【実施例】
【0027】
図1は本発明のフランジ付きカバー支持架台の外観の一例を示した斜視図である。なお、、
図5及び
図6を用いて既に説明した構成要素については、同一の符号を付して、その説明を省略する。
図1に示すように、フランジ付きカバー支持架台1は、台座2aと調整ネジ2bからなるジャッキ2と、ジャッキ2が上面に設置される基台3と、ジャッキ2の上部に設置される支持手段4と、胴部53と水室カバー55のフランジ53a,55aのボルト孔53b,55b(ボルト孔53bについては
図5(c)参照。以下、同様。)に挿通されるガイドパイプ5を備えている。なお、台座2aは平面視矩形状をなす平板材からなり、調整ネジ2bを鉛直上向きに伸長可能な状態で下端を台座2aに固定されており、この調整ネジ2bの上端に支持手段4が取り付けられている。
【0028】
また、平面視H状をなす基台13aと、この基台13aに立設されるとともに、上部に設置された受け具13cを水平に支持する一対の調整ネジ13b,13bと、からなる組込架台13を備えている。なお、基台13aに設けられた複数の挿通孔には、外周面に雄ネジ部を有する複数の脚部13dがそれぞれ挿通され、ナットを用いて固定されている。すなわち、組込架台13は、脚部13dの長手方向に対するナットの締結箇所を変更することにより、床面とのレベル調整が可能な構造となっている。
【0029】
支持手段4は、水平方向と平行をなすとともに水室カバー55の側面下部に対して当接可能に設置される長尺状の受け具6と、受け具6と平行をなすとともに水室カバー55の側面上部に対して当接可能に設置される長尺状の押え具7と、外周面に雄ネジ部を有し、水室カバー55を間に挟んだ状態で鉛直方向と平行に設置されて受け具6と押え具7を連結する一対の連結棒8,8を備えている。
また、受け具6と押え具7は、両端近傍に連結棒8の挿通孔がそれぞれ設けられた山形鋼であり、連結棒8は、この挿通孔に挿通された端部にナット9を締結することによって受け具6や押え具7に対して固定される。すなわち、支持手段4は、連結棒8の長手方向に対するナット9の締結箇所を変更することにより受け具6と押え具7の間隔を調節可能な構造となっている。
【0030】
基台3は、平面視矩形状をなす平板材からなり、ジャッキ2の台座2aが載置される上面には、断面がL字状をなす一対のガイド部材10,10が台座2aを間に挟むように背中合わせの状態で互いに平行をなすように設置されている。この場合、台座2aは一対のガイド部材10,10の背面に沿って、その長手方向へスライド移動可能に案内される。したがって、ガイド部材10,10の長手方向が水平に設置された胴部53の円筒軸方向と平行をなすように基台3を配置した場合、ジャッキ2及び支持手段4の移動方向が胴部53の円筒軸方向と平行な方向のみに規制されるため、支持手段4の高さをジャッキ2によって調整することで、胴部53に対して中心軸同士を正確に一致させた状態で水室カバー55を水平方向へ移動させることができる。
【0031】
また、基台3には、外周面に雄ネジ部を有する一対の脚部11,11がガイド部材10の長手方向の端部近傍に設けられた挿通孔に挿通されるとともに、ナット12を用いて固定されている。すなわち、脚部11は、脚部11の長手方向に対するナット12の締結箇所を変更することにより基台3の端部の高さを調節可能となっている。
したがって、支持台52の台座52aの上面と床面の間に段差が生じているような場合であっても、脚部11,11に対するナット12,12の締結箇所をそれぞれ調節することにより基台3を水平な状態で設置することができる。
【0032】
次に、本発明のフランジ付きカバー支持架台1を用いて水室カバー55の取り付け作業を行う方法について
図2乃至
図4を用いて説明する。
図2は当該作業の手順を示したフローチャートである。また、
図3(a)及び
図3(b)は油冷却器51において水室カバー55が取り外された胴部53の端部を拡大して示した縦断面図であり、
図4(a)及び
図4(b)は
図3(b)において水室カバー55が胴部53に取り付けられる様子を示した図である。なお、
図3及び
図4は
図5(b)に相当する図である。
【0033】
油冷却器51の開放点検後に水室カバー55を胴部53に取り付ける場合、
図2に示すように、まず、ステップS1において胴部53のフランジ53aの環状溝56aにOリング57を挿入した後、ステップS2において環状板58を環状溝56bに挿入するように胴部53のフランジ53aに装着する(
図3(a)参照)。次に、ステップS3において、Oリング57をチューブプレート54に外挿した後、ステップS4において、胴部53側の組込架台13と床面とのレベル調整を行い、胴部53のフランジ53aの下側2か所のボルト孔53bに対して、2本のガイドパイプ5がそれぞれのセンターに配置されるように組込架台13の受け具13cを上昇させる(
図3(b)参照)。
【0034】
ステップS5では、チェーンブロック等を用いて水室カバー55を吊り上げ、その下方にフランジ付きカバー支持架台1を設置する。この時、チェーンブロックを操作して水室カバー55を下降させ、受け具6と押え具7によって上下から挟み込まれるように配置する。ただし、基台3はガイド部材10の長手方向が胴部53の軸方向と平行になるように配置されるものとする。このように、本発明のフランジ付きカバー支持架台1においては、受け具6と押え具7の間隔を容易に調節できるため、支持手段4に対する水室カバー55の位置合わせを効率良く行うことができる。
【0035】
次に、ステップS6〜S7では、下側2本のガイドパイプ5をフランジ55aのボルト孔55bに挿入して水室カバー55の高さを調整した後、調整ネジ2bを操作し、倒れ等の最終的な微調整を実施する。さらに、ステップS8では、胴部53のフランジ53aのボルト孔53bに一端が挿通された残り2本のガイドパイプ5の他端をフランジ53aのボルト孔53bに対応するフランジ55aのボルト孔55bにそれぞれ挿入する(
図4(a)参照)。これにより、フランジ55aのボルト孔55bの全てががフランジ53aのボルト孔53bのそれぞれに対して対向するように水室カバー55が配置されるとともに、水室カバー55の中心軸が胴部53の円筒軸と完全に一致した状態となる。
【0036】
なお、本実施例では、倒れの微調整を行った後で、フランジ55aの下側のボルト孔55bに2本のガイドパイプ5を挿入して微調整を行い、その後さらに、フランジ55aの上側のボルト孔55bに残りの2本のガイドパイプ5を挿入する手順としているが、最初に倒れの微調整を行った後、上下4本のガイドパイプ5をフランジ55aのボルト孔55bに挿入しても良い。
【0037】
ステップS9では、支持手段4によって水室カバー55を支持した状態でジャッキ2の台座2aを一対のガイド部材10,10の背面に沿って、胴部53に近づける方向へスライドさせることにより、水室カバー55をフランジ55aが胴部53のフランジ53aに当接するまで移動させる(
図4(b)参照)。このとき、フランジ53aのボルト孔53bとフランジ55aのボルト孔55bには4本のガイドパイプ5が挿通されているため、フランジ53a,55aの位置関係及び水室カバー55と胴部53の中心軸同士の位置関係が崩れることはない。すなわち、ガイドパイプ5は、水室カバー55の移動の前後を通じて、ボルト孔53bとボルト孔55bが対向するとともに、水室カバー55の中心軸と胴部53の円筒軸が一致した状態を維持するという作用を有する。これにより、水室カバー55を胴部53に対して正確に取り付けることが可能となる。
【0038】
ステップS10では、胴部53のフランジ53aと水室カバー55のフランジ55aとボルト孔53b,55bに対し、まず、4〜8本のボルトを対角方向になるように取り付けて締め付けた後、ガイドパイプ5を抜き取り、残りのボルトをボルト孔53b,55bに挿入して締結することにより、水室カバー55のフランジ55aを胴部53のフランジ53aに固定する。
その後、ステップS11において、フランジ付きカバー支持架台1を撤去する。
【0039】
以上説明したように、本発明のフランジ付きカバー支持架台1においては、周囲に十分な作業スペースを確保できない場所に油冷却器51が設置されている場合であっても、ジャッキ2の台座2aや基台3が車輪を有していないため、ジャッキ2と基台3を水室カバー55の下方に設置することができる。
また、ジャッキ2を操作して受け具6によって支持された水室カバー55の高さを調節するとともに、ガイドパイプ5を水室カバー55のフランジ55aのボルト孔55bと胴部53のフランジ53aのボルト孔53bに挿通させることにより、水室カバー55の中心軸が胴部53の円筒軸に対して正確に一致する。
そして、水室カバー55の胴部53に対するこのような位置関係は、ジャッキ2の台座2aを基台3に対してスライドさせるようにして水室カバー55を移動させる際に、ガイドパイプ5によって維持される。したがって、フランジ55aの環状溝56bの角部によるOリング57の噛み込みを防いで、水室カバー55を胴部53に対して正確に効率良く取り付けることができる。
さらに、本発明のフランジ付きカバー支持架台1では、ジャッキ2の台座2aと基台3と支持手段4の構造が簡単であるため、安価に製造することが可能である。
【0040】
本実施例では、フランジ53a,55aのボルト孔53b,55bに対してガイドパイプ5を挿通させているが、必ずしも筒状体でなくとも良いため、例えば、ガイドパイプ5の代わりに中実の棒状体を用いることもできる。ただし、所定の剛性を満足できるのであれば、筒状体の方が中実の棒状体よりも軽量で扱い易いというメリットがある。