【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成27年度、国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構「エネルギー・ 環境新技術先導プログラム/制御高度化により自動車等を省エネルギー化する低レイテンシコンピューティングの研究」の委託研究、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記一つの下部電極と前記他の一つの下部電極と前記イオン伝導層との間に介在し、前記一つの下部電極の前記掘り下げ箇所及び前記他の一つの下部電極の前記掘り下げ箇所に位置する開口部を備えるバリア絶縁膜をさらに含み、
前記イオン伝導層は、前記バリア絶縁膜の前記開口部を介して前記一つの下部電極の前記掘り下げ箇所及び前記他の一つの下部電極の前記掘り下げ箇所に接している、請求項6又は請求項7に記載の半導体装置。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の好ましい実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。具体的な本発明の実施形態の抵抗変化素子、半導体装置、及び半導体装置の製造方法について、説明する前に、本発明の最上位概念の実施形態の半導体装置について説明する。
図1(a)及び
図1(b)は、本発明の最上位概念の実施形態による半導体装置を説明するための断面模式図である。
【0016】
図1(a)及び
図1(b)の半導体装置は、半導体基板10上の多層配線層11の内部に抵抗変化素子12を含む半導体装置であって、抵抗変化素子12は、上部電極13と下部電極15との間に、イオン伝導層14が介在した構成である。そして
図1(a)及び
図1(b)の半導体装置では、抵抗変化素子12の下部電極15の表面に掘り下げ箇所が形成されている。
図1(a)では、掘り下げ箇所15cが、下部電極15の表面の中央部分に形成された状態を示している。
図1(b)では、掘り下げ箇所15pが、下部電極15の表面の少なくとも周辺部分に形成された状態を示している。そして、
図1(a)及び
図1(b)の半導体装置では、抵抗変化素子12のイオン伝導層14は下部電極15の表面の掘り下げ箇所に少なくとも接して形成されている。
【0017】
図1(a)及び
図1(b)の半導体装置によれば、下部電極15の表面に掘り下げ箇所が形成されており、イオン伝導層14が下部電極15の表面の掘り下げ箇所に少なくとも接して形成されている。これにより、多層配線層の内部に抵抗変化素子12を含む半導体装置において、抵抗変化素子12、特に抵抗変化素子12の上部電極13、への電気的接続の観点で微細化が容易になる。以下、本発明の具体的な実施形態について、参照しながら説明する。
【0018】
〔第1実施形態〕
初めに、本発明の第1実施形態による抵抗変化素子、半導体装置、及び半導体装置の製造方法について、説明する。本発明の第1実施形態の半導体装置として、多層配線層内部に抵抗変化素子の一例として2端子スイッチを含む半導体装置の構成について、説明する。
図2は、第1実施形態の「多層配線層内部に形成した2端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子の一構成例を模式的に示す断面図である。半導体基板101上の多層配線層の内部に、2端子スイッチ113を含む半導体装置である。
【0019】
多層配線層は、半導体基板101上に絶縁積層体を有する。絶縁積層体では、層間絶縁膜102、Low−k絶縁膜103、層間絶縁膜104、バリア絶縁膜107、保護絶縁膜114、層間絶縁膜115、Low−k絶縁膜116、層間絶縁膜117、及びバリア絶縁膜121の順に、積層されている。
【0020】
多層配線層は、層間絶縁膜104及びLow−k絶縁膜103に形成された配線溝に第1バリアメタルA106a及び第1バリアメタルB106bを介して第1配線A105a及び第1配線B105bが埋め込まれている。多層配線層は、層間絶縁膜117及びLow−k絶縁膜116に形成された配線溝に第2配線A118a及び第2配線B118bが埋め込まれている。層間絶縁膜115、保護絶縁膜114、及びハードマスク膜112に形成された下穴にビアA119a及びビアB119bが埋め込まれており、第2配線A118aとビアA119a及び第2配線B118bとビアB119bが一体となっている。さらに、第2配線A118aとビアA119a及び第2配線B118bとビアB119bの側面乃至底面が、第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bによって覆われている。
【0021】
多層配線層には、バリア絶縁膜107に形成された開口部にて、2端子スイッチ113が形成されている。2端子スイッチ113では、第1電極となる第1配線A105a、バリア絶縁膜107の開口部の壁面、乃至バリア絶縁膜107上に、イオン伝導層109、下部第2電極110、及び上部第2電極111の順に積層されている。上部第2電極111上にハードマスク膜112が形成されており、イオン伝導層109、下部第2電極110、上部第2電極111、及びハードマスク膜112の積層体の上面乃至側面が保護絶縁膜114で覆われている。第1配線A105aの一部を、「2端子スイッチ」113の下部電極とすることで、工程数を簡略化しながら、電極抵抗を下げることができる。通常の銅ダマシン配線プロセスに追加工程として、少なくとも2PRのマスクセットを作成するだけで、半導体装置に「2端子スイッチ」113を搭載することができ、素子の低抵抗化と低コスト化を同時に達成することができるようになる。イオン伝導層109は、第1イオン伝導層109a及び第2イオン伝導層109bを含む。
【0022】
図2の半導体装置では、「2端子スイッチ」113は、バリア絶縁膜107に形成された開口部の領域にて、第1イオン伝導層109aと第1配線A105aが直接接している。そして、第1イオン伝導層109aを構成する金属が第1配線A105aに拡散して、界面に合金層が形成されている。「2端子スイッチ」113の上部第2電極111上にて、ビアA119aと上部第2電極111とが第2バリアメタルA120aを介して電気的に接続されている。「2端子スイッチ」113は、電圧の印加、或いは電流を流すことで、オン/オフの制御を行う。「2端子スイッチ」113は例えば、第1イオン伝導層109a及び第2イオン伝導層109bへの、第1配線A105aを形成する金属から供給される金属イオンの電界拡散を利用して、オン/オフの制御を行う。
【0023】
さらに本実施形態の半導体装置では、バリア絶縁膜107に形成された開口部の領域にて、第1配線A105aは深さ方向に掘り下げられた掘り下げ箇所108を有する。第1イオン伝導層109aは、第1配線A105aと掘り下げ箇所108を介して接している。また
図2では、第1配線B105bとビアB119bの間に2端子スイッチは介さず、ビアB119bは第2バリアメタルB120bを介して第1配線B105bに接している。第1配線A105aと第1配線B105bとは例えば半導体基板101を基準として、同層に形成された配線である。
【0024】
本実施形態の半導体装置の2端子スイッチ113は、掘り下げ箇所108の分だけ深さ方向下に配置される。これにより、ビアA119aが第2バリアメタルA120aを介して上部第2電極111と接する高さと、ビアB119bが第2バリアメタルB120bを介して第1配線B105bに接する高さとの差を、少なくできる。
【0025】
具体的にはこの高さの差は、下部第2電極110の厚さ分程度となる。このため、ビアA119aとビアB119bを同じフォトマスクを用いて露光し、同時にプラズマエッチングで形成した場合、2端子スイッチ113にビアA119aとビアB119bの高さの差分のプラズマダメージが軽減される。その結果、2端子スイッチ113の素子性能劣化を抑制できる。
【0026】
半導体基板101は、半導体素子が形成された基板である。半導体基板101には、例えば、シリコン基板、単結晶基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、TFT(Thin Film Transistor)基板、液晶製造用基板等の基板を用いることができる。層間絶縁膜102は、半導体基板101上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜102には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜102は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0027】
Low−k絶縁膜103は、層間絶縁膜102、104間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜103には、第1配線A105a及び第1配線B105bを埋め込むための配線溝が形成されている。当該配線溝に、第1バリアメタルA106a及び第1バリアメタルB106bを介して、第1配線A105a及び第1配線B105bが埋め込まれている。
【0028】
層間絶縁膜104は、Low−k絶縁膜103上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜104には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜104は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜104には、第1配線A105a及び第1配線B105bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第1バリアメタルA106a及び第1バリアメタルB106bを介して第1配線A105a及び第1配線B105bが埋め込まれている。
【0029】
第1配線A105aは、層間絶縁膜104及びLow−k絶縁膜103に形成された配線溝に第1バリアメタルA106aを介して埋め込まれた配線である。第1配線A105aは、2端子スイッチ113の下部電極を兼ね、第1イオン伝導層109aと直接接している。第1イオン伝導層109aの上面は第2イオン伝導層109bに直接接しており、第2イオン伝導層109bの上面は下部第2電極110に直接接している。第1配線A105aを構成する金属には、イオン伝導層109において拡散、イオン電導可能な金属が用いられ、例えば、銅等を用いることができる。第1配線A105aを構成する金属(例えば、銅)は、アルミニウムと合金化されていてもよい。
【0030】
第1配線A105aはバリア絶縁膜107の開口面において、深さ方向下に掘り下げられている掘り下げ箇所108を有する。第1配線A105aと第1イオン伝導層109aは、掘り下げ箇所108を介して接している。掘り下げ箇所108と第1イオン伝導層109aとの界面には後述の第1イオン伝導層109aを構成する金属との合金層が形成されている。合金層は第1配線A105a全体に形成されているわけではなく、バリア絶縁膜107の開口面のみに形成されている。
【0031】
掘り下げ箇所108の形成は、第1配線A105aに接するバリア絶縁膜107の開口面形成後に、減圧下にて、ハロゲンガス、不活性ガス、フッ化炭素系ガス、又はそれらの混合ガスのプラズマを用い、ドライエッチング装置内で第1配線A105aを含む基板上に入射することで行う。この際、バリア絶縁膜107もエッチングされるが、2端子スイッチ113を形成しない第1配線B105bはプラズマに曝されず、掘り下げられない。
【0032】
第1配線B105bは、層間絶縁膜104及びLow−k絶縁膜103に形成された配線溝に第1バリアメタルB106bを介して埋め込まれた配線である。第1配線B105bは、バリア絶縁膜107の開口部において、ビアB119bと第2バリアメタルB120bを介して直接接している。
【0033】
第1バリアメタルA106a及び第1バリアメタルB106bは、第1配線A105a及び第1配線B105bを形成する金属が層間絶縁膜104や下層へ拡散することを防止するために、配線の側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。第1バリアメタルA106a及び第1バリアメタルB106bには、例えば、第1配線A105a及び第1配線B105bが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。
【0034】
バリア絶縁膜107は、第1配線A105a及び第1配線B105bを含む層間絶縁膜104上に形成される。バリア絶縁膜107は、第1配線A105a及び第1配線B105bを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割や、層間絶縁膜115中への第1配線A105a及び第1配線B105bを形成する金属の拡散を防ぐ役割を有する。さらにバリア絶縁膜107は、上部第2電極111、下部第2電極110、及びイオン伝導層109の加工時にエッチングストップ層としての役割を有する。バリア絶縁膜107には、例えば、SiC膜、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。バリア絶縁膜107は、保護絶縁膜114及びハードマスク膜112と同一材料であることが好ましい。
【0035】
第1イオン伝導層109a及び第2イオン伝導層109bは、抵抗が変化する膜である。第1配線A105a(下部電極)を形成する金属から生成される金属イオンの作用(拡散、イオン伝導など)により、抵抗が変化する材料を用いることができる。「オン」状態へのスイッチングに伴う「2端子スイッチ」113の抵抗変化を、金属イオンの還元による金属の析出によって行う場合には、イオン伝導可能な膜が用いられる。
【0036】
第2イオン伝導層109bは、プラズマCVD法を用いて形成する。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。原料の供給量は10〜200sccmとし、ヘリウムの供給量は原料気化器経由で500sccmとする。こうして形成された第2イオン伝導層109bは、シリコン、酸素、炭素を主成分としたポーラスポリマーであり、例えば比誘電率が2.1以上3.0以下である。
【0037】
第1イオン伝導層109aには、第1配線A105aを形成する金属が、第2イオン伝導層109bを堆積している間の加熱やプラズマで第2イオン伝導層109b中に拡散することを防止する役割がある。また第1イオン伝導層109aには、第1配線A105aが酸化され、第2イオン伝導層109bへの拡散が促進されやすくなることを防止する役割がある。第1イオン伝導層109aを形成する金属、例えば、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、チタンは、第1イオン伝導層109aを構成する金属の成膜後に第2イオン伝導層109bの成膜チャンバー内で減圧下において酸素雰囲気に曝される。酸素雰囲気に曝されて、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンとなり、イオン伝導層109の一部となる。第1イオン伝導層109aを形成する金属膜の最適膜厚は0.5〜1nmである。第1イオン伝導層109aの形成に使用する金属膜は、積層を形成したり、単層としたりしても良い。第1イオン伝導層109aの成膜はスパッタリングで行うことが好ましい。スパッタリングによりエネルギーを得た金属原子又はイオンは第1配線A105aに突入、拡散し、界面に合金層を形成する。
【0038】
イオン伝導層109は、第1配線A105a、バリア絶縁膜107の開口部に形成されている掘り下げ箇所108のテーパ面、バリア絶縁膜107のテーパ面乃至バリア絶縁膜107上に形成されている。イオン伝導層109は、第1配線A105aとイオン伝導層109の接続部の外周部分が少なくとも掘り下げ箇所108のテーパ面及びバリア絶縁膜107の開口部のテーパ面上に沿って、配設されている。
【0039】
下部第2電極110は、「2端子スイッチ」113の上部電極における下層側の電極であり、第2イオン伝導層109bと直接接している。下部第2電極110には、ルテニウムと、第1配線A105aを形成する金属と密着性の良いチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどを含有した合金を使用する。ここでルテニウムは、第1配線A105aを形成する金属よりもイオン化しにくく、第2イオン伝導層109bにおいて拡散、イオン伝導しにくい金属である。
【0040】
下部第2電極110の形成に使用されるルテニウム合金において、ルテニウムに添加される第1の金属は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムよりも負方向に大きい添加金属を選択することが望ましい。金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムより負方向に大きいチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムは、ルテニウムに比べて化学反応が自発的に起こりやすいことを示すため、反応性が高い。このため、下部第2電極110を形成するルテニウム合金において、ルテニウムと合金化することで、第1配線A105aを形成する金属で形成された金属架橋との密着性が向上する。一方、ルテニウムを含まないチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどの添加金属のみで下部第2電極110を構成すると、反応性が高くなってしまい、「オフ」状態に遷移しなくなる。「オン」状態から「オフ」状態への遷移は、金属架橋の酸化反応(溶解反応)によって進行する。下部第2電極110を構成する金属として、その金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが負方向に第1配線A105aを形成する金属よりも大きい金属を用いた場合、「オフ」状態に遷移できなくなる。これは、第1配線A105aを形成する金属で形成された金属架橋の酸化反応よりも下部第2電極110の酸化反応が進行するためである。このため、下部第2電極110の形成に使用する金属材料は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが銅よりも負方向に小さいルテニウムとの合金とする必要がある。さらに、下部第2電極110に金属架橋の成分である銅が混入すると、標準ギブズエネルギーが負方向に大きい金属を添加した効果が薄れるため、ルテニウムに添加する金属は銅及び銅イオンに対してバリア性のある材料が好ましい。例えば、タンタル、チタンなどである。一方、添加金属の量は大きいほど、「オン」状態が安定化することがわかっており、5atm%の添加によっても安定性が向上することがわかっている。特に添加金属をチタンとした場合にオフへの遷移とオン状態の安定性に優れており、特に下部第2電極110をルテニウムとチタンの合金とし、チタンの含有率を20atm%〜30atm%の範囲が好ましい。該ルテニウム合金における、ルテニウムの含有比率は、60atm%以上90atm%以下が望ましい。
【0041】
下部第2電極110の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて合金を成膜する場合、ルテニウムと第1の金属との合金ターゲットを用いる方法、ルテニウムターゲットと第1の金属のターゲットを同一チャンバー内で同時にスパッタリングするコスパッタ法、予め第1の金属の薄膜を形成し、その上に、スパッタリング法を用いてルテニウムを成膜し、衝突原子のエネルギーで合金化するインターミキシング法がある。コスパッタ法及びインターミキシング法を用いると、合金の組成を変えることができる。インターミキシング法を採用する際には、ルテニウムの成膜を完了した後に、混合状態の「平坦化」のため、400℃以下での熱処理を加えることが好ましい。
【0042】
上部第2電極111は、「2端子スイッチ」113の上部電極における上層側の電極であり、下部第2電極110上に形成されている。上部第2電極111は、下部第2電極110を保護する役割を有する。すなわち、上部第2電極111が下部第2電極110を保護することで、プロセス中の下部第2電極110へのダメージを抑制し、「2端子スイッチ」113のスイッチング特性を維持することができる。上部第2電極111には、例えば、タンタル、チタン、タングステン、或いはそれらの窒化物等を用いることができる。また、ビアA119aを下部第2電極110上に電気的に接続する場合に、上部第2電極111はエッチングストップ膜としての機能も有する。そのため、層間絶縁膜115のエッチングに使用するフッ化炭素系のガスのプラズマに対して、エッチング速度が小さいことが好ましい。
【0043】
上部第2電極111は金属の窒化物で構成される。特にエッチングストップ膜として機能し、導電性を有するチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムの窒化物が好ましい。上部第2電極111に窒化物ではない金属を使用すると、プロセス中の加熱やプラズマダメージで金属の一部が下部第2電極110内部に拡散することで、下部第2電極110内に欠陥が生じる可能性がある。さらにこれらの欠陥を起点として、イオン伝導層109の絶縁破壊電圧を低下させる可能性がある。上部第2電極111に電気伝導性を有する化合物であり、安定な金属窒化物を用いることで下部第2電極110への金属の拡散を防止できる。特に、上部第2電極111を構成する窒化物の金属と、下部第2電極110を構成するルテニウムと合金を形成する添加金属を同じ金属することが好ましい。これによりルテニウムと合金を形成する金属の拡散不良をより効率的に防止できる。例えば、下部第2電極110がルテニウムとチタンの合金電極である場合には、上部第2電極111は窒化チタン電極とすることが好ましい。或いは、下部第2電極110がルテニウムとタンタルの合金である場合には窒化タンタル電極とする。下部第2電極110と上部第2電極111を構成する金属成分を一致させることで、上部第2電極111の金属が万一上部第1電極110に拡散した場合にも、欠陥が形成し難くなる。この時、上部第1電極110を構成するルテニウム合金のルテニウムに対する金属の割合よりも、上部第2電極111を構成する窒化物の窒素に対する金属の割合を大きくする。このように割合を大きくすることで、下部第2電極110を構成する金属が上部第2電極111を構成する窒化物に拡散し、下部第2電極110を構成するルテニウム合金の組成が変化することを防止できる。具体的には、チタンの含有率が60atm%以上80atm%以下であることがより好ましい。
【0044】
上部第2電極111の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて金属窒化物を成膜する場合、窒素とアルゴンの混合ガスのプラズマを用いて金属ターゲットを蒸発させるリアクティブスパッタ法を用いることが好ましい。金属ターゲットより蒸発した金属は窒素と反応し、金属窒化物となって基板上に成膜される。
【0045】
より好ましい上部第2電極111の形成方法としては、ルテニウムターゲット電極と、第一の金属からなるターゲット電極の二つを用いたコスパッタとすることが好ましい。ルテニウムと第一の金属からなる合金ターゲットを用いた場合には、それぞれの材料のスパッタリングイールドが異なるため、連続して使用している組成にずれを生じるため、成膜される膜の組成を緻密に制御することができなくなる。一方、コスパッタ法については、あらかじめ各ターゲット電極に印加する電力を個別に設定することで、成膜させる膜の組成を精密に制御することができる。特に第一の金属として、チタン、或いはタンタルを用いた場合に効果が大きい。
【0046】
本実施形態の半導体装置では、第1配線A105aに掘り下げ箇所108を形成することによって、2端子スイッチ113を深さ方向下に配置できる。このため、ビアA119aをパターン形成する際に使用する、フッ素系、希ガス系、不活性ガス系、或いはそれらの混合ガスを用いたエッチング用プラズマに、上部第2電極111が曝される時間を低減できる。その結果、上部第2電極111が前記エッチングガスによってエッチングされる膜厚が減り、イオン伝導層109にプラズマダメージが蓄積されることを防ぐことができる。イオン伝導層109にプラズマダメージが蓄積すると、第1配線A105aを構成する金属がイオン伝導層109に拡散し易くなったり、イオン伝導層109がチャージアップによってダメージを受け、欠陥が増加したりすることで、2端子スイッチ113のリーク電流が増加し、特性ばらつきや信頼性の劣化が進行する。
【0047】
ハードマスク膜112は、上部第2電極111、上部第1電極110、及び第1イオン伝導層109a、第2イオン伝導層109bをエッチングする際のハードマスク膜兼パッシベーション膜となる膜である。ハードマスク膜112には、例えば、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。ハードマスク膜112は、保護絶縁膜114及びバリア絶縁膜107と同一材料を含むことが好ましい。すなわち、「2端子スイッチ」113の周囲を全て同一材料で囲むことで材料界面が一体化され、外部からの水分などの浸入を防ぐとともに、「2端子スイッチ」113自身からの脱離を防ぐことができるようになる。
【0048】
保護絶縁膜114は、「2端子スイッチ」113にダメージを与えることなく、さらに第2イオン伝導層109bからの酸素の脱離を防ぐ機能を有する絶縁膜である。保護絶縁膜114には、例えば、窒化シリコン膜、炭窒化シリコン膜等を用いることができる。保護絶縁膜114は、ハードマスク膜112及びバリア絶縁膜107と同一材料であることが好ましい。同一材料である場合には、保護絶縁膜114とバリア絶縁膜107及びハードマスク膜112とが一体化して、界面の密着性が向上し、「2端子スイッチ」113をより保護することができるようになる。
【0049】
層間絶縁膜115は、保護絶縁膜114上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜115には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜115は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜115は、層間絶縁膜117と同一材料としてもよい。層間絶縁膜115には、ビアA119a及びビアB119bを埋め込むための下穴が形成されており、当該下穴に第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bを介してビアA119a及びビアB119bが埋め込まれている。
【0050】
Low−k絶縁膜116は、層間絶縁膜115、117間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜116には、第2配線A118a及び第2配線B118bを埋め込むための配線溝が形成されている。当該配線溝に第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bを介して第2配線A118a及び第2配線B118bが埋め込まれている。
【0051】
層間絶縁膜117は、Low−k絶縁膜116上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜117には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)などを用いることができる。層間絶縁膜117は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜117は、層間絶縁膜115と同一材料としてもよい。層間絶縁膜117には、第2配線A118a及び第2配線B118bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bを介して第2配線A118a及び第2配線B118bが埋め込まれている。
【0052】
第2配線A118a及び第2配線B118bは、層間絶縁膜117及びLow−k絶縁膜116に形成された配線溝に第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bを介して埋め込まれた配線である。第2配線A118a及び第2配線B118bは、ビアA119a及びビアB119bと一体になっている。ビアA119a及びビアB119bは、層間絶縁膜115、及び保護絶縁膜114、ビアA119aについてはハードマスク膜112に形成された下穴に第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bを介して埋め込まれている。ビアA119a及びビアB119bは、第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bを介して上部第2電極111と電気的に接続されている。第2配線A118a及び第2配線B118bと、ビアA119a及びビアB119bには、例えば、銅を用いることができる。
【0053】
第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bは、第2配線A118a及び第2配線B118b、ビアA119a及びビアB119bの側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。この被覆によって、第2配線A118a及び第2配線B118b(ビアA119a及びビアB119bを含む)を形成する金属が層間絶縁膜115、117や下層へ拡散することを防止する。第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bには、例えば、第2配線A118a及び第2配線B118b、ビアA119a及びビアB119bが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bは、上部第2電極111と同一材料であることが好ましい。例えば、第2バリアメタルA120a及び第2バリアメタルB120bが窒化タンタル(下層)/タンタル(上層)の積層構造である場合には、下層材料である窒化タンタルを上部第2電極111に用いることが好ましい。
【0054】
バリア絶縁膜121は、第2配線A118a及び第2配線B118bを含む層間絶縁膜117上に形成され、第2配線A118a及び第2配線B118bを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割を有する絶縁膜である。またバリア絶縁膜121は、上層への第2配線A118a及び第2配線B118bを形成する金属の拡散を防ぐ役割を有する絶縁膜である。バリア絶縁膜121には、例えば、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。
【0055】
(実施態様1)
次に、上記第1実施形態に記載した、「2端子スイッチ」型スイッチング素子の効果について、
図3に従って説明する。また、素子構成の説明については
図2に記載の用語に従って説明する。
【0056】
図3は多層配線中に形成した「2端子スイッチ」型スイッチング素子に関して、背景技術の構造と本発明の第1実施形態の構造を並べて示した図である。上記第1実施形態の構造ではバリア絶縁膜107に形成された開口面において、第1配線A105aに深さ方向下に掘り下げた掘り下げ箇所108が形成されており、2端子スイッチ113が第1配線A105aの深さ方向下に配置されている。一方、背景技術の構造では掘り下げ箇所108が無いため、2端子スイッチ113はバリア絶縁膜107のテーパ面と第1配線A105aの直上に形成されている。上記第1実施形態の構造では、掘り下げ箇所108の直上の上部第2電極111に電気的に接続するようにビアA119aを落とすことで、第1配線B105bに直接接続するビアB119bとの高さの差が、背景技術の構造に比べて小さくなる。ビアA119aとビアB119bとを一つのマスクで露光し、一度にエッチングして形成する場合、ビアA119aとビアB119bの高さの差分、2端子スイッチ113の上部第2電極111はエッチング環境下に曝される。このため、ビアA119aとビアB119bの高さの差を小さくできる本発明の第1実施形態の構造では、イオン伝導層109へのプラズマダメージを低減できる。
【0057】
(実施態様2)
本実施形態の実施態様2として、「2端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子を多層配線層内部に形成した半導体装置の製造プロセスについて説明する。特に、「2端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子を多層配線層内部に形成する工程について説明する。
図4(a)乃至
図4(d)、
図5(a)乃至
図5(d)、及び
図6(a)乃至
図6(d)は、本発明の第1実施形態の半導体装置の製造方法の一例として、2端子スイッチング素子の製造工程を示す断面模式図である。
【0058】
(工程1)
図4(a)に示すように、半導体基板201(例えば、半導体素子が形成された基板)上に層間絶縁膜202(例えば、酸化シリコン膜、膜厚500nm)を堆積する。その後、層間絶縁膜202にLow−k絶縁膜203として比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜、膜厚150nm)を堆積する。その後、Low−k絶縁膜203上に層間絶縁膜204として酸化シリコン膜(例えば、酸化シリコン膜、膜厚100nm)を堆積する。その後、リソグラフィ法(フォトレジスト形成、ドライエッチング、フォトレジスト除去を含む)を用いて、層間絶縁膜202、Low−k絶縁膜203及び層間絶縁膜204に配線溝を形成する。
【0059】
その後、当該配線溝に第1バリアメタルA206a及び第1バリアメタルB206b(例えば、窒化タンタル/タンタル、膜厚5nm/5nm)を介して第1配線A205a及び第1配線B205b(例えば、銅)を埋め込む。層間絶縁膜202、204は、プラズマCVD法によって形成することができる。第1配線A205a及び第1配線B205bは、例えば、PVD法によってバリアメタル76(例えば、窒化タンタル/タンタルの積層膜)を形成し、PVD法による銅シードの形成後、電解めっき法によって銅を配線溝内に埋設し、200℃以上の温度で熱処理処理後、CMP(Chemical Mechanical Polishing)法によって配線溝内以外の余剰の銅を除去することで形成することができる。このような一連の銅配線の形成方法は、当該技術分野における一般的な手法を用いることができる。ここで、CMP法とは、多層配線形成プロセス中に生じるウェハ表面の凹凸を、研磨液をウェハ表面に流しながら回転させた研磨パッドに接触させて研磨することによって平坦化する方法である。溝に埋め込まれた余剰の銅を研磨することによって埋め込み配線(ダマシン配線)を形成したり、層間絶縁膜を研磨することで平坦化を行う。
【0060】
(工程2)
図4(b)に示すように、第1配線A205a及び第1配線B205bを含む層間絶縁膜204上にバリア絶縁膜207(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚30nm)を形成する。ここで、バリア絶縁膜207は、プラズマCVD法によって形成することができる。バリア絶縁膜207の膜厚は、10nm〜50nm程度であることが好ましい。
【0061】
(工程3)
図4(c)に示すように、バリア絶縁膜207上にハードマスク膜208(例えば、酸化シリコン膜、膜厚40nm)を形成する。このとき、ハードマスク膜208は、ドライエッチング加工におけるエッチング選択比を大きく保つ観点から、バリア絶縁膜207とは異なる材料であることが好ましく、絶縁膜であっても導電膜であってもよい。ハードマスク膜208には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化チタン、チタン、タンタル、窒化タンタル等を用いることができ、窒化シリコン膜/酸化シリコン膜の積層体を用いることができる。
【0062】
(工程4)
図4(d)に示すように、ハードマスク膜208上にフォトレジスト(図示せず)のパターンを形成し、フォトレジストをマスクとしてドライエッチングすることによりハードマスク膜208に開口部パターンを形成する。その後、酸素プラズマアッシング等によってフォトレジストを剥離する。このとき、上記ドライエッチングは必ずしもバリア絶縁膜207の上面で停止している必要はなく、バリア絶縁膜207の内部にまで到達していてもよい。
【0063】
(工程5)
図5(a)に示すように、ハードマスク膜208をマスクとして、ハードマスク膜208の開口部から露出するバリア絶縁膜207をエッチバック(ドライエッチング)することにより、バリア絶縁膜207に開口部207aを形成する。この開口部207aの形成により、バリア絶縁膜207の開口部207aから第1配線A205aを露出させる。その後、窒素及びアルゴンの混合ガスを用いたプラズマに曝すことで、第1配線A205aの露出面に形成された酸化銅を除去するとともに、エッチバック時に発生したエッチング副生成物などを除去する。さらに、ヘリウム、アルゴンや窒素などの不活性ガス、ハロゲンガス、フッ化炭素系ガス、或いは、それらの混合ガスを用いて、露出した第1配線A205aをドライエッチングし、掘り下げ箇所222を形成する。
【0064】
バリア絶縁膜207のエッチバックでは、反応性ドライエッチングを用いることで、バリア絶縁膜207の開口部207aの壁面をテーパ面とすることができる。反応性ドライエッチングでは、エッチングガスとしてフッ化炭素を含むガスを用いることができる。ハードマスク膜208は、エッチバック中に完全に除去されることが好ましいが、絶縁材料である場合にはそのまま残存してもよい。また、バリア絶縁膜207の開口部207aの形状は円形とし、円の直径は30nmから500nmとすることができる。掘り下げ箇所222の形成は、超高真空化(10
−5パスカル以下)においてRF(Radio Frequency:高周波)エッチングを行うことが望ましい。エッチングガスとしては、ヘリウム、アルゴンや窒素などの非反応性ガスを用いることが望ましい。また、エッチング時のバイアスパワー(ウェハ側への電離ガス引き込みパワー)は、掘り下げ箇所222の表面ラフネスを増加させないように、150W以下とすることが望ましい。高バイアスパワーのエッチングでは意図していない掘り下げ箇所が形成される場合があるが、この場合には、掘り下げられた箇所のラフネスが本発明の実施形態よりも増加する可能性が高い。表面ラフネスが増加した場合、2端子スイッチのスイッチング電圧、リーク電流および信頼性のばらつきが増加する危険性がある。この非反応性ガスを用いたエッチングは等方的に進行するため、掘り下げ箇所222の側面をテーパにできる。掘り下げ箇所222の形成のためのドライエッチングでバリア絶縁膜207の膜厚全てがエッチングされないよう、エッチングレートとエッチング時間を調整する。掘り下げ箇所222の高さ(深さ)は、5nmから20nm程度が望ましい。
【0065】
(工程6)
図5(b)に示すように、第1配線A205aを含むバリア絶縁膜207上にイオン伝導層209を形成する。まず、1nmのジルコニウムをスパッタリング法で堆積する。ジルコニウムは第2イオン伝導層209b形成時に酸化され、第1イオン伝導層209aを形成する。この際、掘り下げ箇所222の第1イオン伝導層209aに接している箇所に第1イオン伝導層209aを構成する金属が拡散し、合金層が自発的に形成される。さらに、350℃の温度で真空環境下にてアニールを行うことで、合金層の厚さを厚くすることができる。アニールは2分程度が好ましい。さらに、第2イオン伝導層209bとしてシリコン、酸素、炭素、水素を含むSiOCH系ポリマー膜をプラズマCVDによって形成する。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。原料の供給量は10〜200sccmとして、ヘリウムの供給量は原料気化器経由で500sccmとする。さらにヘリウムを、別ラインで反応室に直接500sccm供給する。バリア絶縁膜207の開口部207aは大気暴露によって水分などが付着しているため、第1イオン伝導層209aの堆積前に250℃から350℃程度の温度にて、減圧下で熱処理を加えて脱ガスしておくことが好ましい。
【0066】
(工程7)
図5(c)に示すように、イオン伝導層209上に下部第2電極210として、「ルテニウムとチタンの合金」を10nmの膜厚でコスパッタ法にて形成する。この際、ルテニウムターゲットとチタンターゲットは同一チャンバー内に存在し、同時にスパッタリングすることで合金膜を堆積する。この際、ルテニウムターゲットへの印加パワーを150W、チタンターゲットへの印加パワーを50Wとすることで、「ルテニウムとチタンの合金」中のルテニウムの含有率を75atm%とする。また、下部第2電極210の上に上部第2電極211を形成する。上部第2電極211として、窒化チタンを25nmの膜厚でリアクティブスパッタ法にて形成する。この際、チタンターゲットへの印加パワーを600Wとし、窒素ガスとアルゴンガスをチャンバー内に導入してスパッタリングする。この際、窒素の流量とアルゴンの流量を1:1とすることで、窒化チタン中のチタンの割合を70atm%とする。
【0067】
(工程8)
図5(d)に示すように、上部第2電極211上にハードマスク膜212(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚30nm)、及びハードマスク膜213(例えば、酸化シリコン膜、膜厚80nm)をこの順に積層する。ハードマスク膜212及びハードマスク膜213は、プラズマCVD法を用いて成膜することができる。ハードマスク膜212、213は当該技術分野における一般的なプラズマCVD法を用いて形成することができる。また、ハードマスク膜212とハードマスク膜213とは、異なる種類の膜であることが好ましく、例えば、ハードマスク膜212を窒化シリコン膜とし、ハードマスク膜213を酸化シリコン膜とすることができる。このとき、ハードマスク膜212は、後述する保護絶縁膜214及びバリア絶縁膜207と同一材料であることが好ましい。すなわち、2端子スイッチの周囲を全て同一材料で囲むことで材料界面を一体化し、外部からの水分などの浸入を防ぐとともに、2端子スイッチ自身の構成元素の脱離を防ぐことができるようになる。また、ハードマスク膜212は、プラズマCVD法によって形成することができるが、例えば、SiH
4/N
2の混合ガスの高密度プラズマによって形成された、高密度な窒化シリコン膜などを用いることが好ましい。
【0068】
(工程9)
図6(a)に示すように、ハードマスク膜213上に「2端子スイッチ」部をパターニングするためのフォトレジスト(図示せず)を形成し、その後、当該フォトレジストをマスクとして、ハードマスク膜212が表れるまでハードマスク膜213をドライエッチングする。その後、酸素プラズマアッシングと、有機剥離を用いてフォトレジストを除去する。
【0069】
(工程10)
図6(b)に示すように、ハードマスク膜213をマスクとして、ハードマスク膜212、上部第2電極211、下部第2電極210、イオン伝導層209を連続的にドライエッチングする。このとき、ハードマスク膜213は、エッチバック中に完全に除去されることが好ましいが、そのまま残存してもよい。例えば、上部第2電極211が窒化チタンの場合にはCl
2系のRIEで加工することができ、下部第2電極210がルテニウムとチタンの合金の場合には、Cl
2/O
2の混合ガスでRIE加工することができる。また、イオン伝導層209のエッチングでは、下面のバリア絶縁膜207上でドライエッチングを停止させる必要がある。イオン伝導層209がシリコン、酸素、炭素、水素を含むSiOCH系ポリマー膜であり、バリア絶縁膜207が窒化シリコン膜や炭窒化シリコン膜である場合には、CF
4系、CF
4/Cl
2系、CF
4/Cl
2/Ar系などの混合ガスでエッチング条件を調節することでRIE加工することができる。このようなハードマスクRIE法を用いることで、抵抗変化素子部をレジスト除去のための酸素プラズマアッシングに曝すことなく、抵抗変化素子部を加工することができる。また、加工後に酸素プラズマによって酸化処理する場合には、レジストの剥離時間に依存することなく酸化プラズマ処理を照射することができるようになる。
【0070】
(工程11)
図6(c)に示すように、ハードマスク膜212、上部第2電極211、下部第2電極210、及びイオン伝導層209を含むバリア絶縁膜207上に保護絶縁膜214(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚20nm)を堆積する。保護絶縁膜214は、プラズマCVD法によって形成することができるが、成膜前には反応室内で減圧下に維持する必要があり、このときイオン伝導層209の側面から酸素が脱離し、イオン伝導層209のリーク電流が増加するという問題が生じる。それらを抑制するためには、保護絶縁膜214の成膜温度を300℃以下とすることが好ましい。さらに、成膜前に減圧下で成膜ガスに曝されるため、還元性のガスを用いないことが好ましい。例えば、SiH
4/N
2の混合ガスの高密度プラズマによって、基板温度300℃で形成した窒化シリコン膜などを用いることが好ましい。
【0071】
(工程12)
図6(d)に示すように、保護絶縁膜214上に、層間絶縁膜215(例えば、酸化シリコン膜)、Low−k絶縁膜216として比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜、膜厚150nm)、層間絶縁膜217(例えば、酸化シリコン膜)をこの順に堆積する。その後、第2配線A218a及び第2配線B218b用の配線溝、及びビアA219a及びビアB219b用の下穴を形成する。さらに銅デュアルダマシン配線プロセスを用いて、当該配線溝及び当該下穴内に第2バリアメタルA220a及び第2バリアメタルB220b(例えば、窒化タンタル/タンタル)を介して第2配線A218a及び第2配線B218b(例えば、銅)及びビアA219a及びビアB219b(例えば、銅)を同時に形成する。その後、第2配線A218a及び第2配線B218bを含む層間絶縁膜217上にバリア絶縁膜221(例えば、窒化シリコン膜)を堆積する。第2配線A218a及び第2配線B218bの形成は、下層配線形成と同様のプロセスを用いることができる。このとき、第2バリアメタルA220aと上部第2電極211を同一材料とすることで第2バリアメタルA220aと上部第2電極211の間の接触抵抗を低減し、素子性能を向上させることができるようになる。層間絶縁膜215、Low−k絶縁膜216及び層間絶縁膜217はプラズマCVD法で形成することができる。「2端子スイッチ」によって形成される段差を解消するため、層間絶縁膜215を厚く堆積し、CMP法によって層間絶縁膜215を削り込んで平坦化し、層間絶縁膜215を所望の膜厚としてもよい。ビアA219a及びビアB219bを同じフォトマスクによる露光でパターニングし、同時にエッチングし、形成する。ビアA219aとビアB219bとの高さの差分だけ、上部第2電極211はエッチングに曝され、深さ方向下に掘り込まれる。
【0072】
(実施態様3)
本実施形態の実施態様3として、「多層配線層内部に形成した2端子スイッチ」の他の一構成例について説明する。
図7は、第1実施形態の「多層配線層内部に形成した2端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子の一構成例を模式的に示す断面図である。半導体基板301上の多層配線層の内部に2端子スイッチ313を含む半導体装置である。
【0073】
多層配線層は、半導体基板301上にて、層間絶縁膜302、Low−k絶縁膜303、層間絶縁膜304、バリア絶縁膜307、保護絶縁膜314、層間絶縁膜315、Low−k絶縁膜316、層間絶縁膜317、及びバリア絶縁膜321の順に積層した絶縁積層体を有する。多層配線層は、層間絶縁膜304及びLow−k絶縁膜303に形成された配線溝に第1バリアメタルA306a及び第1バリアメタルB306bを介して第1配線A305a及び第1配線B305bが埋め込まれている。多層配線層は、層間絶縁膜317及びLow−k絶縁膜316に形成された配線溝に第2配線A318a及び第2配線B318bが埋め込まれている。さらに、層間絶縁膜315、保護絶縁膜314、及びハードマスク膜312に形成された下穴にビアA319a及びビアB319bが埋め込まれている。さらに、第2配線A318aとビアA319a及び第2配線B318bとビアB319bが一体となっている。さらに、第2配線A318aとビアA319a及び第2配線B318bとビアB319bの側面乃至底面が、第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bによって覆われている。多層配線層は、バリア絶縁膜307に形成された開口部にて、第1電極となる第1配線A305a、第1配線A305aに接する層間絶縁膜304、バリア絶縁膜307の開口部の壁面、乃至バリア絶縁膜307上に、イオン伝導層309、下部第2電極310、及び上部第2電極311の順に積層した2端子スイッチ313が形成されている。上部第2電極311上にハードマスク膜312が形成されており、イオン伝導層309、下部第2電極310、上部第2電極311、及びハードマスク膜312の積層体の上面乃至側面が保護絶縁膜314で覆われている。第1配線A305aの一部を、「2端子スイッチ」313の下部電極とすることで、工程数を簡略化しながら、電極抵抗を下げることができる。通常の銅ダマシン配線プロセスに追加工程として、少なくとも2PRのマスクセットを作成するだけで、「2端子スイッチ」313を搭載することができ、素子の低抵抗化と低コスト化を同時に達成することができるようになる。
【0074】
「2端子スイッチ」313は、バリア絶縁膜307に形成された開口部の領域にて、第1イオン伝導層309aと第1配線A305a及び層間絶縁膜304の一部が直接接している。そして、第1イオン伝導層309aを構成する金属が第1配線A305aに拡散し、界面に合金層を形成している。「2端子スイッチ」313は、上部第2電極311上にてビアA319aと上部第2電極311とが第2バリアメタルA320aを介して電気的に接続されている。「2端子スイッチ」313は、電圧の印加、或いは電流を流すことで、オン/オフの制御を行う。例えば、第1イオン伝導層309a及び第2イオン伝導層309b中への第1配線A305aを形成する金属から供給される金属イオンの電界拡散を利用して、オン/オフの制御を行う。
【0075】
図7に示すように、バリア絶縁膜307に形成された開口部の領域にて、第1配線A305aと層間絶縁膜304のうち、第1配線A305aの側面に接する箇所は深さ方向に掘り下げられた掘り下げ箇所308を有する。第1イオン伝導層309aは第1配線A305a及び、層間絶縁膜304のうち、第1配線A305aの側面に接する箇所と掘り下げ箇所308を介して接している。また、第1配線B305bとビアB319bの間に2端子スイッチは介さず、ビアB319bは第2バリアメタルB320bを介して第1配線B305bに接している。
【0076】
2端子スイッチ313は、掘り下げ箇所308の分だけ深さ方向下に配置される。これにより、ビアA319aが第2バリアメタルA320aを介して上部第2電極311と接する高さと、ビアB319bは第2バリアメタルB320bを介して第1配線B305bに接する高さの差を少なくできる。具体的には下部第2電極310の厚さ分程度となる。このため、ビアA319aとビアB319bを同じフォトマスクを用いて露光し、同時にプラズマエッチングで形成した場合、2端子スイッチ313にビアA319aとビアB319bの高さの差分のプラズマダメージが軽減され、2端子スイッチ313の素子性能劣化を抑制できる。
【0077】
半導体基板301は、半導体素子が形成された基板である。半導体基板301には、例えば、シリコン基板、単結晶基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、TFT(Thin Film Transistor)基板、液晶製造用基板等の基板を用いることができる。層間絶縁膜302は、半導体基板301上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜302には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜302は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0078】
Low−k絶縁膜303は、層間絶縁膜302、304間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜303には、第1配線A305a及び第1配線B305bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第1バリアメタルA306a及び第1バリアメタルB306bを介して第1配線A305a及び第1配線B305bが埋め込まれている。
【0079】
層間絶縁膜304は、Low−k絶縁膜303上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜304には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜304は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜304には、第1配線A305a及び第1配線B305bを埋め込むための配線溝が形成されている。当該配線溝に第1バリアメタルA306a及び第1バリアメタルB306bを介して、第1配線A305a及び第1配線B305bが埋め込まれている。
【0080】
第1配線A305aは、層間絶縁膜304及びLow−k絶縁膜303に形成された配線溝に第1バリアメタルA306aを介して埋め込まれた配線である。第1配線A305aは、2端子スイッチ313の下部電極を兼ね、第1イオン伝導層309aと直接接している。第1イオン伝導層309aの上面は第2イオン伝導層309bに直接接しており、第2イオン伝導層309bの上面は下部第2電極310に直接接している。第1配線A305aを構成する金属には、イオン伝導層309において拡散、イオン伝導可能な金属が用いられ、例えば、銅等を用いることができる。第1配線A305aを構成する金属(例えば、銅)は、アルミニウムと合金化されていてもよい。第1配線A305a及び第1配線A305aに接する層間絶縁膜304の一部はバリア絶縁膜307の開口面において、深さ方向下に掘り下げられている掘り下げ箇所308を有する。第1配線A305aと第1イオン伝導層309aは、掘り下げ箇所308を介して接している。掘り下げ箇所308と第1イオン伝導層309aとの界面には後述の第1イオン伝導層309aを構成する金属との合金層が形成されている。合金層は第1配線A305a全体に形成されているわけではなく、バリア絶縁膜307の開口面のみに形成されている。後述の2端子スイッチ313は、掘り下げ箇所308の分だけ深さ方向下に配置される。これにより、ビアA319aが第2バリアメタルA320aを介して上部第2電極311と接する高さと、ビアB319bが第2バリアメタルB320bを介して第1配線B305bに接する高さの差を少なくできる。具体的には下部第2電極310の厚さ分程度となる。このため、ビアA319aとビアB319bを同じフォトマスクを用いて露光し、同時にプラズマエッチングで形成した場合、2端子スイッチ313にビアA319aとビアB319bの高さの差分のプラズマダメージが軽減され、2端子スイッチ313の素子性能劣化を抑制できる。掘り下げ箇所308の形成は、第1配線A305aに接するバリア絶縁膜307の開口面形成後に、ハロゲンガス、不活性ガス、又はフッ化炭素系ガス、或いはそれらの混合ガスを用いたプラズマを用い、ドライエッチング装置内で第1配線A305aを含む基板上に入射することで行う。この際、バリア絶縁膜307もエッチングされるが、2端子スイッチ313を形成しない第1配線B305bはプラズマに曝されず、掘り下げられない。
【0081】
第1配線B305bは、層間絶縁膜304及びLow−k絶縁膜303に形成された配線溝に第1バリアメタルB306bを介して埋め込まれた配線である。第1配線B305bは、バリア絶縁膜307の開口部において、ビアB319bと第2バリアメタルB320bを介して直接接している。
【0082】
第1バリアメタルA306a及び第1バリアメタルB306bは、第1配線A305a及び第1配線B305bを形成する金属が層間絶縁膜304や下層へ拡散することを防止するために、配線の側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。第1バリアメタルA306a及び第1バリアメタルB306bには、例えば、第1配線A305a及び第1配線B305bが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。
【0083】
バリア絶縁膜307は、第1配線A305a及び第1配線B305bを含む層間絶縁膜304上に形成され、第1配線A305a及び第1配線B305bを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割を有する。またバリア絶縁膜307は、層間絶縁膜315中への第1配線A305a及び第1配線B305bを形成する金属の拡散を防いだり、上部第2電極311、下部第2電極310、及びイオン伝導層309の加工時にエッチングストップ層としての役割を有する。バリア絶縁膜307には、例えば、SiC膜、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。バリア絶縁膜307は、保護絶縁膜314及びハードマスク膜312と同一材料であることが好ましい。
【0084】
第1イオン伝導層309a及び第2イオン伝導層309bは、抵抗が変化する膜である。第1配線A305a(下部電極)を形成する金属から生成される金属イオンの作用(拡散、イオン伝導など)により、抵抗が変化する材料を用いることができる。「オン」状態へのスイッチングに伴う「2端子スイッチ」313の抵抗変化を、金属イオンの還元による金属の析出によって行う場合には、イオン伝導可能な膜が用いられる。
【0085】
第2イオン伝導層309bは、プラズマCVD法を用いて形成する。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。原料の供給量は10〜200sccmとし、ヘリウムの供給量は原料気化器経由で500sccmとする。こうして形成された第2イオン伝導層309bは、シリコン、酸素、炭素を主成分としたポーラスポリマーであり、例えば比誘電率が2.1以上3.0以下である。
【0086】
第1イオン伝導層309aは、第1配線A305aを形成する金属が、第2イオン伝導層309bを堆積している間の加熱やプラズマで第2イオン伝導層309b中に拡散することを防止する役割がある。また第1イオン伝導層309aは、第1配線A305aが酸化され、第2イオン伝導層309bへの拡散が促進されやすくなることを防止する役割がある。第1イオン伝導層309aを形成する金属、例えば、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、チタンは、第1イオン伝導層309aを構成する金属の成膜後に第2イオン伝導層309bの成膜チャンバー内で減圧下において酸素雰囲気に曝される。酸素雰囲気に曝されて、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンとなり、イオン伝導層309の一部となる。第1イオン伝導層309aを形成する金属膜の最適膜厚は0.5〜1nmである。第1イオン伝導層309aの形成に使用する金属膜は、積層を形成したり、単層としたりしても良い。第1イオン伝導層309aの成膜はスパッタリングで行うことが好ましい。スパッタリングによりエネルギーを得た金属原子又はイオンは第1配線A305aに突入、拡散し、合金層を形成する。
【0087】
イオン伝導層309は、第1配線A305a、第1配線A305aの掘り下げ箇所308、バリア絶縁膜307の開口部に形成されている掘り下げ箇所のテーパ面、バリア絶縁膜307のテーパ面乃至バリア絶縁膜307、第1配線A305aに接する層間絶縁膜304の一部上に形成されている。イオン伝導層309は、第1配線A305aとイオン伝導層309の接続部の外周部分が少なくとも掘り下げ箇所308のテーパ面及びバリア絶縁膜307の開口部のテーパ面上に沿って、配設されている。
【0088】
下部第2電極310は、「2端子スイッチ」313の上部電極における下層側の電極であり、第2イオン伝導層309bと直接接している。下部第2電極310には、ルテニウムと、第1配線A305aを形成する金属と密着性の良いチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどが含有した合金を使用する。ここでルテニウムは、第1配線A305aを形成する金属よりもイオン化しにくく、第2イオン伝導層309bにおいて拡散、イオン伝導しにくい金属である。
【0089】
下部第2電極310の形成に使用されるルテニウム合金において、ルテニウムに添加される第1の金属は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムよりも負方向に大きい添加金属を選択することが望ましい。金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムより負方向に大きいチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムは、ルテニウムに比べて化学反応が自発的に起こりやすいことを示すため、反応性が高い。このため、下部第2電極310を形成するルテニウム合金において、ルテニウムと合金化することで、第1配線A305aを形成する金属で形成された金属架橋との密着性が向上する。一方、ルテニウムを含まないチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどの添加金属のみで下部第2電極310を構成すると、反応性が高くなってしまい、「オフ」状態に遷移しなくなる。「オン」状態から「オフ」状態への遷移は、金属架橋の酸化反応(溶解反応)によって進行する。下部第2電極310を構成する金属として、その金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが負方向に第1配線A305aを形成する金属よりも大きい金属を用いた場合、「オフ」状態に遷移できなくなる。これは第1配線A305aを形成する金属で形成された金属架橋の酸化反応よりも下部第2電極310の酸化反応が進行するためである。このため、下部第2電極310の形成に使用する金属材料は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが銅よりも負方向に小さいルテニウムとの合金とする必要がある。さらに、下部第2電極310に金属架橋の成分である銅が混入すると、標準ギブズエネルギーが負方向に大きい金属を添加した効果が薄れるため、ルテニウムに添加する金属は銅及び銅イオンに対してバリア性のある材料が好ましい。例えば、タンタル、チタンなどである。一方、添加金属の量は大きいほど、「オン」状態が安定化することがわかっており、5atm%の添加によっても安定性が向上することがわかっている。特に添加金属をチタンとした場合にオフへの遷移とオン状態の安定性に優れており、特に下部第2電極310をルテニウムとチタンの合金とし、チタンの含有率を20atm%〜30atm%の範囲が好ましい。該ルテニウム合金における、ルテニウムの含有比率は、60atm%以上90atm%以下が望ましい。
【0090】
下部第2電極310の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて合金を成膜する場合、ルテニウムと第1の金属との合金ターゲットを用いる方法、ルテニウムターゲットと第1の金属のターゲットを同一チャンバー内で同時にスパッタリングするコスパッタ法、予め第1の金属の薄膜を形成し、その上に、スパッタリング法を用いてルテニウムを成膜し、衝突原子のエネルギーで合金化するインターミキシング法がある。コスパッタ法及びインターミキシング法を用いると、合金の組成を変えることができる。インターミキシング法を採用する際には、ルテニウムの成膜を完了した後に、混合状態の「平坦化」のため、400℃以下での熱処理を加えることが好ましい。
【0091】
上部第2電極311は、「2端子スイッチ」313の上部電極における上層側の電極であり、下部第2電極310上に形成されている。上部第2電極311は、下部第2電極310を保護する役割を有する。すなわち、上部第2電極311が下部第2電極310を保護することで、プロセス中の下部第2電極310へのダメージを抑制し、「2端子スイッチ」313のスイッチング特性を維持することができる。上部第2電極311には、例えば、タンタル、チタン、タングステン、或いはそれらの窒化物等を用いることができる。また、上部第2電極311はビアA319aを下部第2電極310上に電気的に接続する場合に、エッチングストップ膜としての機能も有する。そのため、層間絶縁膜315のエッチングに使用するフッ化炭素系のガスのプラズマに対して、エッチング速度が小さいことが好ましい。
【0092】
上部第2電極311は金属の窒化物で構成される。特にエッチングストップ膜として機能し、導電性を有するチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムの窒化物が好ましい。上部第2電極311に窒化物ではない金属を使用すると、プロセス中の加熱やプラズマダメージで金属の一部が下部第2電極310内部に拡散することで、下部第2電極310内に欠陥が生じる可能性がある。これらの欠陥を起点として、イオン伝導層309の絶縁破壊電圧を低下させる可能性がある。上部第2電極311に電気伝導性を有する化合物であり、安定な金属窒化物を用いることで下部第2電極310への金属の拡散を防止できる。特に、上部第2電極311を構成する窒化物の金属と、下部第2電極310を構成するルテニウムと合金を形成する添加金属を同じ金属することが好ましい。これによりルテニウムと合金を形成する金属の拡散不良をより効率的に防止できる。例えば、下部第2電極310がルテニウムとチタンの合金電極である場合には、上部第2電極311は窒化チタン電極とすることが好ましい。或いは、下部第2電極310がルテニウムとタンタルの合金である場合には窒化タンタル電極とする。下部第2電極310と上部第2電極311を構成する金属成分を一致させることで、上部第2電極311の金属が万一上部第1電極310に拡散した場合にも、欠陥が形成し難くなる。この時、上部第1電極310を構成するルテニウム合金のルテニウムに対する金属の割合よりも、上部第2電極311を構成する窒化物の窒素に対する金属の割合を大きくする。このように割合を大きくすることで、下部第2電極310を構成する金属が上部第2電極311を構成する窒化物に拡散し、下部第2電極310を構成するルテニウム合金の組成が変化することを防止できる。具体的には、チタンの含有率が60atm%以上80atm%以下であることがより好ましい。
【0093】
上部第2電極311の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて金属窒化物を成膜する場合、窒素とアルゴンの混合ガスのプラズマを用いて金属ターゲットを蒸発させるリアクティブスパッタ法を用いることが好ましい。金属ターゲットより蒸発した金属は窒素と反応し、金属窒化物となって基板上に成膜される。
【0094】
より好ましい上部第2電極311の形成方法としては、ルテニウムターゲット電極と、第一の金属からなるターゲット電極の二つを用いたコスパッタとすることが好ましい。ルテニウムと第一の金属からなる合金ターゲットを用いた場合には、それぞれの材料のスパッタリングイールドが異なるため、連続して使用している組成にずれを生じるため、成膜される膜の組成を緻密に制御することができなくなる。一方、コスパッタ法については、あらかじめ各ターゲット電極に印加する電力を個別に設定することで、成膜させる膜の組成を精密に制御することができる。特に第一の金属として、チタン、或いはタンタルを用いた場合に効果が大きい。
【0095】
第1配線A305aに掘り下げ箇所308を形成することによって、2端子スイッチ313を深さ方向下に配置できる。このため、ビアA319aを形成する際に使用する、フッ素系、希ガス系、不活性ガス系、或いはそれらの混合ガスを用いたエッチング用プラズマに、上部第2電極311が曝される時間が低減できる。その結果、上部第2電極311が前記エッチングガスによってエッチングされる膜厚が減り、イオン伝導層309にプラズマダメージが蓄積されることを防ぐことができる。イオン伝導層309にプラズマダメージが蓄積すると、第1配線A305aを構成する金属がイオン伝導層309に拡散し易くなったり、イオン伝導層309がチャージアップによってダメージを受け、欠陥が増加したりすることで、2端子スイッチ313のリーク電流が増加し、特性ばらつきや信頼性の劣化が進行する。
【0096】
ハードマスク膜312は、上部第2電極311、上部第1電極310、及び第1イオン伝導層309a、第2イオン伝導層309bをエッチングする際のハードマスク膜兼パッシベーション膜となる膜である。ハードマスク膜312には、例えば、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。ハードマスク膜312は、保護絶縁膜314及びバリア絶縁膜307と同一材料を含むことが好ましい。すなわち、「2端子スイッチ」313の周囲を全て同一材料で囲むことで材料界面が一体化され、外部からの水分などの浸入を防ぐとともに、「2端子スイッチ」313自身の構成元素の脱離を防ぐことができるようになる。
【0097】
保護絶縁膜314は、「2端子スイッチ」313にダメージを与えることなく、さらに第2イオン伝導層309bからの酸素の脱離を防ぐ機能を有する絶縁膜である。保護絶縁膜314には、例えば、窒化シリコン膜、炭窒化シリコン膜等を用いることができる。保護絶縁膜314は、ハードマスク膜312及びバリア絶縁膜307と同一材料であることが好ましい。同一材料である場合には、保護絶縁膜314とバリア絶縁膜307及びハードマスク膜312とが一体化して、界面の密着性が向上し、「2端子スイッチ」313をより保護することができるようになる。
【0098】
層間絶縁膜315は、保護絶縁膜314上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜315には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜315は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜315は、層間絶縁膜317と同一材料としてもよい。層間絶縁膜315には、ビアA319a及びビアB319bを埋め込むための下穴が形成されており、当該下穴に第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bを介してビアA319a及びビアB319bが埋め込まれている。
【0099】
Low−k絶縁膜316は、層間絶縁膜315、317間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜316には、第2配線A318a及び第2配線B318bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bを介して第2配線A318a及び第2配線B318bが埋め込まれている。
【0100】
層間絶縁膜317は、Low−k絶縁膜316上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜317には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)などを用いることができる。層間絶縁膜317は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜317は、層間絶縁膜315と同一材料としてもよい。層間絶縁膜317には、第2配線A318a及び第2配線B318bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bを介して第2配線A318a及び第2配線B318bが埋め込まれている。
【0101】
第2配線A318a及び第2配線B318bは、層間絶縁膜317及びLow−k絶縁膜316に形成された配線溝に第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bを介して埋め込まれた配線である。第2配線A318a及び第2配線B318bは、ビアA319a及びビアB319bと一体になっている。ビアA319a及びビアB319bは、層間絶縁膜315、及び保護絶縁膜314、ビアA319aについてはハードマスク膜312に形成された下穴に第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bを介して埋め込まれている。ビアA319a及びビアB319bは、第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bを介して上部第2電極311と電気的に接続されている。第2配線A318a及び第2配線B318b及びビアA319a及びビアB319bには、例えば、銅を用いることができる。
【0102】
第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bは、第2配線A318a及び第2配線B318b、ビアA319a及びビアB319bの側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。この被覆によって、第2配線A318a及び第2配線B318b(ビアA319a及びビアB319bを含む)を形成する金属が層間絶縁膜315、317や下層へ拡散することを防止する。第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bには、例えば、第2配線A318a及び第2配線B318b、ビアA319a及びビアB319bが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bは、上部第2電極311と同一材料であることが好ましい。例えば、第2バリアメタルA320a及び第2バリアメタルB320bが窒化タンタル(下層)/タンタル(上層)の積層構造である場合には、下層材料である窒化タンタルを上部第2電極311に用いることが好ましい。
【0103】
バリア絶縁膜321は、第2配線A318a及び第2配線B318bを含む層間絶縁膜317上に形成され、第2配線A318a及び第2配線B318bを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割を有する絶縁膜である。またバリア絶縁膜321は、上層への第2配線A318a及び第2配線B318bを形成する金属の拡散を防ぐ役割を有する絶縁膜である。バリア絶縁膜321には、例えば、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。
【0104】
〔第2実施形態〕
次に、本発明の第2実施形態による抵抗変化素子、半導体装置、及び半導体装置の製造方法について、説明する。本発明の第2実施形態の半導体装置として、多層配線層内部に抵抗変化素子の一例として3端子スイッチを含む半導体装置の構成について、説明する。
図8は、第3実施形態の「多層配線層内部に形成した3端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子の一構成例を模式的に示す断面図である。半導体基板401上の多層配線層の内部に、3端子スイッチ413を含む半導体装置である。
【0105】
多層配線層は、半導体基板401上に絶縁積層体を有する。絶縁積層体では、層間絶縁膜402、Low−k絶縁膜403、層間絶縁膜404、バリア絶縁膜407、保護絶縁膜414、層間絶縁膜415、Low−k絶縁膜416、層間絶縁膜417、及びバリア絶縁膜421の順に、積層されている。
【0106】
多層配線層は、層間絶縁膜404及びLow−k絶縁膜403に形成された配線溝に第1バリアメタルA406a、第1バリアメタルB406b及び第1バリアメタルC406cを介して第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cが埋め込まれている。多層配線層は、層間絶縁膜417及びLow−k絶縁膜416に形成された配線溝に第2配線A418a及び第2配線B418bが埋め込まれている。さらに、層間絶縁膜415、保護絶縁膜414、及びハードマスク膜412に形成された下穴にビアA419a及びビアB419bが埋め込まれている。第2配線A418aとビアA419a及び第2配線B418bとビアB419bが一体となっている。さらに、第2配線A418aとビアA419a及び第2配線B418bとビアB419bの側面乃至底面が、第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bによって覆われている。
【0107】
多層配線層には、バリア絶縁膜407に形成された開口部にて、3端子スイッチ413が形成されている。3端子スイッチ413では、第1電極となる第1配線A405a及び第1配線B405c、第1配線A405a及び第1配線B405cに挟まれた層間絶縁膜404、バリア絶縁膜407の開口部の壁面、乃至バリア絶縁膜407上に、イオン伝導層409、下部第2電極410、及び上部第2電極411の順に積層されている。上部第2電極411上にハードマスク膜412が形成されており、イオン伝導層409、下部第2電極410、上部第2電極411、及びハードマスク膜412の積層体の上面乃至側面が保護絶縁膜414で覆われている。第1配線A405a及び第1配線B405bの一部を、「3端子スイッチ」413の下部電極とすることで、工程数を簡略化しながら、電極抵抗を下げることができる。通常の銅ダマシン配線プロセスに追加工程として、少なくとも2PRのマスクセットを作成するだけで、半導体装置に「3端子スイッチ」413を搭載することができ、素子の低抵抗化と低コスト化を同時に達成することができるようになる。イオン伝導層409は、第1イオン伝導層409a及び第2イオン伝導層409bを含む。
【0108】
図8の半導体装置では、「3端子スイッチ」413は、バリア絶縁膜407に形成された開口部の領域にて、第1イオン伝導層409aと第1配線A405a及び第1配線B405bが直接接している。そして、第1イオン伝導層409aを構成する金属が第1配線A405a及び第1配線B405bに拡散して、界面に合金層を形成している。「3端子スイッチ」413は、上部第2電極411上にてビアA419aと上部第2電極411とが第2バリアメタルA420aを介して電気的に接続されている。「3端子スイッチ」413は、電圧の印加、或いは電流を流すことで、オン/オフの制御を行う。例えば、第1イオン伝導層409a及び第2イオン伝導層409b中への第1配線A405a及び第1配線B405bを形成する金属から供給される金属イオンの電界拡散を利用して、オン/オフの制御を行う。
【0109】
さらに本実施形態の半導体装置では、バリア絶縁膜407に形成された開口部の領域にて、第1配線A405a及び第1配線B405bは深さ方向に掘り下げられた掘り下げ箇所408を有する。
図8では、第1配線A405aの掘り下げ箇所408及び第1配線B405bの掘り下げ箇所408に挟まれた層間絶縁膜404も、掘り下げられた状態を示している。第1イオン伝導層409aは、第1配線A405a及び第1配線B405bと掘り下げ箇所408を介して接している。また
図8では、第1配線C405cとビアB419bの間に3端子スイッチ413は介さず、ビアB419bは第2バリアメタルB420bを介して第1配線C405cに接している。第1配線A405a及び第1配線B405bと、第1配線C405cとは例えば半導体基板401を基準として、同層に形成された配線である。
【0110】
本実施形態の半導体装置の3端子スイッチ413は、掘り下げ箇所408の分だけ深さ方向下に配置される。これにより、ビアA419aが第2バリアメタルA420aを介して上部第2電極411と接する高さと、ビアB419bが第2バリアメタルB420bを介して第1配線B405bに接する高さの差を、少なくできる。
【0111】
具体的にはこの高さの差は、下部第2電極410の厚さ分程度となる。このため、ビアA419aとビアB419bを同じフォトマスクを用いて露光し、同時にプラズマエッチングして形成した場合、3端子スイッチ413にビアA419aとビアB419bの高さの差分のプラズマダメージが軽減される。その結果、3端子スイッチ413の素子性能劣化を抑制できる。
【0112】
半導体基板401は、半導体素子が形成された基板である。半導体基板401には、例えば、シリコン基板、単結晶基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、TFT(Thin Film Transistor)基板、液晶製造用基板等の基板を用いることができる。
【0113】
層間絶縁膜402は、半導体基板401上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜402には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜402は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0114】
Low−k絶縁膜403は、層間絶縁膜402、404間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜403には、第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cを埋め込むための配線溝が形成されている。当該配線溝に第1バリアメタルA406a、第1バリアメタルB406b及び第1バリアメタルC406cを介して、第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cが埋め込まれている。
【0115】
層間絶縁膜404は、Low−k絶縁膜403上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜404には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜404は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜404には、第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cを埋め込むための配線溝が形成されている。当該配線溝に第1バリアメタルA406a、第1バリアメタルB406b及び第1バリアメタルC406cを介して、第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cが埋め込まれている。第1配線A405a及び第1配線B405bに挟まれた層間絶縁膜404は掘り下げ箇所408の形成時に掘り下げられ、掘り下げ箇所408と同程度の高さになる。
【0116】
第1配線A405a及び第1配線B405bは、層間絶縁膜404及びLow−k絶縁膜403に形成された配線溝に第1バリアメタルA406a及び第1バリアメタルB406bを介して埋め込まれた配線である。第1配線A405a及び第1配線B405bは、3端子スイッチ413の下部電極を兼ね、第1イオン伝導層409aと直接接している。第1イオン伝導層409aの上面は第2イオン伝導層409bに直接接しており、第2イオン伝導層409bの上面は下部第2電極410に直接接している。第1配線A405aを構成する金属には、イオン伝導層409において拡散、イオン伝導可能な金属が用いられ、例えば、銅等を用いることができる。第1配線A405a及び第1配線B405bを構成する金属(例えば、銅)は、アルミニウムと合金化されていてもよい。
【0117】
第1配線A405a及び第1配線B405bはバリア絶縁膜407の開口面において、深さ方向下に掘り下げられている掘り下げ箇所408を有する。第1配線A405a及び第1配線B405bと第1イオン伝導層409aは、掘り下げ箇所408を介して接している。掘り下げ箇所408と第1イオン伝導層409aとの界面には、後述の第1イオン伝導層409aを構成する金属との合金層が形成されている。合金層は第1配線A405a及び第1配線B405b全体に形成されているわけではなく、バリア絶縁膜407の開口面のみに形成されている。
【0118】
掘り下げ箇所408の形成は、第1配線A405a及び第1配線B405bに接するバリア絶縁膜407の開口面形成後に、減圧下にて、ハロゲンガス、不活性ガス、又はフッ化炭素系ガス、或いはそれらの混合ガスを用いたプラズマを用い、ドライエッチング装置内で第1配線A405a及び第1配線B405b、層間絶縁膜404を含む基板上に入射することで行う。この際、バリア絶縁膜407もエッチングされるが、3端子スイッチ413を形成しない第1配線C405cはプラズマに曝されず、掘り下げられない。
【0119】
第1配線C405cは、層間絶縁膜404及びLow−k絶縁膜303に形成された配線溝に第1バリアメタルC406cを介して埋め込まれた配線である。第1配線C405cは、バリア絶縁膜407の開口部において、ビアB419bと第2バリアメタルB420bを介して直接接している。
【0120】
第1バリアメタルA406a、第1バリアメタルB406b及び第1バリアメタルC406cは、配線の側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。この被覆によって、第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cを形成する金属が層間絶縁膜404や下層へ拡散することを防止する。第1バリアメタルA406a、第1バリアメタルB406b及び第1バリアメタルC406cには、例えば、第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。
【0121】
バリア絶縁膜407は、第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cを含む層間絶縁膜404上に形成され、第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割を有する。さらにバリア絶縁膜407は、層間絶縁膜415中への第1配線A405a、第1配線B405b及び第1配線C405cを形成する金属の拡散を防ぐ役割を有する。さらにバリア絶縁膜407は、上部第2電極411、下部第2電極410、及びイオン伝導層409の加工時にエッチングストップ層としての役割を有する。バリア絶縁膜407には、例えば、SiC膜、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。バリア絶縁膜407は、保護絶縁膜414及びハードマスク膜412と同一材料であることが好ましい。
【0122】
第1イオン伝導層409a及び第2イオン伝導層409bは、抵抗が変化する膜である。第1配線A405a及び第1配線B405b(下部電極)を形成する金属から生成される金属イオンの作用(拡散、イオン伝導など)により、抵抗が変化する材料を用いることができる。「オン」状態へのスイッチングに伴う「3端子スイッチ」413の抵抗変化を、金属イオンの還元による金属の析出によって行う場合には、イオン伝導可能な膜が用いられる。
【0123】
第2イオン伝導層409bは、プラズマCVD法を用いて形成する。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。原料の供給量は10〜200sccmとし、ヘリウムの供給量は原料気化器経由で500sccmとする。こうして形成された第2イオン伝導層409bは、シリコン、酸素、炭素を主成分としたポーラスポリマーであり、例えば比誘電率が2.1以上3.0以下である。
【0124】
第1イオン伝導層409aは、第1配線A405a及び第1配線B405bを形成する金属が、第2イオン伝導層409bを堆積している間の加熱やプラズマで第2イオン伝導層409b中に拡散することを防止する役割がある。また第1イオン伝導層409aは、第1配線A405aが酸化され、第2イオン伝導層409bへの拡散が促進されやすくなることを防止する役割がある。第1イオン伝導層409aを形成する金属、例えば、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、チタンは、第1イオン伝導層409aを構成する金属の成膜後に第2イオン伝導層409bの成膜チャンバー内で減圧下において酸素雰囲気に曝される。酸素雰囲気に曝されて、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンとなり、イオン伝導層409の一部となる。第1イオン伝導層409aを形成する金属膜の最適膜厚は0.5〜1nmである。第1イオン伝導層409aの形成に使用する金属膜は、積層を形成したり、単層としたりしても良い。第1イオン伝導層409aの成膜はスパッタリングで行うことが好ましい。スパッタリングによりエネルギーを得た金属原子又はイオンは第1配線A405a及び第1配線B405bに突入、拡散し、合金層を形成する。
【0125】
イオン伝導層409は、第1配線A405a及び第1配線B405b、第1配線A405a及び第1配線B405bに挟まれた層間絶縁膜404、バリア絶縁膜407の開口部に形成されている掘り下げ箇所408のテーパ面、バリア絶縁膜407のテーパ面乃至バリア絶縁膜407上に形成されている。イオン伝導層409は、第1配線A405a及び第1配線B405bとイオン伝導層409の接続部の外周部分が少なくとも掘り下げ箇所408のテーパ面及びバリア絶縁膜407の開口部のテーパ面、第1配線A405a及び第1配線B405bに挟まれた層間絶縁膜407上に沿って、配設されている。
【0126】
下部第2電極410は、「3端子スイッチ」413の上部電極における下層側の電極であり、第2イオン伝導層409bと直接接している。下部第2電極410には、ルテニウムと、第1配線A405a及び第1配線B405bを形成する金属と密着性の良いチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどが含有した合金を使用する。ここでルテニウムは、第1配線A405a及び第1配線B405bを形成する金属よりもイオン化しにくく、第2イオン伝導層409bにおいて拡散、イオン伝導しにくい金属である。
【0127】
下部第2電極410の形成に使用されるルテニウム合金において、ルテニウムに添加される第1の金属は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムよりも負方向に大きい添加金属を選択することが望ましい。金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムより負方向に大きいチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムは、ルテニウムに比べて化学反応が自発的に起こりやすいことを示すため、反応性が高い。このため、下部第2電極410を形成するルテニウム合金において、ルテニウムと合金化することで、第1配線A405a及び第1配線B405bを形成する金属で形成された金属架橋との密着性が向上する。一方、ルテニウムを含まないチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどの添加金属のみで下部第2電極410を構成すると、反応性が高くなってしまい、「オフ」状態に遷移しなくなる。「オン」状態から「オフ」状態への遷移は、金属架橋の酸化反応(溶解反応)によって進行する。下部第2電極410を構成する金属として、その金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが負方向に第1配線A405a及び第1配線B405bを形成する金属よりも大きい金属を用いた場合、「オフ」状態に遷移できなくなる。これは第1配線A405a及び第1配線B405bを形成する金属で形成された金属架橋の酸化反応よりも下部第2電極410の酸化反応が進行するためである。このため、下部第2電極410の形成に使用する金属材料は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが銅よりも負方向に小さいルテニウムとの合金とする必要がある。さらに、下部第2電極410に金属架橋の成分である銅が混入すると、標準ギブズエネルギーが負方向に大きい金属を添加した効果が薄れるため、ルテニウムに添加する金属は銅及び銅イオンに対してバリア性のある材料が好ましい。例えば、タンタル、チタンなどである。一方、添加金属の量は大きいほど、「オン」状態が安定化することがわかっており、5atm%の添加によっても安定性が向上することがわかっている。特に添加金属をチタンとした場合にオフへの遷移とオン状態の安定性に優れており、特に下部第2電極410をルテニウムとチタンの合金とし、チタンの含有率を20atm%〜30atm%の範囲が好ましい。該ルテニウム合金における、ルテニウムの含有比率は、60atm%以上90atm%以下が望ましい。
【0128】
下部第2電極410の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて合金を成膜する場合、ルテニウムと第1の金属との合金ターゲットを用いる方法、ルテニウムターゲットと第1の金属のターゲットを同一チャンバー内で同時にスパッタリングするコスパッタ法、予め第1の金属の薄膜を形成し、その上に、スパッタリング法を用いてルテニウムを成膜し、衝突原子のエネルギーで合金化するインターミキシング法がある。コスパッタ法及びインターミキシング法を用いると、合金の組成を変えることができる。インターミキシング法を採用する際には、ルテニウムの成膜を完了した後に、混合状態の「平坦化」のため、400℃以下での熱処理を加えることが好ましい。
【0129】
上部第2電極411は、「3端子スイッチ」413の上部電極における上層側の電極であり、下部第2電極410上に形成されている。上部第2電極411は、下部第2電極410を保護する役割を有する。すなわち、上部第2電極411が下部第2電極410を保護することで、プロセス中の下部第2電極410へのダメージを抑制し、「3端子スイッチ」413のスイッチング特性を維持することができる。上部第2電極411には、例えば、タンタル、チタン、タングステン、或いはそれらの窒化物等を用いることができる。また、上部第2電極411はビアA419aを下部第2電極410上に電気的に接続する場合に、エッチングストップ膜としての機能も有する。そのため、層間絶縁膜415のエッチングに使用するフッ化炭素系のガスのプラズマに対して、エッチング速度が小さいことが好ましい。
【0130】
上部第2電極411は金属の窒化物で構成される。特にエッチングストップ膜として機能し、導電性を有するチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムの窒化物が好ましい。上部第2電極411に窒化物ではない金属を使用すると、プロセス中の加熱やプラズマダメージで金属の一部が下部第2電極410内部に拡散することで、下部第2電極411内に欠陥が生じる可能性がある。これらの欠陥を起点として、イオン伝導層409の絶縁破壊電圧を低下させる可能性がある。上部第2電極411に電気伝導性を有する化合物であり、安定な金属窒化物を用いることで下部第2電極410への金属の拡散を防止できる。特に、上部第2電極411を構成する窒化物の金属と、下部第2電極410を構成するルテニウムと合金を形成する添加金属を同じ金属することが好ましい。これによりルテニウムと合金を形成する金属の拡散不良をより効率的に防止できる。例えば、下部第2電極410がルテニウムとチタンの合金電極である場合には、上部第2電極411は窒化チタン電極とすることが好ましい。或いは、下部第2電極410がルテニウムとタンタルの合金である場合には窒化タンタル電極とする。下部第2電極410と上部第2電極411を構成する金属成分を一致させることで、上部第2電極411の金属が万一下部第2電極410に拡散した場合にも、欠陥が形成し難くなる。この時、下部第2電極410を構成するルテニウム合金のルテニウムに対する金属の割合よりも、上部第2電極411を構成する窒化物の窒素に対する金属の割合を大きくする。このように割合を大きくすることで、下部第2電極410を構成する金属が上部第2電極411を構成する窒化物に拡散し、下部第2電極410を構成するルテニウム合金の組成が変化することを防止できる。具体的には、チタンの含有率が60atm%以上80atm%以下であることがより好ましい。
【0131】
上部第2電極411の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて金属窒化物を成膜する場合、窒素とアルゴンの混合ガスのプラズマを用いて金属ターゲットを蒸発させるリアクティブスパッタ法を用いることが好ましい。金属ターゲットより蒸発した金属は窒素と反応し、金属窒化物となって基板上に成膜される。
【0132】
より好ましい上部第2電極411の形成方法としては、ルテニウムターゲット電極と、第一の金属からなるターゲット電極の二つを用いたコスパッタとすることが好ましい。ルテニウムと第一の金属からなる合金ターゲットを用いた場合には、それぞれの材料のスパッタリングイールドが異なるため、連続して使用している組成にずれを生じるため、成膜される膜の組成を緻密に制御することができなくなる。一方、コスパッタ法については、あらかじめ各ターゲット電極に印加する電力を個別に設定することで、成膜させる膜の組成を精密に制御することができる。特に第一の金属として、チタン、或いはタンタルを用いた場合に効果が大きい。
【0133】
本実施形態の半導体装置では、第1配線A405a及び第1配線B405bに掘り下げ箇所408を形成し、第1配線A405a及び第1配線B405bに挟まれた層間絶縁膜404に掘り下げ箇所を形成することによって、3端子スイッチ413を深さ方向下に配置できる。このため、ビアA419aをパターン形成する際に使用する、フッ素系、希ガス系、不活性ガス系、或いはそれらの混合ガスを用いたエッチング用プラズマに、上部第2電極411が曝される時間を低減できる。その結果、上部第2電極411が前記エッチングガスによってエッチングされる膜厚が減り、イオン伝導層409にプラズマダメージが蓄積されることを防ぐことができる。イオン伝導層409にプラズマダメージが蓄積すると、第1配線A405a及び第1配線B405bを構成する金属がイオン伝導層409に拡散し易くなったり、イオン伝導層409がチャージアップによってダメージを受け、欠陥が増加したりすることで、3端子スイッチ413のリーク電流が増加し、特性ばらつきや信頼性の劣化が進行する。
【0134】
ハードマスク膜412は、上部第2電極411、下部第2電極410、及び第1イオン伝導層409a、第2イオン伝導層409bをエッチングする際のハードマスク膜兼パッシベーション膜となる膜である。ハードマスク膜412には、例えば、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。ハードマスク膜412は、保護絶縁膜414及びバリア絶縁膜407と同一材料を含むことが好ましい。すなわち、「3端子スイッチ」413の周囲を全て同一材料で囲むことで材料界面が一体化され、外部からの水分などの浸入を防ぐとともに、「3端子スイッチ」413自身からの脱離を防ぐことができるようになる。
【0135】
保護絶縁膜414は、「3端子スイッチ」413にダメージを与えることなく、さらに第2イオン伝導層409bからの酸素の脱離を防ぐ機能を有する絶縁膜である。保護絶縁膜414には、例えば、窒化シリコン膜、炭窒化シリコン膜等を用いることができる。保護絶縁膜414は、ハードマスク膜412及びバリア絶縁膜407と同一材料であることが好ましい。同一材料である場合には、保護絶縁膜414とバリア絶縁膜407及びハードマスク膜412とが一体化して、界面の密着性が向上し、「3端子スイッチ」413をより保護することができるようになる。
【0136】
層間絶縁膜415は、保護絶縁膜414上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜415には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜415は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜415は、層間絶縁膜417と同一材料としてもよい。層間絶縁膜415には、ビアA419a及びビアB419bを埋め込むための下穴が形成されており、当該下穴に第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bを介してビアA419a及びビアB419bが埋め込まれている。
【0137】
Low−k絶縁膜416は、層間絶縁膜415、417間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜416には、第2配線A418a及び第2配線B418bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bを介して第2配線A418a及び第2配線B418bが埋め込まれている。
【0138】
層間絶縁膜417は、Low−k絶縁膜416上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜417には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)などを用いることができる。層間絶縁膜417は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜417は、層間絶縁膜415と同一材料としてもよい。層間絶縁膜417には、第2配線A418a及び第2配線B418bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bを介して第2配線A418a及び第2配線B418bが埋め込まれている。
【0139】
第2配線A418a及び第2配線B418bは、層間絶縁膜417及びLow−k絶縁膜416に形成された配線溝に第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bを介して埋め込まれた配線である。第2配線A418a及び第2配線B418bは、ビアA419a及びビアB419bと一体になっている。ビアA419a及びビアB419bは、層間絶縁膜415、及び保護絶縁膜414、ビアA419aについてはハードマスク膜412に形成された下穴に第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bを介して埋め込まれている。ビアA419a及びビアB419bは、第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bを介して上部第2電極411と電気的に接続されている。第2配線A418a及び第2配線B418bと、ビアA419a及びビアB419bには、例えば、銅を用いることができる。
【0140】
第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bは、第2配線A418a及び第2配線B418b、ビアA419a及びビアB419bの側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。この被覆によって、第2配線A418a及び第2配線B418b(ビアA419a及びビアB419bを含む)を形成する金属が層間絶縁膜415、417や下層へ拡散することを防止する。第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bには、例えば、第2配線A418a及び第2配線B418b、ビアA419a及びビアB419bが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bは、上部第2電極411と同一材料であることが好ましい。例えば、第2バリアメタルA420a及び第2バリアメタルB420bが窒化タンタル(下層)/タンタル(上層)の積層構造である場合には、下層材料である窒化タンタルを上部第2電極411に用いることが好ましい。
【0141】
バリア絶縁膜421は、第2配線A418a及び第2配線B418bを含む層間絶縁膜417上に形成され、第2配線A418a及び第2配線B418bを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割を有する絶縁膜である。またバリア絶縁膜421は、上層への第2配線A418a及び第2配線B418bを形成する金属の拡散を防ぐ役割を有する絶縁膜である。バリア絶縁膜421には、例えば、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。
【0142】
(実施態様1)
次に、本実施形態の「3端子スイッチ」型スイッチング素子の効果について、
図9に従って説明する。また、素子構成の説明については
図8に記載の用語に従って説明する。
【0143】
図9は多層配線中に形成した「3端子スイッチ」型スイッチング素子に関して、背景技術の構造と本実施形態の構造を並べて示した図である。上記第2実施形態の構造ではバリア絶縁膜407に形成された開口面において、第1配線A405a及び第1配線B405b、第1配線A405a及び第1配線B405bに挟まれた層間絶縁膜404に深さ方向下に掘り下げた掘り下げ箇所408が形成されている。これにより、3端子スイッチ413が第1配線A405a及び第1配線B405bの深さ方向下に配置されている。一方、背景技術の構造では掘り下げ箇所408が無いため、3端子スイッチ413はバリア絶縁膜407のテーパ面と第1配線A405a及び第1配線B405bの直上に形成されている。上記第2実施形態の構造では、掘り下げ箇所408の直上の上部第2電極411に電気的に接続するようにビアA419aを落とすことで、第1配線C405cに直接接続するビアB419bとの高さの差が、背景技術の構造に比べて小さくなる。ビアA419aとビアB419bを一つのマスクで露光し、一度にエッチングして形成する場合、ビアA419aとビアB419bの高さの差分、3端子スイッチ413の上部第2電極411はエッチング環境下に曝される。このため、ビアA419aとビアB419bの高さの差を小さくできる本発明の第2実施形態の構造では、イオン伝導層409へのプラズマダメージを低減できる。
【0144】
(実施態様2)
本実施形態の実施態様2として、「3端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子を多層配線層内部に形成した半導体装置の製造プロセスについて説明する。特に、「3端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子を多層配線層内部に形成する工程について説明する。
図10(a)乃至
図10(d)、
図11(a)乃至
図11(d)、及び
図12(a)乃至
図12(d)は、本発明の第2実施形態の半導体装置の製造方法の一例として、3端子スイッチング素子の製造工程を示す断面模式図である。
【0145】
(工程1)
図10(a)に示すように、半導体基板501(例えば、半導体素子が形成された基板)上に層間絶縁膜502(例えば、酸化シリコン膜、膜厚500nm)を堆積する。その後、層間絶縁膜502にLow−k絶縁膜503として比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜、膜厚150nm)を堆積する。その後、Low−k絶縁膜503上に層間絶縁膜504として酸化シリコン膜(例えば、酸化シリコン膜、膜厚100nm)を堆積する。その後、リソグラフィ法(フォトレジスト形成、ドライエッチング、フォトレジスト除去を含む)を用いて、層間絶縁膜502、Low−k絶縁膜503及び層間絶縁膜504に配線溝を形成する。
【0146】
その後、当該配線溝に第1バリアメタルA506a、第1バリアメタルB506b及び第1バリアメタルC506c(例えば、窒化タンタル/タンタル、膜厚5nm/5nm)を介して第1配線A505a、第1配線B505b及び第1配線C505c(例えば、銅)を埋め込む。層間絶縁膜502、504は、プラズマCVD法によって形成することができる。第1配線A505a、第1配線B505b及び第1配線C505cは、例えば、PVD法によって第1バリアメタルB506b及び第1バリアメタルC506c(例えば、窒化タンタル/タンタルの積層膜)を形成し、PVD法による銅シードの形成後、電解めっき法によって銅を配線溝内に埋設し、200℃以上の温度で熱処理処理後、CMP法によって配線溝内以外の余剰の銅を除去することで形成することができる。このような一連の銅配線の形成方法は、当該技術分野における一般的な手法を用いることができる。溝に埋め込まれた余剰の銅を研磨することによって埋め込み配線(ダマシン配線)を形成したり、層間絶縁膜を研磨することで平坦化を行う。
【0147】
(工程2)
図10(b)に示すように、第1配線A505a、第1配線B505b及び第1配線C505cを含む層間絶縁膜504上にバリア絶縁膜507(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚30nm)を形成する。ここで、バリア絶縁膜507は、プラズマCVD法によって形成することができる。バリア絶縁膜507の膜厚は、10nm〜50nm程度であることが好ましい。
【0148】
(工程3)
図10(c)に示すように、バリア絶縁膜507上にハードマスク膜508(例えば、酸化シリコン膜、膜厚40nm)を形成する。このとき、ハードマスク膜508は、ドライエッチング加工におけるエッチング選択比を大きく保つ観点から、バリア絶縁膜507とは異なる材料であることが好ましく、絶縁膜であっても導電膜であってもよい。ハードマスク膜508には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化チタン、チタン、タンタル、窒化タンタル等を用いることができ、窒化シリコン/酸化シリコン膜の積層体を用いることができる。
【0149】
(工程4)
図10(d)に示すように、ハードマスク膜508上にフォトレジスト(図示せず)のパターンを形成し、フォトレジストをマスクとしてドライエッチングすることによりハードマスク膜508に開口部パターンを形成する。その後、酸素プラズマアッシング等によってフォトレジストを剥離する。このとき、ドライエッチングは必ずしもバリア絶縁膜507の上面で停止している必要はなく、バリア絶縁膜507の内部にまで到達していてもよい。
【0150】
(工程5)
図11(a)に示すように、ハードマスク膜508をマスクとして、ハードマスク膜508の開口部から露出するバリア絶縁膜507をエッチバック(ドライエッチング)する。これにより、バリア絶縁膜507に開口部507aを形成して、バリア絶縁膜507の開口部507aから第1配線A505a及び第1配線B505bを露出させる。その後、窒素及びアルゴンの混合ガスを用いたプラズマに曝すことで、第1配線A505a及び第1配線B505bの露出面に形成された酸化銅を除去するとともに、エッチバック時に発生したエッチング副生成物などを除去する。さらに、ヘリウム、アルゴンや窒素などの不活性ガス、ハロゲンガス、又はフッ化炭素系ガス、或いはそれらの混合ガスを用いて、露出した第1配線A505a及び第1配線B505bをドライエッチングし、掘り下げ箇所522を形成する。この際、第1配線A505a及び第1配線B505bに挟まれた層間絶縁膜504も掘り下げられる。ここではバリア絶縁膜507の開口部507aで露出した第1配線A505aと第1配線B505bとの間の層間絶縁膜504も、掘り下げられている。
【0151】
バリア絶縁膜507のエッチバックでは、反応性ドライエッチングを用いることで、バリア絶縁膜507の開口部507aの壁面をテーパ面とすることができる。反応性ドライエッチングでは、エッチングガスとしてフッ化炭素を含むガスを用いることができる。ハードマスク膜508は、エッチバック中に完全に除去されることが好ましいが、絶縁材料である場合にはそのまま残存してもよい。また、バリア絶縁膜507の開口部507aの形状は円形とし、円の直径は30nmから500nmとすることができる。掘り下げ箇所522の形成は、超高真空化(10
−5パスカル以下)においてRFエッチングを行うことが望ましい。エッチングガスとしては、ヘリウム、アルゴンや窒素などの非反応性ガスを用いることが望ましい。また、エッチング時のバイアスパワー(ウェハ側への電離ガス引き込みパワー)は、掘り下げ箇所522の表面ラフネスを増加させないように、150W以下とすることが望ましい。高バイアスパワーのエッチングでは意図していない掘り下げ箇所が形成される場合があるが、この場合には、掘り下げられた箇所のラフネスが本発明の実施形態よりも増加する可能性が高い。表面ラフネスが増加した場合、3端子スイッチのスイッチング電圧、リーク電流および信頼性のばらつきが増加する危険性がある。この非反応性ガスを用いたエッチングは等方的に進行するため、掘り下げ箇所522の側面をテーパにできる。掘り下げ箇所522の形成のためのドライエッチングでバリア絶縁膜507の膜厚全てがエッチングされないよう、エッチングレートとエッチング時間を調整する。掘り下げ箇所522の高さ(深さ)は5nmから20nm程度が望ましい。
【0152】
(工程6)
図11(b)に示すように、第1配線A505a及び第1配線B505bを含むバリア絶縁膜507上にイオン伝導層509を形成する。まず、1nmのジルコニウムをスパッタリング法で堆積する。ジルコニウムは第2イオン伝導層509b形成時に酸化され、第1イオン伝導層509aを形成する。この際、掘り下げ箇所522の第1イオン伝導層509aに接している箇所に第1イオン伝導層509aを構成する金属が拡散し、合金層が自発的に形成される。さらに、350℃の温度で真空環境下にてアニールを行うことで、合金層の厚さを厚くすることができる。アニールは2分程度が好ましい。さらに、第2イオン伝導層509bとしてシリコン、酸素、炭素、水素を含むSiOCH系ポリマー膜をプラズマCVDによって形成する。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。原料の供給量は10〜200sccmとし、ヘリウムの供給量は原料気化器経由で500sccmとする。さらにヘリウムを、別ラインで反応室に直接500sccm供給する。バリア絶縁膜507の開口部507aは大気暴露によって水分などが付着しているため、第1イオン伝導層509aの堆積前に250℃から350℃程度の温度にて、減圧下で熱処理を加えて脱ガスしておくことが好ましい。
【0153】
(工程7)
図11(c)に示すように、イオン伝導層509上に下部第2電極510として、「ルテニウムとチタンの合金」を10nmの膜厚でコスパッタ法にて形成する。この際、ルテニウムターゲットとチタンターゲットは同一チャンバー内に存在し、同時にスパッタリングすることで合金膜を堆積する。この際、ルテニウムターゲットへの印加パワーを150W、チタンターゲットへの印加パワーを50Wとすることで、「ルテニウムとチタンの合金」中のルテニウムの含有率を75atm%とする。また、下部第2電極510の上に上部第2電極511を形成する。上部第2電極511として、窒化チタンを25nmの膜厚でリアクティブスパッタ法にて形成する。この際、チタンターゲットへの印加パワーを600Wとし、窒素ガスとアルゴンガスをチャンバー内に導入してスパッタリングする。この際、窒素の流量とアルゴンの流量を1:1とすることで、窒化チタン中のチタンの割合を70atm%とする。
【0154】
(工程8)
図11(d)に示すように、上部第2電極511上にハードマスク膜512(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚30nm)、及びハードマスク膜513(例えば、酸化シリコン膜、膜厚80nm)をこの順に積層する。ハードマスク膜512及びハードマスク膜513は、プラズマCVD法を用いて成膜することができる。ハードマスク膜512、513は当該技術分野における一般的なプラズマCVD法を用いて形成することができる。また、ハードマスク膜512とハードマスク膜513とは、異なる種類の膜であることが好ましく、例えば、ハードマスク膜512を窒化シリコン膜とし、ハードマスク膜513を酸化シリコン膜とすることができる。このとき、ハードマスク膜512は、後述する保護絶縁膜514及びバリア絶縁膜507と同一材料であることが好ましい。すなわち、3端子スイッチの周囲を全て同一材料で囲むことで材料界面を一体化し、外部からの水分などの浸入を防ぐとともに、3端子スイッチ自身の構成元素の脱離を防ぐことができるようになる。また、ハードマスク膜512は、プラズマCVD法によって形成することができるが、例えば、SiH
4/N
2の混合ガスの高密度プラズマによって形成された、高密度な窒化シリコン膜などを用いることが好ましい。
【0155】
(工程9)
図12(a)に示すように、ハードマスク膜513上に「3端子スイッチ」部をパターニングするためのフォトレジスト(図示せず)を形成し、その後、当該フォトレジストをマスクとして、ハードマスク膜512が表れるまでハードマスク膜513をドライエッチングする。その後、酸素プラズマアッシングと、有機剥離を用いてフォトレジストを除去する。
【0156】
(工程10)
図12(b)に示すように、ハードマスク膜513をマスクとして、ハードマスク膜512、上部第2電極511、下部第2電極510、イオン伝導層509を連続的にドライエッチングする。このとき、ハードマスク膜513は、エッチバック中に完全に除去されることが好ましいが、そのまま残存してもよい。例えば、上部第2電極511が窒化チタンの場合にはCl
2系のRIEで加工することができ、下部第2電極510がルテニウムとチタンの合金の場合には、Cl
2/O
2の混合ガスでRIE加工することができる。また、イオン伝導層509のエッチングでは、下面のバリア絶縁膜507上でドライエッチングを停止させる必要がある。イオン伝導層509がシリコン、酸素、炭素、水素を含むSiOCH系ポリマー膜であり、バリア絶縁膜507が窒化シリコン膜や炭窒化シリコン膜である場合には、CF
4系、CF
4/Cl
2系、CF
4/Cl
2/Ar系などの混合ガスでエッチング条件を調節することでRIE加工することができる。このようなハードマスクRIE法を用いることで、抵抗変化素子部をレジスト除去のための酸素プラズマアッシングに曝すことなく、抵抗変化素子部を加工することができる。また、加工後に酸素プラズマによって酸化処理する場合には、レジストの剥離時間に依存することなく酸化プラズマ処理を照射することができるようになる。
【0157】
(工程11)
図12(c)に示すように、ハードマスク膜512、上部第2電極511、下部第2電極510、及びイオン伝導層509を含むバリア絶縁膜507上に保護絶縁膜514(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚20nm)を堆積する。保護絶縁膜514は、プラズマCVD法によって形成することができるが、成膜前には反応室内で減圧下に維持する必要があり、このときイオン伝導層509の側面から酸素が脱離し、イオン伝導層のリーク電流が増加するという問題が生じる。それらを抑制するためには、保護絶縁膜514の成膜温度を300℃以下とすることが好ましい。さらに、成膜前に減圧下で成膜ガスに曝されるため、還元性のガスを用いないことが好ましい。例えば、SiH
4/N
2の混合ガスの高密度プラズマによって、基板温度300℃で形成した窒化シリコン膜などを用いることが好ましい。
【0158】
(工程12)
図12(d)に示すように、保護絶縁膜514上に、層間絶縁膜515(例えば、酸化シリコン膜)、Low−k絶縁膜516として比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜、膜厚150nm)、層間絶縁膜517(例えば、酸化シリコン膜)をこの順に堆積する。その後、第2配線A518a及び第2配線B518b用の配線溝、及びビアA519a及びビアB519b用の下穴を形成する。さらに銅デュアルダマシン配線プロセスを用いて、当該配線溝及び当該下穴内に第2バリアメタルA520a及び第2バリアメタルB520b(例えば、窒化タンタル/タンタル)を介して第2配線A518a及び第2配線B518b(例えば、銅)及びビアA519a及びビアB519b(例えば、銅)を同時に形成する。その後、第2配線A518a及び第2配線B518bを含む層間絶縁膜517上にバリア絶縁膜521(例えば、窒化シリコン膜)を堆積する。第2配線A518a及び第2配線B518bの形成は、下層配線形成と同様のプロセスを用いることができる。このとき、第2バリアメタルA520aと上部第2電極511を同一材料とすることで第2バリアメタルA520aと上部第2電極511の間の接触抵抗を低減し、素子性能を向上させることができるようになる。層間絶縁膜515、Low−k絶縁膜516及び層間絶縁膜517はプラズマCVD法で形成することができる。「3端子スイッチ」によって形成される段差を解消するため、層間絶縁膜515を厚く堆積し、CMP法によって層間絶縁膜515を削り込んで平坦化し、層間絶縁膜515を所望の膜厚としてもよい。ビアA519a及びビアB519bを同じフォトマスクによる露光でパターニングし、同時にエッチングし、形成する。ビアA519aとビアB519bとの高さの差分だけ、上部第2電極511はエッチングに曝され、深さ方向下に掘り込まれる。
【0159】
〔第3実施形態〕
次に、本発明の第3実施形態による抵抗変化素子、半導体装置、及び半導体装置の製造方法について、説明する。本発明の第3実施形態の半導体装置として、多層配線層内部に抵抗変化素子の一例として3端子スイッチもしくは2端子スイッチを含む半導体装置の構成について、説明する。本実施形態の半導体装置は、上述した実施形態の半導体装置の変形例である。
図13は、第3実施形態の「多層配線層内部に形成した3端子スイッチ、もしくは2端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子の一構成例を模式的に示す断面図である。半導体基板601上の多層配線層の内部に、3端子スイッチ613を含む半導体装置である。
【0160】
多層配線層は、半導体基板601上に絶縁積層体を有する。絶縁積層体では、層間絶縁膜602、Low−k絶縁膜603、層間絶縁膜604、バリア絶縁膜607、保護絶縁膜614、層間絶縁膜615、Low−k絶縁膜616、層間絶縁膜617、及びバリア絶縁膜621の順に積層されている。
【0161】
多層配線層は、層間絶縁膜604及びLow−k絶縁膜603に形成された配線溝に第1バリアメタルA606a、第1バリアメタルB606b及び第1バリアメタルC606cを介して第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cが埋め込まれている。多層配線層は、層間絶縁膜617及びLow−k絶縁膜616に形成された配線溝に第2配線A618a及び第2配線B618bが埋め込まれている。さらに、層間絶縁膜615、保護絶縁膜614、及びハードマスク膜612に形成された下穴にビアA619a及びビアB619bが埋め込まれている。さらに、第2配線A618aとビアA619a及び第2配線B618bとビアB619bが一体となっている。さらに、第2配線A618aとビアA619a及び第2配線B618bとビアB619bの側面乃至底面が、第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bによって覆われている。
【0162】
多層配線層には、バリア絶縁膜607に形成された開口部にて、3端子スイッチ613が形成されている。3端子スイッチ613では、第1電極となる第1配線A605a及び第1配線B605b、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604、第1バリアメタルA606a及び第1バリアメタルB606bの側面の一部、バリア絶縁膜607の開口部の壁面、乃至バリア絶縁膜607上に、イオン伝導層609、下部第2電極610、及び上部第2電極611の順に積層されている。上部第2電極611上にハードマスク膜612が形成されており、イオン伝導層609、下部第2電極610、上部第2電極611、及びハードマスク膜612の積層体の上面乃至側面が保護絶縁膜614で覆われている。第1配線A605a及び第1配線B605bの一部を、「3端子スイッチ」613の下部電極とすることで、工程数を簡略化しながら、電極抵抗を下げることができる。通常の銅ダマシン配線プロセスに追加工程として、少なくとも2PRのマスクセットを作成するだけで、「3端子スイッチ」613を搭載することができ、素子の低抵抗化と低コスト化を同時に達成することができるようになる。イオン伝導層609は、第1イオン伝導層609a及び第2イオン伝導層609bを含む。
【0163】
図13の半導体装置では、「3端子スイッチ」613は、バリア絶縁膜607に形成された開口部の領域にて、第1イオン伝導層609aと第1配線A605a及び第1配線B605bが直接接している。そして、第1イオン伝導層609aを構成する金属が第1配線A605a及び第1配線B605bに拡散し、界面に合金層を形成している。「3端子スイッチ」613は、上部第2電極611上にてビアA619aと上部第2電極611とが第2バリアメタルA620aを介して電気的に接続されている。「3端子スイッチ」613は、電圧の印加、或いは電流を流すことで、オン/オフの制御を行う。例えば、第1イオン伝導層609a及び第2イオン伝導層609b中への第1配線A605a及び第1配線B605bを形成する金属から供給される金属イオンの電界拡散を利用して、オン/オフの制御を行う。
【0164】
さらに本実施形態の半導体装置では、バリア絶縁膜607に形成された開口部の領域にて、第1配線A605a及び第1配線B605bは深さ方向に掘り下げられた掘り下げ箇所608を有する。
図13では、第1配線A605aの掘り下げ箇所608及び第1配線B605bの掘り下げ箇所608に挟まれた層間絶縁膜604も、掘り下げられた状態を示している。
【0165】
さらに本実施形態の半導体装置では、層間絶縁膜604の掘り下げられている箇所は、第1配線A605a及び第1配線B605bの掘り下げられている高さよりも深さ方向下となっている。すなわち、バリア絶縁膜607の開口部の領域において、イオン伝導層609は2段階の異なる高さの領域が形成される。第1イオン伝導層609aは第1配線A605a及び第1配線B605bの上面及び側面(第1バリアメタルA606a及び第1バリアメタルB606b)と掘り下げ箇所608を介して接している。また、第1配線C605cとビアB619bの間に3端子スイッチ613は介さず、ビアB619bは第2バリアメタルB620bを介して第1配線C605cに接している。第1配線A605a及び第1配線B605bと、第1配線C605cとは例えば半導体基板601を基準として、同層に形成された配線である。
【0166】
本実施形態の半導体装置の3端子スイッチ613は、掘り下げ箇所608の分だけ深さ方向下に配置される。これにより、ビアA619aが第2バリアメタルA620aを介して上部第2電極611と接する高さと、ビアB619bが第2バリアメタルB620bを介して第1配線B605bに接する高さの差を、ほぼ同じにできる。この際、ビアA619aは掘り下げ箇所608の内、最も掘り下げ量が深い、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604の直上にある上部第2電極611に接続する。このため、ビアA619aとビアB619bを同じフォトマスクを用いて露光し、同時にプラズマエッチングして形成した場合、3端子スイッチ613にビアA619aとビアB619bの高さの差分のプラズマダメージが軽減される。その結果、3端子スイッチ613の素子性能劣化を抑制できる。
【0167】
半導体基板601は、半導体素子が形成された基板である。半導体基板601には、例えば、シリコン基板、単結晶基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、TFT(Thin Film Transistor)基板、液晶製造用基板等の基板を用いることができる。
【0168】
層間絶縁膜602は、半導体基板601上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜602には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜602は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0169】
Low−k絶縁膜603は、層間絶縁膜602、604間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜603には、第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cを埋め込むための配線溝が形成されている。当該配線溝に第1バリアメタルA606a、第1バリアメタルB606b及び第1バリアメタルC606cを介して、第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cが埋め込まれている。
【0170】
層間絶縁膜604は、Low−k絶縁膜603上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜604には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜604は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜604には、第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cを埋め込むための配線溝が形成されている。当該配線溝に第1バリアメタルA606a、第1バリアメタルB606b及び第1バリアメタルC606cを介して、第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cが埋め込まれている。第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604は掘り下げ箇所608の形成時に掘り下げられ、第1配線A605a及び第1配線B605bの掘り下げ箇所608よりも深さ方向下にさらに掘り下げられている。
【0171】
第1配線A605a及び第1配線B605bは、層間絶縁膜604及びLow−k絶縁膜603に形成された配線溝に第1バリアメタルA606a及び第1バリアメタルB606bを介して埋め込まれた配線である。第1配線A605a及び第1配線B605bは、3端子スイッチ613の下部電極を兼ね、第1イオン伝導層609aと直接接している。第1イオン伝導層609aの上面は第2イオン伝導層609bに直接接しており、第2イオン伝導層609bの上面は下部第2電極610に直接接している。第1配線A605aを構成する金属には、イオン伝導層609において拡散、イオン伝導可能な金属が用いられ、例えば、銅等を用いることができる。第1配線A605a及び第1配線B605bを構成する金属(例えば、銅)は、アルミニウムと合金化されていてもよい。
【0172】
第1配線A605a及び第1配線B605bはバリア絶縁膜607の開口面において、深さ方向下に掘り下げられている掘り下げ箇所608を有する。第1配線A605a及び第1配線B605bと第1イオン伝導層609aは、掘り下げ箇所608を介して接している。掘り下げ箇所608と第1イオン伝導層609aとの界面には、後述の第1イオン伝導層609aを構成する金属との合金層が形成されている。合金層は第1配線A605a及び第1配線B605b全体に形成されているわけではなく、バリア絶縁膜607の開口面のみに形成されている。
【0173】
掘り下げ箇所608の形成は、第1配線A605a及び第1配線B605bに接するバリア絶縁膜607の開口面形成後に、減圧下にて、ハロゲンガス、不活性ガス、又はフッ化炭素系ガス、或いはそれらの混合ガスを用いたプラズマを用い、ドライエッチング装置内で第1配線A605a及び第1配線B605b、層間絶縁膜604を含む基板上に入射することで行う。この際、バリア絶縁膜607もエッチングされるが、3端子スイッチ613を形成しない第1配線C605cはプラズマに曝されず、掘り下げられない。
【0174】
第1配線C605cは、層間絶縁膜604及びLow−k絶縁膜603に形成された配線溝に第1バリアメタルC606cを介して埋め込まれた配線である。第1配線C605cは、バリア絶縁膜607の開口部において、ビアB619bと第2バリアメタルB620bを介して直接接している。
【0175】
第1バリアメタルA606a、第1バリアメタルB606b及び第1バリアメタルC606cは、第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cの側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。この被覆によって、第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cを形成する金属が層間絶縁膜604や下層へ拡散することを防止する。第1バリアメタルA606a、第1バリアメタルB606b及び第1バリアメタルC606cには、例えば、第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。
【0176】
バリア絶縁膜607は、第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cを含む層間絶縁膜604上に形成され、第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割を有する。さらにバリア絶縁膜607は、層間絶縁膜615中への第1配線A605a、第1配線B605b及び第1配線C605cを形成する金属の拡散を防ぐ役割を有する。さらにバリア絶縁膜607は、上部第2電極611、下部第2電極610、及びイオン伝導層609の加工時にエッチングストップ層としての役割を有する。バリア絶縁膜607には、例えば、SiC膜、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。バリア絶縁膜607は、保護絶縁膜614及びハードマスク膜612と同一材料であることが好ましい。
【0177】
第1イオン伝導層609a及び第2イオン伝導層609bは、抵抗が変化する膜である。第1配線A605a及び第1配線B605b(下部電極)を形成する金属から生成される金属イオンの作用(拡散、イオン伝導など)により、抵抗が変化する材料を用いることができる。「オン」状態へのスイッチングに伴う「3端子スイッチ」613の抵抗変化を、金属イオンの還元による金属の析出によって行う場合には、イオン伝導可能な膜が用いられる。
【0178】
第2イオン伝導層609bは、プラズマCVD法を用いて形成する。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。原料の供給量は10〜200sccmとし、ヘリウムの供給量は原料気化器経由で500sccmとする。こうして形成された第2イオン伝導層609bは、シリコン、酸素、炭素を主成分としたポーラスポリマーであり、例えば比誘電率が2.1以上3.0以下である。
【0179】
第1イオン伝導層609aは、第1配線A605a及び第1配線B605bを形成する金属が、第2イオン伝導層609bを堆積している間の加熱やプラズマで第2イオン伝導層609b中に拡散することを防止する役割がある。また第1イオン伝導層609aは、第1配線A605a及び第1配線B605bが酸化され、第2イオン伝導層609bへの拡散が促進されやすくなることを防止する役割がある。第1イオン伝導層609aを形成する金属、例えば、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、チタンは、第1イオン伝導層609aを構成する金属の成膜後に第2イオン伝導層609bの成膜チャンバー内で減圧下において酸素雰囲気に曝される。酸素雰囲気に曝されて、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンとなり、イオン伝導層609の一部となる。第1イオン伝導層609aを形成する金属膜の最適膜厚は0.5〜1nmである。第1イオン伝導層609aの形成に使用する金属膜は、積層を形成したり、単層としたりしても良い。第1イオン伝導層609aの成膜はスパッタリングで行うことが好ましい。スパッタリングによりエネルギーを得た金属原子又はイオンは第1配線A605a及び第1配線B605bに突入、拡散し、合金層を形成する。
【0180】
イオン伝導層609は、第1配線A605a及び第1配線B605b、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604、バリア絶縁膜607の開口部に形成されている掘り下げ箇所608のテーパ面、バリア絶縁膜607のテーパ面乃至バリア絶縁膜607上に形成されている。イオン伝導層609は、第1配線A605a及び第1配線B605bとイオン伝導層609の接続部の外周部分が少なくとも掘り下げ箇所608のテーパ面及びバリア絶縁膜607の開口部のテーパ面、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604上、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた側の側面の第1バリアメタルA606a及び第1バリアメタルB606bに沿って、配設されている。
【0181】
下部第2電極610は、「3端子スイッチ」613の上部電極における下層側の電極であり、第2イオン伝導層609bと直接接している。下部第2電極610には、ルテニウムと、第1配線A605a及び第1配線B605bを形成する金属と密着性の良いチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどが含有した合金を使用する。ここでルテニウムは、第1配線A605a及び第1配線B605bを形成する金属よりもイオン化しにくく、第2イオン伝導層609bにおいて拡散、イオン伝導しにくい金属である。
【0182】
下部第2電極610の形成に使用されるルテニウム合金において、ルテニウムに添加される第1の金属は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムよりも負方向に大きい添加金属を選択することが望ましい。金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムより負方向に大きいチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムは、ルテニウムに比べて化学反応が自発的に起こりやすいことを示すため、反応性が高い。このため、下部第2電極610を形成するルテニウム合金において、ルテニウムと合金化することで、第1配線A605a及び第1配線B605bを形成する金属で形成された金属架橋との密着性が向上する。一方、ルテニウムを含まないチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどの添加金属のみで下部第2電極610を構成すると、反応性が高くなってしまい、「オフ」状態に遷移しなくなる。「オン」状態から「オフ」状態への遷移は、金属架橋の酸化反応(溶解反応)によって進行する。下部第2電極610を構成する金属として、その金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが負方向に第1配線A605a及び第1配線B605bを形成する金属よりも大きい金属を用いた場合、「オフ」状態に遷移できなくなる。これは第1配線A605a及び第1配線B605bを形成する金属で形成された金属架橋の酸化反応よりも下部第2電極610の酸化反応が進行するためである。このため、下部第2電極610の形成に使用する金属材料は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが銅よりも負方向に小さいルテニウムとの合金とする必要がある。さらに、下部第2電極610に金属架橋の成分である銅が混入すると、標準ギブズエネルギーが負方向に大きい金属を添加した効果が薄れるため、ルテニウムに添加する金属は銅及び銅イオンに対してバリア性のある材料が好ましい。例えば、タンタル、チタンなどである。一方、添加金属の量は大きいほど、「オン」状態が安定化することがわかっており、5atm%の添加によっても安定性が向上することがわかっている。特に添加金属をチタンとした場合にオフへの遷移とオン状態の安定性に優れており、特に下部第2電極610をルテニウムとチタンの合金とし、チタンの含有率を20atm%〜30atm%の範囲が好ましい。該ルテニウム合金における、ルテニウムの含有比率は、60atm%以上90atm%以下が望ましい。
【0183】
下部第2電極610の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて合金を成膜する場合、ルテニウムと第1の金属との合金ターゲットを用いる方法、ルテニウムターゲットと第1の金属のターゲットを同一チャンバー内で同時にスパッタリングするコスパッタ法、予め第1の金属の薄膜を形成し、その上に、スパッタリング法を用いてルテニウムを成膜し、衝突原子のエネルギーで合金化するインターミキシング法がある。コスパッタ法及びインターミキシング法を用いると、合金の組成を変えることができる。インターミキシング法を採用する際には、ルテニウムの成膜を完了した後に、混合状態の「平坦化」のため、400℃以下での熱処理を加えることが好ましい。
【0184】
上部第2電極611は、「3端子スイッチ」613の上部電極における上層側の電極であり、下部第2電極610上に形成されている。上部第2電極611は、下部第2電極610を保護する役割を有する。すなわち、上部第2電極611が下部第2電極610を保護することで、プロセス中の下部第2電極610へのダメージを抑制し、「3端子スイッチ」613のスイッチング特性を維持することができる。上部第2電極611には、例えば、タンタル、チタン、タングステン、或いはそれらの窒化物等を用いることができる。また、上部第2電極611はビアA619aを下部第2電極610上に電気的に接続する場合に、エッチングストップ膜としての機能も有する。そのため、層間絶縁膜615のエッチングに使用するフッ化炭素系のガスのプラズマに対して、エッチング速度が小さいことが好ましい。
【0185】
上部第2電極611は金属の窒化物で構成される。特にエッチングストップ膜として機能し、導電性を有するチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムの窒化物が好ましい。上部第2電極611に窒化物ではない金属を使用すると、プロセス中の加熱やプラズマダメージで金属の一部が下部第2電極610内部に拡散することで、下部第2電極610内に欠陥が生じる可能性がある。これらの欠陥を起点として、イオン伝導層609の絶縁破壊電圧を低下させる可能性がある。上部第2電極611に電気伝導性を有する化合物であり、安定な金属窒化物を用いることで下部第2電極610への金属の拡散を防止できる。特に、上部第2電極611を構成する窒化物の金属と、下部第2電極610を構成するルテニウムと合金を形成する添加金属を同じ金属することが好ましい。これによりルテニウムと合金を形成する金属の拡散不良をより効率的に防止できる。例えば、下部第2電極610がルテニウムとチタンの合金電極である場合には、上部第2電極611は窒化チタン電極とすることが好ましい。或いは、下部第2電極610がルテニウムとタンタルの合金である場合には窒化タンタル電極とする。下部第2電極610と上部第2電極611を構成する金属成分を一致させることで、上部第2電極611の金属が万一下部第2電極610に拡散した場合にも、欠陥が形成し難くなる。この時、下部第2電極610を構成するルテニウム合金のルテニウムに対する金属の割合よりも、上部第2電極611を構成する窒化物の窒素に対する金属の割合を大きくする。このように割合を大きくすることで、下部第2電極610を構成する金属が上部第2電極611を構成する窒化物に拡散し、下部第2電極610を構成するルテニウム合金の組成が変化することを防止できる。具体的には、チタンの含有率が60atm%以上80atm%以下であることがより好ましい。
【0186】
上部第2電極611の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて金属窒化物を成膜する場合、窒素とアルゴンの混合ガスのプラズマを用いて金属ターゲットを蒸発させるリアクティブスパッタ法を用いることが好ましい。金属ターゲットより蒸発した金属は窒素と反応し、金属窒化物となって基板上に成膜される。
【0187】
より好ましい上部第2電極611の形成方法としては、ルテニウムターゲット電極と、第一の金属からなるターゲット電極の二つを用いたコスパッタとすることが好ましい。ルテニウムと第一の金属からなる合金ターゲットを用いた場合には、それぞれの材料のスパッタリングイールドが異なるため、連続して使用している組成にずれを生じるため、成膜される膜の組成を緻密に制御することができなくなる。一方、コスパッタ法については、あらかじめ各ターゲット電極に印加する電力を個別に設定することで、成膜させる膜の組成を精密に制御することができる。特に第一の金属として、チタン、或いはタンタルを用いた場合に効果が大きい。
【0188】
本実施形態の半導体装置では、第1配線A605a及び第1配線B605bに掘り下げ箇所608を形成し、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604に掘り下げ箇所を形成することによって、3端子スイッチ613を深さ方向下に配置できる。このため、ビアA619aパターンを形成する際に使用する、フッ素系、希ガス系、不活性ガス系、或いはそれらの混合ガスを用いたエッチング用プラズマに、上部第2電極611が曝される時間が低減できる。その結果、上部第2電極611が前記エッチングガスによってエッチングされる膜厚が減り、イオン伝導層609にプラズマダメージが蓄積されることを防ぐことができる。イオン伝導層609にプラズマダメージが蓄積すると、第1配線A605a及び第1配線B605bを構成する金属がイオン伝導層609に拡散し易くなったり、イオン伝導層609がチャージアップによってダメージを受け、欠陥が増加したりすることで、3端子スイッチ613のリーク電流が増加し、特性ばらつきや信頼性の劣化が進行する。
【0189】
ビアA619aを、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604直上の上部第2電極611に接続せず、第1配線A605a及び第1配線B605bの掘り下げ箇所608直上の上部第2電極611に接続しても良い。ただし、この場合、ビアA619aとビアB619bの高さの差は、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604直上の上部第2電極611に接続する場合に比べて大きくなる。
【0190】
ハードマスク膜612は、上部第2電極611、下部第2電極610、及び第1イオン伝導層609a、第2イオン伝導層609bをエッチングする際のハードマスク膜兼パッシベーション膜となる膜である。ハードマスク膜612には、例えば、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。ハードマスク膜612は、保護絶縁膜614及びバリア絶縁膜607と同一材料を含むことが好ましい。すなわち、「3端子スイッチ」613の周囲を全て同一材料で囲むことで材料界面が一体化され、外部からの水分などの浸入を防ぐとともに、「3端子スイッチ」613自身からの脱離を防ぐことができるようになる。
【0191】
保護絶縁膜614は、「3端子スイッチ」613にダメージを与えることなく、さらに第2イオン伝導層609bからの酸素の脱離を防ぐ機能を有する絶縁膜である。保護絶縁膜614には、例えば、窒化シリコン膜、炭窒化シリコン膜等を用いることができる。保護絶縁膜614は、ハードマスク膜612及びバリア絶縁膜607と同一材料であることが好ましい。同一材料である場合には、保護絶縁膜614とバリア絶縁膜607及びハードマスク膜612とが一体化して、界面の密着性が向上し、「3端子スイッチ」613をより保護することができるようになる。
【0192】
層間絶縁膜615は、保護絶縁膜614上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜615には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜615は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜615は、層間絶縁膜617と同一材料としてもよい。層間絶縁膜615には、ビアA619a及びビアB619bを埋め込むための下穴が形成されており、当該下穴に第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bを介してビアA619a及びビアB619bが埋め込まれている。
【0193】
Low−k絶縁膜616は、層間絶縁膜615、617間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜616には、第2配線A618a及び第2配線B618bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bを介して第2配線A618a及び第2配線B618bが埋め込まれている。
【0194】
層間絶縁膜617は、Low−k絶縁膜616上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜617には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)などを用いることができる。層間絶縁膜617は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜617は、層間絶縁膜615と同一材料としてもよい。層間絶縁膜617には、第2配線A618a及び第2配線B618bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bを介して第2配線A618a及び第2配線B618bが埋め込まれている。
【0195】
第2配線A618a及び第2配線B618bは、層間絶縁膜617及びLow−k絶縁膜616に形成された配線溝に第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bを介して埋め込まれた配線である。第2配線A618a及び第2配線B618bは、ビアA619a及びビアB619bと一体になっている。ビアA619a及びビアB619bは、層間絶縁膜615、及び保護絶縁膜614、ビアA619aについてはハードマスク膜612に形成された下穴に第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bを介して埋め込まれている。ビアA619a及びビアB619bは、第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bを介して上部第2電極611と電気的に接続されている。第2配線A618a及び第2配線B618b及びビアA619a及びビアB619bには、例えば、銅を用いることができる。
【0196】
第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bは、第2配線A618a及び第2配線B618b、ビアA619a及びビアB619bの側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。この被覆によって、第2配線A618a及び第2配線B618b(ビアA619a及びビアB619bを含む)を形成する金属が層間絶縁膜615、617や下層へ拡散することを防止する。第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bには、例えば、第2配線A618a及び第2配線B618b、ビアA619a及びビアB619bが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bは、上部第2電極611と同一材料であることが好ましい。例えば、第2バリアメタルA620a及び第2バリアメタルB620bが窒化タンタル(下層)/タンタル(上層)の積層構造である場合には、下層材料である窒化タンタルを上部第2電極611に用いることが好ましい。
【0197】
バリア絶縁膜621は、第2配線A618a及び第2配線B618bを含む層間絶縁膜617上に形成され、第2配線A618a及び第2配線B618bを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割を有する絶縁膜である。またバリア絶縁膜621は、上層への第2配線A618a及び第2配線B618bを形成する金属の拡散を防ぐ役割を有する絶縁膜である。バリア絶縁膜621には、例えば、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。
【0198】
(実施態様1)
次に、本実施形態の「3端子スイッチ」型スイッチング素子の効果について、
図14に従って説明する。また、素子構成の説明については
図13に記載の用語に従って説明する。
【0199】
図14は多層配線中に形成した「3端子スイッチ」型スイッチング素子に関して、背景技術の構造と第3実施形態の構造を並べて示した図である。上記第3実施形態の構造ではバリア絶縁膜607に形成された開口面において、第1配線A605a及び第1配線B605b、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604に深さ方向下に掘り下げた掘り下げ箇所608が形成されている。これにより、3端子スイッチ613が第1配線A605a及び第1配線B605bの深さ方向下に配置されている。上記第3実施形態の構造では、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604は第1配線A605a及び第1配線B605bの掘り下げられた高さよりも、さらに深さ方向下に掘り下げられている。一方、背景技術の構造では掘り下げ箇所608が無いため、3端子スイッチ613はバリア絶縁膜607のテーパ面と第1配線A605a及び第1配線B605bの直上に形成されている。第3実施形態の構造では、掘り下げ箇所608のうち、第1配線A605a及び第1配線B605bに挟まれた層間絶縁膜604の直上の上部第2電極611に電気的に接続するようにビアA619aを落とす。これにより、第1配線C605cに直接接続するビアB619bとの高さの差がほぼ無くなる。ビアA619aとビアB619bを一つのマスクで露光し、一度にエッチングして形成する場合、ビアA619aとビアB619bの高さの差分、3端子スイッチ613の上部第2電極611はエッチング環境下に曝される。このため、ビアA619aとビアB619bの高さの差をほぼ無くすことができる本発明の第3実施形態の構造では、イオン伝導層609へのプラズマダメージをさらに低減できる。
【0200】
(実施態様2)
本実施形態の実施態様2として、「3端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子を多層配線層内部に形成した半導体装置の製造プロセスについて説明する。特に、「3端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子を多層配線層内部に形成する工程について説明する。
図15(a)乃至
図15(d)、
図16(a)乃至
図16(d)、及び
図17(a)乃至
図17(d)は、本発明の第3実施形態の半導体装置の製造方法の一例として、3端子スイッチング素子の製造工程を示す断面模式図である。
【0201】
(工程1)
図15(a)に示すように、半導体基板701(例えば、半導体素子が形成された基板)上に層間絶縁膜702(例えば、酸化シリコン膜、膜厚500nm)を堆積する。その後、層間絶縁膜702にLow−k絶縁膜703として比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜、膜厚150nm)を堆積する。その後、Low−k絶縁膜703上に層間絶縁膜704として酸化シリコン膜(例えば、酸化シリコン膜、膜厚100nm)を堆積する。その後、リソグラフィ法(フォトレジスト形成、ドライエッチング、フォトレジスト除去を含む)を用いて、層間絶縁膜702、Low−k絶縁膜703及び層間絶縁膜704に配線溝を形成する。
【0202】
その後、当該配線溝に第1バリアメタルA706a、第1バリアメタルB706b及び第1バリアメタルC706c(例えば、窒化タンタル/タンタル、膜厚5nm/5nm)を介して第1配線A705a、第1配線B705b及び第1配線C705c(例えば、銅)を埋め込む。層間絶縁膜702、704は、プラズマCVD法によって形成することができる。第1配線A705a、第1配線B705b及び第1配線C705cは、例えば、PVD法によって第1バリアメタルB706b及び第1バリアメタルC706c(例えば、窒化タンタル/タンタルの積層膜)を形成し、PVD法による銅シードの形成後、電解めっき法によって銅を配線溝内に埋設し、200℃以上の温度で熱処理処理後、CMP法によって配線溝内以外の余剰の銅を除去することで形成することができる。このような一連の銅配線の形成方法は、当該技術分野における一般的な手法を用いることができる。溝に埋め込まれた余剰の銅を研磨することによって埋め込み配線(ダマシン配線)を形成したり、層間絶縁膜を研磨することで平坦化を行う。
【0203】
(工程2)
図15(b)に示すように、第1配線A705a、第1配線B705b及び第1配線C705cを含む層間絶縁膜704上にバリア絶縁膜707(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚30nm)を形成する。ここで、バリア絶縁膜707は、プラズマCVD法によって形成することができる。バリア絶縁膜707の膜厚は、10nm〜50nm程度であることが好ましい。
【0204】
(工程3)
図15(c)に示すように、バリア絶縁膜707上にハードマスク膜708(例えば、酸化シリコン膜、膜厚40nm)を形成する。このとき、ハードマスク膜708は、ドライエッチング加工におけるエッチング選択比を大きく保つ観点から、バリア絶縁膜707とは異なる材料であることが好ましく、絶縁膜であっても導電膜であってもよい。ハードマスク膜708には、例えば、酸化シリコン、窒化シリコン、窒化チタン、チタン、タンタル、窒化タンタル等を用いることができ、窒化シリコン/酸化シリコン膜の積層体を用いることができる。
【0205】
(工程4)
図15(d)に示すように、ハードマスク膜708上にフォトレジスト(図示せず)のパターンを形成し、フォトレジストをマスクとしてドライエッチングすることによりハードマスク膜708に開口部パターンを形成する。その後、酸素プラズマアッシング等によってフォトレジストを剥離する。このとき、ドライエッチングは必ずしもバリア絶縁膜707の上面で停止している必要はなく、バリア絶縁膜707の内部にまで到達していてもよい。
【0206】
(工程5)
図16(a)に示すように、ハードマスク膜708をマスクとして、ハードマスク膜708の開口部から露出するバリア絶縁膜707をエッチバック(ドライエッチング)する。これにより、バリア絶縁膜707に開口部707aを形成して、バリア絶縁膜707の開口部707aから第1配線A705a及び第1配線B705bを露出させる。その後、窒素及びアルゴンの混合ガスを用いたプラズマに曝すことで、第1配線A705a及び第1配線B705bの露出面に形成された酸化銅を除去するとともに、エッチバック時に発生したエッチング副生成物などを除去する。さらに、ヘリウム、アルゴンや窒素などの不活性ガス、ハロゲンガス、又はフッ化炭素系ガス、或いはそれらの混合ガスを用いて、露出した第1配線A705a及び第1配線B705bをドライエッチングし、掘り下げ箇所722を形成する。この際、第1配線A705a及び第1配線B705bに挟まれた層間絶縁膜704も掘り下げられる。ここではバリア絶縁膜707の開口部707aで露出した第1配線A705aと第1配線B705bとの間の層間絶縁膜704も、掘り下げられている。
【0207】
バリア絶縁膜707のエッチバックでは、反応性ドライエッチングを用いることで、バリア絶縁膜707の開口部の壁面をテーパ面とすることができる。反応性ドライエッチングでは、エッチングガスとしてフッ化炭素を含むガスを用いることができる。ハードマスク膜708は、エッチバック中に完全に除去されることが好ましいが、絶縁材料である場合にはそのまま残存してもよい。また、バリア絶縁膜707の開口部707aの形状は円形とし、円の直径は30nmから500nmとすることができる。掘り下げ箇所722の形成は、超高真空化(10
−5パスカル以下)においてRFエッチングを行うことが望ましい。エッチングガスとしては、ヘリウム、アルゴンや窒素などの非反応性ガスを用いることが望ましい。また、エッチング時のバイアスパワー(ウェハ側への電離ガス引き込みパワー)は、掘り下げ箇所722の表面ラフネスを増加させないように、150W以下とすることが望ましい。高バイアスパワーのエッチングでは意図していない掘り下げ箇所が形成される場合があるが、この場合には、掘り下げられた箇所のラフネスが本発明の実施形態よりも増加する可能性が高い。表面ラフネスが増加した場合、3端子スイッチのスイッチング電圧、リーク電流および信頼性のばらつきが増加する危険性がある。この非反応性ガスを用いたエッチングは等方的に進行するため、掘り下げ箇所722の側面をテーパにできる。掘り下げ箇所722の形成のためのドライエッチングでバリア絶縁膜707の膜厚全てがエッチングされないよう、エッチングレートとエッチング時間を調整する。掘り下げ箇所722の高さ(深さ)は5nmから20nm程度が望ましい。
【0208】
また、第1配線A705a及び第1配線B705bに挟まれた層間絶縁膜704は、第1配線A705a及び第1配線B705bの掘り下げ箇所よりも深さ方向下に掘り下げられている。この形成のために、バリア絶縁膜707の開口部707a形成の後で、第1配線A705a及び第1配線B705bの掘り下げ箇所722を形成する工程の前に、事前に掘り下げておいても良い。この事前の掘り下げは例えば、エッチングチャンバー内で金属のエッチングレートが遅く、酸化シリコン膜及びLow−k絶縁膜のエッチングレートが早い、フッ化炭素系のガス、或いはその混合ガスを用いることが考えられる。
【0209】
第1配線A705a及び第1配線B705bの掘り下げ箇所形成後に、フッ化炭素系のガス、或いはその混合ガスを用いて後から掘り下げても良い。層間絶縁膜704の掘り下げ箇所の高さ(深さ)は、第1配線A705a及び第1配線B705bの掘り下げ箇所722から5nmから20nm程度が望ましい。
【0210】
(工程6)
図16(b)に示すように、第1配線A705a及び第1配線B705bを含むバリア絶縁膜707上にイオン伝導層709を形成する。まず、1nmのジルコニウムをスパッタリング法で堆積する。ジルコニウムは第2イオン伝導層709b形成時に酸化され、第1イオン伝導層709aを形成する。この際、掘り下げ箇所722の第1イオン伝導層709aに接している箇所に第1イオン伝導層709aを構成する金属が拡散し、合金層が自発的に形成される。さらに、350℃の温度で真空環境下にてアニールを行うことで、合金層の厚さを厚くすることができる。アニールは2分程度が好ましい。さらに、第2イオン伝導層709bとしてシリコン、酸素、炭素、水素を含むSiOCH系ポリマー膜をプラズマCVDによって形成する。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。原料の供給量は10〜200sccmとして、ヘリウムの供給量は原料気化器経由で500sccmとする。さらにヘリウムを、別ラインで反応室に直接500sccm供給する。バリア絶縁膜707の開口部707aは大気暴露によって水分などが付着しているため、第1イオン伝導層709aの堆積前に250℃から350℃程度の温度にて、減圧下で熱処理を加えて脱ガスしておくことが好ましい。
【0211】
(工程7)
図16(c)に示すように、イオン伝導層709上に下部第2電極710として、「ルテニウムとチタンの合金」を10nmの膜厚でコスパッタ法にて形成する。この際、ルテニウムターゲットとチタンターゲットは同一チャンバー内に存在し、同時にスパッタリングすることで合金膜を堆積する。この際、ルテニウムターゲットへの印加パワーを150W、チタンターゲットへの印加パワーを50Wとすることで、「ルテニウムとチタンの合金」中のルテニウムの含有率を75atm%とする。また、下部第2電極710の上に上部第2電極711を形成する。上部第2電極711として、窒化チタンを25nmの膜厚でリアクティブスパッタ法にて形成する。この際、チタンターゲットへの印加パワーを600Wとし、窒素ガスとアルゴンガスをチャンバー内に導入してスパッタリングする。この際、窒素の流量とアルゴンの流量を1:1とすることで、窒化チタン中のチタンの割合を70atm%とする。
【0212】
(工程8)
図16(d)に示すように、上部第2電極711上にハードマスク膜712(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚30nm)、及びハードマスク膜713(例えば、酸化シリコン膜、膜厚80nm)をこの順に積層する。ハードマスク膜712及びハードマスク膜713は、プラズマCVD法を用いて成膜することができる。ハードマスク膜712、713は当該技術分野における一般的なプラズマCVD法を用いて形成することができる。また、ハードマスク膜712とハードマスク膜713とは、異なる種類の膜であることが好ましく、例えば、ハードマスク膜712を窒化シリコン膜とし、ハードマスク膜713を酸化シリコン膜とすることができる。このとき、ハードマスク膜712は、後述する保護絶縁膜714及びバリア絶縁膜707と同一材料であることが好ましい。すなわち、3端子スイッチの周囲を全て同一材料で囲むことで材料界面を一体化し、外部からの水分などの浸入を防ぐとともに、3端子スイッチ自身の構成元素の脱離を防ぐことができるようになる。また、ハードマスク膜712は、プラズマCVD法によって形成することができるが、例えば、SiH
4/N
2の混合ガスの高密度プラズマによって形成された、高密度な窒化シリコン膜などを用いることが好ましい。
【0213】
(工程9)
図17(a)に示すように、ハードマスク膜713上に「3端子スイッチ」部をパターニングするためのフォトレジスト(図示せず)を形成し、その後、当該フォトレジストをマスクとして、ハードマスク膜712が表れるまでハードマスク膜713をドライエッチングする。その後、酸素プラズマアッシングと、有機剥離を用いてフォトレジストを除去する。
【0214】
(工程10)
図17(b)に示すように、ハードマスク膜713をマスクとして、ハードマスク膜712、上部第2電極711、下部第2電極710、イオン伝導層709を連続的にドライエッチングする。このとき、ハードマスク膜713は、エッチバック中に完全に除去されることが好ましいが、そのまま残存してもよい。例えば、上部第2電極711が窒化チタンの場合にはCl
2系のRIEで加工することができ、下部第2電極710がルテニウムとチタンの合金の場合には、Cl
2/O
2の混合ガスでRIE加工することができる。また、イオン伝導層709のエッチングでは、下面のバリア絶縁膜707上でドライエッチングを停止させる必要がある。イオン伝導層709がシリコン、酸素、炭素、水素を含むSiOCH系ポリマー膜であり、バリア絶縁膜707が窒化シリコン膜や炭窒化シリコン膜である場合には、CF
4系、CF
4/Cl
2系、CF
4/Cl
2/Ar系などの混合ガスでエッチング条件を調節することでRIE加工することができる。このようなハードマスクRIE法を用いることで、抵抗変化素子部をレジスト除去のための酸素プラズマアッシングに曝すことなく、抵抗変化素子部を加工することができる。また、加工後に酸素プラズマによって酸化処理する場合には、レジストの剥離時間に依存することなく酸化プラズマ処理を照射することができるようになる。
【0215】
(工程11)
図17(c)に示すように、ハードマスク膜712、上部第2電極711、下部第2電極710、及びイオン伝導層709を含むバリア絶縁膜707上に保護絶縁膜714(例えば、窒化シリコン膜もしくは炭窒化シリコン膜、膜厚20nm)を堆積する。保護絶縁膜714は、プラズマCVD法によって形成することができるが、成膜前には反応室内で減圧下に維持する必要があり、このときイオン伝導層709の側面から酸素が脱離し、イオン伝導層のリーク電流が増加するという問題が生じる。それらを抑制するためには、保護絶縁膜714の成膜温度を300℃以下とすることが好ましい。さらに、成膜前に減圧下で成膜ガスに曝されるため、還元性のガスを用いないことが好ましい。例えば、SiH
4/N
2の混合ガスを高密度プラズマによって、基板温度300℃で形成した窒化シリコン膜などを用いることが好ましい。
【0216】
(工程12)
図17(d)に示すように、保護絶縁膜714上に、層間絶縁膜715(例えば、酸化シリコン膜)、Low−k絶縁膜716として比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜、膜厚150nm)、層間絶縁膜717(例えば、酸化シリコン膜)をこの順に堆積する。その後、第2配線A718a及び第2配線B718b用の配線溝、及びビアA719a及びビアB719b用の下穴を形成する。さらに銅デュアルダマシン配線プロセスを用いて、当該配線溝及び当該下穴内に第2バリアメタルA720a及び第2バリアメタルB720b(例えば、窒化タンタル/タンタル)を介して第2配線A718a及び第2配線B718b(例えば、銅)及びビアA719a及びビアB719b(例えば、銅)を同時に形成する。その後、第2配線A718a及び第2配線B718bを含む層間絶縁膜717上にバリア絶縁膜721(例えば、窒化シリコン膜)を堆積する。第2配線A718a及び第2配線B718bの形成は、下層配線形成と同様のプロセスを用いることができる。このとき、第2バリアメタルA720aと上部第2電極711を同一材料とすることで第2バリアメタルA720aと上部第2電極711の間の接触抵抗を低減し、素子性能を向上させることができるようになる。層間絶縁膜715、Low−k絶縁膜716及び層間絶縁膜717はプラズマCVD法で形成することができる。「3端子スイッチ」によって形成される段差を解消するため、層間絶縁膜715を厚く堆積し、CMP法によって層間絶縁膜715を削り込んで平坦化し、層間絶縁膜715を所望の膜厚としてもよい。ビアA719a及びビアB719bを同じフォトマスクによる露光でパターニングし、同時にエッチングし、形成する。ビアA719aとビアB719bとの高さの差分だけ、上部第2電極711はエッチングに曝され、深さ方向下に掘り込まれる。
【0217】
(実施態様3)
本実施形態の実施態様3として、「多層配線層内部に形成した3端子スイッチ、もしくは2端子スイッチ」の他の一構成例について説明する。
図18は、第3実施形態の「多層配線層内部に形成した2端子スイッチ」の構成を採用するスイッチング素子の一構成例を模式的に示す断面図である。半導体基板801上の多層配線層の内部に2端子スイッチ813を含む半導体装置である。
【0218】
多層配線層は、半導体基板801上にて、層間絶縁膜802、Low−k絶縁膜803、層間絶縁膜804、バリア絶縁膜807、保護絶縁膜814、層間絶縁膜815、Low−k絶縁膜816、層間絶縁膜817、及びバリア絶縁膜821の順に積層した絶縁積層体を有する。多層配線層は、層間絶縁膜804及びLow−k絶縁膜803に形成された配線溝に第1バリアメタルA806a及び第1バリアメタルB806bを介して第1配線A805a及び第1配線B805bが埋め込まれている。多層配線層は、層間絶縁膜817及びLow−k絶縁膜816に形成された配線溝に第2配線A818a及び第2配線B818bが埋め込まれている。さらに、層間絶縁膜815、保護絶縁膜814、及びハードマスク膜812に形成された下穴にビアA819a及びビアB819bが埋め込まれている。さらに、第2配線A818aとビアA819a及び第2配線B818bとビアB819bが一体となっている。さらに、第2配線A818aとビアA819a及び第2配線B818bとビアB819bの側面乃至底面が、第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bによって覆われている。多層配線層は、バリア絶縁膜807に形成された開口部にて、第1電極となる第1配線A805a、第1配線A805aの側面の第1バリアメタルA806aに接した層間絶縁膜804、第1バリアメタルA806a及び第1バリアメタルB806bの側面の一部、バリア絶縁膜807の開口部の壁面、乃至バリア絶縁膜807上に、イオン伝導層809、下部第2電極810、及び上部第2電極811の順に積層した2端子スイッチ813が形成されている。上部第2電極811上にハードマスク膜812が形成されており、イオン伝導層809、下部第2電極810、上部第2電極811、及びハードマスク膜812の積層体の上面乃至側面が保護絶縁膜814で覆われている。第1配線A805aの一部を、「2端子スイッチ」813の下部電極とすることで、工程数を簡略化しながら、電極抵抗を下げることができる。通常の銅ダマシン配線プロセスに追加工程として、少なくとも2PRのマスクセットを作成するだけで、「2端子スイッチ」813を搭載することができ、素子の低抵抗化と低コスト化を同時に達成することができるようになる。
【0219】
「2端子スイッチ」813は、バリア絶縁膜807に形成された開口部の領域にて、第1イオン伝導層809aと第1配線A805aが直接接しており、第1イオン伝導層809aを構成する金属が第1配線A805aに拡散し、界面に合金層を形成している。「2端子スイッチ」813は、上部第2電極811上にてビアA819aと上部第2電極811とが第2バリアメタルA820aを介して電気的に接続されている。「2端子スイッチ」813は、電圧の印加、或いは電流を流すことで、オン/オフの制御を行う。例えば、第1イオン伝導層809a及び第2イオン伝導層809b中への第1配線A805aを形成する金属から供給される金属イオンの電界拡散を利用して、オン/オフの制御を行う。
【0220】
図18に示すように、バリア絶縁膜807に形成された開口部の領域にて、第1配線A805aは深さ方向に掘り下げられた掘り下げ箇所808を有する。ここで
図18では、第1配線A805aに接した層間絶縁膜804も掘り下げられている。層間絶縁膜804の掘り下げられている箇所は、第1配線A805aの掘り下げられている高さよりも深さ方向下となっている。すなわち、バリア絶縁膜807の開口部の領域において、イオン伝導層809は2段階の異なる高さの領域が形成される。第1イオン伝導層809aは第1配線A805aの上面及び側面(第1バリアメタルA806a)と掘り下げ箇所808を介して接している。また、第1配線B805bとビアB819bの間に2端子スイッチ813は介さず、ビアB819bは第2バリアメタルB820bを介して第1配線B805bに接している。
【0221】
2端子スイッチ813は、掘り下げ箇所808の分だけ深さ方向下に配置される。これにより、ビアA819aが第2バリアメタルA820aを介して上部第2電極811と接する高さと、ビアB819bは第2バリアメタルB820bを介して第1配線B805bに接する高さの差をほぼ同じにできる。この際、ビアA819aは掘り下げ箇所808の内、最も掘り下げ量が深い、第1配線A805aの側面に接した層間絶縁膜804の直上にある上部第2電極811に接続する。このため、ビアA819aとビアB819bを同じフォトマスクを用いて露光し、同時にプラズマエッチングで形成した場合、2端子スイッチ813にビアA819aとビアB819bの高さの差分のプラズマダメージが軽減され、2端子スイッチ813の素子性能劣化を抑制できる。
【0222】
半導体基板801は、半導体素子が形成された基板である。半導体基板801には、例えば、シリコン基板、単結晶基板、SOI(Silicon on Insulator)基板、TFT(Thin Film Transistor)基板、液晶製造用基板等の基板を用いることができる。
【0223】
層間絶縁膜802は、半導体基板801上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜802には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜802は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。
【0224】
Low−k絶縁膜803は、層間絶縁膜802、804間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜803には、第1配線A805a及び第1配線B805bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第1バリアメタルA806a及び第1バリアメタルB806bを介して第1配線A805a及び第1配線B805bが埋め込まれている。
【0225】
層間絶縁膜804は、Low−k絶縁膜803上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜804には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜804は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜804には、第1配線A805a及び第1配線B805bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第1バリアメタルA806a及び第1バリアメタルB806bを介して第1配線A805a及び第1配線B805bが埋め込まれている。
【0226】
第1配線A805aの側面に接した層間絶縁膜804は掘り下げ箇所808形成時に掘り下げられ、第1配線A805aの掘り下げ箇所808よりも深さ方向下にさらに掘り下げられている。
【0227】
第1配線A805aは、層間絶縁膜804及びLow−k絶縁膜803に形成された配線溝に第1バリアメタルA806aを介して埋め込まれた配線である。第1配線A805aは、2端子スイッチ813の下部電極を兼ね、第1イオン伝導層809aと直接接している。第1イオン伝導層809aの上面は第2イオン伝導層809bに直接接しており、第2イオン伝導層809bの上面は下部第2電極810に直接接している。第1配線A805aを構成する金属には、イオン伝導層809において拡散、イオン伝導可能な金属が用いられ、例えば、銅等を用いることができる。第1配線A805aを構成する金属(例えば、銅)は、アルミニウムと合金化されていてもよい。第1配線A805aはバリア絶縁膜807の開口面において、深さ方向下に掘り下げられている掘り下げ箇所808を有する。第1配線A805aと第1イオン伝導層809aは、掘り下げ箇所808を介して接している。掘り下げ箇所808と第1イオン伝導層809aとの界面には後述の第1イオン伝導層809aを構成する金属との合金層が形成されている。合金層は第1配線A805a全体に形成されているわけではなく、バリア絶縁膜807の開口面のみに形成されている。後述の2端子スイッチ813は、第1配線A805aの側面に接した層間絶縁膜804の掘り下げ箇所の分だけ深さ方向下に配置される。これにより、ビアA819aが第2バリアメタルA820aを介して上部第2電極811と接する高さと、ビアB819bが第2バリアメタルB820bを介して第1配線B805bに接する高さの差を、ほぼ無くすことができる。このため、ビアA819aとビアB819bを同じフォトマスクを用いて露光し、同時にプラズマエッチングで形成した場合、2端子スイッチ813にビアA819aとビアB819bの高さの差分のプラズマダメージが軽減され、2端子スイッチ813の素子性能劣化を抑制できる。掘り下げ箇所808の形成は、第1配線A805aに接するバリア絶縁膜807の開口面形成後に、ハロゲンガス、不活性ガス、又はフッ化炭素系ガス、或いはそれらの混合ガスを用いたプラズマを用い、ドライエッチング装置内で第1配線A805a、層間絶縁膜804を含む基板上に入射することで行う。この際、バリア絶縁膜807もエッチングされるが、2端子スイッチ813を形成しない第1配線B805bはプラズマに曝されず、掘り下げられない。
【0228】
第1配線B805bは、層間絶縁膜804及びLow−k絶縁膜803に形成された配線溝に第1バリアメタルB806bを介して埋め込まれた配線である。第1配線B805bは、バリア絶縁膜807の開口部において、ビアB819bと第2バリアメタルB820bを介して直接接している。
【0229】
第1バリアメタルA806a及び第1バリアメタルB806bは、第1配線A805a及び第1配線B805bを形成する金属が層間絶縁膜804や下層へ拡散することを防止するために、配線の側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。第1バリアメタルA806a及び第1バリアメタルB806bには、例えば、第1配線A805a及び第1配線B805bが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。
【0230】
バリア絶縁膜807は、第1配線A805a及び第1配線B805bを含む層間絶縁膜804上に形成され、第1配線A805a及び第1配線B805bを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割を有する。またバリア絶縁膜807は、層間絶縁膜815中への第1配線A805a及び第1配線B805bを形成する金属の拡散を防いだり、上部第2電極811、下部第2電極810、及びイオン伝導層809の加工時にエッチングストップ層としての役割を有する。バリア絶縁膜807には、例えば、SiC膜、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。バリア絶縁膜807は、保護絶縁膜814及びハードマスク膜812と同一材料であることが好ましい。
【0231】
第1イオン伝導層809a及び第2イオン伝導層809bは、抵抗が変化する膜である。第1配線A805a(下部電極)を形成する金属から生成される金属イオンの作用(拡散、イオン伝導など)により、抵抗が変化する材料を用いることができる。「オン」状態へのスイッチングに伴う「2端子スイッチ」813の抵抗変化を、金属イオンの還元による金属の析出によって行う場合には、イオン伝導可能な膜が用いられる。
【0232】
第2イオン伝導層809bは、プラズマCVD法を用いて形成する。環状有機シロキサンの原料とキャリアガスであるヘリウムを反応室内に流入し、両者の供給が安定化し、反応室の圧力が一定になったところでRF電力の印加を開始する。原料の供給量は10〜200sccmとし、ヘリウムの供給量は原料気化器経由で500sccmとする。こうして形成された第2イオン伝導層809bは、シリコン、酸素、炭素を主成分としたポーラスポリマーであり、例えば比誘電率が2.1以上3.0以下である。
【0233】
第1イオン伝導層809aは、第1配線A805aを形成する金属が、第2イオン伝導層809bを堆積している間の加熱やプラズマで第2イオン伝導層809b中に拡散することを防止する役割がある。また第1イオン伝導層809aは、第1配線A805aが酸化され、第2イオン伝導層809bへの拡散が促進されやすくなることを防止する役割がある。第1イオン伝導層809aを形成する金属、例えば、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウム、チタンは、第1イオン伝導層809aを構成する金属の成膜後に第2イオン伝導層809bの成膜チャンバー内で減圧下において酸素雰囲気に曝される。酸素雰囲気に曝されて、酸化ジルコニウム、酸化ハフニウム、酸化アルミニウム、酸化チタンとなり、イオン伝導層809の一部となる。第1イオン伝導層809aを形成する金属膜の最適膜厚は0.5〜1nmである。第1イオン伝導層809aの形成に使用する金属膜は、積層を形成したり、単層としたりしても良い。第1イオン伝導層809aの成膜はスパッタリングで行うことが好ましい。スパッタリングによりエネルギーを得た金属原子又はイオンは第1配線A805aに突入、拡散し、合金層を形成する。
【0234】
イオン伝導層809は、第1配線A805a、第1配線A805aの掘り下げ箇所808、第1配線A805aの側面に接する層間絶縁膜804、バリア絶縁膜807の開口部に形成されている掘り下げ箇所のテーパ面、バリア絶縁膜807のテーパ面乃至バリア絶縁膜807上に形成されている。イオン伝導層809は、第1配線A805aとイオン伝導層809の接続部の外周部分が少なくとも掘り下げ箇所808のテーパ面及びバリア絶縁膜807の開口部のテーパ面、第1配線A805aの側面に接する層間絶縁膜804上、第1配線A805aに接する側面の第1バリアメタルA806aに沿って、配設されている。
【0235】
下部第2電極810は、「2端子スイッチ」813の上部電極における下層側の電極であり、第2イオン伝導層809bと直接接している。下部第2電極810には、ルテニウムと、第1配線A805aを形成する金属と密着性の良いチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどが含有した合金を使用する。ここでルテニウムは、第1配線A805aを形成する金属よりもイオン化しにくく、第2イオン伝導層809bにおいて拡散、イオン伝導しにくい金属である。
【0236】
下部第2電極810の形成に使用されるルテニウム合金において、ルテニウムに添加される第1の金属は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムよりも負方向に大きい添加金属を選択することが望ましい。金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーがルテニウムより負方向に大きいチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムは、ルテニウムに比べて化学反応が自発的に起こりやすいことを示すため、反応性が高い。このため、下部第2電極810を形成するルテニウム合金において、ルテニウムと合金化することで、第1配線A805aを形成する金属で形成された金属架橋との密着性が向上する。一方、ルテニウムを含まないチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムなどの添加金属のみで下部第2電極810を構成すると、反応性が高くなってしまい、「オフ」状態に遷移しなくなる。「オン」状態から「オフ」状態への遷移は、金属架橋の酸化反応(溶解反応)によって進行する。下部第2電極810を構成する金属として、その金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが負方向に第1配線A805aを形成する金属よりも大きい金属を用いた場合、「オフ」状態に遷移できなくなる。これは第1配線A805aを形成する金属で形成された金属架橋の酸化反応よりも下部第2電極810の酸化反応が進行するためである。このため、下部第2電極810の形成に使用する金属材料は、金属から金属イオンを生成する過程(酸化過程)の標準生成ギブズエネルギーが銅よりも負方向に小さいルテニウムとの合金とする必要がある。さらに、下部第2電極810に金属架橋の成分である銅が混入すると、標準ギブズエネルギーが負方向に大きい金属を添加した効果が薄れるため、ルテニウムに添加する金属は銅及び銅イオンに対してバリア性のある材料が好ましい。例えば、タンタル、チタンなどである。一方、添加金属の量は大きいほど、「オン」状態が安定化することがわかっており、5atm%の添加によっても安定性が向上することがわかっている。特に添加金属をチタンとした場合にオフへの遷移とオン状態の安定性に優れており、特に下部第2電極810をルテニウムとチタンの合金とし、チタンの含有率を20atm%〜30atm%の範囲が好ましい。該ルテニウム合金における、ルテニウムの含有比率は、60atm%以上90atm%以下が望ましい。
【0237】
下部第2電極810の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて合金を成膜する場合、ルテニウムと第1の金属との合金ターゲットを用いる方法、ルテニウムターゲットと第1の金属のターゲットを同一チャンバー内で同時にスパッタリングするコスパッタ法、予め第1の金属の薄膜を形成し、その上に、スパッタリング法を用いてルテニウムを成膜し、衝突原子のエネルギーで合金化するインターミキシング法がある。コスパッタ法及びインターミキシング法を用いると、合金の組成を変えることができる。インターミキシング法を採用する際には、ルテニウムの成膜を完了した後に、混合状態の「平坦化」のため、400℃以下での熱処理を加えることが好ましい。
【0238】
上部第2電極811は、「2端子スイッチ」813の上部電極における上層側の電極であり、下部第2電極810上に形成されている。上部第2電極811は、下部第2電極810を保護する役割を有する。すなわち、上部第2電極811が下部第2電極810を保護することで、プロセス中の下部第2電極810へのダメージを抑制し、「2端子スイッチ」813のスイッチング特性を維持することができる。上部第2電極811には、例えば、タンタル、チタン、タングステン、或いはそれらの窒化物等を用いることができる。また、上部第2電極811はビアA819aを下部第2電極810上に電気的に接続する場合に、エッチングストップ膜としての機能も有する。そのため、層間絶縁膜815のエッチングに使用するフッ化炭素系のガスのプラズマに対して、エッチング速度が小さいことが好ましい。
【0239】
上部第2電極811は金属の窒化物で構成される。特にエッチングストップ膜として機能し、導電性を有するチタン、タンタル、ジルコニウム、ハフニウム、アルミニウムの窒化物が好ましい。上部第2電極811に窒化物ではない金属を使用すると、プロセス中の加熱やプラズマダメージで金属の一部が下部第2電極810内部に拡散することで、下部第2電極810内に欠陥が生じる可能性がある。これらの欠陥を起点として、イオン伝導層809の絶縁破壊電圧を低下させる可能性がある。上部第2電極811に電気伝導性を有する化合物であり、安定な金属窒化物を用いることで下部第2電極810への金属の拡散を防止できる。特に、上部第2電極811を構成する窒化物の金属と、下部第2電極810を構成するルテニウムと合金を形成する添加金属を同じ金属することが好ましい。これによりルテニウムと合金を形成する金属の拡散不良をより効率的に防止できる。例えば、下部第2電極810がルテニウムとチタンの合金電極である場合には、上部第2電極811は窒化チタン電極とすることが好ましい。或いは、下部第2電極810がルテニウムとタンタルの合金である場合には窒化タンタル電極とする。下部第2電極810と上部第2電極811を構成する金属成分を一致させることで、上部第2電極811の金属が万一下部第2電極810に拡散した場合にも、欠陥が形成し難くなる。この時、下部第2電極810を構成するルテニウム合金のルテニウムに対する金属の割合よりも、上部第2電極811を構成する窒化物の窒素に対する金属の割合を大きくする。このように割合を大きくすることで、下部第2電極810を構成する金属が上部第2電極811を構成する窒化物に拡散し、下部第2電極810を構成するルテニウム合金の組成が変化することを防止できる。具体的には、チタンの含有率が60atm%以上80atm%以下であることがより好ましい。
【0240】
上部第2電極811の形成には、スパッタリング法を用いることが望ましい。スパッタリング法を用いて金属窒化物を成膜する場合、窒素とアルゴンの混合ガスのプラズマを用いて金属ターゲットを蒸発させるリアクティブスパッタ法を用いることが好ましい。金属ターゲットより蒸発した金属は窒素と反応し、金属窒化物となって基板上に成膜される。
【0241】
より好ましい上部第2電極811の形成方法としては、ルテニウムターゲット電極と、第一の金属からなるターゲット電極の二つを用いたコスパッタとすることが好ましい。ルテニウムと第一の金属からなる合金ターゲットを用いた場合には、それぞれの材料のスパッタリングイールドが異なるため、連続して使用している組成にずれを生じるため、成膜される膜の組成を緻密に制御することができなくなる。一方、コスパッタ法については、あらかじめ各ターゲット電極に印加する電力を個別に設定することで、成膜させる膜の組成を精密に制御することができる。特に第一の金属として、チタン、或いはタンタルを用いた場合に効果が大きい。
【0242】
第1配線A805aに掘り下げ箇所808を形成し、第1配線A805aの側面に接する層間絶縁膜804に掘り下げ箇所を形成することによって、2端子スイッチ813を深さ方向下に配置できる。このため、ビアA819aを形成する際に使用する、フッ素系、希ガス系、不活性ガス系、或いはそれらの混合ガスを用いたエッチング用プラズマに、上部第2電極811が曝される時間が低減できる。その結果、上部第2電極811が前記エッチングガスによってエッチングされる膜厚が減り、イオン伝導層809にプラズマダメージが蓄積されることを防ぐことができる。イオン伝導層809にプラズマダメージが蓄積すると、第1配線A805aを構成する金属がイオン伝導層809に拡散し易くなったり、イオン伝導層809がチャージアップによってダメージを受け、欠陥が増加したりすることで、2端子スイッチ813のリーク電流が増加し、特性ばらつきや信頼性の劣化が進行する。
【0243】
ビアA819aを第1配線A805aの側面に接する層間絶縁膜804直上の上部第2電極811に接続せず、第1配線A805aの掘り下げ箇所808直上の上部第2電極811に接続しても良い。ただし、この場合、ビアA819aとビアB819bの高さの差は、第1配線A805aの側面に接する層間絶縁膜804直上の上部第2電極811に接続する場合に比べて大きくなる。
【0244】
ハードマスク膜812は、上部第2電極811、下部第2電極810、及び第1イオン伝導層809a、第2イオン伝導層809bをエッチングする際のハードマスク膜兼パッシベーション膜となる膜である。ハードマスク膜812には、例えば、窒化シリコン膜や酸化シリコン膜等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。ハードマスク膜812は、保護絶縁膜814及びバリア絶縁膜807と同一材料を含むことが好ましい。すなわち、「2端子スイッチ」813の周囲を全て同一材料で囲むことで材料界面が一体化され、外部からの水分などの浸入を防ぐとともに、「2端子スイッチ」813自身の構成元素の脱離を防ぐことができるようになる。
【0245】
保護絶縁膜814は、「2端子スイッチ」813にダメージを与えることなく、さらに第2イオン伝導層809bからの酸素の脱離を防ぐ機能を有する絶縁膜である。保護絶縁膜814には、例えば、窒化シリコン膜、炭窒化シリコン膜等を用いることができる。保護絶縁膜814は、ハードマスク膜812及びバリア絶縁膜807と同一材料であることが好ましい。同一材料である場合には、保護絶縁膜814とバリア絶縁膜807及びハードマスク膜812とが一体化して、界面の密着性が向上し、「2端子スイッチ」813をより保護することができるようになる。
【0246】
層間絶縁膜815は、保護絶縁膜814上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜815には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜等を用いることができる。層間絶縁膜815は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜815は、層間絶縁膜817と同一材料としてもよい。層間絶縁膜815には、ビアA819a及びビアB819bを埋め込むための下穴が形成されており、当該下穴に第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bを介してビアA819a及びビアB819bが埋め込まれている。
【0247】
Low−k絶縁膜816は、層間絶縁膜815、817間に介在した比誘電率の低い絶縁膜であり、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)等を用いる。Low−k絶縁膜816には、第2配線A818a及び第2配線B818bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bを介して第2配線A818a及び第2配線B818bが埋め込まれている。
【0248】
層間絶縁膜817は、Low−k絶縁膜816上に形成された絶縁膜である。層間絶縁膜817には、例えば、酸化シリコン膜、SiOC膜、酸化シリコン膜よりも比誘電率の低い低誘電率膜(例えば、SiOCH膜)などを用いることができる。層間絶縁膜817は、複数の絶縁膜を積層したものであってもよい。層間絶縁膜817は、層間絶縁膜815と同一材料としてもよい。層間絶縁膜817には、第2配線A818a及び第2配線B818bを埋め込むための配線溝が形成されており、当該配線溝に第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bを介して第2配線A818a及び第2配線B818bが埋め込まれている。
【0249】
第2配線A818a及び第2配線B818bは、層間絶縁膜817及びLow−k絶縁膜816に形成された配線溝に第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bを介して埋め込まれた配線である。第2配線A818a及び第2配線B818bは、ビアA819a及びビアB819bと一体になっている。ビアA819a及びビアB819bは、層間絶縁膜815、及び保護絶縁膜814、ビアA819aについてはハードマスク膜812に形成された下穴に第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bを介して埋め込まれている。ビアA819a及びビアB819bは、第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bを介して上部第2電極811と電気的に接続されている。第2配線A818a及び第2配線B818b及びビアA819a及びビアB819bには、例えば、銅を用いることができる。
【0250】
第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bは、第2配線A818a及び第2配線B818b、ビアA819a及びビアB819bの側面乃至底面を被覆する、バリア性を有する導電性膜である。この被覆によって、第2配線A818a及び第2配線B818b(ビアA819a及びビアB819bを含む)を形成する金属が層間絶縁膜815、817や下層へ拡散することを防止する。第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bには、例えば、第2配線A818a及び第2配線B818b、ビアA819a及びビアB819bが銅を主成分とする金属元素からなる場合には、タンタル、窒化タンタル、窒化チタン、炭窒化タングステンのような高融点金属やその窒化物等、或いはそれらの積層膜を用いることができる。第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bは、上部第2電極811と同一材料であることが好ましい。例えば、第2バリアメタルA820a及び第2バリアメタルB820bが窒化タンタル(下層)/タンタル(上層)の積層構造である場合には、下層材料である窒化タンタルを上部第2電極811に用いることが好ましい。
【0251】
バリア絶縁膜821は、第2配線A818a及び第2配線B818bを含む層間絶縁膜817上に形成され、第2配線A818a及び第2配線B818bを形成する金属(例えば、銅)の酸化を防ぐ役割を有する絶縁膜である。またバリア絶縁膜821は、上層への第2配線A818a及び第2配線B818bを形成する金属の拡散を防ぐ役割を有する絶縁膜である。バリア絶縁膜821には、例えば、炭窒化シリコン膜、窒化シリコン膜、或いはそれらの積層構造等を用いることができる。
【0252】
〔実施形態のまとめ〕
本発明の上述した実施形態をまとめると、次のようになる。本発明の実施形態によれば、スケーリングが容易で、プラズマプロセスによる素子性能及び信頼性性能の劣化が抑制された抵抗変化素子を提供できる。このため、プログラマブルロジックの配線切り換えスイッチに本スイッチを適用した場合に、高機能化及び低価格化を両立できる。
【0253】
本発明の実施形態では抵抗変化素子形成のために配線層上のバリア絶縁膜を開口する際に、開口面から露出した銅配線をエッチングし、抵抗変化素子のイオン伝導層と配線層の界面を配線の上面、すなわち、バリア絶縁膜との界面よりも下げる。さらに、エッチングされた銅配線上に成膜された素子において、最も半導体基板側に近い部位の上部に上層配線からのビアを接続した構造とする。この結果、抵抗変化素子に接続するビアと銅配線に接続するビアの高低差が減少することで、素子へのプラズマダメージが低減し、抵抗変化素子性能の劣化を抑制できる。
【0254】
プラズマプロセスにおいて帯電した粒子、例えばイオン化したガス分子や原子、電子などが抵抗変化素子の抵抗変化層に入射されると、チャージアップが発生する。抵抗変化層は電界の印加によって、抵抗変化層を構成する分子の結合が破壊されることで、絶縁性能が劣化する。その結果、抵抗変化素子のリーク電流、スイッチング電圧ばらつき、繰り返し耐性、リテンションなどの性能が劣化する。本発明の各実施形態を用いることで、プラズマプロセスに伴う抵抗変化素子の性能劣化が抑制できる。
【0255】
また、抵抗変化素子を配線中に集積した半導体装置をスケーリング(比例縮小)する際、水平方向だけではなく垂直方向にも縮小する必要がある。配線中に抵抗変化素子を形成する場合、素子を構成する積層膜の分、垂直方向のスケーリングの妨げとなる。本発明の各実施形態を用いることで、銅配線形成領域の一部を抵抗変化素子の積層膜形成領域として使用できるため、素子の垂直方向高さを抑制でき、スケーリングを容易にできる。
【0256】
以上、本発明の好ましい実施形態や実施形態の実施態様を説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。特許請求の範囲に記載した発明の範囲内で、種々の変形が可能であり、それらも本発明の範囲に含まれることはいうまでもない。例えば、活性電極同士または不活性電極同士が接続されて、2つの抵抗変化素子が直列接続された回路構成に対して、本発明を適用することも考えられる。具体的には特許文献5の
図9や
図10に示されるような、バリア絶縁膜の複数の開口部を介して、イオン伝導層が一つまたは複数の下部電極に接している構造の抵抗変化素子や半導体装置に対して、本発明を適用することも考えられる。より具体的には、バリア絶縁膜の上記複数の開口部から露出する一つまたは複数の下部電極の表面に掘り下げ箇所をそれぞれ形成し、イオン伝導層を下部電極の表面の掘り下げ箇所に少なくとも接するように、形成すればよい。
【0257】
上記の実施形態の一部又は全部は、以下の付記のようにも記載されうるが、以下には限られない。
(付記1)上部電極と下部電極との間に、イオン伝導層が介在した構成の抵抗変化素子であって、
前記抵抗変化素子の前記下部電極の表面には掘り下げ箇所が形成されており、前記イオン伝導層は少なくとも前記下部電極の表面の前記掘り下げ箇所に接して形成されている、抵抗変化素子。
(付記2)前記掘り下げ箇所は、前記下部電極の表面の中央部分に形成されている、付記1に記載の抵抗変化素子。
(付記3)前記掘り下げ箇所は、前記下部電極の表面の少なくとも周辺部分に形成されている、付記1に記載の抵抗変化素子。
(付記4)半導体基板上の多層配線層の内部に抵抗変化素子を含む半導体装置であって、
前記抵抗変化素子は、上部電極と下部電極との間に、イオン伝導層が介在した構成であり、
前記抵抗変化素子の前記下部電極の表面には掘り下げ箇所が形成されており、前記イオン伝導層は少なくとも前記下部電極の表面の前記掘り下げ箇所に接して形成されている、半導体装置。
(付記5)前記多層配線層は、前記上部電極と電気的に接続されるプラグを備え、
前記プラグは、前記下部電極の前記掘り下げ箇所の上方で、前記上部電極と電気的に接続されている、付記4に記載の半導体装置。
(付記6)前記下部電極と前記イオン伝導層との間に介在し、前記下部電極の前記掘り下げ箇所に位置する開口部を備えるバリア絶縁膜をさらに含み、
前記イオン伝導層は、前記バリア絶縁膜の前記開口部を介して前記下部電極の前記掘り下げ箇所に接している、付記4又は付記5に記載の半導体装置。
(付記7)複数の下部電極を含み、
前記複数の下部電極のうちの一つの下部電極の表面と他の一つの下部電極の表面に前記掘り下げ箇所が形成されている、付記4に記載の半導体装置。
(付記8)前記多層配線層は、前記上部電極と電気的に接続されたプラグを備え、
前記プラグは、前記一つの下部電極の前記掘り下げ箇所と他の一つの下部電極の前記掘り下げ箇所との間の上方で、前記上部電極と電気的に接続されている、付記7に記載の半導体装置。
(付記9)前記一つの下部電極と前記他の一つの下部電極と前記イオン伝導層との間に介在し、前記一つの下部電極の前記掘り下げ箇所及び前記他の一つの下部電極の前記掘り下げ箇所に位置する開口部を備えるバリア絶縁膜をさらに含み、
前記イオン伝導層は、前記バリア絶縁膜の前記開口部を介して前記一つの下部電極の前記掘り下げ箇所及び前記他の一つの下部電極の前記掘り下げ箇所に接している、付記7又は付記8に記載の半導体装置。
(付記10)
前記下部電極の表面に複数の前記掘り下げ箇所が形成されており、
前記イオン伝導層は前記下部電極の表面の前記複数の掘り下げ箇所にそれぞれ接して形成されている、付記4に記載の半導体装置。
(付記11)
複数の下部電極を含み、
前記複数の下部電極の表面にはそれぞれ前記掘り下げ箇所が形成されており、
前記イオン伝導層は前記下部電極の表面の前記掘り下げ箇所にそれぞれ接して形成されている、付記4に記載の半導体装置。
(付記12)前記掘り下げ箇所は、前記下部電極の表面の中央部分に形成されている、付記4乃至付記9のいずれか一つに記載の半導体装置。
(付記13)前記掘り下げ箇所は、前記下部電極の表面の少なくとも周辺部分に形成されている、付記4乃至付記9のいずれか一つに記載の半導体装置。
(付記14)付記4乃至付記13のいずれか一つに記載の半導体装置の製造方法であって、
前記下部電極の前記掘り下げ箇所は、
前記下部電極の表面を露出させた後で、
前記下部電極の前記露出した表面に、減圧下にて、ハロゲンガス、不活性ガス、フッ化炭素系ガス、或いはそれらの複合ガスのプラズマを入射することにより形成される、半導体装置の製造方法。
(付記15)付記5に記載の半導体装置の製造方法であって、
前記上部電極を覆う層間絶縁膜を形成した後で、
前記下部電極の前記掘り下げ箇所の上方に位置する、前記上部電極を覆う層間絶縁膜にコンタクトホールを形成し、前記コンタクトホールに前記上部電極と電気的に接続される前記プラグを形成する、半導体装置の製造方法。
(付記16)上部電極と下部電極との間にイオン伝導層が介在した構成の抵抗変化素子を、半導体基板上の多層配線層の内部に有する半導体装置の製造方法であって、
前記抵抗変化素子の下部電極を兼ねる配線を露出させ、
減圧下にて、ハロゲンガス、不活性ガス、又はフッ化炭素系ガス、或いはそれらの複合ガスのプラズマを入射することにより、前記下部電極を兼ねる配線をその上面よりも深さ方向に掘り下げることを特徴とする半導体装置の製造方法。
(付記17)前記下部電極を兼ねる配線は層間絶縁膜に形成されており、
前記プラズマの入射によって、前記下部電極を兼ねる配線に接する前記層間絶縁膜を前記抵抗変化層と接する前記下部電極を兼ねる配線よりも、深さ方向に掘り下げることを特徴とする、付記16に記載の半導体装置の製造方法。
(付記18)上部電極と下部電極との間にイオン伝導層が介在した構成の抵抗変化素子を、半導体基板上の多層配線層の内部に有する半導体装置の製造方法であって、
層間絶縁膜に前記抵抗変化素子の前記下部電極を形成し、
前記層間絶縁膜と前記下部電極を覆うバリア絶縁膜を形成し、
前記下部電極の表面を露出させる開口部を前記バリア絶縁膜に形成し、
前記下部電極の前記露出した表面に、減圧下にて、ハロゲンガス、不活性ガス、又はフッ化炭素系ガス、或いはそれらの複合ガスのプラズマを入射することにより、掘り下げ箇所を形成し、
前記抵抗変化素子の前記イオン伝導層を、少なくとも前記下部電極の前記掘り下げ箇所に接するように形成する、半導体装置の製造方法。