(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿された自然言語情報の解析により、前記自然言語情報に関する場所を示す場所情報及び前記自然言語情報の意味を示す意味情報が付与されたSNS解析情報を取得するSNS解析情報取得部と、
前記意味情報に関連付けられる客観的情報を取得する客観的情報取得部と、
前記SNS解析情報と前記客観的情報とに基づいて、特定の事象を推定する推定部と、を備え、
前記推定部は、所定の時間範囲内で前記SNS解析情報を所定の地理的区分毎に集計した件数を示すSNS件数情報と、前記所定の時間範囲内の前記客観的情報を前記所定の地理的区分毎に変換した客観的情報との関係に基づいて、前記特定の事象を推定する、
情報処理装置。
【発明を実施するための形態】
【0018】
添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。なお、各図において、同一の符号を付したものは、同一又は同様の構成を有する。
【0019】
(情報処理システムの構成)
<概略構成>
図1は、本実施形態に係る情報処理システム1の概略構成の一例を示す図である。
図1に示すように、情報処理システム1は、情報処理装置10、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)サーバ20、情報提供システム30及びユーザ端末40を備える。
【0020】
情報処理装置10は、SNSサーバ20に投稿(post)された自然言語で構成される情報(自然言語情報)のように投稿者の主観に基づく情報(主観的情報)と、客観的な数値や状況を示す情報(客観的情報)と、に基づいて、特定の事象(例えば、災害の発生等)を推定する装置である。当該客観的情報は、例えば、所定のメッシュ毎の降雨量を示す情報(降雨情報)、所定のエリア毎の震度を示す情報(震度情報)、避難所の状況(例えば、収容人数等)に関する情報(避難所情報)、診療の状況(例えば、負傷者数、病気等)に関する情報(診療情報)、被害状況又は被害想定に関する情報、各種警報(例えば、大雨洪水警報等)等であってもよい。
【0021】
情報処理装置10が客観的情報としてどのような情報を用いるかは、上記自然言語情報の解析により付与される意味を示す意味情報(例えば、後述するオントロジーにより付与される「災害→氾濫等」)に関連付けて予め定められてもよい。これにより、当該意味情報に最適な客観的情報を用いて特定の事象を推定できるので、当該特定の事象の推定精度を向上できる。情報処理装置10は、例えば、インターネット等のネットワークNを介して、SNSサーバ20、情報提供システム30及びユーザ端末40と接続される。
【0022】
SNSサーバ20は、SNSに投稿される情報(SNS投稿情報)を管理するサーバである。SNSは、例えば、Twitter(登録商標)、Facebook(登録商標)、LINE(登録商標)の少なくとも一つ等であってもよいが、これらに限られない。当該SNS投稿情報は、SNSに投稿される自然言語情報を含み、例えば、テキストデータ、画像データ、動画データ及び音声データの少なくとも一つで構成されてもよい。なお、SNSに対する投稿は、「つぶやき」、「ツィート」等と呼ばれてもよい。
【0023】
情報提供システム30は、上記客観的情報を提供する一以上のシステムで構成される。情報提供システム30は、例えば、防災情報共有システム(Shared Information Platform for Disaster management(SIP4D))、災害時診療概況報告システム(Japan-Surveillance in Post Extreme Emergencies and Disasters(J−SPEED))、避難所状況応急評価システム(Rapid Assessment System of Evacuation Center Condition(Rasecc))等の少なくとも一つによって構成されてもよい。
【0024】
ユーザ端末40は、情報処理装置10で推定される特定の事象に関する情報を取得する端末である。ユーザ端末40は、情報処理装置10に対して、当該特定の事象の推定を要求する情報(推定要求情報)を送信し、当該推定要求情報に応じた情報処理装置10から送信される当該特定の事象に関する情報を取得してもよい。ユーザ端末40は、ユーザ側のシステムであってもよいし、当該システムに接続する端末装置(スマートフォン端末、タブレット型端末、パーソナルコンピュータ装置)であってもよい。
【0025】
<機能構成>
図2は、本実施形態に係る情報処理装置10の機能構成の一例を示す図である。情報処理装置10は、SNS投稿情報取得部11、自然言語処理部12、地名辞書記憶部13、オントロジー記憶部14、時間処理部15、SNS解析情報記憶部16、客観的情報取得部17、関連付けテーブル記憶部18及び推定部19を具備する。
【0026】
SNS投稿情報取得部11は、SNSサーバ20で管理されるSNS投稿情報を取得する。当該SNS投稿情報は、SNSに投稿される自然言語情報を含み、当該自然言語情報を投稿した時間を示す情報等を含んでもよい。SNS投稿情報取得部11は、所定のタイミングで当該SNS投稿情報を取得してもよいし、後述する推定要求情報の取得に応じてSNS投稿情報を取得してもよい。なお、自然言語情報は、文字列等と言い換えられてもよい。
【0027】
自然言語処理部12は、SNS投稿情報取得部11によって取得される自然言語情報に対して所定の解析処理を行うことによりSNS解析情報を取得してもよい。具体的には、自然言語処理部12は、地名辞書記憶部13に記憶される地名辞書を参照して、当該自然言語情報に関する場所を示す場所情報をSNS解析情報に付与してもよい。また、自然言語処理部12は、オントロジー記憶部14に記憶されるオントロジーを参照して、当該自然言語情報の意味を示す意味情報をSNS解析情報に付与してもよい。なお、当該地名辞書及び/又はオントロジーは、機械学習を用いて構築されてもよい。
【0028】
ここで、自然言語情報に対する所定の解析処理は、形態素解析、構文解析、意味解析及び文脈解析の少なくとも一つを含んでもよい。形態素解析とは、自然言語の文字列から一以上の形態素(Morpheme)を特定し、各形態素の品詞等を解析することである。形態素とは、言語で意味を持つ最小の構成要素であり、単語とも呼ばれる。
【0029】
構文解析とは、形態素解析で得られた構成要素間の関係性を解析し、構成要素間の係り受けの構造を示す構文木を構築することである。意味解析とは、辞書をもとに構成要素間の関係性を解析して、構文解析により得られた構文木の中から正しい構文木を選択することである。文脈解析とは、前後の複数の文を通して、形態素解析及び意味解析を行うことである。意味解析及び文脈解析は、機械学習を用いて実施されてもよい。なお、ここでは、日本語の解析処理を想定して説明するが、言語は日本語以外の言語であってよく、その場合、各言語に応じた解析処理を行えばよい。
【0030】
図3A〜3Dは、本実施形態に係る自然言語処理部12による所定の解析処理の一例を示す図である。
図3Aでは、SNSに投稿された自然言語情報「先程の余震で益城町でがけ崩れが起きた。」が示される。当該自然言語情報は、
図3Bに示すように、形態素解析により、「先程」、「の」、「余震」、「で」、「益城町」、「で」、「がけ崩れ」、「が」、「起きた」、「。」という複数の構成要素に分解される。
【0031】
図3Cに示すように、構文解析により、分解された複数の構成要素間の構文(構造)が解析される。例えば、
図3Cでは、主語が「がけ崩れが」であること、述語が「起きた」であること、副詞句「余震で」及び「益城町で」が述語「起きた」を修飾すること、形容詞「先程の」が副詞句「余震で」を修飾すること等が解析される。
【0032】
図3Dに示すように、意味解析及び/又は文脈解析により、例えば、“どこで(where)”を示す場所情報と、例えば“何が(what)”示す意味情報とが付与されたSNS解析情報が生成される。SNS解析情報は、例えば、“いつ(when)”を示す時間情報が付与されてもよい。
図3Dに示すように、SNS解析情報は、種々のメタデータが付与された構造化データであってもよい。
【0033】
例えば、
図3Dでは、自然言語処理部12は、地名辞書記憶部13に記憶される地名辞書の検索により、「益城町」を示す場所情報(ここでは、市区町村レベルで「益城」、都道府県レベルで「熊本」、国レベルで「日本」)が付与されたSNS解析情報を生成する。また、自然言語処理部12は、オントロジー記憶部14に記憶されるオントロジーの検索により、意味情報(ここでは、第1レベルで「土砂災害」、第1レベルよりも上位の第2レベルで「地震」)が付与されたSNS解析情報を生成する。ここで、オントロジーとは、共通語彙(概念)を提供する体系的な辞書であり、概念と概念間の関係(意味リンク)を用いて記述されてもよい。
【0034】
図4は、本実施形態に係るオントロジーの一例を示す図である。
図4に示すように、オントロジーは、Resource Description Framework(RDF)のトリプルの集合で構成されてもよい。各トリプルは、主語(subject)と述語(predicate)と目的語(Object)という3つの要素で構成される、主語と目的語との間の関係の文を示してもよい。
図4では、主語が矢印の始点に位置する楕円のノードによって示され、述語が矢印によって示され、目的語が矢印の終点に位置する長方形のノードによって示される。また、目的語が更に主語となる場合、当該目的語は長方形のノードの代わりに、楕円のノードで示される。
【0035】
例えば、
図4に示されるオントロジーは、主語「災害が」、目的語「地震を」及び述語「を含む」により構成されるトリプル、主語「地震が」、目的語「土砂災害を」及び述語「を引き起こす」により構成されるトリプル、主語「災害が」、目的語「台風を」及び述語「を含む」により構成されるトリプル、主語「台風が」、目的語「土砂災害を」及び述語「を引き起こす」により構成されるトリプル等を含む。
【0036】
以上のようなオントロジーは、例えば、RDF Scheme(RDFS)、Web Ontology Language(OWL)等の言語を用いて定義されてもよい。なお、
図4に示すオントロジーは、例示にすぎず、図示するものに限られない。オントロジーは、主語・述語の関係に限られず、同義語、上位下位、対義語、因果性等のように構成要素間の種々の関係を記述したものであってもよい。
【0037】
以上のように、自然言語処理部12は、SNSに投稿された自然言語情報から、地名辞書に基づく場所情報及びオントロジーに基づく意味情報が付与されたSNS解析情報を自ら生成して取得してもよい。なお、情報処理装置10は、当該SNS解析情報を自ら生成せずに、他のシステムで生成されたSNS解析情報を、通信部10cを介して取得してもよい。当該他のシステムは、例えば、ディサーナ(DISAster information ANAlyzer(DISAANA))(登録商標)(対災害SNS情報分析システム、災害時SNS情報分析システム等ともいう)、ディーサム(Disaster-information SUMMarizer(D−SUMM))(登録商標)(災害状況要約システム等ともいう)等であってもよい。このように、自然言語処理部12は、本発明に係る「SNS解析情報取得部」を構成してもよい。
【0038】
時間処理部15は、自然言語処理部12で取得されたSNS解析情報を、時間と関連付けて、SNS解析情報記憶部16に記憶させる。
図5は、本実施形態に係るSNS解析情報記憶部16の記憶内容の一例を示す図である。
図5に示すように、SNS解析情報に付与された場所情報及び意味情報は、当該自然言語情報に関する時間(例えば、投稿時間)と関連づけられて記憶されてもよい。また、当該場所情報及び意味情報は、当該自然言語情報と関連付けて記憶されてもよい。なお、
図5は例示にすぎず、SNS解析情報記憶部16の記憶内容は図示するものに限られない。
【0039】
客観的情報取得部17は、特定の意味情報に関連付けられる客観的情報を取得する。当該特定の意味情報は、オントロジーを用いて付与される少なくとも一つの意味情報(例えば、
図4の「地震→土砂災害」など)であればよい。当該特定の意味情報は、特定の事象の推定を要求する情報(推定要求情報)内で指定されてもよい。当該推定要求情報は、ユーザ端末40から送信又は入力部10dから入力されてもよい。
【0040】
具体的には、客観的情報取得部17は、オントロジーを用いて付与される意味情報と客観的情報とを関連づける関連付けテーブルを用いて、客観的情報を取得してもよい。
図6は、本実施形態に係る関連付けテーブルの一例を示す図である。
図6に示すように、関連付けテーブルでは、オントロジーの各ノードによって示される意味情報と、当該意味情報に適する客観的情報と、が関連付けられてもよい。
【0041】
図6に示すように、例えば、SNS解析情報に意味情報「地震→土砂災害」が付与される場合、当該意味情報に関連付けられる客観的情報として、震度情報が取得されてもよい。一方、SNS解析情報に意味情報「台風→土砂災害」が付与される場合、当該意味情報に関連付けられる客観的情報として、降雨情報が取得されてもよい。意味情報が同じ「土砂災害」を示す場合であっても、当該「土砂災害」の上位概念が「地震」又は「台風」のどちらであるかによって意味情報に関連付けられる客観的情報が異なってもよい。
【0042】
このように、オントロジー内の一以上のノードの組み合わせによって意味情報が付与され、当該意味情報に関連付けられる客観的情報が予め定められてもよい。なお、
図6では、意味情報と客観的情報とを関連づける関連付けテーブルが示されるが、情報処理装置10は、当該意味情報と当該客観的情報との関連付けを把握できれば、当該関連付けテーブルを記憶していなくともよく、関連付けテーブル記憶部18は省略されてもよい。また、
図6に示される意味情報と客観的情報の関連付けは、例示にすぎず、当該関連付けは図示するものに限られない。
【0043】
推定部19は、特定の意味情報に基づいてSNS解析情報記憶部16から抽出されるSNS解析情報と、客観的情報取得部17によって取得される、当該特定の意味情報に関連付けられる客観的情報と、に基づいて、特定の事象を推定する。
【0044】
図7は、本実施形態に係る推定部19の詳細構成の一例を示す図である。
図7に示すように、推定部19は、SNS件数情報生成部191と、客観的情報変換部192と、マッチング推定部193と、を具備する。なお、マッチング推定部193は、本発明に係る「推定部」を構成してもよい。
【0045】
SNS件数情報生成部191は、上記特定の意味情報に基づいてSNS解析情報記憶部16から抽出されるSNS解析情報の件数を示すSNS件数情報を生成する。具体的には、SNS件数情報生成部191は、特定の意味情報が付与されたSNS解析情報を所定の地理的区分毎に集計した件数を示すSNS件数情報を生成してもよい。
【0046】
ここで、所定の地理的区分とは、例えば、行政の単位を示す行政区分であってもよい。行政区分は、例えば、国レベル、都道府県レベル、市区町村レベルのように、階層的に区分が定められてもよい。なお、所定の地理的区分は、行政区分に限られず、所定の領域を示すものであればよい。当該所定の地理的区分を示す区分情報は、ユーザ端末40から送信又は入力部10dから入力される上記推定要求情報内で指定されてもよい。
【0047】
客観的情報変換部192は、上記特定の意味情報に関連付けられる客観的情報を上記所定の地理的区分毎の客観的情報に変換する。例えば、客観的情報変換部192は、緯度及び経度に基づいて決定される所定四方(ここでは、1km四方)のメッシュ毎の客観的情報(例えば、降雨情報や震度情報等)を、上記所定の地理的区分(例えば、行政区分)毎の客観的情報に変換してもよい。
【0048】
マッチング推定部193は、SNS件数情報生成部191で生成されたSNS件数情報と客観的情報変換部192で変換された客観的情報とを上記所定の地理的区分毎にマッチングする。マッチング推定部193は、当該SNS件数情報と当該客観的情報との関係に基づいて、特定の地理的区分における特定の事象を推定してもよい。なお、上記所定の地理的区分毎のSNS件数情報及び客観的情報は、それぞれ、第1及び第2のポリゴン情報等と呼ばれてもよい。
【0049】
図8は、本実施形態に係るSNS件数情報と客観的情報(ここでは、震度情報)とのマッチングの一例を示す図である。例えば、
図8では、所定の時間範囲(ここでは、2016年4月16日0時0分〜24時0分)内における、意味情報「地震→土砂災害」が付与されたSNS解析情報を集計した件数を示すSNS件数情報と、当該意味情報に関連付けられる震度情報とが、所定の地理的区分(ここでは、熊本県内の市区町村レベル)毎に示される。なお、
図8に示す数値、意味情報、時間範囲、所定の地理的区分は例示にすぎない。所定の地理的区分は、都道府県レベルの行政区分であってもよいし、その他の単位であってもよい。
【0050】
図8に示すように、マッチング推定部193は、所定の地理的区分(ここでは、熊本県内の市区町村レベル)毎のSNS件数情報と震度情報との関係に基づいて、特定の事象を推定してもよい。例えば、
図8において、熊本県の益城町では、震度情報は7であり、意味情報「地震→土砂災害」が付与されたSNS解析情報が50件検出されている。一方、熊本県の西原村では、震度情報は7であるので土砂災害等の被害が想定されるのに、意味情報「地震→土砂災害」が付与されたSNS解析情報が検出されていない。また、熊本県の荒尾市では、震度情報が2であり被害は想定されないのに、当該SNS解析情報が3件検出されている。
【0051】
図8の益城町のように、客観的情報(ここでは、震度情報)による被害の予想通りに当該客観的情報に関連付けられる意味情報(ここでは、震度→土砂災害)が付与されるSNS解析情報が集計される場合、マッチング推定部193は、特定の地理的区分(ここでは、益城町)における当該意味情報に関する特定の事象(例えば、地震による土砂災害の発生)を推定できる。
【0052】
また、
図8の西原村のように、客観的情報(ここでは、震度情報)による被害の予想通りに当該客観的情報に関連付けられる意味情報(ここでは、震度→土砂災害)が付与されるSNS解析情報が集計されない場合、マッチング推定部193は、特定の地理的区分(ここでは、西原村)における当該意味情報に関する特定の事象(例えば、地震による土砂災害による通信手段の遮断等)を推定できる。
【0053】
また、
図8の荒尾市のように、客観的情報(ここでは、震度情報)による被害の予想がないのに当該客観的情報に関連付けられる意味情報(ここでは、震度→土砂災害)が付与されるSNS解析情報が集計される場合、マッチング推定部193は、特定の地理的区分(ここでは、荒尾市)における当該意味情報に関する特定の事象(例えば、地震による土砂災害に便乗したデマ等)を推定できる。
【0054】
このように、特定の地理的区分における、客観的情報(例えば、上記震度情報、降雨情報、各種警報など)による被害想定とSNS投稿件数との関係を考慮することで、当該特定の地理的区分における特定の事象の推定精度を向上できる。
【0055】
<ハードウェア構成>
次に、情報処理装置10のハードウェア構成を説明する。
図9に示すように、情報処理装置10は、演算装置に相当するCPU(Central Processing Unit)10aと、記憶装置10bと、通信部10cと、入力部10dと、出力部10eとを有する。これらの各構成は、バスを介して相互にデータ送受信可能に接続される。なお、本例では、情報処理装置10は、一台のコンピュータで構成されるが、複数のコンピュータで構成されてもよい。
【0056】
CPU10aは、記憶装置10bに記憶されたプログラムの実行に関する制御やデータの演算、加工を行う制御部である。CPU10aは、SNSサーバ20に投稿された自然言語情報のように投稿者の主観に基づく情報(主観的情報)と、客観的な数値や状況を示す情報(客観的情報)と、に基づいて、特定の事象(例えば、災害の発生等)を推定するプログラム(情報処理プログラム)を実行する演算装置(演算部)であってもよい。CPU10aは、入力部10d及び/又は通信部10cから種々の入力データを受け取り、入力データの演算結果を出力部10eに出力(例えば、表示)したり、記憶装置10bに格納したり、又は、通信部10cを介して送信したりする。
【0057】
記憶装置10bは、メモリ、HDD(Hard Disk Drive)、SSD(Solid State Drive)、の少なくとも一つである。情報処理装置10の記憶装置10bは、地名辞書記憶部13、オントロジー記憶部14、SNS解析情報記憶部16を構成してもよい。また、情報処理装置10の記憶装置10bは、CPU10aが実行する情報処理プログラムを記憶してもよい。
【0058】
通信部10cは、情報処理システム1内の各装置を外部機器に接続するインターフェースである。通信部10cは、情報提供システム30から送信される客観的情報を受信して、客観的情報取得部17に出力してもよい。通信部10cは、SNSサーバ20から送信されるSNS投稿情報を受信して、SNS投稿情報取得部11に出力してもよい。また、通信部10cは、DISAANA(登録商標)、D−SUMM(登録商標)等の他システムで生成されたSNS解析情報を受信して、CPU10aの制御により、SNS解析情報記憶部16に記憶させてもよい。また、通信部10cは、ユーザ端末40からの推定要求情報を受信し、推定部19で推定された特定の事象に関する情報をユーザ端末40に送信してもよい。
【0059】
入力部10dは、ユーザからデータの入力を受け付けるものであり、例えば、キーボード、マウス、タッチパネル、マイクの少なくとも一つを含んでよい。入力部10dは、ユーザにより入力される推定要求情報を受け付けてもよい。
【0060】
出力部10eは、CPU10aによる演算結果を出力するものであり、例えば、LCD(Liquid Crystal Display)等のディスプレイ及びスピーカの少なくとも一つにより構成されてよい。出力部10eは、推定部19で推定された特定の事象に関する情報を出力してもよい。なお、通信部10c又は出力部10eは、「特定の事象に関する情報を通知する通知部」及び/又は「区分情報を取得する区分情報取得部」を構成してもよい。
【0061】
情報処理プログラムは、記憶装置10b等のコンピュータによって読み取り可能な記憶媒体に記憶されて提供されてもよいし、通信部10cにより接続されるネットワークを介して提供されてもよい。当該情報提供プログラムを格納した記憶媒体は、コンピュータ読み取り可能な非一時的な記憶媒体(Non-transitory computer readable medium)であってもよい。非一時的な記憶媒体は特に限定されないが、例えば、USBメモリ、CD−ROM又はDVD等の記憶媒体であってもよい。
【0062】
情報処理装置10では、CPU10aが情報処理プログラムを実行することにより、推定部19等の動作が実現される。なお、これらの物理的な構成は例示であって、必ずしも独立した構成でなくてもよい。例えば、情報処理装置10は、CPU10aと記憶装置10bが一体化したLSI(Large-Scale Integration)を備えていてもよい。
【0063】
(情報処理システムの動作)
図10は、本実施形態に係る情報処理動作の一例を示すフローチャートである。なお、
図10に示されるステップは例示にすぎず、図示するものに限られない。例えば、DISAANA(登録商標)、D−SUMM(登録商標)等の他システムで生成されたSNS解析情報を受信する場合、ステップS101、S102は省略されてもよい。また、ステップS103の推定要求情報の取得なしに、ステップS104〜S106が実施されてもよい。また、ステップS104及びS105の順序は変更されてもよい。
【0064】
図10に示すように、ステップS101において、情報処理装置10は、SNSサーバ20からSNSに投稿された自然言語情報を取得する。
【0065】
ステップS102において、情報処理装置10は、ステップS101で取得された自然言語情報に関する場所を示す場所情報及び当該自然言語情報の意味を示す意味情報が付与されたSNS解析情報(例えば、
図3D)を生成し、生成したSNS解析情報をSNS解析情報記憶部16に蓄積する。例えば、
図5に示すように、SNS解析情報は、時間(例えば、SNSの投稿時間)を示す情報と関連付けて蓄積されてもよい。
【0066】
ステップS103において、情報処理装置10は、特定の事象の推定を要求する推定要求情報を取得したか否かを判定する。情報処理装置10は、ユーザ端末40から送信された推定要求情報を取得してもよいし、入力部10dから入力された推定要求情報を取得してもよい。情報処理装置10が推定要求情報を取得していない場合(ステップS103;No)、本動作は、ステップS101に戻る。
【0067】
情報処理装置10が推定要求情報を取得した場合(ステップS103;Yes)、ステップS104において、情報処理装置10は、特定の意味情報が付与されたSNS解析情報を、SNS解析情報記憶部16から抽出する。当該特定の意味情報は、ステップS103で取得される推定要求情報によって指定されてもよい。或いは、当該特定の意味情報は、SNS解析情報記憶部16に記憶されているSNS解析情報に付与された各意味情報であってもよい。また、情報処理装置10は、所定の時間範囲内の上記SNS解析情報をSNS解析情報記憶部16から抽出してもよい。
【0068】
ステップS105において、情報処理装置10は、上記特定の意味情報に関連付けられる客観的情報(例えば、
図6に示される震度情報、避難所情報及び降雨情報の少なくとも一つなど)を情報提供システム30から取得してもよい。情報提供システム30は、一以上のシステムを含んでよい。情報処理装置10は、システム毎に異なる客観的情報を情報提供システム30から取得してもよい。
【0069】
ステップS106において、情報処理装置10は、SNS解析情報記憶部16から抽出されたSNS解析情報と、情報提供システム30から取得された客観的情報とに基づいて、特定の事象を推定してもよい。具体的には、情報処理装置10は、上記SNS解析情報を所定の地理的区分毎に集計した件数を示すSNS件数情報と、上記客観的情報を当該所定の地理的区分毎に変換した客観的情報との関係に基づいて、当該特定の事象を推定してもよい。当該所定の地理的区分は、ステップS103で取得される推定要求情報によって指定されてもよい。
【0070】
図11A及び11Bは、本実施形態に係る特定の事象の推定に用いられる客観的情報及びSNS件数情報の一例を示す図である。
図11Aでは、ステップS105で取得される客観的情報の一例として、意味情報「台風→氾濫」に関連付けられる降雨情報が示される。
図11Aに示すように、当該降雨情報は、例えば、緯度及び経度に基づいて決定される所定四方(ここでは、1km四方)のメッシュ毎の降雨量を示す情報であってもよい。
【0071】
図11Bでは、ステップS104において意味情報「台風→氾濫」が付与されたSNS解析情報を、所定の時間範囲及び所定の地理的区分(ここでは、一例として、佐賀県の市区町村レベル)毎に集計した件数が示される。
図11Bでは、
図11Aにおける範囲Aにおける所定の地理的区分毎のSNS件数情報が示される。なお、
図11Bでは、0件の地理的区分は表示されていない。
【0072】
上記の通り、
図11Aに示す降雨情報は、1km四方のメッシュ毎の降雨量を示し、
図11Bに示される所定の地理的区分の単位(ここでは、佐賀県の市町村レベル)とは異なる。そこで、情報処理装置10は、
図11Aのメッシュ毎の降雨量を、
図11BのSNS件数情報の集計に用いる所定の地理的区分(ここでは、佐賀県の市区町村レベル)毎の降雨量に変換してもよい。これにより、降雨情報とSNS件数情報を同一の単位でマッチングできるので、特定の事象を簡便に推定できるとともに、推定精度の向上も期待できる。
【0073】
情報処理装置10は、変換された降雨情報が示す所定の地理的区分毎の1時間あたりの降雨量と、当該所定の地理的区分毎のSNS件数情報と、の関係に基づいて、特定の事象を推定してもよい。例えば、
図8で説明したように、特定の地理的区分における客観的情報(
図11Aでは、降雨情報)に基づく被害想定と
図11Bに示されるSNS投稿件数との関係から、当該特定の地理的区分における特定の事象(例えば、洪水の発生、通信手段の遮断、デマ等)を推定してもよい。
【0074】
以上のように、本実施形態に係る情報処理システム1では、SNSに投稿される主観的な自然言語情報に加えて、当該自然言語情報の解析により付与される意味情報(例えば、「災害→氾濫等」)に関連付けられる客観的情報(例えば、降雨情報、震度情報等)に基づいて、特定の事象が推定されるので、当該特定の事象の推定精度を向上できる。
【0075】
なお、上記では、災害に関するオントロジーを用いて付与される意味情報と、当該意味情報に関連付けられる客観的情報(例えば、降雨情報、震度情報等)とを用いて災害に関する事象を推定する例について説明したが、これに限られない。例えば、商品やサービス等に関するオントロジーを用いて付与される意味情報と、当該意味情報に関連付けられる客観的情報(例えば、購買履歴、売り上げ額など)とを用いて、当該商品やサービス等に関する事象を推定することもできる。
【0076】
以上説明した実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。実施形態が備える各要素並びにその配置、材料、条件、形状及びサイズ等は、例示したものに限定されるわけではなく適宜変更することができる。また、異なる実施形態で示した構成同士を部分的に置換し又は組み合わせることが可能である。
【解決手段】情報処理装置10は、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)に投稿された自然言語情報の解析により、前記自然言語情報に関する場所を示す場所情報及び前記自然言語情報の意味を示す意味情報が付与されたSNS解析情報を取得する自然言語処理部12と、前記意味情報に関連付けられる客観的情報を取得する客観的情報取得部と、前記SNS解析情報と前記客観的情報とに基づいて、特定の事象を推定する推定部19と、を備える。