(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記上部電極を前記TEOSからなる層よりも密度が高い材料から成るシリコン窒化膜、シリコン酸化膜、ポリイミド膜から選択される少なくとも1つで構成される膜で覆われていることを特徴とする請求項1に記載の化合物半導体装置。
前記補助電極はフローティング又は第1の電極と第2の電極のうち電位の小さい電極と電気的に接続することを特徴とする請求項1〜2の何れか1項に記載の化合物半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、図面を参照して、本発明の実施例を説明する。以下の図面の記載において、同一
又は類似の部分には同一又は類似の符号を付している。ただし、図面は模式的なものであ
り、現実のものとは異なる。また、図面相互間においても互いの寸法の関係や比率が異な
る部分が含まれている場合がある。
【0012】
また、以下に示す実施例はこの発明の技術的思想を具体化するための装置や方法を例示
するものであって、この発明の技術的思想は各構成部品の配置等を下記のものに特定する
ものでない。この発明の技術的思想は、特許請求の範囲において、種々の変更を加えるこ
とができる。
【0013】
(実施例1)
本発明の実施例1は、化合物半導体素子領域をHEMTとする窒化物系化合物半導体装置に
本発明を適用した例を説明するものである。
【0014】
[窒化物系化合物半導体装置の構造]
図1に示すように、実施例1に係る窒化物系化合物半導体装置1は、二次元キャリアガスチャネル310を有し、キャリア走行層として機能する第1の化合物半導体層31と、第1の化合物半導体層31上に配設され、キャリア供給層(バリア領域)として機能する第2の化合物半導体層32と、二次元キャリアガスチャネル310上に設けられた第1の電極61と、二次元キャリアガスチャネル310と電気的に接続し、第1の電極61から離間して配設された第2の電極42と、を備えた化合物半導体素子領域10と、化合物半導体素子領域10の周囲を取り囲む領域の少なくとも一部において二次元キャリアガスチャネル310上に配設され、この二次元キャリアガスチャネル310のキャリア濃度を減少させる反対導電型の機能電極62を有する外周領域11とを備える。
【0015】
第1の化合物半導体層31及び第2の化合物半導体層32は化合物半導体機能層3を構
築し、この化合物半導体機能層3に化合物半導体素子領域10が構成される。化合物半導体素
子10は、実施例1において電子をキャリアとするnチャネル導電型HEMTである。従
って、二次元キャリアガスチャネル310は二次元電子ガスチャネルである。第2の化合
物半導体層32を構成する半導体の格子定数は第1の化合物半導体層31を構成する半導体の格子定数よりも小さく、第2の化合物半導体層32のバンドギャップは第1の化合物半導体層31のバンドキャップよりも大きい。
【0016】
化合物半導体機能層3は、
図1に示すように、基板2上に配設される。実施例1におい
て、基板2には、大口径化を実現することができ、かつ安価に製作することができるシリ
コン基板(例えばシリコン単結晶基板)が使用される。化合物半導体機能層3は第1の化
合物半導体層31の第2の化合物半導体層32とは対向する裏面にバッファ層33を備え
、化合物半導体機能層3はこのバッファ層33を介して結晶性の整合性を確保した状態に
おいて基板2上に配設されている。なお、バッファ層33を設けず、バッファ層33の機能は第1の化合物半導体層31に備えてもよい。
【0017】
化合物半導体機能層3はここではIII族窒化物系半導体材料により構成されている。代
表的なIII族窒化物系半導体はAl
xIn
yGa
1-x-yN(0≦x≦1、0≦y≦1、0≦x
+y≦1)により表される。更に、実施例1において、化合物半導体機能層3の第1の化
合物半導体層31のAl(アルミニウム)の組成比x1が0≦x1<1の範囲であり、第
2の化合物半導体層32のAlの組成比x2が0<x2≦1の範囲であり、Alの組成比
x2がAlの組成比x1に比べて大きい(x1<x2)関係にあるとき、第1の化合物半
導体層31はAl
x1Ga
1-x1Nにより表される窒化物半導体材料により構成され、第2の
化合物半導体層32はAl
x2Ga
1-x2Nにより表される窒化物半導体材料により構成され
る。例えば、化合物半導体機能層3は、AlGaNからなる第1の化合物半導体層31
とAlGaNからなる第2の化合物半導体層32との積層構造、又はGaNからなる第1
の化合物半導体層31とAlGaNからなる第2の化合物半導体層32との積層構造、又
はAlGaNからなる第1の化合物半導体層31とAlNからなる第2の化合物半導体層
32との積層構造により構成される。
【0018】
実施例1において、第1の化合物半導体層31の膜厚は例えば0.5μm−10.0μ
mに設定される。第1の化合物半導体層31にGaN層を使用する場合、このGaN層は
例えば3.0μmの膜厚に設定されたノンドープ層である。第2の化合物半導体層32の
膜厚は例えば5nm−100nmに設定され、第2の化合物半導体層32がAlGaN層
である場合、このAl組成は例えば0.1−0.4に設定される。具体的には、膜厚が2
5nm、Al組成が0.26に設定されたノンドープ層であるAlGaN層が使用される
。バッファ層33には、例えばGaN層とアルミニウムナイトライド(AlN)層とを交
互に複数積層した積層構造が使用される。
【0019】
化合物半導体機能層3において、第1の化合物半導体層31と第2の化合物半導体層3
2とのヘテロ接合界面近傍であって第1の化合物半導体層31の表面部分に、第1の化合
物半導体層31及び第2の化合物半導体層32の自発分極並びにピエゾ分極に基づく二次
元キャリアガスチャネル310が生成される。二次元キャリアガスチャネル310は化合
物半導体素子領域(ここでは、HEMT)10において高移動度を有する電子(キャリア)の
チャネル領域として機能する。なお、詳細な説明は省略するが、本発明はpチャネル導電
型HEMTにも利用可能であり、この場合には二次元キャリアガスチャネル310は二次
元正孔ガスチャネルになる。
【0020】
化合物半導体素子領域10は、
図1に示すように、二次元キャリアガスチャネル310を有する化合物半導体機能層3上に構成された第1の電極61と、化合物半導体機能層3上に構成され、二次元キャリアガスチャネル310とオーミック接続する第2の電極42と、第2の電極42との間で第1の電極61を挟むように二次元キャリアガスチャネル310とオーミック接続する第3の電極41とを備えている。化合物半導体素子領域(HEMT)10は、第3の電極41に印加される電位よりも高い電位が第2の電極42に印加され、第1の電極61がオン状態になると、第2の電極42から第3の電極41に電流が流れる(キャリアである電子は逆に流れる。)。
【0021】
ここでは、第2の電極42はドレイン電極として機能し、第3の電極41はソース電極
として機能する。第2の電極42及び第3の電極41は二次元キャリアガスチャネル31
0に対して低抵抗に接続するオーミック電極である。また、実施例1において、第3の電極41と第2の電極42の少なくとも一方は化合物半導体機能層3の第2の化合物半導体層32の表面から第1の化合物半導体層31の二次元キャリアガスチャネル310に向かって形成された接続孔(スルーホール又はビアホール)内に配設され、二次元キャリアガスチャネル310との間を低抵抗としてもよい。実施例1において、第2の電極42、第3の電極41は、いずれも例えば10nm−50nmの膜厚を有するTi(チタン)層と、このTi層上に積層され例えば25nm−1000nmの膜厚を有するAl層との積層膜により構成されている。
【0022】
第1の電極61は、制御電極或いはゲート電極であり、第2の化合物半導体層32上に配設される。
図1に示すように、実施例1において、第1の電極61は、第2の化合物半導体層32の表面からこの第2の化合物半導体層32内において二次元キャリアガスチャネル310に向かって掘り下げられたリセス(凹部又は窪み)に配設されても良い。
【0023】
外周領域11内の機能電極62は、第1の電極61と同様の電極材料で構成しても良い。機能電極62には、実施例1において、二次元キャリアガスチャネル310の導電型とは反対導電型であるp型金属酸化物が使用される。このp型金属酸化物には、酸化ニッケル(NiO
x、x=1〜2。)、酸化鉄、酸化コバルト、酸化マンガン、酸化銅のいずれかを実用的に使用することができる。ここでは、機能電極62には、例えば20nm−1000nmの膜厚を有するNiO
xが使用される。
【0024】
また、機能電極62にはp型窒化物半導体を使用することができる。p型窒化物半導体には、p型ドープAlGaN、p型ドープGaN、p型ドープInGaNのいずれかを実用的に使用することができる。例えば、機能電極62には、マグネシウム(Mg)をドープした80nm−120nmの膜厚を有するp型ドープGaNが使用される。
【0025】
これらの機能電極62に使用されるp型金属酸化物若しくはp型窒化物半導体は、単層膜により構成されるが、複数層の多層膜により構成してもよい。また、機能電極62は徐々に若しくは段階的にp型濃度を変化させてもよい。例えば、機能電極62のp型濃度は第2の窒化物半導体層32の表面から離れるに従って薄く設定される。更に、機能電極62は、p型金属酸化物半導体とp型窒化物半導体とを組み合わせた積層膜としてもよい。
【0026】
機能電極62にはp型金属酸化物若しくはp型窒化物半導体上に例えば10nm−1000nmの膜厚を有するニッケル(Ni)層を使用することができる。更にその上に例えば0.1μm−3.0μmの膜厚を有する金(Au)層、そしてその上に例えば5nm−100nmの膜厚を有するチタン(Ti)層を使用することができる。
【0027】
図2に示すように、機能電極62(外周領域11)は、ここでは化合物半導体素子領域10を囲むように化合物半導体機能層3の外縁に沿った全周にわたって延在している。機能電極62は上方から見て、化合物半導体素子10の外周囲を取り囲むリング形状を有している。機能電極62は、リーク電流をより確実に防止するために、外部端子を通して固定電位を印加している。例えば、外部端子は基板2に接続され、外部端子には基板2に印加される電位例えば接地電位と同一の電位が印加される。なお、機能電極62は固定電位を印加しないフローティング状態であってもよい。これにより、機能電極62は、全周に配設された場合と同等の機能を有する場合には、化合物半導体機能層3の外縁に沿った一部分具体的に断続的に配設してもよい。この機能電極62には二次元キャリアガスチャネル310の導電型(n型)とは反対導電型(p型)を有する第1の電極層601が生成されているので、三角形状のポテンシャル井戸が引き上げられ、伝導帯準位E
cのレベルはフェルミ準位E
fよりも高く押し上げられる。機能電極62は、その直下において二次元キャリアガスチャネル310をp型反転させ、ノーマリーオフ状態に保持し、化合物半導体機能層3の側壁を通じて化合物半導体素子10に流れ込むリーク電流を抑制することができる。
【0028】
図1に示すように、補助電極63は化合物半導体機能層3の外周領域11に設けられており、ここでは補助電極63は機能電極62よりも外側であって化合物半導体素子10を囲むように化合物半導体機能層3の外縁に沿った全周にわたって延在している。補助電極63の電極材料は、機能電極62と同じ電極材料であっても良いし、第3の電極41と同じ電極材料であっても良い。つまり、二次元キャリアガスチャネル310に影響を与える材料であっても良いし、与えない材料であっても良い。補助電極63は電位が与えられていないフローティング状態でもよいし、第3の電極(ソース電極)41と電気的に接続しても良い。
【0029】
化合物半導体機能層3上及び電極41、42、61、62、63上にTEOSからなる第1の絶縁樹脂層71が配置されている。第1の絶縁樹脂層71は、電極41、42、61、62、63等による段差を緩和し、電極41、42、61、62、63等上の第1の絶縁樹脂層71の上面と電極41、42、61、62、63等が設けられていない間の領域上の第1の絶縁樹脂層71の上面との間を比較的なだらかな面としている。第1の絶縁樹脂層71の上にはボンデジィングワイヤ又は金属板と接続する上部電極81、82が配置されている。上部電極81は第1の絶縁樹脂層71を貫通する穴内に設けられた接続電極83、85によって電極63と電気的に接続されている。ここで、
図1で示すように接続電極83と接続電極85との間に介在金属84を配置して、上部電極81は電極63と電気的に接続されている。
【0030】
また、
図1で示すように、電極42は第1の絶縁樹脂層71内に設けられた貫通孔内に設けられた接続電極86と接続電極88と、これらの間に介在金属87を配置している。これにより、電極42は第1の絶縁樹脂層71上の上部電極82と電気的に接続されている。
図1では図示していないが、別の切断した化合物半導体装置1の断面では、電極41と電極61も第1の絶縁樹脂層71を貫通する各々の穴内の接続電極を通じて第1の絶縁樹脂層71上の各々の上部電極と接続している。
【0031】
図2で示すように、補助電極63と上部電極を接続する接続部が設けられる穴(若しくは接続部)は化合物半導体素子10の外周であって化合物半導体機能層3の外縁に沿った全周に配置されている。これにより、第1の絶縁樹脂層71の側面はダイシングによって露出しているが、補助電極63と上部電極81を接続する接続部83,85が機能電極62を全周に亘り外側から囲むことで、第1の絶縁樹脂層71の側面側の外部から水分や水素の侵入を良好に抑制することが出来る。よって、機能電極62が水分や水素によって特性が劣化する材料であったとしても、機能電極62の外側を囲む補助電極63と接続した接続部83、85によって機能電極62に水分や水素が達することを抑制することができるので、機能電極62の特性劣化を抑制することができ、外部から水分が侵入したとしてもリーク電流の上昇を抑制することができる。
【0032】
また、補助電極63と接続した上部電極81上及び第1の絶縁樹脂層71の露出した上面を第2の絶縁樹脂層が覆っている。第2の絶縁樹脂層は例えばシリコン窒化膜 ,シリコン酸化膜またはポリイミドで構成され、第1の絶縁樹脂層71よりも密度が高い絶縁材料で構成されている。これにより、化合物半導体装置1の上方から侵入する水分又は水素を良好に抑制することが出来る。
また、
図1において図示していないが、第1の絶縁樹脂層71と化合物半導体機能層3との間には、NiO、酸化ハフニウム(HfO)、シリコン酸化(SiO
2)、シリコン窒化(Si
3N
4)、酸化アルミニウム(Al
2O
3)、酸化イットリウム(Y
2O
3)、酸化マグネシウム(MgO)のいずれかの絶縁膜を実用的に使用することができる。例えば、絶縁膜には2nm−500nmの膜厚を有するNiO層を使用することができる。
【0033】
素子分離溝91は補助電極63の外側であって、化合物半導体機能層3の外縁に沿った全周又は部分的に離間して複数配置されている。素子分離溝91はバッファ層33に達している例で示したが、少なくとも二次元キャリアガスチャネル310に達する深さまで形成されていれば良い。
【0034】
図2で示すように素子分離溝は内リングと外リングのように複数のリング状の溝で構成されていても良い。平面的に見て、上部電極81又は上部電極81と補助電極63とを接続する接続部83、85、介在金属84の少なくとも1つは素子分離溝よりも外側まで延伸している。素子分離溝を設けることにより化合物半導体装置は反り易くなるが、上部電極81又は上部電極81と補助電極63とを接続する接続部83、85、介在金属84の少なくとも1つをこのように設けることによって、化合物半導体装置1の反りによる破損等を抑制することができ、化合物半導体装置1の反りが生じる力に対する対応力を高める事ができる。
【0035】
(その他の実施例)
上記のように、本発明は複数の実施の形態によって記載されているが、この開示の一部
をなす論述及び図面はこの発明を限定するものでない。本発明は様々な代替実施の形態、
実施例及び運用技術に適用することができる。
【0036】
例えば、本発明は、前述の実施例1乃至実施例5に係る窒化物系化合物半導体装置1に
おいて、化合物半導体素子10の第1の電極61、外周領域11の機能電極62、補助電極63について、導電型を有しない例えばショットキー電極材料からなる構成としてもよい。
【0037】
更に、本発明は、前述の窒化物系化合物半導体装置1に代えて、第1の化合物半導体層
31をガリウム砒素(GaAs)とし、第2の化合物半導体層32をアルミニウムガリウ
ム砒素(AlGaAs)とする化合物半導体機能層3を備えた化合物半導体装置に適用可
能である。