(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
[本発明の単量体]
本発明の単量体は、分岐型ポリオキシエチレンを分子内に有しており、下記式(1)で表される。
【0015】
式(1)中、nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。nが2以下であると、コンタクトレンズ表面に十分な親水性および潤滑性を付与できず、nが1151以上であると、粘度が高くなりコンタクトレンズ表面に均一に表面処理することが難しくなり、コンタクトレンズの機能を阻害してしまう。nは、3〜1150の範囲内であれば特に限定されず、例えば、25〜800、50〜800又は50〜600であってもよく、あるいは、5〜45、15〜25、200〜250、220〜230、425〜475、447〜457、20〜452であってもよく、より好ましくは3〜800であり、最も好ましくは3〜600である。
【0016】
[本発明の単量体の合成方法]
本発明の単量体の合成方法は、特に限定されないが、以下の方法を例示することができる。
下記に記載のポリオキシエチレン誘導体A、B、C、D等を公知の方法によりエステル化することにより本発明の単量体を得ることができる。
【0017】
具体的には、ポリオキシエチレン誘導体を有機溶媒(トルエン等)に溶解し、さらに脱水し、トリエチルアミンとアクリル酸クロライド{最終的に得られる本発明の単量体は、式(1)中、R
1は水素となる}又はメタクリル酸クロライド{最終的に得られる本発明の単量体は、式(1)中、R
1はメチル基となる}等を添加して、数時間反応させる。
次に、有機溶媒中のトリエチルアミン塩酸塩を除去し、抽出等で不純物を除去し、脱溶媒等を行う。これにより、本発明の単量体を得ることができる。
【0018】
(ポリオキシエチレン誘導体A)
ポリオキシエチレン誘導体Aは、特開2004-197077に記載された方法で合成することができ、下記式(2)で表される。
【化11】
【0019】
(ポリオキシエチレン誘導体B)
ポリオキシエチレン誘導体Bは、特開2004-197077に記載された方法で合成することができ、下記式(5)で表される。
【化12】
【0020】
(ポリオキシエチレン誘導体C)
ポリオキシエチレン誘導体Cは、特開2010-254986に記載された方法で合成することができ、下記式(7)で表される。
【化13】
【0021】
(ポリオキシエチレン誘導体D)
ポリオキシエチレン誘導体Dは、特開2004-197077に記載された方法で合成することができ、下記式(10)で表される。
【化14】
【0022】
[本発明の単量体に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズ]
本発明の単量体に基づく(本発明の単量体から誘導される)構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズは、下記の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する。より詳しくは、本発明の単量体に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズは、下記の式(1)で表される単量体から誘導され、下記の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖が表面に化学修飾されている。
【0023】
【化15】
(nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。)
【0025】
式(1’)中、nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。nが2以下であると、コンタクトレンズ表面に十分な親水性および潤滑性を付与できず、nが1151以上であると、粘度が高くなりコンタクトレンズ表面に均一に表面処理することが難しくなり、コンタクトレンズの機能を阻害してしまう。nは、3〜1150の範囲内であれば特に限定されず、例えば、25〜800、50〜800又は50〜600であってもよく、あるいは、5〜45、15〜25、200〜250、220〜230、425〜475、447〜457、20〜452であってもよく、より好ましくは3〜800であり、最も好ましくは3〜600である。
【0026】
○表面処理対象がシリコーンハイドロゲルの場合
本発明の単量体に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材に用いるシリコーン単量体は、以下を例示することができるが、好ましくは、メタクリロイルオキシエチルコハク酸3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(参照:WO2010/082659号)である。
ポリジメチルシロキサン骨格を有する(メタ)アクリレート類としては、α‐メチル‐ω‐メタクリロイルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(重量平均分子量1,000)、α,ω‐ジメタクリロイルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(重量平均分子量1,000)等が挙げられ、例えば、JNC Corporationから販売されているFM‐0711やFM‐7711等を用いることができる。
トリメチルシロキシ基を有する(メタ)アクリレート類としては、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート(TRIS)、3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
トリメチルシロキシ基を有する(メタ)アクリルアミド類としては、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3−[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
トリメチルシロキシ基を有するスチレン類としては、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]スチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]スチレン、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]スチレン等が挙げられる。
トリメチルシロキシ基を有するカルバミン酸ビニル類としては、N−[3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル]カルバミン酸ビニル、N−[3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル]カルバミン酸ビニル、N−[3−[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル]カルバミン酸ビニル等が挙げられる。
メタクリロイルオキシエチルコハク酸3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルを用いる場合、重合成分は、シリコーン単量体のみでも良いが、通常、シリコーン単量体と重合可能なその他の単量体を含む。この場合、シリコーン単量体の使用量は、シリコーンコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して、通常10〜80質量部、好ましくは40〜80質量部である。
【0027】
さらに、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズに用いる単量体として一般に用いられるその他の単量体を適宜選択して用いることが出来る。
シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材に用いるその他の単量体は、コンタクトレンズの含水率をコントロールすることを目的として、例えば、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ビニル安息香酸、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルホスホリルコリン、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2,3−ジヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド、N−ビニル−2−ピロリドン等の水溶性単量体が好ましく挙げられる。中でも、コンタクトレンズの含水率のコントロール性の観点から、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートおよびN−ビニル−2−ピロリドンがより好ましい。これらの単量体の使用量は、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常10〜50質量部、好ましくは20〜40質量部である。
【0028】
シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材に用いるその他の単量体は、コンタクトレンズの柔軟性をコントロールすることを目的として、例えば、ポリアルキレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジイソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルモルホリン、N−(メタ)アクリロイルピペリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、ビニルピラジンが挙げられる。これらの単量体の使用量は、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常10〜50質量部、好ましくは20〜40質量部である。
【0029】
シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材に用いるその他の単量体は、コンタクトレンズの形状維持性を高めることを目的として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;両末端に炭素−炭素不飽和結合を有するシロキサンマクロモノマーやエチレングリコールジメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジン等の芳香族ビニルモノマー類;酢酸ビニル等のビニルエステル類が挙げられる。これらの単量体の使用量は、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常0.01〜30質量部、好ましくは0.1〜15質量部である。
【0030】
シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材は、各単量体を混合し、過酸化物、アゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を適宜添加して作製することができる。熱重合を行う際は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有するものを選択して使用することが出来る。例えば、10時間半減期温度が40〜120℃の過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を用いることが出来る。光重合開始剤としては、例えば、カルボニル化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物もしくは金属塩を挙げることが出来る。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種類以上を混合して用いても良い。好ましくは重合成分100質量部に対して0.05〜2質量部の割合で使用することが好ましい。
【0031】
○表面処理対象がシリコーンゴムの場合
本発明の単量体に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンゴムのコンタクトレンズ基材に用いるシリコーン単量体は、コンタクトレンズの酸素透過性を高めることを目的として、ポリオルガノシロキサンが挙げられる。例えば、重量平均分子量が330の両末端シラノール変性ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製)が好ましい。このシリコーン単量体の使用量は、シリコーンゴムのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常60〜100質量部、好ましくは75〜95質量部であり、モル比率では75〜95%が好ましい。
【0032】
シリコーンゴムのコンタクトレンズ基材は、各構成単位を混合し、金属アルコキシドに代表される硬化性触媒を適宜添加して作製することができる。金属アルコキシドとしては、例えば、アルミニウムイソプロポキシド、アルミニウムエトキシドを挙げることが出来る。硬化性触媒は、単独で用いても2種類以上を混合して用いても良い。硬化性触媒はシリコーンゴムのコンタクトレンズ基材の単量体組成物に対してモル比率では通常20%未満、好ましくは10%未満の割合で使用することが好ましい。
【0033】
シリコーンゴムのコンタクトレンズ基材の製造は、溶媒の存在下で行うことができる。溶媒としては、室温で容易に揮発しないものが好ましく、例えば、トルエンが挙げられる。
【0034】
<本発明の単量体に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズの製造方法>
本発明の単量体に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズの製造方法は、式(1’)で表される構成単位がコンタクトレンズ基材の表面に有すれば、特に限定されないが、以下の工程を含む製造方法を例示することができる。
【0035】
○コンタクトレンズ基材の表面処理工程
本発明のシリコーンコンタクトレンズの製造方法では、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖をコンタクトレンズ基材の表面に形成(被膜、化学修飾)させるために、該基材の表面に過酸化物(パーオキサイド基)を形成させる。
【0036】
工程1:コンタクトレンズ基材(好ましくは、含水フィルム形状のコンタクトレンズ基材)の表面にラジカルを形成させる。ラジカル形成方法は、例えば、自体公知のプラズマ放電処理、エキシマ光照射処理等で行うことができる。
プラズマ放電処理では、減圧下又は常圧下(1.3Pa〜0.1MPa)において、さらに酸素ガス雰囲気下、不活性ガス雰囲気下又は空気雰囲気下にて30秒〜30分間行う。パルス周波数は20kHz〜25kHzであり、高周波出力は10W〜500Wである。
エキシマ光照射処理では、172nmの真空紫外光を30秒〜60分間行う。
工程2:表面にラジカルを形成したコンタクトレンズ基材を酸素ガス雰囲気下又は空気雰囲気下に1分〜2時間置き、表面に過酸化物(パーオキサイド基)を形成させる。
【0037】
○表面にパーオキサイド基が形成されたコンタクトレンズ基材と分岐型ポリオキシエチレン誘導体を含む混合溶液の接触工程
本発明の単量体に基づく構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズの製造方法では、表面にパーオキサイド基が形成されたコンタクトレンズ基材と分岐型ポリオキシエチレン誘導体を含む混合溶液を接触させる。分岐型ポリオキシエチレン誘導体を含む混合溶液は、少なくとも本発明の単量体を含む。
接触方法は、特に限定されないが、コンタクトレンズ基材の表面全体に該混合溶液が十分に接触できるようにするために、該基材を該混合溶液に浸漬ことが好ましい。
【0038】
分岐型ポリオキシエチレン化合物を含む混合溶液において、本発明の単量体の濃度は0.01mol/L〜1.0mol/Lであり、0.01mol/L未満では基材表面に十分な親水性、潤滑性を付与できる量の単量体をグラフト重合することができず、1.0mol/Lを超えると溶液の粘性が高まり均一にグラフト重合できないため、基材表面の平滑性が悪化し、コンタクトレンズとして使用できない。
さらに、分岐型ポリオキシエチレン化合物を含む混合溶液において、本発明の単量体を含む全単量体の濃度は0.01mol/L〜3.5mol/Lであり、0.01mol/L未満では基材表面に十分な親水性、潤滑性を付与できる量の単量体をグラフト重合することができず、3.5mol/Lを超えると溶液の粘性が高まり均一にグラフト重合できないため、基材表面の平滑性が悪化し、コンタクトレンズとして使用できない。
【0039】
分岐型ポリオキシエチレン化合物を含む混合溶液では、本発明の単量体以外には、親水性単量体(特に、親水性のエチレン性不飽和単量体)、架橋性単量体、水、有機溶媒、連鎖移動剤、及び/又は重合増感剤を含有することができる。
【0040】
親水性単量体としては、以下を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
(メタ)アクリル酸、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、3−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、6−ヒドロキシへキシル(メタ)アクリレート等の各種(メタ)アクリレート。
ポリオキシエチレンメチルエーテル(メタ)アクリレート、ポリオキシプロピレンモノ(メタ)アクリレート等の各種ポリオキシアルキレンモノ(メタ)アクリレート。
N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルピペリドン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルカプリロラクタム、N,N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ピロリドン等の各種の重合性アクリルアミド。
好ましい、親水性単量体としては、ポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート、ポリオキシエチレンモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、N-ビニル-2-ピロリドン、メタクリル酸、N,N−ジメチルアクリルアミドを例示することができる。
【0041】
分岐型ポリオキシエチレン化合物を含む混合溶液において、親水性単量体の濃度は0mol/L〜3.4mol/Lであり、この範囲ではポリオキシエチレン化合物の配合効果を得ることができる。
【0042】
架橋性単量体としては、以下を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ブタン、1,6−ビス((メタ)アクリロイルオキシ)ヘキサン、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、トリアリルイソシアヌレート、ジアリルフタレート、ジビニルベンゼン。
【0043】
有機溶媒としては、以下を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
メタノール、エタノール等の各種のアルコール、アセトン、ベンゼン、トルエン、アセトニトリル、テトラヒドロフラン、N,N−ジメチルホルムアミド、塩化メチレン。
【0044】
連鎖移動剤としては、以下を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
α−メチルスチレンダイマー、n−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ラウリルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン等の各種のメルカプタン類。
四塩化炭素、四臭化炭素等のハロゲン化炭化水素類。
その他として、ベンジルジチオベンゾエート、1−フェニルエチルジチオベンゾエート、2−フェニル−2−プロピニルジチオベンゾエート、1−アセトキシエチルジチオベンゾエート、ベンジルジチオアセテート、t−ブチルジチオベンゾエート、2−シアノ−2−プロピニルジチオベンゾエート。
連鎖移動剤は、分岐型ポリオキシエチレン化合物を含む混合溶液に含まれる場合には、グラフト重合後において、グラフト重合鎖長末端の連鎖移動剤由来の残基が生じる場合がある。この場合には、硫黄含有化合物やアルキルアルコールと反応させ、除去または変換することが好ましい。
【0045】
重合増感剤としては、例えば、9,10−ビス(n−オクタノイルオキシ)アントラセン等のアントラセン骨格を有する化合物を例示することができるが特に限定されず、単独又は2種以上を混合して用いることができる。
【0046】
○分岐型ポリオキシエチレン化合物をコンタクトレンズ基材の表面にグラフト重合させる工程
本発明のシリコーンコンタクトレンズの製造方法では、特に限定されないが、以下の工程を例示することができる。
【0047】
表面にパーオキサイド基が形成されたコンタクトレンズ基材と分岐型ポリオキシエチレン化合物を含む混合溶液を接触させた状態において、該表面に紫外線(200nm〜450nm)を照度0.5mW/cm
2〜100mW/cm
2又は0.5mW/cm
2〜15mW/cm
2で、1分〜1時間照射して、15℃〜90℃でグラフト重合を行う。
【0048】
上記グラフト重合後において、必要に応じて、未反応成分の除去を行う。除去方法は、自体公知のソックスレー抽出法を使用する。
以上により、本発明のシリコーンコンタクトレンズを製造することができる。
【0049】
[本発明の単量体に基づく構成単位を含むコンタクトレンズ]
本発明の単量体に基づく構成単位を含むコンタクトレンズは、下記の式(1’)で表される構成単位をコンタクトレンズ中に含む。
【0051】
式(1’)中、nは3〜1150であり、R
1は水素またはメチル基を示す。nが2以下であると、コンタクトレンズ表面に十分な親水性および潤滑性を付与できず、nが1151以上であると、粘度が高くなりコンタクトレンズ表面に均一に表面処理することが難しくなり、コンタクトレンズの機能を阻害してしまう。nは、3〜1150の範囲内であれば特に限定されず、例えば、25〜800、50〜800又は50〜600であってもよく、あるいは、5〜45、15〜25、200〜250、220〜230、425〜475、447〜457であってもよく、より好ましくは3〜800であり、最も好ましくは3〜600である。
【0052】
本発明の単量体の使用量は、コンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して、通常1〜40質量部、好ましくは1〜20質量部である。1質量部未満では基材表面に十分な親水性、潤滑性を付与することができず、40質量部を超えるとコンタクトレンズの形状維持性が悪くなる。
【0053】
本発明のコンタクトレンズに重合可能なその他の単量体としては、レンズ用単量体として一般に用いられる単量体を適宜選択して用いることができる。
例えば、コンタクトレンズの含水率をコントロールするためには、水溶性単量体として、(メタ)アクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸、ビニル安息香酸、2−((メタ)アクリロイルオキシ)エチル−2'−(トリメチルアンモニオ)エチルホスフェート、ホスホリルコリン(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールモノアルキルエーテル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、グリセロール(メタ)アクリレート、N−ビニル−2−ピロリドン、N−ビニルホルムアミド、N−ビニルアセトアミド、N−メチル−N−ビニルアセトアミド等の水溶性単量体が好ましく挙げられる。
これらの中で、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートは、含水率をコントロールす目的に特に好ましく挙げられる。水溶性単量体の使用量は、シリコーンコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して、合計で通常10〜50質量部、好ましくは20〜40質量部である。
【0054】
本発明のコンタクトレンズに重合可能なその他の単量体としては、コンタクトレンズの酸素透過性を高めることを目的として、以下のシリコーン単量体を例示することができるが、好ましくは、メタクリロイルオキシエチルコハク酸3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(参照:WO2010/082659号)である。
ポリジメチルシロキサン骨格を有する(メタ)アクリレート類としては、α‐メチル‐ω‐メタクリロイルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(重量平均分子量1,000)、α,ω‐ジメタクリロイルオキシプロピルポリジメチルシロキサン(重量平均分子量1,000)等が挙げられ、例えば、JNC Corporationから販売されているFM‐0711やFM‐7711等を用いることができる。
トリメチルシロキシ基を有する(メタ)アクリレート類としては、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリレート(TRIS)、3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート、3−[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
トリメチルシロキシ基を有する(メタ)アクリルアミド類としては、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド、3−[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
トリメチルシロキシ基を有するスチレン類としては、[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]スチレン、[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]スチレン、[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]スチレン等が挙げられる。
トリメチルシロキシ基を有するカルバミン酸ビニル類としては、N−[3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル]カルバミン酸ビニル、N−[3−[ビス(トリメチルシロキシ)メチルシリル]プロピル]カルバミン酸ビニル、N−[3−[(トリメチルシロキシ)ジメチルシリル]プロピル]カルバミン酸ビニル等が挙げられる。
シリコーン単量体の使用量は、コンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して、通常10〜80質量部、好ましくは40〜80質量部である。
【0055】
本発明のコンタクトレンズに重合可能なその他の単量体としては、コンタクトレンズの柔軟性をコントロールすることを目的として、例えば、ポリアルキレングリコールビス(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリス(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラキス(メタ)アクリレート、N,N−ジメチルアクリルアミド、N,N−ジエチルアクリルアミド、N,N−ジ−n−プロピルアクリルアミド、N,N−ジイソプロピルアクリルアミド、N,N−ジ−n−ブチルアクリルアミド、N−アクリロイルモルホリン、N−アクリロイルピペリジン、N−ビニルカプロラクタム、N−ビニルオキサゾリドン、1−ビニルイミダゾール、N−ビニルカルバゾール、ビニルピリジン、ビニルピラジンが挙げられる。コンタクトレンズの柔軟性をコントロールするための単量体の使用量は、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常0〜50質量部、好ましくは5〜40質量部である。
【0056】
本発明のコンタクトレンズに重合可能なその他の単量体としては、コンタクトレンズの形状維持性を高めることを目的として、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;両末端に炭素−炭素不飽和結合を有するシロキサンマクロモノマーやエチレングリコールジメタクリレート等の多官能(メタ)アクリレート類;トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロイソプロピル(メタ)アクリレート等のハロゲン化アルキル(メタ)アクリレート類;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルピリジン等の芳香族ビニルモノマー類;酢酸ビニル等の脂肪族ビニルモノマー類が挙げられる。コンタクトレンズの形状維持性を高めるための単量体の使用量は、シリコーンハイドロゲルのコンタクトレンズ基材の単量体組成物100質量部に対して通常0.01〜30質量部、好ましくは0.1〜15質量部である。
【0057】
本発明のコンタクトレンズ基材は、各単量体を混合し、過酸化物、アゾ化合物に代表される熱重合開始剤や、光重合開始剤を適宜添加して作製することができる。熱重合を行う際は、所望の反応温度に対して最適な分解特性を有するものを選択して使用することが出来る。例えば、10時間半減期温度が40〜120℃の過酸化物やアゾビスイソブチロニトリル等のアゾ化合物を用いることが出来る。光重合開始剤としては、例えば、カルボニル化合物、硫黄化合物、ハロゲン化合物もしくは金属塩を挙げることが出来る。これらの重合開始剤は、単独で用いても2種類以上を混合して用いても良い。好ましくは重合成分100質量部に対して0.05〜2質量部の割合で使用することが好ましい。
【0058】
上記重合後において、必要に応じて、未反応成分の除去を行う。
以上により、本発明の単量体に基づく構成単位を含むシリコーンコンタクトレンズを製造することができる。
【0059】
本発明は、下記の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子を表面に有するシリコーンコンタクトレンズの製造方法も対象とする。
【0060】
【化18】
(nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。)
【0061】
該製造方法は、以下の工程を含む。
(I)コンタクトレンズ基材の表面処理工程、
(II)(I)で得たコンタクトレンズ基材と、分岐型ポリオキシエチレン化合物(下記の式(1)で表される単量体)を含む混合溶液との接触工程、及び
(III)分岐型ポリオキシエチレン化合物を前記コンタクトレンズ基材の表面にグラフト重合する工程。
該製造方法は、さらに以下の工程を含んでもよい。
(IV)未反応成分の除去工程。
【0062】
【化19】
(nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。)
【0063】
本発明は、下記の式(1’)で表される構成単位を含むコンタクトレンズの製造方法も対象とする。
【0064】
【化20】
(nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。)
【0065】
該製造方法は、以下の工程を含む。
(I)下記式(1)で示される単量体、本発明のコンタクトレンズに重合可能なその他の単量体及び重合開始剤を混合する工程、及び
(II)(I)で得た混合物を重合する工程。
該製造方法は、さらに以下の工程を含んでもよい。
(III)未反応成分の除去工程。
【0066】
【化21】
(nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。)
【0067】
本発明は、下記の式(1)で表される分岐型ポリオキシエチレン化合物を含有するコンタクトレンズの表面処理剤も対象とする。
【0068】
【化22】
(nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。)
【0069】
本発明は、下記の式(1)で表される分岐型ポリオキシエチレン化合物を使用するコンタクトレンズの表面処理方法も対象とする。
【0070】
【化23】
(nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。)
【0071】
本発明は、コンタクトレンズの表面処理用の下記の式(1)で表される分岐型ポリオキシエチレン化合物も対象とする。
【0072】
【化24】
(nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。)
【0073】
本発明は、下記の式(1)で表される分岐型ポリオキシエチレン化合物をコンタクトレンズの表面処理剤の製造としての使用も対象とする。
【0074】
【化25】
(nは3〜1150であり、aは0または2であり、R
1は水素またはメチル基を示す。)
【実施例】
【0075】
本発明の分岐型ポリオキシエチレン化合物、該化合物に基づく構成単位を表面に有するシリコーンコンタクトレンズおよび該構成単位を含むコンタクトレンズを実施例に基づいてさらに詳細に説明する。
【0076】
[実施例1−1]
(ポリオキシエチレン化合物1の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、Dean−Stark管及び冷却管を付した1L四つ口フラスコに、式(2)で示される重量平均分子量20,000のポリオキシエチレン誘導体Aを200g(10mmol)、トルエン800gを加え、撹拌、窒素吹込みをしながら40℃に加温して溶解した。110℃に昇温し、トルエンと共沸させながら約200gの留分を抜き取り、脱水を行った。30℃まで冷却し、トリエチルアミン15.94g(0.1575mol)、アクリル酸クロライド13.58g(0.15mol)を加え、40℃で6時間反応した。
【0077】
反応後、溶媒中のトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、その後室温まで冷却した。濾液に酢酸エチル600g、n−ヘキサン600gを加えて結晶化させた。結晶を濾取した後、酢酸エチル1.6kgに35℃で溶解し、室温に冷却後n−ヘキサン400gを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、n−ヘキサン1.2kgで洗浄した。結晶を濾取して真空下で乾燥させて下記の式(3)で示される重量平均分子量20,000のポリオキシエチレン化合物1を167g得た。合成したポリオキシエチレン単量体1の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で決定した。詳細には、検出器には示差屈折計を用い、GPCカラムとしてはSHODEX KF801L、KF803L、KF804L(φ8mm×300mm)を3本直列に繋ぎ、カラムオーブンの温度を40℃とし、溶離液としてはテトラヒドロフランを用い、流速は1mL/分とし、試料の濃度は0.1質量%とし、抽入容量は0.1mLとして測定を行った。また、得られた化合物の分子構造を
1H−NMRで確認した。以下に
1H−NMRの分析結果を示す。なお、重合度nは、GPCから決定した重量平均分子量を式量で除することで算出した。
【0078】
1H−NMR(CDCl
3)δ(ppm):3.38(6H,s,−(CH
2CH
2O)
n−C
H3)、3.47−4.00(1.97kH,m,−C
H2O(C
H2C
H2O)
n−CH
3,−CH
2C
HO(C
H2C
H2O)
n−CH
3)、4.17−4.39(2H,m,−COOC
H2−)、5.84(1H,m,−CH=C
H2)、6.16(1H,m,−CH=C
H2)、6.38(1H,m,−C
H=CH
2)。
【0079】
【化26】
【0080】
[実施例1−2]
(ポリオキシエチレン化合物2の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、Dean−Stark管及び冷却管を付した1L四つ口フラスコに、式(2)で示される重量平均分子量20,000のポリオキシエチレン誘導体Aを200g(10mmol)、トルエン800gを加え、撹拌、窒素吹込みをしながら40℃に加温して溶解した。110℃に昇温し、トルエンと共沸させながら約200gの留分を抜き取り、脱水を行った。30℃まで冷却し、トリエチルアミン15.94g(0.1575mol)、メタクリル酸クロライド15.68g(0.15mol)を加え、60℃で10時間反応した。
【0081】
反応後、溶媒中のトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、その後室温まで冷却した。濾液に酢酸エチル600g、n−ヘキサン600gを加えて結晶化させた。結晶を濾取した後、酢酸エチル1.6kgに35℃で溶解し、室温に冷却後n−ヘキサン400gを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、n−ヘキサン1.2kgで洗浄した。結晶を濾取して真空下で乾燥させて下記の式(4)で示される重量平均分子量20,000のポリオキシエチレン化合物2を160g得た。合成したポリオキシエチレン単量体2の重量平均分子量は、GPCを用い実施例1−1と同様の方法により決定した。また、分子構造は
1H−NMRより決定した。以下に、
1H−NMRの分析結果を示す。
【0082】
1H−NMR(CDCl
3)δ(ppm):1.95(3H,s,−C(C
H3)=CH
2)、3.38(6H,s,−(CH
2CH
2O)
n−C
H3)、3.47−4.00(1.97kH,m,−C
H2O(C
H2C
H2O)
n−CH
3,−CH
2C
HO(C
H2C
H2O)
n−CH
3)、4.13−4.39(2H,m,−COOC
H2−)、5.57(1H,m,−C(CH
3)=C
H2)、6.11(1H,m,−C(CH
3)=C
H2)。
【0083】
【化27】
【0084】
[実施例1−3]
(ポリオキシエチレン化合物3の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、Dean−Stark管及び冷却管を付した1L四つ口フラスコに、式(5)で示される重量平均分子量40,000のポリオキシエチレン誘導体Bを200g(5mmol)、トルエン800gを加え、撹拌、窒素吹込みをしながら40℃に加温して溶解した。110℃に昇温し、トルエンと共沸させながら約200gの留分を抜き取り、脱水を行った。30℃まで冷却し、トリエチルアミン15.94g(0.1575mol)、アクリル酸クロライド13.58g(0.15mol)を加え、40℃で6時間反応した。
【0085】
反応後、溶媒中のトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、その後室温まで冷却した。濾液に酢酸エチル600g、n−ヘキサン600gを加えて結晶化させた。結晶を濾取した後、酢酸エチル1.6kgに35℃で溶解し、室温に冷却後n−ヘキサン400gを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、n−ヘキサン1.2kgで洗浄した。結晶を濾取して真空下で乾燥させて下記の式(6)で示される重量平均分子量40,000のポリオキシエチレン化合物3を151g得た。合成したポリオキシエチレン単量体3の重量平均分子量は、GPCを用い実施例1−1と同様の方法により決定した。また、分子構造は
1H−NMRより決定した。以下に、
1H−NMRの分析結果を示す。
【0086】
1H−NMR(CDCl
3)δ(ppm):3.38(6H,s,−(CH
2CH
2O)
n−C
H3)、3.47−4.00(4.05kH,m,−C
H2O(C
H2C
H2O)
n−CH
3,−CH
2C
HO(C
H2C
H2O)
n−CH
3))、4.17−4.39(2H,m,−COOC
H2−)、5.84(1H,m,−CH=C
H2)、6.15(1H,m,−CH=C
H2)、6.39(1H,m,−C
H=CH
2)。
【0087】
【化28】
【0088】
[実施例1−4]
(ポリオキシエチレン化合物4の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、Dean−Stark管及び冷却管を付した1L四つ口フラスコに、式(7)で示される重量平均分子量40,000のポリオキシエチレン誘導体Cを200g(5mmol)、トルエン800gを加え、撹拌、窒素吹込みをしながら40℃に加温して溶解した。110℃に昇温し、トルエンと共沸させながら約200gの留分を抜き取り、脱水を行った。30℃まで冷却し、トリエチルアミン15.94g(0.1575mol)、アクリル酸クロライド13.58g(0.15mol)を加え、40℃で6時間反応した。
【0089】
反応後、溶媒中のトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、その後室温まで冷却した。濾液に酢酸エチル600g、n−ヘキサン600gを加えて結晶化させた。結晶を濾取した後、酢酸エチル1.6kgに35℃で溶解し、室温に冷却後n−ヘキサン400gを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、n−ヘキサン1.2kgで洗浄した。結晶を濾取して真空下で乾燥させて下記の式(8)で示される重量平均分子量40,000のポリオキシエチレン化合物4を162g得た。合成したポリオキシエチレン単量体4の重量平均分子量は、GPCを用い実施例1−1と同様の方法により決定した。また、分子構造は
1H−NMRより決定した。以下に、
1H−NMRの分析結果を示す。
【0090】
1H−NMR(CDCl
3)δ(ppm):3.38(12H,s,−(CH
2CH
2O)
n−C
H3)、3.47−4.00(4.00kH,m,−C
H2O(C
H2C
H2O)
n−CH
3,−(C
HO(C
H2C
H2O)
n−CH
3)
3)、4.20−4.39(2H,m,−COOC
H2−)、5.84(1H,m,−CH=C
H2)、6.15(1H,m,−CH=C
H2)、6.39(1H,m,−C
H=CH
2)。
【0091】
【化29】
【0092】
[実施例1−5]
(ポリオキシエチレン化合物5の合成)
温度計、窒素吹き込み管、撹拌機、Dean−Stark管及び冷却管を付した1L四つ口フラスコに、式(10)で示される重量平均分子量2,000のポリオキシエチレン誘導体Dを200g(0.1mol)、トルエン800gを加え、撹拌、窒素吹込みをしながら40℃に加温して溶解した。110℃に昇温し、トルエンと共沸させながら約200gの留分を抜き取り、脱水を行った。30℃まで冷却し、トリエチルアミン20.23g(0.2mol)、アクリル酸クロライド13.58g(0.15mol)を加え、40℃で6時間反応した。
【0093】
反応後、溶媒中のトリエチルアミン塩酸塩を濾別し、その後室温まで冷却した。濾液に酢酸エチル600g、n−ヘキサン600gを加えて結晶化させた。結晶を濾取した後、酢酸エチル1.6kgに35℃で溶解し、室温に冷却後n−ヘキサン400gを加えて結晶化させた。結晶を濾取し、n−ヘキサン1.2kgで洗浄した。結晶を濾取して真空下で乾燥させて下記の式(11)で示される重量平均分子量20,000のポリオキシエチレン化合物5を167g得た。合成したポリオキシエチレン単量体1の重量平均分子量は、ゲル透過クロマトグラフィー(GPC)で決定した。詳細には、検出器には示差屈折計を用い、GPCカラムとしてはSHODEX KF801L、KF803L、KF804L(φ8mm×300mm)を3本直列に繋ぎ、カラムオーブンの温度を40℃とし、溶離液としてはテトラヒドロフランを用い、流速は1mL/分とし、試料の濃度は0.1質量%とし、抽入容量は0.1mLとして測定を行った。また、得られた化合物の分子構造を
1H−NMRで確認した。以下に
1H−NMRの分析結果を示す。なお、重合度nは、GPCから決定した重量平均分子量を式量で除することで算出した。
【0094】
1H−NMR(CDCl
3)δ(ppm):3.38(6H,s,−(CH
2CH
2O)
n−C
H3)、3.47−4.00(1.97kH,m,−C
H2O(C
H2C
H2O)
n−CH
3,−CH
2C
HO(C
H2C
H2O)
n−CH
3)、4.17−4.39(2H,m,−COOC
H2−)、5.84(1H,m,−CH=C
H2)、6.16(1H,m,−CH=C
H2)、6.38(1H,m,−C
H=CH
2)。
【0095】
【化30】
【0096】
<表面親水性評価方法>
コンタクトレンズの表面の親水性を以下の手順で評価した。コンタクトレンズを保存液から取り出し、付着している保存液をコンタクトレンズ表面から除去するために、200mLの生理食塩液中で3回洗浄した。無風の室内にて、コンタクトレンズをこの生理食塩液から取り出して照明にかざした。水膜が壊れて、コンタクトレンズ表面が露出するのに要する時間(WBUT)を目視により記録した。このWBUTが5秒未満の場合は「0」、5秒以上15秒未満の場合は「1」、15秒以上の場合は「2」のスコアを与えた。
【0097】
<表面潤滑性評価方法>
コンタクトレンズの表面の潤滑性を以下の手順で評価した。潤滑性試験の基準として、シード 1dayFine(登録商標)((株)シード製)およびプロクリア ワンデー(登録商標)(クーパービジョン・ジャパン(株)製)を用いた。作製した含水フィルムを生理食塩液10mLに浸漬し、終夜振盪した。生理食塩水に浸漬し終夜振盪した含水フィルムを取り出し、人差し指に乗せて潤滑性評価を行った。潤滑性評価は、ブリスターパックから取り出したばかりのシード 1dayFine(登録商標)((株)シード製)の評価点数を2点とし、プロクリア ワンデー(登録商標)(クーパービジョン・ジャパン(株)製)の評価点数を8点として、1〜10点の範囲内でスコア化した。
【0098】
[実施例2−1]
(ポリオキシエチレン化合物1で表面処理したシリコーンコンタクトレンズ)
化合物(下記の式(9):メタクリロイルオキシエチルコハク酸3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル)で表されるシリコーンモノマー60質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート40質量部、エチレングリコールジメタクリレート0.5質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を混合溶解した。この溶液を、厚さ0.1 mmのポリエチレンテレフタレートシートをスペーサーとしてガラス板とポリプロピレン板の間に挟みこんだセル内に流し込みオーブン内の窒素置換を行った後、100℃で2時間加熱することにより重合し、フィルム状に成型した。本発明の評価項目は、親水性と潤滑性であるため、実験を簡便に行うためにレンズ形状ではなく、フィルム状に成型した。重合後、硬化フィルムをセルから取り出し、エタノール(EtOH)とイオン交換水の3/1混合液に12時間浸漬、さらにイオン交換水に12時間浸漬して含水フィルムを作製した。作製した含水フィルムを放電装置内に設置し、チャンバー内を約2.66Paまで減圧した後、約13.3Paの酸素ガス雰囲気下にて10分間プラズマ放電処理を行った(周波数:13.56MHz、高周波出力:50W)。その後、含水フィルムを酸素ガス雰囲気下に10分間以上保存し、含水フィルム表面に過酸化物(パーオキサイド基)を生成させた。
【0099】
【化31】
【0100】
次に、作製した含水フィルムを、ポリオキシエチレン化合物1を20w/w%(0.0108mol/L)、9,10−ビス(n−オクタノイルオキシ)アントラセン0.05w/w%及びトルエン79.95w/w%の組成物中に浸漬させ、窒素置換した。その後、紫外線(波長:395 nm)を照度50 mW/cm
2で室温下にて2分間照射し含水フィルム表面に親水性グラフト重合物の被膜を形成させた。反応終了後、含水フィルムを前記組成物から取り出し、蒸留水にて洗浄し、更に蒸留水を用いてソックスレー抽出器にて16時間抽出を行い、含水フィルムから未反応残留物を除去し、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する含水フィルムを作製した。前記の通りに作製した含水フィルムで、表面親水性及び表面潤滑性を評価した。結果を表1に示す。
なお、PEG400モノメタクリレートは、ポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレート(分子量400)を意味する。
【0101】
[実施例2−2〜実施例2−11]
表1に示す種類及び量の成分を使用した以外は、実施例1と同様の手順に従って作製し、式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する含水フィルムを作製した。各実施例の表面親水性及び表面潤滑性を表1に示す。
【0102】
表1に示された結果から、実施例2−1、2−2、2−5、2−8、2−10及び2−11(本発明の単量体のみから誘導されたグラフト高分子鎖を表面に有するコンタクトレンズ)並びに実施例2−3、2−4、2−6、2−7及び2−9(本発明の単量体及び親水性単量体から誘導されたグラフト高分子鎖を表面に有するコンタクトレンズ)では、表面に式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有する含水フィルムが優れた表面親水性、表面潤滑性を示した。
【0103】
[比較例1−1]
(低濃度のポリオキシエチレン化合物1で表面処理したシリコーンコンタクトレンズ)
実施例2−1と同様に含水フィルムを作成した。作成した含水フィルムを、低濃度であるポリオキシエチレン化合物1を5w/w%(0.0023mol/L)、9,10−ビス(n−オクタノイルオキシ)アントラセン0.05w/w%及びトルエン94.95w/w%の組成物中に浸漬させ、窒素置換した。その後、紫外線(波長:395 nm)を照度50 mW/cm
2で室温下にて2分間照射し含水フィルム表面に親水性グラフト重合物の被膜を形成させた。反応終了後、含水フィルムを前記組成物から取り出し、蒸留水にて洗浄し、更に蒸留水を用いてソックスレー抽出器にて16時間抽出を行い、含水フィルムから未反応残留物を除去した。前記の通りに作製したフィルムで表面親水性及び表面潤滑性を評価した。結果を表2に示す。
【0104】
[比較例1−2〜比較例1−3]
(親水性単量体から誘導されたグラフト高分子で表面処理したシリコーンコンタクトレンズ)
表2に示す種類及び量の成分を使用した以外は、比較例1と同様の手順に従って作製し、各種組成物で表面処理した含水フィルムを作製した。各比較例の表面親水性及び表面潤滑性を表2に示す。
【0105】
以上の結果より、本発明の表面に式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するシリコーンコンタクトレンズは、優れた表面親水性及び表面潤滑性を有することを確認した。
【0106】
表2に示された結果から、比較例1−1では、ポリオキシエチレン化合物1の配合量が0.01mol/L未満であるため、含水フィルムの表面親水性と表面潤滑性を低下させる結果であった。比較例1−2〜1−3では、表面に式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有さないため、含水フィルムの表面親水性と表面潤滑性を低下させる結果であった。
【0107】
[実施例3−1]
(ポリオキシエチレン化合物1を構成単位に含むコンタクトレンズ)
ポリオキシエチレン化合物1を20質量部、メタクリロイルオキシエチルコハク酸3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピル50質量部、2−ヒドロキシエチルメタクリレート29質量部、エチレングリコールジメタクリレート0.5質量部、アゾビスイソブチロニトリル0.5質量部を混合溶解した。この溶液を、厚さ0.1mmのポリエチレンテレフタレートシートをスペーサーとしてガラス板とポリプロピレン板の間に挟みこんだセル内に流し込みオーブン内の窒素置換を行った後、100℃で2時間加熱することにより重合し、フィルム状に成型した。本発明の評価項目は、親水性と潤滑性であるため、実験を簡便に行うためにレンズ形状ではなく、フィルム状に成型した。重合後、硬化フィルムをセルから取り出し、エチルアルコール(EtOH)とイオン交換水の3/1混合液に12時間浸漬、さらにイオン交換水に12時間浸漬して含水フィルムを作製した。前記の通りに作成した含水フィルムで表面親水性、表面潤滑性を評価した。結果を表3に示す。
なお、TRISは、3−[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルメタクリレートを意味する。
【0108】
[実施例3−2〜実施例3−9]
表3に示す種類及び量の成分を使用した以外は、実施例3−1と同様の手順に従って作製した。各実施例の表面親水性及び表面潤滑性を表3に示す。
【0109】
表3に示された結果から、実施例3−1〜3−9では、式(1’)で表される構成単位を含む含水フィルムが優れた表面親水性、表面潤滑性を示した。
【0110】
[比較例2−1]
表4に示す種類及び量の成分を使用した以外は、実施例3−1と同様に含水フィルムを作成した。
【0111】
[比較例2−2〜比較例2−4]
(親水性単量体から誘導されたグラフト高分子での表面処理)
表4に示す種類及び量の成分を使用した以外は、比較例2−1と同様の手順に従って作製した。各比較例の表面親水性及び表面潤滑性を表4に示す。
【0112】
表4に示された結果から、比較例2−1より、ポリオキシエチレン化合物として、本発明の単量体の代わりに式(1)で表されない重量平均分子量400のポリオキシエチレンメチルエーテルメタクリレートを用いたものは、含水フィルムの表面親水性と表面潤滑性が低い結果であった。比較例2−2〜2−4より、ポリオキシエチレン化合物に基づく構成単位を有さないものは、含水フィルムの表面親水性と表面潤滑性が低い結果であった。
以上の比較例2−1〜2−4より、構成単位に式(1’)を有さないものは、含水フィルムの表面親水性と表面潤滑性が低い結果であった。
【0113】
本発明の単量体に基づく構成単位(式(1’)で表される構成単位)を含むコンタクトレンズは、優れた表面親水性及び表面潤滑性を有することを確認した。
【0114】
以上の結果より、本発明の式(1’)で表される構成単位を含むグラフト高分子鎖を表面に有するシリコーンコンタクトレンズ並びに式(1’)で表される構成単位を含むコンタクトレンズは、優れた表面親水性及び表面潤滑性を有することを確認した。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
【表3】
【0118】
【表4】