【実施例】
【0083】
以下に実施例を挙げて、本発明を更に具体的に説明する。本発明はその要旨を超えない限り、以下の実施例に限定されるものではない。なお、特に断らない限り、「部」は「質量部」、「%」は「質量%」を表す。
【0084】
(重量平均分子量(Mw)の測定方法)
製造したカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の重量平均分子量(Mw)は、以下の条件にて、RI検出器を装備したゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)で測定した。分子量はプルラン換算値である。
測定サンプル:0.1質量%水溶液
装置:HLC−8320GPC(東ソー製)
溶離液:0.1M NaCl水溶液
カラム:TSKgel SuperMultiporePW−M(東ソー製)
流速:1.0mL/min
温度:25℃
注入量:100μl
【0085】
(エーテル化度の測定方法)
カルボキシメチルセルロースナトリウム塩0.6gを105℃で4時間乾燥した。乾燥物の質量を精秤した後、ろ紙に包んで磁製ルツボ中で灰化した。灰化物を500mlビーカーに移し、水250mlおよび0.05mol/lの硫酸水溶液35mlを加えて30分間煮沸した。冷却後、過剰の酸を0.1mol/lの水酸化カリウム水溶液で逆滴定した。なお、指示薬としてフェノールフタレインを用いた。測定結果を用いて、下記(式1)よりエーテル化度を算出した。
(エーテル化度)=162×A/(10000−80A) (式1)
A=(af−bf
1)/乾燥物の重量(g)
A:試料1g中の結合アルカリに消費された0.05mol/lの硫酸水溶液の量(ml)
a:0.05mol/lの硫酸水溶液の使用量(ml)
f:0.05mol/lの硫酸水溶液の力価
b:0.1mol/lの水酸化カリウム水溶液の滴定量(ml)
f
1:0.1mol/lの水酸化カリウム水溶液の力価
【0086】
(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩の作製)
(製造例1)
家庭用ミキサーで粉砕した低密度パルプ10質量部を、プラネタリーミキサー(ハイビスディスパーミックス3D−2型、プライミクス製)のタンクに仕込んだ。続いて、15質量%の水酸化ナトリウム/IPA/水溶液(IPA:水の質量比は80:20)90質量部を前記タンクに投入し、40℃で150分間撹拌してマーセル化反応を行い、アルカリセルロースを得た。次いで、モノクロル酢酸10質量部を上記IPA/水溶液6質量部に溶解し、25℃に調整後、前記アルカリセルロースを35℃に維持したまま60分かけて添加した後、30分かけて80℃まで昇温し、80℃にて50分間エーテル化反応を行った。引き続き、50質量%の酢酸で中和し、pH7.0とした。
【0087】
前記中和物の固体成分をブフナー漏斗にて分離し、引き続きブフナー漏斗上で、70質量%メタノール水溶液をふりかけて洗浄し、副生物の食塩、グリコール酸ナトリウムおよび酢酸ナトリウムを除去した。ステンレス製の角型バットに移して90℃の熱風オーブンで4時間乾燥し、粉砕してカルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC1)を得た。得られたカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の重量平均分子量およびエーテル化度は表1に示す通りであった。
【0088】
(製造例2、3)
マーセル化工程およびエーテル化工程の反応時間を表1に記載の時間に変更した以外は、製造例1と同様にして、カルボキシメチルセルロースナトリウム塩(CMC2、CMC3)を得た。得られたカルボキシメチルセルロースナトリウム塩の重量平均分子量およびエーテル化度は表1に示す通りだった。
【0089】
【表1】
【0090】
(CNTの酸性基量の測定方法)
CNTの酸性基量は、ヘキシルアミンの吸着量を逆滴定によって以下のように求め、算出した。CNT0.2gをガラス瓶(M−70、柏洋硝子製)に採取し、ヘキシルアミン/NMP溶液(0.02mol/l)を30ml加えた。ガラス瓶に超音波(周波数28Hz)を1時間照射し、目開き25μmのナイロンメッシュにて粗粒を除去した。さらに遠心分離機(ミニ遠心機MCF−1350(LMS製))にて10,000rpmで10分間遠心分離を行い、上澄みを採取し、メンブレンフィルター(フィルター孔径0.22μm)にてろ過を行い、ろ液を回収した。得られたろ液を10ml採取し、イオン交換水40mlで希釈して被滴定液とした。また、CNTとともに超音波処理を行っていないヘキシルアミン/NMP溶液(0.02mol/l)10mlをイオン交換水40mlで希釈し、標準被滴定液とした。被滴定液および標準被滴定液を、それぞれ、別途電位差自動滴定装置(AT−710S、京都電子工業製)を用いて0.1mol/lのHCl/エタノール溶液にて滴定し、等電点における滴定量の差異からCNTに吸着したヘキシルアミンの量([ヘキシルアミン吸着量](μmol))を算出した。
被滴定液は、ヘキシルアミン/NMP溶液30mlの内、10mlを採取しており、CNT質量は0.2gなので、[へキシルアミン吸着量]に3を乗じて0.2で除した値が導電材単位重量あたりの[ヘキシルアミン吸着量](μmol/g)であり、さらにCNTの比表面積で除した値がCNT表面積あたりの[ヘキシルアミン吸着量](μmol/m
2)である。
【0091】
(CNTの比表面積測定方法)
CNTを電子天秤(sartorius社製、MSA225S100DI)を用いて、0.03g計量した後、110℃で15分間、脱気しながら乾燥させた。その後、全自動比表面積測定装置(MOUNTECH社製、HM−model1208)を用いて、CNTの比表面積(m
2/g)を測定した。
【0092】
(CNTのG/D比測定方法)
ラマン顕微鏡(XploRA、株式会社堀場製作所社製)にCNTを設置し、532nmのレーザー波長を用いて測定を行った。測定条件は取り込み時間60秒、積算回数2回、減光フィルタ10%、対物レンズの倍率20倍、コンフォーカスホール500、スリット幅100μm、測定波長は100〜3000cm
−1とした。測定用のCNTはスライドガラス上に分取し、スパチュラを用いて平坦化した。得られたピークの内、スペクトルで1560〜1600cm
−1の範囲内で最大ピーク強度をG、1310〜1350cm
−1の範囲内で最大ピーク強度をDとし、G/Dの比をCNTのG/D比とした。
【0093】
(分散粒度の測定方法)
分散粒度は、溝の最大深さ300μmのグラインドゲージを用い、JIS K5600−2−5に準ずる判定方法により求めた。
【0094】
(光沢の測定方法)
光沢測定用の試料は、CNT分散液を平滑なガラス基板上に1mL滴下し、No.7のバーコーターにて2cm/秒で塗工した後、140℃の熱風オーブンで10分間焼き付け、放冷して得た。塗工面積は約10cm×10cmとした。光沢計(BYK Gardner製光沢計 micro−gross60°)を用い、端部を除く塗膜面内の3か所を無作為に選び、1回ずつ測定して平均値を60°における光沢とした。
【0095】
(CNT分散液のメジアン径の粒度測定方法)
メジアン径は粒度分布測定装置(Partical LA−960V2、HORIBA製)を用いて測定した。循環/超音波の動作条件は、循環速度:3、超音波強度:7、超音波時間:1分、撹拌速度:1、撹拌モード:連続とした。また、空気抜き中は超音波強度7、超音波時間5秒で超音波作動を行った。水の屈折率は1.333、カーボン材料の屈折率は1.92とした。測定は、測定試料を赤色レーザーダイオードの透過率が60〜80%となるように希釈した後行い、粒子径基準は体積とした。
【0096】
(CNT分散液の粘度測定方法)
CNT分散液の粘度は、B型粘度計(東機産業製「BL」)を用いて、分散体温度25℃にて、分散体をヘラで充分に撹拌した後、直ちにB型粘度計ローター回転速度6rpmにて測定し、引き続き60rpmにて測定した。低粘度であるほど分散性が良好であり、高粘度であるほど分散性が不良である。得られた分散体が明らかに分離や沈降しているものは分散性不良とした。また、60rpmにおける粘度(mPa・s)を、6rpmにおける粘度(mPa・s)で除した値からTI値を求めた。CNT分散液の粘度は、500mPa・s未満が優良であり、500mPa・s以上2,000mPa・s未満が良、2,000mPa・s以上10,000mPa・s未満が不良、10,000mPa・s以上、沈降または分離が極めて不良である。
【0097】
(CNT分散液の複素弾性率及び位相角の測定)
CNT分散液の複素弾性率X及び位相角Yは、直径35mm、2°のコーンにてレオメーター(Thermo Fisher Scientific株式会社製RheoStress1回転式レオメーター)を用い、25℃、周波数1Hzにて、ひずみ率0.01%から5%の範囲で動的粘弾性測定を実施することで評価した。得られた複素弾性率が小さいほど分散性が良好であり、大きいほど分散性が不良である。また、得られた位相角が大きいほど分散性が良好であり、小さいほど分散性が不良である。さらに、得られた複素弾性率X(Pa)と位相角Y(°)の積(X×Y)を算出した。
複素弾性率 判定基準
◎:10Pa未満(最良)
○:10Pa以上20Pa未満(優良)
△:20Pa以上50Pa未満(良)
△−:50Pa以上100Pa未満(可)
×:100Pa以上(不良)
位相角 判定基準
◎:45°以上(最良)
○:30°以上45°未満(優良)
△:19°以上30°未満(良)
△−:15°以上19°未満(可)
×:15°未満(不良)
【0098】
(CNT分散液のpH測定方法)
CNT分散液のpHは、25℃にて、卓上型pHメーター(セブンコンパクトS220 Expert Pro、メトラー・トレド製)を用いて、測定した。
【0099】
(CNT分散液の安定性評価方法)
貯蔵安定性の評価は、分散体を50℃にて7日間静置して保存した後の粘度を測定した。測定方法は初期粘度と同様の方法で測定した。
判定基準
◎:初期同等(優良)
○:粘度がやや変化した(良)
△:粘度は上昇しているがゲル化はしていない(不良)
×:ゲル化している(極めて不良)
【0100】
(CNT分散液の作製)
(実施例1−A1)
ステンレス容器にイオン交換水93.7質量部を加えて、ディスパーで撹拌しながら、APP−84(CMC)を1.25質量部添加し、溶解した。その後、10B(CNT)を2.0質量部とり、ディスパーで撹拌しながら添加して、ハイシアミキサー(L5M−A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,600rpmの速度で全体が均一になり、グラインドゲージにて分散粒度が250μm以下になるまでバッチ式分散を行った。このとき、グラインドゲージにて確認した分散粒度は180μmであった。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP−17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、循環式分散処理を行った。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行った。被分散液のB型粘度計(TOKI SANGYO製、VISCOMETER、MODEL:BL)で測定した60rpmにおける粘度が3,000mPa・s以下となるまで分散した後、ディスパーで撹拌しながら、ステンレス容器に0.5質量部の10Bをさらに添加し、再び高圧ホモジナイザーにより循環式分散処理を行った。高圧ホモジナイザーにより粘度が3,000mPa・s以下となるまで循環式分散した後に、ディスパーで撹拌しながらステンレス容器に10Bを追加する作業を、合計で6回繰り返した(10Bの合計添加量は5.0質量部である)。引き続き、高圧ホモジナイザーにて10回パス式分散処理を行い、5.0質量部のCNTを含むCNT分散液(CNT分散液A1)を得た。
【0101】
(実施例1−A2、1−A3)
パス式分散の回数を、それぞれ20回、30回に変更した以外は、実施例1−A1と同様にしてCNT分散液(CNT分散液A2、A3)を得た。
【0102】
(実施例1−A4〜1−A12、1−A17〜1−A20)
表3に示す材料、組成比、パス式分散の回数に変更した以外は、実施例1−1Aと同様にしてCNT分散液(CNT分散液A4〜A20)を得た。
【0103】
(比較例1−a1〜1−a14)
表4に示す材料、組成比、パス式分散の回数に変更した以外は、実施例1−1Aと同様にしてCNT分散液(CNT分散液a1〜a14)を得た。
【0104】
(実施例1−A13)
実施例1−A3で得たCNT分散液(CNT分散液A3)をステンレス容器にとり、ディスパーで撹拌しながら、PAAを0.004質量部となるように加え、5.0質量部のCNTを含むCNT分散液(CNT分散液A13)を得た。CNT分散液A13のpHは7.5であった。
【0105】
(実施例1−A14)
PAAをAC−10Pに変更した以外は、実施例1−A13と同様の方法により、CNT分散液(CNT分散液A14)を得た。CNT分散液A14のpHは7.1であった。
【0106】
(実施例1−A15)
PAAをAC−10LPに変更した以外は、実施例1−A13と同様の方法により、CNT分散液(CNT分散液A15)を得た。CNT分散液A15のpHは7.0であった。
【0107】
(実施例1−A16)
PAAをHL415に変更した以外は、実施例1−A13と同様の方法により、CNT分散液(CNT分散液A16)を得た。CNT分散液A16のpHは7.5であった。
【0108】
(実施例1−A21)
ステンレス容器にイオン交換水98.05質量部を加えて、ディスパーで撹拌しながら、APP−084(CMC)を0.45質量部添加し、溶解した。その後、TNSR(CNT)0.115質量部、10B(CNT)を1.385質量部とり、ディスパーで撹拌しながら添加して、ハイシアミキサー(L5M−A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,600rpmの速度で全体が均一になり、グラインドゲージにて分散粒度が250μm以下になるまでバッチ式分散を行った。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP−17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、パス式分散処理を20回行った。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行い、1.5質量部のCNTを含むCNT分散液(CNT分散液A21)を得た。TNSRと10BのCNT質量比率は、1:12であった。
【0109】
(実施例1−A22)
イオン交換水添加量を98.05質量部から96.75質量部、APP−084添加量を0.45質量部から0.75質量部、10Bの添加量を1.385質量部から2.4質量部、TNSRの添加量を0.115質量部から0.1質量部に変更した以外は実施例1−A21と同様の方法により、2.5質量部のCNTを含むCNT分散液(CNT分散液A22)を得た。TNSRと10BのCNT質量比率は、1:24であった。
【0110】
(実施例1−A23)
ステンレス容器にイオン交換水98.64質量部を加えて、ディスパーで撹拌しながら、APP−084(CMC)を0.56質量部添加し、溶解した。その後、TNSR(CNT)0.062質量部、6A(CNT)を0.738質量部とり、ディスパーで撹拌しながら添加して、ハイシアミキサー(L5M−A、SILVERSON製)に角穴ハイシアスクリーンを装着し、8,600rpmの速度で全体が均一になり、グラインドゲージにて分散粒度が250μm以下になるまでバッチ式分散を行った。続いて、ステンレス容器から、配管を介して高圧ホモジナイザー(スターバーストラボHJP−17007、スギノマシン製)に被分散液を供給し、パス式分散処理を20回行った。分散処理はシングルノズルチャンバーを使用し、ノズル径0.25mm、圧力100MPaにて行い、1.0質量部のCNTを含むCNT分散液(CNT分散液A23)を得た。TNSRと6AのCNT質量比率は、1:12であった。
【0111】
(実施例1−A24)
イオン交換水添加量を98.64質量部から98.3質量部、APP−084添加量を0.56質量部から0.70質量部、6Aの添加量を0.738質量部から0.96質量部、TNSRの添加量を0.062質量部から0.04質量部に変更した以外は実施例1−A23と同様の方法により、2.5質量部のCNTを含むCNT分散液(CNT分散液A24)を得た。TNSRと6AのCNT質量比率は、1:24であった。
【0112】
(実施例1−A25)
イオン交換水添加量を98.64質量部から98.13質量部、APP−084添加量を0.56質量部から0.77質量部、6Aの添加量を0.738質量部から1.08質量部、TNSRの添加量を0.062質量部から0.02質量部に変更した以外は実施例1−A23と同様の方法により、1.1質量部のCNTを含むCNT分散液(CNT分散液A25)を得た。TNSRと6AのCNT質量比率は、1:48であった。
【0113】
(比較例1−a15)
実施例1−A3で得たCNT分散液(CNT分散液A3)をステンレス容器にとり、ディスパーで撹拌しながら、PAAをCNTの質量を基準として、0.04質量部となるように加え、5.0質量部のCNTを含むCNT分散液(CNT分散液a15)を得た。CNT分散液c1のpHは5.5であった。
【0114】
(比較例1−a16〜1−a17)
表4に示す材料、組成比、パス式分散の回数に変更した以外は、実施例1−1Aと同様にして分散液(分散液a1、a2)を得た。
【0115】
(実施例1−B1〜1−B3)
実施例1−A1〜1−A3で得たCNT分散液(CNT分散液A1〜A3)をガラス瓶(M−140、柏洋硝子製)に80質量部とり、ジルコニアビーズ(ビーズ径1.0mmφ)140質量部を仕込み、レッドデビル製ペイントコンディショナーを用いて2時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを分離して、CNT分散液(CNT分散液B1〜B3)を得た。
【0116】
(実施例1−B4)
実施例1−A3で得たCNT分散液(CNT分散液A3)をガラス瓶(M−140、柏洋硝子製)に80質量部とり、MAC500LCを0.012質量部、ジルコニアビーズ(ビーズ径1.0mmφ)140質量部を仕込み、レッドデビル製ペイントコンディショナーを用いて5時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを分離して、CNT分散液(CNT分散液B4)を得た。
【0117】
(実施例1−C1〜1−C3)
実施例1−A1〜1−A3で得たCNT分散液(CNT分散液A1〜A3)をステンレス容器にとり、ディスパーで撹拌しながらイオン交換水で希釈し、2.0質量部のCNTを含むCNT分散液(CNT分散液C1〜C3)を得た。
【0118】
(実施例1−D1〜1−D3)
ガラス瓶(M−140、柏洋硝子製)に、10B(CNT)を2.0質量部、APP−84(CMC)を0.5質量部、イオン交換水を97.6質量部、およびジルコニアビーズ(ビーズ径0.5mmφ)140部を仕込み、レッドデビル製ペイントコンディショナーを用いて4時間分散処理を行った後、ジルコニアビーズを分離して、CNT分散液(CNT分散液D1〜D3)を得た。
【0119】
(比較例1−d1〜1−d3)
表4に示す材料に変更した以外、実施例1−D1と同様にして、CNT分散液(CNT分散液d1〜d3)を得た。
【0120】
・10B:JENOTUBE10B(JEIO製、多層CNT、外径7〜12nm、平均外径8.8nm、比表面積230m
2/g、酸性基量0.67μmol/m
2、154μmol/g、G/D比0.80)
・6A:JENOTUBE6A(JEIO製、多層CNT、外径5〜7nm、平均外径6.9nm、比表面積700m
2/g、酸性基量0.27μmol/m
2、190μmol/g、G/D比0.80)
・TUBALL1:シングルウォールカーボンナノチューブ(OCSiAl製、外径1.3〜2.3nm、平均外径1.8nm、純度80%、比表面積490m
2/g、酸性基量0.38μmol/m
2、186μmol/g、G/D比39.1)
・TUBALL2:シングルウォールカーボンナノチューブ(OCSiAl製、外径1.2〜2.0nm、平均外径1.5nm、純度93%、比表面積975m
2/g、酸性基量0.21μmol/m
2、205μmol/g、G/D比41.7)
・TNSR:シングルウォールカーボンナノチューブ(Timesnano社製、外径1.0〜2.0nm、平均外径1.6nm、比表面積610m
2/g、酸性基量0.79μmol/m
2、480μmol/g、G/D比27.8)
・TNSAR:シングルウォールカーボンナノチューブ(Timesnano社製、外径1.0〜2.0nm、平均外径1.3nm、比表面積950m
2/g、酸性基量0.31μmol/m
2、290μmol/g、G/D比36.4)
・EC−300J:ケッチェンブラック(ライオン・スペシャリティ・ケミカルズ製、平均一次粒子径40nm、比表面積800m
2/g、酸性基量0.27μmol/m
2、219μmol/g)
・HS−100:デンカブラックHS−100(デンカ製、アセチレンブラック、平均一次粒子径48nm、比表面積39m
2/g、酸性基量0.21μmol/m
2、205μmol/g)
・APP−84:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、日本製紙製、サンローズA APP−84
・F01MC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、日本製紙製、サンローズF F01MC
・F04HC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、日本製紙製、サンローズF F04MC
・A02SH:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、日本製紙製、サンローズA A02SH
・F10LC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、日本製紙製、サンローズF F10LC
・F10MC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、日本製紙製、サンローズF F10MC
・F30MC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、日本製紙製、サンローズF F30MC
・MAC500LC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、日本製紙製、サンローズ特殊タイプ MAC500LC
・セロゲン5A:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、第一工業製薬製
・セロゲン6A:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、第一工業製薬製
・PAA:ポリアクリル酸、和光純薬工業製、平均分子量25,000
・AC−10P:ポリアクリル酸、東亜合成製、平均分子量9,000
・AC−10LP:ポリアクリル酸、東亜合成製、平均分子量50,000
・HL415:ポリアクリル酸、日本触媒社製、アクアリック、平均分子量10,000、NV45%
【0121】
なお、実施例および比較例で用いたカルボキシメチルセルロースまたはその塩の、重量平均分子量およびエーテル化度は表2に示す通りであった。重量平均分子量およびエーテル化度は、製造例と同じ測定方法にて算出した。
【0122】
【表2】
【0123】
【表3】
【0124】
【表4】
【0125】
(負極合材組成物および負極の作製)
(実施例2−A1)
容量150cm
3のプラスチック容器にCNT分散液(CNT分散液A1)と、MAC500LC(CMC)と、水とを加えた後、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌した。その後、負極活物質として人造黒鉛、シリコンを添加し、前記の自転・公転ミキサーを用いて、2,000rpmで150秒間撹拌した。さらにその後、SBRを加えて、前記の自転・公転ミキサーを用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、負極合材組成物を得た。負極合材組成物の不揮発分は48質量%とした。負極合材組成物の不揮発分の内、人造黒鉛:シリコン:CNT:CMC(MAC500LC):SBRの不揮発分比率は87:10:0.5:1:1.5とした。
【0126】
得られた負極合材組成物を、アプリケーターを用いて、厚さ20μmの銅箔上に塗工して後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間、塗膜を乾燥させて電極膜を作製した。その後、電極膜をロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行って、負極(負極A1)を得た。なお、合材層の単位当たりの目付量は10mg/cm
2であり、圧延処理後の合材層の密度は1.6g/ccであった。
【0127】
・シリコン:一酸化珪素(大阪チタニウムテクノロジー社製、SILICON MONOOXIDE SiO 1.3C 5μm、不揮発分100%)
・人造黒鉛:CGB−20(日本黒鉛工業製、不揮発分100%)
・MAC500LC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、サンローズ特殊タイプ MAC500LC(日本製紙製、不揮発分100%)
・SBR:スチレンブタジエンゴムTRD2001(JSR製、不揮発分48%)
【0128】
(実施例2−A2〜2−A25、2−B1〜2−B4、2−C1〜2−C3、2−D1〜2−D3、比較例2−a1〜2−a17、2−d1〜2−d3)
CNT分散液を、表5に示す各CNT分散液(CNT分散液A2〜A25、CNT分散液B1〜B4、CNT分散液C1〜C3、CNT分散液D1〜D3、CNT分散液a1〜a15、分散液a1、a2、CNT分散液d1〜d3)に変更した以外は、実施例2−A1と同様の方法により、それぞれ負極A2〜A25、負極B1〜B4、負極C1〜C3、負極D1〜D3、および負極a1〜a17、負極d1〜d3を得た。
【0129】
(負極の導電性評価方法)
得られた負極を、三菱化学アナリテック製:ロレスターGP、MCP−T610を用いて合材層の表面抵抗率(Ω/□)を測定した。測定後、合材層の厚みを乗算し、負極の体積抵抗率(Ω・cm)とした。合材層の厚みは、膜厚計(NIKON製、DIGIMICRO MH−15M)を用いて、電極中の3点を測定した平均値から、銅箔の膜厚を減算し、負極の体積抵抗率(Ω・cm)とした。
判定基準
◎:0.3Ω・cm未満(優良)
○:0.3Ω・cm以上0.5Ω・cm未満(良)
×:0.5Ω・cm以上(不良)
【0130】
(負極の密着性評価方法)
得られた負極を、塗工方向を長軸として90mm×20mmの長方形に2本カットした。剥離強度の測定には卓上型引張試験機(東洋精機製作所製、ストログラフE3)を用い、180度剥離試験法により評価した。具体的には、100mm×30mmサイズの両面テープ(No.5000NS、ニトムズ製)をステンレス板上に貼り付け、作製した負極の合材層側を両面テープのもう一方の面に密着させ試験用試料とした。次いで、試験用試料を長方形の短辺が上下にくるように垂直に固定し、一定速度(50mm/分)で銅箔の末端を下方から上方に引っ張りながら剥離し、このときの応力の平均値を剥離強度とした。
判定基準
◎:0.5N/cm以上(優良)
○:0.1N/cm以上0.5N/cm未満(良)
×:0.1N/cm未満(不良)
【0131】
【表5】
【0132】
本発明のCNT分散液を用いた負極は、いずれも導電性および密着性が良好であった。本発明の構成要件を満たすことで、分散剤を効果的に作用させることができたことによると思われる。さらに、実施例で用いた、炭素被覆された微細なシリコン系活物質の炭素層は、本発明の酸性基量が特定の範囲であるCNTと表面状態が類似していること、および、シリコン系活物質は水中で表面が負に帯電することから、CNT分散液と特に優れた相互作用をなし、乾燥させた電極膜中でも良好な材料分布状態を形成した結果と思われる。
【0133】
(正極用合材組成物および正極の作製)
(実施例3−A1)
容量150cm
3のプラスチック容器にCNT分散液(CNT分散液A1)と、MAC500LCと、水とを加えた後、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、その後、正極活物質としてLFPを添加し、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2,000rpmで150秒間撹拌した。さらにその後、PTFEを添加し、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、正極用合材組成物を得た。正極用合材組成物の不揮発分は75質量%とした。正極用合材組成物の不揮発分の内、LFP:導電材:PTFE:MAC500LCの不揮発分比率は97:0.5:1:1.5とした。
【0134】
正極合材組成物を、アプリケーターを用いて、厚さ20μmのアルミ箔上に塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間乾燥し、電極膜を作製した。その後、電極膜をロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、正極(正極1)を得た。なお、合材層の単位当たりの目付量が20mg/cm
2であり、圧延処理後の合材層の密度は2.1g/ccであった。
【0135】
・LFP:リン酸鉄リチウム HED(商標)LFP−400(BASF製、不揮発分100%)
・PTFE:ポリテトラフルオロエチレン ポリフロン PTFE D−210C(ダイキン製、不揮発分60%)
・MAC500LC:カルボキシメチルセルロースナトリウム塩、サンローズ特殊タイプ MAC500LC(日本製紙製、不揮発分100%)
【0136】
(実施例3−A2〜3−A25、3−B1〜3−B3、3−C1〜3−C3、3−D1〜3−D3、比較例3−a1〜3−a16、3−d1〜3−d3)
CNT分散液を、表6に示す各CNT分散液(CNT分散液A2〜A25、CNT分散液B1〜B3、CNT分散液C1〜C3、CNT分散液D1〜D3、CNT分散液a1〜a14、分散液a1、a2、CNT分散液d1〜d3)に変更した以外は、実施例3−A1と同様の方法により、それぞれ正極A2〜A25、正極B1〜B3、正極C1〜C3、正極D1〜D3、および正極a1〜a16、正極d1〜d3を得た。
【0137】
(正極の導電性評価方法)
得られた正極を、銅箔の替わりにアルミ箔とした以外は負極と同様の方法で導電性評価した。
判定基準
◎:10Ω・cm未満(優良)
〇:10Ω・cm以上20Ω・cm未満(良)
×:20Ω・cm以上を(不良)
【0138】
(正極の密着性評価方法)
得られた正極を、銅箔の替わりにアルミ箔とした以外は負極と同様の方法で密着性評価した。
判定基準
◎:1N/cm以上(優良)
○:0.5N/cm以上1N/cm未満(良)
×:0.5N/cm未満(不良)
【0139】
【表6】
【0140】
本発明のCNT分散液を用いた正極は、いずれも導電性および密着性が良好であった。負極と同様に、本発明の構成要件を満たすことで、分散剤を効果的に作用させることができたことによると思われる。さらに、シリコン系活物質の場合と同様に、実施例で用いた炭素被覆された微細なリン酸鉄リチウムの炭素層は、本発明の酸性基量が特定の範囲であるCNTと表面状態が類似していること、および、リン酸鉄リチウムは水中で表面が負に帯電することから、CNT分散液と特に優れた相互作用をなし、乾燥させた電極膜中でも良好な材料分布状態を形成した結果と思われる。
【0141】
(標準正極の作製)
正極活物質としてLFP(HED(商標)LFP−400、BASF製、不揮発分100%)92質量部、アセチレンブラック(デンカブラック(登録商標)HS‐100、デンカ製、不揮発分100%)4質量部、MAC500LC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 サンローズ特殊タイプ MAC500L、日本製紙製、不揮発分100%)1.6質量部を容量150mlのプラスチック容器に加えた後、ヘラを用いて粉末が均一になるまで混合した。その後、水を25質量部添加し、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌した。その後、プラスチック容器内の混合物をヘラを用いて、均一になるまで混合し、前記の自転・公転ミキサーを用いて、PTFE(ダイキン製、不揮発分60質量%)4質量部を加え、2,000rpmで30秒間撹拌した。さらにその後、水を11.2質量部添加し、前記の自転・公転ミキサーを用いて、2,000rpmで30秒間撹拌した。最後に、高速攪拌機を用いて、3,000rpmで10分間撹拌し、標準正極用合材組成物を得た。標準正極用合材組成物の不揮発分は79質量%とした。
【0142】
上述の標準正極用合材組成物を集電体となる厚さ20μmのアルミ箔上にアプリケーターを用いて塗工した後、電気オーブン中で120℃±5℃で25分間乾燥して電極の単位面積当たりの目付量が20mg/cm
2となるように調整した。さらにロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が2.1g/cm
3となる標準正極を作製した。
【0143】
(標準負極の作製)
容量150mlのプラスチック容器にアセチレンブラック(デンカブラック(登録商標)HS‐100、デンカ製)0.5質量部と、MAC500LC(カルボキシメチルセルロースナトリウム塩 サンローズ特殊タイプ MAC500L、日本製紙製、不揮発分100%)1質量部と、水98.4質量部とを加えた後、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌した。さらに活物質として人造黒鉛(CGB−20、日本黒鉛工業製)を87質量部、シリコンを10質量部添加し、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2,000rpmで150秒間撹拌した。続いてSBR(TRD2001、JSR製)を3.1質量部加えて、自転・公転ミキサー(シンキー製 あわとり練太郎、ARE−310)を用いて、2,000rpmで30秒間撹拌し、標準負極用合材組成物を得た。標準負極用合材組成物の不揮発分は50質量%とした。
【0144】
上述の標準負極用合材組成物を集電体となる厚さ20μmの銅箔上にアプリケーターを用いて塗工した後、電気オーブン中で80℃±5℃で25分間乾燥して電極の単位面積当たりの目付量が10mg/cm
2となるように調整した。さらにロールプレス(サンクメタル製、3t油圧式ロールプレス)による圧延処理を行い、合材層の密度が1.6g/cm
3となる標準負極を作製した。
【0145】
(実施例4−A1〜4−A25、4−B1〜4−B4、4−C1〜4−C3、4−D1〜4−D3、比較例4−a1〜4−a17、4−d1〜4−d3)
(実施例5−A1〜5−A25、5−B1〜5−B4、5−C1〜5−C3、5−D1〜5−D3、比較例5−a1〜5−a17、5−d1〜5−d3)
(二次電池の作製)
表7および表8に記載した負極および正極を使用して、各々50mm×45mm、45mm×40mmに打ち抜き、その間に挿入されるセパレーター(多孔質ポリプロプレンフィルム)とをアルミ製ラミネート袋に挿入し、電気オーブン中、70℃で1時間乾燥した。その後、アルゴンガスで満たされたグローブボックス内で、電解液(エチレンカーボネートとジメチルカーボネートとジエチルカーボネートを体積比1:1:1の割合で混合した混合溶媒を作製し、さらに添加剤として、ビニレンカーボネートを100質量部に対して1質量部加えた後、LiPF
6を1Mの濃度で溶解させた非水電解液)を2mL注入した後、アルミ製ラミネートを封口して二次電池をそれぞれ作製した。
【0146】
(二次電池のレート特性評価方法)
得られた二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工製、SM−8)を用いて充放電測定を行った。充電電流10mA(0.2C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流1mA(0.02C))を行った後、放電電流10mA(0.2C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。この操作を3回繰り返した後、充電電流10mA(0.2C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流(1mA0.02C))を行い、放電電流0.2Cおよび3Cで放電終止電圧3.0Vに達するまで定電流放電を行って、それぞれ放電容量を求めた。レート特性は0.2C放電容量と3C放電容量の比、以下の数式1で表すことができる。
(数式1) レート特性 = 3C放電容量/3回目の0.2C放電容量 ×100 (%)
判定基準
◎:80%以上(優良)
○:60%以上80%未満(良)
×:60%未満(不良)
【0147】
(二次電池のサイクル特性評価方法)
得られた二次電池を25℃の恒温室内に設置し、充放電装置(北斗電工製、SM−8)を用いて充放電測定を行った。充電電流25mA(0.5C)にて充電終止電圧4.3Vで定電流定電圧充電(カットオフ電流2.5mA(0.05C))を行った後、放電電流25mA(0.5C)にて、放電終止電圧3Vで定電流放電を行った。この操作を200回繰り返した。サイクル特性は25℃における3回目の0.5C放電容量と200回目の0.5C放電容量の比、以下の数式2で表すことができる。
(数式2)サイクル特性 = 3回目の0.5C放電容量/200回目の0.5C放電容量×100(%)
判定基準
◎:85%以上(優良)
○:80%以上85%未満(良)
×:80%未満(不良)
【0148】
【表7】
【0149】
【表8】
【0150】
本発明の分散体を用いた上記実施例では、比較例に比べてサイクル特性に優れた非水電解質二次電池が得られた。よって、本発明は従来のCNT分散液では実現しがたいサイクル特性を有する非水電解質二次電池を提供できることが明らかとなった。