(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記仮想中心軸をそれぞれ通って第1,第2導電層および誘電体基板をn等分(nは2以上の自然数)する等分割面が誘電体基板の側面と交わる部位に、前記導電連結部をそれぞれ設け、
前記等分割面によって等分されたn個のスロットアンテナ領域には、それぞれ、同一形状の通信スロットを形成するようにしたことを特徴とする請求項1に記載の無指向性小型平面アンテナ装置。
前記第1導電層に設ける第1スリット部と第2導電層に設ける第2スリット部は同一形状であり、前記誘電体基板を挟んで反対称に配置するようにしたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の無指向性小型平面アンテナ装置。
前記第1スリット部の形状と、第2スリット部の形状と、側面スリット部のスリット長とを変化させずに、誘電体基板の厚さおよび/または誘電率を変化させることで、整合周波数を変化させるようにしたことを特徴とする請求項1〜請求項4の何れか1項に記載の無指向性小型平面アンテナ装置。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本発明に係る無指向性小型平面アンテナ装置の第1実施形態を示し、(a)は無指向性小型平面アンテナ装置の第1面(上面)側を示す斜視図、(b)は無指向性小型平面アンテナ装置の第2面(下面)側を示す斜視図、(c)は無指向性小型平面アンテナ装置の第1スロットアンテナ領域における第1スリット部の詳細形状を示す拡大平面図である。
【
図2】
図1に示す構造の無指向性小型平面アンテナ装置の六面を展開して第1〜第4通信スロットの各形状を示した説明図である。
【
図3】
図1に示す構成の無指向性小型平面アンテナ装置を整合周波数fres=117.6MHzとするように形成した基本構成の設計寸法を示す説明図である。
【
図4】(a)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置において、基板厚さhをパラメータとして変化させた場合を示す反射係数|S11|の周波数特性図である。(b)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置において、基板厚さhをパラメータとして変化させた場合を示す放射効率ηradの周波数特性図である。
【
図5】基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置における整合周波数fres、放射効率最大周波数f
η、放射効率最大値ηmaxの基板厚さhに対する依存特性図である。
【
図6】(a)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置において、基板厚さhをパラメータとして変化させた場合を示す水平偏波の絶対利得Gaの垂直面パターン特性図である。(b)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置において、基板厚さhをパラメータとして変化させた場合を示す垂直偏波の絶対利得Gaの垂直面パターン特性図である。
【
図7】(a)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置において、基板比誘電率εrをパラメータとして変化させた場合を示す反射係数|S11|の周波数特性図である。(b)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置において、基板比誘電率εrをパラメータとして変化させた場合を示す放射効率ηradの周波数特性図である。
【
図8】基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置における整合周波数fres、放射効率最大周波数f
η、放射効率最大値ηmaxの基板比誘電率εrに対する依存特性図である。
【
図9】(a)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置において、基板比誘電率εrをパラメータとして変化させた場合を示す水平偏波の絶対利得Gaの垂直面パターン特性図である。(b)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置において、基板比誘電率εrをパラメータとして変化させた場合を示す垂直偏波の絶対利得Gaの垂直面パターン特性図である。
【
図10】
図1に示す構成の無指向性小型平面アンテナ装置を整合周波数fres=169.7MHzとするように形成した試作構成の設計寸法を示す説明図である。
【
図11】試作構成の設計寸法に基づいて試作した無指向性小型平面アンテナ装置の第1面(上面)側の外観図である。
【
図12】試作した無指向性小型平面アンテナ装置で実際に得られた実測結果とシミュレーション結果を示す反射係数|S11|の周波数特性図である。
【
図13】基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置と導電性プレートとの配置構造を示す説明図である。
【
図14】大きさ無限大の導電性プレートに対する離隔距離Hpをパラメータとして変化させた場合を示す反射係数|S11|の周波数特性図である。
【
図15】基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置における共振周波数fresおよび共振時反射係数|S11|minの離隔距離Hpに対する依存特性図である。
【
図16】基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置における放射効率最大周波数f
ηおよび最大放射効率ηmaxの離隔距離Hpに対する依存特性図である。
【
図17】導電性プレートの幅Wpをパラメータとして変化させた場合を示す反射係数|S11|の周波数特性図である。
【
図18】基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置における共振周波数fresおよび共振時反射係数|S11|minの導電性プレートの幅Wpに対する依存特性図である。
【
図19】基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置における放射効率最大周波数f
ηおよび最大放射効率ηmaxの導電性プレートの幅Wpに対する依存特性図である。
【
図20】(a)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置の第1面(上面)に設けた第1導電層の外表面における瞬時的な電流ベクトル分布図である。(b)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置の第1面(上面)に設けた第1導電層の内表面における瞬時的な電流ベクトル分布図である。
【
図21】(a)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置における通信スロットを一部変更した第1改変例である。(b)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置における通信スロットを一部変更した第2改変例である。
【
図22】第2実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置の概略平面図である。
【
図23】第3実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置の概略平面図である。
【
図24】第4実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置の概略平面図である。
【
図25】(a)は、第5実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置の第1構成例を示す概略平面図である。(b)は、第5実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置の第2構成例を示す概略平面図である。
【
図26】(a)は、第6実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置の第1構成例を示す概略平面図である。(b)は、第6実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置の第2構成例を示す概略平面図である。
【
図27】第7実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置の概略平面図である。
【
図28】第8実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置の概略平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
次に、添付図面に基づいて、本発明に係る無指向性小型平面アンテナ装置の実施形態につき説明する。
【0015】
図1および
図2は、第1実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Aを示すものである。無指向性小型平面アンテナ装置1Aは、一辺がW[mm]の略正方形で厚さh[mm]の誘電体基板2と、誘電体基板2の第1面21に形成された第1導電層3と、誘電体基板2の第2面22に形成された第2導電層4で構成される。
【0016】
誘電体基板2は、対向する二面が平行な板状の誘電体板より構成するもので、以下の説明では、仮に、第1面21側を上面、第2面22側を下面と呼ぶ場合がある。また、誘電体基板2は、正多角形(正方形)であるから、上面の中心と下面の中心を通る軸線状に必ず重心がある。以下の説明では、誘電体基板2の第1面21と第2面22に直交して重心を通る軸線を仮想中心軸CAと呼ぶ。この仮想中心軸CAが第1導電層3と交差する部位に給電ポート5を設け、この給電ポート5から信号を注入、あるいは信号を取り出す。なお、同軸ケーブルを給電ポート5に接続する場合、同軸ケーブルの外部導体を第1導電層3に、中心導体を第2導電層4にそれぞれ導通させる。また、通信ポート5を第2導電層4側に設けるようにしても良い。
【0017】
第1導電層3は、誘電体基板2の第1面21に所要厚さの導電体で形成されるもので、所要形状の上面第1スリット部31、上面第2スリット部32、上面第3スリット部33、上面第4スリット部34を設ける。これら上面第1〜第4スリット部31〜33は、全て同一形状で、第1導電層3の中心点(仮想中心軸CAとの交点)に対して点対称に配置される。
【0018】
第2導電層4は、誘電体基板2の第2面22に所要厚さの導電体で形成されるもので、所要形状の下面第1スリット部41、下面第2スリット部42、下面第3スリット部43、下面第4スリット部44を設ける。これら上面第1〜第4スリット部31〜33は、全て同一形状で、第1導電層3の中心点(仮想中心軸CAとの交点)に対して点対称に配置される。
【0019】
なお、上面第1〜第4スリット部31〜34および下面第1〜第4スリット部41〜44は、第1,第2導電層3,4の一部を除去して形成されるもので、誘電体基板2の外表面が表出した部分である。同様に、誘電体基板2の四側面23も外部に露出しているので、各側面は第1側面スリット部231、第2側面スリット部232、第3側面スリット部233、第4側面スリット部234となる。
【0020】
更に、第1〜第4側面スリット部231〜234の各中心位置には、第1導電層3と第2導電層4とを電気的に連結する第1導電連結部61、第2導電連結部62、第3導電連結部63、第4導電連結部64を形成してある。よって、第1側面スリット部231は、第1導電連結部61を境界として第1側面Aスリット部231aと第1側面Bスリット部231bに分けられ、第2側面スリット部232は、第2導電連結部62を境界として第2側面Aスリット部232aと第2側面Bスリット部232bに分けられ、第3側面スリット部233は、第3導電連結部63を境界として第3側面Aスリット部233aと第3側面Bスリット部233bに分けられ、第4側面スリット部234は、第4導電連結部64を境界として第4側面Aスリット部234aと第4側面Bスリット部234bに分けられる。
【0021】
なお、本実施形態の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおいては、第1〜第4導電連結部61〜64は、いずれも幅d[mm]の帯状導電層を誘電体基板2の四側面23にそれぞれ形成するものとしたが、導電連結部の構造はこれに限らず、誘電体基板2の四側面23の近傍に形成したスルーホールで第1導電層3と第2導電層4を連結するような導電連結部としても構わない。
【0022】
また、第1〜第4導電連結部61〜64は、誘電体基板2の第1〜第4側面スリット部231〜234の中心部に設けたのは、無指向性小型平面アンテナ装置1Aを4つの領域に等分割するためである。すなわち、仮想中心軸CAをそれぞれ通って第1,第2導電層3,4および誘電体基板2をn等分(nは2以上の自然数)する等分割面が誘電体基板2の側面と交わる部位に、導電連結部をそれぞれ設ければ、等分割面によって等分されたn個のスロットアンテナ領域を形成できるのである。
【0023】
本実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Aでは、仮想中心軸CAを通って誘電体基板2の第1側面スリット部231に直交する等分割面が無指向性小型平面アンテナ装置1Aの外表面と交わる第1分割線PL1と、仮想中心軸CAを通って誘電体基板2の第2側面スリット部232に直交する等分割面が無指向性小型平面アンテナ装置1Aの外表面と交わる第2分割線PL2と、仮想中心軸CAを通って誘電体基板2の第3側面スリット部233に直交する等分割面が無指向性小型平面アンテナ装置1Aの外表面と交わる第3分割線PL3と、仮想中心軸CAを通って誘電体基板2の第4側面スリット部234に直交する等分割面が無指向性小型平面アンテナ装置1Aの外表面と交わる第4分割線PL4とによって、4つのスロットアンテナ領域を形成する。
【0024】
具体的には、第1等分割線PL1と第2等分割線PL2によって区画された第1スロットアンテナ領域11に第1通信スロット11Sを、第2等分割線PL2と第3等分割線PL3によって区画された第2スロットアンテナ領域12に第2通信スロット12Sを、第3等分割線PL3と第4等分割線PL4によって区画された第3スロットアンテナ領域13に第3通信スロット13Sを、第4等分割線PL4と第1等分割線PL1によって区画された第4スロットアンテナ領域14に第4通信スロット14Sをそれぞれ設けるのである。
【0025】
第1通信スロット11Sは、第1スロットアンテナ領域11内に設けられている各スリット部(上面第1スリット部31、第1側面Aスリット部231a、第2側面Bスリット部232b、下面第1スリット部41)から構成される。
【0026】
上面第1スリット部31は、第1側面Aスリット部231aの分割端側(第1導電連結部61の形成側)に第1端31a1が連結され、他方の第2端が第1等分割線PL1に沿って中心方向に延出する幅SW1の基端スリット31aと、この基端スリット31aの第2端側へ屈曲状に連結され、第1側面Aスリット部231aと平行に延出する幅SW2の第1屈曲スリット31bと、この第1屈曲スリット31bの延出端側へ屈曲状に連結され、第2側面Bスリット部232bと平行に延出する幅SW3の第2屈曲スリット31cと、この第2屈曲スリット31cの延出端側へ屈曲状に連結され、第2等分割線PL2に沿って中心から遠ざかるように延出する幅SW4の先端スリット31dから成る。よって、上面第1スリット部31は、誘電体基板2の幅Wに匹敵するスリット長を備えるものとなる。なお、
図1(c)に示すように、基端スリット31aのスリット長はSL1、第1屈曲スリット31bのスリット長はSL2、第2屈曲スリット31cのスリット長はSL3、先端スリット31dのスリット長はSL4とする。
【0027】
下面第1スリット部41は、第2側面Bスリット部232bの分割端側(第2導電連結部62の形成側)に第1端41a1が連結され、他方の第2端が第4等分割線PL4に沿って中心方向に延出する幅SW1の基端スリット41aと、この基端スリット41aの第2端側へ屈曲状に連結され、第4側面Bスリット部232bと平行に延出する幅SW2の第1屈曲スリット41bと、この第1屈曲スリット41bの延出端側へ屈曲状に連結され、第1側面Aスリット部231aと平行に延出する幅SW3の第2屈曲スリット41cと、この第2屈曲スリット41cの延出端側へ屈曲状に連結され、第1等分割線PL1に沿って中心から遠ざかるように延出する幅SW4の先端スリット41dから成る。よって、下面第1スリット部41も、誘電体基板2の幅Wに匹敵するスリット長を備えるものとなる。
【0028】
すなわち、
図2に示すように、第1スロットアンテナ領域11には、上面第1スリット部31(先端スリット31d→第2屈曲スリット31c→第1屈曲スリット31b→基端スリット31a)から第1側面Aスリット部231aおよび第2側面Bスリット部232bを経て下面第1スリット部41(基端スリット41a→第1屈曲スリット41b→第2屈曲スリット41c→先端スリット41d)に至る長尺な第1通信スロット11Sを構成できる。
【0029】
同様に、第2スロットアンテナ領域12には、上面第2スリット部32(先端スリット32d→第2屈曲スリット32c→第1屈曲スリット32b→基端スリット32a)から第2側面Aスリット部232aおよび第3側面Bスリット部233bを経て下面第2スリット部42(基端スリット42a→第1屈曲スリット42b→第2屈曲スリット42c→先端スリット42d)に至る長尺な第2通信スロット12Sを構成できる。
【0030】
第3スロットアンテナ領域13には、上面第3スリット部33(先端スリット33d→第2屈曲スリット33c→第1屈曲スリット33b→基端スリット33a)から第3側面Aスリット部233aおよび第4側面Bスリット部234bを経て下面第3スリット部43(基端スリット43a→第1屈曲スリット43b→第2屈曲スリット43c→先端スリット43d)に至る長尺な第3通信スロット13Sを構成できる。
【0031】
第4スロットアンテナ領域14には、上面第4スリット部34(先端スリット34d→第2屈曲スリット34c→第1屈曲スリット34b→基端スリット34a)から第4側面Aスリット部234aおよび第1側面Bスリット部231bを経て下面第4スリット部44(基端スリット44a→第1屈曲スリット44b→第2屈曲スリット44c→先端スリット44d)に至る長尺な第4通信スロット14Sを構成できる。
【0032】
上記のように構成した無指向性小型平面アンテナ装置1Aでは、第1〜第4スロットアンテナ領域11〜14に、それぞれ長尺なスロット長を有する第1〜第4通信スロット11S〜114を等間隔に配置したこととなる。スロットアンテナでは、整合周波数の約半波長のスロット長が必要であるが、本実施形態の無指向性小型平面アンテナ装置1Aでは、誘電体基板2の四側面23をスロット開口として利用すると共に、上面および下面に形成するスリットを適宜折り曲げてスリット長を長くすることで、基板直径の0.1波長程度まで小型化できる。
【0033】
なお、本実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Aでは、第1導電層3に設ける上面第1〜第4スリット部31〜34と、第2導電層4に設ける下面第1〜第4スリット部41〜44は全て同一形状であり、誘電体基板2を挟んでそれぞれ反対称に配置されるものとした。斯くすれば、
図2に示すように、上面第1〜第4スリット部31〜34が形成される第1導電層3と、下面第1〜第4スリット部41〜44が形成される第2導電層4とは、同一形状となるので、第1導電層3と第2導電層4を同一のエッチング用マスクで形成できるという利点がある。無論、上面第1〜第4スリット部31〜34の形状と下面第1〜第4スリット部41〜44の形状は、必ずしも同一にする必要は無く、スリット幅SWやスリット長SLが上面と下面で異なるようにしても構わない。
【0034】
図3に示すのは、基板幅W=300[mm]、基板厚さh=16[mm]、基板比誘電率εr=2.17の誘電体基板2をベースに、分割数n=4で整合周波数fres=117.6[MHz]の無指向性小型平面アンテナ装置1Aを、有限要素法シミュレーションソフトウェアHFSS(Ansys社)を用いて設計した例である。第1〜第4通信スロット11S〜114のスロット全長は約870mmで、整合周波数の波長λresの約0.341倍である。整合周波数の波長λresに対して、基板幅Wは0.118倍に抑制できていることが分かる。なお、以下の説明では、この設計寸法に基づく無指向性小型平面アンテナ装置1Aを基本構成と呼ぶ。
【0035】
基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおいて、誘電体基板2の厚さ(基板厚さh)が及ぼす影響について、
図4〜
図6に基づき説明する。
【0036】
基本構成の基板厚さhを16mmから変化させた場合のアンテナ特性を
図4に示す。
図4(a)は、反射係数|S11|の周波数特性であり、
図4(b)は放射効率ηradの周波数特性を示す。基本構成の基板厚さh=16[mm]の場合、反射係数|S11|が−10dB以下となる周波数比帯域は約0.42%と狭帯域である。そして、誘電体基板2の基板厚hが薄くなるほど、整合周波数帯域が狭くなることがわかる。ただし、基板厚さhを変えた場合に、各寸法を最適化することによって整合が改善される可能性がある。また、基本構成の基板厚さh=16[mm]の時、整合周波数fres=117.6[MHz]であり、誘電体基板2の基板幅W=300[mm]は、整合周波数の波長λres=2551[mm]の0.118倍である。基板厚さhを半分の8mmに薄くすると、整合周波数fres=96.3[MHz]と0.82倍に低周波数化し、誘電体基板2の基板幅Wは約0.96λresになるが、ηradは−3.0dBに劣化することが分かる。
【0037】
この
図4より、誘電体基板2の基板厚さhを変化させると整合周波数fresは変化するが、整合がとれる周波数が必ず存在する状態が維持されていることが分かる。また、放射効率ηradも基板厚さhを変化させることで変化していることが分かる。そこで、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおける整合周波数fres、放射効率最大周波数f
η、放射効率最大値ηmaxの基板厚さhに対する依存特性を
図5に示す。
【0038】
図5より、放射効率ηradが最大となる放射効率最大周波数f
ηは、整合周波数fresにほぼ一致したまま変化することが分かる。基板厚さhを小さくすると整合周波数fresが低くなるので、アンテナ本体の小型化に有効である。逆に、誘電体基板2の基板厚さhを小さくしても、整合周波数fresを変えないためには、アンテナ径(誘電体基板2の幅W)を小さくすればよいので、無指向性小型平面アンテナ装置1Aは更に小型、軽量となる。ただし、放射効率最大周波数f
ηにおける最大放射効率ηmaxは、基板厚さhが小さくなるにしたがって低下する。
【0039】
図6(a)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおいて、誘電体基板2の基板厚さhをパラメータとして変化させた場合における水平偏波の絶対利得Gaの垂直面パターン特性図であり、
図6(b)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおいて、誘電体基板2の基板厚さhをパラメータとして変化させた場合における垂直偏波の絶対利得Gaの垂直面パターン特性図である。無指向性小型平面アンテナ装置1Aは水平面内において水平偏波および垂直偏波のどちらもほぼ無指向性である。ただし、水平偏波が垂直偏波より約10dB強く、誘電体基板2の基板厚さhが薄くなるほど交差偏波識別度が大きくなり、垂直偏波の割合が小さくなることが分かる。
【0040】
次に、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおいて、誘電体基板2を構成する誘電体の比誘電率εrが及ぼす影響について、
図7〜
図9に基づき説明する。
【0041】
基本構成の基板比誘電率εrを2.17から変化させた場合のアンテナ特性を
図7に示す。
図7(a)は、反射係数|S11|の周波数特性であり、
図7(b)は放射効率ηradの周波数特性を示す。
図7より、基板比誘電率εrを変化させることで整合周波数fresは変化するが、整合が得られる周波数が必ず存在し続けることが分かる。
【0042】
また、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおける整合周波数fres、放射効率最大周波数f
η、放射効率最大値ηmaxの基板比誘電率εrに対する依存特性を
図8に示す。
図8より、放射効率最大周波数f
ηは整合周波数fresにほぼ一致し、基板比誘電率εrを大きくすることにより低くなるが、放射効率ηradも低下することが分かる。基板比誘電率εr=6の高誘電率材料を用いることにより、整合周波数fresを117.6[MHz]から77.2[MHz]に低周波数化できる反面、放射効率ηradも−5.9[dB]に劣化してしまう。
【0043】
図9(a)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおいて、誘電体基板2の基板比誘電率εrをパラメータとして変化させた場合における水平偏波の絶対利得Gaの垂直面パターン特性図であり、
図9(b)は、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおいて、誘電体基板2の基板比誘電率εrをパラメータとして変化させた場合における垂直偏波の絶対利得Gaの垂直面パターン特性図である。無指向性小型平面アンテナ装置1Aは水平面内において水平偏波および垂直偏波のどちらもほぼ無指向性である。また、誘電体基板2の基板比誘電率εrを高めると、基板厚さhを薄くした場合と同様に、交差偏波識別度が高まることが分かる。
【0044】
以上のように、無指向性小型平面アンテナ装置1Aを構成する誘電体基板2の基板厚さhを薄くすること、基板比誘電率εrを大きくすることにより、整合周波数fresを低周波数化することができる。等価的にこれらの設計変更によりアンテナ本体の小型化が可能である反面、整合周波数帯域は狭くなる。なお、通信スロットを設けるスロットアンテナ領域の分割数nを4よりも小さくすれば、各通信スロットのスロット長をアンテナ寸法に対して相対的に長くすることができるので、整合周波数fresの低周波数化が可能と考えられる。よって、スロットアンテナ領域の分割数nを小さくすれば、整合周波数fresを保ったままアンテナ本体を小型化することができる。
【0045】
図10に示すのは、基板幅W=120[mm]、基板厚さh=1.588[mm]、基板比誘電率εr=2.17の誘電体基板2をベースに、分割数n=4で整合周波数fres=169.7[MHz]の無指向性小型平面アンテナ装置1Aを、HFSSを用いて設計した例である。整合周波数の波長λresに対して、基板幅Wは0.068倍と、基本構成と比べて小さく、放射効率ηradの計算値は−4.3[dB]である。なお、以下の説明では、この設計寸法に基づく無指向性小型平面アンテナ装置1Aを試作構成と呼ぶ。
【0046】
図11は、試作構成の設計寸法に基づいて試作した無指向性小型平面アンテナ装置1Aの第1面(上面)側の外観を示す。なお、第1〜第4導電連結部61〜64は、3[mm]幅の銅テープを半田付けして構成してある。
図12は、この試作アンテナで実際に得られた実測結果と、有限要素法による電磁界解析シミュレータHFSS(Ansys社)にて行ったシミュレーション結果を示す反射係数|S11|の周波数特性図である。多少のずれはあるものの、試作構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおいてもほぼ設計周波数で整合が得られ、整合動作が確認できた。なお、計算より良い整合が得られているが、試作精度が低いためにn=4の対称性が崩れているのが原因と考えられる。
【0047】
上述したように、本実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Aは低姿勢であるが、上面と下面の両方に跨がる通信スロットを備えるので、アンテナ収容筐体などの導電体に接触させた状態で無指向性小型平面アンテナ装置1Aを設置すると、特性が劣化すると考えられる。そこで、携帯無線機などの筐体に近接設置する場合を想定して、導体平板へ近接することの影響について説明する。
図13は、平坦で幅Wpの導電性プレート7から離隔距離Hpだけ離して無指向性小型平面アンテナ装置1Aを平行に配置した状態を示す。
【0048】
まず、導電性プレート7の幅Wp=∞とし、無限大の導電性プレート7から基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aまでの離隔距離Hpを変化させた場合のアンテナ特性(反射係数|S11|の周波数特性)の変化を
図14に示す。基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおける共振周波数fresおよび共振時反射係数|S11|minの離隔距離Hpに対する依存特性図を
図15に示す。基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおける放射効率最大周波数f
ηおよび最大放射効率ηmaxの離隔距離Hpに対する依存特性を
図16に示す。
【0049】
無指向性小型平面アンテナ装置1Aが導電性プレート7に近接すると、まず共振時反射係数|S11|minの増加が起こり、次に共振周波数fresが高周波数化することが分かる。離隔距離Hpが400[mm](約0.16λres)まで近づいても、導電性プレート7がない状態で整合がとれる周波数fres=117.6MHzにおいて|S11|<−6dBの整合周波数が維持されることが分かる。また、無指向性小型平面アンテナ装置1Aが導電性プレート7に近づくと、整合の劣化だけでなく、放射効率ηradが劣化することが分かる。離隔距離Hpが200mmに狭まると、放射効率ηradは−4.7dBにまで劣化する。さらに、離隔距離Hpが200mm以下に狭まると、急激に整合周波数fresや放射効率最大周波数f
ηが変化する。
【0050】
次に、導電性プレート7の厚さは1mmとし、無指向性小型平面アンテナ装置1Aとの離隔距離Hpを50mm(約0.02λres)に固定し、正方形の導電性プレート7のプレート幅Wpを変化させた場合のアンテナ特性(反射係数|S11|の周波数特性)の変化を
図17に示す。基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおける共振周波数fresおよび共振時反射係数|S11|minのプレート幅Wpに対する依存特性図を
図18に示す。基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおける放射効率最大周波数f
ηおよび最大放射効率ηmaxのプレート幅Wpに対する依存特性を
図19に示す。
【0051】
無指向性小型平面アンテナ装置1Aが導電性プレート7に近接(離隔距離Hp=50mm)していても、プレート幅Wp=150[mm](約0.059λres)のとき、導電性プレート7がない状態で整合がとれる周波数fres=117.6[MHz]において|S11|<−8dBの整合が維持できることが分かる。プレート幅Wpが200[mm]まで大きくなると、導電性プレート7がない状態で整合がとれる周波数fres=117.6[MHz]において|S11|>−3dBに劣化する。プレート幅Wpがさらに大きくなると、整合周波数fresの高周波化が急激である。
【0052】
図17〜
図19より、導体近接によるアンテナ特性劣化は、反射係数|S11|や放射効率ηradの劣化というよりも、整合周波数fresのずれによるものが大きいことが分かる。したがって、導体近接による整合周波数fresのずれを考慮して整合周波数をあらかじめ低周波数側にずらして設計することが、導体近接対策として有効と考えられる。
【0053】
ここで、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1A(基板厚さh=16[mm]、整合周波数fres=118[MHz])における電流分布をベクトル表示で
図20に示す。
【0054】
図20(a)は、無指向性小型平面アンテナ装置1Aの第1面(上面)に設けた第1導電層3の外表面に流れる電流分布を示し、
図20(b)は、無指向性小型平面アンテナ装置1Aの第1面(上面)に設けた第1導電層3の内表面(誘電体基板2の第1面に接している面)に流れる電流分布を示す。第1導電層3の外表面および内表面の何れにおいても、上面第1〜第4スリット部31〜34の縁と第1導電層3の外縁に強い電流が流れている。一方、内表面の中央部では放射状に電流が流れ、外表面の中央部では回転方向に電流が流れており、この回転方向の電流が水平偏波放射に関与していると考えられる。なお、アンテナ構造の反対称性より、第2導電層4の表面側と内面側には、
図20(a),(b)とは反対称に電流が流れている。
【0055】
以上説明したように、本実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Aは、目的とする整合周波数fresの波長λresの0.1倍程度のアンテナ幅で構成でき、しかも低姿勢で、無指向性を有する。したがって、誘電体基板2の厚さを薄くすることにより、放射効率の劣化と狭帯域化が伴うものの、アンテナ本体の小型、軽量化が可能である。なお、整合周波数帯域は約1%以下と狭帯域であるものの、隣接システムとの干渉を抑える必要性の高い通信アプリケーションでは、その狭帯域を活かすことができる。
【0056】
加えて、無指向性小型平面アンテナ装置1Aの主偏波は水平偏波であるが、約−10dBの垂直偏波を有する。したがって、両偏波にある程度の感度を有する無指向性小型平面アンテナ装置1Aは、通常のループアンテナのように指向性が一つの偏波面に制限されないので、この特性に適した通信アプリケーションがあると考えられる。
【0057】
さらに、無指向性小型平面アンテナ装置1Aは、整合周波数fresの波長λresの約0.16倍の離隔距離までなら導電性プレート7に近接しても、|S11|<−6dBの整合が維持できる。また、整合周波数fresのずれが整合劣化の主因であるので、近接設置物による整合周波数の高周波化をキャンセルするように、整合周波数を低くずらして無指向性小型平面アンテナ装置1Aを設計することが有効と考えられる。
【0058】
また、無指向性小型平面アンテナ装置1Aに設ける通信スロットの形状も、必要とされる特性に応じて適宜変更して構わない。例えば、
図21(a)に示す無指向性小型平面アンテナ装置1A′は、第1実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Aの第1改変例であり、上面第1スリット31′の先端スリット31d′、上面第2スリット32′の先端スリット32d′、上面第3スリット33′の先端スリット33d′、上面第4スリット34′の先端スリット34d′、下面第1スリット41′の先端スリット41d′、下面第2スリット42′の先端スリット42d′、下面第3スリット43′の先端スリット43d′、下面第4スリット44′の先端スリット44d′を、全て中心方向へ延出させた構造である。また、
図21(b)に示す無指向性小型平面アンテナ装置1A″は、第1実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Aの第2改変例であり、上面第1スリット31′の第2屈曲スリット31c′、上面第2スリット32′の第2屈曲スリット32c′、上面第3スリット33′の第2屈曲スリット33c′、上面第4スリット34′の第2屈曲スリット34c′、下面第1スリット41′の第2屈曲スリット41c′、下面第2スリット42′の第2屈曲スリット42c′、下面第3スリット43′の第2屈曲スリット43c′、下面第4スリット44′の第2屈曲スリット44c′を、全て先端とし、等分割線にほぼ平行に設ける先端スリットを設けない構造である。
【0059】
図22に示すのは、第2実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Bである。本実施形態の無指向性小型平面アンテナ装置1Bも、第1〜第4スロットアンテナ領域11〜14にそれぞれ長尺なスロット長を有する第1〜第4通信スロット11S〜114を等間隔に配置する構造である。これに加えて、第1スロットアンテナ領域11においては、第2側面Bスリット部232bの上縁と連なる上縁第1スリット部351を第1導電層3に設けると共に、第1側面Aスリット部231aの下縁と連なる下縁第1スリット部451を設ける。同様に、第2スロットアンテナ領域12においては、第3側面Bスリット部233bの上縁と連なる上縁第2スリット部352を第1導電層3に設けると共に、第2側面Aスリット部232aの下縁と連なる下縁第2スリット部452を設ける。第3スロットアンテナ領域13においては、第4側面Bスリット部234bの上縁と連なる上縁第3スリット部353を第1導電層3に設けると共に、第3側面Aスリット部233aの下縁と連なる下縁第3スリット部453を設ける。第4スロットアンテナ領域14においては、第1側面Bスリット部231bの上縁と連なる上縁第4スリット部354を第1導電層3に設けると共に、第4側面Aスリット部234aの下縁と連なる下縁第4スリット部454を設ける。
【0060】
図23に示すのは、第3実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Cである。本実施形態の無指向性小型平面アンテナ装置1Cでは、誘電体基板2の四つ角に第1〜第4導電連結部61〜64をそれぞれ設けることで、略三角形状の第1〜第4スロットアンテナ領域11〜14を形成したものである。第1スロットアンテナ領域11においては、第1導電層3に設けた上面第1スリット部31から第1側面スリット部231を経て第2導電層4に設けた下面第1スリット部41に連なる第1通信スロット11Sが形成される。同様に、第2スロットアンテナ領域12においては、第1導電層3に設けた上面第2スリット部32から第2側面スリット部232を経て第2導電層4に設けた下面第2スリット部42に連なる第2通信スロット12Sが形成される。第2スロットアンテナ領域12においては、第1導電層3に設けた上面第2スリット部32から第2側面スリット部232を経て第2導電層4に設けた下面第2スリット部42に連なる第2通信スロット12Sが形成される。第3スロットアンテナ領域13においては、第1導電層3に設けた上面第3スリット部33から第3側面スリット部233を経て第2導電層4に設けた下面第3スリット部43に連なる第3通信スロット13Sが形成される。第4スロットアンテナ領域14においては、第1導電層3に設けた上面第4スリット部34から第4側面スリット部234を経て第2導電層4に設けた下面第4スリット部44に連なる第4通信スロット14Sが形成される。なお、無指向性小型平面アンテナ装置1Cの第1〜第4スロットアンテナ領域11〜14は、誘電体基板2の四側縁を長辺とする三角形状であることから、上面第1〜第4スリット部31〜34および下面第1〜第4スリット部41〜44は、基端スリットから屈曲スリットを経て先端スリットへ連なる形状となる。また、上面第1〜第4スリット部31〜34および下面第1〜第4スリット部41〜44の屈曲スリットは、その途中でスリット幅が異なる段差構造としても良い。
【0061】
図24に示すのは、第4実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Dである。本実施形態の無指向性小型平面アンテナ装置1Dでは、円形の誘電体基板2Dを用い、その上面に円形の第1導電層3Dを、下面に円形の第2導電層4Dを設け、略扇形の第1〜第4スロットアンテナ領域11〜14を形成したものである。円形の誘電体基板2Dは正多角形の基板と同様に、上面の中心と下面の中心を通る軸線状に必ず重心があるので、仮想中心軸を通るように等分割することができる。なお、焦点が2つある楕円形の基板にも仮想中心軸が存在するが、同一形状に等分割することはできないので、水平方向無指向性を実現する上で障害になると考えられる。しかしながら、端末ケースのサイズ等から正円形状の誘電体基板を使用した無指向性小型平面アンテナ装置1Dを収納できない場合、長軸と短軸の差が小さい楕円形の誘電体基板を用いて無指向性小型平面アンテナ装置1Dを作れば、無指向性に近い特性を得られる可能性がある。
【0062】
上記無指向性小型平面アンテナ装置1Dの第1スロットアンテナ領域11においては、第1導電層3Dに設けた上面第1スリット部31から円弧状の第1側面スリット部231を経て第2導電層4Dに設けた下面第1スリット部41に連なる第1通信スロット11Sが形成される。同様に、第2スロットアンテナ領域12においては、第1導電層3Dに設けた上面第2スリット部32から円弧状の第2側面スリット部232を経て第2導電層4Dに設けた下面第2スリット部42に連なる第2通信スロット12Sが形成される。第2スロットアンテナ領域12においては、第1導電層3Dに設けた上面第2スリット部32から円弧状の第2側面スリット部232を経て第2導電層4Dに設けた下面第2スリット部42に連なる第2通信スロット12Sが形成される。第3スロットアンテナ領域13においては、第1導電層3Dに設けた上面第3スリット部33から円弧状の第3側面スリット部233を経て第2導電層4Dに設けた下面第3スリット部43に連なる第3通信スロット13Sが形成される。第4スロットアンテナ領域14においては、第1導電層3Dに設けた上面第4スリット部34から円弧状の第4側面スリット部234を経て第2導電層4Dに設けた下面第4スリット部44に連なる第4通信スロット14Sが形成される。なお、無指向性小型平面アンテナ装置1Cの第1〜第4スロットアンテナ領域11〜14は、それぞれ扇形であることから、上面第1〜第4スリット部31〜34および下面第1〜第4スリット部41〜44は、基端スリットから屈曲スリットを経て先端スリットへ連なる形状で、各屈曲スリットは、第1〜第4側面スリット部231〜234に沿った円弧形状である。また、各屈曲スリットの途中でスリット幅が異なる段差構造としても良い。
【0063】
図25(a)に示すのは、第5実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Eで、分割数nを6としたものである。本実施形態の無指向性小型平面アンテナ装置1Eでは、六角形の誘電体基板2Eを用い、その上面に六角形の第1導電層3Eを、下面に六角形の第2導電層4Eを設け、各辺の中央部に第1〜第6導電連結部61〜66を設けることで、第1〜第6スロットアンテナ領域11〜16に等分割したものである。第1〜第6スロットアンテナ領域11〜16には、それぞれ第1〜第6通信スロット11S〜16Sが設けられるが、各通信スロットのスリット長はアンテナ径に対してあまり長くとることができない。
図25(b)に示す無指向性小型平面アンテナ装置1E′は、第5実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Eの改変例で、各角部に第1〜第6導電連結部61〜66を設けることで、第1〜第6スロットアンテナ領域11〜16に等分割したものである。この無指向性小型平面アンテナ装置1E′においても、各通信スロットのスリット長はアンテナ径に対してあまり長くとることができない。このため、分割数nが4より大きい無指向性小型平面アンテナ装置1E,1E′では、第1実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Aと比較して、アンテナ本体の小型・軽量化に不利であると考えられる。
【0064】
一方、
図26に示すのは、第6実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Fで、分割数nを3としたものである。本実施形態の無指向性小型平面アンテナ装置1Fでは、三角形の誘電体基板2Fを用い、その上面に三角形の第1導電層3Fを、下面に三角形の第2導電層4Fを設け、各辺の中央部に第1〜第3導電連結部61〜63を設けることで、第1〜第3スロットアンテナ領域11〜13に等分割したものである。第1〜第3スロットアンテナ領域11〜13には、それぞれ第1〜第3通信スロット11S〜13Sが設けられ、各通信スロットのスリット長はアンテナ径に対して長くとることができる。
図26(b)に示す無指向性小型平面アンテナ装置1F′は、第6実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Fの改変例で、各角部に第1〜第3導電連結部61〜63を設けることで、第1〜第3スロットアンテナ領域11〜13に等分割したものである。この無指向性小型平面アンテナ装置1F′においても、各通信スロットのスリット長はアンテナ径に対して長くとることができる。このため、分割数nが4より小さい無指向性小型平面アンテナ装置1F,1F′では、第1実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Aと比較して、アンテナ本体の小型・軽量化に有利であると考えられる。
【0065】
図27に示すのは、第7実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Gで、分割数nを2としたものである。本実施形態の無指向性小型平面アンテナ装置1Gでは、四角形の誘電体基板2を用い、対向する二辺の各中央部に第1,第2導電連結部61,62を設けることで、第1,第2スロットアンテナ領域11,12に等分割したものである。第1スロットアンテナ領域に設けられる第1通信スロット11Sは、第1導電層3に設けた上面第1スリット部31から第1側面Aスリット部231a、第2側面スリット部232、第3側面Bスリット部233bを経て第2導電層4に設けた下面第1スリット部41に連なるものである。第2スロットアンテナ領域に設けられる第2通信スロット12Sは、第1導電層3に設けた上面第2スリット部32から第3側面Aスリット部233a、第4側面スリット部234、第1側面Bスリット部231bを経て第2導電層4に設けた下面第2スリット部42に連なるものである。
【0066】
第1通信スロット11Sの上面第1スリット部31は、第1側面Aスリット部231aに第1端が連結され、他方の第2端が中心方向に延出する所要幅の基端スリット31と、基端スリット31の第2端側へ屈曲状に連結され、第1側面Aスリット部231aと平行に延出する所要幅の第1屈曲スリット31bと、第1屈曲スリット31bの延出端へ屈曲状に連結され、第2側面スリット部232と平行に延出する第2屈曲スリット31cと、第2屈曲スリット31cの延出端へ屈曲状に連結され、第3側面Bスリット部233bと平行に延出する第3屈曲スリット31dと、第3屈曲スリット31dの延出端側へ屈曲状に連結され、中心から遠ざかるように延出する先端スリット31eよりなる。よって、上面第1スリット部31は、基板全周の1/2近いスリット長となる。なお、第2屈曲スリット31cは、スリット幅と第2側面スリット部232からの離隔距離が異なる第2屈曲前段スリット31c1と第2屈曲後段スリット31c2からなる段差構造である。
【0067】
説明を省略した上面第2スリット部32および下面第1,第2スリット部41,42は、全て上面第1スリット部31と同一形状であるから、それぞれ基板全周の1/2近いスリット長を備えるので、第1,第2通信スロット11S、12Sの各スロット長は、分割数n=4とした基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aにおける第1〜第4通信スロット11S〜14Sの各スロット長と比べて非常に長いものとなる。したがって、分割数nを2とした無指向性小型平面アンテナ装置1Gでは、基本構成の無指向性小型平面アンテナ装置1Aと比較して、アンテナ寸法を変えずに低周波数化を実現できると考えられる。
【0068】
そこで、アンテナ寸法を変えずに、n=4の無指向性小型平面アンテナ装置1Aから、n=2の無指向性小型平面アンテナ装置1Gに変える設計変更をシミュレートしたところ、無指向性小型平面アンテナ装置1Aでの整合周波数fres=128MHzから無指向性小型平面アンテナ装置1Gでは整合周波数fres=69MHzとなる結果を得られた。分割数nを4から2へ半分にすると、整合周波数fresも約半分に低周波数化できるのである。
【0069】
また、無指向性小型平面アンテナ装置1Aと同じ整合周波数を得られるように無指向性小型平面アンテナ装置1Gを設計するのであれば、無指向性小型平面アンテナ装置1Aで用いる基板の約半分のサイズ(基板幅がW/2)の誘電体基板2で無指向性小型平面アンテナ装置1Gを構成できると考えられるので、面積、体積、重量は約1/4に小型・軽量化が可能である。
【0070】
以上のことから、小さなnで設計を行うことは小型化に有効であると考えられる。
図28に示すのは、分割数n=1とした第8実施形態に係る無指向性小型平面アンテナ装置1Hである。n=1の場合、アンテナ領域を2以上に等分割しないので、第1通信スロット11Sが形成される第1スロットアンテナ領域11のみとなる。ただし、第1導電層3と第2導電層4とを電気的に接続する導電連結部6を設けることで、誘電体基板2の側面が分割され、上面第1スリット部31は導電連結部6の一側近傍にて第1側面Aスリット部231aに連なり、下面第1スリット部41は導電連結部6の他側近傍にて第1側面Bスリット部231bに連なる。すなわち、無指向性小型平面アンテナ装置1Hの第1通信スロット11Sは、上面第1スリット部31から第1側面Aスリット部231a、第2側面スリット部232、第3側面スリット部233、第4側面スリット部234、第1側面Bスリット部231bを経て下面第1スリット部41に至る長尺なスロット長を得ることができる。
【0071】
なお、一般にアンテナを小型化すると、放射効率が低下することが知られている。すなわち、分割数nを小さくすれば、アンテナ本体の小型化を実現できる反面、実用的な放射効率が得られなくなる可能性もあるので、目的とする整合周波数と十分な放射効率を得るのに適切な分割数nを選択することが望ましい。
【0072】
以上、本発明に係る無指向性小型平面アンテナ装置を実施形態に基づき説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載の構成を変更しない限りにおいて実現可能な全ての無指向性小型平面アンテナ装置を権利範囲として包摂するものである。