【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、VURが疑われる小児が放射線専門医に紹介された場合、係る患者は、腎膀胱エコー(RBUS:Renal Bladder Ultrasound)、排尿時膀胱尿道造影(VCUG:Voiding Cystourethrogram)、核膀胱X線造影(Nuclear Cystogram)、および/またはジメルカプトコハク酸(DMSA:Dimercaptosuccinic Acid)を使用して検査され得る。VURを有するものと疑われる患者を評価するために使用されるこれらの方法のうちの各方法は、各方法に関連付けられた少なくとも1つの主要な欠点を有する。
・VCUGは、VURの重症度分類を実施する上での黄金律ではあるが、カテーテル留置と顕著な放射線被曝との両方を伴う。VCUGを実施する際には、カテーテルが患者の尿道に配置され、カテーテルを通して放射線不透過性造影剤が膀胱内に注入される。膀胱が充満される際に腎臓(一方または両方)、尿管(一方または両方)、および膀胱が観察され、排尿中にX線透視撮影を使用して患者を撮像し、それによりVURが検出される。
・RBUSはVURに関する信頼性の高い指標ではない(およそ26%の確度)と考えられる。
・DMSAは高額な検査であり、顕著な放射線被曝を伴い、核医学専門医により実施されなければならない。DMSAはVURを検出するものではないが、腎臓にすでに損傷が存在するかどうかを示すために使用される。
・核膀胱X線造影も、高い確度でVURを検出するためには、カテーテル通過と放射線被曝とを必要とする。放射性核種が膀胱内に注入され、ガンマ線カメラを使用して患者の撮像が実施される。放射線被曝は低くなるが、画像の品質も低くなり得る。
【0006】
VURが診断または治療された場合であっても、逆流が解決されたかどうかまたは進行したかどうかを判定するために、検査を規則的な間隔で繰り返し実施することが必要となる。VCUG検査を繰り返し実施することは多くの場合、初期VCUG評価を実施する際に小児、親、および治療を施す医師により経験される不安のレベルに基づいて、忌避される。定められた時間点における、すなわち、排尿または充満の間に膀胱圧が増大する際の、または圧力が(手動的に、またはシステム自体により)腹部に印加され、それにより膀胱に印加される間に膀胱圧が増大する際の、腎臓内の尿量の変化は膀胱尿管逆流症(VUR)に関する指標である。患者がVURを患っている場合には、排尿の際の腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)内のインピーダンスが増加し、VURが存在しない場合は、腎臓(一方または両方)および/または尿管(一方または両方)内における変化がほとんど観察されないかまたはまったく観察されないであろう。
【0007】
生体インピーダンスの測定は、1対の皮膚接触電極を使用して電流を身体に供給し、腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)の近傍の身体表面における同一のまたは第2の電極対の間に生じた電圧を測定することを含む。生体インピーダンスを測定するための装置については米国特許第6339722(B1)号から知ることができる。この生体インピーダンス測定システムは体液に関する生物学的パラメータを判定するために使用される。
【0008】
電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT:Electrical Impedance Tomography)は、平面の全域におけるインピーダンスにおける変化に基づいてインピーダンス分布画像を提供する。なおインピーダンス分布画像は電極の位置によって決まる。EITシステムを使用して人体の各部に関するインピーダンス分布画像を表示する原理については、米国特許公開第20030216664(A1)号で記載されている。
【0009】
この先行技術では、生体インピーダンスを使用して、後腹膜出血、膀胱状態、膀胱機能、膀胱容量、および胃食道逆流を分析する概念について記載されている。しかし、腎機能または腎臓への尿逆流を測定する非侵襲的な手段として生体インピーダンスを使用することに関して記載する文献はない。
【0010】
様々な研究調査では、対麻痺を患う患者に対して、または、失禁もしくは泌尿生殖系に対する損傷を招き得る膀胱充満レベルの正常な機能が損なわれた印象を示す他の病状を有する患者に対して、膀胱容量における変化を示す信号を患者に提供するために、膀胱内のインピーダンス変化が評価された。様々な研究では、膀胱充満の際、および、膀胱排尿後に、生体インピーダンスを使用してインピーダンスにおける動的変化が示されている。例えば、生体インピーダンスに基づいて膀胱尿量を監視するための装置について記載する先行技術は、EITに基づいて膀胱尿量を監視するための方法について記載する米国特許第5103835号およびCN104605850に記載の装置を含む。EITは腎臓からの出血(後腹膜出血)を監視するためにも使用されてきた。様々な研究では、内出血が存在する旨の情報をヘルスケア作業者に提供するために、腎臓近傍の空間におけるインピーダンス変化が使用され得るかどうかが評価される。これは、腎臓損傷を有するものと診断された患者を、または腎臓に関する手術後に患者を、監視するための有用な兆候である。
【0011】
この先行技術では、生体インピーダンス(さらに詳細にはEIT)を使用して胃食道逆流(GOR)を監視する概念も記載されている。GORは胃内容物が胃から食道に向かって流れるときに発生する。EITは、GORを検出するための患者挿管に対する必要性を排除するための可能な手段として提案されてきている。一方、GORを特定するための代替的な方法としてEITを使用することの実現可能性を調査する研究では、EITを使用してGORを正確に検出することは依然として不可能であると結論されている。係る結論が、身体内における食道の深い位置、逆流が存在しないエピソードの際に食道において観察される変化、および、逆流流体ならびに食道内容物のインピーダンス範囲に基づき得ることが、研究では示唆される。
【0012】
対象となる異なる流体のインピーダンス範囲、事象の期間およびタイミング、外部器官の影響、病状の病態生理学、患者集団、および器官寸法に基づいて、EITの使用がVURの検出に対して好適または効果的でないことが当業者には明らかとなるであろう。
【0013】
異なる流体の伝導率:異なる生体組織および流体は異なる伝導率を有する。なお、対象領域と周囲領域との間で伝導率の差異が大きいほど、インピーダンス変化を検出することはより容易となる。例えばVURを検出するとき、尿および腎臓の伝導率は(100kHzの周波数において)それぞれおよそ2.3S/mおよび0.17S/mであり、差異は2.13S/mである。ここで膀胱と尿との間の差異は2.09S/mであり、腎臓と血液との間の差異は0.53S/mである。GORでの伝導率変化値の推定値は推定することが不可能である。これは、どのような食物が消費されたかに応じて胃内容物の伝導率が相当に変動することによる。結果として、尿と腎臓との間のインピーダンス差異は検出が容易であり、追加的に、尿のインピーダンスをさらに大きくする経口溶液(例えば、高い塩分濃度またはイオン濃度を有する溶液)を使用することにより、伝導率差異をさらに大きくすることも可能であり得る。
【0014】
期間およびタイミング:EITシステムは動的変化を検出するにあたり非常に好適である。動的変化は既知の時間的期間において突然的に生じる。膀胱充満、腎臓出血、およびGORは多くの場合、偶発的であり、長期の予測不能な時間的期間にわたり発生する。これにより、これらの用途に対するEITの利用は制限される。それとは対照的に、VURは、膀胱圧が増大した(例えば排尿−予測可能かつ急速な事象)ときに高伝導率の流体(尿)の急増が膀胱から尿管(一方または両方)または腎臓(一方または両方)に移動する場合に発生する。VURおよび高圧事象が同時に発生することは、小児が排尿する既知の時間的期間を提供する。このデータは、システムへとフィードバックして、それにより、VURを検出するために、基準線(排尿が行われないとき)における、および、排尿中の、生体インピーダンス測定値を収集するための、対象となる時間的期間および基準時間フレームを定義するために、使用され得る。外部器官の影響−生体インピーダンス測定値は、対象領域を包囲する器官の活動を含む外部要因により左右される。このことに基づき、測定は、監視対象の身体の位置に依存して影響されるであろう。周囲の器官の活動を相殺するために、異なるデータ分析方法が使用されなければならない。例えば胃食道逆流(GOR)に関して監視する場合には、食道に極めて近い器官の活動を考慮する必要がある。係る活動は、呼吸(肺における空気)、心拍動、および胃内要物の消化を含み得る。それとは対照的に、膀胱尿管逆流症に影響を及ぼし得る生理学的パラメータは、腸管運動、呼吸、および膀胱内の尿量を含み得る。
【0015】
病状の病態生理学および患者集団:主要なVURは一般に、膀胱と尿管との間の壁内トンネルが通常よりも短いことにより発生し、6か月〜5歳の小児に見られ、多くの場合は、小児の成長とともに解決するであろう。VURは多くの場合、患者が再発性または熱性の尿路感染症を呈したとき、診断される。胃食道逆流は、成人および小児の両方に見られ得、多くの場合、肥満症、飲食内容、および喫煙に、または特定の場合にはヘルニアに、起因する。胃食道逆流は多くの場合、主要なVURに対する危険因子である尿路感染症とは別に、他の胃の症状と合併された状態で発生する。VURは無症候性である。患者は病状発生時に知覚することができない。その一方で、胃食道逆流を患う患者は胸やけなどの特異的な症状を有する。
【0016】
逆流が始まる器官と、逆流が測定される位置と、は異なる。VURは尿が膀胱から尿管を通り腎臓に向かって移動するときに発生し、その一方で、GORは胃内容物が胃から食道に向かって流れるときに発生する。腎臓は膀胱とは別個の器官であり、その一方で、食道は胃に対して直接的に接続されている。胃食道逆流は食道において監視され、VURは腎臓において監視される。すなわち、尿が尿管を通過し、次に他の空間を通過し異なる器官に移動した後にVURは監視される。EITの結果は対象エリアから電極までの距離にも依存するであろう。食道は胸の前部の最近位に配置され、腎臓は背中の近位に配置されている。電極物質およびサイズは、選択され、器官の位置に応じた状態に対して表示値が最適化されるような位置に配置されなければならない。
【0017】
他のグループはVURを検出するための非侵襲的な手段を注目した。国際公開第2000027286号では、患者にVURが存在するかまたは存在しないことを検出する受動的音響方法が開示されている。この方法は、排尿開始時の直前からの患者の腹部から発した音響を増幅し、次に、増幅された音響にVURの特性を示す聴覚信号が存在するかまたは存在しないことを検出することを含む。この方法を使用する臨床研究は11%の場合において信号を解釈することに失敗した。US20100222699では、非侵襲的な温熱療法が開示されている。この温熱療法では、身体組織および流体(膀胱内の尿)が、放出されたエネルギーを使用して加熱され、その結果ターゲットおよび周囲の流体および組織(腎臓)において生じた温度変化が非侵襲的に測定され、それにより、膀胱尿管逆流症などの様々な身体的状況に関する検出および/または治療が実施される。安全上の懸念は、小児において内部臓器を加熱するためにマイクロ波エネルギーを使用することに起因すると考えられ得る。
【0018】
本発明の目的は、尿管、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)における尿量の変化を示す、機能的腎臓特性を判定するための装置、システム、および方法を提供することである。係る尿量の変化はVURを検出するために、およびそのVURが臨床的に意義がある可能性があるかどうか、および患者がさらなる診断を必要とするかどうかを検出するために、使用され得る。
【0019】
さらなる目的は、比較的安価、運搬可能、および非侵襲的な装置を提供することである。換言すると、係る装置においては、放射線被曝またはカテーテル留置が使用されないであろう。さらなる目的は、VURの診断を実施する際に小児、親、およびヘルスケア従事者により経験される不安を最小化させ、それにより臨床ガイドラインに関する順守を改善する、システム、装置、および方法を提供することである。特定的な目的は、患者のケアを簡略化するために、病院の救急診療部、医院、または診療所におけるポイント・オブ・ケアでの使用が可能な装置、システム、および方法を提供することである。このシステムを使用して、以前に診断された患者の追跡調査を実施して、係る患者のもとの病状が改善したかどうかまたは悪化したかどうかを判定することも、目的である。加えて、患者が便利かつ快適な場所で監視を継続して受けることを可能にし得るシステム、装置、および方法を提供することも目的である。特定の状況では、臨床的に有意なVURの正確な検出を改善することも必要であり、係る改善は、病状のより正確な反映を提供するために、いくつかの排尿サイクルにわたりデータ収集を実施することにより、本発明により達成が可能である。このシステムおよび方法は、ユーザによる知覚および解釈が容易となるように、機能的腎臓特性を表示するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、生体インピーダンス技術または電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)を使用して、被術者において膀胱から腎臓(一方または両方)までまたは尿管(一方または両方)まで流れる尿を測定するためのシステムが提供される。このシステムは、腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)におけるインピーダンス測定値を記録するよう構成されたインピーダンス測定モジュールと、インピーダンス測定モジュールからデータを受信するよう構成されたプロセッサと、を含む。なお、このデータは、一定の時間的期間にわたり収集されたインピーダンス測定値であり、このプロセッサは、測定値の間のまたは測定値群の間の差異を分析して、腎臓内における尿量変化の表示を提供するよう、さらに構成されたものである。
【0021】
換言すると、このシステムは、腎臓における尿の存在または尿量を測定する。
【0022】
インピーダンス測定モジュールは、インピーダンス測定値を記録するよう適応された複数の電極を含み得る。なおこれらの電極は、皮膚に対して、伝導的接触の状態に置かれるかまたは容量的に連結され、かつ制御ユニットに接続可能となるよう適応されている。
【0023】
インピーダンス測定モジュールは少なくとも2つの電極を含み得る。これらの電極は着用可能ユニットに組み込まれ得る。制御ユニットも着用可能ユニットに組み込まれ得る。
【0024】
プロセッサは、一定の時間的期間にわたる腎臓内の尿量変化を示すグラフまたは画像を生成するよう構成され得る。
【0025】
測定値は、排尿または充満の間に膀胱圧が増大する際に、または、手動によるかもしくはシステム自体により圧力が腹部に印加され、その結果、圧力が膀胱に印加されることにより膀胱圧が増大する際に、取得され得る。データは排尿時に収集され、排尿が行われないときに取得された基準線測定値に対して比較され得る。
【0026】
このシステムは、クイックリリース式締結具、弾性ストラップ、大腿部および/または肩部もしくは首の周りに固定可能なハーネス、胸当て、装具、スリング、またはホールターから選択される、着用可能ユニットを身体に固定するための手段を含み得る。
【0027】
本発明は、被術者において膀胱から腎臓(一方または両方)までまたは尿管(一方または両方)まで流れる尿を検出するための方法も提供する。この方法は、尿管、膀胱、および/または、腎臓において生じる伝導率変化を記録することを含む。係る伝導率変化は、尿管、膀胱、および/または、腎臓における尿量変化を示し、生体インピーダンスまたは電気インピーダンス・トモグラフィ技術により検出され、これらの尿量を制御値と比較すると、被験者においてVURが存在するかまたはしないかが示される。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、生体インピーダンス技術または電気インピーダンス・トモグラフィを使用して、被術者において膀胱から腎臓(一方または両方)まで流れる尿を検出するための装置を提供する。前記装置は、腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)におけるインピーダンス測定値を記録するよう構成されたインピーダンス測定モジュールと、インピーダンス測定モジュールからデータを受信するよう構成されたプロセッサと、を含む。なおこのデータは、一定の時間的期間にわたり取得されたインピーダンス測定値であり、プロセッサは、測定値の間の、または測定値群の間の差異を分析して、一定の時間的期間にわたる尿管(一方または両方)および/または腎臓(一方または両方)における尿量変化の指示を提供するよう、さらに構成されたものである。
【0029】
本発明は、尿管、膀胱、または腎臓(一方または両方)における尿量の変化を示すであろう尿管、膀胱、または腎臓(一方または両方)において生じるインピーダンス変化を記録することにより、ヒトまたは動物において、膀胱から腎臓(一方または両方)に向かう方向における尿の流れを検出するためのシステム、方法、および装置を含む。腎臓まで流れる尿量は、自然に(排尿中または膀胱充満の間に)または手で膀胱を押圧することにより誘導されて膀胱圧が増大したときに、または、排尿後に膀胱内に残留した尿量を測定することにより、測定され得る。
【0030】
したがって本発明は、生体インピーダンスを使用して膀胱から腎臓(一方または両方)まで流れる尿の測定および検出を行うための方法、装置、およびシステムを提供する。前記システム/装置は、少なくとも2つの電極を含むインピーダンス測定モジュールと、一定の時間的期間にわたりインピーダンス変化を測定する制御ユニットと、を含む。このシステム/装置はプロセッサを含み、このプロセッサは、インピーダンス測定値の受信と、出力の分析と、を実施して、当該の時間的期間にわたるインピーダンス変化を推定する。この分析により、一定時間にわたるインピーダンスにおける平均変化を表示するグラフが出力され得る。グラフは、基準線において(排尿が行われないとき)、および排尿中に、分析され、それにより、グラフにおける変化が基準線測定値と排尿中の測定値との間で観察可能であるかどうか、または排尿中に時間の経過とともに変化が増加するかどうか、が判定され得る。インピーダンスにおける変化はVURに相互に関連され得る。
【0031】
生体インピーダンス出力をさらに分析するために、システム/装置は、電気インピーダンス・トモグラフィ技術を使用し得る。インピーダンス測定モジュールは、腎臓のレベルにおいて身体平面の周りに配置され得る複数の電極と、電流の注入を、および一定の時間的期間にわたるインピーダンス変化の測定を、行うための制御ユニットと、を含み得る。プロセッサはインピーダンス測定値を受信し、出力を分析して、当該の時間的期間にわたるインピーダンス分布画像における変化を推定する。
【0032】
システム/装置のインピーダンス測定モジュールは、着用可能ユニットに組み込まれた複数の電極と、電子制御ユニットと、を含み得る。これらの電極は、電子制御ユニットの周縁の周りに離間され、制御ユニットは、着用可能ユニットに接続可能であり、制御ユニットは、一定の時間的期間にわたるインピーダンス測定値の受信および分析を実施するよう構成され得るプロセッサに接続可能である。プロセッサは、ディスプレイユニットに組み込まれるか、またはディスプレイユニットに接続可能であり得る。このディスプレイユニットは、尿管(一方または両方)、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)内の尿量に変化が存在するかどうかをユーザに伝える。
【0033】
着用可能ユニットはベルトまたはパッチを含み得る。
【0034】
電極は、ベルトの全周縁の周りに略均等に離間され得る。代替的に、複数の電極は、半球状アレイが形成されるよう、ベルトの部分的周縁の周りに均等に離間され得る。電極を含むパッチが患者に貼り付けられ得る。
【0035】
電極は、電流注入および電圧測定の両方の間に、対をなして機能し得る。電流は電極対の間に印加され、電圧は電極対の間で測定される。
【0036】
ベルトは2層状に形成され得る。なお電極ベルトの外側層物質は、水が電子構成要素に浸入することを防止するために、耐水性を有すると好適である。内側層は電極を含み得、および/または、動きを防止するために、高摩擦物質(例えばシリコーンまたはビニール)の接着性および/または別個の区域を組み込み得る。この物質は好適には生体適合性であると選択される。
【0037】
電極は互いに接触し合うことがなく、皮膚と接触する伝導性物質(およそ8〜105Ω/sqの平均表面抵抗率を有する)の別個の部分を含み得る。電極は、身体表面に対して、直接的に伝導的に接触してもよく、または容量的に連結されてもよい。電極は、皮膚に接触する非伝導性物質(例えばゲル層)に接触してもよい。尿管(一方または両方)、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)の正確な位置を特定して電極またはベルトまたはパッチが正確に位置決めされていることを確かめるために、超音波イメージングまたはX線が使用され得る。
【0038】
電極ベルトまたはパッチは能動電極を含み得る。なお各電極は能動電子チップを含む。
【0039】
本発明の文脈における能動電極は、埋め込まれた電圧バッファ、スイッチ、およびマイクロプロセッサを有するチップを含むGaggeroらと同一の構成を使用し得る。能動電極は、局所的エリアから電位をシミュレートおよび測定するために使用される励起効果を生成する。能動電極は、励起電極、限局電極、または治療電極としても知られ得る。使用時、電子チップは電極を含み得る。能動電子チップは、フレキシブルプリントケーブル、フラットケーブル、またはバスラインなどの接続を通して互いに接続され得、同様に制御ユニットに接続され得る。代替的に、能動電子チップは制御ユニットに組み込まれ、バスライン(例えば、フレキシブル、フラット、またはプリントケーブル)を介して電極に接続されてもよい。
【0040】
ベルトは、ベルトを患者の胴体の前面に固定するための手段をさらに含み得る。係る手段は、安全性のためのクイックリリース式締結具であってもよく、または、身体形状または身体サイズへの調整を可能とし、かつ、ベルトを患者に固定するための弾性ストラップであってもよい。代替的に、ベルトは、ベルトおよび制御ユニットを患者に固定するために、大腿部、および/または肩部、および/または首の周りに固定可能なハーネスを含み得る。係る実施形態では、制御ユニットはハーネスに対して直接的に着脱され得る。代替的な実施形態では、この装置は、ベルトおよび制御ユニットを患者に対して支持するための胸当て、装具、スリング、またはホールターを含み得る。さらに他の実施形態では、制御ユニットおよび電極は、吸収性(おしめまたはオムツ型)の物質を含むオムツまたは下ばきに直接取り付けられ得る。ベルトは、患者の呼吸が制限されることが決してないように、後部においてより広く、前部においてより狭い幅を有し得る。
【0041】
VURを検出するために、この装置/システムは、排尿時における、および、排尿前または排尿後の(排尿前後の測定は基準線測定値を得るためのものである)、インピーダンス変化を測定し得る。VURを有する患者に対して、排尿時において、逆流量尿は、流れる尿量に比例し得る。排尿中に、VURを検出するにあたり、事前定義された尿量が必要となり得る。装置/システムは排尿センサ(例えば湿潤インジケータおよび/または湿度もしくは温度センサ)を含み得る。排尿センサ(例えば湿潤インジケータおよび湿度または温度センサ)の機能は、事前定義された尿量が流れたときに人に通知し、排尿の開始時および終了時に関する、およびデータがいつ受信および分析されるかに関する、時間点および信号を提供することである。これは、用便指導がまだなされていない乳幼児に対して特に重要であり、これらの患者においては排尿が予測不能であり、場合によっては流れた尿量が極めて少量である。その結果、このシステムは、十分な尿量が流れた逆流事象を捕捉するために、4時間までのデータを記録し継続的に収集する必要があり得る。より長い時間的期間にわたりデータを収集するにあたっては、制御ユニットは、より大きいバッテリー・パワーおよびより高いデータ格納容量を含む必要がある。これは換言すると、より大きくかつより重いバッテリーおよび記憶媒体が、したがって、より大きい制御ユニットが、必要となるということである。センサ(例えば湿潤インジケータおよび湿度または温度)を組み込むことに関するいくつかの利点は、システムの軽量化およびコンパクト化が図られ、それにより、システムが運搬可能となり、小児が着用するにあたり快適となり、必要なデータ分析が少なくなり、信号処理時間が短縮化される(何時間ものデータが提示された場合には、ユーザまたはプロセッサは、いつ排尿が発生したかを知ることができず、大量のデータ分析が必要となり得る)ことを含む。センサからの信号は、フィードバックループに入力され、排尿開始時には測定を開始し排尿終了時には測定を停止するよう、制御ユニットを活性化させるために使用され得る。これにより、装置/システムは、排尿および基準線の際のみのインピーダンス変化を測定することが可能となる。その結果、制御ユニットはより軽量、よりコンパクトととなり、データの処理がより効率的となる。センサは、著しい尿量が流れたときに、および/または、排尿の開始もしくは終了時に、信号を放出するためにも使用され得る。信号は、制御ユニットまたはディスプレイユニット上に表示されるノイズ、光、または、色変化であり得る。
【0042】
十分な尿量が流れたことをユーザが意識した場合、ユーザは装置を取り外す必要はない。時期尚早に装置を取り外した場合には、電極位置に混乱が生じ、結果の確度に影響が及び得る。
【0043】
成人および乳児用のおしめおよびオムツには以前から湿潤インジケータが組み込まれている。一般に、湿潤インジケータは、顕著な量の液体と接触したときに色変化を表示する。一方、本発明の装置/システムに関しては、係るインジケータは、(逆流事象が発生した場合には)逆流事象が検出され得ることを示すであろう特定量の液体に相互に関連付けられる。これは、既知の吸収度の吸収コアと接触するバックシート物質の内側上の高温溶解接着剤に湿潤インジケータを貼り付けて、特定量の流体が存在した場合にインジケータを活性化させることにより、達成され得る。
【0044】
湿度および温度センサも成人および乳児用のオムツに組み込まれている。湿度または温度センサは、液体がセンサと接触したとき、物理的または化学的変化を呈し得る。次に、係る物理的変化または化学的変化を呈することにより電気信号に変化が生じ得、係る変化が制御ユニットにより検出され得る。制御ユニットは、係る電子信号を認識して、事象前にはシステムを活性化させ事象後にはシステムを非活性化させるよう、事前にプログラムされ得る。好適なセンサは、インピーダンスセンサ、容量センサ、圧電センサ、または温度センサを含み得る。なおこれらのセンサは市販されている。
【0045】
この装置/システムは、ノイズを発生させ得るかまたは結果の確度に影響を及ぼし得る患者の過度な動きを示すよう適応された、制御ユニットに組み込まれた運動センサ(例えば発振器)も含み得る。運動センサは、ノイズを発するかまたは光を表示することにより、顕著な動きが発生したときに表示し得る。
【0046】
運動センサは、上述の排尿センサと組み合わせて使用され得る。運動センサは、液体が湿度または温度センサに接触したときのみ活性化され得る。これにより、データが分析のために収集されているときに排尿時または排尿直後に過度な動きが発生した場合にのみ、アラートが提供されるであろう。
【0047】
VURを検出するにあたっては、患者上の電極の位置は、特に排尿時には、排尿の前後に(基準線測定値を取るために)およそ10〜40秒、好適には20〜40秒、可能な限り静止状態に保たれなければならない。測定エラーの発生につながり得るシステムにおけるノイズを低減させるために、動きを最小化することが重要である。運動センサを組み込むことの目的は、測定の際に過度な動きが生じたときに装置/システムの操作者に知らせることであり、係る場合に、データが分析には好適ではないことを知らせることである。乳幼児は多くの場合、予測不可能であり、じっとしていることが困難である。電極ベルトに過度な動きが生じれば、患者ノイズが信号に導入され得、それにより、結果の確度に影響を及ぼす測定エラーが生じ得る。
【0048】
運動センサは、加速度計、ジャイロスコープ、または発振器を含み得る市販の構成要素を使用して、過度な動きを測定し得る。
【0049】
インピーダンス測定モジュール、制御ユニットは、電流源、信号測定回路、および信号生成器回路を含むGaggeroらと同一の構成を使用し得る。信号生成器回路は、電流源に接続され得、波形合成デジタル・アナログ変換器(DAC)、フィルタ、および増幅器を含み得る。制御ユニット機能は、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)を使用して実装され得る。信号測定回路は、能動電子チップ対間の電圧を測定するよう適応され、増幅器、フィルタ、およびアナログ・デジタル変換器(ADC)を含み得る。代替的にマイクロコントローラがFPGAに代わって使用されてもよい。
【0050】
制御ユニットは、能動的に測定していない場合、ベルトから分離可能であり得る。制御ユニットがベルトから分離されたとき、制御ユニットは、監視前に装置/システムをプログラムするために、または監視後にデータの抽出を行うために、ディスプレイユニットに接続され得る。周波数、電流注入振幅、およびフレームレートは装置/システムにプログラムされ得る。制御ユニットにより供給される周波数は1〜200kHzの、好適には50〜150kHzの、より好適には50〜100kHzの範囲であり得る。電子制御ユニットにより供給される注入電流は、0.1〜10mAの、好適には1〜7mAの、より好適には1〜4mAの範囲であり得る。注入パターンは0〜15の範囲、より好適には0または1であり得る。撮像レートは1〜50フレーム/秒の範囲であり得る。これらのパラメータは、尿を監視するシステムの感度が最適化されるよう選択され、患者のBMIに応じて変化し得る。これらの値は安全患者補助電流内に保持される。より低い電流がより低い周波数に対して患者の安全性を維持するために使用されるべきである。
【0051】
制御ユニットは、ポータブル型充電式バッテリー(例えば軽量リチウムポリマー電池、その他)により電力供給されてもよく、または電力は、主要電源から、もしくは所望によりUSB充電器を介してもしくは電磁誘導を介して、供給されてもよい。制御ユニットは、バッテリーおよび電流源、信号生成および信号測定回路を完全に封入し得る。このエンクロージャは、ハウジングに摺動し、制御ユニットの両側に対する磁気による固定または2つのボタンによる固定により、ハウジングに固定するよう設計され得る。エンクロージャは、正方形、長円形、または半球状であり得る。制御ユニットは電極ベルトを固定するよう設計され得る。
【0052】
好適なバッテリー、接続ケーブル、プロセッサ、および閲覧モニタは、本明細書の記載から当業者により理解されるであろう。
【0053】
このシステムは、ユーザインターフェースまたはディスプレイユニットをさらに含み得る。ユーザインターフェースまたはディスプレイユニットは好適には、監視前に装置/システムをプログラムするために、または、測定値を取得する前または後にプロセッサにデータを通信するために、制御ユニットが着用可能ユニットから分離されているとき、制御ユニットに接続可能である。プロセッサは、イーサネット(登録商標)、ワイヤレス、Bluetooth(登録商標)、またはUSBなどを介して制御ユニットに接続されたスマートフォン、タブレット、ラップトップ、またはパーソナルコンピュータなどを含み得るディスプレイユニットに組み込まれるかまたは接続可能であり得る。代替的に、ディスプレイユニットおよび/またはプロセッサの全部または一部は制御ユニットに組み込まれ得る。結果(例えば尿量変化)は、制御ユニットまたはディスプレイユニット上に直接的に表示され得る。
【0054】
プロセッサは、測定値が取得される前にインピーダンス測定モジュールに対する入力パラメータ(例えば周波数、電流、および撮像レート)をユーザが選択することを可能にするための、ディスプレイユニットにアップロードされ得るソフトウェアを組み込み得る。測定値が取得された後、ソフトウェアは結果を分析し、ユーザに対して表示し得る。出力(処理)されたデータはインピーダンス変化を表示するグラフを含み得る。これらのインピーダンス変化はさらに処理され、アルゴリズムにおける信号パターンまたは再構築画像を構築するために使用され得る。
【0055】
システムは、グラフを生成するにあたって、インピーダンスニューモグラフィに対して使用される技術などの既存の生体インピーダンス技術を利用するよう設計され得る。生体インピーダンスは、インピーダンスにおける変化を検出する非侵襲的撮像技術である。電極は、皮膚と接触した状態に置かれ、少なくとも2つの電極間に電流が印加され、その結果生じた電圧が、同一のまたは異なる電極間で測定される。生体インピーダンスにおける変化は腎臓および/または尿管(一方または両方)における尿の容積および貯留に関連付けられるため、生体インピーダンスはVURの検出および監視を実施するために使用され得る。生体インピーダンスシステムは通常、患者の皮膚に接触する2〜4個の電極を含む。
【0056】
好適にはこのシステムは、電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT:Electrical Impedance Tomography)を利用して平面全域にわたるインピーダンスの分布を取得するよう設計され得る。システムは皮膚に接触する平面の周りに複数の電極を含む。電流が電極対間に印加され、その結果生じた電圧が、異なるセットの電極対から測定される。電圧測定値分布は記録され、インピーダンス分布の画像を再構築するために分析される。
【0057】
通常のEITシステムは、フレームにおいて動作する8〜32個の電極を含む。各フレームの間、システムは、正確な振幅を有する電流を注入し、電圧を測定し、各電極における全スイッチを制御する。例えば16個の電極が使用される場合、各フレーム(すなわち各フルセットの測定値)は16×16個の電圧測定値から構成される。
【0058】
例えば、電流は最初に電極対(16、1)を通して注入され、結果的に生じた電圧差が全電極対を通して測定される。電圧の測定が完了すると、プロセスは、隣接する電極対に電流を注入し、電流を注入するための元の位置が到達されるまで、再び全電極対において測定することにより、反復される。これらの全測定値はデータフレームを構成し、平面全域にわたる電圧の分布を生成する。EITシステムの電流、周波数、フレームレート、および注入パターンの設定は測定の前に定義され得、これらの設定は、測定の終了時まで一定に保持され得る。
【0059】
本発明の装置/システムでは、測定された電圧変化は、尿管、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)における尿量における変化を反映する腎臓または尿道の平面全域にわたるインピーダンス分布画像を再構築するために使用される。
【0060】
アルゴリズムをプロセッサに使用することは、グラフおよび再構築画像の生成、検出、VURの重大度の計算および定量化、患者とともにいるかまたは遠隔で小児を監視しているヘルスケア提供者に通知すること、のために使用され得る。この分析は、異なるオペレーティングシステムを実行する、様々なデスクトップまたはモバイルのコンピューティングシステム上に展開されるよう設計されたプロセッサソフトウェアに組み込まれ得る。
【0061】
EITシステムのプロセッサは、電極の平面におけるインピーダンス分布の再構築画像を形成するために使用され得る。これは、Adlerら2009により記載された線形再構築アルゴリズムを使用して実施され得る。平均インピーダンス分布画像が基準線(排尿なし)において作られ、平均または積分されたインピーダンス分布画像は排尿時に作られる。インピーダンス変化(基準線再構築インピーダンス画像(I
bm)に対する平均再構築インピーダンス画像(I
um)の変化として定義される)を評価すると、患者がVURを有するかどうかが判定される。加えて、最大インピーダンス変化および最大・平均値比を含む測定規準は、再構築画像または未加工データから抽出され得、インピーダンス分布画像に対する支持データの補完および表示を行うために一定時間にわたりプロットされ得る。
【0062】
本発明は、膀胱から腎臓への尿の流れを検出するための方法も提供する。この方法は、尿管、膀胱、および/または腎臓において発生するインピーダンス変化を記録することを含む。係るインピーダンス変化は、インピーダンス変化が生体インピーダンスおよびEIT技術により検出されたときの尿管、膀胱、および/または腎臓における尿量における変化を示す。
【0063】
この方法では、尿量における変化は、好適には、排尿の直前、排尿時、および排尿直後に記録された測定値により特定可能である。測定された電圧変化は、好適には、尿管、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)内の尿量における変化を示す再構築インピーダンス分布画像におけるパターンを構築するために処理される。
【0064】
対象となる時間点(例えば排尿中)における電圧測定値変化は、時間点の前および/または後の基準値(基準線測定値)に対して比較される。ここで排尿中の測定値は排尿の前後の測定値に対して比較され、それにより、VURが存在しないことの指示が、または軽度から重大なVUR(グレードIII〜vのVUR)の指示が、生成される。