オクタジエン−3−オン(1%エタノール溶液)を表21の処方に対して0.1質量部((Z)−1,5−オクタジエン−3−オン0.001質量部に相当)ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、抹茶飲料(牛乳250質量部、砂糖50質量部、抹茶5質量部を混合し、水で総量を1000質量部に調製したもの)に0.05%の賦香率で添加した(飲料中の(Z)−1,5−オクタジエン−3−オン濃度500ppt)。これを7名の専門パネルにより、高級感と抹茶が本来有する甘い香味について、以下の4段階で評価した。結果を表23に示した。

×(弱い)、△(普通)、○(強い)、◎(極めて強い)
【0117】
【表23】
【0118】
ピラジン類と(Z)−1,5−オクタジエン−3−オンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、高級感及び抹茶本来の甘い香味が強いと評価した。ピラジン類を含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は高級感が弱く、甘い香味も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0119】
〔実施例B14〕
実施例B3、B4及び比較例B2の香料組成物a〜cに甘い香味を付与する香料素材として3−メチルノナン−2,4−ジオン(1%エタノール溶液)を表21の処方に対して0.001質量部(3−メチルノナン−2,4−ジオン0.00001質量部に相当)ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例B13と同じ抹茶飲料に0.2%の賦香率で添加した(飲料中の3−メチルノナン−2,4−ジオン濃度20ppt)。これを7名の専門パネルにより、実施例B13と同様の方法で評価した。結果を表24に示した。
【0120】
【表24】
【0121】
ピラジン類と3−メチルノナン−2,4−ジオンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、高級感及び抹茶本来の甘い香味が強いと評価した。ピラジン類を含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は高級感が弱く、甘い香味も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0122】
〔実施例B15〕
実施例B3、B4及び比較例B2の香料組成物a〜cに甘い香味を付与する香料素材としてα−イオノンを表21の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例B13と同じ抹茶飲料に0.04%の賦香率で添加した(飲料中のα−イオノン濃度40ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例B13と同様の方法で評価した。結果を表25に示した。
【0123】
【表25】
【0124】
ピラジン類とα−イオノンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が高級感及び抹茶本来の甘い香味が強いと評価した。ピラジン類を含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は高級感が弱く、甘い香味も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0125】
〔実施例B16〕
実施例B3、B4及び比較例B2の香料組成物a〜cに甘い香味を付与する香料素材として公知文献(特開2012−075354号公報)記載の方法で合成した4,5−エポキシ−2−デセナール(1%エタノール溶液)を表21の処方に対して0.1質量部(4,5−エポキシ−2−デセナール0.001質量部に相当)ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例B13と同じ抹茶飲料に0.2%の賦香率で添加した(飲料中の4,5−エポキシ−2−デセナール濃度2ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例B13と同様の方法で評価した。結果を表26に示した。
【0126】
【表26】
【0127】
ピラジン類と4,5−エポキシ−2−デセナールを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、高級感が強く抹茶本来の甘い香味は極めて強いと評価した。ピラジン類を含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は甘い香味が強かったが、高級感はあまり感じられなかった。
【0128】
〔実施例B17〕
実施例B3、B4及び比較例B2の香料組成物a〜cに甘い香味を付与する香料素材として公知文献(European Food Research and Technology,2012,235(5),881−891.)記載の方法で合成した4,5−エポキシ−2,7−デカジエナール(1%エタノール溶液)を表21の処方に対して10質量部(4,5−エポキシ−2,7−デカジエナール0.1質量部に相当)ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例B13と同じ抹茶飲料に0.005%の賦香率で添加した(飲料中の4,5−エポキシ−2,7−デカジエナール濃度5ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例B13と同様の方法で評価した。結果を表27に示した。
【0129】
【表27】
【0130】
ピラジン類と4,5−エポキシ−2,7−デカジエナールを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、高級感が強く抹茶本来の甘い香味は極めて強いと評価した。ピラジン類を含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は甘い香味が強かったが、高級感はあまり感じられなかった。
【0131】
〔実施例B18〕
実施例B3、B4及び比較例B2の香料組成物a〜cに甘い香味を付与する香料素材として2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン(20%エタノール溶液)を表21の処方に対して0.1質量部(2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン0.02質量部に相当)ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例B13と同じ抹茶飲料に0.1%の賦香率で添加した(飲料中の2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノン20ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例B13と同様の方法で評価した。結果を表28に示した。
【0132】
【表28】
【0133】
ピラジン類と2,5−ジメチル−4−ヒドロキシ−3(2H)−フラノンを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、高級感及び抹茶本来の甘い香味が強いと評価した。ピラジン類を含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は高級感が弱く、甘い香味も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【0134】
〔実施例B19〕
実施例B3、B4及び比較例B2の香料組成物a〜cに甘い香味を付与する香料素材としてイソオイゲノールを表21の処方に対して0.1質量部ずつ配合した香料組成物a+、b+、c+を調製し、実施例B13と同じ抹茶飲料に0.005%の賦香率で添加した(飲料中のイソオイゲノール濃度5ppb)。これを7名の専門パネルにより、実施例B13と同様の方法で評価した。結果を表29に示した。
【0135】
【表29】
【0136】
ピラジン類とイソオイゲノールを含む香料組成物a+とb+を添加した抹茶飲料は、専門パネルの全員が、高級感及び抹茶本来の甘い香味が強いと評価した。ピラジン類を含まない香料組成物c+を添加した抹茶飲料は高級感が弱く、甘い香味も普通の抹茶と同程度にしか感じられなかった。
【産業上の利用可能性】
【0137】
本発明の香味改善剤を少量添加することで抹茶風味飲食品に抹茶が本来有する甘い香味や高級抹茶が有する濃厚感を付与することができ、抹茶香味が大幅に改善され、より一層の天然感が感じられる飲食品を消費者に提供することができる。
経時的に低下した抹茶や抹茶由来の天然香料の香味を保持し、抹茶風味の持続性を高めることができる。
また、抹茶や抹茶由来の天然香料に高級感が付与され、抹茶風味の質を高めることができる。