特許第6860940号(P6860940)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】6860940
(24)【登録日】2021年3月31日
(45)【発行日】2021年4月21日
(54)【発明の名称】網筋の組立装置及びその方法
(51)【国際特許分類】
   E04G 21/12 20060101AFI20210412BHJP
【FI】
   E04G21/12 105A
   E04G21/12 105E
【請求項の数】5
【全頁数】21
(21)【出願番号】特願2019-97629(P2019-97629)
(22)【出願日】2019年5月24日
(65)【公開番号】特開2020-193433(P2020-193433A)
(43)【公開日】2020年12月3日
【審査請求日】2020年2月18日
(73)【特許権者】
【識別番号】000141864
【氏名又は名称】株式会社京都スペーサー
(74)【代理人】
【識別番号】100076406
【弁理士】
【氏名又は名称】杉本 勝徳
(72)【発明者】
【氏名】坂口 伸宏
【審査官】 松本 隆彦
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−274076(JP,A)
【文献】 韓国登録特許第10−1925824(KR,B1)
【文献】 特開2001−200613(JP,A)
【文献】 特開平9−268579(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04G 21/12
E04C5/00−5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒状のコンクリート構造体の少なくとも周方向に連続する骨格の一部分として構成されるように、複数の縦筋に対し複数の横筋を略円弧状にそれぞれ湾曲させた状態で配筋して格子状に組立てられる網筋の組立装置であって、
その装置本体には、
前記各縦筋を等間隔置きに配筋する際に前記コンクリート構造体と略一致する曲率に形成された上端面上において前記横筋の軸線方向等間隔置きに位置決めするように凹設された複数の縦筋用配筋溝を有し、かつ前記各縦筋の軸線方向に複数並設された縦筋配筋台と、
前記各縦筋配筋台に配筋された各縦筋に対し前記各横筋を等間隔置きに配筋する際に上端面上において前記縦筋の軸線方向等間隔置きに位置決めするように凹設された複数の横筋用配筋溝を有する複数の横筋配筋台と、
前記各横筋配筋台に配筋した前記各横筋を前記各縦筋に対し互いの交差部においてそれぞれ結束した状態で格子状に組立てた網筋が起こされるように、前記各縦筋の軸線方向一側を支点にして軸線方向他側から前記網筋を持ち上げる持ち上げ台と、
が設けられており、
前記各縦筋配筋台は、前記各縦筋用配筋溝にそれぞれ位置決めされる前記各縦筋同士の間隔が前記各縦筋の軸線に対する角度に応じて変更されるように前記装置本体に対しそれぞれ鉛直軸回りに回転自在に支持されていることを特徴とする網筋の組立装置。
【請求項2】
前記各縦筋配筋台は、前記各縦筋の軸線に対する角度が互いに一致するように、そのうちの前記各縦筋の軸線方向で互いに相隣なる縦筋配筋台同士がリンクを介して連結されている請求項1に記載の網筋の組立装置。
【請求項3】
前記各縦筋配筋台としては、その上端面が前記各横筋の軸線方向中央部において最も低所に位置するように下方向きに円弧状に湾曲する下方向き湾曲面に形成された第1縦筋配筋台と、上端面が前記各横筋の軸線方向中央部において最も高所に位置するように上方向きに円弧状に湾曲する上方向き湾曲面に形成された第2縦筋配筋台とが取り換え可能な状態で適用されている請求項1又は請求項2に記載の網筋の組立装置。
【請求項4】
前記持ち上げ台は、前記各縦筋配筋台を外方から囲むような略矩形枠状に形成され、その互いに対向する枠部同士が当該枠部と直交する方向へ延びるフレーム材によって連結されており、
前記フレーム材と交差する各縦筋配筋台及び前記各横筋配筋台の交差部位には、前記持ち上げ台を持ち上げる際に前記フレーム材との干渉を回避する切欠孔部が設けられているとともに、前記各縦筋及び前記各横筋の配筋時に進出しかつ前記切欠孔部を塞いだ状態での配筋を可能とする配筋溝を有する進退自在な閉塞部材が設けられている請求項1〜請求項3のいずれか1つに記載の網筋の組立装置。
【請求項5】
略円筒状のコンクリート構造体の少なくとも周方向に連続する骨格の一部分として構成されるように、複数の縦筋に対し複数の横筋を略円弧状にそれぞれ湾曲させた状態で配筋して格子状に組立てられる網筋の組立方法であって、
前記網筋を組立てる組立装置の装置本体に対しそれぞれ鉛直軸回りに回転自在に支持され、かつ前記各縦筋を前記各横筋の軸線方向等間隔置きに配筋する複数の縦筋配筋台と、前記縦筋の軸線方向等間隔置きに横筋を配筋する複数の横筋配筋台と、前記各縦筋配筋台に配筋した各縦筋及び前記各横筋配筋台に配筋した各横筋を格子状に組立てた網筋が起こされるように前記各縦筋の軸線方向一側を支点にして軸線方向他側から前記網筋を持ち上げる持ち上げ台と、を具備し、
前記各縦筋同士の間隔を変更する際に前記各縦筋配筋台をそれぞれ鉛直軸回りへ回転させて、前記各縦筋同士の間隔を前記各縦筋の軸線に対する角度変更に応じて変更させてから、
前記コンクリート構造体と略一致する曲率に形成された前記各縦筋配筋台の上端面上の各縦筋用配筋溝に前記各縦筋を位置決めするように配筋した後、
前記各縦筋に対し前記各横筋配筋台の上端面上の各横筋用配筋溝に前記各横筋を位置決めするように配筋し、
しかる後、前記各縦筋と前記各横筋とを互いの交差部においてそれぞれ結束して格子状の網筋を組立ててから、
この組み立てた網筋が起こされるように、前記各縦筋の軸線方向一側を支点にして軸線方向他側から前記網筋を前記持ち上げ台により持ち上げることを特徴とする網筋の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、略円筒状のコンクリート構造体の少なくとも周方向に連続する骨格の一部分として構成されるように、複数の縦筋に対し複数の横筋を略円弧状にそれぞれ湾曲させた状態で配筋して格子状に組立てられる網筋の組立装置及びその方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、網筋の組立装置としては、特許文献1に示すものが知られている。
【0003】
この組立装置は、その装置本体の進退移動可能な台車上に鉛直軸回りに回転自在に支持されたターンテーブルを備え、鉄筋としての縦筋をターンテーブル上の間隔規定具の複数の縦筋用配筋溝に位置決めした状態で配筋している。
【0004】
そして、各縦筋用配筋溝への縦筋の配筋を終えると、ターンテーブルを90°回転させ、鉄筋としての横筋をターンテーブル上の各縦筋に対し位置決めした状態で配筋するようにしている。
【0005】
更に、各縦筋に対し配筋した各横筋とを互いの交差部においてそれぞれ結束して格子状に網筋を組立ててから、その組み立てた網筋を、各縦筋の軸線方向一側を支点にして軸線方向他側からターンテーブル毎持ち上げて起こされるようにしている。
【0006】
この場合、網筋は、コンクリート構造体の少なくとも周方向に連続する骨格の一部分として構成され、コンクリート構造体の厚みによってその厚み方向に複数配置して層状の骨格を構成するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平10−8722号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
ところで、略円筒状のコンクリート構造体にあっても、その厚み方向となる半径方向に複数の網筋を配置して層状の骨格を構成することがある。その場合、各層毎の骨格に必要な縦筋及び横筋の本数は同数必要とされ、各層毎に縦筋同士の間隔を変更して対処することが行われている。
【0009】
このとき、略円筒状のコンクリート構造体では、半径方向内側に近付くに従い層毎に各縦筋同士の間隔が狭くなるため、縦筋を一本ずつ位置決めする各縦筋用配筋溝の間隔をその都度漸減させるように変更する必要がある。
【0010】
ところが、前記従来のものでは、各縦筋用配筋溝の間隔は決められたものであるため、略円筒状のコンクリート構造体のように半径方向に複数の網筋を配置して層毎に骨格を構成する際には、半径方向内側に近付くに従い層毎に各縦筋同士の間隔を狭くするのが非常に難しく、網筋を組立てる際の作業が非常に煩わしい上、作業時間も大幅に要することになる。
【0011】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、略円筒状のコンクリート構造体のように半径方向に複数の網筋を配置して層毎に骨格を構成する際に各縦筋同士の間隔を簡単に変更可能にし、網筋を組立てる際の作業の簡単化及び作業時間の大幅な短縮化を図ることができる網筋の組立装置及びその方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記目的を達成するため、本発明では、略円筒状のコンクリート構造体の少なくとも周方向に連続する骨格の一部分として構成されるように、複数の縦筋に対し複数の横筋を略円弧状にそれぞれ湾曲させた状態で配筋して格子状に組立てられる網筋の組立装置を前提とする。そして、装置本体に、前記各縦筋を等間隔置きに配筋する際に前記コンクリート構造体と略一致する曲率に形成された上端面上において前記横筋の軸線方向等間隔置きに位置決めするように凹設された複数の縦筋用配筋溝を有し、かつ前記各縦筋の軸線方向に複数並設された縦筋配筋台と、前記各縦筋配筋台に配筋された各縦筋に対し前記各横筋を配筋する際に上端面上において前記縦筋の軸線方向等間隔置きに位置決めするように凹設された複数の横筋用配筋溝を有する複数の横筋配筋台と、前記各横筋配筋台に配筋した前記各横筋を前記各縦筋に対し互いの交差部においてそれぞれ結束した状態で格子状に組立てた網筋が起こされるように、前記各縦筋の軸線方向一側を支点にして軸線方向他側から前記網筋を持ち上げる持ち上げ台と、を設ける。更に、前記各縦筋配筋台を、前記各縦筋用配筋溝にそれぞれ位置決めされる前記各縦筋同士の間隔が前記各縦筋の軸線に対する角度に応じて変更されるように前記装置本体に対しそれぞれ鉛直軸回りに回転自在に支持することを特徴としている。
【0013】
また、前記各縦筋配筋台は、前記各縦筋の軸線に対する角度が互いに一致するように、そのうちの前記各縦筋の軸線方向で互いに相隣なる縦筋配筋台同士がリンクを介して連結されていてもよい。
【0014】
また、前記各縦筋配筋台として、その上端面が前記各横筋の軸線方向中央部において最も低所に位置するように下方向きに円弧状に湾曲する下方向き湾曲面に形成された第1縦筋配筋台と、上端面が前記各横筋の軸線方向中央部において最も高所に位置するように上方向きに円弧状に湾曲する上方向き湾曲面に形成された第2縦筋配筋台とを取り換え可能な状態で適用することがこのましい。
【0015】
更に、前記持ち上げ台を、前記各縦筋配筋台を外方から囲むような略矩形枠状に形成し、その互いに対向する枠部同士を当該枠部と直交する方向へ延びるフレーム材によって連結する。そして、前記フレーム材と交差する各縦筋配筋台及び前記各横筋配筋台の交差部位に、前記持ち上げ台を持ち上げる際に前記フレーム材との干渉を回避する切欠孔部を設けるとともに、前記各縦筋及び前記各横筋の配筋時に進出しかつ前記切欠孔部を塞いだ状態での配筋を可能とする配筋溝を有する進退自在な閉塞部材を設けていてもよい。
【0016】
これに対し、前記目的を達成するため、本発明では、略円筒状のコンクリート構造体の少なくとも周方向に連続する骨格の一部分として構成されるように、複数の縦筋に対し複数の横筋を略円弧状にそれぞれ湾曲させた状態で配筋して格子状に組立てられる網筋の組立方法を前提とする。更に、前記網筋を組立てる組立装置の装置本体に対しそれぞれ鉛直軸回りに回転自在に支持され、かつ前記各縦筋を前記各横筋の軸線方向等間隔置きに配筋する複数の縦筋配筋台と、前記縦筋の軸線方向等間隔置きに横筋を配筋する複数の横筋配筋台と、前記各縦筋配筋台に配筋した各縦筋及び前記各横筋配筋台に配筋した各横筋を格子状に組立てた網筋が起こされるように前記各縦筋の軸線方向一側を支点にして軸線方向他側から前記網筋を持ち上げる持ち上げ台と、を具備する。そして、前記各縦筋同士の間隔を変更する際に前記各縦筋配筋台をそれぞれ鉛直軸回りへ回転させて、前記各縦筋同士の間隔を前記各縦筋の軸線に対する角度変更に応じて変更させてから、前記コンクリート構造体と略一致する曲率に形成された前記各縦筋配筋台の上端面上の各縦筋用配筋溝に前記各縦筋を位置決めするように配筋した後、前記各縦筋に対し前記各横筋配筋台の上端面上の各横筋用配筋溝に前記各横筋を位置決めするように配筋する。しかる後、前記各縦筋と前記各横筋とを互いの交差部においてそれぞれ結束して格子状の網筋を組立ててから、この組み立てた網筋が起こされるように、前記各縦筋の軸線方向一側を支点にして軸線方向他側から前記網筋を前記持ち上げ台により持ち上げることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
以上、要するに、各縦筋同士の間隔を変更する際に複数の縦筋配筋台を装置本体に対しそれぞれ鉛直軸回りに回転させて各縦筋の軸線に対する角度を変更し、この状態で、各縦筋用配筋溝に縦筋をそれぞれ配筋すれば、各縦筋同士の間隔が変更される。これにより、略円筒状のコンクリート構造体のように半径方向に複数の網筋を配置して層毎に骨格を構成する際に各縦筋同士の間隔を簡単に変更することが可能となり、網筋を組立てる際の作業の簡単化及び作業時間の大幅な短縮化を図ることができる。
【0018】
また、各縦筋配筋台のうちの各縦筋の軸線方向で互いに相隣なる縦筋配筋台同士を各縦筋の軸線に対する角度が互いに一致するようにリンクを介して連結することで、各縦筋配筋台を個々に回転させなくても当該各縦筋配筋台がリンクを介して鉛直軸回りにそれぞれ連れ回りし、各縦筋配筋台の各縦筋同士の間隔を簡単かつ迅速に変更することができる。
【0019】
また、各縦筋配筋台として、その上端面を下方向き湾曲面に形成した第1縦筋配筋台と、上端面を上方向き湾曲面に形成した第2縦筋配筋台とを取り換え可能な状態で適用することで、縦筋が横筋よりも半径方向外方に位置する網筋を組み立てる際に第1縦筋配筋台を用いる一方、横筋が縦筋よりも半径方向外方に位置する網筋を組み立てる際に第2縦筋配筋台を用いればよく、縦筋と横筋との配筋状態が互いに異なる網筋を第1縦筋配筋台又は第2縦筋配筋台に取り換えるだけで簡単に組み立てることができる。
【0020】
更に、各縦筋配筋台を外方から囲むような略矩形枠状の持ち上げ台の枠部同士をフレーム材により連結し、このフレーム材と交差する各縦筋配筋台及び各横筋配筋台の交差部位に、フレーム材との干渉を回避する切欠孔部を設ける一方、その切欠孔部を進出により塞いだ状態での配筋を可能とする配筋溝を有する進退自在な閉塞部材を設けることで、持ち上げ台をフレーム材と干渉させることなく円滑に持ち上げることができるとともに、切欠孔部を塞いだ状態での配筋溝への配筋を円滑に位置決めした状態で行うことができる。
【0021】
しかも、略円筒状のコンクリート構造体のように半径方向に複数の網筋を配置して層毎に骨格を構成する際に、複数の縦筋配筋台を装置本体に対しそれぞれ鉛直軸回りに回転させて各縦筋の軸線に対する角度を変更した状態で、各縦筋用配筋溝に縦筋をそれぞれ配筋するだけで、各縦筋同士の間隔を簡単に変更することが可能で、かつ網筋を組立てる際の作業の簡単化及び作業時間の大幅な短縮化を図ることが可能な網筋の組立方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本発明の実施の形態に係る網筋の組立装置の斜視図である。
図2図1の組立装置上方から見た平面図である。
図3図2の組立装置の各縦筋配筋台を縦筋の軸線方向から見た正面図である。
図4図2の組立装置の1つの縦筋配筋台の長手方向中央部を鉛直軸回りに基準位置から最大傾斜位置まで回転させた状態でその付近を上方から見た平面図である。
図5図4の縦筋配筋台の長手方向一側端部付近を上方から見た平面図である。
図6図5の縦筋配筋台の長手方向一側端部付近の斜視図である。
図7図1の各縦筋配筋台を最大傾斜位置まで回転させた状態での組立装置の平面図である。
図8図7の組立装置を縦筋配筋台の長手方向一側から見た側面図である。
図9図7の組立装置の各縦筋配筋台にそれぞれ縦筋を配筋させた状態を示す斜視図である。
図10図9の組立装置の1つの縦筋配筋台の縦筋用配筋溝にそれぞれ縦筋を配筋させた状態を示す拡大斜視図である。
図11図9の組立装置の各縦筋配筋台の縦筋に対し横筋を配筋させた状態を示す斜視図である。
図12図11の組立装置の1つの横筋配筋台における一部の横筋用配筋溝の拡大斜視図である。
図13図11の各縦筋配筋台の各縦筋に対し各横筋を配筋して互いに交差した状態の一部分を示す拡大斜視図である。
図14図13の縦筋と横筋との1つの交差部を結束具により結束した状態を示す拡大斜視図である。
図15図11の組立装置を各縦筋配筋台の長手方向一側から見た側面図である。
図16図15の組立装置の持ち上げ台を持ち上げ始めた状態を示す側面図である。
図17図1の組立装置の持ち上げ台のフレーム材との干渉を回避する切欠孔部を閉塞部材により塞いだ状態を示す1つの縦筋配筋台の斜視図である。
図18図17の閉塞部材をスライドさせて切欠孔部を開放させた状態を示す1つの縦筋配筋台の斜視図である。
図19図17の持ち上げ台を持ち上げ始めてフレーム材が抜け出した状態を示す1つの切欠孔部付近の拡大斜視図である。
図20図14の縦筋と横筋との交差部を結束具により結束して組み立てた網筋を持ち上げ台により持ち上げるようにクレーンのワイヤを係止した状態を示す組立装置の斜視図である。
図21図16の持ち上げ台を最大傾斜位置まで傾斜させた状態の組立装置の斜視図である。
図22図21の持ち上げ台を最大傾斜位置まで傾斜させた状態の組立装置を各縦筋配筋台の長手方向一側から見た側面図である。
図23図21の網筋をクレーンで吊下した状態で持ち上げ台のみを下降させた状態を示す組立装置の斜視図である。
図24図23の網筋をクレーンで持ち上げた状態を示す組立装置の斜視図である。
図25図3の縦筋配筋台とは異なる他の縦筋配筋台を縦筋の軸線方向から見た正面図である。
図26】本発明の実施の形態の変形例に係る一部切欠いた状態の縦筋配筋台を上方から見た平面図である。
図27図26の縦筋配筋台を縦筋の軸線方向から見た正面図である。
図28】本発明の実施の形態のその他の変形例に係る一部切欠いた状態の縦筋配筋台を縦筋の軸線方向から見た正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の実施の形態に係る網筋の組立装置を図面に基づいて説明する。
【0024】
図1は本発明の実施の形態に係る網筋の組立装置の斜視図、図2図1の組立装置上方から見た平面図をそれぞれ示している。この図1及び図2において、符号1で示す組立装置は、図示しない略円筒状のコンクリート構造体の少なくとも周方向に連続する骨格の一部分として構成される網筋11(後述する)を組立てるものである。この網筋11は、後述する複数の縦筋12,12,…に対し複数の横筋13,13,…を略円弧状にそれぞれ湾曲させた状態で配筋して格子状に組立てられる。
【0025】
図3図2の組立装置1の各縦筋配筋台を縦筋12の軸線方向から見た正面図を示している。この図3にも示すように、組立装置1の装置本体10には、当該装置本体10の左右方向へ延びる5つの第1縦筋配筋台2,2,…(縦筋配筋台)が設けられている。この各第1縦筋配筋台2は、縦筋12が横筋13よりも半径方向外方に位置する網筋11を組み立てる際に用いられ、上端面が下方向き湾曲面となっている。そして、各第1縦筋配筋台2は、上下方向へ延びる縦片21の上端面上において横筋13の軸線方向等間隔置きに各縦筋12を位置決めした状態で配筋するように凹設された略半円弧状の複数の縦筋用配筋溝22,22,…を備えている。また、第1縦筋配筋台2は、各縦筋12の軸線方向へ略等間隔置きに並設されている。
【0026】
また、各第1縦筋配筋台2の下方には、当該各第1縦筋配筋台2と略平行に左右方向へ略水平に延びる支持フレーム24,24,…が設けられている。この互いに上下に対向する各支持フレーム24と各第1縦筋配筋台2との間は、左右方向略等間隔置きに設けられた支柱25,25,…により連結されている。各支柱25は、上端面が下方向き湾曲面となる第1縦筋配筋台2が適用されている関係上、各横筋13の軸線方向中央部での長さが最も短く軸線方向両端部に近付くに従い長くなっている。
【0027】
図4図2の組立装置1の1つの第1縦筋配筋台2の長手方向中央部を鉛直軸回りに基準位置から最大傾斜位置まで回転させた状態でその付近を上方から見た平面図、図5図4の第1縦筋配筋台2の長手方向一側端部付近を上方から見た平面図、図6図5の第1縦筋配筋台2の長手方向一側端部付近の斜視図をそれぞれ示している。また、図7図1の各第1縦筋配筋台2を最大傾斜位置まで回転させた状態での組立装置1の平面図、図8図7の組立装置1を第1縦筋配筋台2の長手方向一側から見た側面図をそれぞれ示している。
【0028】
図4図8に示すように、組立装置1が設置される設置面Mには、各第1縦筋配筋台2の長手方向中間部付近を前後方向(図7では上下方向)へ延びる本体中央フレーム14が設けられている。各第1縦筋配筋台2は、それぞれの長手方向中間位置において本体中央フレーム14に対しそれぞれ鉛直軸20回りに回転自在に支持されている。各第1縦筋配筋台2の左右両端部に対応する設置面Mの左右両側部には、装置本体10の左右方向両端部を前後方向へ延びる本体側部フレーム15,15が設けられている。この左右の本体側部フレーム15,15上には、各第1縦筋配筋台2の左右両端に設けられたローラ26が転動自在とされ、各第1縦筋配筋台2が鉛直軸20回りに回転する際にローラ26によって両端部が姿勢保持されるようにしている。
【0029】
また、各本体側部フレーム15には、各第1縦筋配筋台2の左右両端部の回転軌跡上に対応する5つの係合孔151,151,…がそれぞれ略等間隔置きに設けられている。各係合孔151には、各第1縦筋配筋台2の支持フレーム24の両端部を鉛直方向に貫通する貫通孔(図示せず)より差し込んだピン153の先端が係合し、各縦筋12の軸線に対して変更された各第1縦筋配筋台2の角度が保持されるようにしている。
【0030】
このとき、各第1縦筋配筋台2は、各縦筋用配筋溝22にそれぞれ位置決めされる各縦筋12,12同士の間隔が各縦筋12の軸線に対する角度に応じて変更される。
【0031】
具体的には、各係合孔151は各第1縦筋配筋台2の端部の回転軌跡上に等間隔置きに設けられている。そのうち、各第1縦筋配筋台2が各縦筋12に対し最も大きな略90°の角度位置にあるときにピン153が係合する係合孔151では、各縦筋用配筋溝22にそれぞれ位置決めされる各縦筋12,12同士の間隔(例えば199mm程度)が最も広くなるように変更される。これに対し、各第1縦筋配筋台2が縦筋12に対し最も小さい略78°の角度位置にあるときにピン153が係合する係合孔151では、各縦筋用配筋溝22にそれぞれ位置決めされる各縦筋12,12同士の間隔(例えば193mm程度)が最も狭くなるように変更される。このとき、各係合孔151は、各縦筋12の軸線に対する各第1縦筋配筋台2の角度が3°ずつ変更される位置、つまり各縦筋12の軸線に対する各第1縦筋配筋台2の角度が略90°、87°、84°、81°、78°に変更される位置に開口し、各縦筋用配筋溝22にそれぞれ位置決めされる各縦筋12,12同士の間隔が、各第1縦筋配筋台2の角度に応じて199mm、197.5mm、196mm、194.5mm、193mmとなるように変更される。
【0032】
各第1縦筋配筋台2のうちの互いに相隣なる第1縦筋配筋台2,2は、互いの長手方向両端同士がリンク29,29を介して枢支されている。この場合、各第1縦筋配筋台2のうちのいずれかの第1縦筋配筋台2を鉛直軸20回りに回転させることで、残る4つの各第1縦筋配筋台2が同様に鉛直軸20回りに回転し、それぞれ同じ角度に変更される。
【0033】
図9図7の組立装置1の各第1縦筋配筋台2にそれぞれ縦筋12を配筋させた状態を示す斜視図、図10図9の組立装置1の1つの第1縦筋配筋台2の縦筋用配筋溝22にそれぞれ縦筋12を配筋させた状態を示す拡大斜視図をそれぞれ示している。図9及び図10にも示すように、各第1縦筋配筋台2は、縦片21の下端に一端が連結されて略水平に延びる横片23とで断面略L字状を呈し、縦片21の上端面がコンクリート構造体と略一致する曲率の円弧状の湾曲面に形成されている。つまり、各第1縦筋配筋台2は、各横筋13の軸線方向中央部において最も低所に位置するように上端面が下方向きに湾曲する下方向き湾曲面に形成されている。このとき、縦片21及び横片23も上端面と同様に下方向きに湾曲している。
【0034】
図11図9の組立装置1の各第1縦筋配筋台2の縦筋12に対し横筋13を配筋させた状態を示す斜視図、図12図11の組立装置1の1つの横筋配筋台における一部の横筋用配筋溝の拡大斜視図、図13図11の各第1縦筋配筋台2の各縦筋12に対し各横筋13を配筋して互いに交差した状態の一部分を示す拡大斜視図をそれぞれ示している。
【0035】
組立装置1の装置本体10には、各第1縦筋配筋台2の左右両外側方を前後方向へ延びる左右の横筋配筋台3,3が設けられている。各横筋配筋台3は、上下方向へ延びる縦片31とこの縦片31の下端に一端が連結されて略水平に延びる横片33とで断面略L字状に形成されている。そして、各横筋配筋台3は、縦片31の上端面上において縦筋12の軸線方向等間隔置きに各横筋13を位置決めするように凹設された複数の横筋用配筋溝32,32,…を備えている。各横筋用配筋溝32は、各第1縦筋配筋台2に配筋された各縦筋12に対し各横筋13を等間隔置きに配筋するように略半円弧状に形成されている。
【0036】
図14図13の縦筋12と横筋13との1つの交差部を結束具により結束した状態を示す拡大斜視図を示している。この図14に示すように、縦筋12と横筋13との交差部は、それぞれ結束具4や線材を用いて結束されている。この場合、線材による結束は、交差部において縦筋12と横筋13とに交互に複数巻回して両端を締め付けることで行われる。
【0037】
結束具4は、棒材41と、棒材41の両端が挿通される断面略U字状の固定具42と、固定具42に挿通された棒材41の両端に螺着されるナット43,43とを備えている。棒材41は、その中間部を略U字状に折返した第1支持部44と、この第1支持部44から両端に向かう折返し部の途中で再度略U字状に折曲げられた第2支持部45,45とを備えている。
【0038】
そして、結束具4は、棒材41の第1支持部44を横筋13との交差部の縦筋12一側に係止するとともに、縦筋12を挟んだ交差部両側の横筋13に第2支持部45,45をそれぞれ係止し、棒材41の両端を固定具42に挿通した状態で交差部の縦筋12他側においてナット43により螺着することで、縦筋12と横筋13とを交差部にて結束するようにしている。このとき、各横筋配筋台3に配筋した各横筋13を各縦筋12に対し互いの交差部においてそれぞれ結束具4や線材により結束することで、網筋11が格子状に組立てられる。なお、結束具4はこれに限らず、あらゆる種類のものが適用可能であり、要するに、縦筋12と横筋13との交差部を結束可能な構造のものであればなんでもよい。
【0039】
また、装置本体10には、各第1縦筋配筋台2及び各横筋配筋台3上において格子状に組立てた網筋11が起こされるように各縦筋12の軸線方向一側(図7では右側)を支点にして軸線方向他側(図7では左側)から網筋11を持ち上げる持ち上げ台5が設けられている。この持ち上げ台5は、各第1縦筋配筋台2及び各横筋配筋台3を外方から囲むような略矩形枠状に形成されている。
【0040】
図15図11の組立装置1を各第1縦筋配筋台2の長手方向一側から見た側面図、図16図15の組立装置1の持ち上げ台5を持ち上げ始めた状態を示す側面図をそれぞれ示している。図15及び図16にも示すように、各横筋配筋台3は、本体側部フレーム15,15に立設した複数の縦枠用支柱材152,152,…の先端に支持されている。各縦枠用支柱材152は、全て同じ長さに設定されている。
【0041】
持ち上げ台5は、その各横筋13の軸線方向へ延びる枠部としての横枠部51,51同士が各縦筋12の軸線方向へ延びるフレーム材としての2本の縦フレーム材52,52によって連結されているとともに、その各縦筋12の軸線方向へ延びる枠部としての縦枠部53,53同士が各横筋13の軸線方向へ延びるフレーム材としての2本の横フレーム材54,54によって連結されている。各横フレーム材54は、各縦フレーム材52によって3本のフレーム部541,541,541に分断され、各フレーム部541が各縦筋12の軸線方向へそれぞれ位置をずらせた状態で各縦枠部53及び各縦フレーム材52にそれぞれ連結されている。
【0042】
各縦枠部53は、設置面Mにおける各縦筋12の軸線方向他側の左右両位置より立設された他側支柱材161,161の先端に支持されているとともに、設置面Mにおける各縦筋12の軸線方向一側を左右方向へ延びる本体後端フレーム174の左右両端に立設した一側支柱材173,173の先端に支持されている。また、両横枠部51,51は、各第1縦筋配筋台2と同様にコンクリート構造体と略一致する曲率で湾曲している。
【0043】
一方、各縦筋12の軸線方向一側となる持ち上げ台5の一側(図15及び図16では左側)の一方の横枠部51には、持ち上げ台5を支持する支持機構17が固設されている。この支持機構17は、各第1縦筋配筋台2に配筋された縦筋12の他端と当接するように左右方向へ延び、かつ各横枠部51と略一致する曲率で湾曲する当接材171と、この当接材171の下方を左右方向へ直線上に延びる支持フレーム172と、当接材171と支持フレーム172との間を左右方向略等間隔置きの5箇所で連結する横枠用支柱材173,173,…と、支持フレーム172の下方に対応する設置面Mの一端部(各縦筋12の軸線方向一側)を左右方向へ延びる本体他端フレーム174と、支持フレーム172と本体他端フレーム174との間において各横枠用支柱材173と対応する5箇所に設けられ、本体後端フレーム174に対し支持フレーム172を水平軸n回りに回転自在に支承する支承部175,175,…とを備えている。
【0044】
また、他方の横枠部51の左右方向中央部には、図示しないクレーン装置から垂下する2本のワイヤ61,61のうちの一方のワイヤ61の先端に設けられたフック62に係止される係止片511が突設されている。そして、持ち上げ台5は、クレーン装置により一方のワイヤ61を牽引すると、支持機構17の各支承部175を支点にして水平軸n回りに回転し、持ち上げられる。一方、他方のワイヤ61の先端には、両端にそれぞれ係止フック63,63が取り付けられたワイヤ部材64の略中間部が係止されている。この係止フック63,63は、持ち上げ台5上の網筋11に対しその中央よりも上側の左右両位置付近にそれぞれ係止される。なお、図面において、各フック62及び各係止フック63を便宜上拡大した状態で示したが、これらのフック62,63は、配筋された状態で互いに相隣なる縦筋12,12同士の間を容易に通過可能な大きさとされている。
【0045】
図17図1の組立装置1の持ち上げ台5の縦フレーム材52との干渉を回避する切欠孔部を閉塞部材により塞いだ状態を示す1つの第1縦筋配筋台2の斜視図、図18図17の閉塞部材をスライドさせて切欠孔部を開放させた状態を示す1つの第1縦筋配筋台2の斜視図、図19図17の持ち上げ台5を持ち上げ始めて縦フレーム材52が抜け出した状態を示す1つの切欠孔部付近の拡大斜視図をそれぞれ示している。図17図19にも示すように、各縦フレーム材52と交差する各第1縦筋配筋台2との交差部位には、持ち上げ台5を持ち上げる際に縦フレーム材52との干渉を回避する切欠孔部27が設けられている。
【0046】
更に、各第1縦筋配筋台2には、各縦筋12の配筋時に進出しかつ切欠孔部27を塞いだ状態での縦筋12の配筋を可能とする配筋溝281を有する進退自在な閉塞部材28が設けられている。この閉塞部材28は、上端面に配筋溝281を有して下方へ延びる縦片282と、この縦片282の下端に一端が連結されて略水平に延び、各第1縦筋配筋台2の横片23上をスライド移動する横片283とで断面略L字状に形成されている。
【0047】
また、閉塞部材28は、進出位置(図17に示す位置)にあるときに、切欠孔部27の一側(図17では左側)に対し差し込まれたピン(図示せず)により支持されているとともに、切欠孔部27の他側(図17では右側)に対し差し込まれたピン(図示せず)により支持され、横片283が各第1縦筋配筋台2の横片23に対し離間している。そして、閉塞部材28は、切欠孔部27の一側及び他側からのピンの離脱により支持が解除され、横片283が下降して各第1縦筋配筋台2の横片23上に接地することで、当該横片23上での退出位置(図18に示す位置)までのスライド移動を可能にしている。なお、閉塞部材28が、ピンに限らず、切欠孔部27の一側及び他側にボルトにより締結されて支持されていてもよい。
【0048】
この場合、閉塞部材28の配筋溝281は、各第1縦筋配筋台2の横片23上を横片283がスライド移動する関係上、各第1縦筋配筋台2の縦筋用配筋溝22よりも円弧の長さが短く浅い形状となっている。また、閉塞部材28がスライド移動する部位に対応する各第1縦筋配筋台2の対応部分は、閉塞部材28の横片283が各第1縦筋配筋台2の横片23上をスムーズにスライド移動するように、横片23の他端より上方へ延びる延設片231が設けられている。
【0049】
また、各横フレーム材54の各フレーム部541と交差する各横筋配筋台3との交差部位にも、持ち上げ台5を持ち上げる際に各横フレーム材54の各フレーム部541との干渉を回避する切欠孔部38が設けられている。更に、各横筋配筋台3には、各縦筋12の配筋時に進出しかつ切欠孔部38を塞いだ状態での横筋13の配筋を可能とする配筋溝(図示せず)を有する進退自在な閉塞部材(図示せず)が設けられている。この閉塞部材は、上端面に縦筋用配筋溝を有して下方へ延びる縦片と、この縦片の下端に一端が連結されて略水平に延び、各横筋配筋台3の横片33上をスライド移動する横片とで断面略L字状に形成されている。この場合、閉塞部材の縦筋用配筋溝も、各横筋配筋台3の横片33上を横片がスライド移動する関係上、各横筋配筋台3の縦筋用配筋溝32よりも円弧の長さが短く浅い形状となっている。
【0050】
この閉塞部材も、進出位置にあるときに、切欠孔部38の一側及び他側に対しそれぞれ差し込まれたピン(図示せず)により支持され、横片が各横筋配筋台3の横片33に対し離間している。そして、閉塞部材は、切欠孔部38の一側及び他側からのピンの離脱により支持が解除され、横片が下降して各横筋配筋台3の横片33上に接地することで、当該横片23上での退出位置までのスライド移動を可能にしている。なお、閉塞部材が、ピンに限らず、切欠孔部38の一側及び他側にボルトにより締結されて支持されていてもよい。
【0051】
図20図14の縦筋12と横筋13との交差部を結束具4により結束して組み立てた網筋11を持ち上げ台5により持ち上げるようにクレーンのワイヤ61を係止した状態を示す組立装置の斜視図、図21図16の持ち上げ台5を最大傾斜位置まで傾斜させた状態の組立装置1の斜視図をそれぞれ示している。また、図22図21の持ち上げ台5を最大傾斜位置まで傾斜させた状態の組立装置1を各第1縦筋配筋台2の長手方向一側から見た側面図、図23図21の網筋11をクレーンで吊下した状態で持ち上げ台5のみを下降させた状態を示す組立装置の斜視図をそれぞれ示している。更に、図24図23の網筋11をクレーンで持ち上げた状態を示す組立装置の斜視図を示している。
【0052】
図20図24にも示すように、設置面Mの他端には、持ち上げ台5をクレーンで持ち上げた際に傾斜角度が設置面Mに対し略70°となる最大傾斜位置まで傾斜させた際に支持機構17の当接材171及び各横枠用支柱材173と上面が当接する5つの当接部材19,19,…が立設されている。各当接部材19は、各横枠用支柱材173と対応するように左右方向略等間隔置きに設けられ、持ち上げ台5の最大傾斜位置を越える傾斜を規制している。このとき、クレーン装置は、双方のワイヤ61,61の牽引量が可変とされている。
【0053】
図25図3の第1縦筋配筋台2とは異なる他の縦筋配筋台を縦筋12の軸線方向から見た正面図である。この図25に示すように、第1縦筋配筋台2とは異なる他の縦筋配筋台としては、上端面が各横筋13の軸線方向中央部において最も高所に位置するように上方向きに円弧状に湾曲する上方向き湾曲面に形成された第2縦筋配筋台7が適用されている。
【0054】
第2縦筋配筋台7は、各第1縦筋配筋台2と取り換え可能な状態で用いられ、横筋13が縦筋12よりも半径方向外方に位置する網筋を組み立てる際に5つの第1縦筋配筋台2が全て取り換えられるように5つ用意されている。各第2縦筋配筋台7は、上下方向へ延びる縦片71の上端面上において横筋13の軸線方向等間隔置きに各縦筋12を位置決めした状態で配筋するように凹設された略半円弧状の複数の縦筋用配筋溝72,72,…を備えている。また、第2縦筋配筋台7は、各縦筋12の軸線方向へ略等間隔置きに並設されている。
【0055】
また、各第2縦筋配筋台7は、当該各第2縦筋配筋台7と上下に対向する支持フレーム24に対し左右方向略等間隔置きに設けられた支柱74,74,…により連結されている。各支柱74は、上端面が上方向き湾曲面となる第2縦筋配筋台7が適用されている関係上、各横筋13の軸線方向中央部での長さが最も長く軸線方向両端部に近付くに従い短くなっている。
【0056】
また、各第2縦筋配筋台7も、それぞれの長手方向中間位置において本体中央フレーム14に対しそれぞれ鉛直軸20回りに回転自在に支持されている。各第2縦筋配筋台7の左右両端にも、各本体側部フレーム15上を転動するローラ26が設けられ、各第2縦筋配筋台7が鉛直軸20回りに回転する際にローラ26によって両端部が姿勢保持されるようにしている。また、各第2縦筋配筋台7は、各本体側部フレーム15の各係合孔151に対し支持フレーム24の両端部の貫通孔より差し込んだピン(図示せず)の先端が係合することで、各縦筋12の軸線に対して適宜変更された角度が保持されるようにしている。このとき、各第2縦筋配筋台7は、各縦筋用配筋溝72にそれぞれ位置決めされる各縦筋12,12同士の間隔が各縦筋12の軸線に対する角度に応じて変更される。
【0057】
各第2縦筋配筋台7のうちの互いに相隣なる第2縦筋配筋台7,7も、互いの長手方向両端同士がリンク29,29を介して枢支されている。この場合、各第2縦筋配筋台7のうちのいずれかの第2縦筋配筋台7を鉛直軸20回りに回転させることで、残る4つの各第2縦筋配筋台7が同様に鉛直軸20回りに回転し、それぞれ同じ角度に変更される。
【0058】
各縦フレーム材52と交差する各第2縦筋配筋台7との交差部位にも、持ち上げ台5を持ち上げる際に縦フレーム材52との干渉を回避する切欠孔部75が設けられている。また、各第2縦筋配筋台7には、各縦筋12の配筋時に進出しかつ切欠孔部75を塞いだ状態での縦筋12の配筋を可能とする配筋溝761を有する進退自在な閉塞部材76が設けられている。この閉塞部材76も断面略L字状に形成されている。
【0059】
また、閉塞部材76は、進出位置にあるときに、切欠孔部75の一側に対し差し込まれたピン(図示せず)により支持されているとともに、切欠孔部75の他側に対し差し込まれたピン(図示せず)により支持され、横片が各第2縦筋配筋台7の横片に対し離間している。そして、閉塞部材76は、切欠孔部75の一側及び他側からのピンの離脱により支持が解除され、横片が下降して各第2縦筋配筋台7の横片上に接地することで、当該横片上での退出位置までのスライド移動を可能にしている。なお、閉塞部材76が、ピンに限らず、切欠孔部75の一側及び他側にボルトにより締結されて支持されていてもよい。
【0060】
次に、網筋11の組立装置1による組立方法の一例を図面に基づいて説明する。この場合、各縦筋12が各横筋13よりも半径方向外方に位置する網筋11を組み立てる際に用いられる第1縦筋配筋台2,2,…が適用される。
【0061】
ここで、略円筒状のコンクリート構造体の厚み方向となる半径方向の最外層の骨格を構成する網筋11を組み立てる手順について説明する。
【0062】
先ず、コンクリート構造体の厚み方向となる半径方向の最外層の骨格を構成する網筋11を組み立てる上で、各係合孔151のうちの各第1縦筋配筋台2が横筋13に対し最も直交する方向に位置する状態となる係合孔151にピン153を係合させて、各縦筋12の軸線に対する各第1縦筋配筋台2の角度を最も大きな略90°とし、各縦筋用配筋溝22にそれぞれ位置決めされる各縦筋12,12同士の間隔(例えば199mm程度)が最も広くなるようにしておく。
【0063】
次いで、コンクリート構造体と略一致する曲率に形成された各第1縦筋配筋台2の上端面上の各縦筋用配筋溝22に各縦筋12を位置決めするように配筋した後、各縦筋12に対し各横筋配筋台3の上端面上の各横筋用配筋溝32に各横筋13を位置決めするように配筋する。しかる後、各縦筋12と各横筋13とを互いの交差部においてそれぞれ結束具4や線材を用いて結束し、格子状の網筋11を組立てる。
【0064】
その後、持ち上げ台5を持ち上げるに先だって、各第1縦筋配筋台2の切欠孔部27の一側及び他側からのピンの離脱により支持を解除し、切欠孔部27を閉塞している閉塞部材28の横片283を下降させて各第1縦筋配筋台2の横片23上に接地させ、閉塞部材28をスライド移動させて切欠孔部27の他側へ退出させ、持ち上げ台5の縦フレーム材52との干渉を回避できる状態にしておく。一方、各横筋配筋台3の切欠孔部38の一側及び他側からのピンの離脱により支持を解除し、切欠孔部38を閉塞している閉塞部材の横片を下降させて各横筋配筋台3の横片33上に接地させ、閉塞部材をスライド移動させて切欠孔部38の他側へ退出させ、持ち上げ台5の横フレーム材54の各フレーム部541との干渉を回避できる状態にしておく。
【0065】
それから、クレーンの一方のワイヤ61を引き出し、先端のフック62を持ち上げ台5の他方の横枠部51の係止片511に係止する一方、クレーンから引き出した他方のワイヤ61のフック62に略中間部が係止されたワイヤ部材64の各係止フック63,63を網筋11の中央よりも若干上側の左右両位置付近にそれぞれ係止する。
【0066】
しかる後、クレーンの双方のワイヤ61,61の張力を保ちつつ巻き取って網筋11を載せた状態のままで起こすように、一方の横枠部51における支持機構17の各支承部175を支点にして持ち上げ台5を持ち上げる。そして、持ち上げ台5の傾斜角度が設置面Mに対し略70°となる最大傾斜位置まで傾斜させると、支持機構17の当接材171及び各横枠用支柱材173が各当接部材19の上面に当接し、持ち上げ台5の最大傾斜位置を越える傾斜を規制する。この状態で、網筋11に係止された他方のワイヤ61の牽引量を変更せずにそのままの状態で一方のワイヤ61のみを巻き戻し、持ち上げ台5を下降させる。そして、持ち上げ台5の下降を終えると、他方のワイヤ61の牽引量のみを増大させ、図示しない所定の保管位置まで吊下した状態で運んだ網筋11を降ろして立て掛けておく。
【0067】
それから、コンクリート構造体の厚み方向となる半径方向の内側層の骨格を構成する網筋11を組み立てる場合には、各層毎の離間量に応じて各係合孔151のうちの最適な係合孔151にピン153を係合させることを繰り返して、各縦筋12の軸線に対する各第1縦筋配筋台2の角度を略87°、84°、81°、78°のいずれかとし、各縦筋用配筋溝22にそれぞれ位置決めされる各縦筋12,12同士の間隔を、各第1縦筋配筋台2の角度に応じて197.5mm、196mm、194.5mm、193mmとなるように変更しておく。
【0068】
その後、各縦筋12の軸線に対する角度を変更した各第1縦筋配筋台2の各縦筋用配筋溝22に各縦筋12を位置決めするように配筋した後、各縦筋12に対し各横筋配筋台3の上端面上の各横筋用配筋溝32に各横筋13を位置決めするように配筋してから、各縦筋12と各横筋13との交差部をそれぞれ結束具4や線材により結束して格子状の網筋11を組立てることを繰り返し行う。
【0069】
したがって、本実施の形態では、各縦筋12,12同士の間隔を変更する際に複数の第1縦筋配筋台2,2,…を装置本体10(本体中央フレーム14)に対しそれぞれ鉛直軸20回りに回転させて各縦筋12の軸線に対する角度を変更し、この状態で、各縦筋用配筋溝22に縦筋12をそれぞれ配筋すれば、各縦筋12,12同士の間隔が変更される。これにより、略円筒状のコンクリート構造体のように半径方向に複数の網筋11,11,…を配置して層毎に骨格を構成する際に層毎に異なる各縦筋12,12同士の間隔を簡単に変更することが可能となり、網筋11を組立てる際の作業の簡単化及び作業時間の大幅な短縮化を図ることができる。
【0070】
また、各第1縦筋配筋台2のうちの各縦筋12の軸線方向で互いに相隣なる第1縦筋配筋台2,2同士を各縦筋12の軸線に対する角度が互いに一致するようにリンク29を介して連結しているので、各第1縦筋配筋台2を個々に回転させなくても当該各第1縦筋配筋台2がリンク29を介して鉛直軸20回りにそれぞれ連れ回りし、各第1縦筋配筋台2の各縦筋12,12同士の間隔を簡単かつ迅速に変更することができる。
【0071】
また、各縦筋配筋台として、その上端面を下方向き湾曲面に形成した第1縦筋配筋台2,2,…と、上端面を上方向き湾曲面に形成した第2縦筋配筋台7,7,…とが取り換え可能な状態で適用されているので、縦筋12が横筋13よりも半径方向外方に位置する網筋11を組み立てる際に第1縦筋配筋台2,2,…を用いる一方、横筋13が縦筋12よりも半径方向外方に位置する網筋を組み立てる際に第2縦筋配筋台7,7,…を用いればよく、縦筋12と横筋13との配筋状態が互いに異なる網筋を第1縦筋配筋台2,2,…又は第2縦筋配筋台7,7,…に取り換えるだけで簡単に組み立てることができる。
【0072】
更に、各第1縦筋配筋台2を外方から囲むような略矩形枠状の持ち上げ台5の横枠部51,51同士を連結した各縦フレーム材52との干渉を回避する切欠孔部27が各第1縦筋配筋台2に設けられている一方、各第1縦筋配筋台2の切欠孔部27を進出により塞いだ状態で縦筋12を位置決めする配筋溝281を有する進退自在な閉塞部材28が設けられている。また、持ち上げ台5の縦枠部53,53同士を連結した各横フレーム材54の各フレーム部541との干渉を回避する切欠孔部38が各横筋配筋台3に設けられている一方、各横筋配筋台3の切欠孔部38を進出により塞いだ状態で横筋13を位置決めする縦筋用配筋溝を有する進退自在な閉塞部材が設けられている。これにより、持ち上げ台5を各縦フレーム材52及び各横フレーム材54の各フレーム部541と干渉させることなく円滑に持ち上げることができるとともに、切欠孔部27,38に該当する縦筋12及び横筋13を配筋溝281及び配筋溝に円滑に位置決めした状態で配筋することができる。
【0073】
しかも、略円筒状のコンクリート構造体のように半径方向に複数の網筋11,11,…を配置して層毎に骨格を構成する際に、複数の縦筋配筋台2,2,…を装置本体10に対しそれぞれ鉛直軸20回りに回転させて各縦筋12の軸線に対する角度を変更した状態で、各縦筋用配筋溝22に縦筋12をそれぞれ配筋するだけで、各縦筋12,12同士の間隔を簡単に変更することが可能で、かつ網筋11を組立てる際の作業の簡単化及び作業時間の大幅な短縮化を図ることが可能な網筋11の組立方法を提供することができる。
【0074】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その他種々の変形例を包含している。例えば、前記実施の形態では、各第1縦筋配筋台2の縦片21の上端面上に略半円弧状の複数の縦筋用配筋溝22,22,…を凹設したが、図25及び図26に示すように、縦筋配筋台8が、横片83とで断面略L字状に形成される縦片81の上端面上に略逆三角形状の複数の縦筋用配筋溝82,82,…が凹設されていてもよい。この場合、各縦筋用配筋溝82の角度は、直角よりも若干広角な略93°に設定されている。
【0075】
また、図27に示すように、縦筋配筋台9が、横片93とで断面略L字状に形成される縦片91の上端面上に長径方向で二分割した略半楕円形状の複数の縦筋用配筋溝92,92,…が凹設されていてもよい。この場合、各縦筋用配筋溝92は、各縦筋12の軸線に対する各第1縦筋配筋台2の角度が最も小さい略78°となって各縦筋用配筋溝22にそれぞれ位置決めされる各縦筋12,12同士の間隔が最も狭くなるように変更した際に縦筋12の軸線方向から見てほぼ真円形状となるように設定している。
【0076】
更に、前記実施の形態では、各縦筋12の軸線に対する各第1及び第2縦筋配筋台2,7の角度が略90°〜略78°に変更されるようにしたが、各縦筋の軸線に対する各第1縦筋配筋台の角度が略78°よりも小さい角度に変更されるようにしてもよく、各縦筋用配筋溝にそれぞれ位置決めされる各縦筋同士の間隔をより狭くする要求がある場合に対応することが可能となる。
【0077】
また、前記実施の形態では、各本体側部フレーム15に各第1縦筋配筋台2の左右両端部の回転軌跡上に対応する5つの係合孔151,151,…を、各縦筋12の軸線に対する各第1及び第2縦筋配筋台2,7の角度が3°ずつ変更される位置に設けたが、各本体側部フレームの係合孔の個数や各縦筋の軸線に対する各第1及び第2縦筋配筋台の角度はこれに限られたものではなく、係合孔の個数はいくつあってもよく、各縦筋の軸線に対する各第1及び第2縦筋配筋台の角度も3°以外の角度毎であってもよいのはいうまでもない。
【符号の説明】
【0078】
1 組立装置
10 装置本体
11 網筋
12 縦筋
13 横筋
2 第1縦筋配筋台(縦筋配筋台)
20 鉛直軸
22 縦筋用配筋溝
27 切欠孔部
28 閉塞部材
281 配筋溝
29 リンク
3 横筋配筋台
32 横筋用配筋溝
38 切欠孔部
5 持ち上げ台
51 横枠部
52 縦フレーム材(フレーム材)
53 縦枠部
54 横フレーム材(フレーム材)
7 第2縦筋配筋台(縦筋配筋台)
72 縦筋用配筋溝
8 縦筋配筋台
82 縦筋用配筋溝
9 縦筋配筋台
92 縦筋用配筋溝
図1
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