特許第6860920号(P6860920)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860920
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月28日
(54)【発明の名称】尿の逆流の非侵襲的検出
(51)【国際特許分類】
   A61B 5/053 20210101AFI20210419BHJP
   A61B 5/20 20060101ALI20210419BHJP
【FI】
   A61B5/05 B
   A61B5/20
【請求項の数】17
【全頁数】31
(21)【出願番号】特願2017-557198(P2017-557198)
(86)(22)【出願日】2016年5月6日
(65)【公表番号】特表2018-519869(P2018-519869A)
(43)【公表日】2018年7月26日
(86)【国際出願番号】EP2016060234
(87)【国際公開番号】WO2016177901
(87)【国際公開日】20161110
【審査請求日】2019年4月16日
(31)【優先権主張番号】62/157,752
(32)【優先日】2015年5月6日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】509237767
【氏名又は名称】ナショナル ユニバーシティー オブ アイルランド, ゴールウェイ
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラフニー,サラ
(72)【発明者】
【氏名】ブルッツィ,マーク
(72)【発明者】
【氏名】オーハーロラン,マーティン
(72)【発明者】
【氏名】ピューリ,プレム
(72)【発明者】
【氏名】エレウテリオ,リカルド
【審査官】 門田 宏
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2010/0217148(US,A1)
【文献】 特開平05−038346(JP,A)
【文献】 特開2014−023813(JP,A)
【文献】 米国特許第5103835(US,A)
【文献】 中国特許出願公開第104605850(CN,A)
【文献】 BAYRAM,POSTER SESSION Bioelectric impedance analysis in the diagnosis of vesicoureteral reflux,PEDIATRIC NEPHROLOGY,ドイツ,2011年 7月13日,VOL:26, NR:9,P.1714,URL,http://dx.doi.org/10.1007/s00467-011-1958-y
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 5/053
A61B 5/036
A61B 5/20
A61B 5/00
A61B 10/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体インピーダンスまたは電気インピーダンス・トモグラフィの技術を用いて、被験者の膀胱から腎臓または尿管までの流れる尿を検出するためのシステムであって、前記システムはインピーダンス測定モジュールおよびプロセッサを備え、
前記インピーダンス測定モジュールは、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓の内部の尿量変化を表す、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓において生じる伝導率変化を記録するように構成され、前記伝導率変化は前記生体インピーダンスまたは前記電気インピーダンス・トモグラフィによって検出され、
前記プロセッサは、前記インピーダンス測定モジュールからの前記尿量変化に関するデータを受信するように構成され、前記データは対照値と比較することにより前記被験者に膀胱尿管逆流症(VUR)が存在するか否かを表し、
測定された電圧変化は前記尿管、前記膀胱または前記腎臓の内部の尿量変化を表す画像またはグラフを構築するために使用される、
システム。
【請求項2】
生体インピーダンスまたは電気インピーダンス・トモグラフィの技術を用いて、被験者の膀胱から腎臓または尿管までの流れる尿を検出するためのシステムであって、前記システムはインピーダンス測定モジュールおよびプロセッサを備え、
前記インピーダンス測定モジュールは、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓の内部の尿量変化を表す、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓において生じる伝導率変化を記録するように構成され、前記伝導率変化は前記生体インピーダンスまたは前記電気インピーダンス・トモグラフィによって検出され、
前記プロセッサは、前記インピーダンス測定モジュールからの前記尿量変化に関するデータを受信するように構成され、前記データは対照値と比較することにより前記被験者にVURが存在するか否かを表し、
測定値は、排尿または充満の間に膀胱圧が増大する際に取得される、または、手動によりもしくは前記システムにより圧力が腹部に印加され、それにより前記膀胱圧が増大する際に取得される、システム。
【請求項3】
生体インピーダンスまたは電気インピーダンス・トモグラフィの技術を用いて、被験者の膀胱から腎臓または尿管までの流れる尿を検出するためのシステムであって、前記システムはインピーダンス測定モジュールおよびプロセッサを備え、
前記インピーダンス測定モジュールは、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓の内部の尿量変化を表す、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓において生じる伝導率変化を記録するように構成され、前記伝導率変化は前記生体インピーダンスまたは前記電気インピーダンス・トモグラフィによって検出され、
前記プロセッサは、前記インピーダンス測定モジュールからの前記尿量変化に関するデータを受信するように構成され、前記データは対照値と比較することにより前記被験者にVURが存在するか否かを表し、
データが排尿中に収集され、排尿が生じないときに取得された基準線測定値と比較される、システム。
【請求項4】
生体インピーダンスまたは電気インピーダンス・トモグラフィの技術を用いて、被験者の膀胱から腎臓または尿管までの流れる尿を検出するためのシステムであって、前記システムはインピーダンス測定モジュールおよびプロセッサを備え、
前記インピーダンス測定モジュールは、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓の内部の尿量変化を表す、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓において生じる伝導率変化を記録するように構成され、前記伝導率変化は前記生体インピーダンスまたは前記電気インピーダンス・トモグラフィによって検出され、
前記プロセッサは、前記インピーダンス測定モジュールからの前記尿量変化に関するデータを受信するように構成され、前記データは対照値と比較することにより前記被験者にVURが存在するか否かを表し、
最大伝導率変化および最大・平均値比を含む測定規準が画像から抽出される、システム。
【請求項5】
生体インピーダンスまたは電気インピーダンス・トモグラフィの技術を用いて、被験者の膀胱から腎臓または尿管までの流れる尿を検出するためのシステムであって、前記システムはインピーダンス測定モジュールおよびプロセッサを備え、
前記インピーダンス測定モジュールは、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓の内部の尿量変化を表す、前記尿管、前記膀胱または前記腎臓において生じる伝導率変化を記録するように構成され、前記伝導率変化は前記生体インピーダンスまたは前記電気インピーダンス・トモグラフィによって検出され、
前記プロセッサは、前記インピーダンス測定モジュールからの前記尿量変化に関するデータを受信するように構成され、前記データは対照値と比較することにより前記被験者にVURが存在するか否かを表し、
前記腎臓まで流れる尿量は、排尿後に前記膀胱に残された残留尿量から推測される、システム。
【請求項6】
前記インピーダンス測定モジュールは、伝導率変化を記録するよう適応された複数の電極を含み、前記電極は、皮膚に対して、伝導的接触の状態に置かれるかまたは容量的に連結され、かつ制御ユニットに接続可能となるよう、適応されている、請求項1〜5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記測定値は、排尿または充満の間に膀胱圧が増大する際に、または、手動によるかもしくは前記システムにより圧力が腹部に、その結果、前記膀胱に印加されるために膀胱圧が増大する際に、取得される、請求項1〜6のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項8】
前記データが排尿中に収集され、排尿が生じないときに取得された基準線測定値に対して比較される、請求項1〜請求項のうちのいずれか一項に記載のシステム。
【請求項9】
前記インピーダンス測定モジュールは、前記皮膚に接触する状態に置かれ得、かつ、インピーダンス変化を検知するために制御ユニットに接続可能である、少なくとも2つの電極を含む、請求項1〜8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
前記インピーダンス測定モジュールは、電極を含むユニットであって、身体の表面に対して直接的に伝導的接触の状態に置かれるかまたは容量的に連結されたユニットと、前記ユニットから取り外し可能な制御ユニットと、を含む、請求項1〜9のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項11】
前記プロセッサは、ユーザインターフェースまたはディスプレイユニットに対して、組み込まれるかまたは接続可能である、請求項1〜10のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項12】
前記電極は、使用時には、前記被験者の前記膀胱、前記尿管、または前記腎臓における対象エリアの近位にある前記身体の表面上に配置されるよう適応されている、請求項1〜11のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項13】
クイックリリース式締結具、弾性ストラップ、大腿部および/または肩部もしくは首の周りに固定可能なハーネス、胸当て、装具、スリング、またはホールターから選択される、前記電極を前記身体に固定するための手段を含む、請求項1〜12のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項14】
前記制御ユニットおよび電極ユニットは、吸収性物質を含むオムツまたは下ばきに直接的に取り付け可能である、請求項1〜13のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項15】
湿潤インジケータおよび/または湿度もしくは温度センサをさらに含む、請求項1〜14のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項16】
前記被験者の過度な動きが、結果の確度に影響を及ぼすであろうノイズを生じさせたかどうかを示すよう適応された運動センサをさらに含む、請求項1〜請求項15のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項17】
前記電極を含む、前記インピーダンス測定モジュールのユニットは、前記電極の動きを防止するために、接着性または高摩擦性の物質を組み込む、請求項1〜請求項16のいずれか一項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、膀胱から腎臓(一方または両方)まで流れる尿を非侵襲的に検出するためのシステム、方法、および装置に関する。このシステム、方法、および装置は、別個の時間点において得られた測定に基づくものであり、膀胱尿管逆流症(VUR:Vesicoureteral Reflux)を検出するために使用され得る。このシステム、方法、および装置は、尿管(一方または両方)、膀胱および/または腎臓(一方または両方)における尿量における変化を検出するよう設計されている。このシステム、方法、および装置では、生体インピーダンスまたは電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)技術により伝導率変化の測定が行われる。
【背景技術】
【0002】
VURは、多くの場合、小児に見られる病状であり、膀胱から尿管を通り腎臓へと尿が逆流することを伴い、命にかかわる損傷を腎臓に生じさせ得る。VURは、単一または両方の尿収集システム(すなわち単一の尿管(1方向性)または両方の尿管(2方向性))に関与し得る。VURの診断に対する現在の黄金律である排尿時膀胱尿道造影(VCUG)処置を実施する際に患者、親、および医師において観察される不安のレベルに基づいて、小児における膀胱尿管逆流症の検出のための非侵襲的な方法が必要であることは明らかである。この文脈では検出とは、病状の初期診断を実施すること、および、病状がすでに解決されたかどうかまたは進行したかどうかを判定するために、すでに受診済みの患者を監視すること、および、病状がすでに解決されたかどうかまたは進行したかどうかを判定するために、手術後の患者を監視すること、を含む。
【0003】
主要なVURは多くの場合、小児(5歳未満)に発生する。VURは小児集団の1〜2%に、および尿路感染症(UTI)を有する小児の30%〜40%に、広まっているものと推定される。VURは腎実質障害(RPD:renal parenchymal damage)または腎瘢痕に対する危険因子である。瘢痕が大きい場合では、腎損傷の結果として、高血圧、腎機能の低下、蛋白尿がもたらされ、特定の場合では、末期腎疾患(ESRD:End Stage Renal Disease)がもたらされ得る。慢性腎不全(CRF:Chronic Renal Failure)を有するイタリアにおける小児の見込み個体数ベースの登録では、VURは、CRFの主要な単一原因であり、CRFを有する全患者のうちの25.4%を占めるものであった。
【0004】
本発明から利益を得るであろう患者集団は、UTIを有する患者(特に5歳未満)と、水腎症を有する小児と、VURを有する患者の兄弟および子供と、を含む。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
現在、VURが疑われる小児が放射線専門医に紹介された場合、係る患者は、腎膀胱エコー(RBUS:Renal Bladder Ultrasound)、排尿時膀胱尿道造影(VCUG:Voiding Cystourethrogram)、核膀胱X線造影(Nuclear Cystogram)、および/またはジメルカプトコハク酸(DMSA:Dimercaptosuccinic Acid)を使用して検査され得る。VURを有するものと疑われる患者を評価するために使用されるこれらの方法のうちの各方法は、各方法に関連付けられた少なくとも1つの主要な欠点を有する。
・VCUGは、VURの重症度分類を実施する上での黄金律ではあるが、カテーテル留置と顕著な放射線被曝との両方を伴う。VCUGを実施する際には、カテーテルが患者の尿道に配置され、カテーテルを通して放射線不透過性造影剤が膀胱内に注入される。膀胱が充満される際に腎臓(一方または両方)、尿管(一方または両方)、および膀胱が観察され、排尿中にX線透視撮影を使用して患者を撮像し、それによりVURが検出される。
・RBUSはVURに関する信頼性の高い指標ではない(およそ26%の確度)と考えられる。
・DMSAは高額な検査であり、顕著な放射線被曝を伴い、核医学専門医により実施されなければならない。DMSAはVURを検出するものではないが、腎臓にすでに損傷が存在するかどうかを示すために使用される。
・核膀胱X線造影も、高い確度でVURを検出するためには、カテーテル通過と放射線被曝とを必要とする。放射性核種が膀胱内に注入され、ガンマ線カメラを使用して患者の撮像が実施される。放射線被曝は低くなるが、画像の品質も低くなり得る。
【0006】
VURが診断または治療された場合であっても、逆流が解決されたかどうかまたは進行したかどうかを判定するために、検査を規則的な間隔で繰り返し実施することが必要となる。VCUG検査を繰り返し実施することは多くの場合、初期VCUG評価を実施する際に小児、親、および治療を施す医師により経験される不安のレベルに基づいて、忌避される。定められた時間点における、すなわち、排尿または充満の間に膀胱圧が増大する際の、または圧力が(手動的に、またはシステム自体により)腹部に印加され、それにより膀胱に印加される間に膀胱圧が増大する際の、腎臓内の尿量の変化は膀胱尿管逆流症(VUR)に関する指標である。患者がVURを患っている場合には、排尿の際の腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)内のインピーダンスが増加し、VURが存在しない場合は、腎臓(一方または両方)および/または尿管(一方または両方)内における変化がほとんど観察されないかまたはまったく観察されないであろう。
【0007】
生体インピーダンスの測定は、1対の皮膚接触電極を使用して電流を身体に供給し、腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)の近傍の身体表面における同一のまたは第2の電極対の間に生じた電圧を測定することを含む。生体インピーダンスを測定するための装置については米国特許第6339722(B1)号から知ることができる。この生体インピーダンス測定システムは体液に関する生物学的パラメータを判定するために使用される。
【0008】
電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT:Electrical Impedance Tomography)は、平面の全域におけるインピーダンスにおける変化に基づいてインピーダンス分布画像を提供する。なおインピーダンス分布画像は電極の位置によって決まる。EITシステムを使用して人体の各部に関するインピーダンス分布画像を表示する原理については、米国特許公開第20030216664(A1)号で記載されている。
【0009】
この先行技術では、生体インピーダンスを使用して、後腹膜出血、膀胱状態、膀胱機能、膀胱容量、および胃食道逆流を分析する概念について記載されている。しかし、腎機能または腎臓への尿逆流を測定する非侵襲的な手段として生体インピーダンスを使用することに関して記載する文献はない。
【0010】
様々な研究調査では、対麻痺を患う患者に対して、または、失禁もしくは泌尿生殖系に対する損傷を招き得る膀胱充満レベルの正常な機能が損なわれた印象を示す他の病状を有する患者に対して、膀胱容量における変化を示す信号を患者に提供するために、膀胱内のインピーダンス変化が評価された。様々な研究では、膀胱充満の際、および、膀胱排尿後に、生体インピーダンスを使用してインピーダンスにおける動的変化が示されている。例えば、生体インピーダンスに基づいて膀胱尿量を監視するための装置について記載する先行技術は、EITに基づいて膀胱尿量を監視するための方法について記載する米国特許第5103835号およびCN104605850に記載の装置を含む。EITは腎臓からの出血(後腹膜出血)を監視するためにも使用されてきた。様々な研究では、内出血が存在する旨の情報をヘルスケア作業者に提供するために、腎臓近傍の空間におけるインピーダンス変化が使用され得るかどうかが評価される。これは、腎臓損傷を有するものと診断された患者を、または腎臓に関する手術後に患者を、監視するための有用な兆候である。
【0011】
この先行技術では、生体インピーダンス(さらに詳細にはEIT)を使用して胃食道逆流(GOR)を監視する概念も記載されている。GORは胃内容物が胃から食道に向かって流れるときに発生する。EITは、GORを検出するための患者挿管に対する必要性を排除するための可能な手段として提案されてきている。一方、GORを特定するための代替的な方法としてEITを使用することの実現可能性を調査する研究では、EITを使用してGORを正確に検出することは依然として不可能であると結論されている。係る結論が、身体内における食道の深い位置、逆流が存在しないエピソードの際に食道において観察される変化、および、逆流流体ならびに食道内容物のインピーダンス範囲に基づき得ることが、研究では示唆される。
【0012】
対象となる異なる流体のインピーダンス範囲、事象の期間およびタイミング、外部器官の影響、病状の病態生理学、患者集団、および器官寸法に基づいて、EITの使用がVURの検出に対して好適または効果的でないことが当業者には明らかとなるであろう。
【0013】
異なる流体の伝導率:異なる生体組織および流体は異なる伝導率を有する。なお、対象領域と周囲領域との間で伝導率の差異が大きいほど、インピーダンス変化を検出することはより容易となる。例えばVURを検出するとき、尿および腎臓の伝導率は(100kHzの周波数において)それぞれおよそ2.3S/mおよび0.17S/mであり、差異は2.13S/mである。ここで膀胱と尿との間の差異は2.09S/mであり、腎臓と血液との間の差異は0.53S/mである。GORでの伝導率変化値の推定値は推定することが不可能である。これは、どのような食物が消費されたかに応じて胃内容物の伝導率が相当に変動することによる。結果として、尿と腎臓との間のインピーダンス差異は検出が容易であり、追加的に、尿のインピーダンスをさらに大きくする経口溶液(例えば、高い塩分濃度またはイオン濃度を有する溶液)を使用することにより、伝導率差異をさらに大きくすることも可能であり得る。
【0014】
期間およびタイミング:EITシステムは動的変化を検出するにあたり非常に好適である。動的変化は既知の時間的期間において突然的に生じる。膀胱充満、腎臓出血、およびGORは多くの場合、偶発的であり、長期の予測不能な時間的期間にわたり発生する。これにより、これらの用途に対するEITの利用は制限される。それとは対照的に、VURは、膀胱圧が増大した(例えば排尿−予測可能かつ急速な事象)ときに高伝導率の流体(尿)の急増が膀胱から尿管(一方または両方)または腎臓(一方または両方)に移動する場合に発生する。VURおよび高圧事象が同時に発生することは、小児が排尿する既知の時間的期間を提供する。このデータは、システムへとフィードバックして、それにより、VURを検出するために、基準線(排尿が行われないとき)における、および、排尿中の、生体インピーダンス測定値を収集するための、対象となる時間的期間および基準時間フレームを定義するために、使用され得る。外部器官の影響−生体インピーダンス測定値は、対象領域を包囲する器官の活動を含む外部要因により左右される。このことに基づき、測定は、監視対象の身体の位置に依存して影響されるであろう。周囲の器官の活動を相殺するために、異なるデータ分析方法が使用されなければならない。例えば胃食道逆流(GOR)に関して監視する場合には、食道に極めて近い器官の活動を考慮する必要がある。係る活動は、呼吸(肺における空気)、心拍動、および胃内要物の消化を含み得る。それとは対照的に、膀胱尿管逆流症に影響を及ぼし得る生理学的パラメータは、腸管運動、呼吸、および膀胱内の尿量を含み得る。
【0015】
病状の病態生理学および患者集団:主要なVURは一般に、膀胱と尿管との間の壁内トンネルが通常よりも短いことにより発生し、6か月〜5歳の小児に見られ、多くの場合は、小児の成長とともに解決するであろう。VURは多くの場合、患者が再発性または熱性の尿路感染症を呈したとき、診断される。胃食道逆流は、成人および小児の両方に見られ得、多くの場合、肥満症、飲食内容、および喫煙に、または特定の場合にはヘルニアに、起因する。胃食道逆流は多くの場合、主要なVURに対する危険因子である尿路感染症とは別に、他の胃の症状と合併された状態で発生する。VURは無症候性である。患者は病状発生時に知覚することができない。その一方で、胃食道逆流を患う患者は胸やけなどの特異的な症状を有する。
【0016】
逆流が始まる器官と、逆流が測定される位置と、は異なる。VURは尿が膀胱から尿管を通り腎臓に向かって移動するときに発生し、その一方で、GORは胃内容物が胃から食道に向かって流れるときに発生する。腎臓は膀胱とは別個の器官であり、その一方で、食道は胃に対して直接的に接続されている。胃食道逆流は食道において監視され、VURは腎臓において監視される。すなわち、尿が尿管を通過し、次に他の空間を通過し異なる器官に移動した後にVURは監視される。EITの結果は対象エリアから電極までの距離にも依存するであろう。食道は胸の前部の最近位に配置され、腎臓は背中の近位に配置されている。電極物質およびサイズは、選択され、器官の位置に応じた状態に対して表示値が最適化されるような位置に配置されなければならない。
【0017】
他のグループはVURを検出するための非侵襲的な手段を注目した。国際公開第2000027286号では、患者にVURが存在するかまたは存在しないことを検出する受動的音響方法が開示されている。この方法は、排尿開始時の直前からの患者の腹部から発した音響を増幅し、次に、増幅された音響にVURの特性を示す聴覚信号が存在するかまたは存在しないことを検出することを含む。この方法を使用する臨床研究は11%の場合において信号を解釈することに失敗した。US20100222699では、非侵襲的な温熱療法が開示されている。この温熱療法では、身体組織および流体(膀胱内の尿)が、放出されたエネルギーを使用して加熱され、その結果ターゲットおよび周囲の流体および組織(腎臓)において生じた温度変化が非侵襲的に測定され、それにより、膀胱尿管逆流症などの様々な身体的状況に関する検出および/または治療が実施される。安全上の懸念は、小児において内部臓器を加熱するためにマイクロ波エネルギーを使用することに起因すると考えられ得る。
【0018】
本発明の目的は、尿管、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)における尿量の変化を示す、機能的腎臓特性を判定するための装置、システム、および方法を提供することである。係る尿量の変化はVURを検出するために、およびそのVURが臨床的に意義がある可能性があるかどうか、および患者がさらなる診断を必要とするかどうかを検出するために、使用され得る。
【0019】
さらなる目的は、比較的安価、運搬可能、および非侵襲的な装置を提供することである。換言すると、係る装置においては、放射線被曝またはカテーテル留置が使用されないであろう。さらなる目的は、VURの診断を実施する際に小児、親、およびヘルスケア従事者により経験される不安を最小化させ、それにより臨床ガイドラインに関する順守を改善する、システム、装置、および方法を提供することである。特定的な目的は、患者のケアを簡略化するために、病院の救急診療部、医院、または診療所におけるポイント・オブ・ケアでの使用が可能な装置、システム、および方法を提供することである。このシステムを使用して、以前に診断された患者の追跡調査を実施して、係る患者のもとの病状が改善したかどうかまたは悪化したかどうかを判定することも、目的である。加えて、患者が便利かつ快適な場所で監視を継続して受けることを可能にし得るシステム、装置、および方法を提供することも目的である。特定の状況では、臨床的に有意なVURの正確な検出を改善することも必要であり、係る改善は、病状のより正確な反映を提供するために、いくつかの排尿サイクルにわたりデータ収集を実施することにより、本発明により達成が可能である。このシステムおよび方法は、ユーザによる知覚および解釈が容易となるように、機能的腎臓特性を表示するであろう。
【課題を解決するための手段】
【0020】
本発明によれば、生体インピーダンス技術または電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)を使用して、被術者において膀胱から腎臓(一方または両方)までまたは尿管(一方または両方)まで流れる尿を測定するためのシステムが提供される。このシステムは、腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)におけるインピーダンス測定値を記録するよう構成されたインピーダンス測定モジュールと、インピーダンス測定モジュールからデータを受信するよう構成されたプロセッサと、を含む。なお、このデータは、一定の時間的期間にわたり収集されたインピーダンス測定値であり、このプロセッサは、測定値の間のまたは測定値群の間の差異を分析して、腎臓内における尿量変化の表示を提供するよう、さらに構成されたものである。
【0021】
換言すると、このシステムは、腎臓における尿の存在または尿量を測定する。
【0022】
インピーダンス測定モジュールは、インピーダンス測定値を記録するよう適応された複数の電極を含み得る。なおこれらの電極は、皮膚に対して、伝導的接触の状態に置かれるかまたは容量的に連結され、かつ制御ユニットに接続可能となるよう適応されている。
【0023】
インピーダンス測定モジュールは少なくとも2つの電極を含み得る。これらの電極は着用可能ユニットに組み込まれ得る。制御ユニットも着用可能ユニットに組み込まれ得る。
【0024】
プロセッサは、一定の時間的期間にわたる腎臓内の尿量変化を示すグラフまたは画像を生成するよう構成され得る。
【0025】
測定値は、排尿または充満の間に膀胱圧が増大する際に、または、手動によるかもしくはシステム自体により圧力が腹部に印加され、その結果、圧力が膀胱に印加されることにより膀胱圧が増大する際に、取得され得る。データは排尿時に収集され、排尿が行われないときに取得された基準線測定値に対して比較され得る。
【0026】
このシステムは、クイックリリース式締結具、弾性ストラップ、大腿部および/または肩部もしくは首の周りに固定可能なハーネス、胸当て、装具、スリング、またはホールターから選択される、着用可能ユニットを身体に固定するための手段を含み得る。
【0027】
本発明は、被術者において膀胱から腎臓(一方または両方)までまたは尿管(一方または両方)まで流れる尿を検出するための方法も提供する。この方法は、尿管、膀胱、および/または、腎臓において生じる伝導率変化を記録することを含む。係る伝導率変化は、尿管、膀胱、および/または、腎臓における尿量変化を示し、生体インピーダンスまたは電気インピーダンス・トモグラフィ技術により検出され、これらの尿量を制御値と比較すると、被験者においてVURが存在するかまたはしないかが示される。
【0028】
さらなる態様では、本発明は、生体インピーダンス技術または電気インピーダンス・トモグラフィを使用して、被術者において膀胱から腎臓(一方または両方)まで流れる尿を検出するための装置を提供する。前記装置は、腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)におけるインピーダンス測定値を記録するよう構成されたインピーダンス測定モジュールと、インピーダンス測定モジュールからデータを受信するよう構成されたプロセッサと、を含む。なおこのデータは、一定の時間的期間にわたり取得されたインピーダンス測定値であり、プロセッサは、測定値の間の、または測定値群の間の差異を分析して、一定の時間的期間にわたる尿管(一方または両方)および/または腎臓(一方または両方)における尿量変化の指示を提供するよう、さらに構成されたものである。
【0029】
本発明は、尿管、膀胱、または腎臓(一方または両方)における尿量の変化を示すであろう尿管、膀胱、または腎臓(一方または両方)において生じるインピーダンス変化を記録することにより、ヒトまたは動物において、膀胱から腎臓(一方または両方)に向かう方向における尿の流れを検出するためのシステム、方法、および装置を含む。腎臓まで流れる尿量は、自然に(排尿中または膀胱充満の間に)または手で膀胱を押圧することにより誘導されて膀胱圧が増大したときに、または、排尿後に膀胱内に残留した尿量を測定することにより、測定され得る。
【0030】
したがって本発明は、生体インピーダンスを使用して膀胱から腎臓(一方または両方)まで流れる尿の測定および検出を行うための方法、装置、およびシステムを提供する。前記システム/装置は、少なくとも2つの電極を含むインピーダンス測定モジュールと、一定の時間的期間にわたりインピーダンス変化を測定する制御ユニットと、を含む。このシステム/装置はプロセッサを含み、このプロセッサは、インピーダンス測定値の受信と、出力の分析と、を実施して、当該の時間的期間にわたるインピーダンス変化を推定する。この分析により、一定時間にわたるインピーダンスにおける平均変化を表示するグラフが出力され得る。グラフは、基準線において(排尿が行われないとき)、および排尿中に、分析され、それにより、グラフにおける変化が基準線測定値と排尿中の測定値との間で観察可能であるかどうか、または排尿中に時間の経過とともに変化が増加するかどうか、が判定され得る。インピーダンスにおける変化はVURに相互に関連され得る。
【0031】
生体インピーダンス出力をさらに分析するために、システム/装置は、電気インピーダンス・トモグラフィ技術を使用し得る。インピーダンス測定モジュールは、腎臓のレベルにおいて身体平面の周りに配置され得る複数の電極と、電流の注入を、および一定の時間的期間にわたるインピーダンス変化の測定を、行うための制御ユニットと、を含み得る。プロセッサはインピーダンス測定値を受信し、出力を分析して、当該の時間的期間にわたるインピーダンス分布画像における変化を推定する。
【0032】
システム/装置のインピーダンス測定モジュールは、着用可能ユニットに組み込まれた複数の電極と、電子制御ユニットと、を含み得る。これらの電極は、電子制御ユニットの周縁の周りに離間され、制御ユニットは、着用可能ユニットに接続可能であり、制御ユニットは、一定の時間的期間にわたるインピーダンス測定値の受信および分析を実施するよう構成され得るプロセッサに接続可能である。プロセッサは、ディスプレイユニットに組み込まれるか、またはディスプレイユニットに接続可能であり得る。このディスプレイユニットは、尿管(一方または両方)、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)内の尿量に変化が存在するかどうかをユーザに伝える。
【0033】
着用可能ユニットはベルトまたはパッチを含み得る。
【0034】
電極は、ベルトの全周縁の周りに略均等に離間され得る。代替的に、複数の電極は、半球状アレイが形成されるよう、ベルトの部分的周縁の周りに均等に離間され得る。電極を含むパッチが患者に貼り付けられ得る。
【0035】
電極は、電流注入および電圧測定の両方の間に、対をなして機能し得る。電流は電極対の間に印加され、電圧は電極対の間で測定される。
【0036】
ベルトは2層状に形成され得る。なお電極ベルトの外側層物質は、水が電子構成要素に浸入することを防止するために、耐水性を有すると好適である。内側層は電極を含み得、および/または、動きを防止するために、高摩擦物質(例えばシリコーンまたはビニール)の接着性および/または別個の区域を組み込み得る。この物質は好適には生体適合性であると選択される。
【0037】
電極は互いに接触し合うことがなく、皮膚と接触する伝導性物質(およそ8〜105Ω/sqの平均表面抵抗率を有する)の別個の部分を含み得る。電極は、身体表面に対して、直接的に伝導的に接触してもよく、または容量的に連結されてもよい。電極は、皮膚に接触する非伝導性物質(例えばゲル層)に接触してもよい。尿管(一方または両方)、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)の正確な位置を特定して電極またはベルトまたはパッチが正確に位置決めされていることを確かめるために、超音波イメージングまたはX線が使用され得る。
【0038】
電極ベルトまたはパッチは能動電極を含み得る。なお各電極は能動電子チップを含む。
【0039】
本発明の文脈における能動電極は、埋め込まれた電圧バッファ、スイッチ、およびマイクロプロセッサを有するチップを含むGaggeroらと同一の構成を使用し得る。能動電極は、局所的エリアから電位をシミュレートおよび測定するために使用される励起効果を生成する。能動電極は、励起電極、限局電極、または治療電極としても知られ得る。使用時、電子チップは電極を含み得る。能動電子チップは、フレキシブルプリントケーブル、フラットケーブル、またはバスラインなどの接続を通して互いに接続され得、同様に制御ユニットに接続され得る。代替的に、能動電子チップは制御ユニットに組み込まれ、バスライン(例えば、フレキシブル、フラット、またはプリントケーブル)を介して電極に接続されてもよい。
【0040】
ベルトは、ベルトを患者の胴体の前面に固定するための手段をさらに含み得る。係る手段は、安全性のためのクイックリリース式締結具であってもよく、または、身体形状または身体サイズへの調整を可能とし、かつ、ベルトを患者に固定するための弾性ストラップであってもよい。代替的に、ベルトは、ベルトおよび制御ユニットを患者に固定するために、大腿部、および/または肩部、および/または首の周りに固定可能なハーネスを含み得る。係る実施形態では、制御ユニットはハーネスに対して直接的に着脱され得る。代替的な実施形態では、この装置は、ベルトおよび制御ユニットを患者に対して支持するための胸当て、装具、スリング、またはホールターを含み得る。さらに他の実施形態では、制御ユニットおよび電極は、吸収性(おしめまたはオムツ型)の物質を含むオムツまたは下ばきに直接取り付けられ得る。ベルトは、患者の呼吸が制限されることが決してないように、後部においてより広く、前部においてより狭い幅を有し得る。
【0041】
VURを検出するために、この装置/システムは、排尿時における、および、排尿前または排尿後の(排尿前後の測定は基準線測定値を得るためのものである)、インピーダンス変化を測定し得る。VURを有する患者に対して、排尿時において、逆流量尿は、流れる尿量に比例し得る。排尿中に、VURを検出するにあたり、事前定義された尿量が必要となり得る。装置/システムは排尿センサ(例えば湿潤インジケータおよび/または湿度もしくは温度センサ)を含み得る。排尿センサ(例えば湿潤インジケータおよび湿度または温度センサ)の機能は、事前定義された尿量が流れたときに人に通知し、排尿の開始時および終了時に関する、およびデータがいつ受信および分析されるかに関する、時間点および信号を提供することである。これは、用便指導がまだなされていない乳幼児に対して特に重要であり、これらの患者においては排尿が予測不能であり、場合によっては流れた尿量が極めて少量である。その結果、このシステムは、十分な尿量が流れた逆流事象を捕捉するために、4時間までのデータを記録し継続的に収集する必要があり得る。より長い時間的期間にわたりデータを収集するにあたっては、制御ユニットは、より大きいバッテリー・パワーおよびより高いデータ格納容量を含む必要がある。これは換言すると、より大きくかつより重いバッテリーおよび記憶媒体が、したがって、より大きい制御ユニットが、必要となるということである。センサ(例えば湿潤インジケータおよび湿度または温度)を組み込むことに関するいくつかの利点は、システムの軽量化およびコンパクト化が図られ、それにより、システムが運搬可能となり、小児が着用するにあたり快適となり、必要なデータ分析が少なくなり、信号処理時間が短縮化される(何時間ものデータが提示された場合には、ユーザまたはプロセッサは、いつ排尿が発生したかを知ることができず、大量のデータ分析が必要となり得る)ことを含む。センサからの信号は、フィードバックループに入力され、排尿開始時には測定を開始し排尿終了時には測定を停止するよう、制御ユニットを活性化させるために使用され得る。これにより、装置/システムは、排尿および基準線の際のみのインピーダンス変化を測定することが可能となる。その結果、制御ユニットはより軽量、よりコンパクトととなり、データの処理がより効率的となる。センサは、著しい尿量が流れたときに、および/または、排尿の開始もしくは終了時に、信号を放出するためにも使用され得る。信号は、制御ユニットまたはディスプレイユニット上に表示されるノイズ、光、または、色変化であり得る。
【0042】
十分な尿量が流れたことをユーザが意識した場合、ユーザは装置を取り外す必要はない。時期尚早に装置を取り外した場合には、電極位置に混乱が生じ、結果の確度に影響が及び得る。
【0043】
成人および乳児用のおしめおよびオムツには以前から湿潤インジケータが組み込まれている。一般に、湿潤インジケータは、顕著な量の液体と接触したときに色変化を表示する。一方、本発明の装置/システムに関しては、係るインジケータは、(逆流事象が発生した場合には)逆流事象が検出され得ることを示すであろう特定量の液体に相互に関連付けられる。これは、既知の吸収度の吸収コアと接触するバックシート物質の内側上の高温溶解接着剤に湿潤インジケータを貼り付けて、特定量の流体が存在した場合にインジケータを活性化させることにより、達成され得る。
【0044】
湿度および温度センサも成人および乳児用のオムツに組み込まれている。湿度または温度センサは、液体がセンサと接触したとき、物理的または化学的変化を呈し得る。次に、係る物理的変化または化学的変化を呈することにより電気信号に変化が生じ得、係る変化が制御ユニットにより検出され得る。制御ユニットは、係る電子信号を認識して、事象前にはシステムを活性化させ事象後にはシステムを非活性化させるよう、事前にプログラムされ得る。好適なセンサは、インピーダンスセンサ、容量センサ、圧電センサ、または温度センサを含み得る。なおこれらのセンサは市販されている。
【0045】
この装置/システムは、ノイズを発生させ得るかまたは結果の確度に影響を及ぼし得る患者の過度な動きを示すよう適応された、制御ユニットに組み込まれた運動センサ(例えば発振器)も含み得る。運動センサは、ノイズを発するかまたは光を表示することにより、顕著な動きが発生したときに表示し得る。
【0046】
運動センサは、上述の排尿センサと組み合わせて使用され得る。運動センサは、液体が湿度または温度センサに接触したときのみ活性化され得る。これにより、データが分析のために収集されているときに排尿時または排尿直後に過度な動きが発生した場合にのみ、アラートが提供されるであろう。
【0047】
VURを検出するにあたっては、患者上の電極の位置は、特に排尿時には、排尿の前後に(基準線測定値を取るために)およそ10〜40秒、好適には20〜40秒、可能な限り静止状態に保たれなければならない。測定エラーの発生につながり得るシステムにおけるノイズを低減させるために、動きを最小化することが重要である。運動センサを組み込むことの目的は、測定の際に過度な動きが生じたときに装置/システムの操作者に知らせることであり、係る場合に、データが分析には好適ではないことを知らせることである。乳幼児は多くの場合、予測不可能であり、じっとしていることが困難である。電極ベルトに過度な動きが生じれば、患者ノイズが信号に導入され得、それにより、結果の確度に影響を及ぼす測定エラーが生じ得る。
【0048】
運動センサは、加速度計、ジャイロスコープ、または発振器を含み得る市販の構成要素を使用して、過度な動きを測定し得る。
【0049】
インピーダンス測定モジュール、制御ユニットは、電流源、信号測定回路、および信号生成器回路を含むGaggeroらと同一の構成を使用し得る。信号生成器回路は、電流源に接続され得、波形合成デジタル・アナログ変換器(DAC)、フィルタ、および増幅器を含み得る。制御ユニット機能は、フィールド・プログラマブル・ゲートアレイ(FPGA)を使用して実装され得る。信号測定回路は、能動電子チップ対間の電圧を測定するよう適応され、増幅器、フィルタ、およびアナログ・デジタル変換器(ADC)を含み得る。代替的にマイクロコントローラがFPGAに代わって使用されてもよい。
【0050】
制御ユニットは、能動的に測定していない場合、ベルトから分離可能であり得る。制御ユニットがベルトから分離されたとき、制御ユニットは、監視前に装置/システムをプログラムするために、または監視後にデータの抽出を行うために、ディスプレイユニットに接続され得る。周波数、電流注入振幅、およびフレームレートは装置/システムにプログラムされ得る。制御ユニットにより供給される周波数は1〜200kHzの、好適には50〜150kHzの、より好適には50〜100kHzの範囲であり得る。電子制御ユニットにより供給される注入電流は、0.1〜10mAの、好適には1〜7mAの、より好適には1〜4mAの範囲であり得る。注入パターンは0〜15の範囲、より好適には0または1であり得る。撮像レートは1〜50フレーム/秒の範囲であり得る。これらのパラメータは、尿を監視するシステムの感度が最適化されるよう選択され、患者のBMIに応じて変化し得る。これらの値は安全患者補助電流内に保持される。より低い電流がより低い周波数に対して患者の安全性を維持するために使用されるべきである。
【0051】
制御ユニットは、ポータブル型充電式バッテリー(例えば軽量リチウムポリマー電池、その他)により電力供給されてもよく、または電力は、主要電源から、もしくは所望によりUSB充電器を介してもしくは電磁誘導を介して、供給されてもよい。制御ユニットは、バッテリーおよび電流源、信号生成および信号測定回路を完全に封入し得る。このエンクロージャは、ハウジングに摺動し、制御ユニットの両側に対する磁気による固定または2つのボタンによる固定により、ハウジングに固定するよう設計され得る。エンクロージャは、正方形、長円形、または半球状であり得る。制御ユニットは電極ベルトを固定するよう設計され得る。
【0052】
好適なバッテリー、接続ケーブル、プロセッサ、および閲覧モニタは、本明細書の記載から当業者により理解されるであろう。
【0053】
このシステムは、ユーザインターフェースまたはディスプレイユニットをさらに含み得る。ユーザインターフェースまたはディスプレイユニットは好適には、監視前に装置/システムをプログラムするために、または、測定値を取得する前または後にプロセッサにデータを通信するために、制御ユニットが着用可能ユニットから分離されているとき、制御ユニットに接続可能である。プロセッサは、イーサネット(登録商標)、ワイヤレス、Bluetooth(登録商標)、またはUSBなどを介して制御ユニットに接続されたスマートフォン、タブレット、ラップトップ、またはパーソナルコンピュータなどを含み得るディスプレイユニットに組み込まれるかまたは接続可能であり得る。代替的に、ディスプレイユニットおよび/またはプロセッサの全部または一部は制御ユニットに組み込まれ得る。結果(例えば尿量変化)は、制御ユニットまたはディスプレイユニット上に直接的に表示され得る。
【0054】
プロセッサは、測定値が取得される前にインピーダンス測定モジュールに対する入力パラメータ(例えば周波数、電流、および撮像レート)をユーザが選択することを可能にするための、ディスプレイユニットにアップロードされ得るソフトウェアを組み込み得る。測定値が取得された後、ソフトウェアは結果を分析し、ユーザに対して表示し得る。出力(処理)されたデータはインピーダンス変化を表示するグラフを含み得る。これらのインピーダンス変化はさらに処理され、アルゴリズムにおける信号パターンまたは再構築画像を構築するために使用され得る。
【0055】
システムは、グラフを生成するにあたって、インピーダンスニューモグラフィに対して使用される技術などの既存の生体インピーダンス技術を利用するよう設計され得る。生体インピーダンスは、インピーダンスにおける変化を検出する非侵襲的撮像技術である。電極は、皮膚と接触した状態に置かれ、少なくとも2つの電極間に電流が印加され、その結果生じた電圧が、同一のまたは異なる電極間で測定される。生体インピーダンスにおける変化は腎臓および/または尿管(一方または両方)における尿の容積および貯留に関連付けられるため、生体インピーダンスはVURの検出および監視を実施するために使用され得る。生体インピーダンスシステムは通常、患者の皮膚に接触する2〜4個の電極を含む。
【0056】
好適にはこのシステムは、電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT:Electrical Impedance Tomography)を利用して平面全域にわたるインピーダンスの分布を取得するよう設計され得る。システムは皮膚に接触する平面の周りに複数の電極を含む。電流が電極対間に印加され、その結果生じた電圧が、異なるセットの電極対から測定される。電圧測定値分布は記録され、インピーダンス分布の画像を再構築するために分析される。
【0057】
通常のEITシステムは、フレームにおいて動作する8〜32個の電極を含む。各フレームの間、システムは、正確な振幅を有する電流を注入し、電圧を測定し、各電極における全スイッチを制御する。例えば16個の電極が使用される場合、各フレーム(すなわち各フルセットの測定値)は16×16個の電圧測定値から構成される。
【0058】
例えば、電流は最初に電極対(16、1)を通して注入され、結果的に生じた電圧差が全電極対を通して測定される。電圧の測定が完了すると、プロセスは、隣接する電極対に電流を注入し、電流を注入するための元の位置が到達されるまで、再び全電極対において測定することにより、反復される。これらの全測定値はデータフレームを構成し、平面全域にわたる電圧の分布を生成する。EITシステムの電流、周波数、フレームレート、および注入パターンの設定は測定の前に定義され得、これらの設定は、測定の終了時まで一定に保持され得る。
【0059】
本発明の装置/システムでは、測定された電圧変化は、尿管、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)における尿量における変化を反映する腎臓または尿道の平面全域にわたるインピーダンス分布画像を再構築するために使用される。
【0060】
アルゴリズムをプロセッサに使用することは、グラフおよび再構築画像の生成、検出、VURの重大度の計算および定量化、患者とともにいるかまたは遠隔で小児を監視しているヘルスケア提供者に通知すること、のために使用され得る。この分析は、異なるオペレーティングシステムを実行する、様々なデスクトップまたはモバイルのコンピューティングシステム上に展開されるよう設計されたプロセッサソフトウェアに組み込まれ得る。
【0061】
EITシステムのプロセッサは、電極の平面におけるインピーダンス分布の再構築画像を形成するために使用され得る。これは、Adlerら2009により記載された線形再構築アルゴリズムを使用して実施され得る。平均インピーダンス分布画像が基準線(排尿なし)において作られ、平均または積分されたインピーダンス分布画像は排尿時に作られる。インピーダンス変化(基準線再構築インピーダンス画像(Ibm)に対する平均再構築インピーダンス画像(Ium)の変化として定義される)を評価すると、患者がVURを有するかどうかが判定される。加えて、最大インピーダンス変化および最大・平均値比を含む測定規準は、再構築画像または未加工データから抽出され得、インピーダンス分布画像に対する支持データの補完および表示を行うために一定時間にわたりプロットされ得る。
【0062】
本発明は、膀胱から腎臓への尿の流れを検出するための方法も提供する。この方法は、尿管、膀胱、および/または腎臓において発生するインピーダンス変化を記録することを含む。係るインピーダンス変化は、インピーダンス変化が生体インピーダンスおよびEIT技術により検出されたときの尿管、膀胱、および/または腎臓における尿量における変化を示す。
【0063】
この方法では、尿量における変化は、好適には、排尿の直前、排尿時、および排尿直後に記録された測定値により特定可能である。測定された電圧変化は、好適には、尿管、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)内の尿量における変化を示す再構築インピーダンス分布画像におけるパターンを構築するために処理される。
【0064】
対象となる時間点(例えば排尿中)における電圧測定値変化は、時間点の前および/または後の基準値(基準線測定値)に対して比較される。ここで排尿中の測定値は排尿の前後の測定値に対して比較され、それにより、VURが存在しないことの指示が、または軽度から重大なVUR(グレードIII〜vのVUR)の指示が、生成される。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1】電極ベルト、バスライン、制御ユニット、バッテリー、ディスプレイユニット、および接続ケーブルであり得るインピーダンス測定モジュールと、ディスプレイユニットに組み込まれ得るプロセッサと、を含むシステムのブロック図である。
図2】インピーダンス測定モジュールと、電流源と、信号生成器と、信号測定システムと、接続バスラインと、電極に接続された能動電子チップを含む電極ベルトと、を含む制御ユニットの信号を形成および測定するために使用され得るステップと、を示す図である。
図3A】腎臓、尿管、および膀胱を示す、ターゲット解剖学的組織を示す概略図である。
図3B】VURを監視するための主要なターゲットエリアである腎臓の腎盂エリア上に配置された電極を示す図である。
図4】2層の物質間の電極ベルトにおける能動電子チップ(C)、能動電子チップを保護するための外側層(D)、伝導性物質(A)の区域を含む内側層(B)の可能な配列を示す図である。
図5A】半円配列状に分布された8個の能動電子チップを有する電極ベルトであって、前部よりも後部においてより厚く、電子チップ上に内側織地を有し、前部において締結するための重なり合うマジックテープ(登録商標)細片を有する電極ベルトの一実施形態を示す図である。
図5B図5Aの実施形態の斜視図である。
図6A】16個の均等に分布された電極と、ベルトを締結するための調整可能ストラップとを有する電極ベルトであって、前部において締結するための調整可能なマジックテープ(登録商標)細片と、電極をカバーする内側織物と、を有する電極ベルトの一実施形態を示す図である。
図6B図6Aの実施形態の斜視図である。
図7A】長円形の制御ユニットおよびハウジングを有する一実施形態の斜視図である。
図7B】測定のために取り付けられた図7Aの実施形態の斜視図である。
図8】電極ベルトを固定するよう設計された制御ユニットの一実施形態の斜視図である。
図9図8Aおよび図8Bと同一の固定機構を有する代替的形状の制御ユニットの一実施形態の斜視図である。
図10A】制御ユニットにおける固定ループを通してベルトに接続され得る正方形の制御ユニットの一実施形態の前方に面する斜視図である。
図10B】制御ユニットにおける固定ループを通してベルトに接続され得る正方形の制御ユニットの一実施形態の後方に面する斜視図である。
図11A】支持のために、左右の側でベルトに接続され、上部からはネックハーネスに接続される、垂直配置された制御ユニットの一実施形態の斜視図である。
図11B】装置が患者により着用された状態で示されている、制御ユニットが、首の周りで支持されるよう、ベルトおよびハーネスに取り付けられた、本発明の一実施形態を示す図である。
図12A】制御ユニットが半球であり、ベストに挿入される、本発明の一実施形態の斜視図である。
図12B】患者により着用された状態の、図12Aに示す本発明の一実施形態を示す図である。
図13A】制御ユニットが胸当てに挿入され、ベルトに接続されている、電極ベルトおよび制御ユニットの一実施形態の斜視図である。
図13B】患者により着用された状態の、図13Aに示す本発明の一実施形態を示す図である。
図14A】制御ユニットは、長円形であり、制御ユニットが患者の胸を斜めに横切るよう、一定の角度をなした状態でベルトの前部および後部に取り付けられている、本発明の一実施形態を示す図である。
図14B】患者により着用された状態の、図14Aに示す本発明の一実施形態を示す図である。
図15A】ベルトおよび制御ユニットが下ばきに組み込まれている、本発明の一実施形態を示す図である。
図15B】患者により着用されたときの図15Aの実施形態を示す図である。
図16】腎臓の試験管内ベンチトップモデル(bench top model)を使用して開発された、最大値インピーダンス変化および最大・平均値比、抵抗率指標および平均抵抗率を示すグラフである。
図17(a)】特定的な時間的期間において尿が腎臓まで移動しているかどうかを確認するためにインピーダンス分布画像の測定および処理を実施するために使用されるステップの詳細を示す図である。
図17(b)】特定的な時間的期間において尿が腎臓まで移動しているかどうかを確認するためにインピーダンス分布画像の測定および処理を実施するために使用されるステップの詳細を示す図である。
図17(c)】特定的な時間的期間において尿が腎臓まで移動しているかどうかを確認するためにインピーダンス分布画像の測定および処理を実施するために使用されるステップの詳細を示す図である。
図17(d)】特定的な時間的期間において尿が腎臓まで移動しているかどうかを確認するためにインピーダンス分布画像の測定および処理を実施するために使用されるステップの詳細を示す図である。
図17(e)】特定的な時間的期間において尿が腎臓まで移動しているかどうかを確認するためにインピーダンス分布画像の測定および処理を実施するために使用されるステップの詳細を示す図である。
図18(a)】データが収集されるときの、すなわち、膀胱が充満状態のとき(例えば排尿直前)、腎臓下方で高圧力となり、その結果VURが生じる期間の間(例えば排尿中)、および膀胱が空となった後の、インピーダンス分布画像および時間的期間を処理するために使用されるステップを表す図である。
図18(b)】データが収集されるときの、すなわち、膀胱が充満状態のとき(例えば排尿直前)、腎臓下方で高圧力となり、その結果VURが生じる期間の間(例えば排尿中)、および膀胱が空となった後の、インピーダンス分布画像および時間的期間を処理するために使用されるステップを表す図である。
図18(c)】データが収集されるときの、すなわち、膀胱が充満状態のとき(例えば排尿直前)、腎臓下方で高圧力となり、その結果VURが生じる期間の間(例えば排尿中)、および膀胱が空となった後の、インピーダンス分布画像および時間的期間を処理するために使用されるステップを表す図である。
図18(d)】データが収集されるときの、すなわち、膀胱が充満状態のとき(例えば排尿直前)、腎臓下方で高圧力となり、その結果VURが生じる期間の間(例えば排尿中)、および膀胱が空となった後の、インピーダンス分布画像および時間的期間を処理するために使用されるステップを表す図である。
図18(e)】データが収集されるときの、すなわち、膀胱が充満状態のとき(例えば排尿直前)、腎臓下方で高圧力となり、その結果VURが生じる期間の間(例えば排尿中)、および膀胱が空となった後の、インピーダンス分布画像および時間的期間を処理するために使用されるステップを表す図である。
図18(f)】データが収集されるときの、すなわち、膀胱が充満状態のとき(例えば排尿直前)、腎臓下方で高圧力となり、その結果VURが生じる期間の間(例えば排尿中)、および膀胱が空となった後の、インピーダンス分布画像および時間的期間を処理するために使用されるステップを表す図である。
図19(a)】10mlの液体が15秒間にわたり注入されたときのブタのモデルにおける前臨床研究の間に観察される変化を示す図、および、時間的期間における対象領域における平均インピーダンスである局部的伝導率変化を示すグラフである。
図19(b)】10mlの液体が15秒間にわたり注入されたときのブタのモデルにおける前臨床研究の間に観察される変化を示す図、および、時間的期間における対象領域における平均インピーダンスである局部的伝導率変化を示すグラフである。
図19(c)】10mlの液体が15秒間にわたり注入されたときのブタのモデルにおける前臨床研究の間に観察される変化を示す図、および、時間的期間における対象領域における平均インピーダンスである局部的伝導率変化を示すグラフである。
図19(d)】10mlの液体が15秒間にわたり注入されたときのブタのモデルにおける前臨床研究の間に観察される変化を示す図、および、時間的期間における対象領域における平均インピーダンスである局部的伝導率変化を示すグラフである。
図19(e)】10mlの液体が15秒間にわたり注入されたときのブタのモデルにおける前臨床研究の間に観察される変化を示す図、および、時間的期間における対象領域における平均インピーダンスである局部的伝導率変化を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0066】
本発明の装置/システムのインピーダンス測定モジュールおよびプロセッサが、電極ベルト(1)、バスライン(2)、制御ユニット(3)、バッテリー(4)、ディスプレイユニット(5)、および、インピーダンス測定モジュールとプロセッサとの間の接続インターフェース(6)を含むものとして、図1で概略的に示されている。制御ユニット(3)は、USB、ワイヤレス、Bluetooth(登録商標)、またはイーサネット(登録商標)接続を通してディスプレイユニット(5)に取り付けられる。
【0067】
図2では、電流源(7)と、信号生成器(8)と、信号測定システム(9)と、接続バスライン(2)と、電極(11)に接続された能動電子回路(10)を含む電極ベルト(1)と、を含む制御ユニット(3)の回路の電子機器が概略的に示されている。通常、本発明の電極ベルト(1)は、8〜32個の電極(11)を含み得る。この図面では、2つのみの電極(11)に対する回路が一例として提供されているが、残りの電極も同一の回路を有し得る。各能動電子回路(10)は、電圧バッファと、スイッチと、スイッチの状態を変更するためのマイクロプロセッサと、を含む。制御ユニット(3)は、電流源(7)と、信号測定回路(9)と、信号生成回路(8)と、を含む。信号生成回路(8)は電流源(7)に接続され、波形合成(12)と、デジタル・アナログ変換器(DAC)(13)と、バンドパスフィルタ(14)と、電圧増幅器(15)と、を含む。信号測定回路(9)は、能動電子回路対の間の電圧を測定し、電圧増幅器(16)と、ローパスフィルタ(17)と、ハイパスフィルタ(18)と、アナログ・デジタル変換器(ADC)(19)と、を含む。
【0068】
図3Aはターゲット解剖学的組織の概観であり、腎臓、尿管、および膀胱が示されている。使用時、電極ベルト(1)は尿量における変化を検出するためにターゲット解剖学的組織の近位に配置されるであろう。尿管(一方または両方)、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)の正確な位置を特定して装置が正確に位置決めされていることを確かめるために、超音波イメージングまたはX線が使用され得る。
【0069】
図3Bでは、腎臓の腎盂エリア上に位置決めされた電極(11)が示されている。これは、VURを監視するための主要なターゲットエリアである。VURの間、尿は尿管を通って腎臓の腎盂エリアへと腎臓まで移動する。
【0070】
電極ベルト(1)における能動電子回路(10)は、図4で示すように2層の物質間に配置され得る構成の例である。外側層(20)は能動電子チップ(10)を保護し、内側層(21)は伝導性物質の区域を含む。外側層(20)の物質は、電子構成要素に水が浸入しないよう保護するために、耐水性である。内側層(21)は、動きを防止するために接着性または高摩擦性の物質(例えばビニールまたはシリコーン)を組み込み得、皮膚刺激が最小化されるよう設計されている。内側層(21)は、皮膚に接触するであろう非伝導性物質の区域と能動電子チップ(10)との間に伝導性物質の区域を含む。能動電子チップ(10)は、フレキシブルフラットワイヤケーブルまたはフレキシブルプリントケーブルなどのケーブル(22)を通して互いに接続されている。
【0071】
図5Aおよび図5Bでは、8個の電極(11)が半円配列状に分布された電極ベルト(1)の一実施形態が示されている。ベルト(1)は、前部よりも後部においてより厚く、電極(11)上に内側織地層を有し、前部において締結するために、重なり合うマジックテープ(登録商標)細片(23)を有する。後部におけるより厚い区域は、追加的な支持を提供し、前部における薄い区域は呼吸が妨げられることを防止する。
【0072】
図6Aおよび図6Bでは、16個の均等に分布された電極(11)と、ベルト(1)を締結するための調整可能ストラップ(24)と、を有する電極ベルト(1)の代替的な実施形態が示されている。ベルト(1)は、前部において締結するための調整可能マジックテープ(登録商標)細片と、電極(11)をカバーする内側織地と、を有する。
【0073】
図7Aおよび図7Bでは、長円形の制御ユニット(3)およびハウジング(25)を有する実施形態の斜視図が示されている。この図面では、ハウジング(25)および制御ユニット(3)が2つの別個の構成要素として示されている。制御ユニット(3)は、制御ユニット(3)が能動的に測定していないとき、ハウジング8(25)から分離される。ハウジング(25)は電極ベルト(1)に接続されており、制御ユニット(3)に対する電気接続をベルト(1)に提供する。制御ユニット(3)は、制御ユニット(3)が能動的に患者を監視していないときハウジング(25)から分離され得、監視前に装置/システムをプログラムするために、または監視後にデータを抽出するために、ディスプレイユニット(5)に接続され得る。制御ユニット(3)は、ポータブル型充電式バッテリー(例えば軽量リチウムポリマー電池など)により電源供給され得る。エンクロージャは、2つのボタンが制御ユニット(3)の両側を固定する状態で、ハウジング(25)に摺動して固定するよう設計されている。
【0074】
図8では、電極ベルト(1)を固定するよう設計された制御ユニット(3)の一実施形態が示されている。ベルト(1)および制御ユニット(3)は2つの別個の構成要素として示されている。ベルト(1)は調整可能マジックテープ(登録商標)ストラップ(23)も含む。
【0075】
図9では、図8のように構成された同一の固定機構および制御ユニット(3)を有する、代替的な形状を有する制御ユニット(3)の一実施形態が示されている。
【0076】
図10Aでは、制御ユニット(3)における固定ループ(26)を通してベルト(1)に接続され得る正方形の制御ユニット(3)の一実施形態が示されている。正方形状の制御ユニット(3)は、患者の動きが制限されることがないよう、いずれの方向においてもそのサイズが小さくなっている。
【0077】
図11Aでは垂直方向配置される制御ユニット(3)が示されており、この制御ユニット(3)は、支持のために、左右の側でベルト(1)に接続され、上部からはネックハーネス(27)に、接続される。制御ユニット(3)は、支持のために、左右の側でベルト(1)に接続され、上部からはネックハーネスに接続される。ネックストラップは、制御ユニット(3)の支持およびバランスを提供し、ベルト(1)から離間した状態で制御ユニット(3)を位置決めする。それにより、電極接触との干渉が潜在的に低減される。
【0078】
図11Bでは本発明の一実施形態が示されており、この実施形態では、制御ユニット(3)は、患者により着用されて首の周りで支持されるよう、ベルト(1)およびハーネス(27)に取り付けられている。
【0079】
図12Aおよび図12Bでは本発明の一実施形態が示されており、この実施形態では、制御ユニット(3)は半球であり、ベスト(28)に挿入される。電極ベルト(1)は、電極ベルト(1)の位置を保持し、かつ制御ユニット(3)を支持するために、肩の周りに支持ストラップ(29)を有するベスト(28)に組み込まれている。電極ベルト(1)はベスト(28)の底部に接続される。制御ユニット(3)は、胸の中心に、または後部上に、配置され得る。ベスト(28)は、制御ユニット(3)の支持およびバランスを提供し、ベルト(1)から離間した状態で制御ユニット(3)を位置決めする。それにより、電極接触との干渉が潜在的に低減される。
【0080】
図13Aおよび図13Bでは電極ベルト(1)および制御ユニット(3)の一実施形態が示されており、この実施形態では、制御ユニット(3)は胸当て(30)に挿入され、ベルト(1)に接続される。胸当て(30)はベルト(1)を支持するために患者の首の周りに配置される。制御ユニット(3)は単一の接続を有し、胸当て(30)のポケット(31)に配置される。胸当て(30)は、制御ユニット(3)の支持およびバランスを提供し、ベルト(1)から離間した状態で制御ユニット(3)を位置決めする。それにより、電極接触との干渉が潜在的に低減される。
【0081】
図14Aおよび図14Bでは本発明の一実施形態が示されており、この実施形態では、制御ユニット(3)は長円形であり、制御ユニット(3)が患者の胸を斜めに横切るよう、一定の角度をなした状態でベルト(1)の前部および後部に取り付けられている。ストラップ(32)は制御ユニット(3)に通され、身体を斜めに横切る状態で患者の一方の肩の周りに巻かれる。このことは、ベルト(1)から離間した状態で制御ユニット(3)の支持およびバランスを提供し、電極接触との干渉を防止する。
【0082】
図15Aおよび図15Bでは本発明の一実施形態が示されており、この実施形態では、ベルト(1)および制御ユニット(3)は下ばき(33)に組み込まれている。下ばきは吸収性物質を含み、または、下ばき(33)を脱がなくても排尿が可能となるよう、おしめの上に着用され得る。下ばき(33)には、制御ユニット(3)の保持するためのポケット(34)が存在する。このことは、ベルト(1)から離間した状態で制御ユニット(3)の支持およびバランスを提供し、電極接触との干渉を防止するであろう。電極ベルト(1)はウエストバンドの周りで内側ループ(35)により支持され、それにより電極ベルト(1)が固定される。
【0083】
図17では、EITを使用して腎臓または尿管内の尿を検出するためにこのシステムが使用するステップが示されている。これらのステップは、一定の時間的期間にわたりインピーダンス測定値を収集するためのインピーダンス測定モジュールを使用して、電極を腎臓のレベルにおいて身体の平面の周りに正確に位置決めすることに関する。次に、プロセッサはインピーダンス測定モジュールからインピーダンス測定値を受信し、これらの測定値を分析して、(少なくとも)当該の時間的期間の間の各秒に対してインピーダンス測定モジュールを使用して収集された、一連のインピーダンス分布画像(7)を生成する。各インピーダンス分布画像は、特定の時間点における腎臓に流れる液体の容積に対応する。インピーダンス分布画像は、収集および処理され(7)、基準線においておよび排尿中に発生する平均変化を提供する平均インピーダンス分布画像(8)が出力される。排尿中の平均インピーダンス分布画像はフィルタ処理され(9)、排尿前または排尿後に得られた基準線画像に対して比較される。ディスプレイユニット(10)は結果をユーザに提供し、この情報は、VURが発生しているかどうかを示すために使用される。
【0084】
図18は、ステップと、画像の測定および分析が行われたときのタイムフレームと、をさらに示す。平均インピーダンス分布画像は排尿(15)の前(11)、排尿中(12)、および排尿後(13)に得られ得る。時間0(t0)において、膀胱は充満状態にあり(14)、患者は排尿する必要がある。t0が測定値におけるタイムスタンプとして記録される。装置/システムは、この時点の前、またはこの時点において、活性化され得る。排尿が始まる(15)と、排尿開始を表すタイムスタンプt1が記録される。t0とt1との間で得られたインピーダンス分布画像の平均が出力される(11)。
【0085】
タイムスタンプt2は排尿の終了を表し、t1とt2との間の平均インピーダンス分布画像が出力される(12)。タイムスタンプt3が測定の終了時において確立される。t2とt3との間の平均EITインピーダンス分布画像が出力される(13)。画像(11、12、13)を比較すると、尿が腎臓に向かって移動しているかどうかが判定される。用便指導がまだなされていない小児においては、膀胱が充満状態にあるかどうかを(例えば超音波を使用して)医師がチェックし、膀胱に対して外部圧力を加えることにより膀胱収縮(例えば排尿)をシミュレートしてもよい。
【0086】
図19は、前臨床研究からの結果を表す。前臨床研究の間、開放後退尿管注入(open retrograde ureteric infusion)を使用して、ブタのモデルがVURをシミュレートするために使用された。逆流体積と膀胱容量との間の相関関係が逆流体積を確立するために使用された。これは、膀胱容量の10%〜15%の範囲であると推定される。膀胱容量は(年齢+2)×30mLを使用して推定され得る。結果として、8〜30mlの容積がVURをシミュレートするにあたり現実的であると考えられた。10mlの容積が、6か月〜2歳の小児の最小平均VUR容積に基づいて、研究に対する適切な許容基準として選択された。インピーダンス分布画像が図面に示されている。一連の画像は、腎臓への注入前および注入中の異なる時間点において取得された。グラフは一定時間にわたる局部的伝導率における変化を表示する。
【0087】
本発明の電極ベルト(1)のすべての実施形態は電極(11)を含み、電極(11)は互いに接触し合わず、皮膚に接触するであろう高伝導性物質(8〜105Ω/sqの平均表面低効率)の別々の部分を含む。電極(11)は皮膚に接触するであろう。この電極配列は、対象エリア(すなわち患者の膀胱、尿管(一方または両方)、または腎臓(一方または両方))の近位にある身体表面に接する複数の電極(11)を含む。電極(11)は身体表面に対して、直接的に伝導的に接触するか、または容量的に連結される。本発明における使用に対して好適な電極(10)物質は、金メッキされた銅、ステンレス鋼を含み、または電極回路に取り付けられた伝導性織物電極も好適となるであろう。電極物質は伝導性マイクロファイバ不織布メタマテリアルまたはピロール導電性ポリマーであり得る。着用可能ユニットは伝導的接触のために身体に直接的に固定された電極を含み得る。なおここでは、皮膚のインピーダンスを低減させるために、非伝導性の溶液またはゲル層(例えば超音波ゲルまたは水)が皮膚と電極との間に存在する。ゲル層に加えて、患者の皮膚に接触する内側表面上の接着性または高摩擦性の物質(例えばシリコーン、ゴム、またはビニール)も、ベルトを定位置に固定することを支援するために皮膚とベルトとの間の摩擦係数を大きくするよう作用し得る。
【0088】
通常のEITシステムは、フレームにおいて動作する8〜32個の電極を含む。各フレームの間、システムは、正確な振幅を有する電流を注入し、電圧を測定し、各電極における全スイッチを制御する。例えば16個の電極が使用される場合、各フレーム(すなわち各フルセットの測定値)は16×16個の電圧測定値から構成される。
【0089】
例えば、電流は最初に電極対(16、1)を通して注入され、結果的に生じた電圧差が全電極対を通して測定される。電圧の測定が完了すると、プロセスは、隣接する電極対に電流を注入し、電流を注入するための元の位置が到達されるまで、再び全電極対において測定することにより、反復される。これらの全測定値はデータフレームを構成し、平面全域にわたる電圧の分布を生成する。
【0090】
インピーダンス測定モジュールは、高インピーダンス線上での信号のアナログ伝送に起因する問題を最小化するために患者に可能な限り近くなるよう電圧の測定およびバッファを実施するよう設計された組み込まれた電子機器(例えばチップ)を有する電極を含み得る。スイッチ、バッファ、およびマイクロプロセッサが、電極対の間の電流注入パターンを制御するために使用され得る。この回路は、図2に示された能動電子回路(チップ)である。チップが使用される場合、各能動電子チップは、受信され制御ユニットに伝送される信号を多重化するためのスイッチを有する。例えば、このシステムは、電流の注入および減衰を行うための2つのスイッチ(それぞれSW1.1およびSW1.2)と、電圧をバッファし、その電圧をバスアナログ線A1およびA2を介して制御ユニットに伝送するための2つのスイッチ(SW1.3およびSW1.4)と、を有し得る(図2における電極1参照)。
【0091】
電圧バッファは、高い出力インピーダンスレベルを有する第1回路からの電圧を、低い入力インピーダンスレベルを有する第2回路に伝送するために使用される。各測定の間、2つの電極が活性化される。作用電極のそれぞれがバッファされた信号を2つのバスラインのうちの一方(A1またはA2)に伝送する。ラインA1とA2との間の電圧差は制御ユニットにより計算され、アナログ信号がデジタル信号に変換される。
【0092】
能動電子チップは、各チップの状態を(すなわち、各時点において、いずれのスイッチが開閉されるかを)制御するためのマイクロプロセッサまたは読み出し専用メモリ(ROM)、および能動電子チップの全状態を表に格納するためのメモリも含み得る。加えて、現時点状態を指し示すための表ポインタも必要となり得る。各能動電子チップは正確に同一の表を有するが、ポインタは、各フレームに対する表における異なる位置において開始する。状態ポインタは、クロックパルスが制御ユニットのデジタル部分から(同期ラインを通って)送信されると、変化する。その結果、対応する構成がスイッチに適用される。状態ポインタが表の終端に到達すると、状態ポインタは表の始端に戻る。ポインタが異なる位置で始まるため、この実装形態では各能動電子チップが個別的にプログラムされることが必要である。
【0093】
最終製品に対して、各能動電子チップは、回路基板に実装されたバッファ、スイッチ、およびマイクロプロセッサ/ROMを含む。これは、システム/装置のサイズを最小化させるため、単一の(プリント回路基板)PCBに配列され得る。次に能動電子チップは、はんだ付けまたは他の方法を通して電極物質に直接的に取り付けられ得る。
【0094】
システム全体は、インピーダンス測定モジュール制御ユニット、すなわち、電極管理、信号取得、電流生成、および、ユーザとの通信を担当する中央システムにより、制御される。
【0095】
図2で示される信号取得のためのプロセス全体は、Gaggeroらにより従われる方法に基づく。
【0096】
電流源は、演算増幅器または相互コンダクタンス増幅器を含み得る。これらの例としては、変圧器連結を有するフローティング電流源、演算相互コンダクタンス増幅器電流源、供給電流検出電流源、3演算増幅器電流源、またはハウランド電流源が挙げられる。
【0097】
腎臓内のインピーダンスは、所与の時間点において腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)の近位にある身体の表面における電極の間で取得された電圧測定値から、推測され得る。
【0098】
装置/システムは、排尿前、排尿中、または排尿後に測定値を取得し得る。排尿の前および/または後の電圧表示値は基準線測定値として使用され、係る基準線測定値を排尿中の表示値から減算すると、腎臓(一方または両方)または尿管(一方または両方)内で電圧における増加が、したがってインピーダンスにおける増加が、発生したかどうかが判定される。インピーダンスにおける増加が発生した場合、患者はVURを患っている可能性が高い。
【0099】
代替的に、残余の尿が排尿後に腎臓から膀胱に流れ、膀胱内のインピーダンスが変化した場合、患者はVURを有し得る。同様に、膀胱内のインピーダンスは、所与の時間点において1つのデータフレーム内で身体の表面における全能動電極対の間で取得された電圧測定値から推測され得る。プロセッサはソフトウェアアルゴリズムおよび分類子を使用して、装置/システムの測定モジュールから得られたデータを分析し得る。アルゴリズムは、尿管、膀胱、および/または腎臓(一方または両方)におけるインピーダンスおよび尿量における変化を検出するために使用されたインピーダンス測定モジュールにより生成された結果の確度を最適化するために、使用され得る。代替的に、ディスプレイユニットはシステムのポータブル型実施形態としてシステムに組み込まれ得る。いくつかの電気インピーダンス・トモグラフィ装置が市販されている。これらの装置は通常、重篤患者における肺機能を監視するために使用される。これらの装置に対する結果は、リアルタイム画像ならびにインピーダンス変化波形、および、これらの画像から導出された数値パラメータとして、表示される。
【0100】
再構築画像からのグラフィック出力(以下で詳述する)は、対象領域における感度および特異度を最適化する追加的な情報をユーザに提供する。最大インピーダンス変化および最大・平均値比を含む測定規準は、インピーダンス分布画像から抽出され得、一定時間にわたりプロットされ得る。
【0101】
対象領域における最大インピーダンス変化は、一定時間わたる分布画像内の選択された対象領域(例えば腎臓の位置)における最大インピーダンス応答を説明する。線形増加は対象領域における増加する尿量を表す。この測定規準は、対象領域内のインピーダンスにおける小さい変化の改善された検出を提供し得る。
【0102】
最大・平均値比は、画像における最大応答を画像における平均応答で除算した値を述べる。この測定規準は、再構築画像における対象領域と背景との間のコントラストに関するより詳細な情報を提供し得る。
【0103】
伝導率変化および画像の品質における傾向を分析するために、選択された対象領域(ROI:Region Of Interest)(腎臓の周り)における最大伝導率変化および最大・平均値比などの測定規準を抽出すること。特に最大・平均値比は、分析から廃棄され得る顕著なアーチファクトを有する画像を検出するために使用され得る。例えば、ROIにおける伝導率変化が時間とともに増加するが、最大・平均値比がいくつかのフレームにおいて特定の閾値より低い場合、このことは、これらのフレームにおいて腎臓における伝導率変化が、他の場所における伝導率変化よりも顕著には高くないことを意味する。このことは、これらの画像が顕著なアーチファクトを含む可能性が高く、廃棄されるべきであることを意味する。
【0104】
以下では、電圧測定値がプロセッサにより分析され得ることが詳述される。一定時間にわたる電圧測定値は、電極の平面におけるインピーダンス分布の再構築画像に変換される。これは、Adlerら2009により記載された線形再構築アルゴリズムを使用して実施され得る。平均インピーダンス分布画像は基準線(無排尿)において作られ、インピーダンス分布画像は一連の再構築画像(Iu1、Iu2、Iu3、その他)として排尿中に収集される(毎秒およそ1画像)。この一連のインピーダンス変化(排尿中)を排尿時間にわたり平均または積分すると、単一の平均再構築インピーダンス画像(Ium)が作られる。平均画像(Ium)、一連の再構築画像(Iu1、Iu2、Iu3、その他)、および平均基準線再構築インピーダンス画像(Ibm)にフィルタ処理を施すと、画像アーチファクトが除去され、腎臓領域が分離され得る。一連の画像を視覚的に分析すると(Iu1、Iu2、Iu3、その他)、腎臓の周りの領域におけるインピーダンスが排尿中に一定時間にわたり増加しているかどうかが判定される。インピーダンス変化(基準線再構築インピーダンス画像(Ibm)に対する平均再構築インピーダンス画像(Ium)の変化として定義される)を評価すると、患者がVURを有するかどうかが判定される。画像は、画像の品質が判定され、患者がVURを有する可能性が示されるよう、格付けされる。3、4、または5の等級は、顕著な尿量が腎臓に移動していることを示し、患者がVURを有することを示す。以下は、使用される等級、および、再構築画像に適用される判断基準の説明である。
【表1】
【0105】
以下の方法が、画像にフィルタ処理を施して、アーチファクトを除去し、腎臓の周りの領域を分離し、結果の確度を改善するために、使用され得る。
(i)履歴データ(例えば異なる年齢の小児のCTスキャン)を使用し、腎臓の位置とBMIとを相互に関連付けることにより、実施され得る、予備−腎臓の位置に関する予備知識、の獲得、(ii)「ピクセル化」の程度が小さくなるよう、画像解像度を(64×64ピクセルから256×256ピクセルに)大きくすることを含み得る、画像処理、または(iii)ぼかしカーネルの使用。
【0106】
排尿中の「平均インピーダンス分布画像」は各腎臓(「対象領域」として定義される)の位置を特定するために使用される。各画像に対する対象領域を複製するためにガウスぼかしカーネルが、以下のガウスぼかし式にしたがって形成される。
【数1】
式中、xおよびyは各ピクセルの座標を表し、xKidneyおよびyKidneyは対象領域内の中心位置を表し、σは、対象領域のサイズを表すガウス分布の標準偏差を表す。ガウスぼかしカーネルを表す2つの画像(各腎臓−「対象領域」に対して1つの画像)が重ね合わされると、各腎臓を表す2つのカーネルを有する単一の組み合わせ画像が得られる。組み合わせ画像における各ピクセルの値は0および1から等級付けられ、「フィルタ画像」を表す。「フィルタ画像」は「平均インピーダンス分布画像」により乗算される(各注入に対して画像アーチファクトをフィルタ除去し、腎臓領域を分離するために)。この方法は、一連のうちの各インピーダンス分布画像に対しても実施され得る。
【0107】
現在の実践では、一般に、UTIを有するすべての小児は、VURを検出するために、VCUGイメージングを実施されたであろう。本発明の装置/システムが、VURを有さない患者(70%)および軽度のVURを有する患者(22%)を除外するために使用されたならば、従来ならばVCUGイメージングが考慮されたであろう合計で92%の患者が、VCUGの実施を受ける必要がなくなるであろう。
【0108】
本発明について特定的な実施形態を参照してここで説明してきたが、本発明は示された詳細に限定されることを意図するものではない。むしろ様々な変更が、請求項の均等物の範囲内の詳細において、本発明から逸脱することなく、可能である。
【0109】
本発明を参照して本明細書で使用されたとき、「包含/包含する」という用語および「有する/含む」という用語は、記載された特徴、整数、ステップ、または構成要素の存在を指定するために使用されたものであり、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、構成要素、またはこれらの群の存在または追加を排除するものではない。
【0110】
明瞭さのために別個の実施形態の文脈で説明された本発明の特定の特徴は、単一の実施形態において、組み合わせにおいて、提供され得ることが理解される。逆に、簡略さのために単独の実施形態の文脈で説明された本発明の様々な特徴も、別個に、または任意の好適な下位の組み合わせにおいて、提供され得る。
【0111】
参考文献
Adler, A., et al. ”Monitoring changes in lung air and liquid volumes with electrical impedance tomography.” Journal of Applied Physiology 83.5 (1997): 1762−1767.
Gaggero PO, Adler A, Brunner J, Seitz P. Electrical impedance tomography system based on active electrodes. Physiol Meas. 2012;33(5):831−47.
図1
図2
図3(a)】
図3(b)】
図4
図5(a)】
図5(b)】
図6(a)】
図6(b)】
図7A
図7B
図8
図9
図10A
図10B
図11A
図11B
図12A
図12B
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16
図17
図18
図19