(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860908
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】落石防護柵
(51)【国際特許分類】
E01F 7/04 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
E01F7/04
【請求項の数】3
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2017-104738(P2017-104738)
(22)【出願日】2017年5月26日
(65)【公開番号】特開2018-199934(P2018-199934A)
(43)【公開日】2018年12月20日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】594116334
【氏名又は名称】筑豊金網工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000958
【氏名又は名称】特許業務法人 インテクト国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100120237
【弁理士】
【氏名又は名称】石橋 良規
(72)【発明者】
【氏名】菅 文彦
(72)【発明者】
【氏名】田中 淳一
(72)【発明者】
【氏名】西島 武良
【審査官】
田島 拳士郎
(56)【参考文献】
【文献】
特開2009−185514(JP,A)
【文献】
特開平06−173221(JP,A)
【文献】
米国特許第04730810(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E01F 7/00−7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
落石を防止するために斜面に構築される落石防護柵において、
前記斜面に設置される支柱と、
前記支柱間に張り渡される金網とを備え、
前記金網は、前記金網の少なくとも一方の端部を前記支柱側に引き寄せることにより形成され、前記支柱に仮止め部材を介して仮止めされる伸び代部を有し、
前記金網は、落石が前記金網に衝突した際に、前記仮止め部材が破断して、前記伸び代部の長さ分だけ伸びることを特徴とする落石防護柵。
【請求項2】
前記伸び代部は、前記金網の端部に差し込んだ折返し用棒鋼を、前記金網とともに前記支柱側に引き寄せることにより形成され、前記折返し用棒鋼は、前記支柱に前記仮止め部材を介して仮止めされていることを特徴とする、請求項1に記載の落石防護柵。
【請求項3】
前記仮止め部材は、結束バンドからなっていることを特徴とする、請求項1または2に記載の落石防護柵。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、落石防護柵、特に、金網に伸び代部を設けることによって、最初の落石による金網の目の広がりや破れを抑制することができる結果、続いて起こる落石に確実に対応することができる落石防護柵に関するものである。
【背景技術】
【0002】
道路等への落石を防止するために、斜面に落石防護柵を設置することは一般的に行われている。
【0003】
落石防護柵の一例を、図面を参照しながら説明する。以下、この落石防護柵を従来落石防護柵という。
【0004】
図4は、従来落石防護柵を示す概略斜視図である。
【0005】
図4において、11は、斜面12に所定間隔をあけて構築された支柱、13は、支柱11の上端部と山側(M)の斜面12との間に張られた山側ワイヤ、14は、支柱11の上端部と谷側(V)の斜面12との間に張られた谷側ワイヤ、15は、支柱11間に張られた、落石を受け止める金網である。
【0006】
上述した従来落石防護柵によれば、落石は、金網15により受け止められる結果、石が道路等に落下することを防止することができる。この際、支柱11は、山側ワイヤ13により引っ張られているので、支柱11が谷側(V)に倒れるおそれはない。
【0007】
また、斜面11からの落石が金網15に衝突すると、山側ワイヤ13に引張力が作用し、その反動で支柱11には、支柱11が山側(M)に倒れ込む力が作用するが、支柱11は、谷側ワイヤ14により引っ張られているので、支柱11が山側(M)に倒れ込むおそれはない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来落石防護柵によれば、支柱11間に張られている金網15に伸び代部がないので、最初の落石の程度が大きいと、金網15の目が大きく広がったり、金網15が破れたりすることがあった。
【0009】
このように、最初の落石により金網15の目が大きく広がったり、金網15が破れたりすると、続いて起こる落石に対応することができないといった問題があった。
【0010】
従って、この発明の目的は、支柱間に張られる金網に伸び代部を設けることによって、最初の落石による金網の目の広がりや破れを抑制することができる結果、続いて起こる落石に確実に対応することができる落石防護柵を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この発明は、上記目的を達成するためになされたものであり、下記を特徴とする。
【0012】
請求項1に記載の発明は、落石を防止するために斜面に構築される落石防護柵において、前記斜面に設置される支柱と、前記支柱間に張り渡される金網とを備え、前記金網は、
前記金網の少なくとも一方の端部を前記支柱側に引き寄せることにより形成され、前記支柱に仮止め部材を介して仮止めされる伸び代部を有し、
前記金網は、落石が前記金網に衝突した際に、
前記仮止め部材が破断して、前記伸び代部の長さ分だけ伸びることに特徴を有するものである。
【0014】
請求項
2に記載の発明は、請求項
1に記載の発明において、前記伸び代部は、前記金網の端部に差し込んだ折返し用棒鋼を、前記金網とともに前記支柱側に引き寄せることにより形成され、前記折返し用棒鋼は、前記支柱に前記仮止め部材を介して仮止めされていることに特徴を有するものである。
【0015】
請求項
3に記載の発明は、請求項
1または
2に記載の発明において、前記仮止め部材は、結束バンドからなっていることに特徴を有するものである。
【発明の効果】
【0016】
この発明によれば、金網に伸び代部を設けることによって、最初の落石による金網の目の広がりや破れを抑制することができる結果、続いて起こる落石に確実に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の落石防護柵において、落石が金網に衝突する前の状態を示す部分斜視図である。
【
図2】この発明の落石防護柵において、落石が金網に衝突した後の状態を示す部分斜視図である。
【
図3】金網とワイヤの他の取付態様を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
この発明の落石防護柵の一実施態様を、図面を参照しながら説明する。
【0019】
図1は、この発明の落石防護柵において、落石が金網に衝突する前の状態を示す部分斜視図、
図2は、この発明の落石防護柵において、落石が金網に衝突した後の状態を示す部分斜視図である。
【0020】
図1および
図2において、1は、斜面に設置された、フランジ1aとウエッブ1bとが形成されたH形鋼からなる支柱、2は、支柱1間に張り渡された菱形金網である。なお、金網は、菱形金網に限定されない。金網2の両端(一方端のみ図示)には、固定用棒鋼3が挿通され、固定用棒鋼3は、Uボルト・ナット4により支柱1の一方のフランジ1aに固定されている。金網2の上下端(上端のみ図示)には、ワイヤ5が挿通され、金網2とワイヤ5とは、コイル10により連結されている。ワイヤ5の両端は、アイボルト6を介して支柱1のウエッブ1bに固定されている。なお、コイル10を使用せずに、
図3に示すように、金網2にワイヤ5のみを挿通してワイヤ5に金網2を取り付けても良い。
【0021】
7は、折返し用棒鋼であり、金網2の端部に差し込まれている。折返し用棒鋼7の上下端部は、U字状に折り曲げられ、ワイヤ5に係合している。なお、折返し用棒鋼7は、ワイヤ5に係合させずに、金網2に直接、係合させても良い。
【0022】
8は、伸び代部である。伸び代部8は、
図1に示すように、折返し用棒鋼7を金網2とともに支柱1側に引き寄せて、金網2の端部を畳むことにより形成される。金網2の畳み方向を、
図1中、矢印で示す。伸び代部8は、金網2の何れか一方の端部、または、金網2の両端部に形成する。
【0023】
9は、結束バンド等からなる仮止め部材であり、折返し用棒鋼7を固定用棒鋼3を介して支柱1に仮止めする。
【0024】
以上のように構成されている、この発明によれば、以下のようにして、最初の落石による金網2の目の広がりや破れを抑制することができる結果、続いて起こる落石に確実に対応することができる。
【0025】
落石防護柵の構築に際して、
図1に示すように、折返し用棒鋼7を金網2とともに支柱1側に引き寄せて、金網2の端部を畳むことにより、金網2の少なくとも一方の端部に伸び代部8を形成する。伸び代部8が広がらないように、結束バンド等の仮止め部材9により折返し用棒鋼7と固定用棒鋼3とを結束して、折返し用棒鋼7を固定用棒鋼3を介して支柱1に仮止めする。
【0026】
上記のように、金網2の少なくとも一方の端部に伸び代部8を形成した状態で落石が発生して、落石が金網2に衝突すると、その衝撃力により金網2が引っ張られる結果、仮止め部材9が破断して、金網2は、伸び代部8の長さ分だけ伸びる。
【0027】
このように、金網2が伸びることによって、落石の衝撃力が吸収される結果、最初の落石により金網2の目が大きく広がったり、金網2が破れたりすることが抑制され、これによって、続いて起こる落石を確実に受け止めることができる。
【0028】
以上、説明したように、この発明によれば、支柱1間に張られる金網2に伸び代部8を設けることによって、最初の落石による金網2の目の広がりや破れを抑制することができる結果、続いて起こる落石に確実に対応することができる。
【符号の説明】
【0029】
1:支柱
1a:フランジ
1b:ウエッブ
2:金網
3:固定用棒鋼
4:Uボルト・ナット
5:ワイヤ
6:アイボルト
7:折返し用棒鋼
8:伸び代部
9:仮止め部材
10:コイル
11:支柱
12:斜面
13:山側ワイヤ
14:山側ワイヤ
15:金網