(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、非ヒトタンパク質の量が低減された培養上清を生産する方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、上清を得るために細胞を培養する際に、非ヒトタンパク質不含培地で細胞を培養する前培養工程を行うことで、FBS等の非ヒトタンパク質を含まない、又はその量が著しく低減された培養上清を生産できることを見出し、本発明を完成させた。
【0008】
本発明は、以下の態様を包含する。
(1)非ヒトタンパク質を含む培地で細胞を培養する第一培養工程、
第一の非ヒトタンパク質不含培地で細胞を30分〜120時間培養する第二培養工程、
第二培養工程後に得られる培養上清を除去する除去工程、
細胞をさらに第二の非ヒトタンパク質不含培地で培養する第三培養工程、及び
第三培養工程後に得られる培養上清を回収する回収工程、
を含む、培養上清を生産する方法。
(2)第三培養工程が、12時間〜120時間行われる、(1)に記載の方法。
(3)除去工程後、第三培養工程前に、バッファー、生理食塩水、又は非ヒトタンパク質不含培地による洗浄工程をさらに含む、(1)又は(2)に記載の方法。
(4)非ヒトタンパク質が、血清又は血漿である、(1)〜(3)のいずれかに記載の方法。
(5)血清が、ウシ胎児血清、ウシ新生児血清、ウシ血清、及びウマ血清からなる群から選択される、(4)に記載の方法。
(6)回収工程で回収される培養上清が、血清を含まない、(5)に記載の方法。
(7)第一の非ヒトタンパク質不含培地及び第二の非ヒトタンパク質不含培地が、同一であるか又は異なる、(1)〜(6)のいずれかに記載の方法。
(8)第一の非ヒトタンパク質不含培地及び第二の非ヒトタンパク質不含培地が、基本培地、基本培地にヒトタンパク質を加えた培地、MesenCult、StemPro MSC、BMN211、StemMACS、MSC NutriStem XF、Xuri NSC、Prime-XV、StemXVivo、Human Mesenchymal-XF Expansion Medium、stemgro、STK2、PLTMax、ProculAD、Mesenchymal Stem Cell Growth Medium DXF、MesenGro、及びMSC-T4からなる群から選択される、(1)〜(7)のいずれかに記載の方法。
(9)第一の非ヒトタンパク質不含培地が、基本培地にヒトタンパク質を加えた培地、MesenCult、StemPro MSC、BMN211、StemMACS、MSC NutriStem XF、Xuri NSC、Prime-XV、StemXVivo、Human Mesenchymal-XF Expansion Medium、stemgro、STK2、PLTMax、ProculAD、Mesenchymal Stem Cell Growth Medium DXF、MesenGro、及びMSC-T4からなる群から選択され、第二の非ヒトタンパク質不含培地が、基本培地である、(1)〜(8)のいずれかに記載の方法。
(10)基本培地が、EMEM培地、DMEM培地、IMDM培地、GMEM培地、ハムF10培地、ハムF12培地、RPMI1640培地、及びこれらの組み合わせからなる群から選択される、(8)又は(9)に記載の方法。
(11)(1)〜(10)のいずれかに記載の方法により生産される、培養上清。
【発明の効果】
【0009】
本発明により、非ヒトタンパク質の含有量が低減された培養上清が生産され得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<培養上清を生産する方法>
一態様において、本発明は、培養上清を生産する方法に関する。本発明の培養上清の生産方法は、第一培養工程、第二培養工程(本明細書中では、「前培養工程」とも記載する)、除去工程、第三培養工程、及び回収工程を必須工程として含む。また、選択工程として、洗浄工程及び精製工程等の他の工程を含んでもよい。本発明の方法を構成する各工程について、以下詳細に説明する。
【0012】
(第一培養工程)
本発明の方法は、非ヒトタンパク質を含む培地で細胞を培養する第一培養工程を含む。
本明細書において「非ヒトタンパク質」とは、細胞の増殖、接着、及び分化誘導(又は未分化維持)等を促進するために培地に添加される非ヒト生物に由来するタンパク質を指す。非ヒトタンパク質の例としては、ラット、マウス、モルモット、ハムスター、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ネコ、及びサル等の哺乳動物、アフリカツメガエル等の両生類、ニワトリ及びダチョウ等の鳥類、昆虫類、線虫、酵母、大腸菌、及び植物からなる群より選択される生物、好ましくは非ヒト哺乳動物のタンパク質が挙げられる。非ヒトタンパク質は、これらの生物から単離されてもよいし、これらの生物に由来するタンパク質の組換え体を、哺乳動物、昆虫、酵母、及び大腸菌等の遺伝子組換え体に発現させて得てもよい。非ヒトタンパク質の具体例として、細胞増殖因子、接着分子、及び分化誘導因子(又は分化抑制因子)、例えば、線維芽細胞増殖因子(FGF)、血管内皮細胞増殖因子(VEGF)、肝細胞増殖因子(HGF)、上皮成長因子(EGF)、トランスフォーミング増殖因子−α(TGF-α)、トランスフォーミング増殖因子−β(TGF-β)、内皮細胞増殖因子(ECGF)、インスリン様増殖因子(IGF)、及び血小板由来増殖因子(PDGF)、フィブロネクチン、ビトロネクチン、骨形成因子(BMP)等が挙げられる。本明細書において、「非ヒトタンパク質」は、上記非ヒトタンパク質のいずれか一種であってもよいし、複数の非ヒトタンパク質を含む混合物であってもよい。複数の非ヒトタンパク質を含む混合物の例として、血清及び血漿、並びにフィーダー細胞及び組織の培養上清等が挙げられる。血清又は血漿の例としては哺乳動物、例えばウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、又はブタの血清又は血漿が挙げられ、好ましくは血清、例えばウシ胎児血清(FBS)、ウシ新生児血清(NBS)、ウシ血清、及びウマ血清、さらに好ましくはウシ胎児血清である。
【0013】
本明細書において、「非ヒトタンパク質を含む培地」における培地の種類は特に限定せず、例えば基本培地であってよい。本明細書において、「基本培地」とは、細胞が生存するために必要な成分、例えば無機塩類、必須アミノ酸、及びビタミン類、並びに緩衝剤等を含んだ溶液を意味する。基本培地の例として、限定するものではないが、EMEM培地(αMEM培地とも記載される)、DMEM培地、IMDM培地、GMEM培地、ハムF10培地、ハムF12培地、RPMI1640培地、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
【0014】
本発明の方法において、用いられる細胞の由来となる生物種は限定されず、例えばラット、マウス、モルモット、ハムスター、ブタ、ウシ、ウマ、ヤギ、ヒツジ、ウサギ、イヌ、ネコ、サル、及びヒト等の哺乳動物、好ましくはヒトである。また、用いられる具体的な細胞種も特定されず、例えば、ES細胞、iPS細胞、体性幹細胞、間葉系幹細胞(例えば歯髄又は脂肪由来幹細胞)、皮膚細胞、肝細胞、神経細胞、軟骨細胞、内皮細胞、上皮細胞、骨細胞、筋細胞、及び生殖細胞、血液細胞等であってよい。細胞は初代培養細胞又は細胞株であってよく、また遺伝子組換えを行った細胞であっても、行っていない細胞であってもよい。
【0015】
第一培養工程の培養条件は限定されず、例えば、培養温度は約30℃〜約40℃、CO
2濃度は約2%〜約10%であってよく、接着培養であっても懸濁培養であってもよい。また、第一培養工程の時間は、特に限定しない。例えば、第一培養工程は、数時間〜数日行ってもよいし、拡大培養又は継代培養を経て数日〜数週間又は数か月行ってもよい。
【0016】
本明細書において、「継代」とは、細胞集団から一部を取り出して新しい培地に移し、細胞の増殖を維持する過程を意味する。
【0017】
本発明の方法では、第一培養工程の後、後述する第二培養工程の前に、継代工程を含んでもよいし、第一培養工程の後、継代工程を伴わずに培地交換のみ行って次の第二培養工程に移ってもよい。
【0018】
(第二培養工程)
本発明の方法は、第一の非ヒトタンパク質不含培地で細胞を培養する第二培養工程を含む。
本明細書において、「非ヒトタンパク質不含培地」とは、本明細書に記載の非ヒトタンパク質を含まない、又は実質的に含まない培地を意味する。ここで、「非ヒトタンパク質を実質的に含まない」とは、本発明の効果、例えば後述する回収工程において非ヒトタンパク質の量が低減された培養上清が生産されるという効果を阻害しない程度の非ヒトタンパク質を含むことを意味する。
【0019】
非ヒトタンパク質不含培地の例として、基本培地、基本培地にヒトタンパク質を加えた培地、及び市販の無血清培地が挙げられる。本明細書において、「ヒトタンパク質」とは、細胞の増殖、接着、及び分化誘導等を促進するために培地に添加されるヒトに由来するタンパク質を指す。ヒトタンパク質は、ヒトから単離されてもよいし、ヒトに由来するタンパク質の組換え体を、哺乳動物、昆虫、酵母、及び大腸菌等の遺伝子組換え体に発現させて得てもよい。ヒトタンパク質の例として、細胞増殖因子、接着分子、及び分化誘導因子、及び分化誘導因子(又は分化抑制因子)が挙げられ、その具体例は非ヒトタンパク質について記載したのと同様である。市販の無血清培地の例として、MesenCult、StemPro MSC、BMN211、StemMACS、MSC NutriStem XF、Xuri NSC、Prime-XV、StemXVivo、Human Mesenchymal-XF Expansion Medium、stemgro、STK2、PLTMax、ProculAD、Mesenchymal Stem Cell Growth Medium DXF、MesenGro、及びMSC-T4からなる群から選択される培地が挙げられる。本明細書における非ヒトタンパク質不含培地の例として、血清又は血漿を含まない培地が挙げられる。
【0020】
第二培養工程の培養条件は限定されず、例えば、培養温度は約30℃〜約40℃、CO
2濃度は約2%〜約10%であってよく、接着培養であっても懸濁培養であってもよい。
【0021】
第二培養工程の時間は、後述する回収工程における培養上清に含まれる非ヒトタンパク質の量が低減されるものであれば限定しないが、例えば30分以上、1時間以上、1時間30分以上、2時間以上、4時間以上、8時間以上、又は24時間以上であってよく、また120時間以下、96時間以下、72時間以下、60時間以下、54時間以下、又は48時間以下であってよい。例えば、第二培養工程の時間は、30分〜120時間、1時間〜72時間又は2時間〜48時間、又は約48時間とすることができる。
【0022】
第二培養工程の開始時及び終了時の細胞量は限定しないが、第三培養工程における産物の収量を上げるため、第二培養工程終了時の細胞が例えば50〜100%コンフルエント又は70%〜95%コンフルエントとなるように開始時の細胞量及び培養時間を調整することが好ましい。
【0023】
(除去工程)
本発明の方法は、第二培養工程で得られる培養上清を除去する除去工程を含む。
培養上清の除去はデカンテーション及びアスピレーション等の通常の方法で行うことができる。ここで、第三培養工程で用いる第二の非ヒトタンパク質不含培地に混入しないように、第二培養工程の培養上清を完全に除去することが好ましい。
【0024】
本発明の方法では、除去工程の後、後述する第三培養工程の前に、継代工程を含んでもよいが、細胞の増殖性や物質生産に与える影響を抑えるため、除去工程の後、継代工程を伴わずに培地交換のみ行って次の第三培養工程に移ることが好ましい。
【0025】
(洗浄工程)
一実施形態において、除去工程の後、第三培養工程の前に、バッファー、生理食塩水、又は非ヒトタンパク質不含培地で細胞を洗浄する工程を含む。洗浄工程により、後述する回収工程において得られる培養上清に含まれる非ヒトタンパク質の量をさらに低減し得る。洗浄工程において用いるバッファー、生理食塩水、又は非ヒトタンパク質不含培地の種類は、洗浄工程が細胞の生存性に過度な影響を与えない限り限定されず、また上記溶液に糖等の添加物を加えたものであってよい。洗浄の回数は、例えば1回、2回、3回、又は4回とすることができる。
【0026】
(第三培養工程)
本発明の方法は除去工程後、又は洗浄工程後に、細胞をさらに第二の非ヒトタンパク質不含培地で培養する第三培養工程を含む。
【0027】
本明細書において、「第二の非ヒトタンパク質不含培地」における「第二の」との用語は、第三培養工程における培地と、第二培養工程における「第一の非ヒトタンパク質不含培地」とを区別するために用いられる。ただし、第一の非ヒトタンパク質不含培地と第二の非ヒトタンパク質不含培地は、同一であっても異なってもよい。例えば、第一の非ヒトタンパク質不含培地と第二の非ヒトタンパク質不含培地は、共にDMEM等の基本培地であってもよい。好ましくは、第一の非ヒトタンパク質不含培地が、基本培地にヒトタンパク質を加えた培地、及び上記市販の無血清培地から選択され、第二の非ヒトタンパク質不含培地が、基本培地である。このような培地の組み合わせにより、第二培養工程において細胞の増殖を維持し、かつ後述する回収工程後に得られる培養上清に含まれる不純物を低減することが可能となる。
【0028】
第二の非ヒトタンパク質不含培地の例は、第一の非ヒトタンパク質不含培地について記載したものと同様である。
【0029】
第三培養工程の培養条件は限定されず、例えば、培養温度は約30℃〜約40℃、CO
2濃度は約2%〜約10%であってよく、接着培養であっても懸濁培養であってもよい。例えば、第一〜第三培養工程の全てを接着培養でおこなうことができる。
【0030】
第三培養工程の時間は、後述する回収工程後に得られる目的の産物に応じて適宜選択することができる。第三培養工程は、例えば12時間以上、18時間以上、24時間以上、36時間以上、又は42時間以上であってよく、また120時間以下、96時間以下、72時間以下、60時間以下、又は54時間以下であってよい。例えば、第三培養工程の時間は、12時間〜120時間、24時間〜72時間、42時間〜54時間又は約48時間とすることができる。
【0031】
本発明において、「目的の産物」とは、本発明の方法によって第三培養工程後に得られる培養上清に含まれる産物を指し、ウイルス、エクソソーム、並びに治療用タンパク質、例えば酵素、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、増殖因子、抗体、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0032】
(回収工程)
本発明の方法は、第三培養工程後に得られる培養上清を回収する回収工程を含む。回収された培養上清は、遠心分離及び/又は膜ろ過等により、細胞や細胞に由来するデブリを除去してもよい。
【0033】
(精製工程)
本発明の方法は、回収工程後に得られた培養上清から、目的の産物をさらに精製する工程を含んでもよい。例えば、目的の産物がタンパク質であれば、常法により、例えば、ゲルろ過クロマトグラフィー、イオン交換カラムクロマトグラフィー、アフィニティークロマトグラフィー、逆相カラムクロマトグラフィー、HPLC等のクロマトグラフィー、硫安分画、限外ろ過、及び免疫吸着法等により、また、目的の産物がエクソソームであれば、超遠心分離、免疫沈降等により精製することができる。
【0034】
(効果)
本発明の方法は、非ヒトタンパク質を含む培地で培養した細胞から、非ヒトタンパク質が低減された培養上清を生産することを可能とする。本明細書において、「非ヒトタンパク質が低減された」とは、本発明の方法の工程、例えば第二培養工程を経ていない培養上清に対して非ヒトタンパク質が低減されていることを意図する。一実施形態において、培養上清は、血清等の非ヒトタンパク質を含まないか、実質的に含まない。
【0035】
本発明の培養上清は、非ヒトタンパク質の量が低減されたものであるから、ヒトに対して適用した場合に、アレルギー反応等の副作用を生ずるリスクが低く、例えばヒトにおいて医療用途、化粧品用途、健康食品用途の少なくとも一つ以上に用いることができる。
【0036】
<培養上清>
一態様において、本発明は、本明細書に記載の方法により生産される培養上清に関する。本発明の培養上清は、培養を行う細胞の種類や培養条件に応じて、様々な物質を含み得る。例えば、培養上清は、遺伝子組換えを行っていない細胞が分泌する天然のタンパク質及び/又はエクソソームを含んでもよいし、遺伝子組換えを行った細胞が分泌する組換えタンパク質及び/又はエクソソームを含んでもよい。また、第三培養工程において細胞をウイルスに感染させることによって、ウイルスを含む培養上清を得ることもできる。培養上清に含まれるタンパク質の例として、治療用タンパク質、例えば酵素、ホルモン、血液凝固因子、サイトカイン、増殖因子、抗体等、又はこれらの組み合わせが挙げられる。
【0037】
本発明の培養上清は、そのまま用いてもよいし、必要に応じて製剤化を行って用いてもよい。製剤化は、医薬的に許容される担体や添加物を用いて、常法に従って行うことができる(例えば、Remington's Pharmaceutical Science, latest edition, Mark Publishing Company, Easton,米国を参照されたい)。
【0038】
医薬的に許容される担体及び添加物の例としては、限定されるものではないが、水、医薬的に許容される有機溶剤、例えばポリエチレングリコール、ジグリセリン、グリセリン、プロピレングリコール;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー、カルボキシメチルセルロースナトリウム、水溶性デキストラン、カルボキシメチルスターチナトリウム、メチルセルロース、エチルセルロース、及びキサンタンガム等の増粘剤;ワセリン及びパラフィン等の脂質;マンニトール、ソルビトール、ラクトース等の糖アルコール及び糖類;Tween80及びTween 20等の界面活性剤等が挙げられ、添加物は単独で又は適宜組み合わせて用いられる。
【0039】
以下、実施例を参照して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0040】
[実施例1:前培養が培養上清中への非ヒトタンパク質含量への影響の検討]
<材料と方法>
(不死化歯髄由来幹細胞からの培養上清の調製)
1)凍結された不死化歯髄由来幹細胞を液体窒素タンクから取り出し解凍し、10%FBSを含むDMEMにて洗浄し、T75フラスコ×1枚に播種し、10%FBSを含むDMEMで培養した。フラスコは全ての工程においてCoatingなしで使用した。
2)7割コンフルエントまで培養し、細胞を0.25%Trypsin-EDTA solutionを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T75フラスコ3枚に播種し、10%FBSを含むDMEMで培養した。
3)7割コンフルエントまで培養し、細胞を0.25%Trypsin-EDTA solutionを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T75フラスコ9枚に播種し、10%FBSを含むDMEMで培養した。
4)7割コンフルエントまで培養し、細胞を0.25%Trypsin-EDTA solutionを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T75フラスコ27枚に播種し、10%FBSを含むDMEM又はFBSを含まない無血清培地(MesenCult培地(StemCell)、StemPro MSC培地(ThermoFisher SCIENTIFIC)、BMN211培地(日水製薬)、StemMACS培地(Miltenyi Biotec)、MSC NutriStem培地(Biological Industries)、又はXuri MSC培地(GE Healthcare))で3日間培養した。
5)9割コンフルエントまで培養し、培養液を除去し、PBSにて各フラスコに付着している細胞を10mL、20mL、30mL、40mLと段階的に液量を増やして計4回洗浄した。
6)FBSを含まないDMEM培地をそれぞれのフラスコに加え、48時間培養した。
7)培養液を回収し、高速遠心にてデブリを除去し、培養上清液をセラムチューブに1mLずつ分注した。一部の培養上清を用いてELISA法によるウシアルブミン残存試験を実施した。ウシアルブミン残存試験は、Bovine Albumin ELISA Kit(Bethyl Laboratories)を用いて行った。測定方法は、キットに付属の説明書に従って実施した。簡単に記載すると、検量線用のアルブミン標準液を所定の濃度に調製後、96wellプレートのウェルに100μLずつ添加した。また、対象となる培養上清を96wellプレートのウェルに100μLずつ添加した。室温で1時間インキュベート後、プレートを付属の洗浄液で4回洗浄し、anti-albumin Detection Antibody溶液を100μLずつ添加した。室温でさらに1時間インキュベート後、プレートを付属の洗浄液で4回洗浄した。ここへ、100μLのHRP Solution Cを添加し、室温で30分間インキュベート後、プレートを付属の洗浄液で4回洗浄した。ここへ、100μLのTMB Substrate Solutionを添加し、室温、および遮光下で30分間インキュベートした。ここへ、100μLのStop Solutionを添加し、450nmの吸光度を測定した。得られた吸光度から、培養上清中のウシアルブミン量を算出した。
【0041】
(脂肪由来幹細胞からの培養上清の調製)
1)吸引腹部皮下脂肪より、コラゲナーゼTypeIを用いて細胞を分散し、ゲンタシンを含むFBSを含むMesenCult培地 (StemCell)に懸濁しT-25フラスコに播種した。培養にはMesenCult培地のキットに付属のAttachment SubstrateでCoatingしたフラスコを使用した。
2)2日に1回培地交換を行った。
3)7割コンフルエントまで細胞を培養し、細胞をAccutase(Life Technologies)を使用して剥離し、PBS洗浄をして、T150フラスコ2枚に播種し、FBSを含むMesenCult培地で培養を行った。ゲンタシンはこの時点から除去され、以降使用しなかった。また、以降で使用するフラスコはCoatingなしで使用した。
4)7割コンフルエントまで細胞を培養し、細胞をAccutaseを使用して剥離し、PBS洗浄をして、バンバンカー(リンフォテック)を用いて液体窒素へ凍結保存した。
5)凍結した細胞を1本解凍し、PBSにて洗浄をして、T-75フラスコに播種し、FBSを含むMesenCult培地を用いて培養した。
6)7割コンフルエントまで培養し、細胞をAccutaseを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T150フラスコ3枚に播種し、FBSを含むMesenCult培地で培養した。
7)7割コンフルエントまで培養し、細胞をAccutaseを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T150フラスコ12枚に播種し、FBSを含むMesenCult培地で培養した。
8)7割コンフルエントまで培養し、細胞をAccutaseを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T150フラスコ24枚に播種し、FBSを含まないMesenCult培地)で3日間培養した。
9)培養液を除去し、PBSにて各フラスコに付着している細胞を20mL、30mL、40mL、50mLと段階的に液量を増やして計4回洗浄した。
10)FBSを含まないDMEM培地をそれぞれのフラスコに加え、48時間培養した。
11)培養液を回収し、高速遠心にてデブリを除去し、培養上清液をセラムチューブに1mLずつ分注した。一部の培養上清液を用いてELISA法によりウシアルブミン残存試験を実施した。ELISA法の詳細は、不死化歯髄由来幹細胞について記載したのと同様である。
【0042】
(初代歯髄由来幹細胞からの培養上清の調製)
1)抜歯した乳歯(または永久歯)よりピンセットで歯髄を取り出し、Accutaseにて細胞を分散し、ペニシリン・ストレプトマイシンを含む、T-25フラスコに播種し、FBSを含むMesenCult培地で培養した。フラスコはMesenCult培地のキットに付属のAttachment SubstrateでCoatingしたフラスコを使用した。
2)2日に1回培地交換した。
3)7割コンフルエントまで培養し、細胞をAccutaseを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T150フラスコ1枚に播種し、FBSを含むMesenCult培地で培養した。ペニシリン・ストレプトマイシンはこの時点から除去され、以降使用しなかった。また、以降で使用するフラスコはCoatingなしで使用した。
4)7割コンフルエントまで培養し、細胞をAccutaseを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T150フラスコ3枚とT75フラスコ2枚に播種し、FBSを含むMesenCult培地で培養した。
5)7割コンフルエントまで培養し、大フラスコ3枚の細胞をAccutaseを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T150フラスコ12枚にFBSを含むMesenCult培地で播種した。
6)7割コンフルエントまで培養し、細胞をAccutaseを使用して剥離し、PBS洗浄をして、T150フラスコ24枚に播種し、FBSを含まないMesenCult培地で3日間培養した。
7)培養液を除去し、PBSにて各フラスコに付着している細胞を20mL、30mL、40mL、50mLと段階的に液量を増やして計4回洗浄した。
8)FBSを含まないDMEM培地をそれぞれのフラスコに加え、48時間培養した。
9)培養液を回収し、高速遠心にてデブリを除去し、培養上清液をセラムチューブに1mLずつ分注する。一部の培養上清を用いてELISA法によりウシアルブミン残存試験を実施した。ELISA法の詳細は、不死化歯髄由来幹細胞について記載したのと同様である。
【0043】
<結果>
初代歯髄由来幹細胞、脂肪由来幹細胞及び不死化歯髄由来幹細胞を用いて、10%FBSを含むDMEM又はFBSを含まない血清不含培地で前培養した後に、血清不含DMEM培地に交換した後に、培養上清を回収し、含まれるウシアルブミン濃度を測定した結果を
図1に示す。
図1に示される通り、前培養を血清不含培地で行い、次に血清不含DMEM培地で培養した場合には、培養上清中にウシ胎児血清由来のアルブミンが検出されなかった。
【0044】
続いて、不死化歯髄由来幹細胞を、10%FBSを含むDMEM、又は幾つかのFBSを含まない培地で前培養した後に、血清不含DMEM培地に交換し、培養上清を回収し、含まれるウシアルブミン濃度を測定した結果を
図2に示す。
図2に示される通り、10%FBSを含むDMEM培地を用いて前培養を行った場合、次に血清不含DMEM培地で培養しても、血清由来のアルブミンが培養上清中に混入することが示された。一方、前培養を血清不含培地で行った場合には、血清不含培地の種類によらず、次に血清不含DMEM培地で培養した場合に、培養上清中に血清由来のアルブミンが検出されなかった。
【0045】
これらの結果は、血清不含培地による前培養の工程を経ることによって、得られる培養上清中に混入する血清の量が低減することを示している。
【0046】
[実施例2:前培養時間の検討]
<材料と方法>
実施例1と同様に調製した初代歯髄由来幹細胞を継代培養後、T25フラスコへ播種した。PBSで洗浄後、Accutaseにより酵素処理を行い、10%FBSを含むDMEM(DMEM+10%FBS)、MesenCult、DMEM、又はPrime-XVで懸濁し、播種した。播種後4、6、及び12時間後にPBS洗浄を行い、DMEMを添加し、48時間培養した。48時間培養後、DMEMを回収し、高速遠心後、上清を回収して、培養上清とした。続いて、培養上清中のウシアルブミン濃度を実施例1と同様に測定した。
【0047】
<結果>
結果を
図3に示す。
図3から示される通り、DMEM+10%FBSでは4h〜12hの前培養の後、DMEMによる最終培養後の上清にウシ胎児血清由来のBSAが検出された。一方、前培養に血清不含培地(MesenCult培地、DMEM培地、又はPrime-XV培地)を用いた場合には、前培養の時間に関わらず、最終培養後の上清にウシ胎児血清由来のBSAが検出されなかった。