【課題を解決するための手段】
【0014】
(1)本発明に係る穿孔補助具は、患者の歯の印象を写した模型部の平坦になした裏面にダウエルピンを植設すべく、穿孔機に着脱可能に固定されたドリルにて前記模型部の裏面に細孔を形成する作業を補助する穿孔補助具において、前記ドリルを挿通させてこれを案内する筒状の案内部と、該案内部を前記模型部の裏面に対して傾斜させた傾斜姿勢に保持する保持手段とを備えることを特徴とする。
【0015】
本発明の穿孔補助具にあっては、患者の歯の印象を写した模型部の平坦になした裏面にダウエルピンを植設すべく、穿孔機に着脱可能に固定されたドリルにて前記模型部の裏面に細孔を形成する作業を補助する際に、前述したドリルを挿通させてこれを案内する筒状の案内部を備えており、保持手段によって、前記案内部を模型部の裏面に対して傾斜させた傾斜姿勢に保持するように構成してある。
【0016】
これによって、模型部の裏面に細孔を、当該模型の患者の歯の部分の傾斜に応じた傾斜姿勢に穿削することができる。かかる細孔に植設したダウエルピンも同様に傾斜姿勢になすことができるため、模型部の義歯を作製する各部分をダウエルピンが植設された状態で土台部から分離し易く、ブリッジの義歯を作製する場合であっても、ワックスパターンの連結部に破断が生じ難い。
【0017】
(2)本発明に係る穿孔補助具は、前記保持手段は、帯板状の天井部を有する第1筐体と帯板状の底部を有する第2筐体とを互いに距離を隔てて、前記天井部の各辺と前記底部の各辺とが平行に、また底部に対して天井部が、両者の短辺間の距離が両者の一長辺縁から他長辺縁に向かうに従って漸次大きくなるように傾斜させた姿勢になるように配置してなり、前記天井部には当該天井部の長手方向へ向かう第1長孔が開設してあり、前記底部には当該底部の長手方向へ向かう第2長孔が前記第1長孔と対向するように開設してあり、更に、第1長孔の長手方向へ移動可能に配設され、前記案内部を天井部と直交する姿勢で支持する支持部を具備することを特徴とする。
【0018】
本発明の穿孔補助具にあっては、前述した保持手段は、帯板状の天井部を有する第1筐体と、帯板状の底部を有する第2筐体とを互いに距離を隔てて構成してある。このとき、第1筐体と第2筐体とは、第1筐体の天井部を構成する短辺及び長辺の各辺と、前記模型の裏面に当接させる第2筐体の底部を構成する短辺及び長辺の各辺とが平行になるように配置してある。そして、第1筐体と第2筐体とは、第2筐体の底部に対して第1筐体の天井部が、両者の短辺間の距離が両者の一長辺縁から他長辺縁に向かうに従って漸次大きくなるように傾斜させた姿勢になしてある。
【0019】
一方、第1筐体の天井部には当該天井部の長手方向へ向かう第1長孔が開設してあり、また、第2筐体の底部には当該底部の長手方向へ向かう第2長孔が、前記第1長孔と対向するように開設してある。前述した第1長孔内には、ドリルを案内する案内部が配してあり、この案内部は、第1長孔の長手方向へ移動可能に配設された支持部によって、天井部と直交する姿勢で支持されている。
【0020】
前述したように保持手段の第1筐体と第2筐体とは、第2筐体の底部に対して第1筐体の天井部が、両者の短辺間の距離が両者の一長辺縁から他長辺縁に向かうに従って漸次大きくなるように傾斜させた姿勢になしてあり、かかる第1筐体の第1長孔内に案内部が支持部によって、第1筐体の天井部と直交する姿勢で支持されているため、案内部も第2筐体の底部に対して傾斜姿勢に保持される。かかる状態で第2筐体の底部を模型の平坦な裏面に当接させるので、模型部の裏面に傾斜した細孔を容易・正確に穿削することができる。
【0021】
一方、本穿孔補助具を模型の裏面に、第2筐体の底部が当該裏面と対向するように配設した場合、作業者は、第1筐体の第1長孔及びこれに対抗第2筐体の第2長孔から模型の裏面表面を視認することができる。一方、案内部にて案内されるドリルは第2筐体に開設された第2長孔を通過して模型の裏面に到達する。このとき、ドリルを案内する案内部は、第1長孔の長手方向へ移動可能に配設された支持部によって支持されているため、模型の裏面の所要位置へのドリルの先端の位置合わせを容易・正確に実施することができる。
【0022】
(3)本発明に係る穿孔補助具は、前記支持部は第1長孔の長手方向と直交する方向へも移動可能になしてあることを特徴とする。
【0023】
本発明の穿孔補助具にあっては、前述した支持部は第1長孔の長手方向と直交する方向へも移動可能になしてある。例えば、天井部の第1長孔の両長辺縁に、支持部を案内する溝状部分を設けておき、該溝状部分の底部間の寸法を支持部材の寸法より大きくすることで、支持部は第1長孔の長手方向と直交する方向へも移動可能になすことができる。これによって、ドリルの先端の位置合わせを更に容易・正確に実施することができる。
【0024】
(4)本発明に係る穿孔補助具は、前記第1筐体は天井部の両短辺側に側壁部をそれぞれ垂下してなり、また前記第2筐体は底部の両短辺側に側壁部をそれぞれ立設してなり、両筐体を、互いの側壁部が摺接するように組み合わせ、対をなす側壁部それぞれの、前記第1筐体又は第2筐体の一長辺側近傍の位置に回転軸を貫通させて、第1筐体と第2筐体との前記第1筐体又は第2筐体の他長辺側の間隙が広狭可能にしてあることを特徴とする。
【0025】
本発明の穿孔補助具にあっては、前述した第1筐体は天井部の両短辺側に側壁部をそれぞれ垂下してなり、また前記第2筐体は底部の両短辺側に側壁部をそれぞれ立設してなる。即ち、第1筐体及び第2筐体は横倒コ字状をなしている。これら第1筐体及び第2筐体を、互いの側壁部が摺接するように組み合わせ、対をなす側壁部それぞれの、前記第1筐体又は第2筐体の一長辺側近傍の位置に回転軸を貫通させて、第1筐体と第2筐体との前記第1筐体又は第2筐体の他長辺側の間隙が広狭可能にしてある。これによって、第2筐体の底部に対する第1筐体の天井部及び案内部の傾斜角度を調整することができるため、当該傾斜角度を患者の歯の傾斜に略応じた角度に調整することができる。
【0026】
(5)本発明に係る穿孔補助具は、前記第1筐体の両側壁部又は第2筐体の両側壁部には、対応する回転軸回りに湾曲させた湾曲孔が開設してあり、前記第2筐体の両側壁部又は第1筐体の両側壁部であって対応する湾曲孔に対向する適宜位置には貫通孔が開設してあり、対をなす湾曲孔及び貫通孔にはそれぞれ、第1筐体及び第2筐体の回動姿勢を固定する固定用螺子部が挿通してあることを特徴とする。
【0027】
本発明の穿孔補助具にあっては、前記第1筐体の両側壁部又は第2筐体の両側壁部には、対応する回転軸回りに湾曲させた湾曲孔が開設してある。そして、第2筐体の両側壁部又は第1筐体の両側壁部であって対応する湾曲孔に対向する適宜位置には貫通孔が開設してあり、対をなす湾曲孔及び貫通孔にはそれぞれ、第1筐体及び第2筐体の回動姿勢を固定する固定用螺子部が挿通してある。かかる穿孔補助具は、固定用螺子部を緩めて、第2筐体の底部に対する第1筐体の天井部及び案内部の傾斜角度を調整した後、固定用螺子部を締め付けることによって、天井部及び案内部を当該傾斜角度に固定することができる。これによって、ドリルによる細孔の穿削作業中、案内部の傾斜にずれが発生することが防止され、細孔を正確に穿削することができる。
【0028】
(6)本発明に係る穿孔補助具は、前記底部の裏面には、前記支持部に支持された案内部によって案内されるドリルの位置合わせを補助すべく帯板状の位置合わせ用補助部が固定してあり、該位置合わせ用補助部には当該位置合わせ用補助部の長手方向へ向かう第3長孔が前記第1長孔及び第2長孔と対向するように開設してあり、また、該第3長孔と位置合わせ用補助部の長辺側の縁との間の領域に、前記第3長孔の中心軸と平行に、互いに距離を隔てて直線分状の複数の目安部が設けてあることを特徴とする。
【0029】
本発明の穿孔補助具にあっては、第2筐体の底部の裏面には、支持部に支持された案内部によって案内されるドリルの位置合わせを補助すべく帯板状の位置合わせ用補助部が固定してある。この位置合わせ用補助部には、当該位置合わせ用補助部の長手方向へ向かう第3長孔が前記第1長孔及び第2長孔と対向するように開設してあり、案内部にて案内されるドリルは第2筐体に開設された第2長孔及び位置合わせ用補助部に開設された第3長孔を通過して模型の裏面に到達する。
【0030】
この第3長孔と位置合わせ用補助部の長辺側の縁との間の領域に、第3長孔の中心軸と平行に、互いに距離を隔てて直線分状の複数の目安部が設けてある。かかる目安部としては、位置合わせ用補助部の表裏いずれかの面に線分状の溝、又は印字を設けることができる。そして、前述した模型の裏面の適宜位置に予め直線分を表記しておき、いずれかの目安部をこの直線分に併せることによって、穿孔補助具を平行移動させることができる。
【0031】
このように穿孔補助具が平行移動されるため、平行移動後に穿削した細孔の傾斜と、一つ前に穿削した細孔の傾斜とは平行になっており、模型部の義歯を作製する各部分をダウエルピンを植設された状態で土台部から分離し易く、ブリッジの義歯を作製する場合であっても、ワックスパターンの連結部に破断が生じ難い。
【0032】
(7)本発明に係る穿孔補助具は、前記位置合わせ用補助部は透明な素材で形成してあることを特徴とする。
【0033】
本発明の穿孔補助具にあっては、前記位置合わせ用補助部は、透明樹脂といった透明な素材で形成してあり、これによって、作業者の視認性が向上する。
【0034】
(8)本発明に係る穿孔補助具は、更に、位置合わせ用補助部には、前記目安部と平行をなす定規部が前記底部から突出する様態で設けてあることを特徴とする。
【0035】
本発明の穿孔補助具にあっては、位置合わせ用補助部には、前述した目安部と平行をなす定規部が第2筐体の底部から突出する様態で設けてあるため、前述した如く模型の裏面に直線分を引く際に、この定規部を使用することができる。これによって、穿孔補助具だけで、模型の複数の箇所にそれぞれ所要の細孔を容易・正確に穿削することができる。