特許第6860902号(P6860902)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860902
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】微細藻類の培養方法及びデータ解析装置
(51)【国際特許分類】
   C12N 1/12 20060101AFI20210412BHJP
   C12M 1/34 20060101ALI20210412BHJP
   C12Q 1/06 20060101ALN20210412BHJP
【FI】
   C12N1/12 A
   C12M1/34 A
   !C12Q1/06
【請求項の数】5
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2017-38263(P2017-38263)
(22)【出願日】2017年3月1日
(65)【公開番号】特開2018-143108(P2018-143108A)
(43)【公開日】2018年9月20日
【審査請求日】2020年1月23日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 発行者名:平成28年度公益社団法人日本水産学会秋季大会、刊行物名:平成28年度公益社団法人日本水産学会秋季大会 講演要旨集 第21頁、発行年月日:平成28年9月8日 主催者名:公益社団法人日本水産学会、集会名:平成28年度公益社団法人日本水産学会秋季大会、開催日:平成28年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】504258527
【氏名又は名称】国立大学法人 鹿児島大学
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168114
【弁理士】
【氏名又は名称】山中 生太
(74)【代理人】
【識別番号】100133592
【弁理士】
【氏名又は名称】山口 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100162259
【弁理士】
【氏名又は名称】末富 孝典
(72)【発明者】
【氏名】小谷 知也
(72)【発明者】
【氏名】松井 英明
【審査官】 松原 寛子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2014−174034(JP,A)
【文献】 特開平09−252763(JP,A)
【文献】 Bioresource Technology,2014年,Vol.156,p.408-411
【文献】 Aquaculture,1998年,Vol.166,p.105-116
【文献】 平成27年度公益社団法人日本水産学会春季大会講演要旨集,2015年 3月27日,p.167,1135番
【文献】 J. Appl. Phycol.,2009年,Vol.21,p.361-366
【文献】 Applied spectroscopy,2016年,doi:10.1177/0003702816641270
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C12N 1/12
C12M 1/34
C12Q 1/06
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
イソクリシス属(Isochrysis)のハプト藻類を培養する培養ステップと、
前記ハプト藻類の490nmにおける第1の吸光度及び680nmにおける第2の吸光度を複数の時点で測定する測定ステップと、
前記第1の吸光度前記第2の吸光度で除した値が下降から上昇に転じた後、前記値が再度下降から上昇に転じてから3〜5日後又は前記第2の吸光度を前記第1の吸光度で除した値が上昇から下降に転じた後、前記値が再度上昇から下降に転じてから3〜5日後に前記ハプト藻類を収穫する収穫ステップと、
を含む、微細藻類の培養方法。
【請求項2】
前記測定ステップでは、
前記ハプト藻類を含む培養液の490nmにおける第3の吸光度と680nmにおける第4の吸光度とを測定し、
前記ハプト藻類が除去された前記培養液の490nmにおける第5の吸光度と680nmにおける第6の吸光度とを測定し、
前記収穫ステップにおける前記第1の吸光度は、前記第3の吸光度から前記第5の吸光度を減じた値であって、
前記収穫ステップにおける前記第2の吸光度は、前記第4の吸光度から前記第6の吸光度を減じた値である、
請求項1に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項3】
前記ハプト藻類は、
イソクリシス・エスピー(Isochrysis sp.)タヒチ株である、
請求項1又は2に記載の微細藻類の培養方法。
【請求項4】
イソクリシス属(Isochrysis)のハプト藻類の490nmにおける第1の吸光度及び680nmにおける第2の吸光度を複数の時点で測定する測定部と、
前記第1の吸光度前記第2の吸光度で除した値が下降から上昇に転じた後、前記値が再度下降から上昇に転じたこと又は前記第2の吸光度を前記第1の吸光度で除した値が上昇から下降に転じた後、前記値が再度上昇から下降に転じたことをユーザーに通知する通知部と、
を備えるデータ解析装置。
【請求項5】
イソクリシス属(Isochrysis)のハプト藻類の490nmにおける第1の吸光度及び680nmにおける第2の吸光度を複数の時点で測定する測定部と、
前記第1の吸光度を前記第2の吸光度で除した値が下降から上昇に転じた後、前記値が再度下降から上昇に転じてから3〜5日経過後に、又は前記第2の吸光度を前記第1の吸光度で除した値が上昇から下降に転じた後に、前記値が再度上昇から下降に転じてから3〜5日経過後に、収穫時期であることを前記ユーザーに通知する通知部と、
を備えるデータ解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、微細藻類の培養方法及びデータ解析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
イソクリシス・エスピー(Isochrysis sp.)タヒチ株(以下、単に「タヒチ株」ともいう)等のイソクリシス属のハプト藻類は、海産魚介類の種苗生産で使用されている有用微細藻類である。タヒチ株は、海産魚類仔魚の餌料である海産ツボワムシ類の餌料、あるいは貝類幼生体の餌料として使用される。
【0003】
タヒチ株は、硝酸塩及びリン酸塩等の栄養塩、ミネラル類並びにビタミン類が混合された培養液に接種され、最大密度になるまで培養される。接種から最大密度に達する期間は、培養時の環境によって異なる。達する最大密度も培養環境によって異なるため、培養中の細胞密度のみを目安に収穫時期を決めることは難しい。
【0004】
タヒチ株は高度不飽和脂肪酸であるドコサヘキサエン酸(DHA)を細胞内に含有している。DHAは海産魚類仔魚の必須脂肪酸の一つである。上記の海産ツボワムシ類はDHAが欠乏している。このため、海産ツボワムシ類を仔魚に給餌する前に、タヒチ株を栄養強化用藻類として与えることで、海産ツボワムシ類のDHAを強化することができる。タヒチ株の細胞内のDHA含量は培養中に変化する。タヒチ株を栄養強化用藻類として利用する場合、DHA含量が最大のときにタヒチ株を収穫することが望ましい。しかし、DHA含量を測定するには時間を要するため、DHA含量に応じてタヒチ株の収穫時期を判断することは困難である。
【0005】
非特許文献1では、微細藻類であるナンノクロロプシスオキュラータ(Nannochloropsis oculata)の増殖相と細胞内のエイコサペンタエン酸(EPA)含量との関係が解析されている。非特許文献1には、ユーグレナ(Euglena gracilis)、パブロバ(Pavlova lutheri)、ドゥナリエラ(Dunaliella tertiolecta)及びポルフィリディウム(Porphyridium sp.)と同様に、ナンノクロロプシスオキュラータのEPA含量が増殖期に多く、定常期に低下することが記されている。
【0006】
微細藻類の収穫のタイミングを決定する方法に関して、例えば、特許文献1には、培養液における赤色光の吸光度と緑色光の吸光度との比が、微細藻類の比増殖速度と相関することを利用して、微細藻類の培養状態を判断する方法が開示されている。当該方法によれば、培養状態に応じて微細藻類の収穫のタイミングを決定することができる。
【0007】
特許文献2には、脂溶性成分が微細藻類に十分に蓄積したタイミングで微細藻類を収穫するために、微細藻類を含む培養液から検出した2つ以上の波長域の光に関する吸光度比に基づいて、微細藻類の脂溶性成分含量の多寡を判断する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2014−143921号公報
【特許文献2】特開2014−174034号公報
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】岡内正典、外4名、「異なる増殖相におけるナンノクロロプシス Nannochloropsis oculataの栄養価の相違」、1990年、Nippon Suisan Gakkaishi、56(8)、p.1293−1298
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
上記非特許文献1の知見に基づいて、細胞密度の経時変化から判明する増殖相に基づいて収穫適期を決定するには、細胞数を計数しなければならない。細胞数は顕微鏡の視野下で血球計算盤を用いて計数するため、正確性が十分ではないうえに煩雑で時間を要する。
【0011】
上記特許文献1に係る方法では、微細藻類としてのイカダモで検討した結果、比増殖速度が減少に転じたタイミングでイカダモを収穫する。しかし、比増殖速度が減少したときにイカダモが最大密度となっているかは不明である。また、イカダモとタヒチ株とでは吸光度特性が異なるため、上記特許文献1に係る方法を、タヒチ株の収穫のタイミングの判断に適用することはできない。
【0012】
上記特許文献2では、脂溶性成分と吸光度比との相関関係はイカダモとクロレラとで異なることが示されている。このため、当然ながらタヒチ株における脂溶性成分の含量と吸光度特性との関係については研究が必要である。また、脂溶性成分には、DHA以外の脂質、ワックス成分及びトリテルペン系炭化水素等が含まれており、DHA含量と吸光度比との相関については明らかになっていない。
【0013】
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、最適な時期にイソクリシス属のハプト藻類を収穫することができる微細藻類の培養方法及びデータ解析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の第1の観点に係る微細藻類の培養方法は、
イソクリシス属(Isochrysis)のハプト藻類を培養する培養ステップと、
前記ハプト藻類の490nmにおける第1の吸光度及び680nmにおける第2の吸光度を複数の時点で測定する測定ステップと、
前記第1の吸光度前記第2の吸光度で除した値が下降から上昇に転じた後、前記値が再度下降から上昇に転じてから3〜5日後又は前記第2の吸光度を前記第1の吸光度で除した値が上昇から下降に転じた後、前記値が再度上昇から下降に転じてから3〜5日後に前記ハプト藻類を収穫する収穫ステップと、
を含む。
【0016】
また、前記測定ステップでは、
前記ハプト藻類を含む培養液の490nmにおける第3の吸光度と680nmにおける第4の吸光度とを測定し、
前記ハプト藻類が除去された前記培養液の490nmにおける第5の吸光度と680nmにおける第6の吸光度とを測定し、
前記収穫ステップにおける前記第1の吸光度は、前記第3の吸光度から前記第5の吸光度を減じた値であって、
前記収穫ステップにおける前記第2の吸光度は、前記第4の吸光度から前記第6の吸光度を減じた値である、
こととしてもよい。
【0018】
また、前記ハプト藻類は、
イソクリシス・エスピー(Isochrysis sp.)タヒチ株である、
こととしてもよい。
【0019】
本発明の第2の観点に係るデータ解析装置は、
イソクリシス属(Isochrysis)のハプト藻類の490nmにおける第1の吸光度及び680nmにおける第2の吸光度を複数の時点で測定する測定部と、
前記第1の吸光度前記第2の吸光度で除した値が下降から上昇に転じた後、前記値が再度下降から上昇に転じたこと又は前記第2の吸光度を前記第1の吸光度で除した値が上昇から下降に転じた後、前記値が再度上昇から下降に転じたことをユーザーに通知する通知部と、
を備える。
本発明の第3の観点に係るデータ解析装置は、
イソクリシス属(Isochrysis)のハプト藻類の490nmにおける第1の吸光度及び680nmにおける第2の吸光度を複数の時点で測定する測定部と、
前記第1の吸光度を前記第2の吸光度で除した値が下降から上昇に転じた後、前記値が再度下降から上昇に転じてから3〜5日経過後に、又は前記第2の吸光度を前記第1の吸光度で除した値が上昇から下降に転じた後に、前記値が再度上昇から下降に転じてから3〜5日経過後に、収穫時期であることを前記ユーザーに通知する通知部と、
を備える。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、最適な時期にイソクリシス属のハプト藻類を収穫することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
図1】実施の形態に係るデータ解析装置の構成を示す図である。
図2】通知処理のフローチャートを示す図である。
図3】タヒチ株の細胞密度の経時変化を示す図である。
図4】タヒチ株の吸光度を示す図である。
図5】タヒチ株の細胞密度及び490nmと680nmとの吸光度比の経時変化を示す図である。
図6】タヒチ株の培養液中の栄養塩の濃度の経時変化を示す図である。(A)はリン酸濃度の経時変化を示す図である。(B)は硝酸態窒素濃度の経時変化を示す図である。
図7】タヒチ株の非極性脂質に占めるDHAの含有量の経時変化を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
本発明に係る実施の形態について図面を参照して説明する。なお、本発明は下記の実施の形態及び図面によって限定されるものではない。
【0023】
(実施の形態)
本実施の形態に係る微細藻類の培養方法は、培養ステップと、測定ステップと、収穫ステップと、を含む。
【0024】
まず、培養ステップについて説明する。培養ステップでは、イソクリシス属(Isochrysis)のハプト藻類を培養する。本実施の形態に係る微細藻類の培養方法を適用できるハプト藻類は、イソクリシス属に属するものであれば任意である。ハプト藻類としては、イソクリシス・エスピー(Isochrysis sp.)及びイソクリシス・ガルバナ(Isochrysis galbana)等が挙げられる。具体的には、イソクリシス・エスピーとしては、CCAP927/12、CCAP927/14、UTEX LB1292及びUTEX2307等が挙げられる。イソクリシス・ガルバナとしては、CCAP927/1及びUTEX LB987等が挙げられる。ハプト藻類としては、イソクリシス・エスピー タヒチ株が特に好ましい。
【0025】
ハプト藻類は培養液中で培養される。培養液は特に限定されず、ハプト藻類が増殖可能な任意の培養液を用いることができる。好ましくは、培養液としてf培地が用いられる。f培地は、例えば、海水に対して、硝酸ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、珪酸ナトリウム九水和物、Fe−EDTA、塩化マンガン四水和物、硫酸銅五水和物、硫酸亜鉛七水和物、塩化コバルト(II)六水和物、モリブデン酸ナトリウム二水和物、ビタミンB12、ビオチン及びチアミン塩酸塩等を適量添加することで調製できる。好ましくは、培地に使用する海水は濾過滅菌してから用いる。培地として市販のギラード(F/2)海水栄養液又は各種ビタミン及びアミノ酸を配合した微細藻類用培養液等を用いてもよい。
【0026】
ハプト藻類は、培養液の温度を18〜25℃程度、好ましくは20℃に維持し、通気下で培養すればよい。通気される空気は、好ましくは、濾過フィルター等で無菌にされる。
【0027】
好ましくは、ハプト藻類は、光照射下で培養される。光の強さは任意であるが、例えば、光量子束密度が50〜300μmol photons/m/s、100〜200μmol photons/m/s、好ましくは150μmol photons/m/sの光である。
【0028】
上記培養ステップには、ハプト藻類の予備培養を含んでもよい。予備培養では、例えば、対数増殖期におけるハプト藻類の細胞を新しい培養液に接種することを複数回繰り返せばよい。
【0029】
次に、測定ステップについて説明する。測定ステップでは、ハプト藻類の所定の波長における吸光度を複数の時点で測定する。吸光度の測定では、例えば、光源から発せられた光をハプト藻類の細胞に当て、透過した光の放射照度を分光放射照度計で測定すればよい。
【0030】
ハプト藻類は、440nm、490nm及び680nm付近の吸光度が比較的大きい。測定ステップでは、好ましくは、480〜520nmの範囲内の波長λ1(第1の波長)における吸光度D1(第1の吸光度)及び660〜700nmの範囲内の波長λ2(第2の波長)における吸光度D2(第2の吸光度)を測定すればよい。より好ましくは、λ1は485〜500nmの範囲内、好適には490nmである。λ2は670〜690nmの範囲内、好適には680nmである。以下では、λ1として490nmを、λ2として680nmを採用した場合について説明する。
【0031】
当該測定ステップでは、培養液を測定対象とすることでもD1及びD2を測定することができる。例えば、当該測定ステップでは、ハプト藻類を含む培養液の490nmにおける吸光度D3(第3の吸光度)と680nmおける吸光度D4(第4の吸光度)とを測定する。さらに、ハプト藻類が除去された培養液の490nmにおける吸光度D5(第5の吸光度)と680nmにおける吸光度D6(第6の吸光度)とを測定する。この場合、D1はD3からD5を減じた値となり、D2はD4からD6を減じた値となる。
【0032】
培養期間中、吸光度は、複数回、好ましくは4回以上、異なる時点で測定すればよい。好適には、吸光度は、培養期間が終わるまでに所定時間間隔で複数回測定される。時間間隔は、増殖速度に応じて適宜調整されるが、2時間、3時間、4時間、5時間、10時間、12時間、好ましくは24時間である。好適には、当該測定ステップでは、毎日同じ時刻に吸光度が測定される。
【0033】
続いて、収穫ステップについて説明する。収穫ステップでは、D1とD2との吸光度比の複数の時点間での比較に基づいて、ハプト藻類を収穫する。収穫ステップでは、例えば、D1とD2との吸光度比(D1/D2)に基づいてハプト藻類を収穫する。D1/D2は、D1をD2で除した値である。具体的には、D1/D2が下降から上昇に転じた後、D1/D2が再度下降から上昇に転じてから3〜5日後にハプト藻類を収穫する。例えば、測定ステップで24時間毎に測定されたD1/D2を記録し、収穫ステップでは、当該記録を参照し、D1/D2が下降から上昇に転じた後、D1/D2が再度下降から上昇に転じてから3〜5日後、好適には3日後又は4日後にハプト藻類を収穫すればよい。
【0034】
なお、収穫ステップでは、D1とD2との比としてD2/D1を用いてもよい。D2/D1を複数の時点で比較する場合は、D2/D1が上昇から下降に転じた後、D2/D1が再度上昇から下降に転じてから3〜5日後にハプト藻類を収穫すればよい。
【0035】
上述のように培養液を測定対象とした場合、具体的には、収穫ステップでは、D3からD5を減じた値と、D4からD6を減じた値との比に基づいて、ハプト藻類を収穫すればよい。
【0036】
ハプト藻類の収穫の方法は特に限定されない。ハプト藻類は、例えば、培養を停止し、培養液の遠心分離等の公知の方法でハプト藻類を濃縮することで収穫できる。
【0037】
ここで、本実施の形態に係る微細藻類の培養方法に好適なデータ解析装置の一例としてデータ解析装置100について説明する。図1は、データ解析装置100の構成を示す機能ブロック図である。データ解析装置100は、測定部1と、通知部2と、記憶部3と、表示部4と、を備える。
【0038】
データ解析装置100は、CPU(Central Processing Unit)と、外部記憶装置と、RAM(Random Access Memory)と、を備える。データ解析装置100では、CPUが外部記憶装置に記憶されたソフトウェアプログラムをRAMに読み出して、ソフトウェアプログラムを実行制御することにより、以下に説明する測定部1、通知部2、記憶部3及び表示部4の機能を実現する。
【0039】
測定部1は、入力装置と、光源と、分光放射照度計と、タイマーと、を備える。測定部1は、ハプト藻類のD1及びD2を測定するために、上述のD3〜D6を測定する。具体的には、測定部1は、入力装置を介して入力されたユーザーの指示に応じて、透明シャーレ等に保持されたハプト藻類を含む培養液又はハプト藻類が除去された培養液に対して光源から光を照射し、分光放射照度計でD3〜D6を測定する。測定部1は、タイマーを参照し、測定した時刻とともにD3〜D6を通知部2に出力する。ここでは、ユーザーは、毎日同時刻における培養液についてD3〜D6の測定を測定部1に指示するものとする。
【0040】
通知部2は、測定部1によって入力されたD3〜D6から上述のようにD1/D2を算出する。通知部2は、測定部1によって入力された時刻とともにD1/D2を記憶部3に記憶させる。記憶部3は、測定部1によって入力されたD1/D2を時刻に関連付けて記憶する。
【0041】
通知部2は、D1/D2の複数の時点間での比較に基づいて、ユーザーに通知を行う。より詳細には、通知部2は、記憶部3を参照し、測定部1によって入力されたD3〜D6から算出したD1/D2と前日までのD1/D2とを比較し、下降していたD1/D2の上昇が2回見られたときに表示部4に通知指示を入力する。
【0042】
表示部4は、ディスプレイを備え、通知部2によって入力された通知指示に応じて、例えば、「3〜5日後に収穫」等をディスプレイに表示する。これにより、ユーザーは培養中のハプト藻類の収穫のタイミングを把握できる。
【0043】
続いて、データ解析装置100による通知処理を図2に示すフローチャートを参照して説明する。通知部2は、ハプト藻類の培養を開始したユーザーの指示によって通知処理が開始されると、記憶部3に記憶されたフラグFa及びFbをそれぞれ「0」に設定する(ステップS1)。測定部1は、ユーザーによってセットされた培養液についてD3〜D6の測定指示を待つ(ステップS2;No)。測定指示があると(ステップS2;Yes)、測定部1は、D3〜D6を測定する(ステップS3)。
【0044】
続いて、通知部2は、D1/D2を算出し、記憶部3にD1/D2を時刻に関連付けて記憶させる(ステップS4)。通知部2は、記憶部3を参照し、算出したD1/D2が前日のD1/D2より下降したか否かを判定する(ステップS5)。算出したD1/D2が前日のD1/D2より下降した場合(ステップS5;Yes)、通知部2は、記憶部3に記憶されたFaを「1」に更新し(ステップS6)、ステップS2に戻る。
【0045】
一方、算出したD1/D2が前日のD1/D2より下降していない場合(ステップS5;No)、通知部2は、算出したD1/D2が前日のD1/D2より上昇したか否かを判定する(ステップS7)。算出したD1/D2が前日のD1/D2より上昇していない場合(ステップS7;No)、通知部2はステップS2に戻る。なお、前日のD1/D2が記憶部3に記憶されてない場合も、算出したD1/D2は前日のD1/D2より下降していないため、ステップS5は「No」である。
【0046】
算出したD1/D2が前日のD1/D2より上昇した場合(ステップS7;Yes)、通知部2は、Faが「1」であるか否かを判定する(ステップS8)。Faが「1」でない場合(ステップS8;No)、通知部2はステップS2に戻る。一方、Faが「1」の場合(ステップS8;Yes)、通知部2は、記憶部3に記憶されたFbに「1」を加算し、かつFaを「0」に更新する(ステップS9)。
【0047】
続いて、通知部2は、Fbが「2」であるか否かを判定する(ステップS10)。Fbが「2」でない場合(ステップS10;No)、通知部2はステップS2に戻る。一方、Fbが「2」の場合(ステップS10;Yes)、通知部2は、表示部4を介して「3〜5日後に収穫」をユーザーに通知し(ステップS11)、通知処理を終了する。
【0048】
上記の通知処理において、データ解析装置100は、ハプト藻類の培養開始後、D1/D2が下降から上昇に転じた後、D1/D2が再度下降から上昇に転じた際に、ステップS11を実行する。これにより、データ解析装置100は、D1/D2が下降から上昇に転じた後、D1/D2が再度下降から上昇に転じたことをユーザーに通知することができる。
【0049】
以上詳細に説明したように、本実施の形態に係る培養方法及びデータ解析装置100によれば、D1/D2が下降から上昇に転じた後、D1/D2が再度下降から上昇に転じて3〜5日後にハプト藻類を収穫することができる。下記実施例に示すように、下降していたD1/D2の上昇が2回見られてから3〜5日後は、培養液中のハプト藻類の細胞密度が大きく、DHA含量が高い。このため、ハプト藻類を最適な時期に収穫することができる。
【0050】
なお、データ解析装置100の通知部2は、下降していたD1/D2の上昇が2回見られたことを通知するようにしたが、これに限らない。通知部2は、下降していたD1/D2の上昇が2回見られてから3〜5日経過後に、収穫時期であることをユーザーに通知するようにしてもよい。
【0051】
なお、通知部2は、測定又は記憶されたD3〜D6及び算出又は記憶されたD1/D2を、表示部4を介して表示してもよい。また、通知部2は、D1/D2を時間に対してプロットした経時変化を示すグラフを、表示部4を介して表示してもよい。
【0052】
また、収穫ステップでは、D1/D2が所定の閾値以上に変化した場合に、D1/D2が下降又は上昇したとしてもよい。また、測定ステップにおいて、ハプト藻類の培養液から採取した複数のサンプルについてD3〜D6を測定し、収穫ステップでは、各時点における複数のD1/D2に基づいて統計的な有意差がある場合にD1/D2の下降又は上昇したとしてもよい。なお、収穫ステップでは、所定期間におけるD1/D2の平均を算出し、該平均の比較に基づいて、ハプト藻類を収穫してもよい。
【0053】
なお、収穫ステップでは、D1/D2の経時変化を示すグラフの所定の時点での接線を求め、接線の傾きが負から0を経て正になったときを、D1/D2が下降から上昇に転じたときとしてもよい。
【0054】
また、本実施の形態に係る培養方法は、ハプト藻類の収穫方法であってもよい。また、当該培養方法によれば、DHA含量が高いハプト藻類を収穫できるため、当該培養方法はDHAの製造方法としても利用できる。
【0055】
なお、上記実施の形態において、実行されるソフトウェアプログラムは、フレキシブルディスク、CD−ROM(Compact Disc Read Only Memory)、DVD(Digital Versatile Disc)、MO(Magneto−Optical disc)などのコンピュータで読み取り可能な記録媒体に格納して配布し、そのプログラムをインストールすることにより、上述の動作を実行するシステムを構成することとしてもよい。
【実施例】
【0056】
以下の実施例により、本発明をさらに具体的に説明するが、本発明は実施例によって限定されるものではない。
【0057】
(培養)
本実施例に用いるタヒチ株は、国立大学法人長崎大学より入手した。タヒチ株の培養には、ガラス繊維フィルター(GF/C、Whatman社製)で濾過し、塩分23PSUになるように蒸留水で希釈した後、高圧滅菌を行った海水を用いた。タヒチ株は、当該希釈した海水にKw21培地(第一製網社製)を添加し、水温20°C、150μmol photons/m/sの光を24時間連続照射し通気下で、1Lフラスコ内でバッチ培養によって維持した。このタヒチ株を、1週間に一度新しい培地に接種した。予備培養のために、タヒチ株を培養してから3日目の対数増殖期と推定される細胞を新しいf培地に3回接種した。f培地に用いる海水は、GF/Cフィルターを通して濾過した後、メンブレンフィルター(孔径0.22μm、Millipore社製)で濾過滅菌を行った。
【0058】
タヒチ株の培養には、濾過フィルター(マイレクス、孔径0.22μm、Millipore社製)を通した無菌の空気で曝気しながら通気を行った。3回の予備培養を経た培養液を採集してから遠心分離した(3600rpm、20分間)。新しい培地の栄養塩が希釈されるのを防ぐため、できる限り上澄み液を取り除いた。乾熱滅菌したパスツールピペットを用いて細胞群を新しい培地が入っている1L三角フラスコ内に植え継ぎ、培養実験を開始した。培養液を、予備培養と同じ環境条件下で14日間維持した。なお、培養実験における初期細胞密度は、1.0×10細胞/mlとした。
【0059】
(採集と保存)
培養液から毎日同じ時刻にクリーンベンチ内でコニカルビーカーへサンプルを取り出した。タヒチ株の密度、吸光度、及び培養液中の栄養塩濃度を測定するために、それぞれ約5ml、20ml、及び50mlのサンプルを、遠沈管に分注した。各脂質中の脂肪酸組成の測定のために、残りの培養液から100〜450mlを取り出した。
【0060】
吸光度を測定するための培養液の内、半分はGF/Cフィルターで濾過し、ブランクとして濾過液を別の遠沈管で回収した。もう半分はサンプルとして測定するまで固定せず残した。各脂質中の脂肪酸組成を測定するために、培養液を遠心分離し(3600rpm、20分間)、上澄み液を取り除いた後、細胞群をガラス製ねじ口試験管にパスツールピペットを用いて移した。脱塩のために0.5Mギ酸アンモニウム溶液を加えて撹拌して細胞群を洗った後、遠心分離して上澄み液を取り除いた。細胞の脱塩操作と遠心分離を二度行った。細胞群を−80°Cで凍結した後、凍結乾燥し、脂質を抽出するまで−80°Cで保存した。栄養塩濃度を測定するための培養液については、遠心分離した後(3600rpm、20分間)、上澄み液をGF/Cフィルターで濾過した。その濾過液を50ml遠沈管へ取り出し、測定するまで−20°Cで保存した。
【0061】
(細胞密度)
細胞は倍率200倍の生物顕微鏡(ECLIPSE 55i、ニコン社製)及び血球計算盤(0.1mm depth、サンリード硝子社製)を用いて4回計数した。増殖速度(μ、/日)は、対数増殖期における細胞密度を以下の式1で算出した。
【0062】
μ=ln(N/N)/(t−t) (式1)
【0063】
ここで、NとNはそれぞれt時及びt時における細胞数を示す。
【0064】
(吸光度)
サンプルの細胞密度が各日でできる限り一定になるように濃縮又は希釈した。ブランクをプラスチックシャーレ(φ、40mm)に5ml乗せた後、白色ハロゲンランプから発せられた白色光をブランクに対して垂直に当てた。ブランクを透過した光の放射照度(360〜780nm)を、分光放射照度計(CL−500A、コニカミノルタ社製)を用いて暗所下で10回測定した。同じシャーレに乗せたサンプルを透過した光の放射照度も同様に測定した。それぞれの測定値を以下の式2により細胞の吸光度(Aλ)を算出した。
【0065】
Aλ=−log10(I/I) (式2)
ここで、IとIはそれぞれサンプル及びブランクを透過した光の放射照度を示す。
【0066】
(培養液中の栄養塩濃度の測定)
硝酸態窒素とリン酸の濃度を測定するために、公知の比色定量法に従ってHachの既製試薬(Hach社製)を用いて培養液を発色させた。硝酸態窒素の測定には培養液15mlを使用して、リン酸の測定には培養液10mlを使用した。それぞれの培養液は1インチの丸型ガラスセルに入れ、吸光度をポータブル吸光光度計(Hach社製、DR 900)によってそれぞれ3回ずつ測定した。ブランクには蒸留水を用いた。硝酸態窒素及びリン酸の濃度を決定するための検量線を、標準物質としてそれぞれ硝酸ナトリウム及びリン酸二水素ナトリウムを用いて作成した。
【0067】
(極性脂質と非極性脂質の分離及び脂質含量の測定)
細胞中の総脂質を次のように抽出した。凍結乾燥させた細胞が入った15mlガラス製ねじ口試験管にクロロホルム−メタノール−水混合液(1:2:1.8)を9.5ml加え、30分間超音波洗浄機(ASU−3、AS ONE社製)を用いて15°C以下で細胞を破砕した。その後、クロロホルム:メタノール:水の比が2:2:1.8になるようにクロロホルムと水とを2.5mlずつ加えてから溶液を2層に遠心分離させた(2000rpm、5分間)。総脂質が含まれている下層のクロロホルムを、別の15mlガラス製ねじ口試験管にパスツールピペットを用いて移した後、37℃で窒素ガスを吹き付けながら有機溶媒を飛ばした。その後、真空デシケーター内で吸引しながら試験管中の水分を十分に飛ばした。
【0068】
総脂質を1ml(0.2ml×5回)のクロロホルム−メタノール混合溶液(98:2)に溶かしてパスツールピペットを用いてSep−Pakシリカカートリッジ(Waters社製)に移した。非極性脂質(以下、単に「NL」という)は、Sep−Pakシリカカートリッジに30mlのクロロホルム−メタノール混合溶液(98:2)を1分間に約1滴の速度で流し落としながらナスフラスコに回収した。その後、極性脂質(以下、単に「PL」という)はSep−Pakシリカカートリッジに30mlのメタノールを流し落としながらナスフラスコに回収した。それぞれの脂質が溶けている有機溶媒を、ロータリーエバポレーター(N−1110E、EYELA社製)を用いて37℃で吸引しながら飛ばした。さらに、デシケーター内で吸引しながらナスフラスコ中の水分を飛ばした。各脂質を3ml(0.5ml×6回)のクロロホルム−メタノール混合溶液(1:1)に溶かして、それぞれ重量測定済みのガラス試験管に移した。それぞれの試験管内の有機溶媒を、総脂質と同様に37℃で窒素ガスを吹き付けながら飛ばした。NLとPLの含量を重量測定によって算出した。
【0069】
(各脂質中の脂肪酸組成の測定)
抽出後分離したNLとPLとを、内部標準物質のノナデカン酸(C19:0)が1mg/mlの濃度で溶けたクロロホルム0.5ml、及び5%塩化水素メタノール溶液1mlに溶かした後に、3時間80°Cで加熱することでメチルエステル化させた。その後、有機溶媒を常温に戻し、1mlのヘキサンと5.5mlの水を加え、2層に遠心分離させた(2000rpm、5分間)。脂肪酸が溶けている上層を、1.5mL褐色バイアル瓶に入れ、水素炎イオン化型検出器(260℃)が装着されたガスクロマトグラフィー(GC−17A、島津製作所社製)に注入し、C22:6(DHA)等の脂肪酸組成を測定した。キャリアーガスにはヘリウムを用い、キャピラリーカラムにはOmegawax(商標) capillary GC column(シグマアルドリッチ社製、30m×0.32mm×0.25μm)を用いた。
【0070】
(統計解析)
細胞の密度、吸光度、各脂質中の脂肪酸組成、及び培養液中の栄養塩濃度は、Sigmaplot(version 11.0、Systat Software社製)内のStudentのt−テスト、そしてStatview(version 5.0、Abacus Systems Software社製)内の二元配置分散分析を用いて解析した。
【0071】
(結果)
増殖特性
図3は、タヒチ株の増殖曲線を示す。誘導期が培養してから1日目まで続き、その後対数増殖期が続いた。対数増殖期は4日目まで続いた。その後減速期に入り、9日目から定常期が培養期間の終わりまで続いた。タヒチ株の細胞密度が最大になったのは、9〜10日目であった。
【0072】
吸光度
タヒチ株の増殖曲線とともに吸光度を図4に示す。タヒチ株の吸光度では、対数増殖期でも定常期でも、440nm、490nm及び680nm付近に比較的大きなピークが確認された。図5に示すように、490nmと680nmの吸光度比(OD490/OD680)は、増殖曲線よりも細かく変動した。OD490/OD680は、培養日数3日目まで下降し上昇に転じた。続いて、OD490/OD680は、5日目から再び下降し、7日目から上昇に転じた。
【0073】
栄養塩濃度
図6(A)及び(B)は、それぞれ培養液中のリン酸濃度及び硝酸態窒素濃度の経時変化を示す。図6(A)によれば、培養液中のリン酸濃度は、培養日数とともに低下し、3日目以降はリン酸が制限された状態となり、6日目以降はリン酸が枯渇していた。硝酸態窒素濃度は、図6(B)に示すように、8日目以降は枯渇していた。培養液中のリン酸に対する硝酸態窒素のモル比(N/Pモル比)を図6(A)に示す。N/Pモル比は、3日目以降に上昇していた。
【0074】
図5に示すOD490/OD680の変動を考慮すると、リン酸が制限される3日目にOD490/OD680が下降から上昇に転じ、硝酸態窒素が枯渇する8日目の前日である7日目にOD490/OD680が再び下降から上昇に転じていた。このことから、タヒチ株の栄養塩利用形態は、培養日数0〜3日目まではリン酸依存で、3〜5日目にリン酸依存から硝酸態窒素依存に転換し、5日目から7日目まで硝酸態窒素依存になると考えられる。
【0075】
NLにおけるDHAの含有率の変化
図7は、NLに占めるDHAの含有率の経時変化を示す。DHAの含有率は、栄養塩利用形態に応じて変化することが示された。詳細には、DHAの含有率は、リン酸が制限される3日目に上昇から下降に転じ、リン酸依存から硝酸態窒素依存に転換した5日目以降は上昇した。DHAの含有率は、OD490/OD680が2回目に下降から上昇に転じた7日目から3〜5日後である10〜12日目に最大になることが示された。タヒチ株のDHA含量は、対数増殖期ではなく、定常期に最大となることがわかった。
【0076】
以上の結果より、OD490/OD680の経時変化を追跡することで、タヒチ株の栄養塩の利用形態を把握できる。また、OD490/OD680が下降から上昇に転じた後、再度下降から上昇に転じてから3〜5日後が、細胞密度が大きく、DHA含量が高い収穫に最適な時期である。
【0077】
上述した実施の形態は、本発明を説明するためのものであり、本発明の範囲を限定するものではない。すなわち、本発明の範囲は、実施の形態ではなく、特許請求の範囲によって示される。そして、特許請求の範囲内及びそれと同等の発明の意義の範囲内で施される様々な変形が、本発明の範囲内とみなされる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明は、ハプト藻類の培養に好適である。
【符号の説明】
【0079】
1 測定部
2 通知部
3 記憶部
4 表示部
100 データ解析装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7