特許第6860606号(P6860606)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860606
(24)【登録日】2021年3月30日
(45)【発行日】2021年4月14日
(54)【発明の名称】産業用空調機アルミフィンの洗浄方法
(51)【国際特許分類】
   C11D 7/54 20060101AFI20210405BHJP
   C11D 7/12 20060101ALI20210405BHJP
   C11D 7/26 20060101ALI20210405BHJP
   C23G 1/12 20060101ALI20210405BHJP
   C23G 1/22 20060101ALI20210405BHJP
   B08B 3/08 20060101ALI20210405BHJP
【FI】
   C11D7/54ZAB
   C11D7/12
   C11D7/26
   C23G1/12
   C23G1/22
   B08B3/08 A
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-71006(P2019-71006)
(22)【出願日】2019年4月3日
(65)【公開番号】特開2020-169257(P2020-169257A)
(43)【公開日】2020年10月15日
【審査請求日】2020年8月31日
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】710006541
【氏名又は名称】西村 直人
(72)【発明者】
【氏名】西村 直人
(72)【発明者】
【氏名】西村 裕二
【審査官】 柴田 啓二
(56)【参考文献】
【文献】 特開平04−131390(JP,A)
【文献】 特開2009−263413(JP,A)
【文献】 国際公開第2000/042163(WO,A1)
【文献】 特開平02−099599(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C11D
C23G
B08B 3/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
食品加工工場の空調機アルミフィンを対象とする洗浄方法であって、
アルカリ性と酸性の2種類の洗浄剤を使用し、前記アルカリ性の洗浄剤と酸性の洗浄剤をそれぞれ水で希釈して洗浄液とした後、前記アルカリ性の洗浄液を前記空調機アルミフィンに噴霧し、続いて前記酸性の洗浄液を前記空調機アルミフィンに噴霧し、アルミフィンに付着した汚れを浮かせて高圧洗浄機の水圧で洗浄する方法において、
前記アルカリ性の洗浄液と前記酸性の洗浄液は同じ化学当量になるように調合され、それぞれの洗浄液を同じ体積容量で混合すると中和されて水素イオン濃度が中性の領域になり、
前記アルカリ性の洗浄剤の成分は、過炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの2種類の混合物であって、前記過炭酸ナトリウムと前記炭酸水素ナトリウムは、水で希釈した際にマイクロバブルを発生させるものであり、
前記酸性の洗浄剤の成分はクエン酸であって、前記酸性の洗浄液を前記アルカリ性の洗浄液と混合させた場合にもマイクロバブルを発生させるものであり、
前記マイクロバブルによって食品加工工場の空調機アルミフィンの汚れを洗浄する洗浄方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明は、食品加工工場、金属加工工場等の産業分野を対象とした空調機アルミフィンの洗浄方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家庭用エアコン、産業用空調機等は各家庭、各職場、各工場の社会インフラストラクチャーとして普及し、世の中になくてはならいものとなっている。家庭用エアコン、産業用空調機は使用すれば、その熱交換器アルミフィン(以下、アルミフィンと略す)は汚れて、熱効率の劣化(すなわち電力使用量の増加)、カビ汚染源等の問題が発生するので、適切な定期的な保守管理が必要となっている。図1は、各種類の家庭用エアコン、産業用空調機のアルミフィン洗浄の事業分野と対象物のイメージ図である。
【0003】
発明が対象とする事業分野は、図1に示す食品加工工場及び金属加工工場等に設置の空調機、ユニットクーラー、産業用床置空調機、オイルクーラー、スポットクーラー及び空冷式チラー等のアルミフィンの洗浄方法である。
【0004】
当該産業分野のアルミフィンの洗浄剤に求められる性能は、作業者が安全に作業できるもの、洗浄後の廃液が環境基本法の公共用水域の水質汚濁防止法を遵守するものなどの高い作業基準の要求がある。しかし産業分野に対応できる安全なアルミフィンの洗浄剤、洗浄方法は無かった。
【0005】
産業用空調機の保守管理の作業内容は、空調機アルミフィンの前面(吸込み面)に設置してある、プラスチック製のフィルターあるいは使い捨ての不織布フィルターの清掃を定期的に行っている。工場等ではアルミフィンに付着の粉塵をブロアーで吹き飛ばす方法で対応している状況があるが、フィルターの先にあるアルミフィンの清掃までは管理されていない。10年程度使用したら新しい空調機に更新している職場環境が一般的である。
【0006】
汚れの酷い空調機は、民生用で使用されている水酸化ナトリウムを主成分とするアルミフィン洗浄剤を流用して洗浄作業を行っているのが一般的である。
確かに、水酸化ナトリウム入りの洗浄剤は、アルミフィンを溶かす程の洗浄力があるが、洗浄後の廃液処理はph=12.5以上の特別管理産業廃棄物扱いの廃液であり、廃液を持ち帰り専門の産業廃棄物処理事業者に処理を委託する。あるいは中和剤(酸性液)で中和処理を確認後下水溝に流すまたは特許文献1に示す廃液処理等の工夫が必要であった。
【0007】
家庭用エアコン、産業用空調機等の室内機は高所にあるため、洗浄作業工程で廃液を完全に回収できるように室内機全体を包み込むビニール製の養生具(ホッパー)等を工夫すれば、廃液を回収できる状態である。
しかし室外機の洗浄に於いては、屋外の地面あるいは屋上等に室外機をじかに設置している環境が多いので、アルミフィンを洗浄後に廃液を回収するには大型のバキューム車で吸引、回収する以外は垂れ流し状態となり廃液の回収は現実には困難である。したがって、洗浄後の廃液を垂れ流しても安全な室外機用のアルミフィン洗浄剤の開発が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2015-066550公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
従来の苛性ソーダ入りの強アルカリ性の洗浄液を使用した洗浄方法は、確かに洗浄力はあるが、作業者と地球環境に次のような大きな負荷を与えている課題がある。
課題1:苛性ソーダ液が、作業者の眼に入ると失明の危険がある。皮膚に付着すると炎症を起こすので、眼の保護にゴーグル、非通水性のゴム手袋の着用は必須である。
課題2:強アルカリの苛性ソーダ液は、環境基本法の水質汚濁に係る環境基準により下水溝には流せない危険物(劇物扱い)である。廃液処理は都道府県知事認可の産業廃棄物事業者に処理を委託する必要があるので、その分の処理費用がかかる。
課題3:このような危険な洗浄剤を食品加工工場で使用すること自体が、大きなリスクである。万一、食材に交じった場合のトラブル処理は大変高価な代償を支払うことになることは予測できることである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
発明者らは、上記課題の解決を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、マイクロバブル技術の利用、微細気泡(マクロバブルと言う)を化学的手段で発生する洗浄剤が課題の解決に資することを見出し、この知見に基づいて本発明をなすに至った。
【0011】
すなわち、本発明は、以下である。
本願発明は、強アルカリの苛性ソーダの水質汚濁法違反の課題2を解決する手段として、アルカリ性と酸性の物質を混合して使用し、水に希釈すればアルカリ性と酸性の物質が混じり合って水素イオン濃度がほぼPH7の中和領域になるように各物質の割合を調合する。
粉末のD剤、粉末のB剤それぞれ1キャップを10リットルの2つのバケツにそれぞれを入れて、1リットルの水道水に希釈して、アルミフィンにそれぞれを順次噴霧する。その後、高圧洗浄機(水圧5〜10メガパスカル)で清水になるまで洗浄するものである。
現場では、アルミフィンの大きさと汚れの程度に対応して、D剤、B剤の使用量を見積もる。
D剤のキャップ1杯は、B材のキャップ1杯、この割合で混合すると洗浄後の廃液が中和ph7の領域にバランスするように設計されている。
D剤とB剤のキャップ1杯を基準に洗浄剤を水で希釈、中和処理を常時維持しながら洗浄作業を行うことが重要である。
【0012】
本願発明のD剤、B剤(酸性の薬剤)は食品加工工場向けに開発した洗浄剤(図1でD剤とB剤と表示)、その内容物の組成を明らかにすると、D剤の成分は、過炭酸ナトリウム(2NaCO3・3H2O2)、25〜75質量%と炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、25〜75質量%の混合物である。B剤の成分はクエン酸CH2(COOH)C(OH)(COOH)CH2(COOH) 100質量%である。
【0013】
本願発明の金属加工工場のアルミフィンに対応する洗浄剤(図1でE剤と表示)は、金属加工時の鉱物油の汚れに対応、工作機械に付帯するオイルクーラー、スポットエアコン及び室外機等のアルミフィンを洗浄するものである。
E剤の組成は、過炭酸ナトリウム(2NaCO3・3H2O2)、20〜50質量%と炭酸水素ナトリウム(NaHCO3)、20〜50質量%とクエン酸20〜75質量%及びキレ―ト剤25〜75質量%(キレスト株式会社のEDTA剤等)の4種類の混合物である。E剤、1キャップを10リットルのバケツに入れ、1リットルの水道水で希釈、アルミフィンに噴霧する。その後高圧洗浄機で清水になるまで洗浄するものである。
【発明の効果】
【0014】
発明では、アルカリ性洗浄剤D剤をアルミフィンに噴霧することにより、酸性の汚れ(皮脂よごれ、植物油等の高級脂肪酸汚れ等)を剥離、続けて酸性洗浄剤B剤を噴霧することにより、アルカリ性の汚れ(水アカ、石けんカス、尿等)の両方の汚れを剥離できる。アルカリ性洗浄剤と酸性洗浄剤を同化学当量使用することにより、廃液を全部バケツに回収すれば、結果として中和処理が完了する洗浄方法である。
【0015】
なお、汚れと悪臭は相関関係があり、悪臭も酸性の臭いとアルカリ性の臭いの混合物質であるので、酸性液とアルカリ液の両方で洗浄することは悪臭の除去も同時に行う効果がある。
【0016】
本願発明においては、市販の危険な苛性ソーダ入り洗浄剤の溶液に替えて、粉末状の洗浄剤、過炭酸ナトリウムと炭酸水素ナトリウムの粉末状混合物及びクエン酸の粉末を採用した洗浄剤である。
3種類の薬剤の成分は、世の中で色々な分野で多量に使用されており、安全な薬剤かつ原価も安いものである。過炭酸ナトリウムは安全性のある漂白剤、炭酸ナトリウム及びクエン酸はサイダー、レモン水の原料等として大量に使用されている。また、炭酸水素ナトリウムとクエン酸は、食品添加物であり、食品工場等で多量に使用されている安全な薬剤である。
【0017】
詳細は後述するが、これらの洗浄剤を水(好適には40℃以上のお湯が良い)に溶かすと髪の毛の太さ程度(約100μm)以下の微細気泡(マイクロバブルと言う)の炭酸ガスCO2、あるいは酸素ガスO2を発生する。したがって、密閉した容器に液状で保存すると、マイクロバブルの微細気泡の圧力で容器が破裂するので、粉末状で運搬、現場で水あるいはお湯で希釈して使用する方法が安全であり、最良である。
【0018】
本願発明の洗浄剤D剤、B剤を使用して、屋外に設置の室外機等のアルミフィンを洗浄する場合は、最終的にはD剤とB剤の廃液は混合されて中和処理されるので、廃液を回収する必要は無い。従来の苛性ソーダ入りの洗浄剤と比較して作業者と環境に配慮した安全性が高い洗浄剤である。
【0019】
発明のE剤は、金属加工工場の潤滑油(鉱物油)汚れ、特に工作機械に付帯するオイルクーラーのアルミフィンの専用に開発した洗浄剤である。食品工場向けの洗浄剤、前記のD剤とB剤の流用では、洗浄力が不足していた。金属イオンを封鎖するキレート剤を混入することにより、鉱物油汚れを剥離する洗浄剤となる。
さらに、E剤には、酸性の薬剤、クエン酸(粉末)を発泡促進と中和処理の目的で調合してある。E剤を水道水で溶解すれば、マイクロバブルが発生すると同時にその水溶液の液性は中性となる。
洗浄時に、10リットルのバケツにE剤をキャップ1杯投入、1リットルの水道水で希釈後、アルミフィンに噴霧、続けて高圧洗浄機で剥離した鉱物油汚れを洗い流す方法である。鉱物油の汚れがひどい場合は、E剤の量を増やし、前記の使用量を基準に水で希釈する。
なお洗浄後の廃液(鉱物油)は、特別管理産業廃棄物指定、ドラム缶に収納して専門の産業廃棄物処理事業者に処理を委託するシステムである。
【0020】
さらに、E剤は石油系の汚れである排気ガスで汚れたエアコン、空調機等の空冷式の室外機アルミフィンの洗浄にも有効である。洗浄後の廃液は、前記で明らかにした混合物で中和処理がされるように配合しているので、地面に垂れ流しても安全である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】各種類の家庭用エアコン、業務用空調機等のアルミフィン洗浄の事業分野と対象物のイメージ図である。
図2】過炭酸ナトリウム10gが200mlのお湯に溶けたときに発生する酸素O2の容量(体積、ml)の温度特性である。(資料提供:具志堅園子外5名の論文、2013年、J.FAC.EDC.SAGA.UNIV.VOL.18,NO1)
図3】本発明の洗浄剤の検証検査データ、D剤の洗浄力を厨房の油汚れに対して検査したものである。
図4図3の検証検査データを実施したラーメン店のグリストラップに本発明品D剤を投入したときの油汚れの変化の様子(写真)である。
図5】本発明品、洗浄剤D剤とE剤を市販のアルミフィン洗浄剤(苛性ソーダ混入品)と比較した、7名の被試験者によるモニタリング結果である。
図6】マイクロバブルの洗浄効果の解明、プラスに帯電する植物性の油汚れをマイナスに帯電するマイクロバブルが剥離するメカニズムのデータ。(資料提供:柘植秀樹の論文、日本海水学会誌 第64 巻 第1 号2010年)
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施例の詳細を記述する。
前記の三種類の洗浄剤(D剤、B剤、E剤)がマイクロバブルを発生するメカニズムを化学式で説明する。
【0023】
食品加工工場の空調機アルミフィン用の洗浄剤、D剤とB剤に水を投入して使用した時の炭酸ガスCO2発生と酸素ガスO2発生を説明する。
【0024】
(1) 炭酸水素ナトリウムにクエン酸の水溶液を加えたときの化学変化は次式である。クエン酸塩と水と炭酸ガスCO2のマイクロバブルが発生する。

CH2−COOH CH2―COONa
| |
C(OH)COOH+3NaHCO3→ C(OH)COONa+3H2O+3CO2
| |
CH2−COOH CH2−COONa

(2)次に、過炭酸ナトリウムが水と反応する時の化学反応は次式である。
反応の結果は、炭酸ナトルウム塩と水と酸素ガスO2のマイクロバブルが発生する。

2NACO3・3H2O2 → 2NACO3 + 3H2O2
2H2O2 → 2H2O + O2
【0025】
図2は、過炭酸ナトリウムにお湯を加えた時の酸素ガスO2の量(体積V)を具体的に具志堅等(具志堅園子外5名、2013年、J.FAC.EDC.SAGA.UNIV.VOL.18,NO1)が計測したデータである。お湯の温度が高い方が早く、多量の酸素ガスO2を発生していることを理解できる。
【0026】
発明者らは、コップにD剤を入れて、60℃のお湯を注ぐと、白い大量のマイクロバブルが発生する様子を観測している。これをペットボトルに入れて、キャップを堅く締めると、ペットボトルが炭酸ガスCO2、酸素O2のガス圧力で膨らみ、破裂する程になることを観測している。
また、コップにD剤を入れて、お湯で溶解したD剤を24時間放置後、白いマイクロバブルの泡が消えた状態の水溶液に赤いレーザー光線を照射するとレーザー光線の直線の軌跡がきらきらと観測できることを確認している。マイクロバブルあるいはナノバブルの泡が残存しており、レーザー光が乱反射している状態を観測しているものと推定する。
同様に、水道水にレーザー光線を照射しても、レーザー光の軌跡をコップ内に発見できないことを確認している。
【0027】
発明者らは、D剤の酸素O2ガス、マイクロバブルの発生と油汚れに対する洗浄効果を次ぎの三つの方法で実証検証しました。
一つ目の検証方法について説明する。
図3は、ラーメン店とパン製造店(パン店)の2カ所で検証したデータである。夫々の厨房から出る排水を溜めるグリストラップにD剤(600g)を投入し、24時間後の水質(ノルマルヘキサン抽出物質と生物化学的酸素要求量BODの値)の変化を検査したものである。D剤の投入前と後の2つ溶液が入っている容器を一般社団法人千葉県薬剤師検査センターに送付し、検査を依頼したものである。
2箇所の検査データは、同じ傾向でノルマルヘキサン抽出物質、BOD共に減少した。
ラーメン店のノルマルヘキサン抽出物質値は、投入前よりも1/13に減少した。パン店の値は1/5に減少した。ラーメン店の方がパン店よりも油汚れが酷く、油の量が1.5倍多かった。目視でもラーメン店の油汚れが
大きいことを観察している。
生物化学的酸素要求量BODの値は、2カ所とも同じ割合で1/3に減少した。ノルマルへキサン抽出物質の減少から油汚れが減少したこと、またBOD値の減少から排水に酸素O2が大量に供給されていることを理解できる。
【0028】
二つ目の検証方法の結果を図4に示す。
ラーメン店のグリストラップにD剤(1瓶、600g)を投入、24時間後の槽内の変化を観察したもので、D剤のマイクロバブル発生により汚水が膨張し、グリストラップ槽から汚水があふれている様子を見ることができる。
【0029】
三つ目の検証方法の結果を図5に示す。
図5は、D剤とE剤の洗浄力を市販の苛性ソーダ入りの洗浄剤と比較したもので、7名の被試験者によるモニタリングの結果である。■マークが苛性ソーダ入りの市販のアルミフィン洗浄剤、◎マークがE剤、▲マークがD剤である。
7名中5名が◎のE剤の洗浄力が一番と判定、■マーク(苛性ソーダ入り市販品)は二番手、▲マーク(D剤)は三番手の順番と判定しました。
洗浄力の試験方法は、厨房の換気扇に装着して使用後、真っ黒に汚れた不織布フィルターを短冊状に同じサイズに切って、24時間夫々の洗浄液に浸けんで、その油汚れの剥離の程度を目視で比較、7名の被試験者が順位を付けたものである。
上記の判定結果であるが、3種類の洗浄力の差は小さく、3つの洗浄剤は実用的な洗浄力を有しているものである。
【0030】
図6は、マイクロバブルによる洗浄のメカニズムを解説した論文に掲載のデータ(柘植秀樹、日本海水学会誌 第64 巻 第1 号2010年)である。
100μm以下のマイクロバブルは、溶液中のアルカリ性領域ではマイナスの電荷(ゼータ電位)を持ち、プラスに帯電している酸性の汚れ(皮脂よごれ、植物油等の高級脂肪酸汚れ等)を大きく剥離する効果がある。
また、酸性領域ではプラスの電荷をもち、アルカリ性の汚れ(水アカ、石けんカス、尿等)を除去する効果がある。
図6は蒸留水でマイクロバブルを発生させて、ゼータ電位を計測したもので、塩酸と苛性ソーダで水溶液のphを調整して、Phに対応するゼータ電位を計測したものである。
一般的な環境にはプラスに帯電した汚れが多いので、かつ図6の特性のようにPhの増加と共にゼータ電位の発生も大きくなっているので、マイクロバブルによる洗浄効果が顕著に発揮する領域であることを理解できる。
【産業上の利用可能性】
【0031】
産業用の熱交換器アルミフィンは、家庭用エアコン、業務用空調機以外にも、コンプレッサー、除湿機等の熱を発する装置には装着されている、これらへの適用がある。さらに、金属加工工場の機械装置、工場建屋の室内の壁、床及び屋外の壁等の清掃への適用がある。
図1
図2
図3
図4
図5
図6