(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について説明する。なお、以下に説明する実施形態は、本発明の理解を容易にするための一例に過ぎず、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。さらに、以下の説明中、各機器及びその構成部品の材質、形状及びサイズに関する内容は、あくまでも具体例の一つに過ぎず、本発明を限定するものではない。すなわち、各機器及びその構成部品の材質、形状及びサイズについては、本発明の特定事項を満たすものである限り自由に設計することが可能である。
【0024】
また、以下の説明において「前後方向」とは、車両用シートの前後方向を意味し、具体的には車両の走行方向と一致する方向である。また、「幅方向」とは、車両用シートの幅方向を意味し、具体的には車幅方向(左右方向)と一致する方向である。
【0025】
さらに、以下では、特に断る場合を除き、車両用シートが使用状態(着座者が着座可能な状態)にある場合を想定して説明することとする。すなわち、以下の説明中、車両用シート各部の姿勢、位置及び他部材との位置関係等については、車両用シートが使用状態にあるときの内容となっている。
【0026】
<<車両用シート及びシートフレームの基本構成について>>
先ず、本実施形態に係る車両用シート(以下、本シートS)及びその骨格をなすシートフレームFの基本構成について、
図1乃至3を参照しながら基本構成を説明する。本シートSは、
図1に示すように、シートバックS1、シートクッションS2及びヘッドレストS3を有する。シートバックS1及びシートクッションS2は、それぞれの
図2や
図3に図示のシートフレームにパッド材Pを載置して同パッド材Pの表面を表皮材Wで覆うことによって構成されている。ヘッドレストS3は、不図示の芯材にパッド材Pを配置して同パッド材Pの表面を表皮材Wで覆うことによって構成されている。なお、ヘッドレストS3の下部には、下方に延出した一対のヘッドレストピラー(不図示)が設けられている。ヘッドレストS3は、当該一対のヘッドレストピラーを介してシートバックS1(厳密には、シートバックフレームF1)の上端部に支持されている。
【0027】
本シートSは、
図2及び
図3に示すように、シートバックS1が有するシートバックフレームF1、及び、シートクッションS2が有するシートクッションフレームF2を有する。シートクッションフレームF2は、その下部に配置されたスライドレール装置RのアッパレールRUに対して連結されている。かかる構成により、車体フロアに固定されているロアレールRLに沿ってアッパレールRUが移動すると、シートクッションフレームF2を含む本シートS全体がスライド移動するようになる。
【0028】
なお、本実施形態において、シートクッションフレームF2は、
図2に示すように回動リンクXLを介してアッパレールRUに連結されている。この回動リンクXLは、幅方向においてシートクッションS2の両脇に配置されたリンク部材であり、幅方向に沿う回動軸を中心にして回動する。そして、回動リンクXLがシートクッションS2を連れ回りながら回動することで、上下方向におけるシートクッションS2の位置が調整されるようになる。
【0029】
また、シートクッションフレームF2の後端部には、シートバックフレームF1の下端部がリクライニング装置80を介して連結されている。このリクライニング装置80により、シートバックフレームF1を含むシートバックS1は、シートクッションS2に対する傾き角度が調整することが可能な状態でシートクッションS2に連結されている。すなわち、シートバックS1は、幅方向に沿うリクライニング軸81を中心にして、シートクッションS2に対して相対的に回動することが可能である。
【0030】
そして、本シートSは、シートフレームの構造において従来の一般的な車両用シートと異なっている。以降では、本シートSが備えるシートフレームとしてのシートバックフレームF1の構成について詳しく説明することとする。なお、以下に説明する構成(特にサイドフレーム10の構造)は、シートバックフレームF1のみに適用されるものではなく、シートクッションフレームF2にも適用可能である。
【0031】
<<シートバックフレームの詳細構成について>>
本シートSが有するシートバックフレームF1の構成について既出の
図2及び3、並びに
図4乃至10を参照しながら詳しく説明する。シートバックフレームF1は、
図2に示すように、シートフレームFを前方から見たときに方形枠をなしている。また、シートバックフレームF1は、従来の一般的な車両用シートが有するシートバックフレームと比較して軽量化されたものとなっている。具体的に説明すると、シートバックフレームF1を構成する材料(例えば、後述するサイドフレーム10を構成する鋼板)として、従来のシートバックフレームに用いられていた材料よりも軽量な材料が用いられている。さらに、シートバックフレームF1を構成する部品同士を締結・連結する際には、ボルト・ナットやビス等の締結具を使用せず、レーザ溶接にて部品同士を締結・連結することとしている。このような構成を採用することで、本実施形態に係るシートバックフレームF1は、より軽量なものとなっている。
【0032】
シートバックフレームF1の構造について説明すると、シートバックフレームF1は、
図2及び3に示すように、幅方向両端部に設けられた一対のサイドフレーム10を有する。また、シートバックフレームF1は、同図に示すように、各サイドフレーム10の上端部に取り付けられることでサイドフレーム10の間を連結するアッパフレーム30を有する。さらに、シートバックフレームF1は、同図に示すように、各サイドフレーム10の下端部に取り付けられることでサイドフレーム10の間を連結するロアメンバーフレーム50を有する。さらに、サイドフレーム10の間には、乗員の背を後方から支持する支持部材としてのSバネ60が架設されている。
【0033】
以下、アッパフレーム30、ロアメンバーフレーム50、サイドフレーム10の順に説明する。
アッパフレーム30は、正面視で下向きU字状に成形された部品であり、連結フレームに相当する。また、本実施形態において、アッパフレーム30は、金属製の中空パイプ部材によって構成されている。ただし、これに限定されるものではなく、アッパフレーム30が中実部材によって構成されてもよい。また、アッパフレーム30は、
図2に示すように、幅方向に延出した第一延出部としての水平部31と、幅方向において水平部31の両側に位置している第二延出部としての下方延出部32と、を有する。各下方延出部32は、サイドフレーム10に向かって下方に延出しており、その下端部32aは、サイドフレーム10の上部に接合されている。
【0034】
なお、下方延出部32のうち、下端部32aよりも上方に位置する部分(以下、斜行部32b)は、下方に向かうほど幅方向外側に拡がるように斜行している。また、
図2及び
図3に示すように、斜行部32bの下端部の間には、幅方向に沿って延出した連絡プレート33が架設されている。この連絡プレート33のうち、幅方向両端部が斜行部32bにレーザ溶接にて固定されている。また、連絡プレート33の幅方向両端部は、斜行部32bに固定された部分から幅方向内側に向かうに連れて後方にずれるように湾曲している。
【0035】
アッパフレーム30のうち、水平部31の前面には、ヘッドレストピラーを支持する角筒型のピラーガイド34が取り付けられている。このピラーガイド34は、幅方向に間隔を空けて一対設けられている。また、水平部31のうち、ピラーガイド34が取り付けられている部分は、その前面が平面となるように押し潰れている。この押し潰れて平面をなす部分にピラーガイド34が固定されている。
【0036】
なお、水平部31においてピラーガイド34が固定されている部分について、幅方向と直交する断面を見ると、
図4に示すように、押し潰れることで上方及び下方に隆起した部分(以下、隆起部31a)が形成されている。本実施形態では、この隆起部31aを利用してピラーガイド34を固定している。より具体的に説明すると、隆起部31aの前面とピラーガイド34の後面が接した状態で隆起部31aの後方から溶接用レーザを照射することで、隆起部31aとピラーガイド34がレーザ溶接されている。ちなみに、
図4では、説明を分かり易くするため、隆起部31aを実際の大きさよりも幾分大きく図示している。
【0037】
次に、ロアメンバーフレーム50について説明する。ロアメンバーフレーム50は、板金を加工することによって構成され、サイドフレーム10の下端部間(厳密には、後述するアウタパーツ11の後壁部14の下端部間)に架設されている。また、ロアメンバーフレーム50の上縁部及び下縁部は、それぞれ、前方に曲げ加工されてフランジを形成している。
【0038】
次に、サイドフレーム10について
図5A〜5Cを参照しながら説明する。なお、
図5Aは、本実施形態に係るサイドフレーム10を示す図であり、
図5B及び5Cは、サイドフレーム10を構成する各パーツを示す図であり、いずれの図も幅方向内側から見たときの図となっている。
【0039】
サイドフレーム10は、
図5Aに示すように側方視で紡錘状の外形形状をなしている。すなわち、サイドフレーム10を側方から見たとき、サイドフレーム10の前端部が上下方向の中途位置から円弧状に膨出している。なお、本シートSが使用状態にあるとき(より厳密には、シートバックS1が基準位置に在るとき)、サイドフレーム10は、鉛直方向に対してやや傾いた(後傾した)方向に沿って長く延出している。ちなみに、以下では、サイドフレーム10の延出方向を「フレーム延出方向」と呼ぶこととする。
【0040】
また、サイドフレーム10の延出方向一端部(上端部)には、アッパフレーム30の下方延出部32の下端部32aが接合されている。ここで、下端部32aがサイドフレーム10の上端部に接合された状態では、下方延出部32の延出方向がフレーム延出方向と略一致している。かかる意味で、フレーム延出方向は、下方延出部32の延出方向に相当すると言える。
【0041】
なお、本シートSでは、従来の車両用シートに比べて、下方延出部32の下端部32aのうち、サイドフレーム10の上端部に接合されている部分の長さが短くなっている。これは、本シートSを従来の車両用シートよりも軽量化したものにするためである。また、本実施形態において、サイドフレーム10を構成する鋼板の厚みは、アッパフレーム30を構成するパイプの厚みよりも小さくなっている。
【0042】
また、本実施形態では、サイドフレーム10が薄厚の鋼板、より具体的には厚み1mm以下の超高張力鋼板によって構成されている。さらに、本実施形態に係るサイドフレーム10は、複数のフレーム片、具体的には二つのフレーム片同士を接合させることによって構成されている。より具体的に説明すると、各サイドフレーム10は、
図5Bに図示したアウタパーツ11と、
図5Cに図示したインナパーツ12と、を構成部品として有する。これらのパーツは、いずれも超高張力鋼板を加工することで成形される。
【0043】
アウタパーツ11は、サイドフレーム10を構成する複数のフレーム片のうち、一つのフレーム片に相当し、サイドフレーム10中、幅方向外側の部分を主に構成する。インナパーツ12は、他のフレーム片に相当し、サイドフレーム10中、幅方向内側の部分を主に構成する。そして、アウタパーツ11及びインナパーツ12は、
図6に示すように、一部が重なり合った状態でレーザ溶接にて接合されることにより、サイドフレーム10を構成している。なお、
図6には、レーザ溶接した際の溶接痕を太線の破線にて図示している。
【0044】
以下、既出の
図3及び
図5A〜5Cと共に
図6〜10を参照しながら、サイドフレーム10の構造についてより詳細に説明する。先ず、サイドフレーム10の構造について説明するにあたり、アウタパーツ11及びインナパーツ12の各々の構成について説明する。
【0045】
アウタパーツ11は、フレーム延出方向と交差する断面が略U字状をなしており、
図6〜10に示すように示すように側壁部13と後壁部14とを有する。側壁部13は、サイドフレーム10において幅方向外側の端部に位置する部分である。そして、側壁部13の端面がサイドフレーム10の幅方向外側の端面を規定する。つまり、側壁部13の外形形状は、
図5Aと
図5Bとを対比すると分かるように、サイドフレーム10の外形形状と対応(略一致)している。また、側壁部13の前端部は、幅方向内側に向けて略直角に折り曲げることで形成されたフランジ部13aを備えている。このフランジ部13aは、フレーム延出方向において側壁部13の中途部分から下端部に亘って広範囲に形成されている。
【0046】
また、側壁部13には、
図5Bに示すように矩形穴や円穴が複数形成されている。これらの穴には、後述するSバネ60の端部や力布取り付けクリップ70が挿入されて係合するようになっている。なお、上記の穴に関する詳細については後述することとする。
【0047】
さらに、側壁部13の下部には、
図5Bに示すようにリクライニング装置80を取り付けるための取り付け穴13bが形成されている。この取り付け穴13bをリクライニング軸81が通過するようにリクライニング装置80が側壁部13に取り付けられている。なお、本実施形態では、リクライニング装置80を側壁部13に取り付ける上で複数の取り付け部品が用いられている。リクライニング装置80の取り付け部品等については後述することとする。
【0048】
後壁部14は、側壁部13の後端部に対して略直交するように設けられた部分であり、
図6に示すように幅方向内側に向かって延出している。また、後壁部14は、フレーム延出方向に長く延びており、同方向における後壁部14の端位置(上端位置及び下端位置)が側壁部13の端位置に略揃っている。また、後壁部14の幅方向内側の端部には、前方に向けて略直角に折り曲げることで形成されたフランジ部14aを備えている。このフランジ部14aは、フレーム延出方向において後壁部14の上端部から下端部に亘って広範囲に形成されている。なお、
図6に示すように、フランジ部14aは、後壁部14の下端部にロアメンバーフレーム50を取り付ける都合上、フレーム延出方向においてロアメンバーフレーム50の直上位置で途切れている。
【0049】
さらに、また後壁部14の後面には、
図3に示すように、フレーム延出方向に沿って形成されたビード(以下、後壁部ビード14b)が形成されている。この後壁部ビード14bは、後壁部14の剛性(特に、前後方向に作用する荷重に対する剛性)を向上させるために設けられ、後壁部14の幅方向中央部を前方に窪ませることで形成されている。なお、本実施形態において、後壁部ビード14bは、その下端がロアメンバーフレーム50の直上位置に達するように形成されている。
【0050】
インナパーツ12は、
図5Cに示すように、サイドフレーム10の外形形状に合わせて湾曲した形状をなしており、
図6に示すようにパーツ上部15とパーツ中央部16とパーツ下部17とを有する。パーツ上部15は、インナパーツ12の上端部を構成しており、
図7に示すように、フレーム延出方向と交差する断面が略U字状をなしている。そして、
図6及び
図7に示すように、パーツ上部15は、アウタパーツ11の上方部分に組み合わされて接合されることでサイドフレーム10の閉断面構造部10aを構成している。なお、閉断面構造部10aについては後に詳述する。
【0051】
パーツ中央部16は、インナパーツ12中、パーツ上部15の下端部と隣接した部分を構成しており、パーツ上部15の下端から斜め前方に下がるように延出している。また、
図8に示すように、パーツ中央部16のフレーム延出方向と交差する断面は、略V字状をなしている。そして、
図6及び
図7に示すように、パーツ中央部16は、フレーム延出方向におけるアウタパーツ11の中間部分に組み合わされて接合されることでサイドフレーム10の開断面構造部10bを構成している。厳密に説明すると、パーツ中央部16は、アウタパーツ11の側壁部13の前端部に接合されることにより、開断面構造部10bのうち、フレーム延出方向において閉断面構造部10aと隣接した位置に在る隣接領域10xを構成している。なお、開断面構造部10b並びに隣接領域10xについては後に詳述する。
【0052】
パーツ下部17は、インナパーツ12中、パーツ中央部16よりも下方に位置する部分を構成しており、パーツ中央部16の下端から円弧状に湾曲しながら下がるように延出している。また、
図9に示すように、パーツ下部17のフレーム延出方向と交差する断面は、略S字状をなしている。なお、パーツ下部17は、前後方向においてパーツ上部15に比して幾分幅狭となるように形成されている。そして、
図6、9及び10に示すように、パーツ下部17は、アウタパーツ11の下方部分に組み合わされることでサイドフレーム10の開断面構造部10bを構成している。厳密に説明すると、パーツ下部17は、アウタパーツ11の側壁部13の前端部に接合されることにより、開断面構造部10bのうち、フレーム延出方向において閉断面構造部10aから離間した位置に在る離間領域10yを構成している。特に、パーツ下部17は、サイドフレーム10において離間領域10yの前端部のみを構成している。なお、離間領域10yについては後に詳述する。
【0053】
次に、サイドフレーム10の構造について説明すると、
図6に示すように、サイドフレーム10の上端部に閉断面構造部10aが形成されている。この閉断面構造部10aは、
図7に示すように、フレーム延出方向と交差する断面が閉断面構造となっている部分である。
【0054】
そして、閉断面構造部10aの上端部(フレーム延出方向における一端部)の内側にアッパフレーム30の下方延出部32の下端部32aが入り込んでおり、当該下端部32aは、更に閉断面構造部10aに接合されている。つまり、サイドフレーム10のうち、フレーム延出方向において下方延出部32と同じ側に位置する端部は、閉断面構造部10aをなしている。一方で、下方延出部32が閉断面構造部10aの上端部の内側に入り込んで当該上端部に接合されている。これにより、アッパフレーム30がサイドフレーム10に適切に組み付けられるようになり、この結果、サイドフレーム10同士がアッパフレーム30によって良好に連結されるようになる。なお、本実施形態において、下方延出部32と閉断面構造部10aの上端部とは、当該上端部の外側から溶接用のレーザが照射されることで接合されている。
【0055】
一方、前述したように、本シートSでは、軽量化を図る目的から、下方延出部32のうち、サイドフレーム10の上端部に接合されている部分の長さ(以下、接合長さ)が従来の車両用シートに比べて短くなっている。ここで、上記接合長さを短くしてしまうと、その分、サイドフレーム10の支持剛性が損なわれてしまう。ここで、サイドフレーム10の支持剛性とは、サイドフレーム10に外力が作用した場合における当該サイドフレーム10の支持状態の安定性を意味する。
【0056】
これに対して、本実施形態では、下方延出部32が接合されているサイドフレーム10の上端部が閉断面構造部10aになっている。この閉断面構造部10aでは、閉断面構造であるが故に支持剛性が確保されることになる。また、閉断面構造部10aは、
図6に示すように、フレーム延出方向において閉断面構造部10aの下端が下方延出部32の下端よりも下方に位置するように延びている。つまり、サイドフレーム10中、下方延出部32よりも下方に位置する部分(すなわち、下方延出部32に接合されていない部分)については、閉断面構造部10aとなっていることで支持剛性が確保されている。
【0057】
以上のように本実施形態ではサイドフレーム10の上端部を閉断面構造部10aとした上で、当該閉断面構造部10aにアッパフレーム30の下方延出部32を接合し、さらに閉断面構造部10aを下方延出部32の下端よりも下方まで延出している。これにより、接合長さを短くすることで損なわれた分の支持剛性を補填することが可能となる。
【0058】
なお、本実施形態では、
図7に示すように、アウタパーツ11の上方部分とインナパーツ12のパーツ上部15とが重なり合った状態でレーザ溶接にて接合されることで閉断面構造部10aが形成されている。より詳しく説明すると、アウタパーツ11の上方部分において、側壁部13及び後壁部14のフランジ部14aがインナパーツ12のパーツ上部15と重なり合っている。この重なり合っている部分に対して溶接用のレーザがフレーム延出方向に沿って照射されることにより、アウタパーツ11の上方部分とインナパーツ12のパーツ上部15とが接合されている。以上のように二つのパーツを重ね合わせて閉断面構造部10aを構成すれば、閉断面構造部10aの強度がより高められ、サイドフレーム10の支持剛性を更に確保することが可能となる。
【0059】
また、本実施形態では、サイドフレーム10を構成する鋼板の厚みがアッパフレーム30を構成するパイプの厚みよりも小さくなっている。これにより、接合長さを短くする一方で閉断面構造部10aを下方延出部32の下端よりも下方に延出したとしても、サイドフレーム10の重量増加を抑える(具体的には、従来品よりも軽量化する)ことが可能となる。
【0060】
ところで、サイドフレーム10全体を閉断面構造としてしまうと、その分、サイドフレーム10の重量が増えてしまう。このため、本実施形態では、サイドフレーム10の上端部のみを閉断面構造部10aとし、それより下方に位置する部分については、開断面構造部10bとしている。ここで、開断面構造部10bとは、サイドフレーム10中、フレーム延出方向において閉断面構造部10aと連続し、フレーム延出方向と交差する断面が開断面構造となっている部分である。つまり、開断面構造部10bでは、
図8及び9に示すように、上記の断面において連続している部分が途切れることで隙間Qが形成されている。
【0061】
以上のように本実施形態ではサイドフレーム10の上端部のみを閉断面構造部10aとすることで、サイドフレーム10の支持剛性を確保しつつ、サイドフレーム10を含むシートバックフレームF1の重量をより軽量化することが可能となる。
【0062】
さらに、本実施形態では、開断面構造部10bが、フレーム延出方向において閉断面構造部10aと隣接した位置に在る隣接領域10xと、閉断面構造部10aから離れた位置に在る離間領域10yと、に分かれている。
【0063】
隣接領域10xは、開断面構造部10bのうち、閉断面構造部10aの下端部(フレーム延出方向における他端部)と隣接する領域である。この隣接領域10xは、フレーム延出方向におけるアウタパーツ11の中央部分とインナパーツ12のパーツ中央部16とが重なり合った状態でレーザ溶接にて接合されることで構成されている。より詳しく説明すると、アウタパーツ11の中央部分のうち、側壁部13のフランジ部13aがインナパーツ12のパーツ中央部16と重なり合っている。この重なり合っている部分に対して溶接用のレーザがフレーム延出方向に沿って照射されることにより、アウタパーツ11の中央部分とインナパーツ12のパーツ中央部16とが接合されている。そして、接合されたアウタパーツ11の中央部分とインナパーツ12のパーツ中央部16とによって隣接領域10xが形成されている。
【0064】
また、隣接領域10xは、
図8に示すように、断面において連続している部分のうち、上記の隙間Qと隣り合う位置に在る一対の端部10s、10tを有している。また、隣接領域10xが有する一対の端部10s、10tの各々は、
図8に示すように、当該各々の先端が断面において隙間Qに向かうように延出している。
【0065】
離間領域10yは、開断面構造部10bのうち、隣接領域10xよりも下方に位置する領域である。この離間領域10yは、フレーム延出方向におけるアウタパーツ11の下方部分とインナパーツ12のパーツ下部17とが重なり合った状態でレーザ溶接にて接合されることで構成されている。より詳しく説明すると、アウタパーツ11の下方部分のうち、側壁部13のフランジ部13aがインナパーツ12のパーツ下部17と重なり合っている。この重なり合っている部分に対して溶接用のレーザがフレーム延出方向に沿って照射されることにより、アウタパーツ11の下方部分とインナパーツ12のパーツ下部17とが接合されている。そして、接合されたアウタパーツ11の下方部分とインナパーツ12のパーツ下部17とによって離間領域10yが形成されている。
【0066】
また、離間領域10yは、
図9に示すように、断面において連続している部分のうち、上記の隙間Qと隣り合う位置に在る一対の端部10s、10tを有している。離間領域10yが有する一対の端部10s、10tのうち、より前側に位置する端部10sは、同図に示すように、前後方向に折り返されている。つまり、より前側に位置する端部10sは、幅方向において重なり合う二つの部分(以下、重なり部分10v、10w)を有している。以上のように本実施形態では離間領域10yが有する一対の端部10s、10tのうち、より前側に位置する端部10sを折り返すことで、離間領域10yを含む開断面構造部10bの強度が高められている。
【0067】
なお、本実施形態では、離間領域10yが有する一対の端部10s、10tのうち、より前側に位置する端部10sを折り返すこととしたが、これに限定されるものではなく、より後側に位置する端部10tを折り返すこととしてもよい。
【0068】
さらに、より前側に位置する端部10sは、
図9に示すように、上記二つの重なり部分10v、10wが接合されることで閉空間Cを形成している。より具体的に説明すると、より前側に位置する端部10sは、前述したように前後方向に折り返されているが、特に本実施形態では袋状に折り返されている。つまり、折り返された端部10sのうち、より後方にある領域は、より前方にある領域に対して窄まっており、重なり部分10v、10w同士が当接している。そして、互いに当接している二つの重なり部分10v、10wに対して溶接用のレーザが照射されることにより、当該二つの重なり部分10v、10wが接合されている。この結果、より前側に位置する端部10sが閉空間Cを形成している。以上のように本実施形態では、より前側に位置する端部10sが閉空間Cを形成していることにより、離間領域10yを含む開断面構造部10bの強度が更に高められている。
【0069】
なお、上記二つの重なり部分10v、10wを接合するにあたり、溶接用のレーザを幅方向内側から照射する(換言すると、二つの重なり部分10v、10wのうち、幅方向内側に在る重なり部分10wに対してレーザを照射する)こととしている。
【0070】
また、本実施形態では、二つの重なり部分10v、10wがレーザ溶接にて接合されており、より前側に位置する端部10sが閉空間Cを形成していることとしたが、これに限定されるものではない。
図11に示すように、二つの重なり部分10v、10wが間隔を空けて互いに離れている構成(すなわち、より前側に位置する端部10sが閉じていない構成)であってもよい。
【0071】
ところで、本実施形態では、
図6に示すように、開断面構造部10bの隣接領域10xにおける断面の開き具合が下方に向かうほど大きくなっている。すなわち、隣接領域10xが有する一対の端部10s、10tは、フレーム延出方向において閉断面構造部10aから離れた位置に在るほど離間し、より大きな隙間Qを隔てるようになっている。また、本実施形態では、
図8及び9を対比すると分かるように、開断面構造部10bの断面における隙間Q(つまり、断面の開き具合)が、隣接領域10xよりも離間領域10yにおいてより大きくなっている。このような構成であれば、閉断面構造部10aと開断面構造部10bとの境界部分において断面形状が急激に変化するのを抑制することが可能となる。これにより、断面形状の急激な変化に起因するサイドフレーム10の剛性低下や応力集中を抑制することが可能となる。
【0072】
さらに、前述したように、隣接領域10xにおける上記の隙間Qが、フレーム延出方向において閉断面構造部10aから離れた位置に在るほど、漸次的に大きくなっている。これにより、閉断面構造部10aと開断面構造部10bとの境界部分における断面形状の急激な変化をより効果的に抑制することが可能となる。
【0073】
本実施形態に係るサイドフレーム10の構造について更に詳しく説明すると、
図5Aに示すように、フレーム延出方向における隣接領域10xの長さが、同方向における閉断面構造部10aの長さよりも短くなっている。すなわち、本実施形態では、閉断面構造部10aよりも低剛性な隣接領域10xを、フレーム延出方向において閉断面構造部10aよりも短尺となるように構成している。これにより、本実施形態では、隣接領域10xを閉断面構造部10aよりも長尺となるように構成した場合と比較して、サイドフレーム10がより高剛性になっている。
【0074】
また、サイドフレーム10には、
図2、3及び7に示すように幅方向内側に窪むことで形成された凹部が形成されている。この凹部は、サイドフレーム10を構成するアウタパーツ11の側壁部13、より具体的にはフレーム延出方向における側壁部13の中央部、及び、下側半分に相当する部分に形成されている。以上のように本実施形態では側壁部13に凹部が設けられていることで、サイドフレーム10の強度が高められている。なお、側壁部13に設けられる凹部の個数や凹部を設ける箇所については、特に限定されるものではない。
【0075】
ちなみに、サイドフレーム10に形成された凹部のうち、側壁部13の中央部に形成された凹部(以下、第一の凹部20)は、側方視で略三角形状の窪みとなっている。また、第一の凹部20は、
図5A、5B及び5Cを対比すると分かるように、サイドフレーム10において当該第一の凹部20の上端が閉断面構造部10aの下端よりも上方に位置するように設けられている。
【0076】
ところで、サイドフレーム10において凹部を設けると、当該凹部が設けられる部分の断面係数が減少し、特に、凹部の上端が位置する部分にて著しく変化する。これに対して、本実施形態では、サイドフレーム10中、第一の凹部20の上端が位置する部分が閉断面構造部10aとなっている。このような構成であれば、サイドフレーム10中、第一の凹部20の上端が位置する部分での断面係数の減少を抑制することが可能となる。
【0077】
また、サイドフレーム10に形成された凹部のうち、側壁部13の下側半分の部分に形成された凹部(以下、第二の凹部21)は、側壁部13の外側表面(幅方向外側に面する表面)において広範囲に形成されている。ここで、第二の凹部21の一部は、離間領域10yが有する一対の端部10s、10tのうち、より前側に位置する端部10sをなしている。厳密に説明すると、上記の端部10sが折り返すことで形成された二つの重なり部分10v、10wのうち、幅方向外側に位置する重なり部分10vは、
図9に示すように、第二の凹部21内に位置している。
【0078】
そして、第二の凹部21内に位置している重なり部分10vは、これと対向する重なり部分10wとレーザ溶接にて接合されている。以上のように本実施形態では、接合される上記二つの重なり部分10v、10wのうちの一つが第二の凹部21、すなわち、サイドフレーム10の強度が高められた範囲内に位置している。これにより、上記二つの重なり部分10v、10wをレーザ溶接にて接合する際の接合強度を確保することが可能となる。ここで、接合強度とは、二つの重なり部分10v、10wの双方を接合する段階における当該双方の当接状態の安定性を意味する。
【0079】
また、サイドフレーム10に側壁部13の下側半分の部分には、
図3や
図5B等に示すように、周囲が第二の凹部21に囲まれた浮島状のビード部(以下、凸ビード22)が形成されている。この凸ビード22は、補強部に相当し、サイドフレーム10の下端部に設けられることでサイドフレーム10の剛性(特に、車両後突時に乗員からシートバックS1の上方部分に入力される荷重に対する剛性)を高めるために設けられている。また、凸ビード22は、サイドフレーム10中の所定部位を外側に向かって隆起させることで形成され、本実施形態では、前後方向に直線状に延出するように形成されている。
【0080】
なお、凸ビード22は、当該ビード各部の位置が後端に向かうに連れて下がるように形成されているとよい。より好ましくは、車両後突時にシートバックS1の上方部分に入力される荷重の入力方向に沿う方向に延出するように凸ビード22が形成されるのがよい。また、本実施形態において、凸ビード22は、離間領域10yが有する一対の端部10s、10tのうち、折り返されている側の端部10sと同じ高さに形成されている。より厳密に説明すると、凸ビード22の形成位置は、フレーム延出方向において、折り返された端部10sにおいて重なり合った二つの部分(重なり部分10v、10w)と略同じ位置に在る。このような位置関係により、本実施形態では、端部10sの折り返しと凸ビード22の形成とが相俟って、サイドフレーム10の強度が効果的に高められている。
【0081】
また、凸ビード22については、側壁部13に設けられている構成に限定されず、
図11に示すように後壁部14に設けられていてもよい。
図11に図示の構成について説明すると、後壁部14の下端部には、幅方向に沿った脆弱部23が形成されている。この脆弱部23は、車両後突時等において所定以上の大きさの衝撃荷重が加わってサイドフレーム10が屈曲する際の変形基点となる部分であり、穴部や凹部等によって構成されている。なお、脆弱部23は、側壁部13に設けられた凸ビード22よりも後方位置に設けられている。より具体的に説明すると、
図11に示すように、側壁部13と後壁部14との境界部(角部)を跨ぐ位置に形成されるとよい。以上のような構成では、後壁部14のうち、脆弱部23の上方や下方に位置する部分に、脆弱部23と交差する方向に延出した第二の凸ビード22が設けられているとよい。
【0082】
<<サイドフレームにおけるSバネの取り付け位置について>>
本実施形態に係るシートバックフレームF1は、
図2及び3に示すように、幅方向においてサイドフレーム10の間に架設されたSバネ60を備えている。一方、Sバネ60は、幅方向に沿って上下方向に蛇行しながら延出している。また、Sバネ60の延出方向端部は、サイドフレーム10のうち、アウタパーツ11の側壁部13に形成された係合穴13xに引っ掛けられている。これにより、Sバネ60がサイドフレーム10に取り付けられている。
【0083】
ここで、係合穴13xの形成位置について説明すると、
図5A及び
図5Cを対比すると分かるように、係合穴13xは、フレーム延出方向において隣接領域10xと同じ位置に形成されている。また、係合穴13xは、前後方向において隣接領域10xが有する一対の端部10s、10tの間に形成されている。すなわち、本実施形態において、Sバネ60の取り付け位置は、フレーム延出方向において隣接領域10xと同じ位置であり、且つ、隣接領域10xが有する一対の端部10s、10tから離れた位置となっている。このような位置関係により、本実施形態では、隣接領域10xが有する一対の端部10s、10tと干渉しないようにサイドフレーム10に対して適切にSバネ60が取り付けられている。
【0084】
<<サイドフレームにおける力布取り付けクリップの取り付け位置について>>
本実施形態に係るシートバックフレームF1において、車両のドアにより近い方のサイドフレーム10には、
図10に図示の力布取り付けクリップ70が取り付けられている。この力布取り付けクリップ70は、力布取り付け部材に相当し、不図示である
エアバッグの力布を取り付けるための部品である。一方、サイドフレーム10のうち、アウタパーツ11の側壁部13には、力布取り付けクリップ70を差し込むための矩形状の差し込み穴13y、13zが形成されている。そして、
図10に示すように差し込み穴13y、13zに力布取り付けクリップ70の一部が差し込まれることで、力布取り付けクリップ70がサイドフレーム10に対して取り付けられている。
【0085】
また、本実施形態では、
図5Bに示すようにフレーム延出方向において互いに異なる位置に2つの差し込み穴13y、13zが形成されている。以下、それぞれの差し込み穴13y、13zの形成位置について説明する。なお、以下では、フレーム延出方向においてより上方に位置する差し込み穴13yを「上方の差し込み穴13y」と呼び、より下方に位置する差し込み穴13zを「下方の差し込み穴13z」と呼ぶこととする。
【0086】
上方の差し込み穴13yは、
図5A及び
図5Bを対比すると分かるように、フレーム延出方向において隣接領域10xと同じ位置に形成されている。また、上方の差し込み穴13yは、幅方向において隣接領域10xが有する一対の端部10s、10tの各々からずれた位置に形成されている。具体的に説明すると、上方の差し込み穴13yは、隣接領域10xが有する一対の端部10s、10tのうち、より前側に位置する端部10sと幅方向において対向する位置に形成されている。すなわち、本実施形態において、上方の差し込み穴13yに差し込まれる力布取り付けクリップ70の取り付け位置は、フレーム延出方向において隣接領域10xと同じ位置であり、且つ、隣接領域10xが有する一対の端部10s、10tから離れた位置となっている。このような位置関係により、本実施形態では、隣接領域10xが有する一対の端部10s、10tと干渉しないようにサイドフレーム10に対して適切に力布取り付けクリップ70が取り付けられている。また、隣接領域が有する一対の端部10s、10tのうち、より前側に位置する端部10sの幅方向内側には空間(スペース)が形成されている。本実施形態では、かかるスペースを有効利用して、力布取り付けクリップ70が取り付けられている。
【0087】
なお、本実施形態において、上方の差し込み穴13yは、
図5Bに示すように、側壁部13のうち、上述した凹部(第一の凹部20及び第二の凹部21)が形成されていない部分、すなわち、幅方向においてより外側に位置する部分(非凹部)に形成されている。また、本実施形態において、上方の差し込み穴13yは、
図5Bに示すように、Sバネ60を取り付けるために形成された係合穴13xよりも前方に位置している。換言すると、本実施形態に係るシートバックフレームF1では、上方の差し込み穴13yに差し込まれる力布取り付けクリップ70の後方にSバネ60が配置されている。
【0088】
下方の差し込み穴13zは、
図5A及び
図5Bを対比すると分かるように、フレーム延出方向において離間領域10yと同じ位置に形成されている。また、下方の差し込み穴13zは、離間領域10yが有する一対の端部10s、10tのうち、折り返されている方の端部(すなわち、より前側に位置する端部10s)の近傍に形成されている。具体的に説明すると、
図10に示すように、上記の端部10sは、折り返されることで幅方向に重なり合う二つの部分(重なり部分10v、10w)を有する。一方で、下方の差し込み穴13zは、二つの部分10v、10wのうち、より内側の重なり部分10wの後方に形成されている。より詳しく説明すると、
図5Aに示すように、下方の差し込み穴13zは、より内側の重なり部分10wの直ぐ後ろに形成されている。また、本実施形態において、より内側の重なり部分10wのうち、下方の差し込み穴13zの直前位置に在る部分は、同図に示すように、切り欠かれることで逃げ部10uを形成している。この逃げ部10uは、より内側の重なり部分102において力布取り付けクリップ70を交わすために形成された部分である。
【0089】
すなわち、本実施形態において、下方の差し込み穴13zに差し込まれる力布取り付けクリップ70の取り付け位置は、フレーム延出方向において離間領域10yと同じ位置であり、且つ、離間領域10yが有する一方の端部10sにおいて幅方向内側に位置する重なり部分10wから外れた位置となっている。このような位置関係により、本実施形態では、上記の重なり部分10wと干渉しないようにサイドフレーム10に対して適切に力布取り付けクリップ70が取り付けられている。
【0090】
また、下方の差し込み穴13zに差し込まれる力布取り付けクリップ70は、サイドフレーム10において上記の重なり部分10wの周辺位置に取り付けられている。その一方で、上記の重なり部分10wには切り欠き状の逃げ部10uが形成されている。これにより、下方の差し込み穴13zに差し込まれる力布取り付けクリップ70をサイドフレーム10に取り付ける際、上記の重なり部分10wとの干渉をより効果的に避けることが可能となる。
【0091】
なお、本実施形態において、離間領域10yが有する一対の端部10s、10tのうち、折り返されている方の端部10sは、力布取り付けクリップ70との干渉を避ける目的から、比較的短くなっている。また、上記の端部10sは、二つの重なり部分10v、10wが接合することで閉空間Cを形成しているが、下方の差し込み穴13zの近傍では上述した逃げ部10uが形成されているため、
図10に示すように閉空間Cとなっておらず開いている。ただし、これに限定されるものではなく、下方の差し込み穴13zの形成位置を
図10に図示の位置から後方にずらし、下方の差し込み穴13zの近傍においても閉空間Cを形成している構成であってもよい。
【0092】
また、本実施形態において、下方の差し込み穴13zは、
図5Bに示すように、側壁部13のうち、上述した凹部(第一の凹部20及び第二の凹部21)が形成されていない非凹部に形成されている。
【0093】
<<リクライニング装置の取り付けについて>>
本実施形態では、リクライニング装置80がシートバックフレームF1の下端部、より具体的には、サイドフレーム10を構成するアウタパーツ11の側壁部13の下端部に取り付けられている。より詳しく説明すると、側壁部13の下端部には、リクライニング装置80を取り付けるための取り付け穴13bが形成されている。この取り付け穴13bは、
図13に示すように、側方視で略逆さ鍵穴形状となっている。すなわち、取り付け穴13bの下方部分が円形となっており、上方部分が略長方形となっている。
【0094】
また、本実施形態では、幅方向において側壁部13とリクライニング装置80との間に第一のブラケット82を介在させ、当該第一のブラケット82を介してリクライニング装置80が側壁部13に取り付けられている。第一のブラケット82は、比較的厚板の鋼板からなり、
図13に示すように、略逆さ鍵穴型の基部82aと、基部82aの上端部から幅方向外側に張り出した張り出し部82bと、を有する。張り出し部82bには、渦巻きバネ85の一端部が係止されるようになっている。つまり、張り出し部82bには、渦巻きバネ85による付勢力が直接作用することになる。
【0095】
基部82aは、リング状の下方部分と、矩形枠状の上方部分と、からなり、側壁部13の外側面(幅方向外側に面する表面)に溶接されている。より詳しく説明すると、側壁部13の外側面のうち、取り付け穴13bの縁部に基部82aを当接した状態で、側壁部13よりも幅方向内側から溶接用のレーザを照射することにより、基部82aが側壁部13の外側面に溶接されている。なお、レーザ照射時には、略逆さ鍵穴型の取り付け穴13bの外縁に沿ってレーザを照射する。これにより、単純円状にレーザを照射する場合に比べて、溶接強度を高めることが可能となる。さらに、上記のようにレーザを照射する場合には、単純円状にレーザを照射する場合に比べて、リクライニング軸81から離れた位置にて溶接することが可能となる。また、上記のようにレーザを照射することで基部82aの上端部まで溶接されるようになる。これにより、張り出し部82bが設けられている基部82aの上端部での溶接強度が高められ、渦巻きバネ85から付勢力を受ける張り出し部82bの支持状態を安定させることが可能となる。
【0096】
また、基部82aのうち、側壁部13とは反対側に位置する表面にはリクライニング装置80(厳密にはリクライニング装置80のケーシング)が溶接されている。さらに、幅方向においてリクライニング装置80よりも外側には上記の渦巻きバネ85が配置されている。さらにまた、本実施形態では、幅方向においてリクライニング装置80と渦巻きバネ85との間には第二のブラケット83及び第三のブラケット84が介在している。
【0097】
第二のブラケット83は、第一のブラケット82とは反対側でリクライニング装置80と接合(溶接)されている。また、
図13に示すように、第二のブラケット83には円穴状の貫通孔83aが形成されている。この貫通孔83aには、リクライニング軸81のうち、リクライニング装置80のケーシングから幅方向外側に突出した部分が挿通されている。
【0098】
第三のブラケット84は、
図13に示すように、リング状の基部84aと、基部84aの上端部から幅方向外側に張り出した張り出し部84bと、を有する。基部84aは、第二のブラケット83の外側面(リクライニング装置80が溶接されている側とは反対側の面)に溶接されている。より詳しく説明すると、第二のブラケット83の外側面のうち、貫通孔83aの縁部に基部84aを当接させた状態で、第二のブラケット83よりも幅方向外側から溶接用のレーザを照射することにより、基部84aが第二のブラケット83の外側面に溶接されている。張り出し部82bには、渦巻きバネ85の他端部が係止されるようになっている。そして、渦巻きバネ85は、その一端部が第一のブラケット82の張り出し部82bに係止され、その他端部が第三のブラケット84の張り出し部84bに係止されることでシートバックS1を前方に付勢している。
【0099】
以上までに説明してきた構成により、本実施形態では、比較的薄厚な鋼材からなるサイドフレーム10に対して適切にリクライニング装置80が取り付けられている。