(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記時分割分光手段は、前記「N-1」個の液晶セルと協働して、前記N個の透過光波長の選択的な透過および遮断を行う複数の偏光板を含む、請求項1に記載の時分割分光イメージング分析システム。
【背景技術】
【0002】
昨今の分光イメージング分析技術は、非破壊・非接触・迅速という特徴もあり、農産物や食品、生体関連物の評価技術として重要視され、食品製造・加工現場における成分分析や異物混入検査、農業生産における生育診断・収量調査、医療、時系列による成分変化のイメージング等への応用開発が盛んである。
その中で分光イメージング分析技術は、二次元の分光情報が得られるということで、観察対象を判別・特定しながら分光分析を行うことが出来る。そのため、より高度な分光分析が可能であり、用途拡大、市場拡大の目的から大いに期待されている。
【0003】
ところで、分光イメージングとは,ある範囲面上の各位置における分光情報を採取する技術をいい、スポット(一部位)のみの採取ではなく,画像としてデータを採取し,画像内のそれぞれの位置に対応した分光情報を解析可能にする技術である。
そのような分光イメージング技術を採用した装置として、ハイパースペクトル(Hyper Spectral Imaging)カメラ(イメージング/平面分光器)、所謂「ImSpector」といわれる装置は、ライン状エリアの同時多点分光が可能で、そのラインをスキャンすることで平面の各点の分光スペクトルを簡便に測定できるという点で注目されている(技術文献1)。
【0004】
ImSpectorは、特殊なプリズムとグレーティング構造により、線状エリアの各点の光を波長帯に分光する。通常のレンズおよびモノクロの2次元カメラと組み合わせることで、ライン状エリアの波長分布を検知できるイメージング方式の分光計が実現されている。
その特徴は、プリズム・グレーティング・プリズム(PGP)方式で、スリットを通った直線状の光を平面に展開して分光し、直進光学系によるスペクトル解析を可能としたものである。
ハイパースペクトルカメラを使用した装置としては、既にケイエルブイ株式会社よりAOTF(光音響素子)によるリアルタイムな高速多波長分光測定装置「ハイパースペクトルカメラ HSi440C」として販売されてもいる。
【0005】
分光イメージングでは、その分光の仕方によって、前分光法と後分光法がある。
前分光法を用いるものには、試料(被検体)と撮影装置の間に分散光学系等が入らないため,結果的に画像情報を劣化させる要因が少なく、綺麗な画像採取が可能である。
後分光法を用いるものには、複数の干渉フィルターをターレット状に並べた円板を回転させ、それぞれのフィルターが光軸上にセットされた時に測定する方法やプリズムや回折格子等を使った分散方式のものがある。また液晶を用いて分光するタイプのものも1997年位から提案されてきている。
【0006】
ところで、分光イメージング装置の基本的構成要素は、被検体を介してくる光を受けて分光する分光手段と該分光手段を介してくる光を受けるイメージセンサと、該イメージセンサが出力する出力情報を計算処理して計算結果画像を生成する情報処理手段である。
特に、高性能な分光分析を行うには、例えば、特許文献1乃至3に記載されている高感度なイメージセンサが必要である。このようなイメージセンサの分光感度特性の一例が
図11に示される。
今日では、上述の技術背景を基に、食品の安全や農作物の成育状況、人体の健康状態のモニターなどのために簡便に分光分析を行うことのできる小型・ポータブル・低価格・高性能な分光イメージングシステムの創出が望まれている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、上記した分光イメージング技術を採用した装置には、下記の課題が存在していた。
(1)プリズム、グレーティング、AOTF(光音響素子)、分散光学系などの光学素子の収差をなくす光学設計が難しい。
(2)従来の複数の液晶セルを組み合わせた液晶リオフィルターを用いる場合は、半値幅を小さくしようとすると液晶セルの個数を増やす必要があり、小型化が困難である。また動作温度によって中心波長、半値幅が変動する。又、液晶に加える電圧を変化させて時分割で中心波長を切り替える際に中心波長の変動が起こりやすい。また、液晶セルの個数が多いと選択波長の透過率が低くなるという問題がある。
(3)前分光法を用いるものは、外光の影響を直接受ける為,暗箱等による対策が必要。
(4)RGBフィルター方式は、面の解析は可能だが、データはR(赤)G(緑)B(青)の強度(データ数:3個)だけなので微妙な色の違いの識別が困難。
(5)ImSpectorは線状エリアを同時多点分光するので、面状イメージの各点を分光解析するには、対象物(被検体)または分光カメラを相対的に移動させる必要がある。
(6)複数のバンドパスフィルターを機械的に回転するなどして時分割で切り替える分光フィルターを使用する分光分析装置では、機械駆動部分が存在するため信頼性を高めることに難点があると共に小型化するのが困難である。また、バンドパスフィルターを切り替えに要する時間が長く、動画対応が困難である。
(7)従来のイメージセンサオンチップのバンドパスフィルターを用いる場合は、イメージセンサの複数画素を複数のバンドパスフィルターで分割するため、解像度が低下する。また、一度作成したイメージセンサについて光波長の組み合わせを代えることができず、用途毎によって中心波長を適宜切り替えることができない。
(8)発光波長の異なる複数のLED光源などを用いる時分割光源切換型の分光手段では、明るい環境では用いることが出来ず、例えばドローンを用いた空撮等には向かない。また、半値幅を小さくすることが困難であり、分光分析の精度を高めるのが困難。
【0010】
本発明は、上記点に鑑み鋭意なされたものであって、その目的の一つは、小型・軽量・低価格・動画対応・高性能な分光イメージング分析システムまたは装置を提供することである。
本発明のもう一つの目的は、非破壊・非接触・迅速に分光分析を行うことが出来る分光イメージングシステムまたは装置を提供することである。
本発明の更にもう一つの目的は、食品の安全や農作物の成育状況、人体の健康状態のモニターのために簡便に分光分析を行うことのできる小型・ポータブル・低価格な分光イメージングシステムまたは装置を提供することである。
本発明の更に別の目的は、空間的に二次元の分光情報を容易に取得することができる分光イメージングシステムまたは装置を提供することである。
本発明の更にもう一つ別の目的は、人体の血糖値を検出するセンサ用途では、血管の特定と、血液中に含まれる白血球等の血糖値の分析を阻害する因子を排除しながら分析を行うことが出来る分光イメージングシステムまたは装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一つの側面は、
N(2以上の整数)個の光波長に透過率ピークを有するバンドパスフィルターと「N-1」個の液晶セルから構成される時分割分光手段と、
イメージセンサと、
を備えた分光イメージングシステムであり、
前記イメージセンサの全画素の蓄積期間と同期させて前記「N-1」個の液晶セルに印加する電圧の組み合わせを変化させて各液晶セルの透過特性を調整し、入射光に含まれる光波長成分について、前記バンドパスフィルターのN個の透過光波長から時分割で1波長ずつ選択して前記イメージセンサでN回の信号を取得することで前記入射光に含まれるN個の波長成分の光情報を時分割で取得することを特徴とする時分割分光イメージング分析システムにある。
【0012】
本発明のその他の特徴及び利点は、添付図面を参照とした以下の説明により明らかになるであろう。なお、添付図面においては、同じ若しくは同様の構成には、同じ参照番号を付す。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、一つには、小型・軽量・低価格・高性能な分光イメージング分析システムまたは装置を提供することができる。
もう一つは、非破壊・非接触・迅速に分光分析を行うことが出来る分光イメージングシステムまたは装置を提供することができる。
更にもう一つは、食品の安全や農作物の成育状況、人体の健康状態のモニターのために簡便に分光分析を行うことのできる小型・ポータブル・低価格な分光イメージングシステムまたは装置を提供することができる。
上記の他にも後述されるように従来に比べ優位性と進歩性のある多くの分光イメージングシステムまたは装置を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
図1は、本発明において使用される時分割分光手段の好適な実施態様の一つの構成を説明するための模式的構成説明図である。
時分割分光手段100は、バンドパスフィルター101と、4つの偏光板102(102a,102b,102c,102d)と、3つの波長板103(103a,103b,103c)と、3つの液晶セル104(104a,104b,104c)と、3つの電圧印加手段105(105a,105b,105c)と、を備えている。
バンドパスフィルター101は、誘電体多層膜により特定の波長のみを透過する機能を備えた光学素子である。
以後の説明においては、
図1に示されるバンドパスフィルター101は4つの光波長に透過率ピークを有するものとしているが、本発明においてはこれに限定されるものではなく、2つ以上の波長に透過率ピークを有する複数波長(あるいは多波長)のバンドパスフィルターであればよい。また、
図1に示される時分割分光手段100では、液晶セルは3つであるが、これは4つの光波長を時分割で切り替えるための構成であり、本発明において液晶セルの個数はこれに限定されるものではなく、N個の透過させる波長数の場合にはN-1個あれば良い。
バンドパスフィルター101を透過する光は、半値幅が出来るだけ狭帯域にある選択されたピーク波長の光である。出来るだけ狭帯域の半値幅を有する所定のピーク波長の光を使用することは、分析精度をより高めることが出来るので望ましい。
【0016】
偏光板102aの偏光方向と偏光板102bの偏光方向とは垂直の関係にある。偏光板102bの偏光方向と偏光板102cの偏光方向とは平行の関係にある。偏光板102cの偏光方向と偏光板102dの偏光方向とは垂直の関係にある。
【0017】
波長板103は、直線偏光(Linear Polarized Light)の光に所定の位相差(Retardation)を与える光学機能素子であり、本発明においては、波長板103の光学軸方位は偏光板102を透過した光が45°の方位角で入射するように制御されている。波長板103の位相差は、波長板103と液晶セル104とが形成する位相差によって、波長板103と液晶セル104を透過して次の偏光板102に入射する光に対して、透過させる波長に対しては偏光板102を透過すると共に、遮断させたい波長に対しては遮断されるように設計されている。ここでは、波長板102a、102b、103cには水晶を用いている。
【0018】
次に
図1に示す分光手段100の機能を説明する。
図1に示す分光手段100は、4つの光波長を時分割で選択する時分割分光手段である。
入射光が通過する順番に、バンドパスフィルター101、偏光板102a、波長板103a、液晶セル104a、偏光板102b、波長板103b、液晶セル104b、偏光板102c、波長板103c、液晶セル104c、偏光板102dが配置されている。本発明においてバンドパスフィルター101の配置の位置はこれに限定されるものではなく、例えば偏光板104cの次に配置しても良い。
液晶セル104a、105b、105cにはそれぞれ電圧印加手段105a、105b、105cにより時分割で所定の交流電圧が印加される。
ここでは、バンドパスフィルター101は、例えば、4つのピーク波長(630nm、800nm、960nm、1050nm)の光を透過する光学素子である。
また、偏光板102aと偏光板102bとの偏光方向は直交であり、偏光板102bと偏光板102cとの偏光方向は平行であり、偏光板102cと偏光板102dとの偏光方向は直交である。
また、液晶セル104(104a,104b,104c)中の液晶分子は配向膜203の配向方向に平行に配向しており、その配向の方向は、偏光板102(102a,102b,102c,102d)の偏光方向と「45°」の関係にある。
これらは、上記の4つの波長を時分割分光するための構成の1例であり、偏光板102間の偏光方向の関係等は、波長板103や液晶204の厚み等の設計値との組み合わせで変更することが出来る。
【0019】
次に、入射光107が透過光108に至るまでの分光手段100の各光学素子の作用を説明する。
(1)入射光107は、バンドパスフィルター101で、所定の複数の波長の光とされる。
図1の構成では4波長の光とされる。ここで、以降の説明では、バンドパスフィルター101で透過した複数の波長のうち、ある時刻に選択的に透過させる光波長を選択波長、その他の波長を遮断波長と呼ぶ。
(2)バンドパスフィルター101を透過した4つの波長の光は、偏光板102aで、直線偏向される。
(3)直線偏向された4つの波長の光は、波長板103aで、所定の位相差があてられる。
(4)次に、電圧印加手段105aにより所定の交流電圧が印加されている液晶セル104aを介して、選択波長が偏光板102bで透過するとともに、第1の遮断波長が偏光板102bで遮断されるように所定の位相差があてられる。
(5)偏光板102bで選択波長が透過すると共に第1の遮断波長が遮断される。ここで、第2、第3の遮断波長の光の一部は透過する。
(6)偏光板102bを透過した光は、波長板103bで、所定の位相差があてられる。
(7)次に、電圧印加手段105bにより所定の交流電圧が印加されている液晶セル104bを介して、選択波長が偏光板102cで透過するとともに、第2の遮断波長が偏光板102cで遮断されるように所定の位相差があてられる。
(8)偏光板102cで選択波長が透過すると共に第2の遮断波長が遮断される。ここで、第3の遮断波長の光の一部は透過する。
(9)偏光板102cを透過した光は、波長板103cで、所定の位相差があてられる。
(10)次に、電圧印加手段105cにより所定の交流電圧が印加されている液晶セル104cを介して、選択波長が偏光板102dで透過するとともに、第3の遮断波長が偏光板102dで遮断されるように所定の位相差があてられる。
(11)偏光板102dで選択波長が透過すると共に第3の遮断波長が遮断される。
(12)偏光板102dを透過した光108に含まれる光量は、選択波長の光が主成分であり、遮断波長の光量は低く抑えられる。
【0020】
図2は、液晶セル104の構成を説明するための模式的構成説明図である。
液晶セル104は、表面に透明電極202(202a、202b)、配向膜203(203a、203b)を設けた2枚のガラス基板201(201a、201b)に液晶層204が図示の如く挟持され封止されている構造を有している。
液晶層204を構成するのはネマチック液晶であり、配向膜203によって液晶分子が所定の方向に配向されている。ただし、要求される性能によっては液晶層204を構成するのはスメクティック、コレステリック液晶でもよい。また周波数により誘電異方性の極性が変化する二周波液晶でもよい。
液晶セル104は、電圧印加手段105によって液晶層204に印加する電圧を調整することで、液晶セル104を透過する光に所望の位相差をあてることが出来る。
【0021】
図3には、
図1に示す時分割分光手段100を備えた分光イメージングシステム300が示される。
分光イメージングシステム300は、分光手段100の他に、光学レンズ301、イメージセンサ303、信号格納/処理部304、表示部305、制御部307、操作部308を備えている。
光学レンズ301、分光手段100、イメージセンサ303は光軸306上に図示の如く配されている。
図3においては、リンゴ、梨などの果物を被検体309として分光分析(あるいは測定)する様子を示してある。被検体309には、太陽などを光源310として、その光(照射光311)を被検体309の表面に向けて照射し、その反射光312を光学レンズ301に入射させる。
【0022】
分光イメージングシステム300を使用して時分割分光分析する際の測定フローチャートを
図4に示す。
分光イメージング分析の準備が開始される(ステップ401)と、被検体309が新規であるか否かが判断される(ステップ402)。被検体309が新規である場合(YES)は、ステップ403に進む。
被検体309が新規でない場合(NO)は、測定開始か否かの判断のステップ407に進む。
【0023】
ステップ403においては、被検体309の分析に必要な光の波長(中心波長)を複数選択する。選択される波長とその数(N)は、分析対象の被検体309の種類・特性と求める分析精度に依存して決められる。ステップ403で複数の波長(中心波長)が選択されると、次のステップ404に進む。
ステップ404では、選択された複数の波長が、システムにセットされているバンドパスフィルター101を透過する光の波長に含まれるか否かが判断される。含まれていれば(YES)、測定開始か否かの判断のステップ407に進む。含まれていなければ(NO)、含まれているバンドパスフィルターを用意し、システムに既設されているバンドパスフィルターと交換する。
【0024】
システムにバンドパスフィルター101を予めセットしておかない場合は、ステップ403で、被検体309の分析に必要な光の波長(中心波長)を複数選択した段階で、該選択された複数の波長の光を透過するバンドパスフィルターをシステムの所定位置にセットする。該選択された複数の波長の光を透過するバンドパスフィルターが手元にない場合は、該選択された複数の波長の光を透過するバンドパスフィルターを新たに作成する(ステップ405)か、他から求めてシステムにセットする。
適切なバンドパスフィルターがセットされていることを確認した後、ステップ406に進む。
【0025】
ステップ406においては、選択された複数の波長(中心波長)の光が分光手段100を透過するために各液晶セルの駆動電圧を設定する(液晶セル104a〜104cの駆動電圧を設定)。
各液晶セルの駆動電圧が設定され終わると、分光分析の測定開始の判断ステップ407に進む。
【0026】
ステップ407で測定開始OK(YES)の判断がされると次のステップ408に進む。
ステップ407で測定開始が(NO)と判断されると、システムの測定(分光分析)終了のステップ412に進む。
【0027】
ステップ408では、イメージセンサ303のフレームレート、分光手段302を選択された波長の光が透過する期間(透過期間)の設定(調整)がされる。この設定が終了すると次のステップ409に進む。
【0028】
ステップ409では、選択された各波長の光の分光フレームの取得がなされる。この分光フレームの取得のすべてが終わると次のステップ410に進む。
【0029】
ステップ410では、画素ごとの分光データを表示部305に表示するとともに分光データの解析を行う。表示部305への分光データの表示は必ずしも行う必要はなく、分光データの解析は行うようにしてもいい。
画素ごとの分光データの(表示)・解析の全てが終わると、測定終了の可否判断のステップ411に進む。
【0030】
ステップ411で測定終了OK(YES)の判断がされると、システムの測定作業終了のステップ412に進み、測定が終了される。ステップ411で測定終了(NO)の判断がされると、ステップ409に戻り、ステップ409、410、411の順でステップが進められる。
【0031】
図5には、バンドパスフィルター101の透過特性と波長1050nmの光を選択した際の偏光板102、波長板103、液晶セル104の透過特性と分光手段100の透過特性の好適な例が示される。
図5の(a)にはバンドパスフィルター101の透過率の測定結果が示してある。
各中心波長の半値幅は10nmであった。
次に液晶セル104a、104b、104cに印加する交流電圧の組み合わせを設定した。ここで、波長1050nmの光のみを透過させるためには630nm、800nm、960nmの波長の光を液晶セル104で遮断する電圧の組み合わせを設定した。この時の偏光板102、波長板103、液晶セル104の透過特性を
図5の(b)に、分光手段全体の透過特性を
図5の(c)に示す。
同様に、波長630nm、800nm、960nmの光のみをそれぞれ透過させるためには、630nm、800nm、960nm、1050nmの4波長のうち選択対象以外の3波長の光を遮断する電圧の組み合わせを設定した。
【0032】
図6Aは各波長を選択する際の液晶セル104に印加する電圧の組み合わせを示す。
図6Bは各波長を選択している際の透過特性の測定結果である。選択波長以外のノイズ成分が低く抑制出来ていることが確認できた。
ここで、透過波長を切り替える際の液晶セル104の応答性能を向上させるためには、
図4Bに示す順番のように液晶セル104の位相差が、単調に増加ないし減少するように設定することが望ましい。さらに、応答性能を向上させるためには、切り替える際に目的の電圧値よりも大きい、または小さい電圧であるオーバードライブ電圧を印加し、光学応答が安定する前に目的の電圧を印加する駆動方法を用いることが好適である。
【0033】
次に、イメージセンサの出力範囲内に各波長の信号が入るようにイメージセンサのフレームレート及び各波長の透過期間を調整する。
ここで、
図7に示すように、イメージセンサ303の全画素が蓄積期間中に各波長の透過期間が設けられるように液晶セル104のスイッチングタイミングをイメージセンサ303の駆動タイミングと同期させた。
【0034】
図8は、本発明をグルコースの分光分析に適用させた場合の分光イメージングシステムの構成の模式的説明図である。
図8に示される分光イメージングシステムでは、LEDなどの光源804、拡散板805、被検体セル806、分光イメージングデバイス800が光軸上に配されている。
被検体セル806には生理食塩水808を所定量注入して置き、スポット807からグルコース溶液を所定量滴下する。
分光イメージングデバイス800は、レンズ801、本発明に係る分光手段802、本発明に係るイメージセンサ803を備えたカメラ構造を有する。
光源804から出射された入射光809は、拡散板805で拡散されて後、被検体セル806中のグルコース溶液808に向かって照射される。グルコース溶液808を透過してくる透過光811は分光イメージングデバイス800内に投光される。
このようにしてグルコース溶液808の吸光像を撮像する。
【0035】
実験では、被検体セル806内の生理食塩水808中に5mg/dlの濃度のグルコース溶液を60μl滴下して生理食塩水808中のグルコースの吸光像を時分割撮像した。撮像した一連のグルコースの吸光像からグルコースが生理食塩水中に拡散する様子が確認できた。
尚、光源804として用いたのは630nm、800nm、960nm、1050nmのいずれの波長の光も含まれる白色光源であった。
【0036】
図9は、本発明を血糖値の分光分析に適用させた場合の分光イメージングシステムの構成の模式的説明図である。
図9に示される分光イメージングシステムでは、LEDなどの光源904、被検体905である人指し指、分光イメージングデバイス900が光軸上に配されている。
分光イメージングデバイス900は、レンズ901、本発明に係る時分割分光手段902、本発明に係るイメージセンサ903を備えている。
時分割分光手段902を構成するバンドパスフィルターとしては、630nm、800nm、960nm、1050nmの中心波長を有する干渉フィルターを用意した。
光源904からの照射光906には、630nm、800nm、960nm、1050nmの波長の光が含まれている。ここで、LED等の光源の光強度を測定期間中に一定に保つために、照射光906の一部ないしは透過光907のうち被検体905で吸収が起こらない波長の光強度をモニターし、光源の駆動条件にフィードバックを掛けて制御することが望ましい。
被検体(人指し指)905を透過してくる透過光907は、レンズ901、時分割分光手段902を介してイメージセンサ903で受光される。
【0037】
測定を開始して、630nm、800nm、960nm、1050nmの波長の光の夫々における画像を取得して画像演算を行うことにより血糖値のイメージングを得た。その際の画像を模式的に示したのが
図10である。
取得画像1000には、血糖値測定対象領域1001、周辺領域1002、血管壁1003、血糖値分析疎外因子1004がクリアーに写し出されていた。
血糖値は、血糖値測定対象領域1001の濃淡度によって数値化して示される。
【0038】
図8,9の説明で使用したイメージセンサ(803、903)は、光波長帯域200〜1100nmに感度を有する画素数128H×128Vのローリングシャッタ型CMOSイメージセンサである。
本発明においては、使用するイメージセンサは、求める分光分析に要求される分解能に依存して最適なものが選択される。分解能の高い分光分析の場合は、例えば、特許文献1乃至3に記載されているイメージセンサが採用される。該イメージセンサの分好感度特性の一例は、
図11に示される。
【0039】
図11の光波長に対する量子効率のビートは、イメージセンサを構成する要素の一つであるフォトダイオード上に形成されている配線層間絶縁膜によってもたらされる光の干渉によるものである。この量子効率のビートの特性であるビートの周期、量子効率が波長に対して山状に高まるピーク波長、谷状に低くなるバレー波長は配線層間絶縁膜の光学定数と膜厚によって変わる特徴を有している。配線層間絶縁膜は具体的には酸化膜を主体とする絶縁膜で構成されている。この場合、量子効率のピーク波長が分析波長の中心波長となるように当配線層間絶縁膜の総膜厚を選択することが好ましい。
【0040】
本発明の用途分野は実に多くあり、その代表例は、食品製造・加工現場における成分分析、異物混入検査、農業生産における生育診断、収量調査への応用、医療、時系列による成分変化のイメージング等の分野、平面分光測定機、ランドスケープ分光測定機、顕微鏡用平面分光測定機への応用分野である。
以上、
図1乃至
図11を用いて本発明を説明したが、本発明の本質を逸脱しない範囲で本発明はこれらに限定されるものではない。
【0041】
本発明は以上の記載に制限されるものではなく、本発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、本発明の範囲を公にするために、別記の請求項を添付する。