(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、研磨を行うだけでは十分にガラス基板の平坦度を向上することが困難であった。具体的には、予め薄く成形されたガラス板では研磨可能な余地が少なく、十分に平坦化することが困難であった。また、比較的厚く成形したガラス板を研磨する場合には、研磨量が多くなるため、製造コストが大幅に増大する問題があった。
【0005】
本発明は、上記事情に鑑みなされたものであり、高い平坦度を有する円盤状ガラスならびに当該円盤状ガラスを容易に得ることができる製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の円盤状ガラスの製造方法は、ガラス板を室温から徐冷点−50℃〜徐冷点+80℃の範囲内で予め設定されたピーク温度まで加熱した後に冷却する熱処理工程と、ガラス板から円盤状ガラスを切り出す円形切断工程と、を備えることを特徴とする。
【0007】
本発明の円盤状ガラスの製造方法では、熱処理工程は、室温からピーク温度まで+1〜+16℃/minの速度で昇温する昇温ステップと、昇温ステップ後にピーク温度−10℃〜ピーク温度の範囲内の保持温度で0〜120分保持する保持ステップと、保持ステップの後、保持温度からガラス板の歪点−50℃までの温度域において−6.0〜−0.3℃/minの速度で降温する降温ステップと、を含むことが好ましい。
【0008】
本発明の円盤状ガラスの製造方法では、降温ステップは、保持温度からガラス板の歪点−50℃までの温度域において−3.0〜−0.3℃/minの速度で降温する第一降温ステップと、歪点−50℃以下の温度域において−5.8〜−1.1℃/minの速度で降温する第二降温ステップとを含むことが好ましい。
【0009】
本発明の円盤状ガラスの製造方法では、熱処理工程において、板ガラスの板厚方向に荷重をかけた状態で熱処理を行うことが好ましい。
【0010】
本発明の円盤状ガラスの製造方法では、複数のガラス板を相互間に離型材を介在させて積層し、最上段に押さえ部材を載置した状態で熱処理工程の熱処理を行うことが好ましい。
【0011】
本発明の円盤状ガラスの製造方法では、複数のガラス板の最下段に支持部材を更に配置し、押さえ部材および支持部材の各々のガラス板との接触面を、ガラス板の主表面よりも大きくすることが好ましい。ここでいうガラス板の主表面とは、ガラス板の厚み方向に対向する表面を意味する。
【0012】
本発明の円盤状ガラスの製造方法では、熱処理工程以後であって、切断工程の前または後の何れかにおいてガラス板の両主表面を研磨する研磨工程をさらに備え、研磨において一方主表面の研磨量に対する他方主表面の研磨量を0.8〜1.2倍の範囲内にすることが好ましい。
【0013】
本発明の円盤状ガラスの製造方法では、熱処理工程後に円形切断工程を行い、円形切断工程後に円盤状ガラス板に切り欠き部を形成する切欠き形成工程を備えることが好ましい。
【0014】
本発明の円盤状ガラスは、反りが200μm以下であり、且つ、中心と端部のガラス表面の応力の差が0〜10MPaであることを特徴とする。ここでいう中心は基板中央φ50mm、端部とは端面から100mm内側の部分である。
【0015】
本発明の円盤状ガラスは、半径をr(mm)とした場合に、中心から0.8r以内の領域において椀形状を成すことが好ましい。
【0016】
本発明の円盤状ガラスは、使用時上面となる主表面に刻印を有し、刻印が形成された主表面側にくぼんだ椀形状を有することが好ましい。
【0017】
本発明の円盤状ガラスは、鞍形状を成すことが好ましい。
【0018】
本発明の円盤状ガラスは、切り欠き部を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、高い平坦度を有する円盤状ガラスならびに当該円盤状ガラスを容易に得られる。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態に係る円盤状ガラスおよびその製造方法について説明する。本発明の実施形態に係る円盤状ガラスG4は、切り欠き部Nを有する平面視略真円状のガラス基板であり(
図8参照)、例えば、半導体基板を支持する支持基盤として用いられる。
【0022】
先ず、本発明の実施形態に係る円盤状ガラスG4の製造方法について
図1〜8に基づいて説明する。
図1は、本発明の実施形態に係る円盤状ガラスG4の製造方法の手順の一例を示す図である。本発明の実施形態に係る円盤状ガラスG4の製造方法は、ガラス板準備工程S1、熱処理工程S2、円形切断工程S3、切欠き形成工程S4を備える。
【0023】
ガラス板準備工程S1は、円盤状ガラスG4の元となるガラス板G1を準備する工程である。ガラス板G1は、円盤状ガラスG4を切り出せる程度の寸法を有するガラス板であれば良い。具体的には、ガラス板G1は、例えば、矩形状、好ましくは略正方形の板状である。ガラス板G1の板厚は、好ましくは2.0mm未満、1.5mm以下、1.2mm以下、1.1mm以下、1.0mm以下、特に0.9mm以下である。また、ガラス板G1の板厚は、好ましくは0.1mm以上、0.2mm以上、0.3mm以上、0.4mm以上、0.5mm以上、0.6mm以上、特に0.7mm超である。
【0024】
ガラス板G1は、用途に応じた任意の組成を有するガラスであって良い。ガラス板G1の組成は、円盤状ガラスG3,G4が後述の組成となるように予め調整されていることが好ましい。
【0025】
ガラス板G1は、例えば、上記組成となるよう調合されたガラス原料を溶融して得た溶融ガラスをオーバーフローダウンドロー法を用いて板状に成形したものである。なお、上記成形方法は一例であり、例えば、フロート法や、ロールアウト法、スロットダウン法等、従来周知の任意の手法を用いて良い。
【0026】
本実施形態では、上記ガラス板準備工程S1に次いで熱処理工程S2の処理を実行する。
【0027】
熱処理工程S2では、上記ガラス板準備工程S1で準備したガラス板G1を熱処理して熱処理ガラス板G2(図示せず)を得る。具体的には、ガラス板G1を室温から徐冷点−50℃〜徐冷点+80℃の範囲内で予め設定されたピーク温度まで加熱した後に冷却する。なお、本発明において室温とは、0〜45℃の範囲内の温度である。このような処理によれば、熱処理ガラス板G2および熱処理ガラス板G2をもとに得られる円盤状ガラスG3、G4の反りを好適に低減することができる。ここで、ピーク温度が徐冷点−50℃未満であると、熱処理が不十分になり円盤状ガラスG3、G4の反りを好適に低減し難くなり、ピーク温度が徐冷点+80℃超であると、熱処理が過剰になり円盤状ガラスG3、G4の主表面に熱処理に起因する凹状欠陥(例えば、深さ10μm以上、長径200μm以上の楕円形状)が生じ易くなると推測される。
【0028】
より具体的には、熱処理工程S2は、昇温ステップS21、保持ステップS22、高温ステップS23を備える。昇温ステップS21では、ガラス板G1を室温からピーク温度まで+1〜+16℃/minの速度で昇温することが好ましい。保持ステップS22では、昇温ステップS22後にガラス板G1をピーク温度−10℃〜ピーク温度の範囲内の保持温度で0〜120分保持することが好ましい。降温ステップS23では、保持ステップS22の後、ガラス板G1を保持温度からガラス板G1の歪点−50℃までの温度域において−6.0〜−0.3℃/minの速度で降温することが好ましい。
【0029】
さらに、降温ステップS23は、各々降温速度の異なる第一降温ステップS23A、および第二降温ステップS23Bを含むことが好ましい。高温側に位置する第一降温ステップS23Aは、低温側に位置する第二降温ステップS23Bよりも降温速度が遅いことが好ましい。第一降温ステップS23Aでは、保持ステップS22における保持温度からガラス板G1の歪点−50℃までの温度域において−3.0〜−0.3℃/minの速度でガラス板G1を降温することが好ましい。第二降温ステップS23Bでは、第一降温ステップの後、歪点−50℃以下の温度域において−5.8〜−1.1℃/minの速度で降温することが好ましい。
【0030】
本実施形態では、ガラス板G1は、
図2に示すように複数枚を積層した積層体Uの状態で熱処理される。積層体Uは、支持部材P1、複数のガラス板G1、押さえ部材P2を備える。支持部材P1および押さえ部材P2は各々、ガラス板G1の主表面全面と接触可能な接触面を有し、且つ耐熱性を有する部材である。支持部材P1および押さえ部材P2は、例えば、板状またはブロック状の耐火物であり、好ましくはムライト系耐火物である。積層体Uは、最下段に配置された支持部材P1と、最上段に配置された押さえ部材P2とで、複数枚を積層したガラス板G1を挟むようにして構成されている。
【0031】
このような積層体Uの状態で熱処理を行うことにより、ガラス板G1に厚み方向に均一な荷重をかけた状態で熱処理される。このような処理によれば、複数のガラス板G1および当該ガラス板G1をもとに得られる円盤状ガラスG3、G4の反りを容易に低減できる。このような効果をより確実に享受するためには、支持部材P1の接触面(支持面)としての上面と、押さえ部材P2の接触面(押さえ面)としての下面の各々を、ガラス板G1の主表面よりも大きくすることが好ましい。なお、支持部材P1の接触面と、押さえ部材P2の接触面は各々、ガラス板G1の主表面と同じ大きさであっても良いし、小さくても良い。
【0032】
ガラス板G1は、表面にタルク粉等の離型粉を付着された状態で積層することが好ましい。ガラス板G1に離型粉を付着させておくことで、熱処理時や熱処理後にガラス表面に欠陥が形成されることを防ぐことができる。なお、離型粉を付着させる代わりに、複数のガラス板G1各々の間にアルミナペーパー等の離型シートを介在させて積層しても良い。これら離形材としての離型粉および離型シートは熱処理後に熱処理ガラス板G2から取り除くことが好ましい。
【0033】
熱処理工程S2の処理は、例えば
図3に示すような熱処理装置Tを用いて行うことができる。熱処理装置Tは、コンベアM、および熱処理炉Hを備える。コンベアMは、積層体Uを連続的に搬送する搬送装置であり、例えば、ローラーコンベアである。熱処理炉Hは、内部の温度雰囲気を制御可能な加熱装置である。熱処理炉Hは、コンベアMの流れ方向に沿って延びる形状を成し、当該延長方向に個別に出力を調整可能な熱源が複数配列されている。コンベアMにより搬送される積層体Uは、熱処理炉Hの一方端に設けられた入口から熱処理炉H内に導入され、炉内で熱処理された後、他方端に設けられた出口から炉外へ導出される。このような熱処理装置Tにおいて、コンベアMの搬送速度および熱処理炉Hの各熱源の出力を調整することにより、上述した各ステップの温度条件でガラス板G1を熱処理できる。
【0034】
例えば、ガラス板G1の歪点が530℃、徐冷点が570℃である場合、
図4〜6に示すような温度条件で熱処理を行うことができる。
図4〜6は、本実施形態に係る熱処理工程の温度条件の一例を示す図である。
図4〜6のグラフにおいて横軸は時間を、縦軸はガラス板G1を処理する温度を各々示す。
図4に示す熱処理では、まず620℃のピーク温度まで10℃/minで昇温し(昇温ステップS21)、ピーク温度で90分保持し(保持ステップS22)、次いで、歪点−50℃に相当する480℃よりも低温の400℃まで−0.7℃/minで降温した後(第一降温ステップS23A)、室温まで−3.2℃/minで降温する(第二降温ステップS23B)。また、
図5に示す熱処理では、まず620℃のピーク温度まで15℃/minで昇温し(昇温ステップS21)、ピーク温度で20分保持し(保持ステップS22)、次いで、歪点−50℃に相当する480℃まで−1.1℃/minで降温した後(第一降温ステップS23A)、室温まで−4.8℃/minで降温する(第二降温ステップS23B)。
図6に示す熱処理では、まず590℃のピーク温度まで14℃/minで昇温し(昇温ステップS21)、ピーク温度で20分保持し(保持ステップS22)、次いで、歪点−50℃に相当する480℃まで−0.9℃/minで降温した後(第一降温ステップS23A)、室温まで−3.2℃/minで降温する(第二降温ステップS23B)。ここで、
図5及び
図6に示す熱処理は、
図4に示す熱処理よりも短時間で終了するため、製造効率がよいという利点がある。また、蛍光灯下での目視検査の一例を示すと、表面欠陥を有するガラス板の発生確率が、
図4に示す熱処理では1.1%(302枚/28000枚)、
図5に示す熱処理では1.0%(292枚/28000枚)、
図6に示す熱処理では0.3%(19枚/7200枚)という結果を得た。
図6に示す熱処理において表面欠陥が最も少なくなった理由としては、
図6に示す熱処理のピーク温度を
図4および
図5に示す熱処理のピーク温度よりも低く設定したことが考えられる。
【0035】
なお、上記熱処理装置Tは一例であり、任意の装置を用いて上記処理を行って良い。例えば、公知の電気炉、ガス炉等を用いて上記処理を連続的に行っても良いし、バッチ式装置を用いて個別処理しても良い。
【0036】
上記熱処理後工程S2前後のガラス板G1の熱収縮率は20ppm以下が好ましく、より好ましくは15ppm以下、12ppm以下、10ppm以下、特に8ppm以下である。
【0037】
本実施形態では、熱処理工程S2に次いで円形切断工程S3の処理を実行する。
【0038】
円形切断工程S3では、上記の熱処理工程S2で得られた熱処理ガラス板G2から円盤状ガラスG3を切り出す。具体的には、例えば、ダイヤモンドチップ等を用いて熱処理ガラス板G2の一方主表面に円形のスクライブ線を形成し、当該スクライブ線に沿って割断することにより
図7に示すような円盤状ガラスG3を得る。
【0039】
円盤状ガラスG3の寸法は任意に定めて良いが、直径100〜500mmのウエハ状(略真円状)が好ましく、特に150〜450mmが好ましい。このような形状であれば、半導体パッケージの製造工程で好適に使用可能である。
【0040】
なお、上記切断方法は一例であり、他の任意の切断方法を用いても良い。例えば、レーザー光を熱処理ガラス板G2に照射して溶断(レーザー溶断)したり、クラックを発生させる(レーザー割断)ことによって熱処理ガラス板G2を円形に切断し、円盤状ガラスG3を得ても良い。また、熱処理ガラス板G2の主表面に円形のマスクを形成し、マスクが形成されていない部分をエッチングすることによって円盤状ガラスG3を得ても良い。
【0041】
また、得られた円盤状ガラスG3の端面は、任意に加工されて良い。例えば、円盤状ガラスG3の端面は、研削工具等によって面取り加工されても良いし、研磨工具で研磨されても良いし、レーザー光等により加熱されて平滑化されても良いし、フッ酸等によりエッチング処理されても良い。
【0042】
なお、熱処理工程S2の処理の前後でガラス板G1の膨張量または収縮量が比較的大きい場合、円形切断工程S3の処理は、上記の通り熱処理工程S2の後に行うことが好ましい。このような順序であれば、円盤状に切断された後に膨張または収縮が発生し難いため、高い寸法精度の円盤状ガラスG3、G4を容易に得られる。一方、熱処理工程S2の処理の前後のガラス板G1の膨張量または収縮量が比較的小さい場合や、後の加工工程で寸法精度が確保される場合には、先に円形切断工程の処理を行った後に熱処理工程の処理を行っても良い。すなわち、円盤状ガラスを積層した状態で上記熱処理工程の処理を実行しても良い。
【0043】
本実施形態では、円形切断工程S3に次いで切欠き形成工程S4の処理を実行する。
【0044】
切欠き形成工程S4では、上記の円形切断工程S3で得られた円盤状ガラスG3に切り欠き部Nを形成し、
図8に示すような円盤状ガラスG4を得る。本実施形態において、切欠き部Nは、例えば、円盤状ガラスG4の端部に設けられた窪みである。切り欠き部Nは、例えば、柱状の回転研削工具を円盤状ガラスG3の端面へ押し当てることによって形成可能である。このような切り欠き部Nは、半導体製造工程において円盤状ガラスG4を位置決めする際等に有用である。
【0045】
なお、上記切欠き部Nの形状は一例であり、任意の形状の切り欠き部を形成して良い。例えば、切欠き部Nは、円盤状ガラスG3を直線上に切断して成るオリエンテーションフラットであっても良い。また、切り欠き部Nは、同一の円盤状ガラスG4において複数設けられても良い。
【0046】
また、切り欠き部Nおよび円盤状ガラスG4の外周端面は、任意に加工されて良い。例えば、円盤状ガラスG3の切り欠き部Nおよび端面は、研削工具等によって面取り加工されても良いし、研磨工具で研磨されても良いし、レーザー光が照射されて平滑化されても良いし、フッ酸等によりエッチング処理されても良い。
【0047】
なお、半導体製造工程において切り欠き部Nが不要である場合には、切欠き形成工程S4の処理を省略して良い。
【0048】
なお、本発明の円盤状ガラスの製造方法は、上記の工程に下記のような工程を任意に追加して良い。
【0049】
例えば、円形切断工程の後に円盤状ガラスG3、G4の主表面の全部又は一部を研磨する表面研磨工程を追加して良い。上記熱処理工程の処理によって、円盤状ガラスG3、G4は高い平坦性を有するが、主表面を研磨することによって、さらに全体板厚偏差を低減し易くなり、また反り量も低減し易くなる。研磨処理の方法としては、種々の方法を採用することができるが、円盤状ガラスの両面を一対の研磨パッドで挟み込み、円盤状ガラスと一対の研磨パッドを共に回転させながら、円盤状ガラスを研磨処理する方法が好ましい。更に一対の研磨パッドは外径が異なることが好ましく、研磨の際に間欠的に円盤状ガラスの一部が研磨パッドから食み出すように研磨処理することが好ましい。これにより、全体板厚偏差を低減し易くなり、また反り量も低減し易くなる。なお、研磨処理において、研磨深さは特に限定されないが、研磨深さは、好ましくは50μm以下、30μm以下、20μm以下、特に10μm以下である。研磨深さが小さい程、円盤状ガラスG3、G4の生産性が向上する。
【0050】
また、円盤状ガラスG3、G4の表面全体または一部をイオン交換法等により化学強化処理する強化工程を追加しても良い。また、上記各工程の前後において洗浄および乾燥工程を追加しても良い。
【0051】
上記方法により得られた円盤状ガラスG3、G4は、以下の特性を有することが好ましい。
【0052】
円盤状ガラスG3、G4の反り量は、好ましくは40μm以下、30μm以下、25μm以下、1〜20μm、特に5〜20μm未満である。また、熱処理ガラス板G2および円盤状ガラスG3、G4全体板厚偏差は、好ましくは2μm未満、1.5μm以下、1μm以下、1μm未満、0.8μm以下、0.1〜0.9μm、特に0.2〜0.7μmである。反り量がこのような範囲内であれば、半導体製造工程において、半導体を良好に支持可能であり、高い生産性で半導体を製造可能である。ここで、「反り量」は、半導体基板におけるWarpと同様に、水平面上に載置した円盤状ガラスG3、G4における最高位置と最小二乗焦点面との間の距離Aと、その最低位置と最小二乗平面との間の距離Bとの合計(A+B)により求めることができる。反り量は、例えばコベルコ科研社製のSBW−331ML/dにより測定可能である。
【0053】
円盤状ガラスG3、G4の表面の算術平均粗さRaは、好ましくは10nm以下、5nm以下、2nm以下、1nm以下、特に0.5nm以下である。表面の算術平均粗さRaが小さい程、加工処理の精度を高め易くなる。特に配線精度を高めることができるため、高密度の配線が可能になる。また円盤状ガラスの強度が向上して、円盤状ガラス及び積層体が破損し難くなる。更に円盤状ガラスの再利用回数(支持回数)を増やすことができる。なお、「算術平均粗さRa」は、原子間力顕微鏡(AFM)により測定可能である。
【0054】
円盤状ガラスG3、G4において、30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数は0×10
-7/℃以上、且つ165×10
-7/℃以下が好ましい。これにより、加工基板と円盤状ガラスの熱膨張係数を整合させ易くなる。そして、両者の熱膨張係数が整合すると、加工処理時に加工基板の寸法変化(特に、反り変形)を抑制し易くなる。結果として、加工基板の一方の表面に対して、高密度に配線することが可能になり、また半田バンプを正確に形成することも可能になる。なお、「30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数」は、ディラトメーターで測定可能である。
【0055】
30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数は、加工基板内で半導体チップの割合が少なく、封止材の割合が多い場合は、上昇させることが好ましく、逆に、加工基板内で半導体チップの割合が多く、封止材の割合が少ない場合は、低下させることが好ましい。
【0056】
円盤状ガラスG3、G4の30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を0×10
-7/℃以上、且つ50×10
-7/℃未満とする場合、円盤状ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 55〜75%、Al
2O
3 15〜30%、Li
2O 0.1〜6%、Na
2O+K
2O 0〜8%、MgO+CaO+SrO+BaO 0〜10%を含有することが好ましく、或いはSiO
2 55〜75%、Al
2O
3 10〜30%、Li
2O+Na
2O+K
2O 0〜0.3%、MgO+CaO+SrO+BaO 5〜20%を含有することも好ましい。30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を50×10
-7/℃以上、且つ75×10
-7/℃未満とする場合、円盤状ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 55〜70%、Al
2O
3 3〜15%、B
2O
3 5〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O 5〜15%、K
2O 0〜10%を含有することが好ましい。30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を75×10
-7/℃以上、且つ85×10
-7/℃以下とする場合、円盤状ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 60〜75%、Al
2O
3 5〜15%、B
2O
3 5〜20%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O 7〜16%、K
2O 0〜8%を含有することが好ましい。30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を85×10
-7/℃超、且つ120×10
-7/℃以下とする場合、円盤状ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 55〜70%、Al
2O
3 3〜13%、B
2O
3 2〜8%、MgO 0〜5%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O 10〜21%、K
2O 0〜5%を含有することが好ましい。30〜380℃の温度範囲における平均熱膨張係数を120×10
-7/℃超、且つ165×10
-7/℃以下とする場合、円盤状ガラスは、ガラス組成として、質量%で、SiO
2 53〜65%、Al
2O
3 3〜13%、B
2O
3 0〜5%、MgO 0.1〜6%、CaO 0〜10%、SrO 0〜5%、BaO 0〜5%、ZnO 0〜5%、Na
2O+K
2O 20〜40%、Na
2O 12〜21%、K
2O 7〜21%を含有することが好ましい。このようにすれば、熱膨張係数を所望の範囲に規制し易くなると共に、耐失透性が向上するため、全体板厚偏差が小さい円盤状ガラスを成形し易くなる。
【0057】
円盤状ガラスG3、G4の歪点は、好ましくは480℃以上、500℃以上、510℃以上、520℃以上、特に530℃以上である。歪点が高い程、熱収縮率を低減し易くなる。なお、「歪点」は、ASTM C336の方法に基づいて測定した値を指す。
【0058】
円盤状ガラスG3、G4のヤング率は、好ましくは65GPa以上、67GPa以上、68GPa以上、69GPa以上、70GPa以上、71GPa以上、72GPa以上、特に73GPa以上である。ヤング率が低過ぎると、積層体の剛性を維持し難くなり、加工基板の変形、反り、破損が発生し易くなる。
【0059】
円盤状ガラスG3、G4の液相温度は、好ましくは1150℃未満、1120℃以下、1100℃以下、1080℃以下、1050℃以下、1010℃以下、980℃以下、960℃以下、950℃以下、特に940℃以下である。このようにすれば、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で円盤状ガラスを成形し易くなるため、板厚が小さい円盤状ガラスを作製し易くなると共に、成形後の板厚偏差を低減することができる。更に、円盤状ガラスの製造工程時に、失透結晶が発生して、円盤状ガラスの生産性が低下する事態を防止し易くなる。ここで、「液相温度」は、標準篩30メッシュ(500μm)を通過し、50メッシュ(300μm)に残るガラス粉末を白金ボートに入れた後、温度勾配炉中に24時間保持して、結晶が析出する温度を測定することにより算出可能である。
【0060】
円盤状ガラスG3、G4の液相温度における粘度は、好ましくは10
4.6dPa・s以上、10
5.0dPa・s以上、10
5.2dPa・s以上、10
5.4dPa・s以上、10
5.6dPa・s以上、特に10
5.8dPa・s以上である。このようにすれば、ダウンドロー法、特にオーバーフローダウンドロー法で円盤状ガラスを成形し易くなるため、板厚が小さい円盤状ガラスを作製し易くなると共に、成形後の板厚偏差を低減することができる。更に、円盤状ガラスの製造工程時に、失透結晶が発生して、円盤状ガラスの生産性が低下する事態を防止し易くなる。ここで、「液相温度における粘度」は、白金球引き上げ法で測定可能である。なお、液相温度における粘度は、成形性の指標であり、液相温度における粘度が高い程、成形性が向上する。
【0061】
円盤状ガラスG3、G4の10
2.5dPa・sにおける温度は、好ましくは1580℃以下、1500℃以下、1450℃以下、1400℃以下、1350℃以下、特に1200〜1300℃である。10
2.5dPa・sにおける温度が高くなると、溶融性が低下して、円盤状ガラスの製造コストが高騰する。ここで、「10
2.5dPa・sにおける温度」は、白金球引き上げ法で測定可能である。なお、10
2.5dPa・sにおける温度は、溶融温度に相当し、この温度が低い程、溶融性が向上する。
【0062】
円盤状ガラスG3、G4は、ガラス主表面の中心部の応力と端部の応力との差が0〜10MPaである。ここでいう端部とは端面から100mmの任意の部位である。このような応力特性であれば、基板全体で椀型、鞍型、谷型の形状に反ると考えられる。上記の形状は、局所的に反っている基板と比べ、基板上の半導体チップが生産中に脱落する不具合が発生しづらく、高い生産性で製造できる。(半導体支持基板として用いた場合に半導体の製造工程において変形し難く、半導体を高い生産性で製造できる。上記熱処理工程S2により内部応力が緩和されるため、円盤状ガラスG3、G4の応力は上記のような範囲となると考えられる。)
【0063】
円盤状ガラスG3、G4は、目視では板状であるが、拡大視した場合には使用時に許容される程度の微小な反りや凹凸形状を有している。例えば、円盤状ガラスG3、G4は、
図9A、Bから
図11A、Bに示すような椀型、鞍型、谷型の形状を成している。
図9A、Bから
図11A、Bは各々、コベルコ科研社製のSBW−331ML/dにより測定した本実施形態の円盤状ガラスの形状の例を厚さ方向に強調して示した図である。
図9A、
図10A、
図11Aは、円盤状ガラスG3、G4を平面視した場合の高低形状を濃淡で示したものであり、濃色であるほど低位置であることを示す。
図9B、
図10B、
図11Bは、円盤状ガラスG3、G4の三次元斜視形状を示す。
【0064】
図9A、Bは、椀形状を成す円盤状ガラスG3、G4を示す。椀形状とは、中央部が外周部よりくぼんだ形状を指す。特に、円盤状ガラスG3、G4の半径をr(mm)とした場合に、中心から0.8r以内の領域において椀形状を成すことが好ましい。円盤状ガラスG3、G4が椀形状であり、半導体支持基板用途に用いられる場合には、主表面のうちくぼんだ側で半導体基板を支持することが好ましい。このようにすれば半導体基板を安定して支持可能である。この場合、円盤状ガラスG3、G4の主表面のどちらを支持面とすべきか明示するために、くぼんでいる側の主表面に刻印やシール等の識別マークを形成しておくことが好ましい。
【0065】
図10A、Bは、鞍形状を成す円盤状ガラスG3、G4を示す。鞍形状とは、部分的には板厚方向に沿った第一方向に反っており、且つ部分的には第一方向と逆の第二方向に反り返っている形状を指す。
図10A、Bにおいては円盤状ガラスG3、G4は、中心において略直行する二軸各々を中心に異なる方向へ反った形状を示している。円盤状ガラスG3、G4が鞍形状であれば内部応力バランスがとれた状態であると考えられ、使用時における変形等を抑制可能である。
【0066】
図11A、Bは、谷形状を成す円盤状ガラスG3、G4を示す。谷形状とは、板厚方向の一方向にのみ反り返っている形状を指す。
【0067】
なお、円盤状ガラスG3、G4の用途は半導体支持用途に限られず、任意の用途に転用可能である。