特許第6860812号(P6860812)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860812
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】赤外線センサ
(51)【国際特許分類】
   G01J 1/02 20060101AFI20210412BHJP
   G01J 5/02 20060101ALI20210412BHJP
   G01J 5/10 20060101ALI20210412BHJP
【FI】
   G01J1/02 C
   G01J5/02 J
   G01J5/10 B
【請求項の数】5
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2017-401(P2017-401)
(22)【出願日】2017年1月5日
(65)【公開番号】特開2018-109567(P2018-109567A)
(43)【公開日】2018年7月12日
【審査請求日】2019年9月25日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006264
【氏名又は名称】三菱マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100120396
【弁理士】
【氏名又は名称】杉浦 秀幸
(72)【発明者】
【氏名】中村 健治
(72)【発明者】
【氏名】田里 和義
(72)【発明者】
【氏名】平野 晋吾
【審査官】 蔵田 真彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2013−156235(JP,A)
【文献】 米国特許第05962854(US,A)
【文献】 特開2012−068115(JP,A)
【文献】 特開2016−050871(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01J 1/00−1/60、5/00−5/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
絶縁性フィルムと、
前記絶縁性フィルムの一方の面にパターン形成された一対の第1の端子電極及び一対の第2の端子電極と、
前記絶縁性フィルムの一方の面に設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、
前記第1の感熱素子に一端が接続されていると共に一対の前記第1の端子電極に他端が接続され前記絶縁性フィルムの一方の面にパターン形成された一対の第1のパターン配線と、
前記第2の感熱素子に一端が接続されていると共に一対の前記第2の端子電極に他端が接続され前記絶縁性フィルムの一方の面にパターン形成された一対の第2のパターン配線と、
前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられ前記第1の感熱素子に対向した受光領域と、
前記絶縁性フィルムの他方の面に形成され前記受光領域を避けて少なくとも前記第2の感熱素子の直上を覆う赤外線反射膜と、を備え、
前記赤外線反射膜が、前記第1のパターン配線の一部に近接した熱結合部を有し、
前記第1のパターン配線が、前記第1の感熱素子から前記第2の感熱素子に向けて延在した部分と、前記第2の感熱素子の近傍に延在した部分とを有し、
前記熱結合部が、前記第1のパターン配線のうち前記第2の感熱素子の近傍に延在した部分に対向した補償側近傍結合部を有し
前記補償側近傍結合部が、前記第2の感熱素子の直上を覆っている前記赤外線反射膜に連続して接続されている部分であることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項2】
請求項1に記載の赤外線センサにおいて、
前記第1のパターン配線が、前記絶縁性フィルムの外縁の近傍領域にまで延在し、
前記熱結合部が、前記近傍領域の前記第1のパターン配線に対向した外縁近傍結合部を有していることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の赤外線センサにおいて、
前記第1のパターン配線が、前記絶縁性フィルムの前記第1の感熱素子側の端部近傍に延在し、
前記熱結合部が、前記第1のパターン配線のうち前記絶縁性フィルムの前記第1の感熱素子側の端部近傍に延在した部分に対向した受光側端部結合部を有していることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項4】
請求項1からのいずれか一項に記載の赤外線センサにおいて、
前記赤外線反射膜が、前記受光領域の周囲も覆って形成されていることを特徴とする赤外線センサ。
【請求項5】
絶縁性フィルムと、
前記絶縁性フィルムの一方の面にパターン形成された一対の第1の端子電極及び一対の第2の端子電極と、
前記絶縁性フィルムの一方の面に設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、
前記第1の感熱素子に一端が接続されていると共に一対の前記第1の端子電極に他端が接続され前記絶縁性フィルムの一方の面にパターン形成された一対の第1のパターン配線と、
前記第2の感熱素子に一端が接続されていると共に一対の前記第2の端子電極に他端が接続され前記絶縁性フィルムの一方の面にパターン形成された一対の第2のパターン配線と、
前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられ前記第1の感熱素子に対向した受光領域と、
前記絶縁性フィルムの他方の面に形成され前記受光領域を避けて少なくとも前記第2の感熱素子の直上を覆う赤外線反射膜と、を備え、
前記赤外線反射膜が、前記第1のパターン配線の一部に近接した熱結合部を有し、
前記第1のパターン配線が、前記第1の感熱素子から前記第2の感熱素子に向けて延在した部分と、前記第2の感熱素子の近傍に延在した部分とを有し、
前記熱結合部が、前記第1のパターン配線のうち前記第2の感熱素子の近傍に延在した部分に対向した補償側近傍結合部を有し、
前記第1のパターン配線が、前記受光領域を囲んで配されていることを特徴とする赤外線センサ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ等の加熱ローラの温度を測定することに好適で応答性に優れた赤外線センサに関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、複写機やプリンタ等の画像形成装置に使用されている定着ローラ等の測定対象物の温度を測定するために、測定対象物に対向配置させ、その輻射熱を受けて温度を測定する赤外線センサが設置されている。
このような赤外線センサとしては、近年、柔軟性に優れると共に全体を薄くすることができる絶縁性フィルム上に薄膜サーミスタを形成したフィルム型赤外線センサが開発されている。
【0003】
例えば、特許文献1には、絶縁性フィルムと、該絶縁性フィルムの一方の面に互いに離間させて設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、絶縁性フィルムの一方の面に形成され第1の感熱素子に接続された導電性の第1の配線膜及び第2の感熱素子に接続された導電性の第2の配線膜と、第2の感熱素子に対向して絶縁性フィルムの他方の面に設けられた赤外線反射膜とを備えた赤外線センサが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2013−160635号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の技術には、以下の課題が残されている。
すなわち、上記従来の赤外線センサの場合、環境温度に変化が生じた場合、例えば周囲空気の対流の影響を受けて受光側及び補償側の一方で温度が変化した場合、温度が変化した一方で熱が配線膜を介して端子電極に逃げ易いため、受光側と補償側との熱バランスの収束が遅くなってしまい熱応答性が低下してしまう不都合があった。
【0006】
本発明は、前述の課題に鑑みてなされたもので、熱バランスの収束を早め、熱応答性を向上させることができる赤外線センサを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、前記課題を解決するために以下の構成を採用した。すなわち、第1の発明に係る赤外線センサは、絶縁性フィルムと、前記絶縁性フィルムの一方の面にパターン形成された一対の第1の端子電極及び一対の第2の端子電極と、前記絶縁性フィルムの一方の面に設けられた第1の感熱素子及び第2の感熱素子と、前記第1の感熱素子に一端が接続されていると共に一対の前記第1の端子電極に他端が接続され前記絶縁性フィルムの一方の面にパターン形成された一対の第1のパターン配線と、前記第2の感熱素子に一端が接続されていると共に一対の前記第2の端子電極に他端が接続され前記絶縁性フィルムの一方の面にパターン形成された一対の第2のパターン配線と、前記絶縁性フィルムの他方の面に設けられ前記第1の感熱素子に対向した受光領域と、前記絶縁性フィルムの他方の面に形成され前記受光領域を避けて少なくとも前記第2の感熱素子の直上を覆う赤外線反射膜と、を備え、前記赤外線反射膜が、前記第1のパターン配線の一部に近接した熱結合部を有していることを特徴とする。
【0008】
この赤外線センサでは、赤外線反射膜が、第1のパターン配線の一部に近接した熱結合部を有しているので、熱結合部が第1のパターン配線の一部と熱結合することによって受光側と補償側との間で相互に環境温度の変化を効率的に伝えることができ、受光側と補償側との熱バランスの収束が早くなり、熱応答性が向上する。なお、絶縁性フィルムが薄いため、熱結合部を介して一方の面の熱が早く他方の面の赤外線反射膜に伝わり、特に赤外線反射膜が金属膜である場合、高い熱伝導性を有して受光側と補償側とで相互に熱を伝えて素早く熱バランスの収束を図ることができる。
【0009】
第2の発明に係る赤外線センサは、第1の発明において、前記熱結合部が、前記第1のパターン配線の一部に対向して形成されていることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、熱結合部が、第1のパターン配線の一部に対向して形成されているので、熱結合部が薄い絶縁性フィルムを介して第1のパターン配線の一部に最も近接し、高い熱結合性を得ることができる。
【0010】
第3の発明に係る赤外線センサは、第1又は第2の発明において、前記第1のパターン配線が、前記絶縁性フィルムの外縁の近傍領域にまで延在し、前記熱結合部が、前記近傍領域の前記第1のパターン配線に対向した外縁近傍結合部を有していることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、熱結合部が、前記近傍領域の第1のパターン配線に対向した外縁近傍結合部を有しているので、外縁近傍結合部によって絶縁性フィルム外縁の近傍領域からも熱を伝えることができる。
【0011】
第4の発明に係る赤外線センサは、第1から第3の発明のいずれかにおいて、前記第1のパターン配線が、前記第2の感熱素子の近傍まで延在し、前記熱結合部が、前記第1のパターン配線のうち前記第2の感熱素子の近傍に延在した部分に対向した補償側近傍結合部を有していることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、熱結合部が、第1のパターン配線のうち第2の感熱素子の近傍に延在した部分に対向した補償側近傍結合部を有しているので、受光側の熱を第1のパターン配線を介して補償側へ伝達すると共に、第2の感熱素子近傍で補償側近傍結合部が第1のパターン配線に熱結合して補償側の赤外線反射膜全体に熱を伝えることで、より熱バランスの収束を早くすることが可能になる。
【0012】
第5の発明に係る赤外線センサは、第1から第4の発明のいずれかにおいて、前記第1のパターン配線が、前記絶縁性フィルムの前記第1の感熱素子側の端部近傍に延在し、前記熱結合部が、前記第1のパターン配線のうち前記絶縁性フィルムの前記第1の感熱素子側の端部近傍に延在した部分に対向した受光側端部結合部を有していることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、熱結合部が、第1のパターン配線のうち絶縁性フィルムの第1の感熱素子側の端部近傍に延在した部分に対向した受光側端部結合部を有しているので、補償側から最も遠い端部からも熱を伝え易くなり、より熱応答性の向上を図ることができる。
【0013】
第6の発明に係る赤外線センサは、第1から第5の発明のいずれかにおいて、前記赤外線反射膜が、前記受光領域の周囲も覆って形成されていることを特徴とする。
すなわち、この赤外線センサでは、赤外線反射膜が、受光領域の周囲も覆って形成されているので、熱結合部を介して伝わった環境温度の変化が受光領域の周囲全体にも伝わり、さらに熱バランスの収束を早くすることが可能になる。したがって、第1の感熱素子側と第2の感熱素子側との間の空気対流による温度勾配が小さくなり、2つの感熱素子の応答速度を同等にすることが可能になる。
例えば、第2の感熱素子に対向する領域のみに赤外線反射膜が形成されている場合、周囲空気の対流により第2の感熱素子側から空気が流れてきたとき、第2の感熱素子の上方の赤外線反射膜が冷えて絶縁性フィルムの温度が局所的に変化してしまう。これに対し、本発明の赤外線センサでは、赤外線反射膜が第1の感熱素子に対向する受光領域の周囲も覆って形成されているため、空気の流れによって第2の感熱素子側の領域が冷えても赤外線反射膜の熱伝導性によって受光領域の周囲の温度も下がり、全体的に温度の差分が生じ難くなって、周囲空気の対流による影響を受け難くなる。なお、第1の感熱素子の上方の受光領域は赤外線反射膜で覆わないため、測定対象物からの赤外線の受光を妨げない。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、以下の効果を奏する。
すなわち、本発明に係る赤外線センサによれば、赤外線反射膜が、第1のパターン配線の一部に近接した熱結合部を有しているので、熱結合部を介して受光側と補償側との相互で環境温度の変化を効率的に伝えることができ、受光側と補償側との熱バランスの収束が早くなり、熱応答性が向上する。
したがって、本発明の赤外線センサによれば、熱応答性が高く、複写機やプリンタ等の加熱ローラの温度測定用として好適である。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】本発明に係る赤外線センサの第1実施形態を示す平面図である。
図2】第1実施形態において、赤外線センサを示す平面図(a)及び裏面図(b)である。
図3】本発明に係る赤外線センサの第2実施形態において、感熱素子を外した状態の平面図である。
図4】本発明に係る赤外線センサの第3実施形態において、感熱素子を外した状態の平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明に係る赤外線センサにおける第1実施形態を、図1及び図2を参照しながら説明する。
【0017】
本実施形態の赤外線センサ1は、図1及び図2に示すように、絶縁性フィルム2と、絶縁性フィルム2の一方の面(表面)にパターン形成された一対の第1の端子電極4A及び一対の第2の端子電極4Bと、絶縁性フィルム2の一方の面に設けられた第1の感熱素子5A及び第2の感熱素子5Bと、第1の感熱素子5Aに一端が接続されていると共に一対の第1の端子電極4Aに他端が接続され絶縁性フィルム2の一方の面にパターン形成された一対の第1のパターン配線6Aと、第2の感熱素子5Bに一端が接続されていると共に一対の第2の端子電極4Bに他端が接続され絶縁性フィルム2の一方の面にパターン形成された一対の第2のパターン配線6Bと、絶縁性フィルム2の他方の面(受光側の面、裏面)に設けられ第1の感熱素子5Aに対向した受光領域Dと、絶縁性フィルム2の他方の面に形成され受光領域Dを避けて少なくとも第2の感熱素子5Bの直上を覆う赤外線反射膜8と、を備えている。
【0018】
また、本実施形態の赤外線センサ1は、第1のパターン配線6Aとは別に一対の第1の接着電極3Aに接続され絶縁性フィルム2の一方の面に絶縁性フィルム2よりも熱伝導率が高い薄膜で第1の接着電極3Aの近傍にパターン形成された一対の伝熱膜7を備えている。
【0019】
上記赤外線反射膜8は、第1のパターン配線6Aの一部に近接した熱結合部Cを有している。
この熱結合部Cは、第1のパターン配線6Aの一部と熱結合させるための部分であり、第1のパターン配線6Aの一部に対向して形成されている。
上記一対の第1のパターン配線6Aは、一端に第1の感熱素子5Aに接続された一対の第1の接着電極3Aを有している。また、上記一対の第2のパターン配線6Bは、一端に第2の感熱素子5Bに接続された一対の第2の接着電極3Bを有している。
【0020】
第1のパターン配線6Aは、第2の感熱素子5Bの近傍まで延在している。また、熱結合部Cが、第1のパターン配線6Aのうち第2の感熱素子5Bの近傍に延在した部分に対向した補償側近傍結合部C1を有している。
また、第1のパターン配線6Aは、さらに絶縁性フィルム2の外縁の近傍領域にまで延在している。また、熱結合部Cが、前記近傍領域の第1のパターン配線6Aに対向した外縁近傍結合部C2を有している。
さらに、上記赤外線反射膜8は、受光領域Dの周囲も覆って形成されている。
【0021】
このように一対の上記第1のパターン配線6Aは、一対の第1の接着電極3Aから一対の第1の端子電極4A側とは反対側に向けて延在し、さらに一対の伝熱膜7の外周の一部に沿って延在してからそれぞれ対応する第1の端子電極4Aに達している。
すなわち、第1のパターン配線6Aは、まず第1の接着電極3Aから第2の感熱素子5Bに向けて一対の伝熱膜7の間を延在し、そして一対の伝熱膜7の端部近傍で絶縁性フィルム2の短辺に沿った方向であって長辺に向けて延在している。この延在部分に対向するように補償側の赤外線反射膜8の一部が対向して形成され、補償側近傍結合部C1とされている。さらに、第1のパターン配線6Aは、伝熱膜7の外側を絶縁性フィルム2の長辺に沿って第1の端子電極4Aまで延在している。この延在部分に対向して絶縁性フィルム2の外縁の近傍に赤外線反射膜8が延在しており、この部分が外縁近傍結合部C2とされている。
なお、第2のパターン配線6Bは、第1のパターン配線6Aに比べて短い距離で延在し、第2の端子電極4Bに達している。
【0022】
上記第1のパターン配線6Aと伝熱膜7とは、互いに直接的には接触しておらず、第1の接着電極3Aを介して間接的に接続している。
上記伝熱膜7は、第1のパターン配線6Aよりも広い面積で形成されている。
伝熱膜7の第1の接着電極3Aに対する接続幅は、第1のパターン配線6Aの第1の接着電極3Aに対する接続幅よりも広く設定されている。すなわち、正方形状とされた第1の接着電極3Aの4辺のうち、2辺全体に伝熱膜7が接続されているのに対し、第1の接着電極3Aに4つある角部のうち1つに第1のパターン配線6Aが接続されている。このように伝熱膜7の第1の接着電極3Aへの接続部と、第1のパターン配線6Aの第1の接着電極3Aへの接続部とは、別々に設定されている。
上記第1の接着電極3A及び第2の接着電極3Bには、それぞれ対応する第1の感熱素子5A及び第2の感熱素子5Bの端子電極が半田等の導電性接着剤で接着されている。
【0023】
上記赤外線反射膜8は、一対の伝熱膜7の直上を避けるようにして形成されている。
すなわち、本実施形態では、赤外線の受光面直下に配された第1の感熱素子5Aが赤外線の検出用素子とされ、赤外線反射膜8直下に配された第2の感熱素子5Bが補償用素子とされている。
なお、図1において、裏面側の赤外線反射膜8を破線で図示している。また、図2の(a)(b)において、各端子電極、各パターン配線、伝熱膜7及び赤外線反射膜8をハッチングで図示している。
【0024】
上記絶縁性フィルム2は、ポリイミド樹脂シートで略長方形状に形成され、赤外線反射膜8、各パターン配線、各端子電極、各接着電極及び伝熱膜7が銅箔で形成されている。すなわち、これらは、絶縁性フィルム2とされるポリイミド基板の両面に、赤外線反射膜8、各パターン配線、各端子電極、各接着電極及び伝熱膜7が銅箔でパターン形成された両面フレキシブル基板によって作製されたものである。
上記一対の第1の端子電極4A及び一対の第2の端子電極4Bは、絶縁性フィルム2の角部近傍に配設されている。
【0025】
上記赤外線反射膜8は、上述した銅箔と、該銅箔上に積層された金メッキ膜とで構成されている。
この赤外線反射膜8は、絶縁性フィルム2よりも高い赤外線反射率を有する材料で形成され、上述したように、銅箔上に金メッキ膜が施されて形成されている。なお、金メッキ膜の他に、例えば鏡面のアルミニウム蒸着膜やアルミニウム箔等で形成しても構わない。
【0026】
上記第1の感熱素子5A及び第2の感熱素子5Bは、両端部に端子電極(図示略)が形成されたチップサーミスタである。このサーミスタとしては、NTC型、PTC型、CTR型等のサーミスタがあるが、本実施形態では、第1の感熱素子5A及び第2の感熱素子5Bとして、例えばNTC型サーミスタを採用している。このサーミスタは、Mn−Co−Cu系材料、Mn−Co−Fe系材料等のサーミスタ材料で形成されている。
【0027】
このように本実施形態の赤外線センサ1では、赤外線反射膜8が、第1のパターン配線6Aの一部に近接した熱結合部Cを有しているので、熱結合部Cが第1のパターン配線6Aの一部と熱結合することによって受光側と補償側との間で相互に環境温度の変化を効率的に伝えることができ、受光側と補償側との熱バランスの収束が早くなり、熱応答性が向上する。
特に、熱結合部Cが第1のパターン配線6Aの一部に対向して形成されているので、熱結合部Cが薄い絶縁性フィルム2を介して第1のパターン配線6Aの一部に最も近接し、高い熱結合性を得ることができる。
【0028】
また、熱結合部Cが、前記近傍領域の第1のパターン配線6Aに対向した外縁近傍結合部C2を有しているので、外縁近傍結合部C2によって絶縁性フィルム2外縁の近傍領域からも熱を伝えることができる。
特に、赤外線反射膜8が、受光領域Dの周囲も覆って形成されているので、外縁近傍結合部C2を介して伝わった環境温度の変化が受光領域Dの周囲全体にも伝わり、さらに熱バランスの収束を早くすることが可能になる。したがって、第1の感熱素子5A側と第2の感熱素子5B側との間の空気対流による温度勾配が小さくなり、2つの感熱素子の応答速度を同等にすることが可能になる。
【0029】
さらに、熱結合部Cが、第1のパターン配線6Aのうち第2の感熱素子5Bの近傍に延在した部分に対向した補償側近傍結合部C1を有しているので、受光側の熱を第1のパターン配線6Aを介して補償側へ伝達すると共に、第2の感熱素子5B近傍で補償側近傍結合部C1が第1のパターン配線6Aに熱結合して補償側の赤外線反射膜8全体に熱を伝えることで、より熱バランスの収束を早くすることが可能になる。
【0030】
次に、本発明に係る赤外線センサの第2及び第3実施形態について、図3及び図4を参照して以下に説明する。なお、以下の各実施形態の説明において、上記実施形態において説明した同一の構成要素には同一の符号を付し、その説明は省略する。また、図3及び図4では、絶縁性フィルム2の他方の面に形成した赤外線反射膜8を破線で示している。
【0031】
第2実施形態と第1実施形態との異なる点は、第1実施形態では、一対の第1のパターン配線6Aが、一対の伝熱膜7の端部近傍で絶縁性フィルム2の短辺に沿った方向であって長辺に向けて直線状に延在しているのに対し、第2実施形態の赤外線センサ21では、図3に示すように、一対の第1のパターン配線26Aが、一対の伝熱膜27の端部近傍で絶縁性フィルム2の短辺に沿った方向であって長辺に向けてクランク状に折れ曲がって延在している点である。すなわち、この延在部分に対応して赤外線反射膜28も形成されており、クランク状に補償側近傍結合部C3,C4が形成されている。
【0032】
また、第1実施形態では、正方形状とされた第1の接着電極3Aの4辺のうち、2辺全体に伝熱膜7が隙間無く接続されているのに対し、第2実施形態の赤外線センサ21では、図に示すように、正方形状とされた第1の接着電極3Aの4辺のうち、2辺にくびれ部27aを介して部分的に伝熱膜27が接続されている点で異なっている。
【0033】
このように第2実施形態では、一対の第1のパターン配線26Aが、一対の伝熱膜27の端部近傍で絶縁性フィルム2の短辺に沿った方向であって長辺に向けてクランク状に折れ曲がって延在している場合でも、この延在部分に対応して赤外線反射膜28も形成されているので、直線状の場合と同等の長さの補償側近傍結合部C3,C4が確保でき、十分な熱結合を得ることができる。
なお、第1の接着電極Aへの伝熱膜27の接続部分にくびれ部27aを形成しているので、くびれ部27aがサーマルランドとして機能し、ハンダ時に熱が必要以上に周囲に逃げてハンダが溶け難くなってハンダ不良となることを抑制することができる。
【0034】
次に、第3実施形態と第2実施形態との異なる点は、第2実施形態では、第1のパターン配線6Aが第1の接着電極3Aから第2の感熱素子5B側に向けて延在し、さらに伝熱膜27の外側を介して第1の端子電極4Aに達することで、外縁近傍結合部C2及び補償側近傍結合部C3,C4が設けられているのに対し、第3実施形態の赤外線センサ31では、図4に示すように、一対の第1のパターン配線36Aが一対の第1の接着電極3Aから第1実施形態と逆方向に延在し、そして複数回折り返して蛇行した部分36aを介してそれぞれ対応する第1の端子電極4Aに達しており、絶縁性フィルム2の第1の感熱素子5A側の端部近傍に受光側端部結合部C5を設けている点である。
【0035】
すなわち、第3実施形態では、熱結合部Cが、第1のパターン配線36Aのうち絶縁性フィルム2の第1の感熱素子5A側の端部近傍に延在した部分に対向した受光側端部結合部C5を有している。
このように第3実施形態の赤外線センサ31では、熱結合部Cが、第1のパターン配線36Aのうち絶縁性フィルム2の第1の感熱素子5A側の端部近傍に延在した部分に対向した受光側端部結合部C5を有しているので、補償側から最も遠い端部からも熱を伝え易くなり、より熱応答性の向上を図ることができる。
【0036】
また、第1のパターン配線36Aが蛇行した部分36aを有しているので、第1の端子電極4Aまでの熱抵抗を大きくすることが可能になる。したがって、第2実施形態のように第1のパターン配線6Aを、一旦、第2の感熱素子5B側に向けて延在させると共に伝熱膜37の外側を迂回して配さなくても長く延在させることができ、第1の端子電極4Aへ流れる熱を抑制することが可能になる。
【0037】
なお、本発明の技術範囲は上記各実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において種々の変更を加えることが可能である。
【0038】
例えば、上記各実施形態では、第1の感熱素子が赤外線を直接吸収した絶縁性フィルムから伝導される熱を検出しているが、第1の感熱素子の直上であって絶縁性フィルムの一方の面上に絶縁性フィルムよりも赤外線吸収性が高い赤外線吸収膜を形成しても構わない。この場合、さらに第1の感熱素子における赤外線吸収効果が向上して、第1の感熱素子と第2の感熱素子とのより良好な温度差分を得ることができる。すなわち、この赤外線吸収膜によって測定対象物からの輻射による赤外線を吸収するようにし、赤外線を吸収し発熱した赤外線吸収膜から絶縁性フィルムを介した熱伝導によって、直下の第1の感熱素子の温度が変化するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0039】
1,21,31…赤外線センサ、2…絶縁性フィルム、3A…第1の接着電極、3B…第2の接着電極、4A…第1の端子電極、4B…第2の端子電極、5A…第1の感熱素子、5B…第2の感熱素子、6A,36A…第1のパターン配線、6B…第2のパターン配線、8,28…赤外線反射膜、C…熱結合部、C1,C3,C4…補償側近傍結合部、C2…外縁近傍結合部、C5…受光側端部結合部、D…受光領域
図1
図2
図3
図4