特許第6860494号(P6860494)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6860494金型ユニット、ブロー成形装置、およびブロー成形方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860494
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】金型ユニット、ブロー成形装置、およびブロー成形方法
(51)【国際特許分類】
   B29C 49/18 20060101AFI20210405BHJP
   B29C 49/64 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   B29C49/18
   B29C49/64
【請求項の数】10
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2017-547863(P2017-547863)
(86)(22)【出願日】2016年10月27日
(86)【国際出願番号】JP2016081924
(87)【国際公開番号】WO2017073685
(87)【国際公開日】20170504
【審査請求日】2019年9月10日
(31)【優先権主張番号】特願2015-213192(P2015-213192)
(32)【優先日】2015年10月29日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000227032
【氏名又は名称】日精エー・エス・ビー機械株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】特許業務法人 信栄特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宇佐美 暢之
(72)【発明者】
【氏名】大池 俊輝
【審査官】 國方 康伸
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭63−230319(JP,A)
【文献】 米国特許第04853171(US,A)
【文献】 特開2010−247371(JP,A)
【文献】 特開2010−036357(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 49/00−49/80
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製の有底のプリフォームを製造する射出成形ユニットと、
前記射出成形ユニットで製造されたプリフォームを第一温度で熱処理ブローする第一工程を実行するための第一金型部と、前記熱処理ブローによりブロー成形された中間成形体を前記第一温度より低い第二温度でブロー成形して、容器を製造する第二工程を実行するための第二金型部と、有し、前記第一金型部と前記第二金型部は隣接して配置される連続ブロー成形ユニットと、
を備え、
前記連続ブロー成形ユニットは、
前記第一工程において前記プリフォームを支持し、前記第二工程において前記中間成形体を支持する支持部と、
前記第一工程において前記支持部に支持された前記プリフォームが配置されるとともに前記第一工程の前記熱処理ブローで使用される第一内壁面で構成される第一空間と、前記第二工程において前記支持部に支持された前記中間成形体が配置されるとともに、前記第二工程のブロー成形で使用される第二内壁面で構成される第二空間と、を有する金型ユニットと、
前記第一金型部と前記第二金型部とが一体的にスライド移動可能な移動空間を有するとともに、前記第一工程および前記第二工程の際に前記移動空間内に前記第一金型部および前記第二金型部を収容するように構成される収容ユニットと、
前記第一工程から前記第二工程に移行する際に、前記移動空間内において、前記金型ユニットを、前記第一金型部と前記第二金型部とが隣接する隣接方向に沿って移動させることが可能な移動ユニットと、
を有する、
ブロー成形装置。
【請求項2】
さらに、前記プリフォームを支持した状態で搬送することが可能な回転板を備え、
前記射出成形ユニットで製造された前記プリフォームは、前記回転板の回転に伴って、前記射出成形ユニットから前記連続ブロー成形ユニットに搬送される、
請求項1に記載のブロー成形装置。
【請求項3】
前記射出成形ユニットで製造された前記プリフォームを均等な温度分布に近付けるための温調処理を行なう温調ユニットを、備え、
前記連続ブロー成形ユニットは、前記温調ユニットで前記温調処理が実行された前記プリフォームに対して前記熱処理ブローを行なう、
請求項1または2に記載のブロー成形装置。
【請求項4】
前記第一金型部は前記第一内壁面を有し、
前記第二金型部は前記第二内壁面を有する、
請求項1から3のいずれか一項に記載のブロー成形装置。
【請求項5】
前記第一空間は前記第二空間より大きい、
請求項1から4のいずれか一項に記載のブロー成形装置。
【請求項6】
前記第一工程において前記支持部が前記プリフォームを支持する位置と、前記第二工程において前記支持部が前記中間成形体を支持する位置とは同じであり、
前記移動ユニットは、前記第一工程の後、前記第二空間に前記中間成形体が配置されるように前記金型ユニットをスライド移動させる、
請求項1から5のいずれか一項に記載のブロー成形装置。
【請求項7】
前記収容ユニットは、前記第一工程および前記第二工程の際の前記金型ユニットの位置を位置決めする位置決め部を、有する、
請求項1から6のいずれか一項に記載のブロー成形装置。
【請求項8】
底型を前記第一金型部と前記第二金型部とが前記隣接方向と直交する上下方向に沿って昇降させる昇降装置を備える、
請求項から請求項のいずれか一項に記載のブロー成形装置。
【請求項9】
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形の工程で製造されたプリフォームを第一温度に温度調整された第一金型部で熱処理ブローする第一工程と、前記熱処理ブローによりブロー成形された中間成形体を、前記第一温度より低い第二温度に温度調整された第二金型部でブロー成形して容器を製造する第二工程と、を別々に連続して行なう連続ブロー工程と、を含み、
前記第一金型部と前記第二金型部は隣接して配置されており、
前記連続ブロー工程において、前記第一工程から前記第二工程に移行する際に、前記第一金型部と前記第二金型部とが、前記第一金型部と前記第二金型部とが隣接する隣接方向に沿って一体的にスライド移動する、
ブロー成形方法。
【請求項10】
前記射出成形工程の後、前記射出成形工程で製造された前記プリフォームを均等な温度分布に近付けるための温調処理を行なう温調工程を、含み、
前記連続ブロー工程の前記第一工程では、前記温調工程で前記温調処理が実行された前記プリフォームに対して前記熱処理ブローを行なう、
請求項に記載のブロー成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、樹脂製容器の金型ユニット、ブロー成形装置、およびブロー成形方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ブロー成型装置は、大別してコールドパリソン方式(2ステージ方式とも称される)と称される方式と、ホットパリソン方式(1ステージ方式とも称される)と称される方式とがある。
【0003】
現在、耐熱性能の高いペットボトルを製造する場合には、2ステージ方式が採用された装置が使用されることが多い(特許文献1参照)。2ステージ方式の装置では、プリフォーム製造のための射出成形装置と、ブロー成形装置とがオフラインの状態で接続される。このため、射出成形装置で製造されたプリフォームは、一旦は室温まで自然冷却されて所定の場所にストックされた後、ブロー成形装置に供給される。
【0004】
また、1ステージ方式が採用された装置では、ペットボトルに耐熱性を付与させる手法も提案されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】日本国特許第5503748号公報
【特許文献2】日本国特公平6−47269号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上述の2ステージ方式の装置では、耐熱性の高いペットボトルを製造できるものの、プリフォームを一旦自然冷却した後にブロー適温まで加熱部で加熱する必要があるため、エネルギー効率が低いものであった。
【0007】
一方、上述の1ステージ方式の装置では、プリフォームを室温まで冷却させないため、1ステージ方式の手法と比較してエネルギー効率は高いものの、2ステージ方式と比較して、十分な耐熱性能を得ることができなかった。
【0008】
そこで、本発明は、エネルギー効率の向上と耐熱性能の向上とを両立させることが可能な金型ユニット、ブロー成形装置、およびブロー成形方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために、本発明の金型ユニットは、
プリフォームを第一温度で熱処理ブローする第一工程を実行するための第一金型部と、
前記熱処理ブローによりブロー成形された中間成形体を前記第一温度より低い第二温度でブロー成形して、容器を製造する第二工程を実行するための第二金型部と、
有し、
前記第一金型部と前記第二金型部とが隣接して配置されている。
【0010】
この構成によれば、第一金型部と第二金型部とが別々に規定されているため、熱処理ブローを行なう第一工程を、次に連続して実行される第二工程とは独立して実行することができる。このため、第一工程の熱処理ブローで使用する第一温度を、第二工程で使用する第二温度よりも高い温度、例えば樹脂の結晶化を促進させる温度に設定することができ、十分な耐熱性が付与された容器を得ることができる。また、第一金型部と第二金型部とが隣接して配置されているため、第一工程と第二工程とを連続して実行することができ、中間成形体に対して温調等の処理をする必要が無く、エネルギー効率を向上させることができる。
以上のように、上記構成によれば、エネルギー効率の向上と耐熱性能の向上とを両立させることが可能な金型ユニットを提供することができる。
【0011】
また、本発明の金型ユニットにおいて、
前記第一金型部と前記第二金型部とが一体的にスライド移動可能な移動空間を有するとともに、前記第一工程および前記第二工程の際に前記移動空間内に前記第一金型部および前記第二金型部を収容する収容ユニットを、備えることが好ましい。
【0012】
この構成によれば、プリフォームを第一温度で熱処理ブローする第一工程と、中間成形体を第二温度でブロー成形して容器を製造する第二工程とを別々にスムーズに連続して行なうことができるとともに、第一金型部および第二金型部を収容ユニットによって外部から保護することができる。また、互いに独立した第一金型部と第二金型部とを収容ユニットで一体化しているため同時に運搬することができ、金型交換時の脱着作業が容易化される。
【0013】
また、本発明の金型において、
前記第一金型部は、前記プリフォームが配置される第一空間を規定する第一内壁面を有し、
前記第二金型部は、前記中間成形体が配置される第二空間を規定する第二内壁面を有することが好ましい。
【0014】
この構成によれば、プリフォームを第一温度で熱処理ブローする第一工程と、中間成形体を第二温度でブロー成形して容器を製造する第二工程とを別々にスムーズに連続して行なうことができる。
【0015】
また、本発明の金型ユニットにおいて、
前記第一空間は前記第二空間より大きいことが好ましい。
【0016】
この構成によれば、熱処理ブローの際に、熱処理ブロー後の収縮も考慮して、プリフォームを大きめにブロー成形することができる。よって、最終成形品(容器)に残存する残留応力(延伸配向により生ずるヒズミ)を小さくすることができる。
【0017】
また、本発明の金型ユニットにおいて、
前記第一金型部と前記第二金型部とがスライドする方向と直交する上下方向に沿って底型が昇降可能でも良い。
【0018】
また、本発明のブロー成形装置は、
樹脂製の有底のプリフォームを製造する射出成形ユニットと、
前記射出成形ユニットで製造されたプリフォームを第一温度で熱処理ブローする第一工程を実行するための第一金型部と、前記熱処理ブローによりブロー成形された中間成形体を前記第一温度より低い第二温度でブロー成形して、容器を製造する第二工程を実行するための第二金型部と、有する連続ブロー成形ユニットと、
を備え、
前記連続ブロー成形ユニットにおいて、前記第一金型部と前記第二金型部とが隣接して配置されている。
【0019】
この構成によれば、射出成形ユニットで製造されたプリフォームが、室温まで冷却されることなく熱処理ブローされるため、プリフォームをブロー適温まで再加熱するエネルギーを要さない。このため、エネルギー効率を向上させることができる。また、第一金型部と第二金型部とが別々に規定されているため、熱処理ブローを行なう第一工程を、次に連続して実行される第二工程とは独立して実行することができる。このため、第一工程の熱処理ブローで使用する第一温度を、第二工程で使用する第二温度よりも高い温度、例えば樹脂の結晶化を促進させる温度に設定することができ、十分な耐熱性が付与された容器を得ることができる。また、第一金型部と第二金型部とが隣接して配置されているため、第一工程と第二工程とを連続して実行することができ、中間成形体に対して温度低下を回避するための温調等の処理をする必要が無く、エネルギー効率を向上させることができる。
以上のように、上記構成によれば、エネルギー効率の向上と耐熱性能の向上とを両立させることが可能なブロー成形装置を提供することができる。
【0020】
また、本発明のブロー成形装置において、
前記射出成形ユニットで製造された前記プリフォームを均等な温度分布に近付けるための温調処理を行なう温調ユニットを、備え、
前記連続ブロー成形ユニットは、前記温調ユニットで前記温調処理が実行された前記プリフォームに対して前記熱処理ブローを行なうことが好ましい。
【0021】
射出成形ユニットで製造された直後のプリフォームでは、射出時の熱の影響で、プリフォーム上の温度分布に偏りがあることがある。
上記構成によれば、射出成形されたプリフォームに対して温調処理を行ない、温調処理後のプリフォームに対して熱処理ブローが行なわれるため、中間成形体や最終の容器上において生じ得る偏温を小さくすることができ偏肉が生じにくくなる。このため、さらに安定した耐熱性を得ることができる。
【0022】
また、本発明のブロー成形装置において、
前記連続ブロー成形ユニットは、
前記第一工程において前記プリフォームを支持し、前記第二工程において前記中間成形体を支持する支持部と、
前記第一工程において前記支持部に支持された前記プリフォームが配置されるとともに前記第一工程の前記熱処理ブローで使用される第一内壁面で構成される第一空間と、前記第二工程において前記支持部に支持された前記中間成形体が配置されるとともに、前記第二工程のブロー成形で使用される第二内壁面で構成される第二空間と、を有する金型ユニットと、
前記支持部と前記金型ユニットとを相対的に移動させることが可能な移動ユニットと、
を有し、
前記第一金型部は前記第一内壁面を有し、
前記第二金型部は前記第二内壁面を有することが好ましい。
【0023】
この構成によれば、プリフォームを第一温度で熱処理ブローする第一工程と、中間成形体を第二温度でブロー成形して容器を製造する第二工程とを別々にスムーズに連続して行なうことができる。
【0024】
また、本発明のブロー成形装置において、
前記第一空間は前記第二空間より大きいことが好ましい。
【0025】
この構成によれば、熱処理ブローの際に、熱処理ブロー後の収縮も考慮して、プリフォームを大きめにブロー成形することができる。
【0026】
また、本発明のブロー成形装置において、
前記第一工程において前記支持部が前記プリフォームを支持する位置と、前記第二工程において前記支持部が前記中間成形体を支持する位置とは同じであり、
前記移動ユニットは、前記第一工程の後、前記第二空間に前記中間成形体が配置されるように前記金型ユニットをスライド移動させることが好ましい。
【0027】
この構成によれば、プリフォームを第一温度で熱処理ブローする第一工程と、中間成形体を第二温度でブロー成形して容器を製造する第二工程とを別々にさらにスムーズに連続して行なうことができる。
【0028】
また、本発明のブロー成形装置は、
前記金型ユニットが前記移動ユニットによりスライド移動可能な移動空間を有するとともに、前記第一工程および前記第二工程の際に前記移動空間内に前記金型ユニットを収容する収容ユニットを、備えることが好ましい。
【0029】
この構成によれば、金型ユニットが収容ユニットによって外部から保護される。
【0030】
また、本発明のブロー成形装置において、
前記収容ユニットは、前記第一工程および前記第二工程の際の前記金型ユニットの位置を位置決めする位置決め部を、有することが好ましい。
【0031】
この構成によれば、金型ユニットの位置が精度よく位置決めされるため、各工程において位置ずれに起因する不具合が発生しにくくなる。
【0032】
また、本発明のブロー成形装置は、
底型を前記第一金型部と前記第二金型部とがスライドする方向と直交する上下方向に沿って昇降させる昇降装置を備えても良い。
【0033】
また、本発明のブロー成形方法は、
樹脂製の有底のプリフォームを射出成形する射出成形工程と、
前記射出成形の工程で製造されたプリフォームを第一温度で熱処理ブローする第一工程と、前記熱処理ブローによりブロー成形された中間成形体を、前記第一温度より低い第二温度でブロー成形して容器を製造する第二工程と、を別々に連続して行なう連続ブロー工程と、を含む。
【0034】
この方法によれば、第一金型部と第二金型部とが別々に規定されているため、熱処理ブローを行なう第一工程を、次に連続して実行される第二工程とは独立して実行することができる。このため、第一工程の熱処理ブローで使用する第一温度を、第二工程で使用する第二温度よりも高い温度、例えば樹脂の結晶化を促進させる温度に設定することができ、十分な耐熱性が付与された容器を得ることができる。また、第一金型部と第二金型部とが隣接して配置されているため、第一工程と第二工程とを連続して実行することができ、中間成形体に対して温度低下を回避するための温調等の処理をする必要が無く、エネルギー効率を向上させることができる。
以上のように、上記構成によれば、エネルギー効率の向上と耐熱性能の向上とを両立させることが可能なブロー成形方法を提供することができる。
【0035】
また、本発明のブロー成形方法は、
前記射出成形工程の後、前記射出成形工程で製造された前記プリフォームを均等な温度分布に近付けるための温調処理を行なう温調工程を、含み、
前記連続ブロー工程の前記第一工程では、前記温調工程で前記温調処理が実行された前記プリフォームに対して前記熱処理ブローを行なうことが好ましい。
【0036】
射出成形ユニットで製造された直後のプリフォームでは、射出時の熱の影響で、プリフォーム上の温度分布に偏りがあることがある。
上記方法によれば、射出成形されたプリフォームに対して温調処理を行ない、温調処理後のプリフォームに対して熱処理ブローが行なわれるため、中間成形体や最終の容器上において生じ得る偏温を小さくすることができ偏肉が生じにくくなる。このため、さらに安定した耐熱性を得ることができる。
【発明の効果】
【0037】
本発明によれば、エネルギー効率の向上と耐熱性能の向上とを両立させることが可能な金型ユニット、ブロー成形装置、およびブロー成形方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本発明に係るブロー成形装置のブロック図である。
図2】(a)〜(c)は、ブロー成形装置における連続ブロー成形ユニットの構成を示す図である。
図3】(a)は図2(b)のA−A線における断面図、(b)は図2(c)のB−B線における断面図である。
図4】本発明に係るブロー成形方法を説明するフローチャートである。
図5】ブロー成形方法における待期状態から熱処理ブローまでの各工程を示す図である。
図6】ブロー成形方法における熱処理ブロー後の型開きから最終ブロー前の型締めまでの各工程を示す図である。
図7】ブロー成形方法における最終ブローからブロー成形終了までの各工程を示す図である。
図8】(a)〜(c)は底型を昇降させる機構を説明する図である。
図9】(a)〜(c)は、連結部分の拡大図である。
図10】(a)、(b)は、変形例の連結部分の拡大図である。
図11】(a)〜(d)は底型を昇降させる機構を説明する図である。
図12】(a)〜(c)は連続ブロー成形ユニットの変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本実施形態の一例について、図面を参照して説明する。
先ず、図1図2を参照して、ブロー成形装置について説明する。
ブロー成形装置1は、プリフォームを製造するための射出成形ユニット(射出成形部)10と、製造されたプリフォームの温度を調整するための温調ユニット(温調部)15とを備えている。射出成形ユニット10には、容器の原材料である樹脂を供給する射出装置12が接続されている。また、ブロー成形装置1は、プリフォームをブローして容器を製造するための連続ブロー成形ユニット(ブロー成形部)20と、製造された容器を取り出すための取り出しユニット(取出し部)25とを備えている。よって、全体としては、1ステージ式のブロー成形装置の構成になっている。
【0040】
射出成形ユニット10と温調ユニット15と連続ブロー成形ユニット20と取り出しユニット25とは、搬送手段30を中心として所定角度(本例では90度)ずつ回転した位置に設けられている。搬送手段30は回転板31等で構成されている。回転板31にはネック型固定板32と、L字状ガイドレール33とが設置されている。回転板31にはネック型固定板32を介してネック型(ネック割型)34が取付けられている。射出成形ユニット10で製造されたプリフォームまたは連続ブロー成形ユニット20で製造された容器は、その口部がネック型34に支持されて、回転板31の回転に伴って各部に搬送される。
【0041】
射出成形ユニット10は、図示を省略する射出キャビティ型、射出コア型、ネック型等を備えている。これらの型が型締めされることで形成されるプリフォーム形状の空間内に、射出装置12から樹脂材料を流し込むことにより、有底筒状のプリフォームが製造されるように構成されている。
【0042】
温調ユニット15は、射出成形ユニット10で製造されたプリフォームの温度を、プリフォーム全体において均等な温度分布となるように温度調整を行うように構成されている。また、温調ユニット15は、プリフォームを延伸ブローするための適した温度(例えば約90〜100℃)に調整するように構成されている。例えば、プリフォームを温調ポット内に配置し、プリフォームの口部に嵌入した温調ブローコア型からブロー圧を導入する。導入したブロー圧によりプリフォームを予備ブローさせて温調ポット内面に接触させ、プリフォームをブロー適温に調整する。また、予備ブローを行わずに、単に温調(加熱)ブローコア型や温調(加熱)ポットから発せられる熱により、非接触状態でプリフォームを温度調整する方式でも構わない。
【0043】
連続ブロー成形ユニット20は、温調ユニット15で温度調整されたプリフォームに対して、後述する熱処理ブローと最終ブローとを行うことにより、樹脂製の容器を製造するように構成されている。
【0044】
取り出しユニット25は、連続ブロー成形ユニット20で製造された容器のネック部をネック型34から開放して、容器をブロー成形装置1の外部へ取り出すように構成されている。
【0045】
次に、図2図3を参照して、連続ブロー成形ユニット20について詳述する。
図2(a)は、連続ブロー成形ユニット20内にプリフォーム5が配置されている状態を示している。また、図2(b),(c)は、連続ブロー成形ユニット20を後方側から見た図であり、(b)は金型を開いた状態、(c)は金型を閉じた状態を示す。また、図3(a)は図2(b)のA−Aにおける断面図、3(b)は図2(c)のB−Bにおける断面図を示す。
【0046】
連続ブロー成形ユニット20は、プリフォーム等を支持する支持部40と、割型からなる金型ユニット50と、金型ユニット50を移動させる移動ユニット60と、金型ユニット50を収容する収容ユニット70とを備えている。また、収容ユニット70は、ブロー成形装置1の型締め装置(図示無し)と開閉可能に連結されている。
【0047】
支持部40は、一対の割型からなるネック型34を備えている。ネック型34は、プリフォーム5のネック部を支持しており、一対のネック型固定板32に保持されている。ネック型固定板32は、回転板31の下面に固定されたL字状ガイドレール33に開閉自在に支持されている。ブローコア型35(図5参照)は、回転板31の上方に昇降自在に支持されている。ブローコア型35は、プリフォーム5の口部に嵌入し、ブローエアーをプリフォーム5内に導入することでプリフォーム5を中間成形体にブロー成形する。また、回転板31の上方には、延伸ロッド36(図5参照)が設置されている。延伸ロッド36は、ロッド駆動部の制御によりロッドのストロークが調整可能に構成されている。このように、支持部40は、例えば、昇降可能に構成されており、プリフォーム5またはブロー成形した中間成形体を金型ユニット50に対して出し入れする。なお、ブローコア型35と延伸ロッド36は、後述の第一金型52と第二金型56とで共用される。
【0048】
金型ユニット50は、プリフォーム5を熱処理ブロー(ヒートセットを伴う一次ブロー)して中間成形体をブロー成形するための第一金型部52と、中間成形体をブロー(最終ブロー(アニーリングと最終的な容器形状への賦形処理を伴う2次ブロー))して容器をブロー成形するための第二金型部56とを有する。第一金型部52と第二金型部56とは、金型ユニット50内において隣接して配置されている。
【0049】
第一金型部52は、第一内壁面54で構成される第一空間53を有しており、第一空間53内には支持部40に支持されたプリフォーム5が配置される。第二金型部56は、第二内壁面58で構成される第二空間57を有しており、第二空間57内には支持部40に支持された中間成形体が配置される。第一金型部52の第一空間53の大きさは、第二金型部56の第二空間57よりも大きく形成されている。第一金型部52の第一内壁面54は、凹凸の少ない壁面で構成されており、第二金型部56の第二内壁面58は、容器の外周壁を形成するための凹凸を有した壁面で構成されている。
【0050】
金型ユニット50には図示を省略する加熱装置や温調装置が設けられており、第一金型部52および第二金型部56をそれぞれ温度調節できるように構成されている。第一金型部52の第一内壁面54は、プリフォーム5を熱処理ブローするための第一温度(例えば170〜190℃)に温度調節される。第二金型部56の第二内壁面58は、中間成形体を最終ブローするための第二温度(例えば110〜120℃)に温度調節される。第一温度は、樹脂の延伸のし易さや、金型の内壁面との接触による温度低下を考慮して、製造される容器の樹脂材料(例えばポリエチレンテレフタレート)の結晶化が促進されやすい温度(例えば130〜140℃)より高めに設定されており、第二温度は、第一温度よりも低い温度に設定されている。
【0051】
金型ユニット50の裏側(図3において左側と右側)には、収容ユニット70の壁面に沿って配置される可動板66が設けられている。可動板66には図示を省略する例えば滑車等が取り付けられており、収容ユニット70の壁面に沿ってスムーズに移動できるように構成されている。金型ユニット50は、可動板66の表側に取り付けられている。金型ユニット50の下側にあたる可動板66の表面は、第一金型部52用の底型62と、第二金型部56用の底型63が取り付けられている。底型62は第一金型部52に対して、63は第二金型部56に対してそれぞれ昇降可能に構成されている。なお、後述するように、金型ユニット50を開いた状態のとき、底型62、63は可動板66と一体でスライド移動させられるため、底型62、63を昇降駆動させるブロー成形装置1の昇降装置(図示なし)に常態で固定させることはできない。よって、底型62、63(もしくはそれらを一体化させた底型固定板(図示なし))の下面には、金型ユニット50が閉じた状態のときのみ昇降装置と連結できる機構を設けている。この昇降装置については、後述する。
【0052】
移動ユニット60は、金型ユニット50の側面(本例では後側側面)に取り付けられており、連続ブロー成形ユニット20に対して金型ユニット50を前後方向へ移動させることができるように構成されている。移動ユニット60は、例えば油圧シリンダやエアシリンダで構成されており、金型ユニット50にその先端が固定されたシリンダロッドを伸び縮みさせることで金型ユニット50の位置を制御している。移動ユニット60の制御により、移動ユニット60に固定されている金型ユニット50および底型62,63がシリンダロッドの動きと同方向へ移動するようになっている。これにより、支持部40と金型ユニット50とを相対的に移動させることができるように構成されている。よって、連続ブロー成形ユニット(ブロー成形部)20において支持部40で保持されたプリフォームに対し、熱処理ブロー成形と最終ブロー成形とを実施可能に構成されている。
【0053】
収容ユニット70は、金型ユニット50を囲うように構成されており、可動板66の裏側(図3において左側と右側)に設けられる側壁部72と、側壁部72の両端に設けられる位置決め部73とを有する。側壁部72は、金型ユニット50が取り付けられている可動板66の可動方向および可動領域を規定する。位置決め部73は、可動板66に取り付けられている金型ユニット50の移動端を規定することで、上記熱処理ブロー時および最終ブロー時における金型ユニット50の位置を位置決めする。収容ユニット70は、側壁部72と位置決め部73とで形成される空間75を有する。空間75は、金型ユニット50がスライド移動可能な移動空間を構成している。
【0054】
次に、図4図7を参照して、ブロー成形方法について説明する。なお、図5〜8においては、図を簡略化するために移動ユニット(シリンダロッド)の構成を省略している。
先ず、射出成形ユニット10において、型締めにより形成された空間内に、射出装置12から樹脂を射出してプリフォーム5を製造する(ステップS101)。
【0055】
続いて、搬送手段30によりプリフォーム5を温調ユニット15へ搬送する。温調ユニット15において、プリフォーム5の全体が均一な温度分布であって、延伸ブローするための適した温度に近付けるための温度調整を行う(ステップS102)。
【0056】
連続ブロー成形ユニット20において、金型ユニット50を開いた状態にし、図示を省略する移動ユニット60のシリンダロッドを前方側へ伸ばすことにより、金型ユニット50の第一金型部52がプリフォーム5を熱処理ブローする位置にくるようにする(図5のa101,b101参照)。
【0057】
続いて、プリフォーム5を支持する支持部40を移動させて、温調処理されたプリフォーム5を第一金型部52の第一空間53内に配置する(ステップS103、図5のa102,b102参照)。
【0058】
続いて、金型ユニット50を型締めするとともに、底型62をわずかに上昇させて第一金型部52に連結させる(図5のa103,b103参照)。加熱装置により、第一金型部52の第一内壁面54が第一温度(例えば170℃)に温度調節され、底型62が例えば100℃に温度調整されている。次いで、ブローコア型35および延伸ロッド36を下降させ、ブローコア型35からプリフォーム5内にブローエアーを導入するとともに、延伸ロッド36を第一空間53のストロークに合わせて延ばし、第一金型部52内においてプリフォーム5を中間成形体6に熱処理ブロー成形する(ステップS104、図5のa103参照)。
【0059】
続いて、熱処理ブローした金型ユニット50を型開きするとともに、底型62をわずかに下降させる(図6のa104,b104参照)。同時に、延伸ロッド36を上昇させて中間成形体6より取り除く。また、必要に応じて、ブローコア型35も上昇させる。第一金型部52内で熱処理ブローされた直後の中間成形体6の大きさは、第二金型部56の第二空間57よりも大きく形成される。金型ユニット50を上記型開きすることで第一金型部52から離型した中間成形体6は、縮小して第二金型部56の第二空間57と同等もしくは小さい大きさに変形する。
【0060】
続いて、移動ユニット60のシリンダロッドを後方側へ縮めることにより、金型ユニット50を収容ユニット70の移動空間75内でスライド移動させて、金型ユニット50の第二金型部56が中間成形体6を最終ブローする位置にくるようにする(ステップS106、図6のa105,b105参照)。この場合、支持部40は位置を移動せず、プリフォーム5を支持していた支持部40の位置(図5のa102,b102参照)と、中間成形体6を支持する支持部40の位置(図6のa105,b105)とは同じ位置で維持されている。
【0061】
続いて、金型ユニット50を型締めするとともに、底型63をわずかに上昇させて第二金型部56に連結させて、中間成形体6を第二金型部56の第二空間57内に収容する(図6のa106,b106参照)。温調装置により、第二金型部56の第二内壁面58が第二温度(例えば120℃)に温度調節され、底型63が例えば100℃に温度調整されている。
【0062】
続いて、延伸ロッド36を下降させて(熱処理ブロー後にブローコア型35を上昇させている場合は、ブローコア型35も下降させる)、ブローコア型35から中間成形体6内にブローエアーを導入するとともに、延伸ロッド36を第二空間57のストロークに合わせて延ばし、第二金型部56内において中間成形体6を容器7に最終ブロー成形する(ステップS107、図7のa107参照)。
【0063】
続いて、最終ブローした金型ユニット50を型開きするとともにブローコア型35と延伸ロッド36を上昇させ、底型63をわずかに下降させる(図7のa108,b108参照)。金型ユニット50を上記型開きすることにより、容器7が第二金型部56から離型する。支持部40を上昇させて、支持部40に支持されている容器7を回収する(ステップS108)。
【0064】
続いて、移動ユニット60のシリンダロッドを前方側へ伸ばすことにより、金型ユニット50を収容ユニット70の移動空間75内でスライド移動させて、金型ユニット50の第一金型部52がプリフォーム5を熱処理ブローする位置にくるブロー成形の開始状態に戻す(ステップS109、図7のa109,b109参照)。なお、前述した第一金型部52と底型62との連結や第二金型部56と底型63との連結にかかる動作は、要求される成形条件に応じ、ブローコア型35によるブローエアーの導入や延伸ロッド36の伸長開始された後に実施しても良い。
【0065】
次に、図8、9を参照して、底型62、63を昇降させる機構について説明する。
図8は、底型62、63を昇降させる機構を説明する図である。図8に示すように、昇降装置80は、連結ロッド81と、被連結ロッド82と、を備えている。連結ロッド81は、軸部81aと、軸部の81aの上端に設けられたフランジ部81bと、を有し、その部位の鉛直断面は略T字状、水平断面は略円形状になっている。連結ロッド81は、金型ユニット50の型閉じライン(パーティングライン)に沿って少なくとも1本配置され、図示せぬ機械側のアクチュエータに固定されていて、上下方向に沿って昇降可能である。
【0066】
被連結ロッド82は、鉛直下方に垂下しており、軸部82aと、被連結ブロック82bと、を有している。軸部82aの上端は、底型固定板83の下面に固定されている。底型固定板83の上面には底型62(または底型63)が固定されている。また、可動板66に固定された昇降案内ブロック84の上面に上方移動可能に載置されている。被連結ブロック82bは、軸部82aの下端に固定されており、略直方体状の外観を有している。被連結ブロック82bの一側面には、金型ユニット50の型閉じ動作に伴い、連結ロッド81が横方向(型開閉方向、図の右または左方向)からスライドイン(進入)することが可能な空間を形成する窪み82cが設けられている(図9(a)参照)。窪み82cは、その側面方向(横方向)からは略T字状に見える形状であり、下面方向(図の下方向)からは外縁82dが略U字状に見える形状をしている。被連結ロッド82は、昇降案内ブロック84のガイド孔84aを貫通している。なお、被連結ロッド82、底型固定板83および昇降案内ブロック84は、第一金型52と第二金型56とに別途独立して設けられ、それら金型と共に一体でスライド移動させられる。しかし、ほぼ同一の構造であるため、ここでは同じ番号を付与している。
【0067】
なお、図10(a)〜(b)に示されるように、型開閉動作にかかる汎用性や利便性の向上を目的とし、連結ロッド81が被連結ロッド82の両側面(図の左と右の両方向)からスライドイン(進入)できるよう、窪み82cが、被連結ブロック82bの一側面からその対向側面までを貫通する略T字状の形状になっていても良い。このとき、窪み82cの外縁82dは、窪み82cが設けられない側面に対して平行に延在する略直線状の形状になる。
【0068】
上記の構成の昇降装置80は、底型62、63を、上段と下段の二位置間で昇降させる。
まず、金型ユニット50が型開きするとき、連結ロッド81は、図8(a)に示す待機位置(下段位置)に配置されている。このとき、第一金型52と第二金型56がスライド移動させられる。次に、金型ユニット50の各割型が閉じられた状態になるとき、連結ロッド81のフランジ部81bが被連結ロッド82の窪み82cに横方向から入り込んで嵌合し、連結ロッド81と被連結ロッド82とが連結された状態(連結位置、図8(b)、図9(b)参照)となる。このあと、連結ロッド81が、アクチュエータの駆動力で上方に昇降され、被連結ロッド82が固定された底板固定板83および底型62、63がブロー成形時の位置(上段位置)へ移動する(図8(c))。このようにして、底型62,63が待機位置(下段位置)からブロー成形時の位置(上段位置)へ移動(上昇)することが完了する。ブロー成形終了後は、底型62、63を下段位置へと移動(下降)させ、金型ユニット50を型開きして連結ロッド81と被連結ロッド82との連結を解除して、再度、金型ユニット50のスライド移動を行う。
【0069】
なお、本実施形態では、収容ユニット70内で金型ユニット50(第一金型部52、第二金型部56)がスライドする構成のため、上述の二段階移動式が採用されているが、その様な構成でない場合、連結ロッド81が干渉し得る部材が装置内に存在することがありうる。例えば、移動ユニット60が収容ユニット70に設けられておらず、ブロー成形装置1の機台(静止部位)に設置されているような場合で、第一金型部52と第二金型部56とが型締め装置に常時連結されておらず、順次スライドインするような構成がありえる。このような場合、図11(a)〜(d)に示すように、下段-中段-上段の三位置間からなる移動方式を採用しても良い。図11(a)に示す下段位置では、連結ロッド81は、型締め装置の他の部材と干渉しない位置となっている。よって、連結ロッド81が下段位置で待機しているときに金型ユニット50のスライド移動を行い、そのスライド移動が終了した後、連結ロッド81は図11(b)に示す中段位置へと移動(上昇)する。中段位置に移動した以降の動作は、図8の例と同様の方法で底型62、63が昇降できるようになる(金型ユニット50の各割型が閉じた際に図11(c)の連結位置になり、ブロー成形時に図11(d)の上段位置へと移動(昇降)させられる)。なお、ブロー成形終了後は、金型ユニット50が閉じた状態で底型62,63をいったん中段位置まで移動(下降)させた後、型開きして連結ロッド81と被連結ロッド82との連結を解除する。次いで、下段位置まで連結ロッドを移動(下降)させた後、金型ユニット50のスライド移動を再び実施する。
このように、昇降装置80により、金型ユニット50がスライドする構造であっても、そのスライドする方向と直交する上下方向に沿って底型62、63の昇降を可能にしている。
【0070】
ところで、1ステージ・1ブロー方式と称されるように、熱処理ブローと最終ブローとを同時ブローする方式では、ブロー後の収縮や金型への張り付き等の影響を考慮すると、ブロー型をあまり高温に設定することはできなかった(例えば130℃程度でしかブローできなかった。)。この結果、1ステージ・1ブロー方式で製造されたペットボトルは、2ステージ・2ブロー方式で製造されたペットボトルと比べて、ペットボトルの結晶化密度があまり高くならない。また、ブロー成形時に生じるペットボトルの歪(残留応力)も多くなる。
【0071】
一方、2ステージ・2ブロー方式の装置では、耐熱性の高いペットボトルを製造できるものの、プリフォームを一旦自然冷却した後にブロー適温まで加熱部で加熱する必要があるため、エネルギー効率が低くなる。また、2ステージ・2ブロー方式では装置が大型化し、設備スペースも広く確保することが必要となる。例えば、型締め機構やブロー機構を2つ設置しなければならない。
【0072】
これに対し、本実施形態の金型ユニット50、ブロー成形装置1、及びブロー成形方法によれば、プリフォーム5を射出成形した後に、プリフォーム5の熱処理ブローと、中間成形体6の最終ブローとを別々に連続して行う1ステージ・2ブロー方式を採用している。このため、射出成形ユニット10で製造されたプリフォーム5が、室温まで冷却されることなく熱処理ブローされるので、プリフォーム5をブロー適温まで再加熱するエネルギーを要さず、エネルギー効率を向上させることができる。
【0073】
また、本例の1ステージ・2ブロー方式の構成によれば、2ステージ・2ブロー方式と比較して、ブロー成形装置1を小型化することが可能であり、ブロー成形装置1の設備コストの低減することができ、また、設置スペースを小さくすることができる。例えば、型閉め機構が一つで済む他、ブロー成形装置1の設置も一回で済む。また、射出成形、熱処理ブロー、及び最終ブローを短時間で実行することができ、繰り返し処理することができる。
【0074】
また、一つの金型ユニット50内において第一金型部52と第二金型部56とが別々に規定されているため、第一金型部52でプリフォーム5を熱処理ブローする工程を、次に連続して実行される中間成形体6を第二金型部56で最終ブローする工程とは独立して実行することができる。このため、熱処理ブローで使用する第一温度を、最終ブローで使用する第二温度(例えば120℃)よりも高い温度、例えば樹脂の結晶化を促進させる温度(例えば170℃)に設定することができ、十分な耐熱性が付与された容器7を製造することができる。また、金型ユニット50内において第一金型部52と第二金型部56とが隣接して配置されているため、熱処理ブローと最終ブローとを連続して実行することができる。このように、熱処理ブローと最終ブローとを別々に連続して行なうことできるため、中間成形体6に対して温度低下を回避するための温調等の処理をする必要が無く、エネルギー効率を向上させることができる。なお、「十分な」耐熱性とは、例えば、殺菌目的で高温にされた約90℃以上の液体を充填した場合にも、収縮変形がほとんど生じない程度の耐熱性を意味する。
【0075】
射出成形ユニット10で製造された直後のプリフォーム5では、射出時の熱の影響で、プリフォーム5上の温度分布に偏りがあることがある。これに対して上記構成では、射出成形されたプリフォームに対して温調処理を行ない、温度分布に偏りが少ないプリフォーム5に対して熱処理ブローが行なわれるため、中間成形体6や最終の容器7上において生じ得る偏温を小さくすることができ偏肉が生じにくくなる。
【0076】
また、移動ユニット60を介して金型ユニット50の位置を、プリフォーム5を熱処理ブローする位置から中間成形体6を最終ブローする位置へとスライド移動させることができるため、熱処理ブローする工程と、最終ブローする工程とを別々にさらにスムーズに連続して行なうことができる。
【0077】
また、スライド移動される金型ユニット50が収容ユニット70内に収容されているため、金型ユニット50を外部から保護することができ、各工程において金型ユニット50の位置ずれに起因する不具合が発生しにくくなる。
【0078】
また、収容ユニット70には、金型ユニット50の位置を位置決めする位置決め部73が設けられているため、金型ユニット50の位置が精度よく位置決めされる。そのため、各工程において位置ずれに起因する不具合が発生しにくくなる。
【0079】
第一金型部52の第一空間53は第二金型部56の第二空間57より大きく形成されているので、熱処理ブローの際に、熱処理ブロー後の収縮も考慮して、プリフォーム5を大きめにブロー成形することができる。
【0080】
したがって、上記構成によれば、エネルギー効率の向上と耐熱性能の向上とを両立させることが可能な金型ユニット50、ブロー成形装置1、及びブロー成形方法を提供することができる。
【0081】
なお、本発明は、上述した実施形態に限定されず、適宜、変形、改良等が自在である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数値、形態、数、配置場所等は、本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【0082】
例えば、上記の例では、第一金型部52と第二金型部56は、それぞれ1つずつであったが、この例に限られない。
(変形例)
次に、図12(a)〜(c)を参照して、上記連続ブロー成形ユニット20の変形例について説明する。
図12(a)に示すように、変形例に係る連続ブロー成形ユニット20Aは、金型ユニット50が第一金型部52と第二金型部56とをそれぞれ複数(本例では3個ずつ)有している。また、3個の第一金型部52が連続して配置された隣に3個の第二金型部56が連続して配置される構成とされている。また、プリフォーム5を支持する支持部40も3個連続して設けられている。この場合、第一金型部52内でプリフォーム5を熱処理ブローした後、第二金型部56内で中間成形体6を最終ブローするために、収容ユニット70の移動空間75内を金型ユニット50がスライド移動する距離は、第一金型部52および第二金型部56が連続して設けられている金型部3個分となる。
【0083】
図12(b)に示すように、変形例に係る連続ブロー成形ユニット20Bは、金型ユニット50が有する3個の第一金型部52と3個の第二金型部56とが、1個ずつ交互に配置される構成とされている。また、プリフォーム5を支持する支持部40が各金型部の配置と合うように1個おきに3個設けられている。この場合、プリフォーム5を熱処理ブローした後、中間成形体6を最終ブローするために、収容ユニット70の移動空間75内を金型ユニット50がスライド移動する距離は、隣接する金型部間のピッチである金型部1個分となる。
【0084】
図12(c)に示すように、変形例に係る連続ブロー成形ユニット20Cは、3個の第一金型部52を有する金型ユニット50Aと、3個の第二金型部56を有する金型ユニット50Bとが、並列に配置される構成とされている。この場合、金型ユニット50A,50Bはスライド移動しない構成となっている。第一金型部52内でプリフォーム5を熱処理ブローする場合、図に示すように金型ユニット50Aが型開きして、図示を省略する3個の支持部40が移動するとともに、支持するプリフォーム5を第一金型部52の第一空間53内に配置させる。続いて、第二金型部56内で中間成形体6を最終ブローする場合、金型ユニット50Bが型開きして、支持部40が移動するとともに、支持する中間成形体6を第二金型部56の第二空間57内に配置させる。
【0085】
上記変形例の連続ブロー成形ユニット20A〜20Cによれば、エネルギー効率の向上と耐熱性能の向上とを両立させることが可能であるとともに、一度に複数の容器をブロー成形できる金型ユニット、ブロー成形装置及びブロー成形方法を提供することができる。
【0086】
例えば、上記形態では1ステージ方式と称される金型ユニット、ブロー成形装置、及びブロー成形方法で使用する場合を説明したが、この形態に限定されず、例えば1.5ステージ方式と称されるものにも応用可能である。また、金型ユニット50をスライド移動させる移動ユニット60についても、収容ユニット70の代わりにブロー成形装置1の何れかの静止部位(例えば機台)に設置させても良い。
【0087】
本発明を詳細にまた特定の実施態様を参照して説明したが、本発明の精神と範囲を逸脱することなく様々な変更や修正を加えることができることは当業者にとって明らかである。
本出願は、2015年10月29日出願の日本特許出願・出願番号2015-213192に基づくものであり、その内容はここに参照として取り込まれる。
【符号の説明】
【0088】
1:ブロー成形装置、5:プリフォーム、6:中間成形体、7:容器、10:射出成形ユニット(射出成形部)、12:射出装置、15:温調ユニット(温調部)、20:連続ブロー成形ユニット(ブロー成形部)、25:取り出しユニット(取出し部)25、30:搬送手段、40:支持部、50:金型ユニット、52:第一金型部、53:第一空間、54:第一内壁面、56:第二金型部、57:第二空間、58:第二内壁面、60:移動ユニット、62,63:底型、66:可動板、70:収容ユニット、72:側壁部、73:位置決め部、75:移動空間
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12