【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の目的は、対象に関するHFリスクを決定する決定システム、決定方法及びコンピュータプログラムを提供することであり、これは、医師のアテンドを必ずしも要しない技術的に比較的簡単な方法でHFリスクを決定することを可能にする。
【0008】
本発明の第1の態様では、対象に関するHFリスクを決定する決定システムが提示され、決定システムは、
対象のPPGを提供するフォトプレチスモグラム(PPG)提供ユニットと、
提供されたPPGに基づきHFリスクを決定するHFリスク決定ユニットとを有し、
上記心不全リスク決定ユニットが、上記提供されたフォトプレチスモグラムに基づき、収縮期後増強(PESP)の存在及び乱れた力−周波数関係(FFR)の少なくとも1つを検出し、上記収縮期後増強の存在及び上記乱れた力−周波数関係の少なくとも1つの検出に基づき、心不全のリスクを決定する。
【0009】
PPGは、医師のアテンドを必要とすることなく、PPGセンサを使用することにより目立たない方法で提供されることができる。特に、HFリスクを決定するのに、ECGを測定し、血液検査を実施し、及び冠血管造影を行う必要は必ずしもない。従って、HFリスクは、医師のアテンドを必要とせずに、技術的に比較的簡単な方法で決定されることができる。
【0010】
PPG提供ユニットは、PPGが既に格納された格納ユニットであってもよい。この場合、PPG提供ユニットは、格納されたPPGを提供するよう構成されることができる。しかしながら、PPG提供ユニットは、PPG測定ユニットからPPGを受信し、受信されるPPGを提供する受信ユニットであってもよい。更に、PPG提供ユニットは、PPG測定ユニット自体であってもよく、この場合、PPG提供ユニットは、測定されたPPGを提供する。PPG測定ユニットは好ましくは、対象の身体の一部を照らす1つ又は複数の光源と、対象の身体からの光を検出する1つ又は複数の検出器とを有し、PPG測定ユニットは好ましくは、検出された光に基づきPPGを決定する。好ましい実施形態では、PPG測定ユニットはパルスオキシメータである。
【0011】
心不全リスク決定ユニットは、PPGに基づき左心室圧の特徴の時間的挙動を決定し、決定された時間的挙動に基づきHFリスクを規定する規則を提供し、及び決定された時間的挙動及び提供された規則に基づきHFリスクを決定することができる。この規則は、PESPの存在及び/又は力−周波数関係の乱れが、左心室圧の特徴の時間的挙動に基づきどのように検出され得るかを規定することができる。例えば、HFリスク決定ユニットは、時間的挙動を決定するため、経時的な左心室圧のピークの高さを示す、異なる時間に対するピーク値を決定するよう構成されることができる。この規則は、ピーク値の異常な時間的挙動に基づき、PESPの存在及び/又は力−周波数関係の乱れの検出を規定することができ、これはHFを得るリスクが比較的高いことを示す。「A及びBの少なくとも1つ」及び「A及び/又はB」という表現は、a)BなしのA、b)AなしのB、及びc)A及びBを含む点を理解されたい。
【0012】
一実施形態では、上記HFリスク決定ユニットが、第1のピーク値閾値及び第2のピーク値閾値を含み、a)ピーク値が上記第1のピーク値閾値よりも小さい、及びb)次のピーク値が第2のピーク値閾値より大きくないかどうかに基づき、上記PESPの存在の検出を規定する規則を提供するよう構成される。特に、HFリスク決定ユニットは、ピーク値が第1のピーク値閾値より小さく、かつ次のピーク値が第2のピーク値閾値より大きくない場合、HFリスクがより大きいと規定し、ピーク値が第1のピーク値閾値より小さく、次のピーク値が第2のピーク値閾値より大きい場合、HFリスクがより小さいと規定する規則を提供するよう構成される。健康な心臓では、第1のピーク値閾値よりも小さいピーク値は、いわゆる「無効ビート」に関連し、第2のピーク値閾値よりも大きい次のピーク値は、いわゆる「増強されたビート」と呼ばれる。この無効ビートと次の増強されたビートは、健康な心臓のPESPを示すことができる。この挙動が存在しない場合、即ち無効ビートの後に増強されたビートが続かない場合、これはHFを得るリスクが比較的高いことを示すことができる。
【0013】
一実施形態では、上記心不全リスク決定ユニットが、上記時間的挙動を決定するため、経時的な左心室の圧力の周波数を示す、異なる時間に対する周波数値を決定する。この規則は、左心室圧の周波数のどの時間的挙動が、HFを取得する比較的高いリスクを示すかを規定することができる。この場合、これらの規則は、HFリスクを決定するために周波数値と共に使用されることができる。例えば、HFリスク決定ユニットは、周波数値が経時的に増加するが、ピーク値が経時的に増加しないかどうかに基づき、乱れた力周波数関係の検出を規定する規則を提供するよう構成されることができる。特に、HFリスク決定ユニットは、周波数値が経時的に増加し、ピーク値が経時的に増加しない場合、HFリスクがより大きいことを規定し、周波数値が経時的に増加し、ピーク値が経時的に増加する場合、HFリスクがより小さいことを規定する規則を提供するよう構成されることができる。これは、HFリスクを決定するのに、力−周波数関係を確実に使用することを可能にする。正常な力−周波数関係を持つ健康な心臓では、左心室圧の周波数が増加する場合、左心室圧のピークの高さが増加する。心臓のこの健康的な挙動が観察されない場合、HFを得るリスクは比較的高くなり、HFリスクを決定するHFリスク決定ユニットによりこれが使用されることができる。
【0014】
左心室圧の特徴の時間的挙動は、PPGの対応する特徴の時間的挙動と同様であり得る。従って、例えば、左心室圧のピークの高さを示すピーク値及びその時間的位置は、PPGのピーク値を決定することにより決定されることができる。この場合、ECGにおけるピークを検出するのに一般的に使用される技術のような既知の抽出技術が使用されることができる。
【0015】
上記決定システムが、上記対象の活動状態のインジケーションを提供する活動状態提供ユニットを更に有し、上記HFリスク決定ユニットは、上記活動状態に依存する活動周波数閾値を含み、上記周波数値が個別の活動状態に関する上記活動周波数閾値より大きいかどうかに基づきHFリスクを規定する規則を提供するよう構成されることができる。特に、HFリスク決定ユニットは、周波数値が個別の活動状態に関する活動周波数閾値より大きい場合、HFリスクがより大きいと規定し、周波数値が個別の活動状態に関する活動周波数閾値より小さい場合、HFリスクがより小さいと規定する規則を提供するよう構成されることができる。従って、PESPの存在及び乱れた力−周波数関係の少なくとも1つの検出に加えて、HRリスクを決定するのに、活動状態のインジケーションが使用されることができる。対象の活動状態、例えば、対象が休息している、特に睡眠中かどうか、又は歩行中であるかを考慮することにより、HFリスクを決定する精度が更に改善されることができる。特に、周波数が比較的高く対象が静止している場合、これはHFリスクが比較的高いことを示し、周波数が比較的高く、対象が歩行又は走行している場合、比較的高い周波数は、HFを取得するリスクが比較的大きくないことを示すことが考慮される。
【0016】
一実施形態では、上記HFリスク決定ユニットが、周波数偏差閾値を含み、時間的に連続する周波数値間の偏差が上記周波数偏差閾値より大きいかどうかに基づき、上記HFリスクを規定する規則を提供するよう構成される。特に、HFリスク決定ユニットは、時間的に連続する周波数値間の偏差が周波数偏差閾値より大きい場合、HFリスクがより大きいと規定し、時間的に連続する周波数値間の偏差が周波数偏差閾値よりも小さい場合、HFリスクがより小さいと規定する規則を提供するよう構成されることができる。従って、HRリスクを決定するのに、PESPの存在及び乱れたFFRの少なくとも1つの検出に加えて、a)時間的に連続する周波数値間の偏差と、b)周波数偏差閾値との比較が使用されることができる。2つの連続するピーク間の時間的距離の逆数により規定され、従って2つの連続するピーク間の時間的距離を示す周波数値は、心拍の規則性の程度を示すことができる。時間的に連続する周波数値間の変化が周波数偏差閾値より大きい場合、これは、心拍における比較的大きな不規則性、従って心房細動(AF)を示すことができる。AFが検出される場合、HFを得るリスクは比較的大きくなり得る。この知識は、HFリスクを決定するHFリスク決定ユニットにより使用されることができる。
【0017】
一実施形態では、HFリスクはバイナリである。即ち、HFリスク決定ユニットは、HFリスクがゼロ若しくは比較的小さいか、又はHFリスクが比較的大きいかのいずれかを決定するよう構成されることができる。これは、HFリスクの2つの度合いの1つに対象を割り当てるものとみなされることができる。HFリスク決定ユニットはまた、提供されたPPGに基づき、HFリスクの2以上の程度のどの程度に対象が割り当てられる必要があるかを決定するよう構成されることができる。
【0018】
上記の規則は、HFリスクを決定するために組み合わせられることができる。特に、HFリスク決定ユニットは、a)左心室圧の特徴の時間的挙動が無効ビートの後に増強されたビートが続くことを示すかどうか、及びb)左心室圧の特徴の時間的挙動が、左心室圧の周波数が増加するとき左心室圧のピークのピーク値が増加することを示すかどうかの少なくとも1つに基づき、HFリスクを規定する規則を提供するよう構成されることができる。上記規則はオプションで、c)活動状態に基づかれる、左心室圧の周波数の変化と、d)時間的に連続する周波数値間の偏差の少なくとも1つに基づき、HFリスクを更に規定することができる。HFリスク決定ユニットはまた、左心室圧の特徴の更なる時間的挙動に基づき、HFリスクを規定する規則を提供するよう構成され得る。
【0019】
上記決定システムが、上記対象の呼吸数を提供する呼吸数提供ユニットを有し、上記HFリスク決定ユニットは、上記提供された呼吸数に基づきHFリスクを決定するよう構成されることが好ましい。特に、提供される規則は、左心室圧の特徴の時間的挙動だけでなく、呼吸数に基づきHRリスクを規定することができる。これは、HFリスクを決定する精度を更に向上させることができる。
【0020】
一実施形態では、上記決定システムが、上記対象の活動状態のインジケーションを提供する活動状態提供ユニットを有し、上記HFリスク決定ユニットは、上記活動状態に依存する呼吸数閾値を提供し、上記呼吸数が個別の活動状態に関する上記呼吸数閾値より大きいかどうかに基づき、上記HFリスクを決定するよう構成されることができる。対象の活動状態、例えば、対象が休息している、特に睡眠中かどうか、又は歩行中であるかを考慮することにより、HFリスクを決定する精度が更に改善されることができる。特に、呼吸数が比較的高く対象が静止している場合、これは、HFリスクが比較的高いことを示し、一方、呼吸数が比較的高く、対象が歩行又は走行している場合、比較的高い呼吸数は、HFの比較的高いリスクを示すものではないと考えられることができる。
【0021】
好ましくは、上記呼吸数提供ユニットが、PPGに基づき呼吸数を決定し、上記決定された呼吸数を提供するよう構成される。これは、胸部ベルト又はフローセンサのような追加のデバイスを必要とすることなしに呼吸数を決定することを可能にし、これにより、呼吸数を非常に目立たない態様で得ることを可能にする。
【0022】
本発明の別の態様では、対象のHFリスクを決定する決定方法が提示され、この決定方法は、
PPG提供ユニットにより対象のPPGを提供するステップと、
HFリスク決定ユニットにより、上記提供されたPPGに基づきHFリスクを決定するステップとを有し、
上記心不全リスク決定ユニットが、上記提供されたフォトプレチスモグラムに基づき、収縮期後増強の存在及び乱れた力−周波数関係の少なくとも1つを検出し、上記収縮期後増強の存在及び上記乱れた力−周波数関係の少なくとも1つの検出に基づき、心不全のリスクを決定する。
【0023】
本発明の更なる態様では、対象に関するHFリスクを決定するためのコンピュータプログラムが提示され、このプログラムは、コンピュータに、請求項14に記載の決定方法を実行させる。
【0024】
請求項1に記載の決定システム、請求項14に記載の決定方法、及び請求項15に記載のコンピュータプログラムは、特に、従属請求項に規定されるのと同様の及び/又は同一の好ましい実施形態を持つ点を理解されたい。
【0025】
本発明の好ましい実施態様は、従属項又は上記実施形態と個別の独立クレームとの任意の組み合わせとすることもできる点を理解されたい。
【0026】
本発明のこれら及び他の側面が、以下に説明される実施形態から明らかとなり、これらの実施形態を参照して説明されることになる。