(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照しながら説明する。
図1乃至
図17は、本発明に係るガラスフィルムの製造方法及び製造装置の一実施形態を示す。
【0019】
図1に示すように、製造装置1は、帯状ガラスフィルムGRを成形する成形部2と、帯状ガラスフィルムGRの進行方向を縦方向下方から横方向に変換する方向変換部3と、方向変換後に帯状ガラスフィルムGRを横方向に搬送する第一搬送部4と、帯状ガラスフィルムGRにおける幅方向端部(耳部)を切断する第一切断部5と、耳部が除去された帯状ガラスフィルムGRをロール状に巻き取ってガラスロールGRLを構成する巻取部6とを備える。
【0020】
さらに製造装置1は、ガラスロールGRLから帯状ガラスフィルムGRを取り出す取出部7と、取出部7から取り出された帯状ガラスフィルムGRを搬送する第二搬送部8と、帯状ガラスフィルムGRの一部を枚葉状のマザーガラスフィルムMGFとして切断する第二切断部9と、マザーガラスフィルムMGFを搬送する第三搬送部10と、マザーガラスフィルムMGFの各辺SD1〜SD4を切断してガラスフィルムGを形成する第三切断部11とを備える。
【0021】
成形部2は、上端部にオーバーフロー溝12aが形成された断面視略楔形の成形体12と、成形体12の直下に配置されて、成形体12から溢出した溶融ガラスGMを表裏両側から挟むエッジローラ13と、エッジローラ13の直下に配備されるアニーラ14とを備える。
【0022】
成形部2は、成形体12のオーバーフロー溝12aの上方から溢流した溶融ガラスGMを、両側面に沿ってそれぞれ流下させ、その下端部で合流させてフィルム状に成形する。エッジローラ13は、この溶融ガラスGMの幅方向収縮を規制して所定幅の帯状ガラスフィルムGRとする。アニーラ14は、帯状ガラスフィルムGRに対して除歪処理を施すためのものである。アニーラ14は、上下方向複数段に配設されたアニーラローラ15を有する。
【0023】
アニーラ14の下方には、帯状ガラスフィルムGRを表裏両側から挟持する支持ローラ16が配設されている。支持ローラ16とエッジローラ13との間、または支持ローラ16と何れか一箇所のアニーラローラ15との間では、帯状ガラスフィルムGRを薄肉にすることを助長するための張力が付与されている。
【0024】
方向変換部3は、支持ローラ16の下方位置に設けられている。方向変換部3には、帯状ガラスフィルムGRを案内する複数のガイドローラ17が湾曲状に配列されている。これらのガイドローラ17は、鉛直方向に搬送される帯状ガラスフィルムGRを横方向へと案内する。
【0025】
第一搬送部4は、方向変換部3の進行方向前方(下流側)に配置される。第一搬送部4は、ベルトコンベアにより構成されるが、この構成に限定されず、ローラコンベアその他の各種搬送装置を使用できる。第一搬送部4は、無端帯状のベルト4aを駆動することにより、方向変換部3を通過した帯状ガラスフィルムGRを下流側へと連続的に搬送する。
【0026】
第一切断部5は、第一搬送部4の上方に配置される。本実施形態では、第一切断部5は、レーザ割断により帯状ガラスフィルムGRを切断するが、これに限定されず、レーザ溶断その他の切断手段により構成されてもよい。第一切断部5は、一対のレーザ照射装置18と、一対の冷却装置19とを備える。レーザ照射装置18は、帯状ガラスフィルムGRの所定部位にCO
2レーザ光Lを照射することにより、当該部位を局部加熱する。冷却装置19は、帯状ガラスフィルムGRの搬送方向において、レーザ照射装置18の下流側に配置される。冷却装置19は、帯状ガラスフィルムGRにおいて局部加熱された部位に冷媒Rを噴射して当該部位を冷却する。
【0027】
巻取部6は、第一搬送部4及び第一切断部5の下流側に設置されている。巻取部6は、巻芯20を回転させることで、帯状ガラスフィルムGRをロール状に巻き取る。このようにして構成されるガラスロールGRLは、取出部7の位置まで搬送される。取出部7は、巻取部6によって構成されたガラスロールGRLから帯状ガラスフィルムGRを引き出して、第二切断部9に供給する。
【0028】
第二搬送部8は、取出部7においてガラスロールGRLから取り出された帯状ガラスフィルムGRを下流側へと搬送する。第二搬送部8はベルトコンベアにより構成されるが、この構成に限定されず、ローラコンベアその他の各種搬送装置を使用できる。第二搬送部8は、無端帯状のベルト8aを駆動することにより、帯状ガラスフィルムGRを下流側の第二切断部9へと搬送する。
【0029】
第二切断部9は、帯状ガラスフィルムGRを割断することにより、枚葉状のマザーガラスフィルムMGFを形成する。第二切断部9は、曲げ応力割断装置により構成されるが、この構成に限定されず、レーザ溶断その他の切断手段により構成され得る。第二切断部9は、曲面を有する支持部材21と、一対の押さえ部材22と、クラック形成部材23とを備える。支持部材21は、円筒面を有する棒状部材である。支持部材21は、上下方向に移動可能に構成される。押さえ部材22は、金属又は樹脂等により円柱状に構成される。押さえ部材は、上下方向及び水平方向に移動可能に構成される。押さえ部材22は、支持部材21の上流側と下流側の二箇所に配置される。クラック形成部材23は、上下方向に移動可能に構成されており、支持部材21の上方に配置される。クラック形成部材23は、その下端部にダイヤモンドカッタを有する。
【0030】
第三搬送部10はベルトコンベアにより構成されるが、この構成に限定されず、ローラコンベアその他の各種搬送装置を使用できる。第三搬送部10は、無端帯状のベルト10aを駆動することにより、マザーガラスフィルムMGFを下流側の第三切断部11へと搬送する。
【0031】
第三切断部11は、枚葉状のマザーガラスフィルムMGFの四辺SD1〜SD4をレーザ割断によりフルカットする。
図1乃至
図3に示すように、第三切断部11は、マザーガラスフィルムMGFを支持する定盤24と、この定盤24に載置される緩衝材25と、マザーガラスフィルムMGFの表面に載せられる複数の固定部材26a,26b,27a,27bと、マザーガラスフィルムMGFに初期クラックを形成するクラック形成部材28と、マザーガラスフィルムMGFを切断するための一対のレーザ照射装置29及び一対の冷却装置30と、を備える。
【0032】
定盤24は、金属製であり、マザーガラスフィルムMGFの表面積よりも大きな支持面24aを有する。緩衝材25は、発泡樹脂により構成されるシート材である。緩衝材25は、支持面24aよりも小さくマザーガラスフィルムMGFよりも大きな面積を有する。
【0033】
図2乃至
図4に示すように、マザーガラスフィルムMGFは、矩形状に構成されており、第一辺SD1と、第一辺SD1と交差する第二辺SD2と、第一辺SD1と対向する第三辺SD3と、第一辺SD1と第三辺SD3とに交差する第四辺SD4と、を有する。各辺SD1〜SD4は、第三切断部11において切断(割断)され、不要部分として除去される。各辺SD1〜SD4の長さは500mm以上1500mm以下とされるが、この範囲に限定されない。本実施形態では、第二辺SD2及び第四辺SD4の長さが、第一辺SD1及び第三辺SD3の長さよりも短いマザーガラスフィルムMGFを例示するが、この形状に限定されない。
【0034】
図4(a)に示すように、マザーガラスフィルムMGFには、第一割断予定線CL1及び第二割断予定線CL2が仮想的に設定される。第一割断予定線CL1と第二割断予定線CL2とは所定の角度(例えば90度)で交差する。本実施形態では、
図4(b)に示すように、第一割断予定線CL1に沿った割断が実行された後、
図4(c)に示すように、第二割断予定線CL2に沿った割断が実行される。これにより、マザーガラスフィルムMGFの各辺SD1〜SD4が除去され、新たな四辺SD1a〜SD4aを有する矩形状のガラスフィルムGが形成される。
【0035】
固定部材26a,26b,27a,27bは、二対の第一固定部材26a,26bと、二対の第二固定部材27a,27bとを含む。本実施形態では、固定部材26a,26b,27a,27bとして、マザーガラスフィルムMGFの表面(上面)に載置される固定バーを例示する。具体的には、各固定部材26a,26b,27a,27bは、アルミニウム、ステンレス鋼等の金属により構成される本体31と、本体31の外表面を被覆する保護カバー32とを備える。本体31は、四角柱状又は四角筒状の棒状部材により構成されるが、この形状に限定されない。保護カバー32は、発泡樹脂を含む樹脂によりシート状に構成される。保護カバー32は、本体31の外表面全体を被覆するが、これに限らず、本体31の外表面の一部のみを被覆してもよい。
【0036】
本実施形態において、第一固定部材(第一固定バー)26a,26bは、第二固定部材(第二固定バー)27a,27bよりも長い。具体的には、第一固定部材26a,26bの長さをL1とし、第二固定部材27a,27bの長さをL2としたとき(
図2参照)、L1>1.1L2の関係となるように、両者の長さL1,L2を設定することが望ましい。第一固定部材26a,26bの幅W1(
図2参照)は、3mm以上30mm以下に設定され、第二固定部材27a,27bの幅W2は、3mm以上30mm以下に設定されるが、これらの範囲に限定されるものではない。
【0037】
クラック形成部材28は、定盤24の上方に配置されるとともに、水平方向及び上下方向に移動可能に構成される。クラック形成部材28は、その下端部にダイヤモンドカッタを備える。
【0038】
レーザ照射装置29は、上下方向及び水平方向に移動可能に構成される。レーザ照射装置29は、例えばCO
2レーザ光Lを照射するように構成されるが、この構成に限定されない。冷却装置30は、水と空気とを混合してなる冷媒(ミストエア)Rを下方に噴射するように構成される。また、冷却装置30は、上下方向及び水平方向に移動可能に構成されており、レーザ照射装置29に追従して移動する。
【0039】
上記の製造装置1により製造されるガラスフィルムGの材料としては、ケイ酸塩ガラス、シリカガラスが用いられ、好ましくはホウ珪酸ガラス、ソーダライムガラス、アルミノ珪酸塩ガラス、化学強化ガラスが用いられ、最も好ましくは無アルカリガラスが用いられる。ガラスフィルムGとして無アルカリガラスを使用することで、化学的に安定なガラスとすることができる。ここで、無アルカリガラスとは、アルカリ成分(アルカリ金属酸化物)が実質的に含まれていないガラスのことであって、具体的には、アルカリ成分の重量比が3000ppm以下のガラスのことである。本発明におけるアルカリ成分の重量比は、好ましくは1000ppm以下であり、より好ましくは500ppm以下であり、最も好ましくは300ppm以下である。
【0040】
また、ガラスフィルムG(マザーガラスフィルムMGF)の厚みは、10μm以上300μm以下とされ、好ましくは30μm以上200μm以下であり、最も好ましくは30μm以上100μm以下である。
【0041】
以下、上記構成の製造装置1を使用してガラスフィルムGを製造する方法について説明する。
図5に示すように、本方法は、成形部2によって帯状ガラスフィルムGRを成形する成形工程S1と、帯状ガラスフィルムGRの幅方向端部(耳部)を切断する耳部除去工程S2と、帯状ガラスフィルムGRを巻き取ってガラスロールGRLを構成する巻取工程S3と、ガラスロールGRLから帯状ガラスフィルムGRを引き出す取出工程S4と、帯状ガラスフィルムGRを切断してマザーガラスフィルムMGFを形成するマザーガラス形成工程S5と、マザーガラスフィルムMGFの四辺SD1〜SD4を割断してガラスフィルムGを形成する割断工程S6とを備える。
【0042】
成形工程S1では、成形部2における成形体12のオーバーフロー溝12aから溢流した溶融ガラスGMを当該成形体12の両側面に沿ってそれぞれ流下させ、その下端で合流させてフィルム状に成形する。この際、溶融ガラスGMの幅方向収縮をエッジローラ13により規制して所定幅の帯状ガラスフィルムGRとする。その後、帯状ガラスフィルムGRに対してアニーラ14により除歪処理を施す(徐冷工程)。支持ローラ16の張力により、帯状ガラスフィルムGRは所定の厚みに形成される。
【0043】
耳部除去工程S2では、方向変換部3及び第一搬送部4によって帯状ガラスフィルムGRを下流側に送りつつ、第一切断部5において、レーザ照射装置18の局部加熱による膨張と冷却装置19の冷却による収縮とにより帯状ガラスフィルムGRに熱応力を生じさせる。帯状ガラスフィルムGRには、予め初期クラックが形成されており、この熱応力によって当該クラックを進展させることで、帯状ガラスフィルムGRの幅方向端部を連続的に割断する。これにより、非製品部としての耳部が製品部としての帯状ガラスフィルムGRから分離する。
【0044】
続く巻取工程S3では、耳部が除去された帯状ガラスフィルムGRを巻芯20に巻き取ることにより、ガラスロールGRLを構成する。その後、ガラスロールGRLは、取出部7に移送される。取出工程S4では、取出部7に移送されたガラスロールGRLから帯状ガラスフィルムGRを引き出し、第二搬送部8によって第二切断部9へと搬送する。
【0045】
マザーガラス形成工程S5では、第二切断部9の支持部材21と押さえ部材22とによって帯状ガラスフィルムGRに引張応力を作用させる。次に、クラック形成部材23によって、帯状ガラスフィルムGRの一部に初期クラックを形成する。その後、帯状ガラスフィルムGRに作用する引張応力により、支持部材21の長手方向に想定される割断予定線に沿って初期クラックを進展させる。これにより、帯状ガラスフィルムGRの一部が切断され、枚葉状のマザーガラスフィルムMGFが形成される。その後、マザーガラスフィルムMGFは、第三搬送部10によって第三切断部11へと搬送される。
【0046】
割断工程S6では、まず、第三切断部11における定盤24の支持面24aに配置されている緩衝材25上に、マザーガラスフィルムMGFが載置される(載置工程)。その後、マザーガラスフィルムMGFの第一辺SD1と第三辺SD3とを割断する第一割断工程と、第一割断工程後に、マザーガラスフィルムMGFの第二辺SD2と第四辺SD4とを割断する第二割断工程とが実行される。
【0047】
第一割断工程では、
図2、
図3、
図6及び
図7に示すように、マザーガラスフィルムMGFの上面に、二対の第一固定部材26a,26bが載置される。この場合、マザーガラスフィルムMGFの第一辺SD1及び第三辺SD3に対応する二本の第一割断予定線CL1に並行して第一固定部材26a,26bが設置される(第一固定工程)。この場合、第一固定部材26a,26bの保護カバー32の一部がマザーガラスフィルムMGFに接触し、本体31はマザーガラスフィルムMGFに接触しない。これにより、本体31の接触によるマザーガラスフィルムMGFの損傷が防止される。第一固定部材26a,26bのマザーガラスフィルムMGFへの載置は、作業者の手動で行われてもよく、マニピュレータ等により自動で行われてもよい(後述する第二固定工程において同じ)。
【0048】
具体的には、一本の第一割断予定線CL1に対して二本(一対)の第一固定部材26a,26bが配置される。各二本の第一固定部材26a,26bは、水平方向において一定の間隔をおいて配置される。より具体的には、第一固定部材26a,26bは、第一割断予定線CL1から離れた位置に設けられる。各第一固定部材26a,26bにおける第一割断予定線CL1からの間隔D1a,D1b(
図7参照)は、5mm以上100mm以下に設定される。本実施形態では、一方の第一固定部材26aと第一割断予定線CL1との間隔D1aと、他方の第一固定部材26bと第一割断予定線CL1との間隔D1bとが等しくされる。これに限定されず、各間隔D1a、D1bは異なっていても良い。
【0049】
図6に示すように、第一割断予定線CL1に沿って並列配置された四本(二対)の第一固定部材26a,26bは、第二辺SD2及び第四辺SD4と交差する。これにより、第一固定部材26a,26bの一方の端部が第二辺SD2から突出し、他方の端部が第四辺SD4から突出した状態となる。第一固定部材26a,26bにおける第二辺SD2、第四辺SD4からの突出長さL3は、1mm以上300mm以下とされるが、この範囲に限定されない。
【0050】
第一割断予定線CL1は、一端部に割断始端部Sが設定され、他端部に割断終端部Eが設定される。
図8及び
図9に示すように、第一割断工程では、第一割断予定線CL1の割断始端部Sにクラック形成部材28によって初期クラックが形成される(第一初期クラック形成工程)。クラック形成部材28は、マザーガラスフィルムMGFの割断始端部Sの上方位置から下降し、当該割断始端部Sに接触して、初期クラックを形成する。その後、クラック形成部材28は、マザーガラスフィルムMGFから離れ、所定の待機位置に戻り、次回の動作まで待機する。
【0051】
初期クラックが形成されると、
図10及び
図11に示すように、レーザ照射装置29は、マザーガラスフィルムMGFの上方において、割断始端部Sから割断終端部Eまで第一割断予定線CL1に沿って水平方向に移動する。レーザ照射装置29は、移動しながらレーザ光Lを第一割断予定線CL1に向かって照射する。
【0052】
冷却装置30は、レーザ照射装置29の後方に位置するとともに、レーザ照射装置29に追従して水平方向に移動する。冷却装置30は、レーザ光Lが照射された部位に向けて冷媒Rを噴射する。この冷媒Rにより、レーザ光Lにより加熱された部位が冷却される。レーザ光Lの局部加熱によるガラスの膨張と、冷媒Rの冷却によるガラスの収縮とにより、第一割断予定線CL1の部位に熱応力(引張応力)が発生する。この熱応力により、初期クラックが第一割断予定線CL1に沿って進展し、当該クラックが割断終端部Eに達することで、第一辺SD1及び第三辺SD3がマザーガラスフィルムMGFから分断される(
図12参照)。以上により、第一割断工程が終了する。
【0053】
なお、
図12に示すように、第一辺SD1及び第三辺SD3は、一定の割断代RS1を有する。本実施形態における割断代RS1は、10mm以上400mm以下に設定されるが、この範囲に限定されるものではない。
【0054】
第二割断工程では、マザーガラスフィルムMGFの第二辺SD2及び第四辺SD4を割断するために、当該マザーガラスフィルムMGFの位置(向き)が変更される。
図12に示すように、マザーガラスフィルムMGFは、平面視で90度回転し、実線で示す位置から二点鎖線で示す位置へと移動する。マザーガラスフィルムMGFの向き及び位置の変更は、作業者によって行われてもよく、定盤24を回転可能に構成するとともに、当該定盤24を90度回転させることで行われてもよい。また、マザーガラスフィルムMGFの位置を変更することなく、クラック形成部材28、レーザ照射装置29及び冷却装置30を、第二辺SD2及び第四辺SD4を切断可能な位置に移動させてもよい。或いは、第二辺SD2及び第四辺SD4を割断するための、クラック形成部材、レーザ照射装置及び冷却装置を別途用意してもよい。
【0055】
マザーガラスフィルムMGFの第二辺SD2及び第四辺SD4には、第二割断予定線CL2が設定される。
図13及び
図14に示すように、第二割断工程では、マザーガラスフィルムMGFの第二割断予定線CL2に並行して二対の第二固定部材27a,27bが配置される(第二固定工程)。この場合において、第二固定部材27a,27bの各端部は、マザーガラスフィルムMGFから突出する。この端部の突出長さL4は、1mm以上300mm以下とされるが、この範囲に限定されない。
【0056】
図14に示すように、第二固定部材27a,27bは、第二割断予定線CL2から離れた位置に設けられる。各第二固定部材27a,27bにおける第二割断予定線CL2からの間隔D2a,D2bは、6mm以上50mm以下に設定される。本実施形態において、一方の第二固定部材27aと第二割断予定線CL2との間隔D2aと、他方の第二固定部材27bと第二割断予定線CL2との間隔D2bとが等しくされる。これに限定されず、各間隔D2a、D2bは異なっていても良い。また、第二固定部材27a,27bに係る間隔D2a,D2bは、第一固定部材26a,26bに係る間隔D1a,D1bよりも小さく設定されることが望ましい。この場合、間隔D1a,D1bと、間隔D2a,D2bとの差は、1mm以上50mm以下とされることが望ましい。
【0057】
第二固定部材27a,27bがマザーガラスフィルムMGFを固定すると、
図15に示すように、クラック形成部材28が再始動し、マザーガラスフィルムMGFの第二辺SD2及び第四辺SD4に係る第二割断予定線CL2の割断始端部Sに初期クラックを形成する(第二初期クラック形成工程)。
【0058】
その後、
図16に示すように、各レーザ照射装置29及び各冷却装置30が、第二割断予定線CL2に沿ってマザーガラスフィルムMGFの上方を移動する。レーザ照射装置29が放出するレーザ光Lによる加熱と、冷却装置30が噴射する冷媒Rの冷却とによってマザーガラスフィルムMGFに生じる熱応力により、初期クラックが第二割断予定線CL2に沿って進展する。このクラックが第二割断予定線CL2の割断終端部Eに到達することで、第二辺SD2及び第四辺SD4がマザーガラスフィルムMGFから分断される(
図17参照)。
【0059】
なお、
図17に示すように、第二辺SD2及び第四辺SD4は、一定の割断代RS2を有する。本実施形態における割断代RS2は、10mm以上400以下に設定されるが、この範囲に限定されるものではない。
【0060】
以上により、
図17に示すように、マザーガラスフィルムMGFの四辺SD1〜SD4の全てが精度良く切断され、新たな四辺SD1a〜SD4aを有する矩形状のガラスフィルムGが完成する。
【0061】
以上説明した本実施形態に係るガラスフィルムGの製造方法によれば、第一割断予定線CL1と並行して第一固定部材26a,26bをガラスフィルムGの表面に載置することで、第一割断予定線CL1の周辺における皺の発生を抑制できる。同様に、第二割断予定線CL2に並行して第二固定部材27a,27bをマザーガラスフィルムMGFの表面に載置することで、第二割断予定線CL2の周辺における皺の発生を抑制できる。これにより、ガラスフィルムGの各辺SD1a〜SD4aにおける端面不良の発生を効果的に防止できる。
【0062】
また、本実施形態では、第一割断工程における第一固定部材26a,26bの載置条件(第一載置条件)と、第二割断工程における第二固定部材27a,27bの載置条件(第二載置条件)とを異ならせてマザーガラスフィルムMGFに設置する。すなわち、本実施形態において、第一固定部材26a,26bと、第二固定部材27a,27bとにおける載置条件の相違点は、第一に、各固定部材26a,26b,27a,27bの長さL1,L2である(L1>L2)。第二の相違点は、各固定部材26a,26b,27a,27bにおける各割断予定線CL1,CL2からの離間間隔D1a,D1b,D2a,D2bである(D1a(D1b)>D2a(D2b))。第三の相違点は、各固定部材26a,26b,27a,27bの重量である。
【0063】
このように、第一固定部材26a,26bと第二固定部材27a,27bとの載置条件を異ならせることにより、割断工程S6(第一割断工程、第二割断工程)において、第一割断予定線CL1に沿う第一辺SD1及び第三辺SD3と、第二割断予定線CL2に沿う第二辺SD2及び第四辺SD4とを、各々最適な条件で割断することができる。
【0064】
すなわち、本実施形態では、マザーガラスフィルムMGFの第二辺SD2及び第四辺SD4は、第一辺SD1及び第三辺SD3よりも短いが、第一割断工程後により一層短くなる。この場合、第一固定部材26a,26bの第一載置条件と同じ条件で第一割断工程後のマザーガラスフィルムMGFを固定すると、その固定が不十分となるおそれがある。
【0065】
このため、マザーガラスフィルムMGFを十分に固定すべく、第二固定部材27a,27bに係る間隔D2a,D2bは、第一固定部材26a,26bに係る間隔D1a,D1bよりも小さく設定される。換言すれば、第一固定部材26a,26bによるマザーガラスフィルムMGFの過度な拘束が生じないように、第一固定部材26a,26bに係る間隔D1a,D1bは、第二固定部材27a,27bに係る間隔D2a,D2bよりも大きく設定される。また、マザーガラスフィルムMGFの固定に際し、過度な圧力が作用しないように、第二割断工程では、第一固定部材26a,26bよりも短い第二固定部材27a,27bが使用される。
【0066】
上記の載置条件は、各固定部材26a,26b,27a,27bの長さL1,L2、各割断予定線CL1,CL2からの離間間隔D1a,D1b,D2a,D2bに限定されない。この載置条件には、各固定部材26a,26b,27a,27bの幅W1,W2、高さ、本体31の材質、密度、保護カバー32の厚み、各割断予定線CL1,CL2の長さなど、各種の条件が含まれる。
【0067】
なお、本発明は、上記実施形態の構成に限定されるものではなく、上記した作用効果に限定されるものでもない。本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0068】
上記の実施形態では、四角柱状又は四角筒状に構成される固定部材26a,26b,27a,27bによりマザーガラスフィルムMGFを固定する例を示したが、これに限定されない。例えば多角柱状又は多角筒状の他、断面視異形形状を有する棒状部材又は板状部材を第一固定部材26a,26b又は第二固定部材27a,27bとして使用できる。
【0069】
上記の実施形態では、第一固定部材26a,26bと、この第一固定部材26a,26bよりも短い第二固定部材27a,27bとを使用して第一割断工程及び第二割断工程を実行する例を示したが、これに限らず、第二固定部材27a,27bを第一固定部材26a,26bよりも長く構成して、割断工程S6を実行してもよい。
【0070】
また、第一固定部材26a,26bの長さL1と第二固定部材27a,27bの長さL2を等しくし、第一固定部材26a,26bに係る間隔D1a,D1bと、第二固定部材27a,27bに係る間隔D2a,D2bとを異ならせるのみで、割断工程S6を実行してもよい。
【0071】
或いは、第一固定部材26a,26bに係る間隔D1a,D1bと、第二固定部材27a,27bに係る間隔D2a,D2bとを等しくし、第一固定部材26a,26bの長さL1と、第二固定部材27a,27bの長さL2とを異ならせるのみで、割断工程S6を実行してもよい。
【0072】
上記の実施形態では、マザーガラスフィルムMGFの第一辺SD1と第三辺SD3を共に第一割断工程で切断し、第二辺SD2と第四辺SD4とを共に第二割断工程で割断する例を示したが、これに限定されない。本発明に係るガラスフィルムGの製造方法では、第一辺SD1乃至第四辺SD4を個別に割断してもよい。この場合、各辺SD1〜SD4に対応する第一割断予定線乃至第四割断予定線がマザーガラスフィルムMGFに設定される。
【0073】
上記の実施形態では、巻取工程S3によりガラスロールGRLを構成した後に、取出工程S4においてガラスロールGRLから帯状ガラスフィルムGRを取り出す例を示したが、本発明はこれに限定されない。本発明に係るガラスフィルムGの製造方法は、巻取工程S3及び取出工程S4を省略して、耳部除去工程S2後に、マザーガラス形成工程S5を実行してもよい。
【0074】
上記の実施形態では、第三切断部11のレーザ照射装置29及び冷却装置30を水平方向に移動させて割断工程S6を実行する例を示したが、これに限らず、レーザ照射装置29及び冷却装置30を移動させることなく、定盤24を水平方向に移動させることによって割断工程S6を実行してもよい。
【0075】
上記の実施形態において、第一割断予定線CL1及び第二割断予定線CL2は直線状に構成されていたが、この構成に限らず、曲線状に構成されてもよい。
【0076】
上記の実施形態では、矩形状のマザーガラスフィルムMGFの四辺SD1〜SD4を割断により除去してガラスフィルムGを形成する例を示したが、本発明はこれに限定されない。例えば、
図18に示すように、円形に構成されるマザーガラスフィルムMGFに設定される第一割断予定線CL1及び第二割断予定線CL2に基づいて割断工程S6を実行することにより、ガラスフィルムGを形成してもよい。
【0077】
上記の実施形態では、マザーガラスフィルムMGFの第一辺SD1及び第三辺SD3に対してほぼ平行な第一割断予定線CL1が設定されていたが、本発明はこの構成に限定されない。例えば
図19に示すように、マザーガラスフィルムMGFの第一辺SD1及び第二辺SD2に所定の角度で交差する第一割断予定線CL1、及び第三辺SD3及び第四辺SD4に交差する第一割断予定線CL1を設定し、各第一割断予定線CL1に基づいて第一割断工程を実行してもよい。
【0078】
上記の実施形態では、第一固定部材26a,26bが第一割断予定線CL1に対してほぼ平行となるように設置され、第二固定部材27a,27bを第二割断予定線CL2に対してほぼ平行となるように設置された例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば
図20に示すように、平面視において、第二固定部材27a,27bを第二割断予定線CL2に対して所定の角度で傾斜するように配置して、第二割断工程を実行してもよい。同様に、第一固定部材26a,26bを第一割断予定線CL1に対して傾斜するように配置して、第一割断工程を実行してもよい。すなわち、各割断予定線CL1,CL2に並行に配置される固定部材26a,26b,27a,27bには、各割断予定線CL1,CL2に平行に配置される他、各割断予定線CL1,CL2と非平行に配置される(例えば傾斜配置)ものが含まれる。なお、
図20に示す例では、第二固定部材27a,27bは、第二割断予定線CL2の始端部Sから終端部Eに向かうにつれて、第二割断予定線CL2との間隔が徐々に大きくなるように傾斜するが、この傾斜配置に限定されない。
【0079】
上記の実施形態では、一対の第一固定部材26a,26bを同形状の固定バーにより構成し、一対の第二固定部材27a,27bを同形状の固定バーにより構成した例を示したが、本発明はこの構成に限定されない。例えば、
図21に示すように、一方の第一固定部材26aを固定バーとし、他方の第一固定部材26bを固定バーとは異なる形状、例えば固定板により構成してもよい。
図21において、他方の第一固定部材26bは、円形の固定板として例示されるが、この形状に限定されるものではない。