特許第6860505号(P6860505)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許6860505ポリアルコキシル化ポリアミンオキシド脱泡性組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860505
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】ポリアルコキシル化ポリアミンオキシド脱泡性組成物
(51)【国際特許分類】
   C08L 71/00 20060101AFI20210405BHJP
   C04B 28/02 20060101ALI20210405BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20210405BHJP
   C09D 179/02 20060101ALI20210405BHJP
   C09D 7/40 20180101ALI20210405BHJP
   C09D 5/02 20060101ALI20210405BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20210405BHJP
   C08G 65/26 20060101ALI20210405BHJP
   C08G 65/331 20060101ALI20210405BHJP
   C04B 103/50 20060101ALN20210405BHJP
【FI】
   C08L71/00 Y
   C04B28/02
   C04B24/12 A
   C09D179/02
   C09D7/40
   C09D5/02
   C09D201/00
   C08G65/26
   C08G65/331
   C04B103:50
【請求項の数】11
【全頁数】15
(21)【出願番号】特願2017-560180(P2017-560180)
(86)(22)【出願日】2016年5月15日
(65)【公表番号】特表2018-517810(P2018-517810A)
(43)【公表日】2018年7月5日
(86)【国際出願番号】US2016032620
(87)【国際公開番号】WO2016187085
(87)【国際公開日】20161124
【審査請求日】2019年5月9日
(31)【優先権主張番号】14/716,139
(32)【優先日】2015年5月19日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】515150265
【氏名又は名称】ジーシーピー・アプライド・テクノロジーズ・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】クオ,ローレンス・エル
(72)【発明者】
【氏名】チェン,イン
【審査官】 横山 法緒
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−154740(JP,A)
【文献】 特表2013−528153(JP,A)
【文献】 米国特許第05275654(US,A)
【文献】 特開平08−060139(JP,A)
【文献】 特表平11−508319(JP,A)
【文献】 特開2009−052055(JP,A)
【文献】 特開平11−269239(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 1/00−101/14
C08K 3/00−13/08
C08G 65/00−65/48
C04B 24/00−24/42
C09D 5/02
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも1種の酸化剤と、少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン、少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリエチレンイミン又はそれらの混合物を含んでなる化合物の反応生成物を含んでなる組成物であって;
少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミンは構造式A
【化1】
により示され、そして少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリエチレンイミンは構造式B
【化2】
により示され、式中
nは0−20の整数を示し;
1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7はそれぞれ個別に水素、C1−C6アルキル基、−CH2−OH基又は−(AO)x−R8基を示し;ここで、nが0である場合にはR1、R2、R3、R4、R6及びR7のうち少なくとも1つが−(AO)x−R8基であることを条件として、R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7のうち少なくとも1つが−(AO)x−R8基であり;
AOは、エチレンオキシド(“EO”)、プロピレンオキシド(“PO”)、ブチレンオキシド(“BO”)又はそれらの混合物から選ばれるアルキレンオキシド基を示し、ここでAO中の他のアルキレンオキシドに対するEOの相対的なモル量は合計のゼロパーセントから50パーセント未満であり、且つここでEO及びPO基の数の合計は25を超え;
xは1−100の整数を示し;
8は水素又はC1−C6アルキル基を示し;
−(EI)y−は直鎖又は分枝鎖構造における繰り返しエチレンイミン単位を示し;
yは5−100の整数を示し;そして
繰り返しエチレンイミン単位当たりの(AO)x−鎖の相対的な数は0.1−1.0である、組成物。
【請求項2】
反応生成物が、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルプロピレンジアミン、N,N’−ジメチルプロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルプロピレンジアミン、N,N’−ジエチルプロピレンジアミン又はそれらの混合物から誘導される酸化物である、請求項1の組成物。
【請求項3】
少なくとも1種の酸化剤が、過酸化水素、過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、クロロペルオキシ安息香酸、モノペルフタル酸(monoperphthalic acid)、過硫酸、酸素分子、オゾン又はそれらの混合物より成る群から選ばれる、請求項1の組成物。
【請求項4】
少なくとも1種の酸化剤と、少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン、少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリエチレンイミン又はそれらの混合物を含んでなる化合物の反応生成物が、6より多い炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基を含まない請求項1の組成物。
【請求項5】
水性コーティング組成物及び請求項1の組成物を含んでなる水性組成物。
【請求項6】
水硬セメント質組成物中の空気の連行に有効な少なくとも1種の薬剤をさらに含んでなる請求項1の組成物であって、少なくとも1種の薬剤が高級トリアルカノールアミン、リグノスルホネート、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物、オキシアルキレン含有高性能流動化剤、オキシアルキレン含有収縮低減剤又はそれらの混合物を含んでなる組成物。
【請求項7】
水硬セメント質結合剤及び請求項1の組成物を含んでなる組成物。
【請求項8】
水硬セメント質組成物中の空気の連行に有効な少なくとも1種の薬剤及び請求項1の組成物を含んでなる、水硬セメント質組成物の修正のための組成物であって、少なくとも1種の薬剤が高級トリアルカノールアミン、リグノスルホネート、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物、オキシアルキレン含有高性能流動化剤、オキシアルキレン含有収縮低減剤又はそれらの混合物を含んでなる組成物。
【請求項9】
さらに硬化加速剤、硬化遅延剤又はそれらの混合物を含んでなる、請求項1の組成物。
【請求項10】
液体水性コーティング組成物として表面に適用され、乾燥を許されると表面上にコーティングを形成するように働く結合剤材料、及び、請求項1の組成物を含んでなるコーティング組成物。
【請求項11】
水性組成物に請求項1の組成物を加えることを含んでなる、水性組成物中の空気の性質を修正するための方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、水性組成物中の空気の修正(modifying)剤、そしてさらに特定的に、塗料、シーラント、コーティング、コンクリート、モルタル、石材又は他の水性組成物のような水性系内において比較的広いpH範囲に及んで空気含有量及び質を制御するためのポリアルコキシル化ポリアミンオキシドに基づく新規な種類の空気管理(management)組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
水硬(hydratable)セメント及びコンクリートのような水性環境内における空気含有量及び質を修正するためのアミン脱泡剤の使用は既知である。
【0003】
本明細書の共通譲受人が所有する特許文献1において、Kuoはセメント質組成物中の空気の制御のための添加剤組成物を記載しており、その組成物ではアルカノールアミン化合物のようなある種の空気連行(air−entraining)剤、オキシアルキレン含有減水剤又は可塑剤及び他の薬剤と組み合わされたポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤が用いられる。特許文献1においてKuoは、これらの化合物がセメント及びコンクリート混合物中で用いられる空気連行性添加剤の安定性を向上させるが、脱泡性添加剤の有効性を削減することはないと説明した。
【0004】
本発明は、広いpH範囲に及ぶ適用性の故にセメント、モルタル、石材及びコンクリートのような水性系において、ならびに塗料、ラテックス及びエマルション(例えばポリマーラテックス又はエマルション)、プライマー、シーラント、接着剤、マスチック及び他のような水性組成物中で高度に安定且つ有効な新規且つ予期に反した脱泡剤を見出すための継続的な挑戦の追及を反映している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】米国特許第8,187,376号明細書
【発明の概要】
【0006】
発明の概略
本発明は、塗料、プライマー、シーラント、接着剤、マスチック及び他の水性組成物のような、ならびにまたセメント、コンクリート、モルタル及び石材組成物のような水硬セメント質組成物を含む水性組成物中の空気の含有量及び質を修正するための新規な組成物及び方法を提供する。
【0007】
本発明者等は、驚くべきことに、酸化ポリアルコキシル化ポリアミンの使用がセメント又はコンクリート組成物のような水性環境において有益な空気離行性(detraining characteristics)を与えることを見出した。アルキルアミンオキシド界面活性剤は、他の場合には典型的に空気を離行するのではなくて連行するので、この振る舞いは予期に反している。ポリアルコキシル化ポリアミンオキシドは、水性系において例外的な安定性及び溶解性を与え、中性及び高pH(>7)環境を含む広いpH範囲に及んで通常のコンクリート混和剤(admixtures)と一緒に用いられる時に優れた相溶性を示す。
【0008】
本発明の代表的な組成物は、少なくとも1種の酸化剤と、少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン、少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリエチレンイミン又はそれらの混合物を含んでなる化合物の反応生成物を含み;少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミンは構造式A
【0009】
【化1】
【0010】
により示され、そして少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリエチレンイミンは構造式B
【0011】
【化2】
【0012】
により示され、式中R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7はそれぞれ個別に水素、C1−C6アルキル基、−CH2−OH基又は−(AO)x−R8基を示し;AOはエチレンオキシド(“EO”)、プロピレンオキシド(“PO”)、ブチレンオキシド(“BO”)又はそれらの混合物から選ばれるアルキレンオキシド基を示し、ここでAO中の他のアルキレンオキシドに対するEOの相対的なモル量は合計量のゼロパーセントから50パーセント未満であり、且つここでEO及びPO基の数の合計は25を超え;nは0−20の整数を示し;xは1−100の整数を示し;R8は水素又はC1−C6アルキル基を示し;−(EI)y−は直鎖又は分枝鎖構造における繰り返しエチレンイミン単位を示し;yは5−100の整数を示し;そして繰り返しエチレンイミン単位当たりの−(AO)x−鎖の相対的な数は0.1−1.0である。
【0013】
本発明の代表的な態様において、反応生成物はエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルプロピレンジアミン、N,N’−ジメチルプロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルプロピレンジアミン、N,N’−ジエチルプロピレンジアミン又はそれらの混合物から誘導される酸化物である。最も好ましいのは、エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はそれらの混合物から誘導される酸化物である。
【0014】
本発明の他の代表的な組成物は、上記の酸化ポリアルコキシル化ポリアミン及び水性環境において空気を連行する1種もしくはそれより多い空気連行剤を含む。モルタル及びコンクリートスラリ又はペーストのような水性セメント質環境のために、空気連行剤は高級トリアルカノールアミン、リグノスルホネート、スルホン化ナフタレンホルムアルデヒド縮合物、スルホン化メラミンホルムアルデヒド縮合物、オキシアルキレン含有高性能流動化剤(superplasticizer)、オキシアルキレン含有収縮低減剤又はそれらの混合物を含むことができる。
【0015】
酸化ポリアルコキシル化ポリアミンを水性環境中に個別に導入することができるが、配合された混和剤製品中の少なくとも1種の空気連行剤と共にモルタル及びコンクリートの水性環境中に導入するのがより好ましく、前記製品は前述したようにその成分の有益な相溶性を有するので、比較的広いpH範囲に及んで(across)、配合された生成物の輸送、貯蔵又は分配(dispensing)の目的のために有利な安定性を与える。
【0016】
本発明はさらに、空気連行剤と一緒にか又はそれなしで上記の酸化ポリアルコキシル化ポリアミンを含有する水性組成物、ならびに、空気連行剤と一緒にか又はそれなしで上記の酸化ポリアルコキシル化ポリアミンを用いて水性コーティング、塗料、接着剤、セメント、コンクリートなどのような水性環境を修正するための方法を目的とする。
【0017】
本発明のさらなる特徴及び利益を下記に詳細に示す。
【発明を実施するための形態】
【0018】
代表的な態様の詳細な記述
上記にまとめた通り、本発明の酸化ポリアルコキシル化ポリアミン組成物は、水に基づく塗料(例えばポリマー塗料)、プライマー、マスチック、シーラント、接着剤及び他の水性組成物のような水性組成物中の空気を離行するために有用である。気泡の減少はピンホール効果を減少させ、従って例えばコーティング組成物が建築物又は建造物表面上で保護コーティング層に硬化(hardens or cures)する時に、より高い障壁性に導くことができる。
【0019】
本発明の代表的な水性組成物には、水に基づく塗料、例えばアクリル塗料(あるいは他のポリマー又は樹脂を用いる塗料)が含まれる。それらの比較的広いpH適用範囲(pH
application range)を考えると(given)、本発明のポリアルコキシル化ポリアミンオキシド化合物を、例えばセメント及びコンクリート、新鮮な石材、化粧しっくい、及び、石膏のようなアルカリに対する抵抗性が要求される建築物または構造物の表面のため、ならびに、(セメントもしくはモルタルを含み得るかこれに接し得る)レンガ、石、及び、積みブロック(masonry block)上のコーティング組成物中で用いることができる。
【0020】
本発明の代表的なコーティング組成物は、(i)液体水性コーティング組成物として表面に適用され、乾燥を許されると表面上にコーティングを形成する働きをする結合剤材料(例えばポリマー又は樹脂)ならびに(ii)場合により1種もしくはそれより多い空気連行性添加剤と一緒であることができる本発明の概略で前にまとめた酸化ポリアルコキシル化ポリアミン組成物を含む。代表的なポリマー又は樹脂にはアクリル、ポリウレタン、ゴム(例えばスチレンブチルゴム)、あるいは、液体水性コーティング組成物として適用され、乾燥及び/又は硬化を許されると凝集するか、架橋するか、結合するか、及び/又は別のやり方で表面上に一枚岩的な(monolithic)コーティング層を形成する他の水分散性材料が含まれ得る。コーティング組成物は、はけ塗り、こて塗り、噴霧、ロール塗り又は他のやり方で適用され得る溶液、ラテックス又はエマルションあるいは他の流動性もしくは液体で適用される(liquid−applied)形態であることができる。
【0021】
本発明のポリアルコキシル化ポリアミンオキシドは、セメント、モルタル、石材及びコンクリート組成物のような水硬セメント質組成物内の空気を離行するための添加剤(混和剤)組成物の形態で用いられると、特に有益である。
【0022】
本明細書で用いられる「セメント」という用語は、水硬ケイ酸カルシウム及び相互粉砕添加物(interground additive)としての1種もしくはそれより多
い形態の硫酸カルシウム(例えば石膏)から成るクリンカーを粉砕することにより製造される水硬セメントを含む。「モルタル」は水を用いて形成され、さらに細骨材(例えば砂)を含むセメントペーストである。「コンクリート」はさらに粗骨材(例えば破砕された石又は砂利)を含むモルタルである。
【0023】
本明細書で用いられる「セメント質」という用語は、セメントを含むかもしくはそれを構成する(comprise)材料(例えばポルトランドセメント)あるいは他のやり方で細骨材(例えば砂)、粗骨材(例えば破砕された砂利)又はそれらの混合物を一緒に保つための結合剤として働く材料を指す。典型的には、ポルトランドセメントは1種もしくはそれより多い他の補足的セメント質材料(“SCMs”)と組み合わされ、ブレンドとして与えられる。SCMsには石灰石、消石灰、フライアッシュ、高炉水砕スラグ及びシリカヒュームあるいはそのようなセメント中に通常含まれる他の材料が含まれ得る。従ってセメント質材料は1種もしくはそれより多いSCMsを好ましくはセメント質材料の合計乾燥重量に基づいて0%−100%、より好ましくは10%−60%の量で含むことができる。
【0024】
本明細書で用いられる「水硬」という用語は、水との化学的相互作用により硬化するセメント又はセメント質材料を指すものとする。ポルトランドセメントクリンカーは、主に水硬ケイ酸カルシウムから構成される部分的に融解した塊である。ケイ酸カルシウムは本質的にケイ酸三カルシウム(3CaO・SiO2 セメント化学者の表記法において“C3S”)及びケイ酸二カルシウム(2CaO・SiO2,“C2S”)の混合物であり、ここで前者が優勢な形態であり、少量のアルミン酸三カルシウム(3CaO・Al23,“C3A”)及び鉄アルミン酸四カルシウム(4CaO・Al23・Fe23,“C4AF”)を含む。例えばDodson,Vance H.著,Concrete Admixtures(Van Nostrand Reinhold,New York NY
1990),page 1を参照されたい。
【0025】
本発明の種々の態様において、ポリアルコキシル化ポリアミンオキシドを水性組成物中の脱泡剤として用いることができる。
【0026】
代表的な態様は、水硬セメント質組成物を修正するための添加剤又は混和剤に関し、ここで添加剤は少なくとも1種の空気連行剤及びポリアルコキシル化ポリアミンオキシドを含む。空気連行剤の例には高級トリアルカノールアミン、リグノスルホネート、ナフタレンスルホネート、メラミンスルホネート、オキシアルキレン含有高性能流動化剤、オキシアルキレン含有収縮低減剤又はそれらの混合物が含まれる。「添加剤」という用語は本明細書で、セメント製造プラントにおいて加えられる添加剤を記述するため、ならびにまたセメントモルタル、コンクリート又は他のセメント質材料の製造のために用いられるセメント、水及び場合による骨材に加えられる「混和剤」を記述するために用いられるであろう。好ましくは、添加剤組成物は液体形態で分配され得る(例えばポンプで計量される)水性の液体である。
【0027】
本明細書で用いられる「高級トリアルカノールアミン」という用語は、少なくとも1個のC3−C5ヒドロキシアルキル、そしてより好ましくは少なくとも1個のC3−C4ヒドロキシアルキル基を中に有するトリ(ヒドロキシアルキル)アミンである第3級アミン化合物を指すであろう。第3級アミンの残りの(もしあれば)ヒドロキシアルキル基はC1−C2ヒドロキシアルキル基(好ましくはC2ヒドロキシアルキル)から選ばれることができる。そのような化合物の例にはヒドロキシエチルジ(ヒドロキシプロピル)アミン、ヒドロキシプロピルジ(ヒドロキシエチル)アミン、トリ(ヒドロキシプロピル)アミン、ヒドロキシエチルジ(ヒドロキシ−n−ブチル)アミン、トリ(2−ヒドロキシブチル)アミン、ヒドロキシブチルジ(ヒドロキシプロピル)アミンなどが含まれる。好まし
い高級トリアルカノールアミンはトリイソプロパノールアミン(“TIPA”)、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−N−(2−ヒドロキシプロピル)アミン(“DEIPA”)、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−N−(ヒドロキシエチル)アミン(“EDIPA”)及びトリ(2−ヒドロキシブチル)アミンである。そのような高級トリアルカノールアミンの混合物を用いることができ、これら又はこれらの組み合わせのいずれもトリエタノールアミン(TEA)、ジエタノールアミン(DEA)、モノエタノールアミン又はこれらの混合物の1つもしくはそれより多くと一緒に用いることができる。ポルトランドセメント又はブレンドされたセメントのための磨砕添加剤(grinding
additive)として用いられる場合、高級トリアルカノールアミンをセメントの重量に基づいて最高で2%、好ましくは最高で0.1%、そして最も好ましくは0.005%−0.03%の量で加えることができる。特にTIPAは後期強度増強剤(late
strength enhancer)としての使用に関して既知である。
【0028】
「リグノスルホネート」、「ナフタレンスルホネート」、「メラミンスルホネート」及び「オキシアルキレン含有高性能流動化剤」という用語は本明細書で、空気を連行することが既知の減水剤(“WRA”)を指すために用いられる。「リグノスルホネート」WRAには、リグノスルホン酸のアルカリ金属もしくはアルカリ土類(alkaline earth)塩、例えば通常用いられるWRAであるリグノスルホン酸カルシウムが含まれる。「ナフタレンスルホネート」WRAにはスルホン化ナフタレン−ホルムアルデヒド縮合物のアルカリ金属塩が含まれ;「メラミンスルホネート」WRAにはスルホン化メラミン−ホルムアルデヒド縮合物のアルカリ金属塩が含まれる。
【0029】
塩の形態における化合物への言及は、それらの酸の形態への言及を含み、その逆もあり得ると理解することができ、それは、酸及び塩の両方の形態が水性環境中に共存できることがあり得るからである。類似して、アミンの形態における化合物への言及はそれらのアンモニウム形態への言及を含むと理解することができ、それらの逆もあり得ることも理解することができる。
【0030】
「オキシアルキレン含有高性能流動化剤」という用語は、典型的には側鎖ポリオキシアルキレン基が結合したポリカルボン酸又は部分エステルから成る櫛形ポリマーである減水剤を指す。そのようなオキシアルキレン基にはエチレンオキシド(EO)、プロピレンオキシド(PO)及びブチレンオキシド(BO)が含まれる。そのようなオキシアルキレン含有高性能流動化剤は、セメント及びコンクリート産業において通常用いられるもののいずれかであろう。例えば炭素含有主鎖を有し、それにアミド、イミド、エステル及び/又はエーテル結合を介してポリオキシアルキレン基が結合している櫛形ポリマーである高分子高性能流動化剤が本発明における使用のために意図されている。オキシアルキレン含有高性能流動化剤の他の例にはアクリル酸又はメタクリル酸、及び、アクリル酸又はメタクリル酸とポリアルキレングリコールモノメチルエーテルとの反応生成物のコポリマーが含まれる。オキシアルキレン含有高性能流動化剤のさらなる例には、アクリル酸又はメタクリル酸とC3からC20の典型的なアルコール鎖長を有するポリアルコキシル化アルコールとのコポリマーが含まれる。
【0031】
一般に、セメント組成物に加えられるべき本発明で用いられる空気連行性減水剤(WRA)の量は、セメント又はセメント質組成物の合計重量に基づいて少なくとも約0.005重量パーセントの量内、そして通常は0.005−約5重量パーセントの範囲内、そして好ましくは0.03重量パーセント−約1重量パーセントの範囲内であろう。
【0032】
前にまとめた通り、本発明の代表的な組成物は、少なくとも1種の酸化剤と、少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン、少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリエチレンイミン又はそれらの混合物を含んでなる化合物の反応生成物を含み;
少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミンは構造式A
【0033】
【化3】
【0034】
により示され、そして少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリエチレンイミンは構造式B
【0035】
【化4】
【0036】
により示され、式中R1、R2、R3、R4、R5、R6及びR7はそれぞれ個別に水素、C1−C6アルキル基、−CH2−OH基又は−(AO)x−R8基を示し;AOはエチレンオキシド(“EO”)、プロピレンオキシド(“PO”)、ブチレンオキシド(“BO”)又はそれらの混合物から選ばれるアルキレンオキシド基を示し、ここでAO中の他のアルキレンオキシドに対するEOの相対的なモル量は合計のゼロパーセントから50パーセント未満であり;nは0−20の整数を示し;xは1−100の整数を示し;EO及びPO基の数の合計は25を超え;R8は水素又はC1−C6アルキル基を示し;−(EI)y−は直鎖又は分枝鎖構造における繰り返しエチレンイミン単位を示し;yは5−100の整数を示し;そして繰り返しエチレンイミン単位当たりの−(AO)x−鎖の相対的な数は0.1−1.0である。
【0037】
上記のポリアルコキシル化ポリアミンの酸化から生成する本発明の代表的な反応生成物は、長さにおいて6個の炭素を超える直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基を含有しないのが好ましく、それは、高級アルキル基が疎水性脂肪基を形成する傾向があり、それは反応生成物化合物が導入される水性環境内で洗剤のように気泡を捕獲する傾向があるからである。かくして少なくとも1種の酸化剤と少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン、少なくとも1種のポリアルコキシル化ポリエチレンイミン又はそれらの混合物を含んでなる化合物の反応生成物は、好ましくは6個より多い炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基を含まず、より好ましくは4個より多い炭素原子を有する直鎖状もしくは分枝鎖状アルキル基を含まない。
【0038】
本発明における使用に適した代表的な酸化剤には過酸化水素、ペルオキシ酸、例えば過ギ酸、過酢酸、過安息香酸、クロロペルオキシ安息香酸、モノペルフタル酸(monoperphthalic acid)、過硫酸、酸素分子及びオゾンが含まれるが、これらに限られない。
【0039】
第3級アミン脱泡剤の最適酸化度は、特定の用途に依存して、及び出発ポリアルコキシル化ポリアミン材料の分子量及び化学構造に依存して変わるであろうが、好ましくは第3級アミン基の10モルパーセント−100モルパーセントがアミンオキシド基に酸化されるべきであり、より好ましくは第3級アミン基の20モルパーセント−100モルパーセントがアミンオキシド基に酸化されるべきである。
【0040】
好ましい代表的な態様において、脱泡剤はポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミ
ンの酸化により製造される。本発明における使用に適した代表的なポリアルキレンポリアミンにはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ペンタエチレンヘキサミン、プロピレンジアミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレンテトラミン、テトラプロピレンペンタミン、ペンタプロピレンヘキサミン、N,N−ジメチルエチレンジアミン、N,N’−ジメチルエチレンジアミン、N,N−ジメチルプロピレンジアミン、N,N’−ジメチルプロピレンジアミン、N,N−ジエチルエチレンジアミン、N,N’−ジエチルエチレンジアミン、N,N−ジエチルプロピレンジアミン、N,N’−ジエチルプロピレンジアミンが含まれるが、これらに限られない。これらのポリアルキレンポリアミンの中でより好ましいのはエチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン又はそれらの混合物であり、最も好ましいのはジエチレントリアミンである。
【0041】
他の代表的な態様において、ポリアルコキシル化はポリアルキレンポリアミンをエチレンオキシド、プロピレンオキシド又は高級アルキレンオキシドと反応させることにより行われる。さらに別の代表的な態様において、ポリアルキレンポリアミンをエチレンオキシド及びプロピレンオキシド及び/又はブチレンオキシドと反応させることによりそれをアルコキシル化することができ、ここでプロピレンオキシド基及び/又はブチレンオキシド基のエチレンオキシド基に対するモル比は1より大きく;且つここでEO及びPO基の数の合計は25を超える。別の好ましい態様において、エチレンオキシド基の量はポリエーテルの合計重量に基づいて0%−40%の範囲内であり、プロピレンオキシド基及び/又はブチレンオキシド基の量はポリエーテルの合計重量に基づいて60%−100%の範囲内である。
【0042】
さらなる代表的な態様において、成分Aの酸化ポリアルコキシル化ポリアルキレンポリアミン脱泡剤は500−7,000の数平均分子量を有する。より好ましくは、数平均分子量は1,000−6,000であり;そして最も好ましくは数平均分子量は2,000−4,000である。
【0043】
さらなる代表的な態様において、脱泡剤はポリアルコキシル化ポリエチレンイミンの酸化により製造される。ポリエチレンイミン又はポリアジリジンは直鎖状及び/又は分枝鎖状化学構造を有することができ、400−5,000の範囲内の数平均分子量を有する。
【0044】
さらなる代表的な態様において、成分Bの酸化ポリアルコキシル化ポリエチレンイミン脱泡剤は1,000−15,000の数平均分子量を有する。より好ましくは、数平均分子量は2,000−10,000であり;そして最も好ましくは数平均分子量は3,000−7,000である。
【0045】
本発明の代表的な態様において、上記の通り反応生成物として得られるポリアルコキシル化ポリアミンオキシド脱泡剤を個別に水性環境、例えば塗料、コーティング組成物あるいは水硬セメント質組成物、例えばモルタル又はコンクリート中に個別に又は空気連行性材料と組み合わせて導入することができる。
【0046】
限られた数の態様を用いて本発明を明細書に記述するが、これらの特定の態様は他のやり方で本明細書に記載され且つ特許請求される本発明の範囲を制限することを意図していない。記述される態様からの修正及び変動が存在する。さらに特定的に、特許請求される本発明の態様の特定の例として下記の実施例を示す。本発明は実施例中に示される特定の詳細に制限されないことが理解されるべきである。
【実施例1】
【0047】
(アミンオキシドの合成)
2,550の数−平均分子量(Mn)を有するポリプロポキシル化ジエチレントリアミン(100g,0.039モル)、n−プロパノール(50ml)及び酢酸(0.2g)を反応容器に加えた。混合物を撹拌しながら50℃に加熱し、次いで30重量%の過酸化水素水溶液(4.54g,0.04モル)を50−55℃において40分間かけて混合物中に滴下した。過酸化水素滴下の後、混合物を撹拌しながら60−65℃に18時間保った。回転蒸発器を用いてn−プロパノール溶媒を除去することにより、得られるアミンオキシド生成物(試料AO1)を集めた。
【0048】
過酸化水素の量を増加させて類似のやり方でアミンオキシド試料AO2及びAO3を合成した(表1)。
【0049】
【表1】
【実施例2】
【0050】
(調製物の安定性)
この実施例において、ポリカルボキシレートエーテル分散剤を含有する低pH混合剤中における種々の脱泡剤添加剤の安定性を評価した。表2中の配合表に従って脱泡剤を含有する混合剤を調製した。水(32.9g)、試料AO1(0.40g)及び60%ポリカルボキシレート分散剤水溶液(66.7g)を撹拌下でビーカー中に加え、次いで混合物が均一になるまでそれを撹拌した。酢酸を用いてこの混合物のpHを3.5−4.0に調整した。混合物の安定性を30日間又は相分離が起こるまで視覚により監視しながら、それを50mlのシリンダー中で25℃及び50℃の両方のオーブン中に保った。
【0051】
【表2】
【0052】
表2から、アミンオキシド脱泡剤添加剤AO1、AO2及びAO3は酸性条件下でそれらの出発アミン材料と共に混合剤中で等しく安定であることが明らかである。
【実施例3】
【0053】
(調製物の安定性)
この実施例において、ポリカルボキシレートエーテル分散剤を含有する中性pH混合剤中における種々の脱泡剤添加剤の安定性を評価した。表3中の配合表に従って脱泡剤を含有する混合剤を調製した。水(19.6g)、試料AO1(0.40g)及び50%ポリカルボキシレートエーテル分散剤水溶液(80g)を撹拌下でビーカー中に加え、次いで混合物が均一になるまでそれを撹拌した。得られる混合物は6.25−7.0のpH値を有する。混合剤を50mlのシリンダー中で25℃及び50℃のオーブン中に保ち、それらの安定性を30日に及んで又は相分離が起こるまで視覚により監視した。
【0054】
【表3】
【0055】
表3において証明される通り、中性のpH条件下でアミンオキシド脱泡剤添加剤は、それらの出発アミン材料と比較して混合剤中でより安定である。
【実施例4】
【0056】
(調製物の安定性)
この実施例において、ポリカルボキシレートエーテル分散剤及び硬化加速剤を含有する高pH混合剤中における種々の脱泡剤添加剤の安定性を評価した。表4中の配合表に従って混合剤を調製した。水(76.1g)、60%ポリカルボキシレートエーテル分散剤水溶液(13.3g)及び水酸化ナトリウム(0.4g)を撹拌下でビーカー中に加えた。十分に混合した後、得られる混合物は8より高いpHを有する。次いで亜硝酸カルシウム(5.6g,32%溶液)、チオシアン酸ナトリウム(4.0g,50%溶液)及び試料AO1(0.2g)を混合剤中に加え、それが均一になるまで撹拌した。水酸化ナトリウムを用いて最終的な混合剤溶液のpHを8.5−9.5に調整した。混合剤を50mlのシリンダー中で25℃及び50℃のオーブン中に保ち、それらの安定性を30日に及んで又は相分離が起こるまで視覚により監視した。
【0057】
【表4】
【0058】
表4における結果は、本発明のアミンオキシド脱泡剤添加剤を含有する混合剤がアルカリ性条件下で、出発アミン脱泡剤を含有する混合剤におけるよりずっと安定であることを明白に示す。
【実施例5】
【0059】
(モルタル空気試験)
この実施例で、作業性及び空気含有量に関する標準的なモルタル試験において種々のアミンオキシドの脱泡有効性を評価し、ASTM C185−02標準に従ってモルタル空気含有量を測定した。モルタルの組成は以下の通りであった:セメント(540g)、砂(1400g)、ポリカルボキシレート分散剤(0.9g,60重量%)、脱泡剤添加剤(0.011g)及び水(225g)。
【0060】
【表5】
【0061】
表5においてエントリー15、16及び17をエントリー13と比較することにより、特許請求されるアミンオキシド脱泡剤である試料AO1〜AO3がモルタル中の空気含有量を低下させるのに有効であることが明らかであった。対照的に、表5のエントリー18におけるジメチルテトラデシルアミンオキシドは脱泡能力を有していなかった;それはモルタルの空気含有量を増加させた。
【実施例6】
【0062】
(コンクリート空気試験)
この実施例において、コンクリート中でポリプロポキシル化ジエチレントリアミン出発材料に対して種々のアミンオキシドの脱泡有効性を評価した。以下の組成に従ってコンクリート混合を行った:通常のポルトランドセメント、11.7kg;水、4.48kg;粗骨材、29.1kg;細骨材、25.1kg;ポリカルボキシレートエーテル分散剤(60重量%溶液)、17g;市販の空気−連行剤DARAVAIR(登録商標) 1000、1.2g;及び挙げられるアミンオキシド添加剤又はアミン添加剤。ASTM C231−97に従って空気含有量を測定した。結果を表6にまとめる。
【0063】
【表6】
【0064】
表6中のデータは、本発明のアミンオキシド(エントリー21及び22)がコンクリート中の空気含有量を減少させるのに有効な脱泡剤であることを明らかに示す(エントリー19と比較して)。
【0065】
前記の実施例及び態様は、例示目的のみのために示され、本発明の範囲を制限することは意図されていない。